JPH0728662B2 - ハードバター組成物 - Google Patents

ハードバター組成物

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JPH0728662B2
JPH0728662B2 JP63187467A JP18746788A JPH0728662B2 JP H0728662 B2 JPH0728662 B2 JP H0728662B2 JP 63187467 A JP63187467 A JP 63187467A JP 18746788 A JP18746788 A JP 18746788A JP H0728662 B2 JPH0728662 B2 JP H0728662B2
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善隆 海老原
裕一 前田
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【発明の詳細な説明】 (産業技術分野) この発明は、耐熱性を有するにも拘わらず低温度域にお
いて軟らかい特性を備えたハードバター組成物に関し、
チョコレート用をはじめ、マーガリンまたはショートニ
ング用のベースオイルとしても有効であるが、殊に固型
チョコレート用に使用したとき噛み出しがソフトであっ
てシャープな口溶けを有し、且つカカオ脂が保型性を失
う程度の高温度においても充分な保型性を保持し得る、
ハードバター組成物に関する。
(従来技術及び解決課題) 従来より、カカオ代用脂として周知である、2−オレオ
−1,3−ジパルミチン(略称POP)、1−オレオ−1−パ
ルミト−3−ステアリン(略称POSt)又は2−オレオ−
1,3−ジステアリン(略称StOSt)等の一分子内に1個の
不飽和脂肪酸を有する、2−不飽和−1,3−ジ飽和トリ
グリセリド(略称SUS)を主成分とするテンパリング型
のハードバターは、カカオ脂との相溶性がよくカカオ脂
と任意の割合で混合使用することが可能であるため、カ
カオ脂を多量使用する芳醇なカカオ風味を有したチョコ
レートを製造する上で極めて有用である。かかるハード
バターは、上記するSUS成分を多く含有する天然脂肪を
そのまま若しくは適当な手段により分別して得られる分
画油を、或いは酵素による選択的エスエル交換反応によ
って得られるSUS成分に富んだエステル交換油又はその
分画油を適宜配合して調製されるのであるが、そのトリ
グリセリド組成および特性は可及的カカオ脂に類似させ
るべく努力がはらわれてきた。従って、その特性はカカ
オ脂と極めて類似しており低温では硬く、体温付近で急
激に融解するという融解性状に優れた特性を有してい
る。しかしながら、このように優れた特性を有するカカ
オ脂或いはハードバターにも耐ブルーム性、テンパリン
グ性、コーテイング時の油脂移行、オイルオフ現象、ひ
び割れ現象、高乳脂肪配合における耐熱性の不足等、実
用上いくつかの問題点があり、従来より種々改善が試み
られてきているが就中これまで余り重要視されなかった
大きな問題点として、スポンジ等の軟らかいセンターに
コーテイングしたとき低温度域において食感が悪かった
り、固型チョコレートに使用したときに噛み出しが非常
に硬く、特にこの硬さは経時的に高まり、高令者や歯の
悪い人にとっては不向きであるという点が挙げられる。
このような観点から、業界では上記問題点の改善が要望
されていた。かかる要望に応え、本出願人は先にカカオ
脂またはカカオ脂およびカカオ代用脂或いはSUS成分に
富むハードバターに、融点25℃以下の液体油を混合して
チョコレートのひび割れ防止或いはテンパリング性を改
善する方法を提案した(特開昭59-135841号、特開昭60
−27341号、特開昭61−254143号)。通常、カカオ脂或
いは品質の優れたハードバターは、5〜25℃における固
体脂含有指数(SFI)が70以上と高く、低温度域におい
て極めて硬いのであるが、このようなカカオ脂或いはハ
ードバターに単に液体油を混合した場合では低温度域に
おいて固体脂含有指数が低くなり軟らかくすることがで
きるとしても、反面高温度域においても固体脂含有指指
数が低くなり、軟らかくなって耐熱性のないものとなっ
てしまう。このために、上記提案においては高融点油脂
を少量添加する方法を提唱し、一応それなりの効果を得
ている。
(課題解決手段) 本発明者らは、さらに鋭意研究した結果、特定のグリセ
リド組成を有したハードバター組成物が先の提案にも増
してより有効に上記要望を満足し得るものであるという
知見を得、この発明を完成した。
即ちこの発明は、以下の(a)〜(c)からなるトリグ
リセリド成分85%(重量基準、以下同じ)以上と15%以
下の非トリグリセリド成分から成り、且つ下記の固体脂
含有率を有する、ハードバター組成物。
(a).5%以下のトリ飽和グリセリド、 (b).20〜60%の2−オレオ−1,3−ジ飽和トリグリセ
リド、但し該グリセリドの結合脂肪酸のうち炭素原子数
20〜24個の飽和脂肪酸が30%以上から成る、 (c).10〜70%の一分子内に3個以上の不飽和結合を
有するトリグリセリド。
記 固体脂含有指数(SFI) 5℃:60以下、 5℃と35℃の差:20以下、 35℃:20〜55、 45℃:25以下、 50℃:3以下。
この発明におけるハードバター組成物は、事実上2種類
の、2−オレオ−1,3−ジ飽和トリグリセリド(略称SU
S)成分と、一分子内に3個以上の不飽和結合を有する
トリグリセリド(略称UUU)成分より成るものであって
もよく、前者のSUS成分が20〜65%、後者のUUU成分が10
〜70%の範囲内であればカカオ脂と任意の割合で混合で
き、且つテンパリング処理が可能である。但し、SUS成
分中の結合脂肪酸のうち、30%以上がC20〜C24の飽和脂
肪酸でないと耐熱性が得られ難い。このような2種類の
SUS成分およびUUU成分を主とする本発明ハードバター組
成物は、天然油脂或いは酵素による選択的エステル交換
反応油脂からの分画油若しくは他の単離技術または化学
的合成手段により得られるグリセリド並びに液体油を、
適宜配合することにより調製できるが、就中、酵素によ
る選択的エステル交換反応油脂を利用すると容易に調製
できる。即ち、トリグリセリド中2の位置にオレイン酸
が結合する油脂と遊離のステアリン酸又はそのエステル
或いはトリグリセリド中に多量のステアリン酸が結合す
る油脂とを、グリセリドの1,3位に位置選択的に作用す
る、リゾプス系リパーゼ(リゾプス・ニベウスのリバー
ゼ、リゾプス・ジャポニカスのリパーゼ)、ムコール系
リパーゼ(ムコール・ジャパニカスのリパーゼ)或いは
アスペルギルス系リパーゼ(アルペルギルス・ニガーの
リパーゼ)等の酵素の存在下でエステル交換することに
よって得られ、例えば特開昭55-71797号公報明細書に開
示される方法に準ずればよい。
この発明におけるハードバターは、実質的には上記する
SUSおよびUUUの2種類のトリグリセリド成分のみでな
く、他のグリセリド成分が夾雑してくるが、トリ飽和グ
リセリド(略称SS S)成分は5%以下であるのが好まし
く、5%を越えて含まれると口溶けが悪化する。また、
UUU成分は10%〜70%の範囲内で含まれている必要があ
り、下限未満では噛み出しを軟らかく、且つ適度なソフ
ト感を得ることができない。また、上限を越えると耐熱
性が得られなくなる。
上述の如く、この発明のハードバター組成物は特定範囲
の成分から成るトリグリセリド成分を85%以上含むもの
であって、モノグリセリドまたはジグリセリド或いは不
鹸化物等の非トリグリセリド成分が15%以下の範囲内で
含まれていてもよいのであるが、かかる非トリグリセリ
ド成分は可及的少ないのがよいことはいうまでもない。
また、この発明におけるハードバター組成物は、その固
体脂含有指数(但し、試料を20℃に一週間、25℃に一週
間、0℃に一日間安定化後測定した値)が5℃において
60以下、5℃と35℃の差が20以下であり、35℃で20〜5
5、45℃で25以下、50℃で3以下である必要がある。通
常、前記する如く、カカオ脂或いは融解性状に優れたハ
ードバターの固体脂含有指数(SFI)は、5〜25℃にお
いて70以上であって、5℃と25℃との差は小さく、25℃
付近を境にして急激に低下するという、いわゆる肩を張
った曲線を描くが、これに液体油を混合すると該SFIは
低下するものの、5℃と25℃との差が大きく肩のないだ
らだらとした曲線を描き、特に30℃以上の高温度域では
低くなって耐熱性が得られなくなる。しかるに、この発
明におけるハードバター組成物は5℃と35℃との差が小
さく肩を張った曲線を描くのであって、通常のハードバ
ターの5〜25℃におけるSFIの部分のみがそのまま低下
し、かつ肩が35℃まで延長したような曲線となるのであ
る。
(製造例及び製造比較例) 以下に、製造例及び製造比較例を例示して本発明の効果
をより一層明確にするが、これは例示であって本発明の
精神がかかる例示によって限定されるものでないことは
言うまでもない。なお、以下に示す%及び部は全て重量
基準を意味する。
製造例1〜3及び製造比較例1〜2 (1).試料油−(酵素によるエステル交換反応油)
の調製 ハイオレイック向日葵油と市販のベヘン酸との等量混合
物1000部にリゾプス・デレマーのリパーゼ18部を吸着さ
せた粉末状ケイソウ土50部を添加分散させ、50℃にて20
0rpmの回転で撹拌しながら72時間反応を行わせ、反応
後、系から酵素を濾別した。得られたエステル交換反応
組成物に水蒸気を吹き込み、250℃に加熱し、減圧下に
水蒸気蒸溜して遊離の脂肪酸を除去し、515部の反応生
成物を得た。
次いで、該反応生成物100部に対しn−ヘキサン400部を
加えて加温溶解し、後は常法に従い撹拌しながら−2℃
に冷却して析出する結晶部を濾別して硬質部(収率32.7
%)を得た。
(2).試料油−(酵素によるエステル交換反応油)
の調製 上記試料油の製造法中のベヘン酸の替わりにアラキジ
ン酸を用いて同様に反応させ、酵素を濾別し、減圧下に
230℃で水蒸気蒸留を行い、490部の反応油を得た。
次いで、上記と同様に溶剤分別(−4℃)を行い、硬
質部(収率31.0%)を得た。
(3).試料油−(酵素によるエステル交換反応油)
の調製 上記試料油の製造法中のベヘン酸の替わりにステアリ
ン酸を用いて同様に反応させ、酵素を濾別し、減圧下に
170℃で水蒸気蒸留を行い、470部の反応油を得た。
次いで、上記と同様に溶剤分別(−5℃)を行い、硬
質部(収率32.3%)を得た。
製造例1 試料油35部とハイオレイック向日葵油65部を混合し、
常法により精製した油脂。
製造例2 試料油40部と沃素価89.8のナタネ硬化油60部との混合
油を精製した油脂。
製造例3 試料油35部と沃素価89.8のナタネ硬化油65部との混合
油を精製した油脂。
製造例4 試料油20部と試料油25部およびハイオレイック向日
葵油55部とを混合し、常法により精製した油脂。
製造比較例1 試料油40部とハイオレイック向日葵油60部とを混合
し、常法により精製した油脂。
製造比較例2 試料油60部と沃素価89.8のナタネ硬化油40部とを混合
し、常法により精製した油脂。
以上の各製造例及び製造比較例における精製油脂の化学
組成およびSFI値を表−1に示す。
SUS中のS(飽和脂肪酸)がC16、C18の場合でSUSが32.6
%の比較例1では低温でSFI値が低く横型油脂となる
が、35℃でのSFI値が20以下となり、耐熱性が充分期待
できない。また、SUSが48.8%と高濃度の比較例2では3
5℃のSFI値が20.3となり、ある程度の耐熱性が期待でき
るものの5〜35℃のSFIの温度変化が大き過ぎる。以上
に対し製造例1〜4に示す如く、SUS中のS(飽和脂肪
酸)がC20、C22となると、同様に低温でのSFI値の低さ
を示しながら、35〜40℃のSFI値も高くなり、耐熱性が
付与される。
使用例ミルクチョコレート配合 ココアパウダー 10 部 砂糖 43 部 全脂粉乳 15 部 精製油脂 32 部 レシチン 0.4部 香料 適量 以上の配合にて、常法どおりロール掛け、コンチング、
テンパリング処理して固型チョコレートを得た。かくし
て得たチョコレートを10℃においてはコーンペネトレー
ターにより(数値が大きい程軟らかい)、30℃および35
℃においてはレオメーターにより(数値が大きい程硬
い)それぞれ硬さを測定した。その結果を表−2に示
す。
上記の測定値が示す如く、製造例1乃至4の油脂(本発
明のハードバター組成物)を使用した使用例1乃至4で
は、低温(10℃)でカカオ脂より軟らかいにも拘らず、
35℃でも充分耐熱性を示している。以上に対し、製造比
較例1および2の油脂を使用した使用例5および6で
は、30℃までの耐熱性しか示されていない。
(効果) 本発明の(a)〜(c)からなるトリグリセリド成分85
%以上と15%以下の非トリグリセリド成分から成る特定
のSFIを有したハードバター組成物は、カカオ脂との相
容性がよく任意の割合で混用することが可能であり、且
つ低温域で軟らかいにも拘わらず耐熱性を有するためス
ポンジ等の軟らかいセンターにコーテイングしたときの
低温度における食感の悪さが改善されるとともに、固型
チョコレート用に使用したとき従来のチョコレートに比
べて噛み出しがソフトであってシャープな口溶けを有
し、また経時的にも硬さの変化が少ないという効果を有
する。従って、固型チョコレート用に使用した場合、特
に高令者や歯の悪い人にとっては好適である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の(a)〜(c)からなるトリグリセ
    リド成分85%(重量基準、以下同じ)以上と15%以下の
    非トリグリセリド成分から成り、且つ下記の固体脂含有
    率を有する、ハードバター組成物。 (a).5%以下のトリ飽和グリセリド、 (b).20〜65%の2−オレオ−1,3−ジ飽和トリグリセ
    リド、但し該グリセリドの結合脂肪酸のうち炭素原子数
    20〜24個の飽和脂肪酸が30%以上から成る、 (c).10〜70%の一分子内に3個以上の不飽和結合を
    有するトリグリセリド。 記 固体脂含有指数(SFI) 5℃:60以下、 5℃と35℃の差:20以下、 35℃:20〜55、 45℃:25以下、 50℃:3以下。
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