JPH07285879A - 合成ペプチドの経口投与用製剤 - Google Patents

合成ペプチドの経口投与用製剤

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JPH07285879A
JPH07285879A JP7061941A JP6194195A JPH07285879A JP H07285879 A JPH07285879 A JP H07285879A JP 7061941 A JP7061941 A JP 7061941A JP 6194195 A JP6194195 A JP 6194195A JP H07285879 A JPH07285879 A JP H07285879A
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oral administration
peptide
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arg
asn
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JP7061941A
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Tomio Yamakawa
富雄 山川
Akio Hiyama
昭夫 桧山
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Nippon Chemiphar Co Ltd
Original Assignee
Nippon Chemiphar Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg
−Gly−NH2 などのような学習行動促進作用もしく
は学習障害改善作用があり、その薬理効果がベルシェー
プ曲線を描くペプチドと蛋白分解酵素阻害剤とを含む組
成物を核とし、その核を腸溶性皮膜で被覆した経口投与
用製剤。 【効果】 学習行動促進作用もしくは学習障害改善作用
を有するペプチドを経口投与用製剤として製品化ができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生理学的に活性なペプ
チドの経口投与用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】生理学的に活性な合成ペプチドpGlu
−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2
は、動物実験において、極めて微量で学習行動を促進
し、学習障害を改善することが知られている(特開平2
−273698号公報)。ただし、その改善作用はベル
シェープ曲線を描くことから、作用を確実に発現するた
めには血中濃度の厳密なコントロールが必要である。し
かしながら、この合成ペプチドは経口投与した場合、消
化管内あるいは消化管壁で分解されやすく、このため生
物学的利用能が低減し、十分な薬理効果を発揮できない
という問題がある。従って、この合成ペプチドの所望の
生理活性を得る手段としては、注射剤を使用する方法が
あるが、当該ペプチドは、とりわけ定期的にまた頻繁に
投与しなければならず、そのような注射による投与は患
者にとって苦痛を伴うものである。そのため、かかるペ
プチドの経口投与用製剤が望まれいる。
【0003】従来知られているペプチドならびにタンパ
ク質類の経口吸収性改善の手法としては、ウロキナーゼ
リポソームにポリアルキレングリコール、カルシウムお
よび高級脂肪酸を配合することによって腸管からの吸収
を高める技術(特開昭60−215633号公報)、有
機性芳香族カルボン酸エステル、アミドまたはその塩で
ある吸収プロモーターを含有するカプセルを腸溶性皮膜
で被覆する技術(特開昭62−195324号公報)、
さらに胆汁酸塩や脂肪酸モノグリセリドあるいは高級脂
肪酸塩を含有した混合ミセルの技術(特開昭53−50
316号公報)等が知られている。しかしながら、一般
にリポソームあるいは混合ミセルは安定性などの面から
製品化には多くの困難があり、また、吸収プロモーター
を含有する腸溶カプセルも吸収部位をそのまま通過しや
すい。またインターフェロンに関しては不飽和脂肪酸、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルポリオキ
シエチレンエーテルまたはショ糖脂肪酸エステルを配合
し、さらに腸溶カプセルや腸溶錠化する技術(特開昭和
62−33128号公報)が知られているが、効率的な
手法とは必ずしも言えない。
【0004】さらに、ペプチド類にクエン酸、酒石酸な
どの酸を配合して腸管での吸収性を高める技術が特開昭
60−23326号公報に記載されているが、酸を添加
することによる吸収部位の粘膜に対する障害の発生が問
題とされ、今だ実用化されていない。一方、ウロキナー
ゼと蛋白分解酵素阻害物質との併用使用例が、特公昭5
8−4686号公報に、またインスリンに対する合成キ
モトリプシンインヒビターなどの酵素阻害剤の添加効果
が、「薬局」第22巻11号の第11〜15頁に記載さ
れているが、前記の合成ペプチドpGlu−Asn−S
er−Pro−Arg−Gly−NH2 の経口吸収性改
善に関する報告は全くみられず、またこの合成ペプチド
のように薬理作用がベルシェープ曲線を描き、血中濃度
の厳密なコントロールが必要な薬物の吸収性向上に関す
る技術は知られていない。そして、この合成ペプチドの
消化酵素による切断を理論的に解明し、その酵素に選択
的に作用することを目的とした技術も全く知られていな
い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、pGlu−
Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 など
のようなアルギニン残基又はリジン残基を有し2個〜2
0個のアミノ酸を構成成分として含み、かつ学習改善効
果のような薬理作用がベルシェープ作用曲線を描く生理
活性ペプチドを有効成分として含有する経口投与用製剤
を提供することを主な目的とする。本発明は特に、上記
のような生理活性ペプチドの経口投与を可能とし、かつ
その経口投与によっても、消化管内あるいは消化管壁で
分解されにくく、このため経口投与によっても、十分な
薬理効果を発揮できる経口投与用製剤を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意検討を行った結果、かかるペプチドを蛋
白分解酵素阻害剤と配合し、これを腸溶性皮膜により被
覆することで、経口吸収が良好でかつ工業的にも実用化
が可能なpGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−
Gly−NH2 などの上記のペプチドの経口投与用製剤
を得ることができることを見い出し、本発明を完成する
に至った。従って、本発明は、アルギニン残基またはリ
ジン残基を有し、2個〜20個のアミノ酸を構成成分と
して含み、かつ薬理効果がベルシェープ作用曲線を描く
生理活性ペプチドと蛋白分解酵素阻害剤とを含有する核
が腸溶性皮膜に被覆されていることを特徴とする経口投
与用製剤にある。
【0007】本発明が適用されるペプチドは、アルギニ
ンやリジンを含有する2個から20個のアミノ酸単位を
構成成分として含み、ベルシェープ作用曲線を描く生理
活性ペプチドであれば、天然ペプチド或いは合成ペプチ
ドの何れでもよい。上記の生理活性ペプチドの例として
は、pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gl
y−NH2 、Asn−Ser−Pro−Arg−Gly
−NH2 、Asn−Ser−Pro−Arg−Gly、
バソプレシン、デスモプレシン、エビラチド、ACTH
(4−10)、LH−RH、そしてMet(O2 )−G
lu−His−Phe− D−Lys−Pheでなどを挙
げることができ、なかでも、pGlu−Asn−Ser
−Pro−Arg−Gly−NH2 であることが特に好
ましい。
【0008】本発明の経口投与用製剤において、合成ペ
プチドのpGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−
Gly−NH2 を用いた経口投与用製剤が特に好ましい
理由は、以下に述べるように、そのペプチドが消化管中
で安定化し、消化管粘膜透過性が向上するからである。
すなわち、合成ペプチドpGlu−Asn−Ser−P
ro−Arg−Gly−NH2 は分子量が小さく、N末
端がピログルタミン酸でありC末端がグリシンアミドで
あることから、比較的脂溶性が高く、消化管中に安定に
存在すれば、吸収が可能となる。
【0009】本発明の経口投与用製剤が有効である理由
として次に述べるような理由が推定される。すなわち、
前記合成ペプチドが消化管内あるいは消化管壁で分解を
受ける部位は、それらの位置における主分解生成物とし
てpGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−OHが
検出されることから、アルギニンのC末端であると考え
られる。そして、アルギニンのC末端を選択的に分解す
るトリプシンに対する阻害剤(トリプシンインヒビタ
ー)などを添加することにより、消化管内での安定性が
向上するものと推定される。更に、胃内の消化酵素であ
るペプシンなどに対して、当該ペプチドは比較的安定で
あるが、吸収部位である小腸上部における酵素阻害活性
をより明確に発現させるために、腸溶性製剤とすること
によって、吸収部位において消化酵素阻害剤が高濃度で
溶出し、阻害作用を発揮されるものと推定される。
【0010】一方、インスリンなどの一般的なペプチド
を分解する酵素は、ペプチドを構成するアミノ酸により
決定され、一般には多くの切断部位を有し、それらの一
般的なペプチドは一種の酵素による特異的な切断のみを
受けるのではない。従って、これらのペプチドの安定性
を向上させるためには、いくつもの異なる切断部位を阻
害する阻害剤を添加する必要がある。これに対し、本発
明の製剤のうち、ペプチドとしてpGlu−Asn−S
er−Pro−Arg−Gly−NH2 などの特定のペ
プチドを用いた経口投与用製剤においては、当該ペプチ
ドが、上述した様にその分解が特異的であるので、その
選択的に切断される部位を特定の酵素阻害剤で特異的に
阻害することで、消化管中での安定性を高めることがで
き、従ってより正確に吸収性を予測し、血中濃度を容易
にコントロールすることが可能となる。
【0011】従って、ベルシェープ作用曲線を描く前記
の合成ペプチドの吸収部位における安定化を図る有効で
方法として、本発明で採用した方法は最適な方法という
ことができる。すなわち、上に述べた二つの作用、即ち
アルギニンのC末端の切断を阻害するトリプシンインヒ
ビターなどの蛋白分解酵素阻害剤の添加による消化管中
での安定性の確保、そして腸溶性皮膜で被覆することに
よる消化管中の最も効率的な部位における前記の合成ペ
プチド及び酵素阻害剤の急速で高濃度の放出によって、
pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−
NH2 などのペプチドの経口製剤化が可能となったので
ある。
【0012】次に、本発明において用いられる蛋白分解
酵素阻害剤について述べる。本発明の経口剤の核部分に
配合される蛋白分解酵素阻害剤としては、植物性由来の
大豆トリプシンインヒビター、トリプシンを分解するよ
うな酵素阻害を目的に用いられる低分子合成蛋白分解酵
素阻害剤等の単独あるいは混合したものが挙げられる。
そして、低分子合成蛋白分解酵素阻害剤の具体例として
は、既に医薬品として用いられている、抗トリプシン剤
であるアプロチニン、(商品名:トラジオール)、メシ
ル酸ガベキサート(商品名:エフオーワイ)、メシル酸
カモスタット(商品名:フオイパン)、塩酸セトラキサ
ート等の単独あるいは混合したものが挙げられる。
【0013】この合成蛋白分解酵素阻害剤と合成ペプチ
ドpGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly
−NH2 との一定混合比率における、腸ホモジネートを
用いた安定性試験および in vitro 反転腸管法および i
n situクローズドループ法における透過性の評価を行っ
たところ、下記の表1乃至4に示すように前記合成ペプ
チド単独のものに比し、その安定性などの経口用製剤特
性が著しく改善されることが観察された。また、バソプ
レシンを用いた本発明の経口用製剤について、腸ホモジ
ネートを用いた安定性も表5で示す様に改善された。
【0014】本発明における蛋白分解酵素阻害剤の配合
割合は、ペプチドの種類そして蛋白分解酵素阻害作用の
強さにより影響されるが、通常はペプチド100重量部
に対して0.1〜10,000重量部で、好ましくは、
1〜1000重量部であり、また一日投与量に換算して
0.1mg〜600mgの範囲にて用いることが好まし
い。本発明の経口投与用製剤は、錠剤、顆粒剤、細粒
剤、カプセル剤など通常使用される経口投与用製剤に適
用される。錠剤の場合には、その核は、当該ペプチドと
蛋白分解酵素阻害剤の他に、マンニトールや乳糖などの
賦形剤とポリビニルピロリドンなどの結合剤を混合し、
流動層造粒あるいは転動造粒などの方法で造粒し、打錠
して核とすれば良い。そして、これに腸溶性被膜でコー
テイングすることで本発明の経口投与用製剤を得ること
ができる。
【0015】核を被覆する腸溶性皮膜の例としては、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネー
ト、メタクリル酸コポリマーなどのポリマーが挙げられ
る。これらのポリマーは、単独でも、あるいは組合せて
用いてもよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースフ
タレートについては、置換度の違いにより、pH5.0
〜5.5以上で溶解するものがあり、それらのいずれも
用いることができる。また、ヒドロキシプロピルメチル
セルロースアセテートサクシネートは、pH5.0〜
5.5以上で溶解し、水を溶媒として使用できる。さら
にメタクリル酸コポリマーも、pH5.5以上で溶解し
腸溶性被膜として使用できる。さらに、セルロースアセ
テートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース
も腸溶性皮膜として有用である。
【0016】本発明において、核に腸溶性皮膜を施すに
は、腸溶性皮膜の基剤(ポリマー)をそのまま、あるい
はそれを溶解する溶媒、例えばエタノール、アセトン、
ジクロロメタン、イソプロピルアルコール、水などに溶
解して液状とし、必要に応じて可塑剤や着色剤を混合し
て噴霧あるいは混練合などの通常使用される手段により
核に皮膜を施すことができる。なお、本発明の製剤はそ
れ自体公知の手段に従って、通常の経口投与用製剤と同
様、少量のpH調整剤、添加剤、着色剤、香料や防腐剤
などを含有させることに何等制限されない。
【0017】また本発明の製剤において必要ならば、核
と腸溶性皮膜との間にヒドロキシプロピルセルロースな
どにより胃溶性被覆を施し、ペプチドの安定化をはかる
ことができる。本発明の製剤において、腸溶性皮膜の基
剤の使用比率は、剤形により変化させることが可能であ
るが、胃内滞留中に溶解が起こらない程度にできるだけ
少量の被覆とする方が、本発明の経口投与用製剤をより
効果的にする。
【0018】
【実施例】ペプチドとしてpGlu−Asn−Ser−
Pro−Arg−Gly−NH2を用い、本発明の経口
投与用製剤の効果を確認するため下記の実験を行った。
【0019】[実験例1(腸ホモジネートを用いた安定
性試験)] <方法>SD系雄性ラットを放血致死後開腹し、幽門部
より10cmの小腸上部を摘出し、直ちに氷冷下、生理
食塩水にて軽く洗浄し組織重量を測定後、4倍量の等張
化リン酸バッファー(pH7.4)を加え、バイオミキ
サーを用いてホモジナイズし、腸ホモジネートを調製し
た。この腸ホモジネート液に、合成ペプチドのpGlu
−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2
最終濃度100μg/mLとなるように、また蛋白分解
酵素阻害剤として大豆トリプシンインヒビターは当該ペ
プチドに対して0.001重量%から0.05重量%、
メシル酸ガベキサートは当該ペプチドに対して1/10
〜100倍モル、メシル酸カモスタットは1/10〜1
0倍モルになるようにそれぞれ添加し、37℃にてイン
キュベートした。試験液は添加直後、および添加5、1
0、30分後に0.2mLづつサンプリングし、メンブ
ランフィルター(0.45μm)を用いて濾過し、この
濾液0.45mLに内部標準物質0.05mLを添加
し、その100μlをHPLC(高速液体クロマトグラ
フィー)に注入して当該ペプチドの残存量を測定した。
【0020】< 結果>表1に大豆トリプシンインヒビタ
ーの添加による安定化効果を、表2にメシル酸ガベキサ
ートまたはメシル酸カモスタットの添加による安定化効
果の結果を示す。大豆トリプシンインヒビターは当該ペ
プチドに対して、0.0025重量%以上添加した時
に、メシル酸ガベキサートは当該ペプチドに対して等モ
ル以上添加した時に、またメシル酸カモスタットは1/
10倍モル以上添加した時に特に高い安定化効果が確認
された。
【0021】
【表1】 表1 pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 残存量(%) ──────────────────────────────────── 単独 大豆トリプトファンインヒビター(重量%) 時間 0.001 0.0025 0.01 0.05 ──────────────────────────────────── 開始時 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 5分後 1.1 13.9 52.0 83.4 88.2 30分後 N.D. N.D. N.D. 30.9 47.1 ──────────────────────────────────── 注:N.D.は検出限界以下を意味する。
【0022】
【表2】 表2 pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 残存量(%) ──────────────────────────────────── 単独 メシル酸ガベキサート メシル酸カモスタット 時間 1/10 1 10 100 1/10 1 10 (倍モル) (倍モル) ──────────────────────────────────── 開始時 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 5分後 22.3 29.7 43.4 70.9 87.5 34.8 77.8 96.9 15分後 N.D. N.D. N.D. 5.1 78.9 N.D. 27.9 89.2 30分後 N.D. N.D. N.D. N.D. 55.3 N.D. N.D. 60.0 ──────────────────────────────────── 注:N.D.は検出限界以下を意味する。
【0023】[実験例2(in vitro反転腸管を用いた透
過性試験)] <方法>SD系雄性ラットを放血致死後開腹し、十二指
腸(胆管下部)より回腸末端まで小腸を摘出した。摘出
腸管は、生理食塩水で管腔内を洗浄後、冷Krebs−
Ringer液に浸した。腸管は5cmの長さに切り取
った後、反転させ、一端を糸で結さくした。冷Kreb
s−Ringer液で十分に洗浄後、反転腸管内の漿膜
側にKrebs−Ringer液を約0.75mLを加
え、他端を結さくすることによって、反転腸管を作製し
た。粘膜側の外液として25μg/mLのpGlu−A
sn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 単独あ
るいは、蛋白分解酵素阻害剤として0.1重量%のメシ
ル酸カモスタットを当該ペプチドと共に溶解したKre
bs−Ringer液5mLを三角フラスコ(20m
L)に分注し、0.5mLをサンプリング後O2 −CO
2 (95%−5%)混合ガスを用いてバブリングした。
反転腸管を挿入後、O2 −CO2 (95%−5%)混合
ガスにてフラスコ内を置換した後、密封し、37℃、振
盪数100rpmにてインキュベートした。試験開始3
0分後に外液および内液0.5mLをサンプリングし、
10%トリクロロ酢酸(TCA、0.5mL)を添加
後、メンブランフィルターを用いて濾過した。それぞれ
の濾液0.2mLを分取し内部標準物質0.05mLを
添加後、その0.1mLをHPLCに注入した。
【0024】<結果>pGlu−Asn−Ser−Pr
o−Arg−Gly−NH2 単独あるいは、蛋白分解酵
素阻害剤として0.1重量%のメシル酸カモスタットを
当該ペプチドと併用した場合の反転腸管における膜透過
性試験の結果を表3に示す。当該ペプチド単独の場合は
ほとんど漿膜側への移行は確認できなかったが、メシル
酸カモスタットの併用により、30分までに6.7%の
移行が確認された。
【0025】
【表3】 表3 pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 残存量 及び漿膜側移行量 ──────────────────────────────────── 単独 0.1%重量メシル酸カモスタット併用 ──────────────────────────────────── 粘膜側残存量 10.0% 79.3% 漿膜側移行量 N.D. 6.7% ──────────────────────────────────── 注:N.D.は、検出限界以下を意味する。
【0026】[実験例3(in situ クローズドループ法
を用いた吸収性試験)] <方法>SD系雄性ラットをエーテル麻酔下開腹後、ル
ープ作製可能な腸管部位を引き出し、ループ部の前後に
切り込みを入れ、37℃に保温した生理食塩水にて腸管
内を洗浄した。ループ部となる腸管の両端を糸で結さく
し、ループ内静脈の集合部にカテーテルを挿入した。カ
テーテルより血液が流出していることを確認したのち、
37℃に保温したpGlu−Asn−Ser−Pro−
Arg−Gly−NH2 単独(1mg/mLリン酸バッ
ファー溶液)及び0.1重量%メシル酸カモスタット併
用をループ内に投与し、直ちに血液を採取した。投与直
後から15分、15〜30分の血液及び試験終了時のル
ープ内溶液を採取した。また、ループ内を十分洗浄した
のち、腸管重量に対して4倍量の等張化リン酸緩衝液
(pH7.4)を加え、ホモジナイズし、得られたホモ
ジネート液は血液と同様に当該ペプチド量を定量した。
定量方法及び条件は実験例2と同様とした。
【0027】<結果>pGlu−Asn−Ser−Pr
o−Arg−Gly−NH2 単独あるいは、蛋白分解酵
素阻害剤として0.1重量%のメシル酸カモスタットを
当該ペプチドと併用した場合の in situクローズドルー
プ法における吸収性試験の結果を表4に示す。ペプチド
単独の場合は、30分までのループ内溶液中にほとんど
存在せず、血中への移行や腸ホモジネート中への移行が
微量であるのに対して、0.1重量%メシル酸カモスタ
ット併用により、30分までに血中に投与量の1.2%
が移行し、腸ホモジネート中にも14%の移行が確認さ
れた。
【0028】
【表4】 表4 pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 残存量 及び血中移行量 ──────────────────────────────────── 単独 0.1重量%メシル酸カモスタット併用 ──────────────────────────────────── 粘膜側残存量 0.13% 71.52% 腸ホモジネート 0.13% 13.62% 粘膜側残存量(0〜15分) 0.17% 0.47% (15〜30分) 0.06% 0.77% ────────────────────────────────────
【0029】[実験例4(腸ホモジネートを用いた安定
性試験)]バソプレッシン[AVP(1−9)]の経口
投与用製剤の効果を確認するため上記の実験例1と同様
な方法で実験を行った。 <結果>表5にメシル酸カモスタットの添加による安定
化効果の結果をまとめた。メシル酸カモスタットは10
倍モル添加した時に安定化効果が確認された。
【0030】
【表5】 表5 バソプレッシンの残存量(%) ──────────────────────────────────── 単独 メシル酸カモスタット(倍モル) 時間 1/10 1 10 ──────────────────────────────────── 開始時 100.0 100.0 100.0 100.0 5分後 N.D. N.D. 5.1 32.8 30分後 N.D. N.D. N.D. N.D. ──────────────────────────────────── 注:N.D.は、検出限界以下を意味する。
【0031】[実験例5(経口投与と十二指腸投与とで
の吸収性の比較)]pGlu−Asn−Ser−Pro
−Arg−Gly−NH2 の同一投与量における経口投
与と十二指腸投与とでの吸収性を下記の方法により比較
した。pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−G
ly−NH2 (20mg/kg)とメシル酸カモスタッ
ト(10mg/kg)との混合物をSD系雄性ラットに
経口投与及び十二指腸投与し、pGlu−Asn−Se
r−Pro−Arg−Gly−NH2 の血中濃度を測定
したところ、十二指腸投与の方が有意差をもって高い血
中濃度を示し、吸収性が高いことが確認された(十二指
腸投与時および経口投与時のCmax (μg/mL)は、
それぞれ2.76と0.75であって、AUC(0〜
∞)(μg・分/mL)は、それぞれ129.3と4
6.9)。この結果から、核となる組成物を腸溶性皮膜
で被覆することにより、腸内で高濃度に前記ペプチドを
放出させることができ、そのペプチドの消化酵素による
分解を抑制し、吸収性を向上させることができることが
確認された。
【0032】 [実施例1:錠剤] (1) pGlu−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 (以下合成ペプチドAと略す) 60μg (2) メシル酸カモスタット 20mg (3) マンニトール 150mg (4) 結晶セルロース 100mg (5) コーンスターチ 30mg (6) ポリビニルピロリドン 5mg (7) ステアリン酸マグネシウム 1mg 上記の(1)−(7)を用い素錠を作成し、これを核と
して、この核にヒドロキシプロピルメチルセルロースフ
タレート、酸化チタン、タルク、そしてマイバセット
(20:1:2:2、重量比)の80%エタノール・水
混合溶媒に溶解懸濁した溶液を噴霧し腸溶錠を得た。
【0033】 [実施例2:顆粒] (1) 合成ペプチドA 60μg (2) メシル酸カモスタット 20mg (3) マンニトール 150mg (4) コーンスターチ 150mg (5) ヒドロキシプロピルセルロース 10mg (6) ステアリン酸マグネシウム 3mg 上記の(1)−(6)の組成からなる顆粒を作製し、こ
れを核となし、この核にヒドロキシプロピルメチルセル
ロースアセテートサクシネートとクエン酸トリエチル
(5:1、重量比)の80%エタノール・水混合溶媒に
溶解懸濁した溶液を噴霧し腸溶顆粒を得た。
【0034】 [実施例3:顆粒] (1) 合成ペプチドA 60μg (2) メシル酸カモスタット 20mg (3) 乳糖 70mg (4) コーンスターチ 150mg (5) ヒドロキシプロピルセルロース 10mg (6) ステアリン酸マグネシウム 3mg 上記の(1)−(6)の組成からなる顆粒を作製し核と
なし、この核にメタクリル酸コポリマーS、ヒマシ油、
そしてタルク(20:1:10、重量比)の80%エタ
ノール・水混合溶媒に溶解懸濁した溶液を噴霧し腸溶顆
粒を得た。
【0035】 [実施例4:顆粒] (1) 合成ペプチドA 60μg (2) 塩酸セトラキサート 40mg (3) 乳糖 150mg (4) 結晶セルロース 20mg (5) カルメロース 25mg (6) ヒドロキシプロピルセルロース 3mg (7) 硬化油 1mg (8) ステアリン酸マグネシウム 1.2mg 上記の(1)−(8)の組成からなる顆粒を作成して、
これを核となし、この核にメタクリル酸コポリマーSと
ヒマシ油(20:3、重量比)の80%エタノール・水
混合溶媒に溶解懸濁した溶液を噴霧し腸溶顆粒を得た。
【0036】
【発明の効果】本発明により、極めて微量で学習行動を
促進し、学習障害を改善することが知られているpGl
u−Asn−Ser−Pro−Arg−Gly−NH2
などのようなアルギニン残基又はリジン残基を有し2個
〜20個のアミノ酸を構成成分として含み、かつ学習改
善効果のような薬理作用がベルシェープ作用曲線を描く
生理活性ペプチドが、消化管内あるいは消化管壁で分解
されにくい経口投与用製剤として利用できるようになっ
た。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 38/22 38/11 38/04 47/38 D A61K 37/34 37/43

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルギニン残基またはリジン残基を有
    し、2個〜20個のアミノ酸を構成成分として含み、か
    つ薬理効果がベルシェープ作用曲線を描く生理活性ペプ
    チドと蛋白分解酵素阻害剤とを含有する核が腸溶性皮膜
    に被覆されていることを特徴とする経口投与用製剤。
  2. 【請求項2】 生理活性ペプチドが、pGlu−Asn
    −Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 、Asn−
    Ser−Pro−Arg−Gly−NH2 、Asn−S
    er−Pro−Arg−Gly、バソプレシン、デスモ
    プレシン、エビラチド、ACTH(4−10)、LH−
    RHおよびMet(O2 )−Glu−His−Phe−
    D−Lys−Pheからなる群より選択されるペプチド
    である請求項1に記載の経口投与用製剤。
  3. 【請求項3】 蛋白分解酵素阻害剤がトリプシンインヒ
    ビターである請求項1乃至2のいずれかの項に記載の経
    口投与用製剤。
  4. 【請求項4】 蛋白分解酵素阻害剤が大豆トリプシンイ
    ンヒビター、アプロチニン、メシル酸カモスタット、メ
    シル酸ガベキサート及び塩酸セトラキサートからなる群
    より選択される一または二以上のものである請求項1乃
    至2のいずれかの項に記載の経口投与用製剤。
  5. 【請求項5】 腸溶性皮膜が、ヒドロキシプロピルメチ
    ルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセ
    ルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸コポリ
    マー、セルロースアセテートフタレート及びカルボキシ
    メチルエチルセルロースからなる群より選択される一ま
    たは二以上のものである請求項1乃至4のいずれかの項
    に記載の経口投与用製剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010254645A (ja) * 2009-04-28 2010-11-11 Kao Corp 経口紫外線抵抗性向上剤

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