JPH07283490A - 光半導体装置 - Google Patents

光半導体装置

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JPH07283490A
JPH07283490A JP6165145A JP16514594A JPH07283490A JP H07283490 A JPH07283490 A JP H07283490A JP 6165145 A JP6165145 A JP 6165145A JP 16514594 A JP16514594 A JP 16514594A JP H07283490 A JPH07283490 A JP H07283490A
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Mitsuru Egawa
満 江川
Jiro Okazaki
二郎 岡崎
Shoichi Ogita
省一 荻田
Takuya Fujii
卓也 藤井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】光通信、光ディスク装置、光インターコネクシ
ョンなどの光源に用いられる光半導体装置に関し、導波
路での光吸収を小さくし、低閾値で安定なレーザ発振す
ること。 【構成】光を発振させる利得領域Aから光を発振させず
に導波するモード変換領域Bにかけて形成され、且つ、
該モード変換領域Bでは層数を変えずに該利得領域Aか
ら離れるにつれて膜厚が薄く形成され、さらに該モード
変換領域Bでの入射端の膜厚は出射端の膜厚に比べて2
倍以上となるストライプ状の量子井戸構造層6と、前記
量子井戸構造層6を挟む第一及び第二のクラッド層2,
8とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光半導体装置に関し、
より詳しくは、光通信、光ディスク装置、光インターコ
ネクションなどの光源に用いられる光半導体装置に関す
る。半導体通信技術の高度化に伴い、半導体レーザの作
製技術も向上し、近年では半導体レーザと他の光半導体
素子を集積化する研究が盛んである。例えば、DFBレ
ーザと光変調器を集積した装置や、DBRレーザとモー
ド変換器(ビームサイズ変換器)を集積したものがあ
る。
【0002】モード変換器は、本来30〜40度と広い
出射角をもつ半導体レーザの出力ビームを狭めるための
機構であり、半導体レーザと光ファイバをモジュール化
する場合に光結合を容易にするものである。
【0003】
【従来の技術】半導体レーザにおいては、光導波路の光
閉じ込めが強いほど、即ち光スポット径が小さいほど発
振閾値が小さくなって発光効率が向上するが、光スポッ
ト径が小さくなるほど光ファイバとの結合は困難にな
る。そこで、半導体よりなる光ビーム径変換用の導波路
を有するモード変換器集積化ファブリペロー半導体レー
ザ(以下、FP−LDという)が例えば次の文献に提案
されている。
【0004】〔1〕T. L. KOCH et al., IEEE PHOTONIC
S TECHNOLOGY LETTERS, VOL.2, NO.2, 1990 そのFP−LDは、図12に示すように、 InP基板101
の上に第一の InPクラッド層102 、導波路層103 、多重
量子井戸(MQW)活性層104 、第二の InPクラッド層
105 を順に形成して構成されている。MQW活性層104
は、InGaAs井戸層と InGaAsP障壁層から構成され、利得
領域110 にのみ形成されている。また、導波路層103
は、利得領域110 とモード変換領域111 の双方に形成さ
れている。なお、符号106 は、第二のInP クラッド層10
5 の上に形成されたコンタクト層、107 は、第二のクラ
ッド層内に形成されたエッチングストップ層を示す。
【0005】そのモード変換領域111 における導波路層
103 は厚さ方向にテーパ状に形成されており、利得領域
110 から遠ざかるにつれて薄くなっている。導波路層10
3 はInGaAsP層103aと InP層103bを交互に積層した構造
を有している。そして、そのInP層103bをエッチングス
トップ層として使用して耐エッチングマスクを複数回変
えてInGaAsP 層103aとInP 層103bを階段状にパターニン
グし、これによりモード変換領域における導波路層103
の膜厚をテーパ形状にしている。
【0006】そのMQW活性層104 で励起されて導波路
層103 を導波する光は、モード変換領域111 では利得領
域110 よりも光閉じ込めが弱いため、テーパ先端部での
近視野像は広がり、その結果、近視野像の回折パターン
である遠視野像は狭くなる。従って、テーパ先端から出
たビームの出射角は狭くなり、光ファイバとの結合が容
易になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、共振器を構
成する導波路層103 は出力端に近づくほど層数が少なく
なる構造であり、その導波路層103 のテーパ形状は耐エ
ッチングマスクを複数回取り換えて得られるために、そ
の構造は結晶欠陥を含み易くなり、発光素子の特性劣化
が生じやすい。
【0008】また、半導体レーザにテーパ状の導波路層
を集積化する場合に重要なことは、モード変換領域にあ
る導波路が発振光に対して吸収媒質にならないようにす
ることである。上記文献〔1〕に記載された構造では、
利得領域110 の活性層104 とモード変換領域111 のテー
パ状導波路層103 が異なる層であってほぼ同一組成で構
成されているため、レーザ光の一部が、テーパ状導波路
層103 の利得領域110 に近い部分で吸収され易い。
【0009】従って、モード変換器が一体化されないレ
ーザ素子と比較して光出力、スロープ効率(電流−光強
度特性線の立ち上がり微分値)の低下は免れない。特
に、文献〔1〕に記載のFP−LDでは、テーパ状導波
路層103 が共振器内にあるために半導体レーザの基本特
性にまで影響し、パルス測定における発振閾値電流が両
端劈開の素子で70mAまで上昇している。
【0010】しかも、両端劈開の素子で室温連続(C
W)発振したという報告はなされていない。また、半導
体レーザとテーパ導波路を集積化した装置が〔2〕特開
昭63-233584 号公報、〔3〕特開昭64-53487号公報に記
載されている。これらの構造においても、レーザ活性層
とテーパ導波路が同一組成で構成されており、テーパ領
域の吸収損失が大きく、この吸収損失を打ち消すために
は、テーパ導波路全体にも大きな電流を注入する必要が
ある。
【0011】しかし、公報〔2〕の電流−光強度特性で
はその図から明らかなように発振閾値42mA、微分量子
効率が0.15mW/mAしか得られていない。また、その
導波路層のテーパ形状はエッチング方法を工夫すること
によって得られるために、テーパ形状を常に均一に形成
することが難しくなってビームスポット形状の制御性が
良くない上に歩留りが低下する恐れがある。しかも、共
振器を構成する導波路層に結晶欠陥が入り易く、発光素
子の特性劣化が生じやすい。さらに、その導波路層は単
一材料からなり、文献〔1〕のようなテーパ形状のMQ
W層を有するものではない。
【0012】なお、公報〔3〕では横方向のテーパ形状
を有する光半導体装置であって、テーパ導波路の先端部
ではサブミクロンオーダーの加工が必要となるため、そ
の構造に起因して同じテーパ形状を再現性よく作製する
ことが難しい。本発明はこのような問題に鑑みてなされ
たものであって、導波路での光吸収を小さくし、低閾値
で安定なレーザ発振ができるモード変換器付光半導体装
置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記した課題は、図1、
図10、図11に例示するように、光を発振させる利得
領域Aから光を発振させずに導波するモード変換領域B
にかけて形成され、且つ、該モード変換領域Bでは層数
を変えずに該利得領域Aから離れるにつれて膜厚が薄く
形成され、さらに該モード変換領域Bでの入射端の膜厚
は出射端の膜厚に比べて2倍以上となるストライプ状の
量子井戸構造層6と、前記量子井戸構造層6を挟む第一
及び第二のクラッド層2,8とを有することを特徴とす
る光半導体装置により解決する。
【0014】または、図1、図6(a) に例示するよう
に、光を発振させる利得領域Aから光を発振させずに導
波するモード変換領域Bにかけて形成され、且つ、該モ
ード変換領域Bでは該利得領域Aから離れるにつれて膜
厚が薄く形成されたストライプ状の量子井戸構造層6
と、前記量子井戸構造層6を挟む第一及び第二のクラッ
ド層2,8と、前記第一のクラッド層2の下の基板1の
下面に形成された第一の電極18と、前記利得領域Aか
ら前記モード変換領域Bの一部にかけた範囲の前記第二
のクラッド層8の上に形成された第二の電極17とを有
することを特徴とする光半導体装置によって解決する。
【0015】図6(c) に例示するように、前記第二の電
極17は、前記モード変換領域Bと前記利得領域Aの境
界近傍で分離されていることを特徴とする光半導体装置
によって解決する。または、図6(c) に例示するよう
に、光を発振させる利得領域Aから光を発振させずに導
波するモード変換領域Bにかけて形成され、且つ、該モ
ード変換領域Bでは該利得領域Aから離れるにつれて膜
厚が薄く形成された量子井戸構造層6と、前記量子井戸
構造層6を挟む第一及び第二のクラッド層2,8と、前
記第一のクラッド層2の下の基板1の下面に形成された
第一の電極18と、前記利得領域Aから前記モード変換
領域Bの一部に延在して前記第二のクラッド層8の上に
形成されたコンタクト層14と、前記利得領域Aの前記
コンタクト層14の上に形成された第二の電極17とを
有することを特徴とする光半導体装置によって解決す
る。
【0016】上記モード変換領域Bにおける上記量子井
戸構造層6の膜厚は、入射端が出射端に比べて2倍以上
厚いことを特徴とする光半導体装置によって解決する。
上記利得領域Aと上記モード変換領域Bでの前記量子井
戸構造層6の両端部の幅の比が0.8〜1.2である光
半導体装置によって解決する。上記量子井戸構造層6内
の井戸層はInGaAsP から形成され、上記第一及び第二の
クラッド層2,8はInP から形成されていることを特徴
とする光半導体装置によって解決する。
【0017】上記量子井戸構造層6内の井戸層はGaAsか
ら形成され、上記第一及び第二のクラッド層2,8はAl
GaAsから形成されていることを特徴とする光半導体装置
によって解決する。上記量子井戸構造層6内の井戸層は
GaInP から形成され、上記第一及び第二のクラッド層
2,8はAlGaInP から形成されていることを特徴とする
光半導体装置によって解決する。
【0018】上記利得領域Aでは上記量子井戸構造層に
沿って分布帰還型ミラーを構成する回折格子が形成され
ていることを特徴とする光半導体装置によって解決す
る。上記利得領域Aの前方又は後方には導波方向に沿っ
て分布反射型ミラーを構成する回折格子が形成されてい
ることを特徴とする光半導体装置により解決する。
【0019】
【作 用】本発明では、利得領域の活性層とモード変換
用の導波路を1つのストライプ状の量子井戸構造層から
構成し、かつ、導波路の量子井戸構造層をその層数を変
化させずに利得領域から遠ざかるにつれて薄くして膜厚
方向の光ビームの径を変換している。
【0020】モード変換領域での量子井戸構造層の厚さ
は、入射モード変換領域Bでの入射端の膜厚は出射端の
膜厚に比べて2倍以上となっている。これによれば、量
子井戸構造層から放出されたビームスポット形状が円形
又は円形に極めて近い形状になり、しかも、そのビーム
放射角が20度から10度の範囲内に存在するために、
光ファイバなどとの結合効率が大幅に改善される。
【0021】この構造では、活性層を構成する量子井戸
層の厚さよりもモード変換用導波路を構成する量子井戸
層が薄くなり、量子井戸の基底準位はモード変換用導波
路の方が活性層よりも高くなるため、出射端部でのモー
ド変換用導波路での光吸収波長端は活性層での発振波長
よりも短波長となる。これにより、出射端部で量子井戸
構造層を導波する光はモード変換領域では吸収されなく
なる。
【0022】量子井戸構造層の膜厚は、結晶成長の際に
使用するマスクの開口部の面積を変えることにより成長
速度が変化する性質を利用して制御される。しかし、利
得領域の近傍ではモード変換用導波路の膜厚減少が充分
でなく大きな損失を与えてしまう。本発明によれば、モ
ード変換用導波路の利得領域に近い部分に電極を存在さ
せたり、コンタクト層を延在させることによって、局部
的に電流を流すようにしているので、その部分が確実に
透明になって光吸収がなくなる。モード変換用導波路の
利得領域に近い部分に形成する電極は、利得領域の電極
を延在させてもよいし、利得領域の電極と分離させても
よいが、分離させることによって光吸収量を制御するこ
とが容易となる。
【0023】また、他の本発明によれば、ストライプ状
の量子井戸構造層の両端幅の最小値の比を0.8〜1.
2とすることにより円形ビームスポットを得ることがで
き、光学結合が容易になる。記量子井戸構造層の井戸層
やクラッド層は特に材料を限定するものではない。例え
ば、井戸層をInGaAsP 、クラッド層をInP から形成して
もよいし、井戸層をGaAs、クラッド層をAlGaAsから形成
してもよいし、井戸層はGaInP 、クラッド層をAlGaInP
から形成してもよい。、また、そのような光半導体装置
に形成されるレーザは、ファブリペロー型であってもよ
いし、回折格子を有する分布帰還型又は分布反射型であ
ってもよい。
【0024】
【実施例】
(第1実施例)図1は、本発明の第1実施例のファブリ
ペロー型半導体レーザを示す斜視断面図である。この半
導体レーザは、利得ピークが1.3μm帯に現れるよう
な構造となっており、その構造を製造工程に沿って説明
する。
【0025】まず、図2(a) に示すように、n型(n-)
InP 基板1の上に、少なくとも利得領域A及びモード変
換領域Bが開口された第一のマスク4を形成する。その
マスク4は、シリコン窒化膜などの絶縁膜をフォトリソ
グラフィーによりパターニングしたもので、そのマスク
4の開口部5の形状は、利得領域Aでは光の進行方向に
延びる長さ400μmの矩形部5aと、この矩形部5a
の端部から遠ざかるにつれて一定の角度で連続的に幅が
広くなる長さ350μmの扇形部5bと、扇形部5bの
端部から更に大きく広がった拡張部5cとを有してい
る。
【0026】次に、図2(b) とそのX−X線断面を示す
図3(a) に示すように、第一のマスク4から露出したn
型InP 基板1の上に、n-InP クラッド層2、Inx Ga1-x
AsyP1-y(0<x<1、0<y<1)よりなる第一のS
CH層3、MQW層6、InxGa1-x Asy P1-yよりなる第
二のSCH層7、p−InP クラッド層8を連続的にエピ
タキシャル成長する。それぞれの層の膜厚については、
n-InP クラッド層2を100nm、第一及び第二のSCH
層3,7を100nm、p−InP クラッド層8を200nm
とする。
【0027】それらの層の結晶は、成長核のないマスク
4の上には成長せず、マスク4の開口部5内にあるn型
InP 基板1の上に選択的に成長する。しかも、それらの
層は、マスク4の開口部5のストライプ状の利得領域A
では最も膜厚が厚く、そこから広がっているモード変換
領域Bでは利得領域Aから離れるにつれて膜厚が薄くな
る。このような膜の成長方法を、選択成長法という。
【0028】モード変換領域Bの先端におけるMQW層
6の井戸層6aの厚さは利得領域Aでの膜厚に対して1
/3となっている。このMQW層6は、利得領域Aでは
活性層として機能し、モード変換領域Bでは導波路とな
っている。なお、MQW層6がモード変換領域Bでテー
パ状に形成されているので、その領域を以下にテーパ領
域ともいう。
【0029】そのMQW層6は、3つのInx'Ga1-x'Asy'
P1-y' (0<x’<1、0<y’<1)よりなる井戸層
6aとその間に挟まれるInx'' Ga1-x'' Asy'' P
1-y''(0<x''<1、0<y''<1)よりなる障壁層
6bから構成されたもので、利得領域Aでの井戸層6a
の厚さは7nm、障壁層6bの厚さは15nmとなってい
る。上記した第一のマスク4を除去した後に、図2(b)
のY−Y線断面を示す図4(a) のように、第二のマスク
9を光進行方向に沿ってp-InP クラッド層8の上に形成
する。そのマスク9は、窒化シリコン膜をパターニング
して幅1.5μmの長方形のストライプ状に形成したも
のである。このとき、利得領域Aとモード変換領域Bで
のストライプ幅の最小値の比を0.8〜1.2として、
ビームスポットを円形又は略円形にする。
【0030】この後に、図4(b) に示すように、第二の
マスク9を使用してp-InP クラッド層8からn-InP クラ
ッド層2の上部までを略垂直方向にエッチングして整形
した後に、第二のマスク9を除去せずに、図4(c) に示
すように、第二のマスク9の両側にあるn-InP クラッド
層2の上に第一のp-InP 埋込層10とn-InP 埋込層11
を順に形成する。
【0031】次に、第二のマスク9を除去してから、p-
InP クラッド層8とn-InP 埋込層11の上にp-InP を積
層することにより、第二のクラッド層8の厚さを増すと
ともに、n-InP 埋込層11の上に第二のp-InP 埋込層1
2を形成してMQW層6の両側に図1のようなサイリス
タ構造の電流ブロック層13を形成する。さらに、図3
(b) に示すように、p-InP の上にp+ 型InGaAsP を積層
してこれをコンタクト層14として使用する。このコン
タクト層14は、結晶成長防止用のマスクを使用するか
或いは半導体層をパターニングするかのいずれかによっ
てテーパ領域Bには存在させないようにする。
【0032】この後に、コンタクト層14、第二のクラ
ッド層8及び第二のp-InP 埋込層8の上に絶縁膜15を
形成し、これをフォトリソグラフィーによりパターニン
グして利得領域AのMQW層6の上方にだけ開口部16
を形成する。このように化合物半導体及び絶縁体の積層
を終えた後に、図3(c) に示すように、コンタクト層1
4の上にp電極17を形成し、n-InP 基板1の下面にn
電極18を形成する。さらに、InP 基板1とその上の各
半導体層のうち利得領域Aとモード変換領域Bの互いに
接続しない方の端面を劈開する。なお、利得領域Aの劈
開面に反射膜を形成してもよい。
【0033】以上のような工程により形成されたファブ
リペロー型の半導体レーザを一部切り欠いた斜視図を示
すと図1に示すようになる。この半導体レーザのMQW
層のモード変換領域Bでのテーパ形状は、エッチング方
法を変更することによらず、膜成長の際のマスクの形状
を工夫することによって得られるために、テーパ状のM
QW層には結晶欠陥は生じにくくなる。このため、テー
パ形状の結晶欠陥による特性劣化はなくなる。しかも、
テーパ形状は、小さい誤差で歩留り良く形成され、形状
の均一なビームスポットが得られる。
【0034】この半導体レーザのMQW6において、利
得領域Aで発振した光は、利得領域Aの端面とモード変
換領域Bの端面との反射により共振してモード変換領域
B側の端面から出力することになる。この場合、量子井
戸の基底準位のポテンシャルは量子サイズ効果によって
井戸層6aが薄くなるほど大きくなり、その井戸の伝導
帯と価電子帯間のバンドギャップも広がる。図5(a) に
示す利得領域AでのバンドギャップEg1は同図(b) に示
すモード変換領域BのバンドギャップEg2よりも小さい
ので、モード変換領域BでのMQW層6は利得領域Aで
発振した光を透過することになる。
【0035】しかし、モード変換領域(テーパ領域)B
でのMQW層6の膜厚の変化が緩やかなためテーパ状の
MQW層6のうち利得領域Aに近い部分が可飽和吸収層
となる。可飽和吸収層が存在すれば、その中でキャリア
が飽和状態になるまで光を吸収することになるので、閾
値が高くなり電流−光出力特性(I−L特性)曲線にキ
ンクが生じ、十分な光強度が得られなくなる。
【0036】そこで、図6(a) に示すように、半導体レ
ーザの利得領域Aに形成されるコンタクト層14及びp
電極17をテーパ領域Bの近傍の可飽和吸収領域Cまで
延ばし、その可飽和吸収領域CのMQW層6にも電流を
注入する構成とすることが好ましい。これによれば、電
極17を通して可飽和吸収領域CのMQW層6にも電流
が供給され、その領域での光の吸収がキャリアの注入に
より相殺されてMQW層6は可飽和吸収層とならずに透
明になって光を透過する。これにより、閾値上昇特性曲
線にキンクが発生しなくなり、図7に示すような特性が
得られる。
【0037】図7のI−L特性曲線では、両劈開の素子
で発振閾値電流19mAという、文献〔1〕、〔2〕に示
す構造よりも低い値が得られ、微分量子効率も0.25
mW/mAと良好であった。また、モード変換領域Bでは、
光吸収波長帯端が発振波長よりも短波長側に存在し、可
飽和吸収領域が殆ど発生しないので、I−L曲線にヒス
テリシスやキンクも見られず、MQW層6における利得
領域Aとテーパ領域Bの接合部での光の反射や放射も十
分低く抑えられていることが確認できた。
【0038】また、遠視野像を観察した結果、出射ビー
ムの半値全幅(FWHM)は、図8(a),(b) に示すよう
に膜厚(垂直)方向で11.8Å、膜の面(水平)方向
で8.0°であり、従来よりも狭いビーム出射角が得ら
れた。また、近視野像におけるビームスポット径の垂直
方向、水平方向とテーパ領域Bの長さ(テーパ長)との
関係を調べたところ、図9に示すような関係が得られ
た。この場合、テーパ領域BでのMQW層6の井戸層6
aの厚さは利得領域Aでの井戸層6aの厚さの1/5と
した。
【0039】図9において、膜厚が急激に変化する長
さ、即ちテーパ長が50μm以下では光のモードが膜厚
の変化に追随できずにモード変換器としての十分な機能
が得られない。これに対して、テーパ長が50μm以上
ではスポット径の変化が緩やかであってモード変換器と
して十分な膜厚の変化となる。また、特に図示していな
いが、テーパ長が500μm以上になると、スポット径
に変化は見られず、それ以上の長さは特に必要がなくな
る。
【0040】従って、テーパ長は50μm以上、好まし
くは50〜500μmが最適といえる。次に、モード変
換領域BにおけるMQW層6の膜厚変化の最適な大きさ
について説明する。図10は、テーパ導波路となるMQ
W層6のモード変換領域Bの入射端と出射端の膜厚比
(入射端膜厚/出射端膜厚)を1から5まで変化させた
場合に、出射端からのビーム放射角がどのように変わる
かを計算した結果である。
【0041】計算には通常の3次元ビーム伝搬法を用
い、1.3μm帯のMQW導波路について計算した。図
11に示すように、その入射端におけるMQW層6の膜
厚を0.1μm、SCH層3,7を0.1μmとし、導
波路の長さlを200μmとし、膜厚の変化が一様な無
損失導波路を仮定した。そのテーパ導波路の横幅は、導
波路の全長さにわたって1μmと一定にした。
【0042】図10において、四角のドットは基板面に
対して水平方向のビームの放射角を示し、菱形のドット
は基板面に対して垂直方向のビームの放射角を示してい
る。図10によれば、膜厚比を1にする場合には一般的
な半導体レーザと同様に30度に近い放射角しか得られ
ない。膜厚比が大きくなるにつれて放射角は狭まり、膜
厚比が3で15度、4で12度となる。また、水平方向
と垂直方向の放射角の値が近くなるのはビーム形状が円
形に近づくことを示しており、円形に近いほど光ファイ
バとの結合にとって好ましい結果となる。
【0043】光ファイバとの結合を考えた場合、結合効
率の大きな改善が見られるのは、水平及び垂直方向共に
ビーム放射角が従来の半分以下、即ち15度以下となる
場合である。これは膜厚比が3以上の場合に相当する。
従って、モード変換器(スポットサイズ変換器)に使用
する場合には、MQW層6の膜厚比は3以上が望ましい
ことが図10から明らかである。ただし、放射角が20
度、即ち、膜厚比が2の場合でも、従来のレーザよりビ
ームが円に近づき、レーザのモード形状が光ファイバの
モード形状に近くなることによる結合効率の改善の効果
は期待できる。
【0044】ところで、MQW層の膜厚が変化している
光変調器集積化光源については、特開平1─31998
6号、特開平3─284891号公報に記載されてい
る。前者の公報には、基板のメサストライプ形状の幅を
変化させて利得領域と変調領域の境界でMQW層の膜厚
を変えることについて記載されている。また、後者の公
報には、マスクのストライプ幅を変化させて利得領域と
変調領域の境界でMQW層の膜厚を変えることについて
記載されている。これらは、MQW層の変調領域での膜
厚を一定に形成するものであって、MQW層をテーパ状
に形成することについては何らの記載もないし示唆もな
い。
【0045】光変調器を集積化した光源においては、利
得領域のMQW層の組成に比べて光変調領域のMQW層
は短い波長の組成で構成される。例えば、利得領域の組
成が1.3μmの場合には、光変調領域では1.20μ
m〜1.22μmの組成とする。なお、利得領域の組成
を1.55μmとするときには、光変調領域では1.4
0μm〜1.45μm程度とする。
【0046】これをMQW層の膜厚比に換算すると、そ
の膜厚比は1.5〜2の範囲内に存在する。これよりも
大きな膜厚比で構成する場合には、光変調領域での組成
波長が大き過ぎるために、光変調用の電圧を大きくしな
ければ十分な光吸収が得られなくなる。この結果、素子
の動作電圧を引き上げなければならない。実際に、それ
らの特許公開公報の光変調器集積化光源の利得領域での
MQW層の膜厚は、光変調領域のMQW層の膜厚の2倍
以下となっている。
【0047】従って、光変調器を集積化した光源では、
MQW層の膜厚の変化は小さい方が望ましく、本発明の
モード変換器を集積化した半導体レーザの膜厚の有効な
変化量とは相違する。このように、光変調集積化光源と
光モード変換器集積化光源との膜厚の変化の有効な範囲
が相違することは、本発明者等が見いだしたことであ
り、モード変換器を集積化した光源では、モード変換器
の導波路層の膜厚は、出射端に対して入射端を2倍以上
にする必要があり、5倍にすることにより円形のビーム
が得られる。
【0048】以上のように、MQW層6のテーパ領域の
始点と終点の膜厚比は2倍よりも大きくすることによっ
て、モード変換器としての機能が得られる。また、膜厚
の変化は一様である必要はなく、利得領域Aの近傍では
急激に変化してそれら遠ざかるにつれて緩やかに変化し
てもよいし、その逆に利得領域Aの近傍では緩やかに変
化したり、或いはその膜厚の変化率を複数回緩やかに変
化させるようにしてもよい。また、その膜厚は緩やかな
階段状に変化してもよい。
【0049】ところで、利得領域Aよりも可飽和吸収領
域Cに注入する電流の方が小さくても良い場合には、図
6(b) に示すように利得領域Aと可飽和吸収領域Cに2
つのp電極17,21を分離形成してもよい。これによ
れば、可飽和吸収領域Cでの電流注入量が少なくなって
消費電力が低減する。さらに、テーパ状のMQW層6の
可飽和吸収領域Cにおける光吸収量は利得領域Aから遠
ざかるにつれて次第に小さくなるので、利得領域Aから
離れるにつれて光吸収を無くすための電流値は小さくて
済む。従って、図6(c) に示すようにコンタクト層14
だけを利得領域Aから可飽和領域Cまで延ばすだけでも
よい。これによれば、不純物含有半導体からなるコンタ
クト層14は金属製のp電極17よりも高抵抗であり、
コンタクト層14を介してMQW層6に注入される電流
は利得領域Aから遠ざかるにつれて小さくなるので過剰
な電流の供給を抑制できる。
【0050】(その他の実施例)上記した例ではファブ
リペロー構造としたが、モード変換領域BのMQW層6
の下方又は上方に回折格子を設けてDBRレーザ構造と
してもよい。また、前記利得領域のMQW層に沿って回
折格子を設けてDFBレーザ構造としてもよい。さら
に、上記した実施例では、MQWをInGaAsP /InP 系材
料によって構成しているが、AlGaAs/GaAs系材料、AlGa
InP /GaInP 系材料、その他の化合物半導体材料を使用
したものであってもよい。
【0051】なお、上記した化合物半導体層の成長は、
MOCVD、MBE、その他のエピタキシャル成長法等
による。
【0052】
【発明の効果】本発明では、利得領域の活性層とモード
変換用の導波路を1つのストライプ状の量子井戸構造層
から構成し、かつ、導波路の量子井戸構造層をその層数
を変化させずに利得領域から遠ざかるにつれて薄くして
膜厚方向の光ビームの径を変換している。
【0053】その構造において、モード変換領域での量
子井戸構造層の厚さを、入射モード変換領域Bでの入射
端の膜厚は出射端の膜厚に比べて2倍以上としているの
で、量子井戸構造層から放出されたビームスポット形状
が円形又は円形に極めて近い形状になり、しかも、その
ビーム放射角が20度から10度の範囲内に存在し、こ
れにより、光ファイバなどとの結合効率を大幅に改善で
きる。
【0054】この構造では、活性層を構成する量子井戸
層の厚さよりもモード変換用導波路を構成する量子井戸
層が薄くなり、量子井戸の基底準位はモード変換用導波
路の方が活性層よりも高くなるため、出射端部でのモー
ド変換用導波路での光吸収波長端は活性層での発振波長
よりも短波長となるので、量子井戸構造層を導波する光
はモード変換領域では吸収量を少なくすることができ
る。
【0055】また、モード変換用導波路の利得領域に近
い部分のクラッド層の上に電極を存在させたり、コンタ
クト層を延在させることによって、局部的に電流を流す
ようにしているので、その部分を確実に透明にして光吸
収をなくすことができる。その電極は、利得領域の電極
を延在させてもよいし、利得領域の電極と分離させても
よいが、分離させることによって光吸収量を容易に制御
できる。
【0056】また、他の本発明によれば、ストライプ状
の量子井戸構造層の両端幅の最小値の比を0.8〜1.
2とすることにより円形ビームスポットを得ることがで
き、光学結合を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1実施例を示す光半導体装
置の斜視断面図を示す。
【図2】図2(a) 〜図2(b) は、本発明の第1実施例の
光半導体装置の製造工程の一部を示す斜視図である。
【図3】図3(a) 〜図3(c) は、本発明の第1実施例の
光半導体装置の製造工程の一部を示す側断面図である。
【図4】図4(a) 〜図4(c) は、本発明の第1実施例の
光半導体装置の製造工程の一部を示す正断面図である。
【図5】図5(a) 及び図5(b) は、本発明の第1実施例
の量子井戸構造のエネルギーバンドを示す図である。
【図6】図6(a) 〜図6(c) は、本発明の一実施例の光
半導体装置に係る電極の複数の構造を示す断面図であ
る。
【図7】図7は、本発明の第1実施例の光半導体装置に
おける電流と光出力の関係を示す特性図である。
【図8】図8は、第1実施例の光半導体装置の遠視野像
の垂直方向と横方向の光強度分布図である。
【図9】図9は、本発明の第1実施例の光半導体装置の
導波路のテーパ長と近視野像のスポット径との関係を示
す特性図である。
【図10】図10は、本発明の第1実施例の光半導体装
置の膜厚比とビーム放射角との関係を示す特性図であ
る。
【図11】図11は、図10で示した特性を計算する際
の導波路のモデルを示す断面図である。
【図12】図12は、従来のモード変換用導波路が集積
化された半導体レーザの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
A 利得領域 B モード変換領域 1 基板 2、8 クラッド層 3、7 SCH層 6 多重量子井戸構造 6a 量子井戸層 6b 障壁層 13 電流ブロック層 14 コンタクト層 15 絶縁膜 16 開口部 17 p電極 18 n電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡崎 二郎 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (72)発明者 荻田 省一 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (72)発明者 藤井 卓也 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光を発振させる利得領域から光を発振させ
    ずに導波するモード変換領域にかけて形成され、且つ、
    該モード変換領域では層数を変えずに該利得領域から離
    れるにつれて膜厚が薄く形成され、さらに該モード変換
    領域での入射端の膜厚は出射端の膜厚に比べて2倍以上
    となるストライプ状の量子井戸構造層と、 前記量子井戸構造層を挟む第一及び第二のクラッド層と
    を有することを特徴とする光半導体装置。
  2. 【請求項2】光を発振させる利得領域から光を発振させ
    ずに導波するモード変換領域にかけて形成され、且つ、
    該モード変換領域では該利得領域から離れるにつれて膜
    厚が薄く形成されたストライプ状の量子井戸構造層と、 前記量子井戸構造層を挟む第一及び第二のクラッド層
    と、 前記第一のクラッド層の下の基板の下面に形成された第
    一の電極と、 前記利得領域から前記モード変換領域の一部にかけた範
    囲の前記第二のクラッド層の上に形成された第二の電極
    とを有することを特徴とする光半導体装置。
  3. 【請求項3】前記第二の電極は、前記モード変換領域と
    前記利得領域の境界近傍で分離されていることを特徴と
    する請求項2記載の光半導体装置。
  4. 【請求項4】光を発振させる利得領域から光を発振させ
    ずに導波するモード変換領域にかけて形成され、且つ、
    該モード変換領域では該利得領域から離れるにつれて膜
    厚が薄く形成された量子井戸構造層と、 前記量子井戸構造層を挟む第一及び第二のクラッド層
    と、 前記第一のクラッド層の下の基板の下面に形成された第
    一の電極と、 前記利得領域から前記モード変換領域の一部に延在して
    前記第二のクラッド層の上に形成されたコンタクト層
    と、 前記利得領域の前記コンタクト層の上に形成された第二
    の電極とを有することを特徴とする光半導体装置。
  5. 【請求項5】前記モード変換領域における前記量子井戸
    構造層の膜厚は、入射端が出射端に比べて2倍以上厚い
    ことを特徴とする請求項2又は4記載の光半導体装置。
  6. 【請求項6】前記利得領域と前記モード変換領域での前
    記量子井戸構造層の両端部の幅の比が0.8〜1.2で
    ある請求項1、2、4又は5記載の光半導体装置。
  7. 【請求項7】前記量子井戸構造層内の井戸層はInGaAsP
    から形成され、前記第一及び第二のクラッド層はInP か
    ら形成されていることを特徴とする請求項1、2又は4
    記載の光半導体装置。
  8. 【請求項8】前記量子井戸構造層内の井戸層はGaAsから
    形成され、前記第一及び第二のクラッド層はAlGaAsから
    形成されていることを特徴とする請求項1、2又は4記
    載の光半導体装置。
  9. 【請求項9】前記量子井戸構造層内の井戸層はGaInP か
    ら形成され、前記第一及び第二のクラッド層はAlGaInP
    から形成されていることを特徴とする請求項1、2又は
    4記載の光半導体装置。
  10. 【請求項10】前記利得領域では前記量子井戸構造層に
    沿って分布帰還型ミラーを構成する回折格子が形成され
    ていることを特徴とする請求項1、2又は4記載の光半
    導体装置。
  11. 【請求項11】前記利得領域の前方又は後方には導波方
    向に沿って分布反射型ミラーを構成する回折格子が形成
    されていることを特徴とする請求項1、2又は4記載の
    光半導体装置。
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