JPH0728098A - エレクトロクロミック調光体の製造方法および製造装置 - Google Patents

エレクトロクロミック調光体の製造方法および製造装置

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JPH0728098A
JPH0728098A JP5197015A JP19701593A JPH0728098A JP H0728098 A JPH0728098 A JP H0728098A JP 5197015 A JP5197015 A JP 5197015A JP 19701593 A JP19701593 A JP 19701593A JP H0728098 A JPH0728098 A JP H0728098A
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順一 永井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】プレスパッタの際にシャッターや器壁に付着し
た膜の成分が弾けて基板やターゲットに付着し基板上の
異物となるのを防ぐ。 【構成】ターゲット1〜4が回転可能なカソード構造
で、成膜すべき基板が前記ターゲット1〜4の上側に位
置するデポジションアップ構成とされ、プレスパッタを
前記ターゲット1〜4が前記成膜すべき基板と相対しな
い位置に回転させた状態で行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エレクトロクロミック
(EC)調光体の製造方法および製造装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】一般に基板にスパッタリング法により成
膜する場合は、成膜室内を所定の雰囲気にして基板とタ
ーゲットの間にシャッターを設置するかあるいは基板の
代わりにシャッターを設置し、それとターゲットの間で
放電させターゲット表面のクリーニングをかねたプレス
パッタを行ない、その後シャッターを外して基板に成膜
を行なう。
【0003】EC調光体の構成は図2に示す通りであ
る。硝子等の透明な基板11に、ITO等の第1の透明
電導膜12を真空蒸着法等の適当な方法で形成し、その
上に13〜15の膜を順次積層したものが調光体であ
る。ここで、13はNiOx 等の酸化発色性EC膜(第
1のEC膜)、14はプロトンのイオン伝導層を電解質
としたもので、Ta25 水和物などが使用される。1
5は還元発色性EC膜(第2のEC膜)であり、WO3
や還元発色材料が使われる。16は第2の透明電導膜で
あり、必ずしも第1の透明電導膜12と同じ材料でなく
てもよい。酸化発色性EC膜13と還元発色性EC膜1
5はその層の順序を入れ替えてもよい。
【0004】このような多層膜の構成では、膜の付着力
の観点から酸化発色性EC膜13〜第2の透明電導膜1
6をすべてスパッタリング法で成膜することが好まし
い。蒸着速度の点からEB蒸着等他の蒸着に置き換えて
もよいが、スパッタリング法でしか成膜できない場合も
あるため、酸化発色性EC膜13〜第2の透明電導膜1
6のうち少なくとも1層は必ずスパッタリング法で成膜
する必要がある。
【0005】酸化発色性EC膜13〜第2の透明電導膜
16はそれぞれ約0.5ミクロン程度の膜厚であり、酸
化発色性EC膜13〜第2の透明電導膜16を貫通する
ピンホールまたは導電性の異物があると第1の透明電導
膜12と第2の透明電導膜16の導通が起こり、素子が
駆動できなくなる。ピンホールは基板に付着した異物の
上に着膜しその後脱離することにより生ずる。いずれに
せよ異物の基板表面への付着が導通の原因であり、基板
洗浄が完全であっても成膜装置内で汚染されることがよ
くあった。この意味では、真空内では異物は自由落下す
るため、図3に示すようなサイドデポジション法や図4
のデポジションアップ法は有効であった。
【0006】しかしながら、スパッタリング法では必ず
プレスパッタを行なう必要があり、その際シャッターや
器壁にデポジットされた膜がストレスで弾けて基板やタ
ーゲットに付着し、スパッタリング時に基板上の異物と
なることがあり、これが歩留りの低下をもたらしてい
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は従来技
術が有していた前述の問題点、すなわちスパッタリング
法に必要なプレスパッタの際にシャッターや器壁に付着
した膜の成分が、弾けて基板やターゲットに付着し基板
上の異物となり、歩留を低下させるという問題点を解消
しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の問題点
を解決すべくなされたものであり、第1の発明として電
気化学的に着消色するエレクトロクロミック調光体の製
造方法であって、基板上に形成される透明電導膜、第1
のエレクトロクロミック膜、プロトン伝導性電解質膜、
第2のエレクトロクロミック膜のうちの少なくとも1層
をスパッタリング法により形成するものであり、プレス
パッタをターゲットが成膜すべき基板と相対しない位置
に設定された状態で行なうことを特徴とするエレクトロ
クロミック調光体の製造方法を提供するものである。
【0009】また第2の発明として、電気化学的に着消
色するエレクトロクロミック調光体の製造装置であっ
て、基板上に形成される透明電導膜、第1のエレクトロ
クロミック膜、プロトン伝導性電解質膜、第2のエレク
トロクロミック膜のうちの少なくとも1層をスパッタリ
ング法により形成するスパッタリング装置であり、ター
ゲットが回転可能なカソード構造で、成膜すべき基板が
前記ターゲットの上側に位置するデポジションアップ構
成とされ、プレスパッタを前記ターゲットが前記成膜す
べき基板と相対しない位置に回転させた状態で行なうよ
うにしたことを特徴とするエレクトロクロミック調光体
の製造装置を提供するものである。
【0010】図1には本発明による成膜装置の概略を示
す。ターゲット1〜4はドラム状、または筐体の外壁に
設置され時計回りまたは反時計回りに回転できる構造の
もので、いわゆる回転カソード方式である。基板は水平
方向に搬送される。予めターゲットを回転させ、A、
B、Cいずれかの位置に向き合わせてプレスパッタを行
なう。そして前記ターゲットが基板と相対する位置にな
るように回転させ、所定の蒸着条件にてスパッタリング
法により基板に成膜を行なう。
【0011】なお本発明において、ターゲットが基板と
相対しない位置とは、実質的にプレスパッタ時にターゲ
ットの成分が成膜すべき基板に飛散して付着しないよう
な位置である。したがって、ターゲットと成膜すべき基
板が正面から対面しないような位置がよく、それらが平
行であるときは正面から対面しない位置関係(一方が後
ろ向きの状態も含む)、図1に示すようにそれらが直交
するような位置関係が好ましい。
【0012】
【実施例】
(実施例1)図1のターゲット1〜4としてそれぞれ、
密度が5.0g/cc以上でSnを2.5〜12.5w
t%、好ましくは5〜10wt%含有するIn23
(以下ITOとする)のターゲット、NiOx で示され
るニッケルの不定比性含Niターゲット(純度99.9
%以上、0<x<1.5)、Taのメタルターゲット
(純度99.9%以上)、Wのメタルターゲット(純度
99.9%以上)を設置した。次に、サイズ400×4
00mmの基板ガラスを装置内に入れ、以下5つのプロ
セスにより図1の構成のEC調光体を得たときの成膜条
件について記載する。
【0013】(プロセス1)まずターゲットホルダーを
回し、ITOターゲット1をプレスパッタ用基板Bと相
対させる。背圧が1×10-5Torr以下になるまで排
気した後、Ar:O2 =99:1の組成のガスを装置内
に導入し、プレスパッタ圧を5×10-3Torr、パワ
ー2W/cm2 のDCモードでプレスパッタを10分間
以上行なった。次に、ターゲットホルダーを回転させ、
ITOターゲットが基板と相対する位置に合わせる。基
板温度200〜250℃、スパッタ圧1×10-3〜1×
10-2Torr、好ましくは3×10-3〜7×10-3
orr、またArと酸素の比は比抵抗が最低となるよう
に選定し、スパッタパワー1.0〜8.0W/cm2
好ましくは2.0〜5.0W/cm2 の成膜条件でIT
Oを0.2μmの膜厚に成膜した。
【0014】(プロセス2)NiOx 膜を成膜するため
に、含Niターゲット2をプレスパッタ用基板Bと相対
せしめる。背圧が1×10-5Torr以下になるまで排
気した後、Ar100%のガスを装置内に導入し、プレ
スパッタ圧2×10-3Torr、パワー2W/cm2
DCモードでプレスパッタを10分間以上実施した。そ
の後ターゲットホルダーを回転させ、Niターゲットが
基板と相対する位置に合わせる。酸素比を5〜100
%、好ましくは5〜20%含むArガスでスパッタ圧5
×10-3〜5×10-2Torr、好ましくは1×10-2
〜3×10-2Torrとし、スパッタパワー1.0〜
8.0W/cm2 、好ましくは2.0〜5.0W/cm
2 の条件でNiOx を0.5μmの膜厚に成膜した。但
し、成膜中基板は特に加熱は行なわなかった。
【0015】(プロセス3)Ta25 膜を成膜するた
めに、Taのターゲット3をプレスパッタ用基板Bと相
対させる。背圧が1×10-5Torr以下になるまで排
気した後、Ar100%のガスを装置内に導入し、プレ
スパッタ圧2×10-3Torr、パワー2W/cm2
DCモードでプレスパッタを10分間以上実施した。そ
の後、ターゲットホルダーを回転させ、Taターゲット
が基板と相対する位置に合わせた。その後、酸素を5〜
100%、好ましくは20〜40%含むArガスでスパ
ッタ圧5×10-3〜5×10-2Torr、好ましくは1
×10-2〜3×10-2Torrに保ち、スパッタパワー
1.0〜8.0W/cm2 、好ましくは2.0〜5.0
W/cm2 の成膜条件でTa25 を0.5μmの膜厚
に成膜した。但し、成膜中基板は特に加熱は行なわなか
った。
【0016】(プロセス4)WO3 膜を成膜するため
に、Wのターゲット4をプレスパッタ用基板Bと相対さ
せる。背圧が1×10-5Torr以下になるまで排気し
た後、Ar100%のガスを装置内に導入し、プレスパ
ッタ圧2×10-3Torr、パワー2W/cm2 のDC
モードでプレスパッタを10分間以上実施した。その
後、ターゲットホルダーを回転させ、Wターゲットが基
板と相対する位置に合わせた。その後、酸素を10〜1
00%、好ましくは20〜40%含むArガスでスパッ
タ圧5×10-3〜5×10-2Torr、好ましくは1×
10-2〜3×10-2Torrに保ち、スパッタパワー
1.0〜8.0W/cm2 、好ましくは2.0〜5.0
W/cm2 の成膜条件でWO3 を0.2μmの膜厚に成
膜した。
【0017】(プロセス5)ITO膜を成膜するため
に、前述のプロセス1と同様な操作を行なった。
【0018】以上のプロセスによりガラス/ITO/N
iO/Ta25 /WO3 /ITOの5層構成のEC調
光ガラスを作製できた。このEC調光ガラスの外観検査
ではピンホール、ダストは検出されず、また導通検査で
も10kΩ以上の電気抵抗を示し、従来法の1kΩ以下
の電気抵抗に比べ格段に電気的短絡が抑制された。
【0019】図2の第1の透明電導膜12とプロトン伝
導性電解質膜14の間に、プロトン伝導性電解質膜14
が負となるように直流電圧1.5Vを印加したところ、
青味を帯びたグレイのエレクトロクロミック発色を呈し
た。可視光透過率変化は消色時70%であったが4分後
には20%になった。着色後、印加電圧の極性を逆にし
てやると消色し、約4分後にもとの消色状態に戻った。
【0020】その後合わせガラス作製によく用いられる
ポリビニルブチラール膜またはエチレンビニルアセテー
ト膜を用い、このEC素子を合わせガラス化し、着消色
駆動テストを行ったが10万回後も外観上の劣化は現わ
れず、良好な調光ガラスであることが分かった。EC反
応については詳細は分からないところもあるが、成膜し
た膜(ITO以外)には微量の水(>1μg/cm2
が含まれており、この水がH+ とOH- に解離して次の
数1に示すEC反応をするものと考えられる。
【0021】
【数1】
【0022】実施例1においては、電解質としてTa2
5 を用いたが、下記条件を満たせば同様なEC調光体
が得られることが分かった。 (1)電解質膜で1〜10μg/cm2 の水を含んでい
ること。 (2)蒸着時雰囲気ガスにH2 O分圧が1×10-6To
rr以上存在すること。
【0023】また、前述のTa25 の成膜条件と同様
の条件でスパッタ成膜された電解質として、Mg、B、
Ti、Y、Zr、Nb、Hf、La、Al、Si等の酸
化物薄膜が使用可能である。
【0024】実施例1では、B位置でのみプレスパッタ
する場合について記載したが、ある膜を成膜中同時に他
の膜材料に対応したターゲットでプレスパッタさせるこ
ともできる。たとえば図1の装置で、ターゲット1でI
TOを成膜中同一雰囲気組成でターゲット2にある含N
iターゲットはA位置にあり、この位置でプレスパッタ
させることができる。同様に他の膜についてもこうした
操作は可能であり、この方法を用いることで5層全体の
成膜時間が短縮され、更に得られた調光体の特性も個別
にプレスパッタした場合と変わりないものであった。
【0025】
【発明の効果】本発明は、従来のスパッタ成膜装置で問
題となるプレスパッタ、成膜時のピンホール、ダストに
よる電気的短絡を抑制し、さらに外観及び調光性能に優
れたEC調光ガラスの製造を可能にできた。さらに従来
のスパッタ成膜装置では多数のターゲットを横並びに配
置していたため、装置全長が長くなり大きな排気系が必
要であったが、本発明の装置ではデッド・ボリュームも
小さく、装置全長も短いため排気系が小さくてすむこ
と、またプレスパッタを他の成膜時に同時に行なえるた
め全体の成膜時間が短縮できるといった優れた効果を有
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転可能なカソード構造を有するスパ
ッタリング装置の基本構成図
【図2】EC調光素子の膜構成を示す断面図
【図3】サイドスパッタリング法用装置の基本構成図
【図4】デポジションアップ法用装置の基本構成図
【符号の説明】
1、2、3、4:ターゲット 11:基板 12:第1の透明電導膜 13:酸化(または還元)発色性EC膜 14:プロトン伝導性電解質膜 15:還元(または酸化)発色性EC膜 16:第2の透明電導膜

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気化学的に着消色するエレクトロクロミ
    ック調光体の製造方法であって、基板上に形成される透
    明電導膜、第1のエレクトロクロミック膜、プロトン伝
    導性電解質膜、第2のエレクトロクロミック膜のうちの
    少なくとも1層をスパッタリング法により形成するもの
    であり、プレスパッタをターゲットが成膜すべき基板と
    相対しない位置に設定された状態で行うことを特徴とす
    るエレクトロクロミック調光体の製造方法。
  2. 【請求項2】電気化学的に着消色するエレクトロクロミ
    ック調光体の製造装置であって、基板上に形成される透
    明電導膜、第1のエレクトロクロミック膜、プロトン伝
    導性電解質膜、第2のエレクトロクロミック膜のうちの
    少なくとも1層をスパッタリング法により形成するスパ
    ッタリング装置であり、ターゲットが回転可能なカソー
    ド構造で、成膜すべき基板が前記ターゲットの上側に位
    置するデポジションアップ構成とされ、プレスパッタを
    前記ターゲットが前記成膜すべき基板と相対しない位置
    に回転させた状態で行うようにしたことを特徴とするエ
    レクトロクロミック調光体の製造装置。
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