JPH07276001A - 薄鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 薄鋳片の連続鋳造において、冷却ドラム周面
の付着物をブラシロールによって掻き落とすときに生じ
る、ブラシの毛の倒れによるブラッシング機能の低下を
防止し、またブラシロールの寿命の延長を図るととも
に、表面性状の優れた薄鋳片を製造する。 【構成】 回転する冷却ドラム１、２の周面によって湯
溜まり部５を形成し、該湯溜まり部に供給された溶融金
属を前記冷却ドラムの周面で冷却凝固しながら薄鋳片６
を製造する連続鋳造において、前記冷却ドラムの周面に
前記冷却ドラムの軸方向に平行に沿うブラシロール７、
８を押し当てて設け、該ブラシロールの回転方向を正転
と逆転の方向に交互に回転させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば双ドラム式のよ
うに回転する冷却ドラムの周面とサイド堰によって湯溜
まり部を形成し、湯溜まり部に供給された溶融金属を冷
却凝固しながら薄鋳片を製造する連続鋳造方法におい
て、冷却ドラムの周面に付着した酸化物等をブラシロー
ルによって掻き落とす方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】最近、溶鋼等の溶融金属から１〜１０mm
程度の厚みをもつ薄鋳片を連続鋳造機によって製造する
方法が開発されている。このような連続鋳造機として、
例えば、双ドラム式連続鋳造機は、互いに平行で且つ反
対方向へ回転する一対の冷却ドラムの両端面に一対のサ
イド堰を押し当てて湯溜まり部を形成し、湯溜まり部に
供給した溶鋼等の溶融金属を冷却ドラムの周面で冷却凝
固して凝固シェルを生成し、凝固シェルを一対の冷却ド
ラムの最近接点で一体化して薄鋳片とする。このように
して製造された薄鋳片は、その板厚が製品板厚に近いた
めに、従来の熱延工程を省略することができ、また冷延
工程も軽微なもので済むため、工程及び設備の簡略化が
可能になる。この種の連続鋳造方法として、双ドラム式
の他に冷却ドラムとベルトとの間に湯溜まり部を形成す
るドラム−ベルト方式、一本の冷却ドラムの周面に湯溜
まり部を形成する単ドラム方式等がある。

【０００３】これらの方式においては、湯溜まり部に供
給された溶融金属は、いずれも冷却ドラムの周面に接触
して冷却凝固が進行し、凝固シェルを生成する。そのた
め、冷却ドラムの周面に酸化物等の異物が部分的に付着
していると、付着物の厚さに応じて薄鋳片の表面に窪み
が生じる（転写される）。また、付着物のある部分とそ
れがない部分とで熱の伝導率が異なるために、鋳片の面
上での冷却の進行が不均一となり、それが原因となって
凝固シェルに局部的な応力集中が生じて、鋳片に割れや
皺を生じる場合がある。あるいは、付着物が鋳片表面に
残存して押込疵等の表面疵となる。そこで、冷却ドラム
の周面の付着物を掻き落とすために、冷却ドラムの周面
にワイヤー製のブラシロールを押し付けて回転させる方
法が、例えば特開昭６４−８３３４１号公報によって知
られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この方法によれば、ブ
ラシの毛の弾性によって、付着物を効果的に掻き落とす
ことができる。ところが、このようにしてブラッシング
を続けていくと、ブラシの毛が回転方向の後方へと沿っ
て倒れ、ブラッシング機能が著しく低下するという問題
が生じた。

【０００５】そこで本発明は、薄鋳片の連続鋳造におい
て、冷却ドラム周面の付着物をブラシロールによって掻
き落とすときに生じる、ブラシの毛の倒れによるブラッ
シング機能低下を防止し、表面性状の優れた薄鋳片を長
時間安定して製造することを課題とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明の薄鋳片の連続鋳造方法は、回転する冷却ドラムの周
面によって湯溜まり部を形成し、該湯溜まり部に供給さ
れた溶融金属を前記冷却ドラムの周面で冷却凝固しなが
ら薄鋳片を製造する連続鋳造において、前記冷却ドラム
の周面に前記冷却ドラムの軸方向に沿ってブラシロール
を押し当てて設け、該ブラシロールの回転を正転と逆転
の方向に交互に回転させることを特徴とする。また、前
記ブラシロールの正転時間と逆転時間の各々の累積時間
が、ほぼ等しいことを特徴とする。

【０００７】

【作用】冷却ドラムの周面にワイヤー製のブラシロール
を押し付けて一方向に回転し続けると、ブラシの毛は回
転方向の後方へと沿って倒れてブラッシング機能が低下
する。このとき、ブラシロールを逆方向に回転させる
と、ブラシの毛は倒れた方向と逆方向に曲げられる。そ
のため、倒れたブラシの毛は立ち上がりブラッシング機
能が回復する。また、ブラシロールの正転時間と逆転時
間の累積時間を各々ほぼ等しくすることでブラッシング
機能を継続して維持することができる。

【０００８】

【実施例】次に、本発明を双ドラム式連続鋳造機におい
て実施した具体例を図面を参照しながら説明する。図１
は、本発明の双ドラム式連続鋳造機の主要部を示してい
る。参照番号１及び２は、一対の冷却ドラムを示し、例
えば実施例の双ドラムの直径は８００mm、軸方向の長さ
は１４００mmである。冷却ドラム１及び２は、配管等
（図示しない）によって冷却水の供給を受け、これらの
ドラム表面が軸方向で均一な温度となるように冷却され
る。冷却ドラム１と２の間隙は、薄鋳片６の厚みを決定
する数mm程度の間隙を保って軸受（図示しない）で支持
され、且つ冷却ドラム１と２は毎分５〜６０回転程度の
速さで双ドラム１及び２に示す矢印の方向へ回転駆動さ
れる。参照番号３及び４は、冷却ドラム１、２の両端面
に押し当てて設けられたサイド堰であり、これらのサイ
ド堰３、４によって冷却ドラム１、２の間隙の上部に
は、溶鋼等の溶融金属が注入される湯溜まり部５が形成
されている。湯溜まり部５に供給された溶融金属は冷却
ドラム１、２の周面で冷却凝固して凝固シェル（図示し
ない）を生成し、凝固シェルは、回転する冷却ドラム
１、２の最近接点で一体化されて板厚数mm程度の薄鋳片
６となる。

【０００９】次に、ブラッシング装置について説明す
る。本装置は、冷却ドラムを挟んで左右同形であるた
め、主としてドラム１側の構成を図１を下に説明する。
参照番号７及び８は、冷却ドラム１及び２の背後におい
てそれらの表面に接触して回転するブラシロールであ
り、長さは１４００mm、直径は２００mmである。ブラシ
ロールの回転軸９及び１０のそれぞれには、ブラシロー
ルの基台１１、１２上に支点軸１３により支持され相互
に連結された各一対の腕１４、１４によって、円弧移動
することができるように支持されている。腕１４、１４
の各対を連結する横扞１５には、基台１１、１２上に一
端を支持されたステッピングシリンダー１６、１７のロ
ッド３１、３２の各先端が連結され、ブラシロール軸位
置（食込み量）の微調整を行う。基台１１、１２上には
更にブラシロール７、８を回転駆動するモータ２５、２
５が搭載されている。

【００１０】ブラシロール７、８の回転駆動は、ブラシ
ロール７、８の軸９、１０に取付けられたプーリ２２と
支点軸１３に取付けられた遊転する複合プーリ２３との
間にベルト２４を掛け、更にモータ２５の回転軸に取付
けられたプーリ２６と複合プーリ２３との間にベルト２
７を掛けて構成した伝動装置によって行われる。ブラシ
ロールの位置を調整するため、基台１１、１２は、エア
ーシリンダー２８、２８によりガイド枠２９、２９に案
内されて往復動するように構成されている。モータ２
５、２５には回転コントローラー３０が付設されてお
り、回転コントローラー３０によってモータ２５、２５
の正転と逆転方向の指示および回転時間を連続鋳造条件
に合せて予め設定することができる。

【００１１】ブラシロール７、８は、図２（ａ）のよう
に、細いワイヤー１８を植設したブラシ帯１９をフラン
ジ２０上にスパイラル状に巻き付けた後、ところどころ
を点溶接２１で固定して造られるものがよいが、図２
（ｂ）のようにワイヤー１８をディスク状にして、多数
枚積層したもの、またはフランジ２０にワイヤ１８を直
接に植設したものでもよい。植設されるワイヤ１８は好
ましくはＳＷＲＨ７２Ａ等の硬鋼線で、線径は０．１５
mm程度、長さは４５mm程度であり、植設する前に波形ま
たはジグザグ形に細かく折曲を形成したものがよい。ブ
ラシロール７、８の回転数は６００rpm 程度である。

【００１２】図１に示すように、冷却ドラム１、２の間
隙の上部に形成された湯溜まり部５に溶融金属を供給
し、冷却ドラム１、２の周面で冷却凝固して凝固シェル
を生成し、凝固シェルを、回転する冷却ドラム１、２の
最近接点で一体化して薄鋳片６を製造する。このとき、
冷却ドラム１、２の周面に溶融金属の酸化物等が部分的
に付着する。そこで、冷却ドラム１、２の周面の付着物
を掻き落とすために、エアーシリンダー２８、２８及び
ステッピングシリンダー１６、１７を作動させて、図３
（ａ）に示すように、冷却ドラム１、２の周面にブラシ
ロール７、８を冷却ドラム１、２の回転方向と同方向へ
回転（正転）させながら押し付けて冷却ドラム１、２の
周面に付着した酸化物等を掻き落とす。このようにして
ブラッシングすると、ブラシの毛はブラシロールの回転
方向の後方へと沿って倒れてブラッシング機能が低下す
る。

【００１３】そこで、図３（ｂ）に示すように、回転コ
ントローラー３０（図１）によってモータ２５、２５及
びブラシロール７、８を冷却ドラム１、２の回転方向と
逆方向に回転（逆転）させると、ブラシの毛は倒れた方
向と逆方向に曲げられて、倒れたブラシの毛は立ち上が
り、ブラッシング機能が回復する。図３（ａ）および図
３（ｂ）に示すようにして、ブラシロール７、８を正転
と逆転の交互に回転させる。このとき、ブラシロール
７、８の正転時間と逆転時間の累積時間を各々ほぼ等し
くすることでブラッシング機能を低下せず継続して維持
することができる。

【００１４】図１に示す装置を用いて、冷却ドラムの回
転速度を６０ｍ／分にして鋳造を行い、その間にブラシ
ロールを冷却ドラム周面に押付け、回転数６００rpm で
１分の間隔で正転と逆転を交互に切替えてブラッシング
を行った。ブラシロールを用いてブラッシング機能を低
下せず１００時間鋳造することができた。また、この時
間内に製造された鋳片には冷却ドラムに付着した酸化物
等による表面欠陥は発生しなかった。これに対して、ブ
ラシロールの回転方向を正転方向のままでブラッシング
を行った場合は、ブラシロールは５時間の使用でブラシ
の毛が倒れ込んでブラッシング機能を失い寿命に至っ
た。また、この時間内に製造された鋳片の鋳造後半部分
には表面割れや皺及び冷却ドラムに付着した酸化物等に
よる押込み疵等の表面欠陥が発生した。なお、本発明
は、双ドラム式連続鋳造機の他に、冷却ドラムとベルト
との間に湯溜まり部を形成するドラム−ベルト方式、一
本の冷却ドラムの周面に湯溜まり部を形成する単ドラム
方式等の連続鋳造機にも適用することができる。

【００１５】

【発明の効果】本発明の連続鋳造方法によれば、冷却ド
ラムの周面に付着した酸化物等をブラシロールによって
掻き落とすとき、ブラシロールの回転方向を正転と逆転
の方向に交互に切替えるために、ブラシロールの回転方
向の後方へ沿って倒れたブラシの毛を立ち上がらせて、
ブラッシング機能を回復させることができる。このた
め、冷却ドラムの周面に付着した酸化物等を効率よくブ
ラッシングすることができるため表面割れや皺及び酸化
物等による表面欠陥の少ない鋳片を製造できる。またブ
ラシの毛の倒れを回復させることで、ブラッシング機能
を長時間にわたって維持し、ブラシロールの寿命を延長
させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を実施するための双ドラム式連続鋳造機
を示す一部透視および一部断面斜視図である。

【図２】ブラシロールの構造を説明する斜視図であり、
図２（ａ）はスパイラル状ブラシロールの組立手順を示
し、図２（ｂ）はディスク状ブラシロールを示す。

【図３】ブラシの毛の倒れ方向を説明する双ドラム式連
続鋳造機の断面概略図であり、図３（ａ）は正転、図３
（ｂ）は逆転を示す。

【符号の説明】

１、２…冷却ドラム ３、４…サイド堰 ５…湯溜まり部 ５…薄鋳片 ７、８…ブラシロール ９、１０…ブラシロールの軸 １１、１２…基台 １３…支点軸 １４…腕 １５…横扞 １６、１７…ステッピングシリンダー １８…ワイヤー １９…ブラシ帯 ２０…ブラシロールのフランジ ２１…点溶接 ２２、２６…プーリ ２３…複合プーリ ２４、２７…ベルト ２５…モータ ２８…エアーシリンダー ２９…ガイド枠 ３０…回転コントローラー ３１、３２…ロッド

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浜田 和夫 山口県光市大字島田3434番地 新日本製鐵 株式会社光製鐵所内 (72)発明者 佐々木 邦政 広島県広島市西区観音新町四丁目６番22号 三菱重工業株式会社広島製作所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転する冷却ドラムの周面によって湯溜
   まり部を形成し、該湯溜まり部に供給された溶融金属を
   前記冷却ドラムの周面で冷却凝固しながら薄鋳片を製造
   する連続鋳造において、前記冷却ドラムの周面に前記冷
   却ドラムの軸方向に沿ってブラシロールを押し当てて設
   け、該ブラシロールの回転を正転と逆転の交互に回転さ
   せることを特徴とする薄鋳片の連続鋳造方法。
2. 【請求項２】 ブラシロールの正転時間と逆転時間の各
   々累積時間が、ほぼ等しいことを特徴とする請求項１に
   記載の薄鋳片の連続鋳造方法。