JPH07263346A - 化合物半導体微結晶の形成方法 - Google Patents

化合物半導体微結晶の形成方法

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JPH07263346A
JPH07263346A JP4744194A JP4744194A JPH07263346A JP H07263346 A JPH07263346 A JP H07263346A JP 4744194 A JP4744194 A JP 4744194A JP 4744194 A JP4744194 A JP 4744194A JP H07263346 A JPH07263346 A JP H07263346A
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孝 上田
Masahiro Akiyama
正博 秋山
Eiji Yamaichi
英治 山市
Nagayasu Yamagishi
長保 山岸
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 量子サイズの微結晶を形成するに当たり、下
地表面の終端処理を行わずに、しかも下地と格子整合し
ていても格子整合していなくても、微結晶を形成できる
微結晶形成方法を提供する。 【構成】 減圧MOCVD 装置の成膜室22内に、下地として
GaAs基板18を設置する。そしてMOCVD 法により、Gaを含
む原料ガスをキャリアガスH2とともに基板18上に供給し
て、Gaを構成元素とする島状堆積物20を形成する。然る
後、MOCVD 法により、Asを含む原料ガスをキャリアガス
H2とともに島状堆積物20上に供給して、島状のIII-V 族
微結晶を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は化合物半導体微結晶の
形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、量子効果を利用した化合物半
導体デバイス例えば量子井戸型の半導体レーザを構成す
る場合に、厚さをドブロイ波長よりも薄くしたフィルム
状の半導体層が用いられている。近年の研究において
は、さらに進んで、3次元方向における各サイズをドブ
ロイ波長よりも小さくした微結晶を、半導体デバイスに
応用することも考えられている。例えば量子井戸型の半
導体レーザにおいて、ドット状に散在させた微結晶を井
戸層とし、この井戸層をフィルム状の障壁層で挟んで活
性層を構成すれば、半導体レーザの特性改善を期待でき
る。
【0003】このような微結晶の形成方法として、文献
1:Japanese Journal of AppliedPhysics Vol.32 (199
3) pp.2052 〜2058や文献2:Japanese Journal of App
lied Physics Vol.32 (1993) pp.L32〜L35 に開示され
ているものがある。文献1の方法は、ダングリングボン
ドを終端した基板表面上に結晶成長させると、島状に微
結晶が成長することを利用するものである。文献2の方
法は、ハイドライド気相成長法を用いて、基板とは格子
定数の異なる結晶を基板上に成長させると、島状に微結
晶が成長することを利用するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら文献1の
方法では、基板表面のダングリングボンドを終端する処
理が必要である。従って所望のキャリア濃度を得るため
に、微結晶成長後に、終端処理に用いた元素を基板表面
から取り除く処理が必要となることもある。
【0005】また文献2の方法では、基板上に格子定数
の等しい微結晶を成長させることはできない。さらにハ
イドライド気相成長法においては、結晶成長を熱平衡に
近い状態で行なうので、成長可能な微結晶の構成元素は
特定の種類のものに限定される。
【0006】この発明は上述した点に鑑み成されたもの
であって、この発明の目的は下地表面の終端処理を行な
わずに、しかも微結晶が下地と格子整合していても格子
整合していなくても、微結晶を成長させることのできる
化合物半導体微結晶の形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、第一発明の化合物半導体微結晶の形成方法は、III
族元素及びV族元素を構成元素とするIII −V族化合物
半導体微結晶(イ)を形成するに当り、微結晶(イ)の
構成元素とすべき全種類のIII 族元素について原料ガス
を用意し、MOCVD法により、下地上に前記全種類の
III 族原料ガスを供給して、ドロップレットを形成する
工程と、微結晶(イ)の構成元素とすべき全種類のV族
元素について原料ガスを用意し、MOCVD法により、
ドロップレット上に前記全種類のV族原料ガスを供給し
て、III −V族化合物半導体微結晶を形成する工程とを
含んで成ることを特徴とする。
【0008】第一発明の実施に当り、微結晶(イ)は二
元混晶のみならず、多元混晶例えば三元或は四元の混晶
であっても良い。一例を挙げて説明すれば、微結晶
(イ)の構成元素として、IIIa族元素であるAl、Ga
或はInとVa族元素であるP、As或はSbとを用い、
微結晶(イ)として、例えばGaAs、InP、InS
b、AlGaAs、InGaAs或はInGaAsPを
形成することができる。
【0009】従って微結晶(イ)の構成元素とすべきII
I 族元素は1種又は複数種とすることができる。構成元
素とすべきIII 族元素を1種とするときは、この1種の
III族元素を構成元素とするドロップレットを形成する
こととなる。構成元素とすべきIII 族元素を複数種とす
るときは、微結晶(イ)のIII 族元素に関わる組成を制
御するために、各種類のIII 族原料ガスを同一期間内に
並行して下地上に供給するのが好ましい。各種類のIII
族原料ガスの供給量を調整することにより、ドロップレ
ットの組成を制御でき、従って微結晶(イ)のIII 族元
素に関する組成を制御できる。III 族原料ガスを、III
族元素を含む有機金属又は金属水素化物のガスとするこ
とができる。
【0010】微結晶(イ)の構成元素とすべきV族元素
もまた1種又は複数種とすることができる。構成元素と
すべきV族元素が複数種あるときは、微結晶(イ)のV
族元素に関わる組成を制御するために、各種類のV族原
料ガスを同一期間内に並行してドロップレット上に供給
するのが好ましい。各種類のV族原料ガスの供給量を調
整することにより、微結晶(イ)のV族元素に関わる組
成を制御できる。V族原料ガスを、V族元素を含む有機
金属又は金属水素化物のガスとすることができる。
【0011】また第二発明の化合物半導体微結晶の形成
方法は、II族元素及びVI族元素を構成元素とするII−VI
族化合物半導体微結晶(ロ)を形成するに当り、微結晶
(ロ)の構成元素とすべき全種類のII族元素について原
料ガスを用意し、MOCVD法により、下地上に前記全
種類のII族原料ガスを供給して、ドロップレットを形成
する工程と、微結晶(ロ)の構成元素とすべき全種類の
VI族元素について原料ガスを用意し、MOCVD法によ
り、ドロップレット上に前記全種類のVI族原料ガスを供
給して、II−VI族化合物半導体微結晶を形成する工程と
を含んで成ることを特徴とする。
【0012】第二発明の実施に当り、微結晶(ロ)は二
元混晶のみならず、多元混晶例えば三元或は四元の混晶
であっても良い。一例を挙げて説明すれば、微結晶
(ロ)の構成元素として、IIa 族元素であるBe、M
g、IIb 族元素であるZn、Cd或はHgと、VIa 族元
素であるO、S、Se或はTeとを用い、微結晶(ロ)
として、例えばCdS、ZnS、ZnSe或はHgCd
Teを形成することができる。
【0013】従って微結晶(ロ)の構成元素とすべきII
族元素は1種又は複数種とすることができる。構成元素
とすべきII族元素を1種とするときは、この1種のII族
元素を構成元素とするドロップレットを形成することと
なる。構成元素とすべきII族元素を複数種とするとき
は、微結晶(ロ)のII族元素に関わる組成を制御するた
めに、各種類のII族原料ガスを同一期間内に並行して下
地上に供給するのが好ましい。各種類のII族原料ガスの
供給量を調整することにより、ドロップレットの組成を
制御でき、従って微結晶(ロ)のII族元素に関わる組成
を制御できる。II族原料ガスを、II族元素を含む有
機金属又は金属水素化物のガスとすることができる。
【0014】微結晶(ロ)の構成元素とすべきVI族元素
もまた1種又は複数種とすることができる。構成元素と
すべきVI族元素が複数種あるときは、微結晶(ロ)のVI
族元素に関わる組成を制御するために、各種類のVI族原
料ガスを同一期間内に並行してドロップレット上に供給
するのが好ましい。各種類のVI族原料ガスの供給量を調
整することにより、微結晶(ロ)のVI族元素に関わる組
成を制御できる。VI族原料ガスを、VI族元素を含む有機
金属又は金属水素化物のガスとすることができる。
【0015】
【作用】第一発明によれば、まず、MOCVD法によ
り、III 族原料ガスを下地上に供給する。その結果、下
地上に島状に点在した堆積物すなわちドロップレットを
形成できる。
【0016】その後、MOCVD法により、V族原料ガ
スをドロップレット上に供給する。その結果、ドロップ
レットを構成するIII 族元素とV族原料ガス中のV族元
素とが反応して、III −V族化合物半導体の微結晶
(イ)を形成できる。
【0017】また第二発明によれば、まず、MOCVD
法により、II族原料ガスを下地上に供給する。その結
果、下地上に島状に点在した堆積物すなわちドロップレ
ットを形成できる。
【0018】その後、MOCVD法により、VI族原料ガ
スをドロップレット上に供給する。その結果、ドロップ
レットを構成するII族元素とVI族原料ガス中のVI族元素
とが反応して、II−VI族化合物半導体の微結晶(ロ)を
形成できる。
【0019】
【実施例】以下、図面を参照し、発明の実施例につき説
明する。尚、図面は発明が理解できる程度に概略的に示
してあるにすぎず、従って発明を図示例に限定するもの
ではない。
【0020】図1(A)〜(C)は第一発明の実施例の
説明に供する工程図であって、主要工程の様子を概念的
に示す断面図である。図2は下地の結晶性を維持するた
めのガスと原料ガスとに関し成膜室内への供給の開始と
停止とを示すタイムチャートである。
【0021】まず、微結晶(イ)の構成元素とすべき全
種類のIII 族元素について原料ガスを用意し、MOCV
D(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法に
より、下地10上に前記全種類のIII 族原料ガスを供給
して、ドロップレット12を形成する。微結晶(イ)
は、III 族元素及びV族元素を構成元素とするIII −V
族化合物半導体微結晶であって、最終的に得ようとして
いる微結晶である。
【0022】この実施例では、微結晶(イ)としてGa
As二元混晶を得ようとするものであって、その形成に
減圧MOCVD装置を用いる。そしてこの装置の成膜室
14内に下地10を設置する(図1(A))。ここでは
基板表面の終端処理を行っていないGaAs基板を、下
地10とする。
【0023】尚、微結晶(イ)の形成目的に応じて下地
10を基板以外の任意好適なものに変更できる。例えば
量子井戸型の半導体レーザにおいて活性層の井戸層とし
て微結晶(イ)を形成する場合には、活性層の障壁層を
下地10とすれば良い。
【0024】次いで成膜室14内の圧力を、所定の結晶
成長圧力100Torrとするように調整し、然る後、
下地10表面の結晶性を維持するためのガス例えばAs
3(アルシン)を成膜室14内に導入する。次いで下
地10を所定の結晶成長温度700℃まで加熱する。
【0025】下地温度が所定の結晶成長温度で一定にな
ったら、AsH3 ガスの供給を停止する(図2の時刻t
1 )。その供給停止後例えばその停止から5秒経過した
後(図2の時刻t2 )、III 族原料ガスをキャリアガス
とともに、下地10上に供給して、ドロップレット12
を形成する(図1(B))。微結晶(イ)としてGaA
s二元混晶を得ようとしているので、1種のIII 族原料
ガスを用いて、Gaを構成元素とするドロップレット1
2を形成すれば良い。下地10上に点在する島状のドロ
ップレット12を形成できる。ここでは、III 族原料ガ
スにTMG(トリメチルガリウム)を、またキャリアガ
スにH2 を用いる。結晶成長速度は1000Å/分とす
る。ドロップレット12の形成が終了したらIII 族原料
ガスの供給を停止する(図2の時刻t3 )。
【0026】ドロップレット12の分布密度に関して
は、下地10上におけるIII 族原料ガスの流速を増加又
は減少することによって下地10上におけるドロップレ
ット12の分布密度を低く或は高くすることができる。
さらにドロップレット12の寸法に関しては、下地10
上に供給するIII 族原料ガスの量を増加或は減少するこ
とによってドロップレット12の寸法を大きくし或は小
さくすることができる。また下地10の温度(結晶成長
温度)を高く或は低くすることによってドロップレット
12の寸法を大きく或は小さくすることができる。
【0027】次に、微結晶(イ)の構成元素とすべき全
種類のV族元素について原料ガスを用意し、MOCVD
法により、ドロップレット12上に前記全種類のV族原
料ガスを供給して、III −V族化合物半導体微結晶
(イ)を形成する。
【0028】この実施例では、III 族原料ガスの供給停
止後例えばその停止から5秒経過した後(図2の時刻t
5 )、V族原料ガスをキャリアガスとともに、ドロップ
レット12上に供給して、微結晶(イ)を形成する(図
1(C))。微結晶(イ)としてGaAs二元混晶を得
ようとしているので、1種のV族原料ガスを用いれば良
い。ここでは、V族原料ガスにAsH3 (アルシン)を
用い、そしてIII 族原料ガス中のIII 族元素とV族原料
ガス中のV族元素との比をモル比で1:20とするよう
にして、微結晶(イ)を形成する。キャリアガスにはH
2 を用い、結晶成長速度を1000Å/分とする。
【0029】V族原料ガス中のV族元素は、ドロップレ
ット12中に吸収されドロップレット12を構成するII
I 族元素と反応するので、微結晶(イ)を形成できる。
微結晶(イ)の形成が終了したらV族原料ガスの供給を
停止する(図2の時刻t5 )。
【0030】微結晶(イ)の分布密度、寸法は、ドロッ
プレット12の分布密度、寸法によって制御できる。ド
ロップレット12の分布密度、寸法を大きく或は小さく
することにより、微結晶(イ)の分布密度、寸法を大き
く或は小さくすることができる。
【0031】図3はドロップレットの電顕写真を模写し
た図を示す。ドロップレット12を形成した状態の下地
10表面を、電子顕微鏡により倍率2.04×103
写真撮影し、その写真を模写した図を、図3(A)に示
す。また倍率30.5×103 で撮影した電顕写真を模
写した図を、図3(B)に示す。
【0032】電子顕微鏡で観察したところ、下地10上
に形成したドロップレット12は半球状の形状を呈して
おり、下地10と反応している様子はない。従ってドロ
ップレット12はGa単体の金属であると考えられる。
Gaと下地10とが反応しているとすれば、ドロップレ
ット12の形状は半球状と成らずに多面体となると考え
るからである。
【0033】図4は微結晶(イ)の電顕写真を模写した
図を示す。微結晶(イ)を形成した状態の下地10表面
を、電子顕微鏡により倍率2.04×103 で写真撮影
し、その写真を模写した図を、図4(A)に示す。また
倍率8.00×103 で撮影した電顕写真を模写した図
を、図4(B)に示す。
【0034】電子顕微鏡で観察したところ、下地10上
に形成した微結晶(イ)は、<111>B方向に延びた
角錐状の形状を有し、その側面には明瞭に確認できるフ
ァセットが形成されている。このことから微結晶(イ)
はGaAs単結晶であると考えられる。このとき観察し
た微結晶(イ)の高さは約1μm及び底面における一辺
の長さは約0.5μmであった。
【0035】このように電子顕微鏡による観察からも明
らかなように、MOCVD法により、下地10上にIII
族原料ガスを供給してIII 族元素を堆積させると、III
族元素が島状に点在して堆積する。しかもMOCVD法
により、この島状堆積物すなわちドロップレット12上
にV族原料ガスを供給してドロップレット12を結晶化
すると、ドロップレット12の構成元素Gaが拡散しな
い。その結果、ドロップレット12を島状のままで結晶
化できるので、島状の微結晶(イ)を形成できる。尚、
ドロップレット12の構成元素Gaが拡散すると島状の
微結晶(イ)を形成できずにフィルム状の結晶層が形成
されてしまう。
【0036】これら島状のドロップレット12及び島状
の微結晶(イ)が形成できる理由は、必ずしも明らかで
はないが、キャリアガスに用いたH2 が関与している可
能性もある。キャリアガスに用いたH2 が下地10の表
面と化学的に結合し、これが下地10の表面エネルギー
を小さくしている可能性がある。キャリアガスが関与し
ているか否か、いずれにしても、島状のドロップレット
12及び島状の微結晶(イ)を形成するためには、MO
CVD法を用いそしてIII 族原料ガスの供給とV族原料
ガスの供給とを時間的に分離して行うことが必要であ
る。
【0037】図5は、結晶成長温度(下地温度)を60
0℃として形成したドロップレットの電顕写真を、模写
した図を示す。電顕写真の倍率は30.5×103 であ
る。結晶成長温度を600℃とすることにより、300
〜500Å程度の径を有する半球状のドロップレット1
2を形成できる。
【0038】結晶成長温度を700℃としたときは、6
00℃としたときよりも大きな、3000〜5000Å
程度の径を有するドロップレット12を形成でき(図3
(B)参照)、従って結晶成長温度によりドロップレッ
ト12の大きさを変化させることができることが確認で
きる。
【0039】以上、上述した実施例によれば、下地10
表面の終端処理を行なわなくても、しかも微結晶(イ)
と下地10とが格子整合する場合であっても、微結晶
(イ)を形成できることが明らかになった。
【0040】上述した実施例では、微結晶(イ)として
GaAs二元混晶を形成する場合につき説明したが、こ
のほか多元混晶例えばInGaAsP四元混晶を微結晶
(イ)として形成することもできる。
【0041】この場合、微結晶(イ)の構成元素とすべ
き全種類のIII 族元素について用意する原料ガスは、I
n元素を含む有機金属又は金属水素化物のガス(以下、
Inガス)及びGa元素を含む有機金属又は金属水素化
物のガス(以下、Gaガス)の2種である。これらIn
ガス及びGaガスを同一期間内に並行して下地10上に
供給して、In及びGaを構成元素とする混晶のドロッ
プレット12を形成する。Inガス及びGaガスの供給
条件を任意好適に調整することにより、ドロップレット
12におけるIn及びGa元素の組成を制御し、従って
微結晶(イ)におけるIII 族元素の組成を制御する。
【0042】また微結晶(イ)の構成元素とすべき全種
類のV族元素について用意する原料ガスは、As元素を
含む有機金属又は金属水素化物のガス(以下、Asガ
ス)及びP元素を含む有機金属又は金属水素化物のガス
(以下、Pガス)の2種である。これらAsガス及びP
ガスを同一期間内に並行してドロップレット12上に供
給して、InGaAsP微結晶(イ)を形成する。As
ガス及びPガスの供給条件を任意好適に調整することに
より、微結晶(イ)におけるV族元素の組成を制御す
る。
【0043】従来の文献2の方法では、熱平衡化で結晶
成長を行なうハイドライド気相成長法を用いるので、成
長可能な微結晶の構成元素は特定の種類のものに限定さ
れる。これに対しMOCVD法では、熱平衡化で結晶成
長を行なえるので、成長可能な微結晶の構成元素の種類
はハイドライド気相成長法よりも多くなり、従って第一
発明では、成長可能な微結晶の構成元素の種類を、従来
よりも多くすることができる。
【0044】次に第二発明の実施例につき説明する。図
6(A)〜(C)は第二発明の実施例の説明に供する工
程図であって、主要工程の様子を概念的に示す断面図で
ある。
【0045】まず、微結晶(ロ)の構成元素とすべき全
種類のII族元素について原料ガスを用意し、MOCVD
(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法によ
り、下地18上に前記全種類のII族原料ガスを供給し
て、ドロップレット20を形成する。微結晶(ロ)は、
II族元素及びVI族元素を構成元素とするII−VI族化合物
半導体微結晶であって、最終的に得ようとしている微結
晶である。
【0046】この実施例では、微結晶(ロ)としてZn
S二元混晶を得ようとするものであって、その形成に減
圧MOCVD装置を用いる。そしてこの装置の成膜室2
2内に下地18を設置する(図6(A))。ここでは基
板表面の終端処理を行っていないGaAs基板を、下地
18とする。尚、微結晶(ロ)の形成目的に応じて下地
18を基板以外の任意好適なものに変更できる。
【0047】次いで成膜室22内の圧力を、所定の結晶
成長圧力100Torrとするように調整し、然る後、
下地18表面の結晶性を維持するためのガスを成膜室2
2内に導入する。次いで下地18を所定の結晶成長温度
まで加熱する。
【0048】下地温度が所定の結晶成長温度で一定にな
ったら、結晶性を維持するためのガスの供給を停止す
る。その後、II族原料ガスをキャリアガスとともに、下
地18上に供給して、ドロップレット20を形成する
(図6(B))。微結晶(ロ)としてZnS二元混晶を
得ようとしているので、1種のII族原料ガスを用い、Z
nを構成元素とするドロップレット20を形成すれば良
い。下地18上に点在する島状のドロップレット20を
形成できる。II族原料ガスにZnを含む有機金属又は金
属水素化物のガスを、またキャリアガスにH2 を用い
る。ドロップレット20の形成が終了したらII族原料ガ
スの供給を停止する。
【0049】ドロップレット20の分布密度に関して
は、下地18上におけるII族原料ガスの流速を増加又は
減少することによって下地18上におけるドロップレッ
ト20の分布密度を低く或は高くすることができる。さ
らにドロップレット20の寸法に関しては、下地18上
に供給するII族原料ガスの量を増加或は減少することに
よってドロップレット20の寸法を大きくし或は小さく
することができる。また下地18の温度(結晶成長温
度)を高く或は低くすることによってドロップレット2
0の寸法を大きく或は小さくすることができる。
【0050】次に、微結晶(ロ)の構成元素とすべき全
種類のVI族元素について原料ガスを用意し、MOCVD
法により、ドロップレット20上に前記全種類のVI族原
料ガスを供給して、II−VI族化合物半導体微結晶(ロ)
を形成する。
【0051】この実施例では、VI族原料ガスをキャリア
ガスとともに、ドロップレット20上に供給して、微結
晶(ロ)を形成する(図1(C))。微結晶(ロ)とし
てZnS二元混晶を得ようとしているので、1種のVI族
原料ガスを用いれば良い。ここでは、VI族原料ガスにS
を含む有機金属又は金属水素化物のガスを用いて、微結
晶(ロ)を形成する。キャリアガスにはH2 を用いる。
【0052】VI族原料ガス中のVI族元素は、ドロップレ
ット20中に吸収されドロップレット20を構成するII
族元素と反応するので、微結晶(ロ)を形成できる。微
結晶(ロ)の形成が終了したらVI族原料ガスの供給を停
止する。
【0053】微結晶(ロ)の分布密度、寸法は、ドロッ
プレット20の分布密度、寸法により制御できる。ドロ
ップレット20の分布密度、寸法を大きくし或は小さく
することにより、微結晶(ロ)の分布密度、寸法を大き
くし或は小さくすることができる。
【0054】この第二発明の実施例では、MOCVD法
により、下地18上にII族原料ガスを供給してII族元素
を堆積させると、II族元素が島状に点在して堆積する。
しかもMOCVD法により、この島状堆積物すなわちド
ロップレット20上にVI族原料ガスを供給してドロップ
レット20を結晶化すると、ドロップレット20の構成
元素Znが拡散しない。その結果、ドロップレット20
を島状のままで結晶化できるので、島状の微結晶(ロ)
を形成できる。尚、ドロップレット20の構成元素Zn
が拡散すると島状の微結晶(ロ)を形成できずにフィル
ム状の結晶層が形成されてしまう。
【0055】これら島状のドロップレット20及び島状
の微結晶(ロ)が形成できる理由は、必ずしも明らかで
はないが、キャリアガスに用いたH2 が関与している可
能性もある。キャリアガスに用いたH2 が下地18の表
面と化学的に結合し、これが下地18の表面エネルギー
を小さくしている可能性がある。キャリアガスが関与し
ているか否か、いずれにしても、島状のドロップレット
20及び島状の微結晶(ロ)を形成するためには、MO
CVD法を用いそしてII族原料ガスの供給とVI族原料ガ
スの供給とを時間的に分離して行うことが必要である。
【0056】上述した実施例では、微結晶(ロ)として
ZnS二元混晶を形成する場合につき説明したが、この
ほか多元混晶例えばAIIIIVIVI四元混晶を微結晶
(ロ)として形成することもできる。ここでAII及びB
IIはII族元素であって種類の異なる元素、またCVI及び
VIはVI族元素であって種類の異なる元素を表す。
【0057】この場合、微結晶(ロ)の構成元素とすべ
き全種類のII族元素について用意する原料ガスは、AII
元素を含む有機金属又は金属水素化物のガス(以下、A
IIガス)及BII元素を含む有機金属又は金属水素化物
(以下、BIIガス)の2種である。これらAIIガス及び
IIガスを同一期間内に並行して下地18上に供給し
て、ドロップレット20を形成する。AIIガス及びBII
ガスの供給条件を任意好適に調整することにより、ドロ
ップレット20におけるAII及びBII元素の組成を制御
し、従って微結晶(ロ)におけるII族元素の組成を制御
する。また微結晶(ロ)の構成元素とすべき全種類のVI
族元素について用意する原料ガスは、CVI元素を含む有
機金属又は金属水素化物のガス(以下、CVIガス)及び
VI元素を含む有機金属又は金属水素化物のガス(以
下、DVIガス)の2種である。これらCVIガス及びDVI
ガスを同一期間内に並行してドロップレット20上に供
給して、微結晶(ロ)を形成する。CVIガス及びDVI
スの供給条件を任意好適に調整することにより、微結晶
(ロ)におけるVI族元素の組成を制御する。
【0058】第一発明と同様、この第二発明でも、MO
CVD法を用いるので、成長可能な微結晶の構成元素の
種類を、従来よりも多くすることができる。
【0059】発明は上述した実施例にのみ限定されるも
のではなく、従って各構成成分の形状、寸法、構成元
素、形成条件(例えば結晶成長温度や結晶成長圧力)及
びそのほかを任意好適に変更できる。
【0060】
【発明の効果】上述した説明からも明らかなように、第
一発明の化合物半導体微結晶の形成方法によれば、MO
CVD法により、下地上にIII 族原料ガスを供給して、
III 族元素を堆積させるので、下地表面の終端処理を行
っていなくとも、III 族元素を構成元素とする島状のド
ロップレットを形成できる。
【0061】そしてMOCVD法により、ドロップレッ
ト上にV族原料ガスを供給して、ドロップレットを結晶
化或は混晶化するので、この混晶化の際にドロップレッ
トの構成元素であるIII 族元素は拡散しない。その結
果、ドロップレットを島状のままで混晶化できるので、
島状のIII −V族化合物半導体微結晶を形成できる。し
かもこの島状の微結晶は、下地と格子整合していても格
子整合していなくても、形成できる。
【0062】さらに第二発明の化合物半導体微結晶の形
成方法によれば、MOCVD法により、下地上にII族原
料ガスを供給して、II族元素を堆積させるので、下地表
面の終端処理を行っていなくとも、II族元素を構成元素
とする島状のドロップレットを形成できる。
【0063】そしてMOCVD法により、ドロップレッ
ト上にVI族原料ガスを供給して、ドロップレットを結晶
化或は混晶化するので、この混晶化の際にドロップレッ
トの構成元素であるII族元素は拡散しない。その結果、
ドロップレットを島状のままで混晶化できるので、島状
のII−VI族化合物半導体微結晶を形成できる。しかもこ
の島状の微結晶は、下地と格子整合していても格子整合
していなくても、形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(C)は第一発明の実施例における主
要工程の様子を概念的に示す断面図である。
【図2】第一発明の実施例におけるガス供給の開始及び
停止のタイミングを示すタイムチャートである。
【図3】(A)〜(B)はドロップレットの電子顕微鏡
写真を模写した図である。
【図4】(A)〜(B)はIII −V族化合物半導体微結
晶の電子顕微鏡写真を模写した図である。
【図5】ドロップレットの電子顕微鏡写真を模写した図
である。
【図6】第二発明の実施例における主要工程の様子を概
念的に示す断面図である。
【符号の説明】
10、18:下地 12、20:ドロップレット (イ):III −V族化合物半導体微結晶 (ロ):II−VI族化合物半導体微結晶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山岸 長保 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電気 工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 III 族元素及びV族元素を構成元素とす
    るIII −V族化合物半導体微結晶を形成するに当り、 前記構成元素とすべき全種類のIII 族元素について原料
    ガスを用意し、MOCVD法により、下地上に前記全種
    類のIII 族原料ガスを供給して、ドロップレットを形成
    する工程と、 前記構成元素とすべき全種類のV族元素について原料ガ
    スを用意し、MOCVD法により、前記ドロップレット
    上に前記全種類のV族原料ガスを供給して、III −V族
    化合物半導体微結晶を形成する工程とを含んで成ること
    を特徴とする化合物半導体微結晶の形成方法。
  2. 【請求項2】 II族元素及びVI族元素を構成元素とする
    II−VI族化合物半導体微結晶を形成するに当り、 前記構成元素とすべき全種類のII族元素について原料ガ
    スを用意し、MOCVD法により、下地上に前記全種類
    のII族原料ガスを供給して、ドロップレットを形成する
    工程と、 前記構成元素とすべき全種類のVI族元素について原料ガ
    スを用意し、MOCVD法により、前記ドロップレット
    上に前記全種類のVI族原料ガスを供給して、II−VI族化
    合物半導体微結晶を形成する工程とを含んで成ることを
    特徴とする化合物半導体微結晶の形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008251903A (ja) * 2007-03-30 2008-10-16 Fujitsu Ltd 化合物半導体量子ドットの製造方法
JP2009044052A (ja) * 2007-08-10 2009-02-26 Univ Nagoya 量子ドット及びその製造方法
JP2010219476A (ja) * 2009-03-19 2010-09-30 Fujitsu Ltd 発光装置

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