JPH07252112A - 医科用または歯科用硬化性組成物 - Google Patents

医科用または歯科用硬化性組成物

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JPH07252112A
JPH07252112A JP6044019A JP4401994A JPH07252112A JP H07252112 A JPH07252112 A JP H07252112A JP 6044019 A JP6044019 A JP 6044019A JP 4401994 A JP4401994 A JP 4401994A JP H07252112 A JPH07252112 A JP H07252112A
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JP
Japan
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strontium
glass powder
calcium phosphate
devitrified glass
phosphate
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Application number
JP6044019A
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English (en)
Inventor
Norifumi Nagata
憲史 永田
Takayuki Yogoro
孝之 余頃
Sadayuki Yuta
貞之 夕田
Naoki Oda
直樹 織田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sankin Industry Co Ltd
Chichibu Onoda Cement Corp
Original Assignee
Sankin Industry Co Ltd
Chichibu Onoda Cement Corp
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Publication date
Application filed by Sankin Industry Co Ltd, Chichibu Onoda Cement Corp filed Critical Sankin Industry Co Ltd
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Publication of JPH07252112A publication Critical patent/JPH07252112A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、補綴物や充填材として要求
される十分な硬化性、強度を有すると共に生体親和性に
優れた医科用または歯科用硬化性組成物を提供すること
にある。 【構成】 本発明は、アパタイト結晶及び/またはリン
酸カルシウム結晶を含むリン酸カルシウム系失透ガラス
粉末、ストロンチウムアパタイト結晶及び/またはリン
酸ストロンチウム結晶を含むリン酸ストロンチウム系失
透ガラス粉末またはストロンチウム固溶アパタイト結晶
を含むリン酸ストロンチウムカルシウム系失透ガラス粉
末と、練和液またはラジカル重合性不飽和化合物及び重
合開始剤とからなる医科用または歯科用硬化性組成物に
おいて、前記失透ガラス粉末の粒度が20μm以上の粒
子10体積%以下、及び1μm以下の粒子10体積%以
下であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医科用または歯科用硬
化性組成物に関し、より詳細には医科用または歯科用材
料として、特に病的、外的理由により生じた骨や歯牙の
欠損部や空隙への充填あるいは人工補綴物を装着するた
めの骨セメントや歯科用セメントとして使用し、当該箇
所に新たに新生骨や歯牙を発生し易くし、後には生体の
骨組織、歯牙組織と一体化する、あるいは更に術後観察
が容易且つ正確に行うことができる特定の粒子径を有す
る無機質材料と有機質材料との複合体である骨、歯牙充
填用硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】外科、整形外科領域においては、交通事
故、骨腫瘍切除等、または歯科領域においては歯槽膿
漏、歯槽骨吸収、抜歯及びう蝕歯削徐等により、骨や歯
牙に欠損あるいは空隙が生じる。このような骨欠損部あ
るいは空隙部の充填、補綴のために自家骨、高分子、金
属、セラミックス等種々の材料が使用されている。しか
しながら、自家骨では量を確保する上での問題、高分子
材料であればPMMA(ポリメチルメタクリレート)に見
られるような生体との不適合性といった問題がある。ま
た、セラミックス材料のうち、アパタイトは優れた生体
親和性を与えるものの、生体充填後の漏出の問題があ
る。
【0003】一方、歯科用セメント材料は、補綴物の合
着材として使用されている他、充填材や裏材としても使
用されており、歯科分野の修復材料としては様々な歯科
用セメント材料が開発されている。この内、グラスアイ
オノマーセメントは良く知られ、その優れた機械的性質
から多用されているが、構成成分はアルミナやシリカあ
るいはフッ化物等であり、生体親和性には問題がある。
こうしたことを背景に、最近ではアパタイト系の結晶性
粉末をベースにしたセメントも開発されているが、硬化
液との反応性が十分ではないために、破砕抗力を始めと
した機械的な性質が低いという問題もある。
【0004】これらの実情に鑑み、本発明者らは、特開
平4−329961号公報、特開平4−329960号公報、特開平
5−23389号公報及び特開平5−23390号公報を代表とし
たリン酸カルシウム系、リン酸ストロンチウム系、ある
いはリン酸ストロンチウムカルシウム系失透ガラス粉末
と、練和液あるいはラジカル重合性不飽和化合物及び重
合開始剤からなる医科用または歯科用硬化性組成物を既
に提案している。これらの公報に記載された発明の重要
な要素は、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、
あるいはリン酸ストロンチウムカルシウム系の失透ガラ
ス粉末を用いることであり、このことにより生体親和
性、硬化体の機械的性質の両者に優れた医科用または歯
科用硬化性組成物を提供することが可能となった。
【0005】しかしながら、これらの発明のような複合
修復材料では、上記のような性能に加えて更に新たな性
能が要求される。例えば優れた機械的性質を得るために
できるだけ無機質材料の含有率を高くするが、その状態
で骨や歯牙の欠損あるいは空隙の内部まで行き渡る流動
性と形態付与を容易にする必要がある。即ち、優れた生
体親和性、硬化体の機械的性質を得るだけでなく、操作
性の良好な修復材料が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、補綴物や充填材として要求される十分な硬化性、強
度を有すると共に生体親和性に優れた医科用または歯科
用硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明の医科用または歯科用硬化性組成物とは、アパタイ
ト結晶及び/またはリン酸カルシウム結晶を含むリン酸
カルシウム系失透ガラス粉末、ストロンチウムアパタイ
ト結晶及び/またはリン酸ストロンチウム結晶を含むリ
ン酸ストロンチウム系失透ガラス粉末またはストロンチ
ウム固溶アパタイト結晶を含むリン酸ストロンチウムカ
ルシウム系失透ガラス粉末と、練和液またはラジカル重
合性不飽和化合物及び重合開始剤からなる医科用または
歯科用硬化性組成物のうち、前記失透ガラス粉末の粒度
が、ある特定の範囲内にあることを要旨とするものであ
る。
【0008】本発明者らは、上記要求を満足する医科用
または歯科用硬化性組成物の開発を目指し、種々研究を
重ねた結果、アパタイト結晶及び/またはリン酸カルシ
ウム結晶を含むリン酸カルシウム系失透ガラス粉末、ス
トロンチウムアパタイト結晶及び/またはリン酸ストロ
ンチウム結晶を含むリン酸ストロンチウム系失透ガラス
粉末またはストロンチウム固溶アパタイト結晶を含むリ
ン酸ストロンチウムカルシウム系失透ガラス粉末と、練
和液またはラジカル重合性不飽和化合物及び重合開始剤
からなる医科用または歯科用硬化性組成物において、前
記失透ガラス粉末の粒度を20μm以上の粒子10体積
%以下、及び1μm以下の粒子10体積%以下とするこ
とによって、生体親和性に優れ、十分な硬化性、強度を
有すると共に、操作性に優れた医科用または歯科用硬化
性組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに
至った。
【0009】
【作用】以下に本発明について具体的に説明する。本発
明のリン酸カルシウム系失透ガラス粉末は、アパタイト
結晶及び/またはリン酸カルシウム結晶を、リン酸スト
ロンチウム系失透ガラス粉末は、ストロンチウムアパタ
イト結晶及び/またはリン酸ストロンチウム結晶を、リ
ン酸ストロンチウムカルシウム系失透ガラス粉末は、ス
トロンチウム固溶アパタイト結晶をそれぞれ含有したも
のでなければならない。これらの結晶は骨の主成分に極
めて近似しており、骨の形成を促進させるものである。
これは単にガラスに上記結晶を添加、混合したものでは
なく、結晶安定化した結晶相がガラス中に分散した所謂
失透ガラスでなければならない。この結晶相は生体親和
性を付与する上で不可欠なものである。更に、上記結晶
にガラスが共存することも必須条件である。このガラス
は優れた硬化性を提供するのに不可欠なものであって、
上記の結晶相とガラスが共存した所謂失透ガラスにおい
て、生体親和性、硬化性の点で優れた硬化性組成物とな
る。この失透ガラスとは、溶融したガラスを再加熱して
結晶化させたり、溶融したガラスを徐冷して結晶化させ
るのではなく、溶融したガラス生成物を急冷して、その
一部を結晶化させる点に特徴がある。すなわち、本発明
に使用する失透ガラスは溶融状態にあるガラスを急冷し
て失透させるために、種々の練和液に対する反応性が高
められた活性度の高い粉末を得ることができるのであ
る。従って、失透させるための原料の選択や調合は極め
て重要である。
【0010】本発明の失透ガラスの原料組成は、例えば
リン酸カルシウム系失透ガラスでは、次のように表すこ
とができる: CaO: 20〜60重量% P25: 5〜32重量% SiO2: 15〜30重量% Al23: 3〜37重量% F2: 1〜10重量% MgO等: 0〜2重量%
【0011】ここで、CaOは水酸化アパタイトを主体
としたリン酸カルシウム系結晶の生成、すなわち生体親
和性を発現させるために不可欠なものであるが、多量に
配合した場合には全体に占めるガラスの割合が少なくな
る、すなわちガラス強度に劣るものになるので20〜6
0重量%が好ましい。
【0012】また、P25はリン酸カルシウム系結晶の
生成に不可欠なものであるが、多量に配合した場合に
は、化学的な耐久性が低下するので5〜32重量%が適
当である。
【0013】また、SiO2は透明性の付与に不可欠で
あるが、多量に配合した場合には失透ガラス中に占める
リン酸カルシウム系結晶の割合が低下する、すなわち生
体親和性を低下せしめるので15〜30重量%が好まし
い。
【0014】また、Al23はガラス強度並びに生体親
和性の両面から、3〜37重量%が好ましい。
【0015】F2は、融剤として効果がある一方、歯科
領域ではフッ素の徐放効果が見られる。しかしながら、
その配合量が増加した場合、機械的強度や化学的耐久性
が低下するために、適正な配合量は1〜10重量%であ
る。
【0016】また、ガラス溶融温度の抑制や、生成する
結晶量の制御を目的に、MgO、Na2O及びB23
らなる群から選択された1種以上の成分を添加してもよ
い。しかし、多量に添加した場合は、リン酸カルシウム
系結晶の晶出を極度に抑制し、生体親和性の低下を招
く。従って、これらの成分の添加量は2重量%以下であ
る。
【0017】続いて、本発明の失透ガラスの原料組成
が、リン酸ストロンチウム系失透ガラスまたはリン酸ス
トロンチウムカルシウム系失透ガラスでは、以下のよう
に表すことができる: SrO: 3〜55重量% CaO: 0〜40重量% P25: 5〜32重量% SiO2: 15〜30重量% Al23: 3〜37重量% F2: 1〜10重量% MgO等: 0〜2重量%
【0018】SrOは失透ガラス中において、ストロン
チウムアパタイト[Sr10(PO4)6OH2]またはリン
酸ストロンチウム結晶またはストロンチウム固溶アパタ
イト[SrxCa10-x(PO4)6OH2]といった生体硬組
織と同様の構造をもつアパタイトを形成する、すなわち
生体親和性を高めるために効果を発現すると共に、X線
造影性を付与する成分として重要である。X線造影性及
びガラス成分の生成量の両者から、その適正配合量は3
〜55重量%である。
【0019】また、CaOは0〜40重量%が適当であ
るが、0重量%の場合には失透ガラス中に生成する結晶
相としては純粋なストロンチウムアパタイトもしくはリ
ン酸ストロンチウム結晶である。CaOが配合された場
合には、ストロンチウム固溶アパタイト結晶を生成す
る。この場合は固溶体であり、SrOとCaOの量比に
よって連続的に構造を変化させたアパタイト結晶を与え
る。両者の配合比は目的とする結晶相、あるいはX線造
影度によって任意に変化させることができるが、両者の
合量はガラスの生成量を考慮して60重量%以下が好ま
しい。
【0020】また、P25、SiO2、Al23、F2
びMgO等の添加剤成分の適正配合量は上述のリン酸カ
ルシウム系失透ガラスと同様の理由により、上記の配合
量が適当である。
【0021】上述の配合に従って調製したリン酸カルシ
ウム系失透ガラス、リン酸ストロンチウム系失透ガラス
またはリン酸ストロンチウムカルシウム系失透ガラス
は、目的である医科用または歯科用材料とするために、
粉末化する。ここで、これらの失透ガラス粉末の粒度
は、以下の条件を満たすことが不可欠である。すなわ
ち、20μm以上の粒子が10体積%以下であり、且つ
1μm以下の粒子が10体積%以下であることの両者を
満足しなければならない。
【0022】本発明の材料は、以下にも述べるように、
練和液や硬化液により硬化させ、医科用または歯科用硬
化性組成物として使用する。すなわち、硬化性組成物と
するためには、失透ガラス粉末と練和液または硬化液と
の練和が必要である。この時、練和し易く、且つその稠
度を適当に保つことは、均質性の高い硬化性組成物を得
る上で重要な課題である。また、機械的性質に優れた硬
化性組成物を得るためには、粉末の充填量を如何に上げ
るかが重要なポイントとなる。すなわち、少量の練和液
で、練和し易い粉末とすることが重要である。このため
には、粉末の粒度が大きく影響する。すなわち、20μ
m以上の粗大粉末が多量に含まれる場合には、粉末の充
填性が低下するので、練和性に劣るものとなる。特に、
歯科用セメントとして用いる場合には、JIS T−6602の
歯科用リン酸亜鉛セメントにあるように、被膜厚さは
0.03mm以下とされており、このような観点からも
粗大粒子の混在は好ましくない。このため、20μm以
上の粒子は10体積%以下とする必要がある。一方、特
に、1μm以下の微細粒子も、練和作業性に大きく影響
し、これが多量に含まれる場合には、適当な練和物の稠
度とするために粉末充填量は上げられない。特に、練和
液として以下に述べる水溶性高分子溶液や無機・有機酸
水溶液、または不飽和カルボン酸の重合体水溶液等を使
用し、失透ガラス粉末とこれらの練和液との間で化学反
応を生じせしめ、硬化させる場合には、反応速度が高ま
り、練和作業時間が十分に確保されないといった問題も
生じる。このことから、粉末の充填性を高め、且つ練和
時の作業性を向上させるためには、1μm以下の粒子も
10体積%以下とする必要があるのである。
【0023】また、粉末の充填量を上げて、更に高強度
化を図りたい場合や、同一粉液比における練和物の稠度
を更に上げたい場合には、20μm以上の粒子並びに1
μm以下の粒子はそれぞれ5体積%以下とすることが更
に好ましい。
【0024】上記に述べた粒度組成にするには、粉砕さ
れた粒子を何らかの方法で分級する必要がある。ここで
は風力分級を始め、フルイによる分級や湿式分級など、
様々な分級手法が使えるが、湿式分級では、分級後のス
ラリーの乾燥や、乾燥物の解砕工程が必要となり、更に
は、乾燥中における粒子の凝集等が生じる可能性もある
ため、なるべく乾式分級を採択することが好ましい。
【0025】続いて、練和液としては、使用目的に応じ
て、生理食塩水、水溶性高分子溶液、無機酸水溶液、有
機酸水溶液、不飽和カルボン酸の重合体水溶液及びこれ
らの混合物からなる群から選択される1種が好適であ
る。例えば、歯科用セメントへの応用を想定した場合、
短時間での強度の発現が要求されるため、20〜80%
濃度の不飽和カルボン酸の重合体水溶液が好適であり、
より好ましくは、40〜60%濃度の水溶液に、硬化特
性を調節する目的で、20%濃度以下の無機酸あるいは
有機酸が添加される。
【0026】一方、骨欠損部あるいは歯牙根管部充填材
として使用する場合には、酸やアルカリによる刺激のな
いものとして、生理食塩水が推奨されるが、流動性、粘
性を付与するために、適量のCMC(カルボキシメチル
セルロースナトリウム)やポリエチレングリコール等の
水溶性高分子を添加することも有効である。
【0027】また、ラジカル重合性不飽和化合物と重合
開始剤からなる練和液を用いて、硬化性組成物とする場
合、ラジカル重合性不飽和化合物は特に限定されず、公
知のものが用いられる。具体的には、(メタ)アクリル酸
エステルすなわちメチル(メタ)アクリレート、エチル
(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、2
−2'−ビス[(メタ)アクリロキシ−エトキシフェニ
ル]プロパン、2−2'−ビス[γ−(メタ)アクリロキ
シ−β−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、ネ
オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、モノ、
ジ、トリまたはテトラエチレングリコールジ(メタ)アク
リレートなどが挙げられる。
【0028】更に、生体硬組成との接着性を付与するた
めに、分子内に−COOH基、 を有するビニル系モノマーも好適である。これらのモノ
マーは単独で、または2種以上を混合して用いられる。
【0029】重合開始剤は特に限定されず、通常用いら
れる有機過酸化物の内からジベンゾイルパーオキサイ
ド、ジ−p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジラウ
リルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイドが好ま
しく用いられる。また、アミン化合物はアリール基にア
ミノ基を結合した第2級、または第3級アミンとして
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トル
イジン、N−メチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリ
ン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N
−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メ
チルアニリン、N−メチル−p−トルイジン等が好まし
く用いられる。また、これらのアミン化合物は塩酸、酢
酸、リン酸などの塩化合物になっていてもよい。
【0030】更に、光重合の触媒系としては、380〜
500nmの紫外可視領域における吸収特性をもつα−
ジケトンのなかでもカンファーキノン、ベンジル、ジア
セチル、フェナントラキノン、アセナフテンキノン、
2,3−ペンタジオン、2,3−、3,4−ヘプタンジオ
ンまたは2,3−、3,4−もしくは4,5−オクタンジ
オン等が特に好ましい。また、還元剤としては、前述の
アミン化合物の他、ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸イソアミル
等が好適である。
【0031】なお、生じた結晶中に水酸化アパタイトや
リン酸カルシウム結晶、またはストロンチウムアパタイ
トやリン酸ストロンチウム結晶あるいはストロンチウム
固溶アパタイトの他に、ウォラストナイト結晶(CaO
・SiO2)、ジオプサイト結晶(MgO・CaO・2S
iO2)、フォルステライト結晶(2MgO・SiO2)な
どのアルカリ土類金属珪酸塩結晶をわずかながら含有す
ることがあり得るが、いずれも本発明における失透ガラ
スに包含される。
【0032】
【実施例】以後、本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定するものではな
く、前後の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本
発明の技術的範囲に含まれるものである。なお、下記実
施例中の化合物の略号は以下の意である。Bis−GM
A:2,2−ビス[4−(3−メタクリロキシ)−2−ヒ
ドロキシプロポキシフェニル]プロパン;3G:トリエ
チレングリコールジメタクリレート;BHT:2,6−
ジターシャリーブチル−p−クレゾール。
【0033】実施例1 CaO:32.0重量%、P25:9.0重量%、SiO
2:24.5重量%、Al23:29.0重量%、F2
5.0重量%、MgO:0.5重量%となるようにガラス
原料を調合し、1600℃で2時間溶融させた後、空中
放冷させて失透ガラスを得た。これをポットミルにて微
粉化した。粉砕物は更に風力分級機により、分級点を2
0μm及び2μmとして、粗粉及び微粉をカットした。
分級後の失透ガラス粉末は、平均粒子径が8.0μm、
20μm以上の粒子の存在割合は3.5体積%、1μm
以下の粒子の存在割合は3.3体積%であった。得られ
た失透ガラス粉末についてはX線回折法によるとガラス
相と結晶相が共存し、結晶は水酸化アパタイトであり、
ガラス相と水酸化アパタイトは7:3であった。次に、
得られた失透ガラス粉末にイタコン酸(40重量%)とア
クリル酸(60重量%)から製造された平均分子量約15
0000のポリカルボン酸40重量%と酒石酸10重量
%及び水50重量%からなる練和液を重量比で3.0(粉
末):1(液)の割合で加え、「JIS T−6602」に準じてテ
ストしたところ、硬化時間約4分、24時間後の圧縮強
度が2280kg/cm2のセメント硬化物を得た。
【0034】実施例2 実施例1で調製した失透ガラス粉末(分級処理品)に対し
て、常法によりγ−メタクリロキシプロピルトリメトキ
シシランで表面処理した。この粉末の3gに対して、B
is−GMA70重量部、3G30重量部、カンファー
キノン0.3重量部及び4−(N,N−ジメチルアミノ)安
息香酸イソアミル0.6重量部、BHT0.15重量部か
らなるビニルモノマー混合物0.5gを遮光下で混和し
てペーストを調製した。歯科用光重合器(サンキュアラ
イト)にて60秒間光照射して物性を調べたところ、硬
化深度5.0mm、圧縮強度4280kg/cm2、表面
硬度Hk70であった。
【0035】比較例1 実施例1と同様の組成の失透ガラスを得た。これをポッ
トミルにて微粉化した。粉砕後の失透ガラス粉末は、平
均粒子径が3.0μm、20μm以上の粒子の存在割合
は5.8体積%、1μm以下の粒子の存在割合は16.7
体積%であった。得られた失透ガラス粉末についてはX
線回折法によるとガラス相と結晶相が共存し、結晶は水
酸化アパタイトであり、ガラス相と水酸化アパタイトは
7:3であった。次に、得られた失透ガラス粉末に実施
例1と同様の練和液を重量比で3.0(粉末):1(液)の
割合で加え練和したところ、練和物の粘性は極めて高
く、殆ど練和できない状態であり、満足な形状の供試体
すら作製できなかった。続いて、同粉末と練和液を重量
比で1.8(粉末):1(液)の割合で加え練和したとこ
ろ、練和物の粘性は実施例1のものとほぼ等しくなっ
た。その後、実施例1と同様のテストをしたところ、硬
化時間約4分30秒、24時間後の圧縮強度が1810
kg/cm2のセメント硬化物を得た。
【0036】比較例2 実施例1と同様の組成の失透ガラスを得た。これをポッ
トミルにて微粉化した。粉砕後の失透ガラス粉末は、平
均粒子径が10.6μm、20μm以上の粒子の存在割
合は19.0体積%、1μm以下の粒子の存在割合は5.
1体積%であった。得られた失透ガラス粉末については
X線回折法によるとガラス相と結晶相が共存し、結晶は
水酸化アパタイトであり、ガラス相と水酸化アパタイト
は7:3であった。次に、得られた失透ガラス粉末に実
施例1と同様の練和液を重量比で3.0(粉末):1(液)
の割合で加え練和したところ、練和物は流動性があり、
チキソトロピー性がなく、形態付与ができなかった。
【0037】比較例3 比較例1で使用した分級処理していない失透ガラス粉末
に対して、実施例2と同様のシラン処理を施した。この
粉末3gに対して、実施例2と同様のビニルモノマー
0.5gを遮光下で混和してペーストを調製しようとし
たが、ペーストの粘性は極端に高く、均質な混和はでき
なかった。続いて、同粉末3gに対して同ビニルモノマ
ー1gを遮光下で混和したところ、実施例2と同様な均
質なペーストが調製できた。その後、歯科用光重合器
(サンキュアライト)にて60秒間光照射して物性を調べ
たところ、硬化深度5.0mm、圧縮強度3540kg
/cm2、表面硬度Hk60であった。
【0038】実施例3 SrO:36.2重量%、P25:12.2重量%、Si
2:23.4重量%、Al23:22.7重量%、F2
5.0重量%、MgO:0.5重量%となるようにガラス
原料を調合し、1600℃で2時間溶融させた後、水中
急冷させて失透ガラスを得た。得られた失透ガラス粉末
についてはX線回折法によるとストロンチウムアパタイ
ト結晶、リン酸三ストロンチウム結晶及び非晶質相を確
認した。次に、得られた失透ガラス粉末をポットミルに
て微粉化した。粉砕物は、更に、風力分級機により、分
級点を17μm及び1μmとして、粗粉及び微粉をカッ
トした。分級後の失透ガラス粉末は、平均粒子径が6.
9μm、20μm以上の粒子の存在割合は1.9体積
%、1μm以下の粒子の存在割合は7.3体積%であっ
た。次に、得られた失透ガラス粉末にイタコン酸(40
重量%)とアクリル酸(60重量%)から製造された平均
分子量約100000のポリカルボン酸40重量%と酒
石酸10重量%及び水50重量%からなる練和液を重量
比で3.0(粉末):1(液)の割合で加え、「JIS T−660
2」に準じてテストしたところ、硬化時間約4分30
秒、24時間後の圧縮強度が1960kg/cm2のセ
メント硬化物を得た。
【0039】比較例4 実施例3と同様の組成の失透ガラスを得た。これをポッ
トミルにて微粉化した。粉砕後の失透ガラス粉末は、平
均粒子径が3.2μm、20μm以上の粒子の存在割合
は3.2体積%、1μm以下の粒子の存在割合は21.5
体積%であった。次に、得られた失透ガラス粉末に実施
例3と同様の練和液を重量比で3.0(粉末):1(液)の
割合で加え練和したところ、練和物の粘性は極めて高
く、殆ど練和できない形態であり、満足な形状の供試体
すら作製できなかった。続いて、同粉末と練和液を重量
比で1.8(粉末):1(液)の割合で加え練和したとこ
ろ、練和物の粘性は実施例3のものとほぼ等しくなっ
た。その後、実施例3と同様のテストをしたところ、硬
化時間約4分30秒、24時間後の圧縮強度が1420
kg/cm2のセメント硬化物を得た。
【0040】実施例4 SrO:27.8重量%、CaO:12.0重量%、P2
5:7.0重量%、SiO2:22.0重量%、Al
23:26.4重量%、F2:4.4重量%、MgO:0.
5重量%となるようにガラス原料を調合し、1600℃
で2時間溶融させた後、空中急冷させて失透ガラスを得
た。得られた失透ガラスについてはX線回折法によると
ガラス相と結晶相が共存し、結晶はストロンチウム固溶
アパタイトであり、ガラス相と結晶相は7:3であっ
た。次に、得られた失透ガラス粉末をポットミルにて微
粉化した。粉砕物は、更に、風力分級機により、分級点
を22μm及び2μmとして、粗粉及び微粉をカットし
た。分級後の失透ガラス粉末は、平均粒子径が9.3μ
m、20μm以上の粒子の存在割合は7.5体積%、1
μm以下の粒子の存在割合は1.5体積%であった。実
施例2と同様に、シラン処理した失透ガラス粉末3gに
対して、Bis−GMA70重量部、3G30重量部、
カンファーキノン0.3重量部、及び4−(N,N−ジメ
チルアミノ)安息香酸イソアミル0.8重量部、BHT
0.15重量部からなるビニルモノマー混合物0.5gを
遮光下で混和してペーストを調製した。歯科用光重合器
(サンキュアライト)にて60秒間光照射して物性を調べ
たところ、硬化深度5.0mm、圧縮強度4200kg
/cm2、表面硬度Hk67、X線造影性は純アルミ板
5mm相当であった。
【0041】比較例5 実施例4と同様の組成の失透ガラスを得た。これをポッ
トミルにて微粉化した。粉砕後の失透ガラス粉末は、平
均粒子径が7.5μm、20μm以上の粒子の存在割合
は12.8体積%、1μm以下の粒子の存在割合は10.
4体積%であった。続いて、この失透ガラス粉末に対し
て、実施例4と同様のシラン処理を施した。この粉末の
3gに対して、実施例4と同様のビニルモノマー0.5
gを遮光下で混和してペーストを調製しようとしたが、
ペーストの粘性は極端に高く、均質な混和はできなかっ
た。続いて、同粉末3gに対して同ビニルモノマー0.
7gを遮光下で混和したところ、実施例4と同様な均質
なペーストが調製できた。その後、歯科用光重合器(サ
ンキュアライト)にて60秒間光照射して物性を調べた
ところ、硬化深度4.5mm、圧縮強度3460kg/
cm2、表面硬度Hk52、X線造影性は純アルミ板5
mm相当であった。以上の結果からも明らかであるが、
本発明で規定する要件を満足する医科用または歯科用硬
化性組成物は、極めて良好な硬化特性を示すことが理解
される。
【0042】
【発明の効果】以上の結果から明らかな如く、本発明に
よれば既述の構成を採用することによって、硬化性に優
れ、極めて高強度の新しい医科用または歯科用硬化性組
成物を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 夕田 貞之 栃木県大田原市下石上1382番11 三金工業 株式会社那須研究所内 (72)発明者 織田 直樹 栃木県大田原市下石上1382番11 三金工業 株式会社那須研究所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アパタイト結晶及び/またはリン酸カル
    シウム結晶を含むリン酸カルシウム系失透ガラス粉末、
    ストロンチウムアパタイト結晶及び/またはリン酸スト
    ロンチウム結晶を含むリン酸ストロンチウム系失透ガラ
    ス粉末またはストロンチウム固溶アパタイト結晶を含む
    リン酸ストロンチウムカルシウム系失透ガラス粉末と、
    練和液またはラジカル重合性不飽和化合物及び重合開始
    剤とからなる医科用または歯科用硬化性組成物におい
    て、前記失透ガラス粉末の粒度が20μm以上の粒子1
    0体積%以下、及び1μm以下の粒子10体積%以下で
    あることを特徴とする医科用または歯科用硬化性組成
    物。
  2. 【請求項2】 リン酸カルシウム系失透ガラス粉末がC
    aO、P25、Al23、SiO2及びF2からなる必須
    成分、またはこれら必須成分とMgO、Na2O及びB2
    3からなる群から選択された1種以上の成分を溶融
    し、これを急冷して失透させたものである請求項1記載
    の組成物。
  3. 【請求項3】 リン酸ストロンチウム系失透ガラス粉末
    が、SrO、P25、Al23、SiO2及びF2からな
    る必須成分、またはこれら必須成分とMgO、Na2
    及びB23からなる群から選択された1種以上の成分を
    溶融し、これを急冷して失透させたものである請求項1
    記載の組成物。
  4. 【請求項4】 リン酸ストロンチウムカルシウム系失透
    ガラス粉末が、CaO、SrO、P25、Al23、S
    iO2及びF2からなる必須成分、またはこれら必須成分
    とMgO、Na2O及びB23からなる群から選択され
    た1種以上の成分を溶融し、これを急冷して失透させた
    ものである請求項1記載の組成物。
  5. 【請求項5】 練和液が生理食塩水、水溶性高分子溶
    液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、不飽和カルボン酸の
    重合体水溶液及びこれらの混合物からなる群から選択さ
    れた1種である請求項1記載の組成物。
  6. 【請求項6】 ラジカル重合性不飽和化合物が脂肪族及
    び芳香族(メタ)アクリル酸エステルである請求項1記載
    の組成物。
  7. 【請求項7】 重合開始剤が有機過酸化物とアミン化合
    物、またはα−ジケトンと還元剤により構成される請求
    項1記載の組成物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006241114A (ja) * 2005-03-07 2006-09-14 Tokuyama Corp 歯冠修復用光硬化性組成物
JP2009051925A (ja) * 2007-08-27 2009-03-12 Tokuyama Dental Corp 光重合開始剤
JP2010533016A (ja) * 2007-07-09 2010-10-21 サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク ストロンチウムを添加した生体活性ガラス
JP2013512933A (ja) * 2009-12-07 2013-04-18 デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. 歯科用組成物

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