JPH0724961U - 溶融金属攪拌用ランス - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 金属パイプの周囲に施工されたキャスタブル
耐火物に亀裂が生じにくく、耐久性に優れた溶融金属攪
拌用ランスを提供する。 【構成】 アンカー３の金属パイプ１の外周面からの高
さＨと、金属パイプ１の外径Ｄ₁と、キャスタブル耐火
物２が施工されたランスの外径Ｄ₂の比率を アンカーの高さＨ ：１ 金属パイプの外径Ｄ₁ ：１．７〜２．４ ランスの外径Ｄ₂ ：５．７〜８．０ とし、アンカー３の大部分を、金属パイプ１の軸心に平
行な直線上及び金属パイプ１の軸心に垂直な同一面上に
配設されることがないような態様で配設する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、溶融金属攪拌用のランスに関し、詳しくは、取鍋内の溶鋼などの 溶融金属中に不活性気体を噴出させ、その浮上力により溶融金属を攪拌する、い わゆるバブリングランスと呼ばれるランスに関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来の、溶融金属攪拌用ランスとしては、例えば、図３、図４に示すように、 例えば耐熱鋼からなり、先端側に不活性気体を噴出するための気体吹出しパイプ ４が取り付けられた金属パイプ（中芯パイプ）１の周囲にキャスタブル耐火物２ を施工したものが用いられている。そして、この溶融金属攪拌用ランスにおいて は、キャスタブル耐火物２が金属パイプ１から脱落して使用不能になることを防 止するため、金属パイプ１の外周に、Ｖ字状、Ｌ字状、Ｙ字状、ピン状、コイル 状などの種々の形状のアンカー（この従来例ではＶ字状のアンカー）３が配設さ れている。

【０００３】 ところで、上記のような、金属パイプ１にアンカー３を設けた溶融金属攪拌用 ランスにおいては、キャスタブル耐火物２の脱落防止を確実なものにするために 、アンカー３の高さＨ（金属パイプ１の外周面からアンカーの最も高い部分まで の垂直距離）、金属パイプ１の外径Ｄ₁、キャスタブル耐火物２の外径（すなわ ちランスの外径）Ｄ₂の比率は、通常、 アンカーの高さＨ ： １ 金属パイプの外径Ｄ₁ ： １．６ ランスの外径Ｄ₂ ： ５以下 とされている。

【０００４】 また、アンカーは、金属パイプの軸心に平行な直線上及び金属パイプの軸心に 垂直な同一面上に複数個配設するようにしたものが多い。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、溶融金属攪拌用ランスは、溶融金属中に挿入し、不活性気体をその先 端から噴出させ、不活性気体の浮上力により溶融金属を攪拌するものであるから 、攪拌処理を６０〜７０回（チャージ）繰り返して行うと、金属パイプの周囲に 施工されたキャスタブル耐火物が溶損するばかりでなく、亀裂が入ってキャスタ ブル耐火物が脱落したり、亀裂から溶融金属が侵入して金属パイプが溶断してし まうというような問題点がある。

【０００６】 この考案は、金属パイプの周囲に施工されたキャスタブル耐火物に亀裂が生じ にくく、耐久性に優れた溶融金属攪拌用ランスを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、考案者らは、種々の検討を行った。まず、使用後 の溶融金属攪拌用ランスについて種々解析を行ったところ、キャスタブル耐火物 にランスの軸心と平行な方向に亀裂（縦亀裂）が発生し、その亀裂から溶融金属 が侵入して金属パイプを溶かしていることが観察された。そして、この亀裂は、 金属パイプに配設されているアンカーの熱膨張に起因する熱応力により発生した ものと認められた。

【０００８】 そこで、金属パイプに取り付けられているアンカーの熱膨張に起因する熱応力 をできるだけ小さくし、かつ、効率よく分散させるとともに、熱応力をキャスタ ブル耐火物の表面に進展させないようにすることが必要であると考え、アンカー の高さ、金属パイプの外径、及びキャスタブル耐火物の外径（ランスの外径）及 びアンカーの配設位置を変えて種々の実験を行い、各寸法の比率の適正な範囲及 びアンカーの好ましい配設位置を調べた。

【０００９】 その結果、アンカーの高さ、金属パイプの外径、及びキャスタブル耐火物の外 径（ランスの外径）の比率を所定の範囲内の値に調整するとともに、アンカーの 配設位置を工夫することにより、熱応力によるキャスタブル耐火物の亀裂の発生 やキャスタブル耐火物の脱落を抑制、防止できることを知り、さらに、実験、検 討を重ねてこの考案を完成した。

【００１０】 すなわち、この考案の溶融金属攪拌用ランスは、外周に複数のアンカーを配設 した金属パイプ（中芯パイプ）の周囲にキャスタブル耐火物を施工してなる溶融 金属攪拌用ランスにおいて、アンカーの金属パイプの外周面からの高さと、金属 パイプの外径と、キャスタブル耐火物が施工されたランスの外径の比率を アンカーの高さ ： １ 金属パイプの外径 ： １．７〜２．４ ランスの外径 ： ５．７〜８．０ とし、アンカーの大部分を、金属パイプの軸心に平行な直線上及び金属パイプの 軸心に垂直な同一面上に配設されることがないような態様で配設したことを特徴 とする。

【００１１】 なお、「アンカーの大部分を、金属パイプの軸心に平行な直線上及び金属パイ プの軸心に垂直な同一面上に配設されることがないような態様で配設した」とは 、アンカーが金属パイプの外周にランダムに配設されている場合や、あるいは、 意図的に金属パイプの軸心に平行な直線上及び金属パイプの軸心に垂直な同一面 上に複数のアンカーが位置しないように配設されているような場合を意味する概 念である。

【００１２】

【作用】

アンカーの金属パイプの外周面からの高さと、金属パイプの外径と、キャスタ ブル耐火物が施工されたランスの外径の比率が アンカーの高さ ： １ 金属パイプの外径 ： １．７〜２．４ ランスの外径 ： ５．７〜８．０ に調整され（すなわち、ランス外径に対するアンカーの高さの比率が従来の溶融 金属攪拌用ランスより小さくなっている）、かつ、アンカーの大部分が、金属パ イプの軸心に平行な直線上及び金属パイプの軸心に垂直な同一面上に配設される ことがないような態様で配設されているため、金属パイプに取り付けられている アンカーの熱膨張に起因する熱応力が小さくなるとともに熱応力の特定の方向や 位置に集中することがなく、効率よく分散されるため、熱応力によるキャスタブ ル耐火物の亀裂の発生や、キャスタブル耐火物の脱落を抑制、防止して耐久性を 向上させることが可能になる。

【００１３】

【実施例】

以下、この考案の実施例を示してその特徴とするところを詳しく説明する。図 １はこの考案の一実施例にかかる溶融金属攪拌用ランスを示す図である。この実 施例の溶融金属攪拌用ランスは、図１に示すように、外周部の所定の位置にアン カー３が配設された耐熱鋼からなる金属パイプ（中芯パイプ）１と、その周囲に 施工されたキャスタブル耐火物２とを備えて構成されている。なお、金属パイプ １の下部には、不活性気体を噴出するための気体吹出しパイプ４が配設されてい る。

【００１４】 そして、この実施例の溶融金属攪拌用ランスにおいては、アンカー３の大部分 が、金属パイプ１の軸心に平行な直線上及び金属パイプ１の軸心に垂直な同一面 上に配設されることがないような態様で配設されている。なお、この実施例にお いては、表１及び表２に示すように、アンカーとして、Ｖ字状、ピン状及びＬ字 状のアンカーを用いた。

【００１５】 この実施例の溶融金属攪拌用ランス（図１）のII−II線による断面を図２に示 す。

【００１６】 また、上記実施例の溶融金属攪拌用ランスの、アンカー３の高さＨ、金属パイ プ１の外径Ｄ₁、キャスタブル耐火物２の外径（ランスの外径）Ｄ₂、ランスの長 さ、アンカー３の形状、アンカー３の配設態様は、それぞれ表１及び表２に示す 通りである。

【００１７】

【表１】

【００１８】

【表２】

【００１９】 この実施例の溶融金属攪拌用ランスを溶融金属（１５８０℃の溶鋼）の攪拌に 繰り返して使用することによりその耐用性を調べた。なお、比較のために、アン カーを規則的に配設した従来の溶融金属攪拌用ランス（比較例）を作製し、その 耐用性を調べた。

【００２０】 上記実施例と比較例の溶融金属攪拌用ランスの耐用性についての測定結果を表 １及び表２に示す。

【００２１】 表１及び表２に示すように、アンカー３の高さＨを１とした場合に、金属パイ プ１の外径Ｄ₁を１．７〜２．４、キャスタブル耐火物２の外径（ランスの外径 ）Ｄ₂を５．７〜８．０の範囲に調整するとともに、アンカー３の大部分を、金 属パイプ１の軸心に平行な直線上及び金属パイプ１の軸心に垂直な同一面上に配 設されることがないような態様で配設したこの考案の実施例にかかる溶融金属攪 拌用ランスにおいては、９０回（チャージ）以上の耐用性が得られていることが わかる。

【００２２】 なお、上記実施例では、アンカーとしてＶ字状、ピン状、Ｌ字状のアンカーを 用いた場合について説明したが、アンカーはこれらに限られるものではなく、Ｙ 字状、螺旋状その他の種々の形状のアンカーを用いることが可能であり、また、 異なる形状のアンカーを混ぜ合わせて用いることも可能である。

【００２３】 なお、この考案は、その他の点においても上記実施例に限定されるものではな く、アンカーの具体的な形状、配設位置、配設個数、金属パイプ（中芯パイプ） の外径と長さの比率や細部の構造、キャスタブル耐火物の種類などに関し、この 考案の要旨の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。

【００２４】

【考案の効果】

上述のように、この考案の溶融金属攪拌用ランスは、アンカーの高さと、金属 パイプの外径と、キャスタブル耐火物が施工されたランスの外径の比率を アンカーの高さ ：１ 金属パイプの外径 ：１．７〜２．４ ランスの外径 ：５．７〜８．０ とし、アンカーの大部分を、金属パイプの軸心に平行な直線上及び金属パイプの 軸心に垂直な同一面上に配設されることがないような態様で配設するようにして いるので、熱応力によるキャスタブル耐火物の亀裂の発生や、キャスタブル耐火 物の脱落を抑制、防止して耐久性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１はこの考案の一実施例にかかる溶融金属攪
拌用ランスを示す側面図である。

【図２】図１のII−II線による断面を模式的に示す図で
ある。

【図３】従来の溶融金属攪拌用ランスを示す側面図であ
る。

【図４】図３のIV−IV線による断面を模式的に示す図で
ある。

【符号の説明】

１ 金属パイプ（中芯パイプ） ２ キャスタブル耐火物 ３ アンカー ４ 気体吹出しパイプ Ｄ₁ 金属パイプの外径 Ｄ₂ ランスの外径 Ｈ アンカーの高さ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 外周に複数のアンカーを配設した金属パ
   イプ（中芯パイプ）の周囲にキャスタブル耐火物を施工
   してなる溶融金属攪拌用ランスにおいて、 アンカーの金属パイプの外周面からの高さと、金属パイ
   プの外径と、キャスタブル耐火物が施工されたランスの
   外径の比率を アンカーの高さ ： １ 金属パイプの外径 ： １．７〜２．４ ランスの外径 ： ５．７〜８．０ とし、アンカーの大部分を、金属パイプの軸心に平行な
   直線上及び金属パイプの軸心に垂直な同一面上に配設さ
   れることがないような態様で配設したことを特徴とする
   溶融金属攪拌用ランス。