JPH07248779A - 未知の伝達系の応答を抑圧する制御装置 - Google Patents

未知の伝達系の応答を抑圧する制御装置

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JPH07248779A
JPH07248779A JP6065646A JP6564694A JPH07248779A JP H07248779 A JPH07248779 A JP H07248779A JP 6065646 A JP6065646 A JP 6065646A JP 6564694 A JP6564694 A JP 6564694A JP H07248779 A JPH07248779 A JP H07248779A
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JP
Japan
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noise
transmission system
acoustic
transfer system
feedback
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Application number
JP6065646A
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English (en)
Inventor
Yoshinobu Kajikawa
嘉延 梶川
Kensaku Fujii
健作 藤井
Toshiro Oga
寿郎 大賀
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Fujitsu Ltd
Original Assignee
Fujitsu Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 例えば能動騒音制御装置などのような、特性が未知な伝
達系を伝搬する信号(応答)を抑圧する制御装置に関
し、回り込み防止フィルタ等の帰還制御フィルタを用い
ることにより生じる種々の問題を解消しつつ、帰還伝達
系の影響を低減できるようにすることを目的とし、騒音
制御フィルタ4で合成した疑似騒音で音響伝達系を伝
達してきた騒音を低減する能動騒音制御装置において、
音響伝達系の伝達関数をh、音響伝達系を逆に辿る
音響帰還伝達系の伝達関数をbとするとき、騒音制御
フィルタ4は、その伝達関数Hが音響伝達系と音響帰
還伝達系の合成伝達系の伝達関数h/(1−hb)を
推定できるように、タップ数を可能な範囲で長くしたこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば能動騒音制御装
置(ANCS:アクティブ・ノイズ・コントロール・シ
ステム)などのような、特性が未知な伝達系を伝搬する
信号(応答)を、未知の伝達系を模擬した信号伝達系で
合成された信号(疑似応答)によって打ち消す制御装置
に関し、さらに詳しくは、上記伝達系が帰還伝達系を持
つ場合にその影響を抑圧する装置に関するものである。
【0002】図2は本発明が適用される装置の構成例で
ある。この装置は能動騒音制御装置と呼ばれるもので、
例えば情報処理装置の換気ファンなどで発生した騒音を
低減するために用いられる。能動騒音制御の原理は簡単
であり、換気ファン等で発生した騒音をダクト内を伝搬
させ、その間にこの騒音と同振幅・逆位相の疑似騒音を
制御装置内で合成し、この疑似騒音をダクト内を伝搬し
てきた騒音に対して重ね合わせることにより騒音を相殺
して低減するものである。
【0003】その構成は、騒音源の近傍で騒音を収集す
る騒音収集用マイクロホン1、ダクト内の音響伝達系
を伝搬してきた騒音を相殺する疑似騒音を放射する二次
音源スピーカ2、相殺された騒音の残差ej を収集する
誤差収集用マイクロホン3、騒音を相殺する疑似騒音を
合成する信号処理部からなる。
【0004】信号処理部は、騒音収集用マイクロホン1
で収集した騒音に基づいてその騒音と同振幅・逆位相の
疑似騒音を合成する騒音制御フィルタ40、誤差収集用
マイクロホン3での残差ej が最小になるように騒音制
御フィルタ40のタップ係数を修正する係数更新部6
0、誤差収集用マイクロホン3から係数更新部60への
結合伝達系を模擬するCフィルタ5からなる。
【0005】いま、誤差収集用マイクロホン3の位置で
の騒音 gj =Σhj (i) Xj (i) ・・・(1) 但し、j:時刻 Σ:i=1〜Iの加算 hj (i) :騒音収集用マイクロホン1から誤差収集用マ
イクロホ3に至る音響伝達系のインパルス応答 Xj (i) :騒音収集用マイクロホン1の位置での騒音 は、スピーカ2から放射される騒音制御フィルタ4の出
力(疑似騒音) Gj =ΣHj (i) Xj (i) ・・・(2) 但し、Hj (i) :騒音制御フィルタ40の係数 によって相殺される。
【0006】この騒音制御フィルタ40の係数は、相殺
された騒音の誤差収集用マイクロホン3での残差 ej =gj −Gj ・・・(3) を最小にするように、係数更新部60によって補正され
る。
【0007】ここで問題になるのは、二次音源スピーカ
2から放射された疑似騒音Gj が、ダクト内の音響伝達
系を逆に辿る音響帰還伝達系を通って騒音収集用マ
イクロホン1に帰還することである。この音響帰還伝達
系により騒音収集用マイクロホン1に収集される信号
は Sj =Xj +Fj ・・・(4) Fj =Σbj (i) Gj (i) 但し、bj (i) :二次音源スピーカ2から騒音収集用マ
イクロホン1に至る音響伝達系のインパルス応答 となり、(2)式は次式 Gj =ΣHj (i) Sj (i) ・・・(5) のように書き換えられる。この(5)式に(4)式に代
入すると、 Gj =ΣHj (i) Xj (i) +ΣHj (i) Fj (i) ・・・(6) となる。
【0008】いま、音響伝達系を伝搬した騒音gj
(6)式で表される疑似騒音Gj によって相殺されるわ
けであるが、同式右辺第2項ΣHj (i) Fj (i) が存在
するため、(3)式の誤差ej はこの(6)式右辺第2
項の成分だけ大きくなってしまい、十分な騒音低減量が
得られない。このため、この音響帰還伝達系の影響を
抑圧する技術が強く望まれている。
【0009】
【従来の技術】このような二次音源スピーカ2から騒音
収集用マイクロホン1への音響帰還の影響を抑圧する従
来技術としては、図10に示されるようなシステムが存
在する。このシステムには、二次音源スピーカ2から騒
音収集用マイクロホン1に至る音響帰還伝達系を模擬
する回り込み防止フィルタ7が組み込まれている。この
場合、騒音収集用マイクロホン1に収集される信号を表
す(4)式は、 Sj =Xj +Σbj (i) Gj (i) −ΣBj (i) Gj (i) ・・・(7) 但し、Bj (i) :回り込み防止フィルタ7の係数 となる。
【0010】いま、 Δbj(i) =bj (i) −Bj (i) ・・・(8) とおくと、(6)式は次式 Sj =Xj +ΣΔbj(i) Gj (i) ・・・(9) のように書き換えられる。この(9)式から、Δbj(i)
を小さくすれば(すなわち、回り込み防止フィルタ7が
音響帰還伝達系を精度よく推定すれば)、(9)式の
第2項は無視することができ、(5)式は(2)式と同
等になり、音響帰還伝達系の影響を抑圧することがで
きる。
【0011】このシステムは、回り込み防止フィルタ7
が音響帰還伝達系を精度よく推定できていることが前提
条件になっている。現在のところ、回り込み防止フィル
タ7の推定方法には次の二通りがある。
【0012】第1の方法は図11に示されるような事前
学習法である。この事前学習法では、参照信号(白色雑
音)源8を用意し、能動騒音制御装置を稼働する前に、
稼働中に疑似騒音を放射する二次音源スピーカ2から参
照信号を放射すると共に回り込み防止フィルタ7にも入
力し、音響帰還伝達系を伝搬した参照信号と回り込み
防止フィルタ7を通った参照信号の誤差が最小となるよ
うに係数更新部9で回り込み防止フィルタ7の係数更新
をすることにより、回り込み防止フィルタ7で音響帰還
伝達系を推定する。本方法では、回り込み防止フィル
タ7の係数は装置稼働後は固定である。
【0013】第2の方法は図12に示されるような同時
学習法である。この事前学習法では、参照信号源8と裏
フィルタ10を用意し、能動騒音制御装置を稼働させた
ままの状態で、参照信号源8からの参照信号をスピーカ
2で疑似騒音に混在させて放射させると共にこの裏フィ
ルタ10にも入力し、騒音収集用マイクロホン1で収集
した信号と裏フィルタ10の出力との差分が最小となる
ように係数更新部11で裏フィルタ10の係数を修正す
る。これにより、裏フィルタ10によりバックグラウン
ドで音響帰還伝達系の推定を行うことができ、その結
果を適宜、回り込み防止フィルタ7にコピーする。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】前者の事前学習法の問
題点は、システム稼働前とシステム稼働中とでは音響帰
還伝達系の伝達特性が変化することである。そのた
め、事前学習で推定を行うと、装置稼働中におけるΔbj
(i) は無視できない大きさとなり、音響帰還の影響を抑
圧することができない。
【0015】また、仮にΔbj(i) を小さくすることがで
きたとしても、音響帰還伝達系は周囲環境等によって
時々刻々変化するため、本方法では回り込み防止フィル
タ7の係数が固定なので、その経時変化に追従できな
い。
【0016】後者の同時学習法は、システム稼働中に推
定しているため、事前学習法のような問題はないが、参
照信号を疑似騒音に混在させて放射するため、参照信号
からみれば疑似騒音は雑音となるから、S/Nのかなり
悪い状態で推定を行うことになる。S/Nを上げようと
して参照信号の混在率を多くすると(参照信号のパワー
を上げると)、その参照信号自体が騒音となってしまう
し、また疑似騒音のS/Nが劣化して能動騒音制御装置
の本来の目的である騒音低減量に支障を来すことにな
る。逆に、騒音低減量への影響を考えて混在率を少なく
すると(参照信号のパワーを下げると)、参照信号のS
/Nが悪くなり、裏フィルタの推定に支障を来す。これ
ゆえに、Δbj(i) を無視できない大きさにすることは困
難といえる。言い換えれば、回り込み防止フィルタ7の
推定には限界がある。その結果、音響帰還の影響を十分
に抑圧することが困難となる。
【0017】以上の音響帰還伝達系の影響を抑圧するた
めに回り込み防止フィルタ7を用いる手法に関する問題
点をまとめると次のようになる。 (a)回り込み防止フィルタ7の推定が同時学習法で行
われた場合、参照信号の混在率が少ないと、推定精度が
低下し、音響帰還伝達系との誤差は無視できない大き
さとなるため、音響帰還伝達系の影響を受けて騒音低
減量が低下する。
【0018】(b)上記(a)の場合で、推定精度を上
げるために参照信号の混在率を多くすると、疑似騒音の
S/Nが劣化し、騒音低減量が低下する。
【0019】(c)回り込み防止フィルタ7の推定が事
前学習法で行われた場合、音響帰還伝達系の経時変化
に追従できず、音響帰還伝達系との誤差が増大するた
め、音響帰還伝達系の影響を受けて騒音低減量が低下
する。
【0020】従来の音響帰還伝達系の影響を抑える手法
は以上のような問題を持っているため、新たな技術が強
く望まれる。
【0021】したがって、本発明は、回り込み防止フィ
ルタ等の帰還制御フィルタを用いることにより生じる種
々の問題を解消しつつ、帰還伝達系の影響を低減できる
ようにすることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】図1は本発明に係る原理
説明図であり、未知の伝達系の応答を抑える制御装置の
例として、音響帰還伝達系の影響を抑圧する能動騒音制
御装置の構成を示したものである。
【0023】図1において、騒音収集用マイクロホン1
は参照信号となる騒音を収集するもの、二次音源スピー
カ2は騒音を相殺するための疑似騒音を放射するもの、
誤差収集用マイクロホン3は相殺された騒音の残差を収
集するもの、騒音制御フィルタ4は疑似騒音を合成し、
また同時に音響帰還の影響を抑圧するもの、係数更新部
6は騒音制御フィルタ4のフィルタ係数を誤差収集用マ
イクロホン3で収集された残差を最小にするように修正
するものである。
【0024】上述の課題を解決するために、本発明で
は、騒音と同振幅・逆位相の疑似騒音を騒音制御フィル
タ4で合成し、この疑似騒音を音響伝達系を伝達して
きた騒音に重ね合わせることで騒音を低減する能動騒音
制御装置において、音響伝達系の伝達関数をh、音響
伝達系を逆に辿る音響帰還伝達系の伝達関数をbと
するとき、騒音制御フィルタ4は、その伝達関数Hが音
響伝達系と音響帰還伝達系の合成伝達系の伝達関数
h/(1−hb)を推定できるように、タップ数を可能
な範囲で長くしたことを特徴とする能動騒音制御装置が
提供される。
【0025】また、本発明では、上述の能動騒音制御装
置において、音響帰還伝達系を推定する回り込み防止
フィルタを更に備え、騒音制御フィルタ4は、音響伝達
系と音響帰還伝達系の合成伝達系に代えて、音響伝
達系と音響帰還伝達系に回り込み防止フィルタを含
めた合成伝達系を推定するように、タップ数を可能な範
囲で長くしたことを特徴とする能動騒音制御装置が提供
される。
【0026】また、本発明では、特性が未知の伝達系
と、その伝達系を逆に辿る帰還伝達系と、該未知の伝達
系を推定して疑似応答を合成する制御フィルタとを持
ち、該制御フィルタの疑似応答で該未知の伝達系の応答
を抑圧する制御装置において、帰還伝達系が該未知の伝
達系の応答と該制御フィルタとの差分に影響を与える場
合に、未知の伝達系の伝達関数をh、該帰還伝達系の伝
達関数をbとするとき、制御フィルタは、その伝達関数
Hが上記未知の伝達系と帰還伝達系の合成伝達系の伝達
関数h/(1−hb)を推定できるように、タップ数を
可能な範囲で長くして帰還伝達系の影響を低減するよう
にしたことを特徴とする制御装置が提供される。
【0027】また、本発明では、上述の制御装置におい
て、上記帰還伝達系を推定する帰還制御フィルタを更に
備え、上記制御フィルタは、上記未知の伝達系と帰還伝
達系の合成伝達系に代えて、該未知の伝達系と帰還伝達
系に該帰還制御フィルタを含めた合成伝達系を推定する
ように、タップ数を可能な範囲で長くしたことを特徴と
する制御装置が提供される。
【0028】上記の騒音制御フィルタまたは制御フィル
タは、上記伝達関数Hとbの積Hbが大きくなり過ぎる
ことによりハウリングを生じる前に推定を中断してタッ
プ係数を半固定化するように構成することができる。
【0029】また、騒音または応答の低減量を計測する
手段を備え、上記騒音制御フィルタまたは制御フィルタ
の推定誤差により騒音または応答の低減量が悪化してき
たら上記中断した推定を再開するように構成することが
できる。
【0030】
【作用】本発明の装置は、原理説明図を一見するに、図
9の音響帰還伝達系を考慮していないシステムと同じよ
うに見える。しかしながら、以下の説明で明らかになる
ように、このシステムで音響帰還伝達系の影響も抑圧す
ることができる。
【0031】図2(イ)は音響系および電気系の全ての
伝達系をブロック図で表したものである。は音響伝達
系であり、は音響帰還伝達系であり、4は騒音制御フ
ィルタである。二次音源スピーカ2から誤差収集用マイ
クロホン3に至る音響伝達系は省略してある。
【0032】図中の音響帰還伝達系と騒音制御フィル
タ4の部分は、制御工学の基本により、合成伝達系と
してその伝達関数を次式のように一つにまとめることが
できる。 H/(1+Hb) ・・・(10) 但し、H:騒音制御フィルタ4の伝達関数 b:音響帰還伝達系の伝達関数
【0033】これより、図2(イ)は同図(ロ)のよう
に書き換えられる。図2(ロ)において、音響伝達系
を伝達する騒音を相殺するには、図中の音響伝達系と
合成伝達系が等価になればよい。よって、騒音を相殺
するための条件式は、 h=H/(1+Hb) ・・・(11) 但し、h:音響伝達系の伝達関数 となる。この(11)式を、騒音能動フィルタ4の伝達
関数Hについて整理すると、 H=h/(1−hb) ・・・(12) となる。
【0034】(11)式に着目すると、bが無視できる
ほど小さければ分母第2項のhbは省略することがで
き、(11)式は、 h=H ・・・(13) となり、騒音制御フィルタ4は音響伝達系と等価にな
る。すなわち、音響帰還伝達系が無視できるほど小さ
ければ、騒音制御フィルタ4は音響伝達系を忠実に推
定することができる。
【0035】次に、音響帰還伝達系の伝達関数bが無
視できない場合には、(12)式から騒音制御フィルタ
4は音響伝達系と音響帰還伝達系の両方を含む伝達
系を推定することになる。同式の右辺に着目すると、右
辺の伝達系のインパルス応答は無限となるので、騒音制
御フィルタ4(伝達関数H)のタップ数が短いと、(1
2)式は成立しないが、騒音制御フィルタ4のタップ数
を可能な範囲で長くすることにより、伝達関数Hのイン
パルス応答は(12)式右辺のインパルス応答に近づい
ていき、騒音低減量を増大させることができる。
【0036】しかし、音響帰還伝達系の利得(すなわ
ちb)が大きい場合、騒音制御フィルタ4の推定の収束
特性に大きな落ち込みが起こることがある。図3はこの
ような収束特性を示したもので、図中の横軸は学習回数
(イタレーション)、縦軸は騒音低減量(dB)であ
り、音響帰還伝達系の利得は0.8、騒音制御フィル
タ4のタップ数は512としている。この収束特性から
分かるように、学習回数が増えて騒音制御フィルタ4の
収束が進むにつれて(すなわち0から収束を開始した伝
達関数Hが大きくなるにつれて)、特性の落ち込みの程
度が大きくなっている。また、この落ち込みは騒音制御
フィルタ4のタップ数を長くするにつれて発生頻度が増
大してくる。
【0037】このような収束特性の落ち込みはこの時点
でシステムがハウリングを起こしているために生じるも
のである。図4は図3における落ち込み部分の時刻で
の、誤差収集マイクロホンで収集した残差ej の時間波
形を示すもので、横軸が時間、縦軸が振幅である。この
図4からもハウリングが発生していることは明らかであ
る。このようなハウリングの発生は図2(ロ)のブロッ
ク図を同図(ハ)のように、騒音制御フィルタ4(伝達
関数H)に相当する部分を分離するように書き換えるこ
とによって説明できる。
【0038】図2(ハ)において、騒音制御フィルタ4
の前置の伝達系の伝達関数1/(1+Hb)の分母第
2項Hbには騒音制御フィルタの伝達関数Hが含まれて
いる。そのため、騒音制御フィルタのタップ数を長くす
ると、分母第2項は大きくなり、入力信号Sj はこの伝
達系を経ることで大きく変化して(大きく歪んで)そ
の後段にある騒音制御フィルタ4に入力することにな
る。このような入力信号の変化(歪み)は、騒音制御フ
ィルタ4の適応動作に大きな影響を与えることになり、
ハウリングを起こして図3のような落ち込みが発生する
のである。
【0039】このようなハウリングは、それが発生する
と一時的にせよ騒音低減量が低下するので、好ましくな
い現象である。ここで、図3に注目すると、このような
落ち込みは推定が収束してから発生しており、収束の途
中段階では発生していないことが分かる。これは、騒音
制御フィルタ4のフィルタ係数は0から推定を始め、徐
々に大きくなっていくため、推定動作が収束するまでは
騒音制御フィルタ4の伝達関数Hの利得は小さく、した
がって図2(ハ)の前置の伝達系の伝達関数の分母第
2項は小さいので入力信号Sj を大きく変化させないか
らである。そこで、騒音制御フィルタ4の推定をある程
度収束した時点で中断し、フィルタ係数を固定すれば、
ハウリングの発生を防止することができる。
【0040】上述のようにフィルタ係数を半固定化した
場合でも、騒音低減量を計測する手段を設けて、騒音低
減量が悪化してきたら、騒音制御フィルタ4の推定を再
開すれば、必要な騒音低減量を常時確保することができ
る。
【0041】本発明の原理は、図10に示すように回り
込み防止フィルタを含むシステムに対しても同様に適用
することができ、その場合には騒音制御フィルタ4は音
響伝達系、音響帰還伝達系、回り込みフィルタ7を
含む伝達系を一まとめにして推定することになる。
【0042】以上のように、騒音制御フィルタ4のタッ
プ数を長くとるというごく簡単なシステムで、音響帰還
伝達系の影響を抑圧し、十分な騒音低減量を得ること
ができる。また、音響帰還伝達系の利得が大きく騒音
制御フィルタ4のタップ数が長いときは、騒音制御フィ
ルタが収束した時点で推定を中断することにより、ハウ
リングの発生を避けることができる。更に、回り込み防
止フィルタが不要となるため、次のような従来技術の問
題点を解決することができる。
【0043】(1)回り込み防止フィルタが不要なの
で、これに関する推定精度の問題が解決される。 (2)騒音制御フィルタ4が音響帰還伝達系も含めて
推定するので、伝達系の経時・経年変化に追従できる。
【0044】以上の本発明の原理は、能動騒音制御装置
だけに限られるものでなく、信号の伝達系の他にその伝
達系を逆に辿る帰還伝達系を有し、上記伝達系を推定す
る制御フィルタがその推定をする際に帰還伝達系の影響
を受けるようなシステムに対して一般的に適用でき、そ
れにより帰還伝達系の影響を抑えることができる。
【0045】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図5は本発明の実施例としての能動騒音制御装置
であり、同装置の音響系および電気系をブロック図で表
したものである。図中のは音響伝達系、は音響帰還
伝達系、は結合伝達系、4は騒音制御フィルタ、5は
Cフィルタ、6は騒音制御フィルタ4の係数更新部であ
る。
【0046】このブロック図に示す装置構成を用いて、
以下の手続きに基づいてシミュレーションを行った。 (1)音響伝達系は指数減衰系の、その他は非減衰系
の特性を持つ。 (2)騒音制御フィルタ4の適応アルゴリズムは平均化
NLMS法を用いる。その時のステップゲインは0.1
8とする。 ここで、平均化NLMS法とは次式で表される適応アル
ゴリズムである。 Hn+1 (m) =Hn (m) +KAn (m) /Bn ・・・(14) An (m) =Σn 〔ej j (m) 〕 Bn =Σn 〔ΣSj 2 (i) 〕 但し、Σn :j=n(N+13)+1〜n(N+13)
+N n=0,1,・・・の累積加算 Σ:I=1〜I(Iはタップ総数)の累積加算 K:ステップゲイン 上式は第m番目のタップ係数に関する適応アルゴリズム
である。本アルゴリズムはNLMS法を拡張したもので
ある。
【0047】(3)騒音低減量は次式によって求める。 RE =−10 log10(PE /Pg ) ・・・(15) 但し、PE :残差の短時間平均パワー Pg :音響伝達系出力の短時間平均パワー
【0048】(4)騒音制御フィルタ4以外の伝達系の
タップ数を128タップに、音響帰還伝達系以外の伝
達系の利得を1とする。 (5)騒音制御フィルタ4のタップ数を128〜102
4の範囲で128タップずつ増やしていき、音響帰還伝
達系の伝達関数bの利得を0.2、0.5、1.0に
変えて、それぞれの騒音低減量を求める。
【0049】以上の手続きにより得られた結果を図6に
示す。横軸はタップ長、縦軸は騒音低減量を示してい
る。この図から分かるように、利得0.2の場合にはタ
ップ数の増大と共に騒音低減量が大きく増大し、利得
0.5、1.0の場合は騒音低減量の増加の程度が小さ
くなっている。このようにタップ長を長くするに従って
騒音低減量が増大しており、タップ長は長くすればする
程よいが、希望する騒音低減量を満足していれば無闇に
長くする必要はない。例えば、騒音低減量を10dB必要
とするならば、音響帰還伝達系の利得が0.5の時に
は256タップ程度あればよい。これにより更に音響帰
還伝達系の利得が小さければ、更に短いタップ数で所
望の騒音低減量を得ることができる。
【0050】次に、従来技術である回り込み防止フィル
タ7を構成要素に持つシステムに対して、上記と同様の
シミュレーションを行う。図7がそのシステムである。
いま、図中の音響帰還伝達系と回り込み防止フィルタ
7をまとめると、図8のような帰還伝達系に書き換え
ることができ、これは明らかに図5のシステムと等価で
ある。これゆえに、上記シミュレーションの結果はその
ままこのシステムにも引用することができる。このよう
に、従来技術である回り込み防止フィルタ7を持つシス
テムに対しても前記実施例と同様の効果を得ることがで
きる。
【0051】
【発明の効果】以上、本発明によれば、騒音制御フィル
タのタップ数を長くすることにより、音響帰還系の影響
を抑圧することができ、十分な騒音低減量を得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る原理説明図である。
【図2】本発明に係る原理説明図である。
【図3】本発明の装置の収束特性を示す図である。
【図4】本発明の装置の残差の時間波形を示す図であ
る。
【図5】本発明の実施例を示す図である。
【図6】実施例における騒音制御フィルタのタップ数と
騒音低減量の関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例の変形して表現した図であ
る。
【図9】能動騒音制御システムの従来例を示す図であ
る。
【図10】回り込み防止フィルタを備えた能動騒音制御
システムの従来例を示す図である。
【図11】事前学習法による回り込み防止フィルタの係
数更新法を示す図である。
【図12】同時学習法による回り込み防止フィルタの係
数更新法を示す図である。
【符号の説明】
1 騒音収集用マイクロホン 2 誤差収集用マイクロホン 3 二次音源スピーカ 4、40 騒音制御フィルタ 5 Cフィルタ 6、9、11、60 係数更新部 7 回り込み防止フィルタ 8 参照信号源 10 裏フィルタ 音響伝達系 音響帰還伝達系 結合伝達系 、、 合成伝達系

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 特性が未知の伝達系と、その伝達系を逆
    に辿る帰還伝達系と、該未知の伝達系を推定して疑似応
    答を合成する制御フィルタとを持ち、該制御フィルタの
    疑似応答で該未知の伝達系の応答を抑圧する制御装置に
    おいて、 該帰還伝達系が該未知の伝達系の応答と該制御フィルタ
    との差分に影響を与える場合に、 該未知の伝達系の伝達関数をh、該帰還伝達系の伝達関
    数をbとするとき、 該制御フィルタは、その伝達関数Hが上記未知の伝達系
    と帰還伝達系の合成伝達系の伝達関数h/(1−hb)
    を推定できるように、タップ数を可能な範囲で長くして
    帰還伝達系の影響を低減するようにしたことを特徴とす
    る制御装置。
  2. 【請求項2】 上記帰還伝達系を推定する帰還制御フィ
    ルタを更に備え、上記制御フィルタは、上記未知の伝達
    系と帰還伝達系の合成伝達系に代えて、該未知の伝達系
    と帰還伝達系に該帰還制御フィルタを含めた合成伝達系
    を推定するように、タップ数を可能な範囲で長くしたこ
    とを特徴とする請求項1記載の制御装置。
  3. 【請求項3】 上記制御フィルタは、上記伝達関数Hと
    bの積Hbが大きくなり過ぎることによりハウリングを
    生じる前に推定を中断してタップ係数を半固定化するよ
    うにしたことを特徴とする請求項1または2記載の制御
    装置。
  4. 【請求項4】 応答の低減量を計測する手段を備え、上
    記制御フィルタの推定誤差により応答の低減量が悪化し
    てきたら上記中断した推定を再開するようにしたことを
    特徴とする請求項3記載の制御装置。
  5. 【請求項5】 騒音と同振幅・逆位相の疑似騒音を騒音
    制御フィルタで合成し、この疑似騒音を音響伝達系を伝
    達してきた騒音に重ね合わせることで騒音を低減する能
    動騒音制御装置において、 該音響伝達系の伝達関数をh、該音響伝達系を逆に辿る
    音響帰還伝達系の伝達関数をbとするとき、 該騒音制御フィルタは、その伝達関数Hが上記音響伝達
    系と音響帰還伝達系の合成伝達系の伝達関数h/(1−
    hb)を推定できるように、タップ数を可能な範囲で長
    くしたことを特徴とする能動騒音制御装置。
  6. 【請求項6】 上記音響帰還伝達系を推定する回り込み
    防止フィルタを更に備え、上記騒音制御フィルタは、上
    記音響伝達系と音響帰還伝達系の合成伝達系に代えて、
    該音響伝達系と音響帰還伝達系に該回り込み防止フィル
    タを含めた合成伝達系を推定するように、タップ数を可
    能な範囲で長くしたことを特徴とする請求項5記載の能
    動騒音制御装置。
  7. 【請求項7】 上記騒音制御フィルタは、上記伝達関数
    Hとbの積Hbが大きくなり過ぎることによりハウリン
    グを生じる前に推定を中断してタップ係数を半固定化す
    るようにしたことを特徴とする請求項5または6記載の
    能動騒音制御装置。
  8. 【請求項8】 騒音低減量を計測する手段を備え、上記
    騒音制御フィルタの推定誤差により騒音低減量が悪化し
    てきたら上記中断した推定を再開するようにしたことを
    特徴とする請求項7記載の能動騒音制御装置。
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