JPH07247105A - 金属酸化物粉末の製造方法及び製造装置 - Google Patents

金属酸化物粉末の製造方法及び製造装置

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JPH07247105A
JPH07247105A JP6042788A JP4278894A JPH07247105A JP H07247105 A JPH07247105 A JP H07247105A JP 6042788 A JP6042788 A JP 6042788A JP 4278894 A JP4278894 A JP 4278894A JP H07247105 A JPH07247105 A JP H07247105A
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JP
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powder
metal oxide
metal
oxide powder
flame
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JP6042788A
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English (en)
Inventor
Sumio Kamiya
純生 神谷
Yoichiro Kawai
洋一郎 河合
Yukito Kobayashi
之人 小林
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Toyota Motor Corp
Admatechs Co Ltd
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Admatechs Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 燃焼後の金属酸化物の冷却速度を低下させる
ことにより、安定な結晶相の比率の増大した金属酸化物
粉末を金属粉末燃焼法により製造する。 【構成】 酸素を含む雰囲気内でバーナ3により化学炎
を形成し、この化学炎中に目的とする金属酸化物粉末の
一部を形成する金属粉末をキャリアガスとともにノズル
30を介して投入して金属酸化物粉末を合成する。ノズ
ル30の内面形状は、先端部側に拡径部30aが形成さ
れた段付き形状とされている。拡径部30aにおいて、
キャリアガス及び金属粉末の吹き込み速度がノズル内で
低速にされるので、火炎中に金属粉末が滞留する時間が
長くなる。生成された金属酸化物粒子の急冷の防止によ
り、金属酸化物粉末中における安定な結晶相の比率を増
加させることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属粉末燃焼法により
金属粉末から金属酸化物粉末を合成する金属酸化物粉末
の製造方法及びその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、特公平1−55201号などにみ
られるように、金属粉末をキャリアガスとともに酸素雰
囲気中に供給して着火し、連続的に燃焼させて金属酸化
物粉末を合成する金属粉末燃焼法が開発されている。す
なわち、この製造方法では、酸素雰囲気内においてバー
ナにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする金
属酸化物粉末の一部を形成する金属粉末を粉塵雲が形成
される程度の量キャリアガスとともに投入する。これに
より、化学炎により金属粉末表面に熱エネルギーが与え
られ、金属粉末の表面温度が上昇し、金属粉末表面から
金属の蒸気が周囲に広がる。この金属蒸気が酸素ガスと
反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱
は、さらに金属粉末の気化を促進し、これにより生じた
金属蒸気と反応ガスである酸素を含有するガスとが混合
され、連鎖的に発火伝播する。このとき、金属蒸気が酸
素と反応しつつ互いに衝突・凝集を繰り返しながら粒子
成長する。また、一部の金属粉末は燃焼により生じた熱
により溶融し、融液状態で酸化される。そして、生成ガ
スが自然冷却されることにより、金属酸化物粉末の雲が
できる。得られた金属酸化物粉末は、通常電気集塵器等
により帯電させて捕集される。
【0003】この製造方法によれば、アルミナ、シリ
カ、マグネシアなどの単独金属酸化物粉末はもとより、
ムライト、スピネルなどの複合金属酸化物粉末も容易に
製造することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の金
属粉末燃焼法では、安定な結晶相を有する金属酸化物粉
末を製造することが困難であるという問題がある。これ
は、燃焼後に金属酸化物粉末が生成ガスとともに自然冷
却される際、この冷却速度が一般的に速いため、生成さ
れた酸化物が融液状態から比較的急冷されるため、安定
な結晶相が生成し難いからである。例えば、上記従来の
金属粉末燃焼法によりアルミナ微粉末を合成する場合、
安定な結晶相であるコランダム相の比率は20%程度で
ある。
【0005】ここで、安定な結晶相を生成させるため
に、燃焼後の雰囲気を適当な手段により加熱することに
より、金属酸化物の冷却速度を十分に低くする方法も考
えられるが、設備コスト及びランニングコストの面から
不利である。本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、コスト面での不利を避けつつ、燃焼後の金属酸化
物の冷却速度を低下させることにより、安定な結晶相を
生成させることのできる金属酸化物粉末の製造方法及び
製造装置を提供することを解決すべき技術課題とするも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する請求
項1記載の金属酸化物粉末の製造方法は、酸素を含む高
温の火炎中に目的とする金属酸化物粉末の一部を形成す
る金属粉末をキャリアガスとともに投入して金属酸化物
粉末を合成する金属酸化物粉末の製造方法において、先
端部側の内径が大きい段付き形状となっているノズルを
介して上記キャリアガスを吹き込むことによって、該キ
ャリアガスの吹き込み速度を該ノズル内で低速にしつ
つ、該キャリアガスを上記火炎中に投入することを特徴
とするものである。
【0007】また請求項2記載の金属酸化物粉末の製造
装置は、酸素を含む高温の火炎中に目的とする金属酸化
物粉末の一部を形成する金属粉末をキャリアガスととも
にノズルを介して投入して金属酸化物粉末を合成するた
めの金属酸化物粉末の製造装置において、上記ノズルの
内面形状は先端部側の内径が大きい段付き形状とされて
いることを特徴とするものである。
【0008】また請求項3記載の金属酸化物粉末の製造
方法は、酸素を含む高温の火炎中に目的とする金属酸化
物粉末の一部を形成する金属粉末をキャリアガスととも
に投入して金属酸化物粉末を合成する金属酸化物粉末の
製造方法において、上記火炎中に種結晶を添加すること
を特徴とするものである。
【0009】
【作用】請求項1記載の金属酸化物粉末の製造方法、及
び請求項2記載の金属酸化粒粉末の製造装置では、酸素
を含む高温の火炎中に金属粉末がキャリアガスとともに
ノズルを介して吹き込まれる。ここで、該ノズルは先端
部側の内径が大きい段付き形状となっているので、キャ
リアガスの吹き込み速度がノズル内で低速にされる。こ
のため、キャリアガスとともに火炎中に吹き込まれる金
属粉末の吹き込み速度も遅くなるので、火炎中に金属粉
末が滞留する時間が長くなる。すなわち、結晶成長途上
にある粒子の火炎高温部周辺における滞留時間が長くな
る。したがって、生成された金属酸化物粒子の急冷を防
ぐことができ、これにより金属酸化物粉末中における安
定な結晶相の比率を増加させることが可能となる。
【0010】なお、ノズルの内面形状を先端部側のみで
なく全体に拡径させた場合、反応炉内の圧力変動をノズ
ル内で受け易くなるので、火炎中への金属粉末の供給に
乱れを生じ、このため未燃焼粉末が発生し易くなる。ま
た、一時的に周囲の支燃性ガスや火炎をノズル内に吸い
込むことがあるので、金属粉末がノズル内で溶融してノ
ズル閉塞が生じるおそれがある。
【0011】また、ノズルにキャリアガスを導入する際
のキャリアガス流量を低下させることによっても、ノズ
ルから火炎中への吹き込み速度を低下させることができ
るが、この場合キャリアガスとともに吹き込まれる金属
粉末の供給量も低下してしまう。このため、製造効率を
考慮した場合、キャリアガス流量を低下させることによ
って上記吹き込み速度を低下させることにはおのずと限
界がある。請求項1及び請求項2記載の製造方法及び装
置によれば、キャリアガス流量を低下させることなく、
したがって金属原料の供給量(製造効率)を低下させる
ことなく、上記吹き込み速度を低下させることが可能と
なる。
【0012】さらに、火炎中での金属粉末の滞留時間が
長くなることに伴い、生成される粒子の成長が促進され
るので、粒径の大きな金属酸化物粉末を得ることができ
るという効果もある。請求項3記載の金属酸化物粉末の
製造方法では、火炎中に種結晶が添加されているので、
この種結晶を核として特定の結晶相が成長し易くなり、
結晶成長が促進される。このため、金属酸化物粉末中に
おける安定な結晶相の比率を増加させることが可能とな
る。
【0013】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)図1及び図2に示す本実施例1に係る製造
装置は、反応炉1と、反応炉1の上流側に連結された金
属粉末供給装置2と、反応炉1と金属粉末供給装置2と
の間に配設されたバーナ3と、反応炉1の下流側に連結
された回収装置4とから構成されている。
【0014】反応炉1は、上部(上流)と下部(下流)
とで断面積が異なっており、下部(下流)側に断面積の
小さな縮径部11を有している。なお、縮径部11の上
方には断面積が連続的に変化するようにテーパ部12が
設けられている。金属粉末供給装置2は、一端がバルブ
21を介してキャリアガス(エア、窒素等)ボンベ(図
示せず)に接続され他端がバーナ3に接続されて、金属
粉末を分散したキャリアガスをバーナ3に導入するキャ
リアガス導入管22と、このキャリアガス導入管21に
シュート23を介して接続され金属粉末を収納する供給
装置24付きホッパ25とを備えている。このホッパ2
5の上方部には不活性ガス導入管26が接続され、常時
不活性ガスが導入可能とされている。また、シュート2
3の途中には逃がし管27の一端が接続され、この逃が
し管27の他端側には逃がし管開閉弁28が設けられる
とともに、その先端には系外への金属粉末等の放出及び
系内への異物の吸込等を防止するためのフィルター29
が取り付けられている。
【0015】バーナ3は、図2の拡大断面図に示すよう
に4重管よりなり、中心側から、キャリアガス導入管2
2に接続された断面円形状のノズル30と、環状の可燃
性ガス供給部31と、環状の第1支燃性ガス供給部32
と、環状の第2支燃性ガス供給部33とを備えている。
ノズル30はその下方(下流)先端部に拡径部30aを
有しており、ノズル30の内形状は下部(下流)の先端
部側の内径が大きい段付き形状とされている。なお、ノ
ズル30の内径はφ12mmであり、ノズル30の拡径
部30aの内径はφ24mm、拡径部30aの長さは8
0mmである。また、拡径部30aの上方は、内径が連
続的に変化するようにテーパ面30bとされている。可
燃性ガス供給部31には、バルブ34を介してLPGガ
スボンベ(図示せず)に接続された可燃性ガス供給管3
5が接続されている。また第1、第2支燃性ガス供給部
32、33には、バルブ36、37を介して酸素又は含
酸素ガスボンベ(図示せず)に接続された第1、第2支
燃性ガス供給管38、39が接続されている。なお、上
記可燃性ガス供給部31は必ずしもノズル30の直近に
1系列である必要はない。燃焼条件に応じて、可燃性ガ
ス供給部31、第1、第2支燃性ガス供給部32、33
の配列順を適宜変更することが可能である。
【0016】回収装置4は、反応炉1の側壁に開口する
捕集管41と、この捕集管41の下流側に配設されたサ
イクロンよりなる粉末捕集器42と、粉末捕集器42の
下流側に接続管43を介して配設された排風機44とを
備えている。粉末捕集器42の下方部には回収粉末溜ま
り部42aが接続されている。この回収粉末溜まり部4
2aの周囲にはヒータ付き保温用ジャケット42bが配
設されるとともに、回収粉末溜まり部42aの上部には
置換ガス(不活性ガス、酸素又はエア等)導入管42c
が接続されている。
【0017】このように構成された製造装置を用いて、
平均粒径十〜数百μmに粒度調整した金属アルミニウム
粉末からアルミナ粉末を合成した。まず、ホッパ25内
に原料金属粉末としての金属アルミニウム粉末を供給
し、不活性ガス導入管26から不活性ガスを1Nm3
hの流量で供給しておく。なお、この不活性ガスは、金
属粉末のホッパ25内での燃焼・爆発等の異常事態を回
避するためにホッパ25内に常時供給されている。ま
た、反応炉1内の圧力は、排風機44の吸引力により負
圧に設定する。この状態で、バルブ34を開いて可燃性
ガス供給管35及び可燃性ガス供給部31からLPGガ
スを1m3 /hの流量で供給し、バルブ35、37を開
いて第1、第2支燃性ガス供給管38、39及び第1、
第2支燃性ガス供給部32、33から酸素を40m3
hの流量で供給し、図示しない着火手段により着火して
種火としてのLPG火炎を形成しておく。そして、バル
ブ21を開いてキャリアガスとしての窒素を4m3 /h
の流量でキャリアガス導入管22内へ供給するととも
に、ホッパ25の供給装置24の作動により金属アルミ
ニウム粉末を12kg/hの流量でシュート23を介し
てキャリアガス導入管22内へ供給した。これにより、
キャリアガスとともに金属アルミニウム粉末はバーナ3
のノズル30に導入され、LPG火炎と接触して、燃焼
火炎を形成し、金属酸化物粉末としてのアルミナ粉末を
合成した。そして、排風機44の吸引力によりアルミナ
粉末を含む燃焼排気ガスを吸引し、粉末捕集器42でア
ルミナ粉末を分離し、回収粉末溜まり部42aに回収し
た。このとき、回収粉末溜まり部42aの保温ジャケッ
ト部42b内のヒータ制御により、回収されたアルミナ
粉末の温度は300℃以上に制御されている。また、回
収粉末溜まり部42a内には、置換ガス導入管42cか
ら酸素が2m3 /hの流量で導入されている。
【0018】なお、回収されたアルミナ粉末は、燃焼終
了後、回収粉末溜まり部42aごと粉末捕集器42から
外され、冷却後梱包される。あるいは、回収粉末溜まり
部42aの下部に別途設けたバルブの開閉により、一定
時間毎に回収粉末溜まり部42aからアルミナ粉末を取
り出し、冷却後梱包することもできる。 (評価)上記実施例1において回収されたアルミナ粉末
について、X線回折法にてコランダム相(安定な結晶
相)の割合、及び平均粒径を測定した。比較のため、ノ
ズル30の内形状が内径φ12mmの均一内径を有する
こと以外は上記実施例と同様にアルミナ粉末を合成した
比較例1についても、同様にコランダム相の割合及び平
均粒径を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0019】
【表1】 表1からも明らかなように、ノズル30の内形状が先端
部側に拡径部30を有する段付き形状とした本実施例1
においては、安定な結晶相であるコランダム相の比率が
40〜50%であり、かつ、平均粒径15μmの粗大球
状のアルミナ粉末を合成することが可能であった。一
方、ノズル30が均一内径を有する比較例1において
は、コランダム相の比率が20%以下であり、平均粒径
8μmのアルミナ粉末しか合成できなかった。これは、
本実施例1のようにノズル30の先端部側に拡径部30
aを設けた場合、この拡径部30aでキャリアガス及び
原料金属粉末の吹き込み速度が低下するので、金属粉末
を反応炉1内にゆっくりと吹き込むことが可能となり、
これにより結晶成長途上の粒子の火炎高温部周辺におけ
る滞留時間が長くなったためと考えられる。すなわち、
本実施例1では、生成された金属酸化物粒子の急冷を防
ぐことによりアルミナ粉末中における安定な結晶相の比
率を増加させ、かつ、粒子成長の促進によりアルミナ粉
末の粗大化を図ることが可能となる。
【0020】なお、ノズル30の内面形状を先端部側の
みでなく全体に拡径させた場合、反応炉1内の圧力変動
をノズル30内で受け易くなる。つまり、反応炉1内の
圧力は変動しているため、ノズル30の内面形状を全体
に拡径させた場合、この圧力変動の影響をノズル30内
でまともに受けることとなる。このため、ノズル30か
ら化学炎中への金属粉末の供給に乱れを生じ、未燃焼粉
末が発生する。また、一時的に周囲の支燃性ガスや火炎
をノズル30内に吸い込むことがあるので、金属粉末が
ノズル30内で溶融してノズル閉塞が生じるおそれがあ
る。
【0021】したがって、ノズル30の内面形状は、下
流側の先端部側のみに拡径部30aが形成された形状と
する。また、上記拡径部30aの長さ、内径、及び他の
ノズル内面部に対する拡径割合等は、キャリアガス及び
キャリアガス中における原料金属粉末の吹き込み速度の
低下度合い、反応炉内の圧力変動の影響の受け易さ、及
び周囲の支燃性ガスや火炎のノズル30内への吸い込ま
れ難さ等を考慮して適宜設定することが可能である。例
えば、拡径部30aの長さは50〜100mmとするこ
とが好ましい。拡径部30aの長さが100mmよりも
長い場合は、反応炉内の圧力変動の影響を受け易くな
り、未燃焼粉末が発生し易くなる。一方、拡径部30a
の長さが50mmよりも短い場合は、金属粉末の吹き込
み速度の低下が十分でなくなるとともに、キャリアガス
や金属粉末の吹き出し方向が拡がって未燃焼粉末が発生
し易くなる。
【0022】なお、本実施例1では、ノズル30の隔壁
の肉厚を変化させることによりノズル30の内面形状を
変化させて拡径部30aを形成する例について示した
が、ノズル30の隔壁自身の形状を変化させたり、ノズ
ル30の内側に他のリング状部材を嵌合等したりするこ
とによりノズル30の内面形状を変化させて拡径部30
aを形成することも可能である。
【0023】ここで、反応炉1内の圧力は、排風機44
の吸引力により負圧に設定されている。そして、ホッパ
25の供給装置24が動作していない状態でも反応炉1
内が負圧になっている状態、例えば原料金属粉末の燃焼
開始直前あるいは終了直後の状態においては、不活性ガ
ス導入管26からの不活性ガスの導入により加圧状態と
なっているホッパ25から金属粉末がシュート23及び
キャリアガス導入管22等を介して非燃焼状態の反応炉
1内に流れ込むこととなる。このようなフッラシング現
象は未燃焼金属粉末による系内汚染を起こしたり、爆発
等の予期せぬ異常燃焼を誘発したりするため問題とな
る。
【0024】本実施例1の装置では、シュート23の途
中に逃がし管27及び開閉弁28が設けられているの
で、この逃がし管27の逃がし管開閉弁28を開けて外
気を反応炉1内に導入することにより、上記フラッシン
グ現象を防止することができる。なお、金属粉末燃焼時
には、この逃がし管開閉弁28は閉じておく。また、何
らかの原因によりバーナ3の下流側先端やキャリアガス
導入管22等が閉塞したり、又は反応炉1内の負圧が不
十分になったりすると、キャリアガスの圧力がホッパ2
5や供給装置24内にまともにかかってシールの弱い部
分から外部へ金属粉末が漏洩するおそれがある。しか
し、本実施例1の装置では、このような圧力異常等を検
知する検知手段を別途設けて、上記逃がし管開閉弁28
の開閉を制御するようにすれば、上記圧力異常時に逃が
し管開閉弁28を開けることにより金属粉末の漏洩を防
止することが可能となる。
【0025】さらに、キャリアガスとして空気や窒素な
どを用いた場合、燃焼火炎中に汚染物質としてのNOx
が生成する。そして、回収粉末溜まり部42aに回収さ
れた直後の金属酸化物粉末(アルミナ粉末)の温度は一
般に300℃程度以上であるが、回収粉末溜まり部42
aをまったく保温あるいは加熱しない場合は、内部で徐
々に温度が下がり、その結果合成された金属酸化物粉末
の表面に雰囲気中のNOx が付着・吸着されてしまう。
このようなNOx は、例えば本実施例により合成したア
ルミナ粉末を樹脂と混合・調整する場合に、pH値を変
化させたり、使用部位を腐食させたりする等の障害を生
じさせる。
【0026】しかし、本実施例1の装置では、回収粉末
溜まり部42aの周囲にはヒータ付き保温用ジャケット
42bが配設されるとともに、回収粉末溜まり部42a
の上部には置換ガス導入管42cが接続されている。そ
して、回収粉末溜まり部42a内に回収された金属酸化
物粉末は、ヒータ制御により300℃以上に加熱、保温
されているので、上記金属酸化物粉末の表面へのNOx
吸着を効果的に防止することができる。また、回収粉末
溜まり部42a内は、置換ガス導入管42bから置換ガ
スとしての酸素が2m3 /hの流量で導入されているの
で、これによっても回収粉末溜まり部42a内上部に滞
留しているNOx を希釈することにより金属酸化物粉末
の表面へのNOx 吸着を効果的に防止することができ
る。
【0027】ここで、回収粉末溜まり部42aの加熱・
保温の有無、及び回収粉末溜まり部42aへの置換ガス
の導入の有無に応じて、上記NOx 吸着量がどのように
変化するかを調べた結果を表2に示す。なお、NOx
着量は、回収後のアルミナ粉末50Lを水中に分散さ
せ、この水中に抽出されたNOx イオンをイオンクロマ
トグラフにより定量分析するこにより測定した。
【0028】
【表2】 表2からも明らかなように、回収粉末溜まり部42aを
加熱・保温し、かつ、回収粉末溜まり部42a内へ置換
ガスを導入することにより、アルミナ粉末表面へのNO
x 吸着量を極力低減できることがわかる。
【0029】さらにまた、本実施例1の装置では、反応
炉1が上部(上流)と下部(下流)とで断面積が異なっ
ており、下部(下流)側に断面積が連続的に縮小するテ
ーパ部12を介して断面積の小さな縮径部11が設けら
れている。反応炉1をこのような形状とすることによ
り、火炎の安定化を図って高品質な金属酸化物粉末を合
成することが可能となる。つまり、反応炉1内の上部に
おいては、下部に設けられたテーパ部112及び縮径部
11による絞りにより、いわば半ば閉じたような状態と
なっている。このため、反応炉1の上部に火炎が封じ込
められたような状態となるので、金属粉末の完全な燃焼
が期待でき、未燃焼の金属粉末の生成を防ぐことが可能
となる。なお、反応炉1の内径、縮径部11の内径、及
びテーパ部12の位置等は、火炎の大きさ、ガス供給
量、及び原料粉末供給量等に応じて適宜設計可能であ
る。
【0030】したがって、本実施例1の装置によりアル
ミナ粉末を合成した場合、回収したアルミナ粉末中に未
燃焼のアルミニウムはほとんど見られなかった。また、
反応炉1内にも未燃焼のアルミニウムが堆積することが
なかった。これに対し、縮径部11及びテーパ部12を
設けない反応炉1で上記実施例1と同様にアルミナ粉末
を合成したところ、回収したアルミナ粉末中に未燃焼の
アルミニウムが若干量見られた。また、反応炉1内にも
未燃焼のアルミニウムの堆積物があった。
【0031】(実施例2)図3及び図4に示す本実施例
2に係る製造装置は、反応炉5と、反応炉5の上流側に
連結された金属粉末供給装置6と、反応炉5と金属粉末
供給装置6との間に配設されたバーナ7と、反応炉5の
下流側に連結された回収装置8とから主に構成されてい
る。
【0032】反応炉5は均一内径の円筒状をなし、その
周壁部には上から順に第1〜第6ガス(酸素、エア等)
導入管51〜56が接続されている。なお、それぞれの
第1〜第6ガス導入管51〜56には開閉バルブが設け
られている。これらの第1〜第6ガス導入管51〜56
は、反応炉5内のガス量を調整するためのものであり、
これにより後述するように第1粉末捕集器82における
分級条件を調整可能となる。
【0033】金属粉末供給装置6は、一端がバルブ61
を介してキャリアガス(エア、窒素等)ボンベ(図示せ
ず)に接続され他端がバーナ7に接続されて、金属粉末
を分散したキャリアガスをバーナ7に導入する第1キャ
リアガス導入管62と、この第1キャリアガス導入管6
1の途中に接続され金属粉末を収納する供給装置63付
きホッパ64とを備えている。
【0034】バーナ7は、図4の拡大断面図に示すよう
に、中心側から、第1キャリアガス導入管62に接続さ
れた断面円形状のノズル70と、2重環状の第1冷却水
循環部71と、環状の可燃性ガス供給部72と、環状の
第1支燃性ガス供給部73と、2重環状の第2冷却水循
環部74と、環状の第2支燃性ガス供給部75と、環状
の種結晶供給部76とを備えている。可燃性ガス供給部
72には、バルブ72bを介してLPGガスボンベ(図
示せず)に接続された可燃性ガス供給管72aが接続さ
れている。また第1、第2支燃性ガス供給部73、75
には、バルブ73b、75bを介して酸素又は含酸素ガ
スボンベ(図示せず)に接続されたバルブ第1、第2支
燃性ガス供給管73a、75aが接続されている。ま
た、種結晶供給部76には、バルブ76bを介してキャ
リアガス(エア、窒素等)ボンベ(図示せず)に接続さ
れた第2キャリアガス導入管76aが接続されている。
この第2キャリアガス導入管76aの途中には、種結晶
を収納する種結晶用ホッパ(図示せず)がバルブ76b
の下流側に取り付けられている。また、第1冷却水循環
部71にはバルブ71c付き第1冷却水供給管71a及
び第1冷却水排水管71bがそれぞれ接続され、第2冷
却水循環部74にも同様にバルブ74c付き第2冷却水
供給管74a及び第2冷却水排水管74bがそれぞれ接
続されている。なお、上記可燃性ガス供給部72は必ず
しもノズル70の直近に1系列である必要はない。燃焼
条件に応じて、可燃性ガス供給部72、第1、第2支燃
性ガス供給部73、75、及び種結晶供給部76の配列
順を適宜変更することが可能である。
【0035】回収装置8は、反応炉1の一方の側壁に開
口する捕集管81と、この捕集管81の下流側に配設さ
れたサイクロンよりなる第1粉末捕集器82と、第1粉
末捕集器82の下流側に第1接続管83を介して配設さ
れたバグフィルターよりなる第2粉末捕集器84と、第
2粉末捕集器84の下流側に第2接続管85を介して配
設された排風機86と、反応炉1の他方の側壁に開口す
る補助捕集管87と、この補助捕集管87の下流側に配
設されたバクフィルタよりなる補助粉末捕集器88とか
ら主に構成されている。捕集管81及び第1接続管83
には、それぞれ必要に応じて第1粉末捕集器82及び第
2粉末捕集器84に大量のガス(酸素、エア等)を導入
するためのバルブ付きのガス導入管81a及び83aが
接続されている。また、第1接続管83及び補助粉末捕
集器88の下流側には、上記第2接続管85の途中に接
続された補助接続管89a及び89bが接続されてい
る。これにより、補助粉末捕集機88の下流側は、これ
らの接続管89a、89b及び85を介して上記排風機
86に接続されている。
【0036】このように構成された製造装置を用いて、
平均粒径十〜数百μmに粒度調整した金属アルミニウム
粉末からアルミナ粉末を合成した。まず、ホッパ64内
に原料金属粉末としての金属アルミニウム粉末を供給
し、反応炉5内の圧力は、排風機86の吸引力により負
圧に設定した。この状態で、バルブ72bを開いて可燃
性ガス供給管72a及び可燃性ガス供給部72からLP
Gガスを1m3 /hの流量で供給し、バルブ73b、7
5bを開いて第1、第2支燃性ガス供給管73a、75
a及び第1、第2支燃性ガス供給部73、75から酸素
を40m3 /hの流量で供給し、図示しない着火手段に
より着火して種火としてのLPG火炎を形成した。ま
た、バルブ71c、74cを開いて第1、第2冷却水循
環部71、74内に冷却水を供給した。そして、バルブ
61を開いてキャリアガスとしての窒素を4m3 /hの
流量で第1キャリアガス導入管62内へ供給するととも
に、ホッパ64の供給装置63の作動により金属アルミ
ニウム粉末を12kg/hの流量で第1キャリアガス導
入管62内へ供給した。これにより、キャリアガスとと
もに金属アルミニウム粉末はバーナ3のノズル30に導
入され、LPG火炎と接触して、燃焼火炎を形成した。
これと同時に、バルブ76bを開いてキャリアガスとし
ての空気を4m3 /hの流量で第2キャリアガス導入管
76a内へ供給するとともに、種結晶用ホッパから種結
晶としてのαアルミナ粉末(コランダム、平均粒径1μ
m以下)を1.2kg/hの流量で第2キャリアガス導
入管76a内へ供給した。なお、原料粉末に対する種結
晶の質量割合は、原料の金属アルミニウム粉末10に対
して、種結晶としてのαアルミナ粉末が1の割合であ
る。これにより、種結晶としてのαアルミナ粉末を種結
晶供給部76から反応炉5内の火炎中に吹き込んで、金
属酸化物粉末としてのアルミナ粉末を合成した。そし
て、排風機86の吸引力によりアルミナ粉末を含む燃焼
排気ガスを吸引した。これにより、まず第1粉末捕集器
82で粒径の大きいアルミナ粉末(粗粒)が分級、捕集
され、次に第2粉末捕集器84で粒径の小さいアルミナ
粉末(微粒)が捕集された後、排ガスが系外へ放出され
る。なお、燃焼中において、補助捕集管87のバルブは
閉じられている。
【0037】前記実施例1及び実施例において、用いる
原料金属粉末の種類としては、アルミニウムの他に、珪
素、マグネシウム、チタン、珪素、ジルコニウム、その
他ムライト組成に調合した珪素とアルミニウムとの混合
物、スピネル組成に調合したマグネシウムとアルミニウ
ムとの混合物、コージェライト組成に調合したアルミニ
ウムとマグネシウムとシリコンとの混合物などを用いる
ことができる。また、これらの組成に調合した合金粉末
であってもよい。
【0038】(実施例3)上記実施例2では、種結晶と
してのアルミナ粉末を種結晶供給部76から反応炉5内
の火炎中に吹き込む方法を採用したが、この場合、火炎
に直接種結晶を吹き込むことにより火炎乱れが発生する
おそれがあり、また火炎中において生成した金属酸化物
粒子と種結晶との混合、分散が不十分となるおそれがあ
る。そこで、本実施例3では、予め原料粉末としての金
属アルミニウム粉末に種結晶としてのαアルミナ粉末を
混合、分散する方法を採用した。
【0039】つまり、上記金属アルミニウム粉末とαア
ルミナ粉末との混合粉末をホッパ64に供給し、バルブ
76bを閉じて種結晶供給部76を使わないこと以外
は、上記実施例2と同様の方法により、金属酸化物粉末
としてを合成した。なお、原料粉末に対する種結晶の質
量割合は、原料の金属アルミニウム粉末10に対して、
種結晶としてのαアルミナ粉末が1の割合である。
【0040】(評価)上記実施例2及び実施例3におい
て第1粉末捕集器82で回収されたアルミナ粉末につい
て、X線回折法にてコランダム相(安定な結晶相)の割
合を測定した。比較のため、種結晶としてのαアルミナ
粉末を用いないこと以外は上記実施例3と同様にアルミ
ナ粉末を合成した比較例2についても、同様にコランダ
ム相の割合を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0041】
【表3】 表3からも明らかなように、種結晶を添加することによ
り、安定な結晶相であるコランダム相の比率を増大させ
ることができる。また、種結晶を直接火炎中に導入した
実施例2よりも、種結晶を予め金属粉末に混合させた実
施例3の方がコランダム相の比率が増大した。
【0042】なお、原料粉末に対する種結晶の質量割合
は、燃焼安定化の観点から、原料の金属粉末10に対し
て種結晶が2以下であることが好ましい。ここで、一般
的な金属粉末燃焼法においては、平均粒径の異なった金
属酸化物粉末が合成される。これは、金属酸化物粉末の
生成過程に以下の2通りがあるためと考えられる。つま
り、(1)金属蒸気が酸素と反応しつつ互いに衝突・凝
集を繰り返しながら粒子成長し、自然冷却されて金属酸
化物粉末となる。(2)一部の金属粉末の燃焼により生
じた熱により金属粉末が溶け、融液状態で酸化された
後、自然冷却されて金属酸化物粉末となる。この場合、
(1)の生成過程による金属酸化物粉末よりも(2)の
生成過程により金属酸化物粉末の方が平均粒径が大きく
なる。したがって、従来の金属粉末燃焼法においては、
一括して回収した金属酸化物粉末を分級操作する必要が
あり、設備コスト及びランニングコスト上不利であっ
た。
【0043】しかし、前記実施例2に係る装置では、第
1粉末捕集器82と第2粉末捕集器84を用い、第1粉
末捕集器82で平均粒径の大きな金属酸化物粉末を分級
・捕集し、その後第2粉末捕集器84で平均粒径の小さ
な金属酸化物粉末を捕集する構成としたため、オンライ
ンでの分級・捕集が可能となった。前記実施例2におい
て、第1粉末捕集器82で回収したアルミナ粉末につい
て、水中に分散させ、レーザ回折法により、粒度分布を
測定した結果を図5及び表4に示す。また、同様の方法
により、第2粉末捕集器84で回収したアルミナ粉末に
ついて、粒度分布を測定した結果を図6及び表4に示
す。
【0044】
【表4】 表4からも明らかなように、第1粉末捕集器82では平
均粒径14.83μmのアルミナ粉末を分級・捕集し、
第2粉末捕集器84では平均粒径0.70μmのアルミ
ナ粉末を捕集し得ることが確認された。なお、この際の
第1粉末捕集器82でのアルミナ粉末の収率比は70%
で、第2粉末捕集器84でのアルミナ粉末の収率比は2
7%で、残りの3%は反応炉5の内壁への付着物であっ
た。
【0045】また、上記実施例2において、燃焼条件を
金属粉末の吹き込み速度を速め、酸化途上の粉末の火炎
高温部での滞留時間が短かくなるように変更して、実施
例2よりも粒径の小さいアルミナ粉末を合成し、同様に
粒度分布を測定した。第1粉末捕集器82で回収したア
ルミナ粉末についての粒度分布測定結果を図7及び表5
に、第2粉末捕集器84で回収したアルミナ粉末につい
ての粒度分布測定結果を図8及び表5に示す。
【0046】
【表5】 表5からも明らかなように、第1粉末捕集器82では平
均粒径4.93μmのアルミナ粉末を分級・捕集し、第
2粉末捕集器84では平均粒径0.70μmのアルミナ
粉末を捕集し得ることが確認された。なお、この際の第
1粉末捕集器82でのアルミナ粉末の収率比は62%
で、第2粉末捕集器84でのアルミナ粉末の収率比は3
5%で、残りの3%は反応炉5の内壁への付着物であっ
た。また、上記実施例2において、原料粉末にシリコン
粉末(平均粒径十〜数百μm)及びアルミニウム粉末
(平均粒径十〜数百μm)を重量比1:3の割合で混合
した混合粉末を用いて実施例2と同様の方法により、ム
ライト粉末を合成し、同様に粒度分布を測定した。第1
粉末捕集器82で回収したムライト粉末についての粒度
分布測定結果を図9及び表6に、第2粉末捕集器84で
回収したムライト粉末についての粒度分布測定結果を図
10及び表6に示す。
【0047】
【表6】 表6からも明らかなように、第1粉末捕集器82では平
均粒径9.53μmのムライト粉末を分級・捕集し、第
2粉末捕集器84では平均粒径0.48μmのムライト
粉末を捕集し得ることが確認された。なお、この際の第
1粉末捕集器82でのムライト粉末の収率比は32%
で、第2粉末捕集器84でのムライト粉末の収率比は6
4%で、残りの4%は反応炉5の内壁への付着物であっ
た。
【0048】前記実施例2においては、第1粉末捕集器
82にサイクロンを用い、かつ、第2粉末捕集器84に
バグフィルターを用いたが、第1粉末捕集器82及び第
2粉末捕集器84としてはこれらに限定されない。すな
わち、捕集する金属酸化物粉末の粒径や燃焼条件(ガス
条件)等に応じて、種々の捕集器を用いることが可能で
ある。例えば第1粉末捕集器82にはサイクロン等の遠
心式の捕集器の他、重力式や慣性式の捕集器を好適に用
いることができる。ただし、第1粉末捕集器82として
は、効率よく粗粒を分級し得る能力が要求されるため、
サイクロン等の遠心式の捕集器が好ましい。また、微粒
を捕集する第2粉末捕集器84としては、バグフィルタ
等の濾布式の捕集器の他、電気式の捕集器を好適に用い
ることができる。
【0049】一方、反応炉5内における全体のガス量を
調整することにより、第1粉末捕集器82及び第2粉末
捕集器84の分級条件を最適化することも可能である。
すなわち、第1〜第6ガス導入管51〜56から反応炉
5内にガス(酸素、エア等)を適当量調節して導入した
り、あるいは多量のガス量を増大する必要がある場合は
ガス導入管81a及び83aからそれぞれ第1粉末捕集
器82及び第2粉末捕集器84内にガスを大量に導入し
たりすることにより、第1粉末捕集器82及び第2粉末
捕集器84の分級条件を最適化することができる。
【0050】さらに、前述したように金属酸化物粉末の
生成過程に応じて平均粒径の異なる金属酸化物粉末が生
成された場合、これらの粗粒と微粒との収率比は火炎中
の金属粉末濃度分布(密度)及び温度分布によりほとん
ど決定される。用途によってはこれらの比率を適宜変更
した金属酸化物粉末が必要とされるが、火炎自身の制御
は非常に困難であるため、上記収率比を特に簡便な方法
で制御することが困難である。そこで、前記実施例2の
装置において、反応炉5内への金属粉末の投入量と上記
収率比との関係を調べた結果を表7に示すように、生成
する金属酸化物粉末の粗粒・微粒の収率比は、金属粉末
の反応炉5内への投入量に依存することを見いだした。
【0051】
【表7】 すなわち、金属粉末の投入量を減少させることにより、
火炎が小さくなり支燃性ガスとの混合が良くなり、結果
的に火炎内で蒸気化する金属の比率が増加(燃焼が良く
なった)ため、微粒の生成率が増加したものと考えられ
る。
【0052】この効果を利用し、前記実施例2の装置に
おいて、図11に示すように、反応炉5の頂部に3個の
バーナ7、又は図12に示すように5個のバーナ7を配
設し、アルミナ粉末を合成した結果を表8に示す。金属
粉末の全投入量は、それぞれ同一である。
【0053】
【表8】 表8からも明らかなように、バーナ7を複数用いること
により、金属粉末の全投入量を変えることなく、すなわ
ち製造効率を変えることなく、粗粒・微粒の収率比を大
幅に制御することが可能であり、バーナ7の数は多いほ
ど、より効果的に粗粒・微粒の収率比を制御することが
可能となる。
【0054】さらに、一般の金属粉末燃焼法において
は、燃焼開始時あるいは燃焼終了時など、一時的に燃焼
が不安定になると、未燃焼粉末が生成し易くなる。この
ため、このような未燃焼粉末が第1粉末捕集器82や第
2粉末捕集器84に混入することを防止する必要があ
る。このような場合、前記実施例2の装置では、第1接
続管83のバルブ83bを閉じるとともに、補助捕集管
87のバルブ87aを開放することにより、未燃焼粉末
を第1粉末捕集器82や第2粉末捕集器84に混入させ
ることなく補助粉末捕集器88に回収することが可能と
なる。なお、第1粉末捕集器82及び第2粉末捕集器8
4のラインを一時的に閉止する必要が生じた場合にも、
補助粉末捕集器88のラインをバイパスラインとして機
能させることもできる。また、バルブ87aは第1接続
管83に設ける代わりに、捕集管81に設けることも可
能である。この場合、バルブ87としては、反応炉5の
熱影響を受けやすいため、高耐熱性のものを使用するこ
とが好ましい。
【0055】さらに、前記実施例2の装置では、バーナ
7が第1及び第2冷却水供給部71及び74を有し、バ
ーナ7を水冷できる構造となっているため、燃焼火炎の
熱を受けるバーナ7の特に底面部に金属粉末が付着した
場合でも、金属粉末の温度を融点以下に保つことが可能
となり、付着金属の溶解・成長を抑制してバーナ7のノ
ズル70やガス供給部72〜73等の閉塞を防止するこ
とができる。
【0056】さらに、一般の金属粉末燃焼法により合成
される金属酸化物粉末は、粒度分布がシャープではある
が、微量の中空粗大粒子を含むことがある。これらの中
空粒子は、一般的に溶けた物質にガス等を吹き付けるこ
とにより生成させることから推察すると、火炎中の溶け
た金属あるいは酸化物にバーナ7から噴出供給される支
燃性ガス等が吹き付けられた結果生成したものと考えら
れる。したがって、中空粗大粒子の生成を抑制するため
には、火炎中の溶けた金属あるいは酸化物に、他のガス
等が強く吹き付けられるような状態及び領域を極力少な
くして、火炎を攪拌したり乱したりしないようにするこ
とが必要であると考えられる。そのためには、(1)反
応炉5内に吹き込まれる金属粉末とガスとの速度差を小
さくすること、具体的にはキャリアガスと支燃性ガスと
の速度差を小さくすることや、(2)火炎に近い部位へ
のガス吹き込み量を少なくしたり、あるいはガス吹き込
み速度を小さくしたりするなどの方法が考えられる。
【0057】そこで、前記実施例2において、第1、第
2支燃性ガス供給部73、75から反応炉5内へ送り込
む支燃性ガスの条件を固定し、金属粉末を送り込む第1
キャリアガス導入管62から反応炉5内へ送り込むキャ
リアガスの量及び線速を変化させる一連の実験の結果、
支燃性ガス及びキャリアガスの両者の線速の差が小さく
なるに従い、粗大粒子量が減少することが判明した。ま
た、火炎中心付近にて吹き込まれる酸素が高線速(ある
いは多量)であるほど、粗大粒子量が多くなることも判
明した。
【0058】なお、いずれの実施例も、可燃性ガスと支
燃性ガスとで形成される化学炎を利用しているが、可燃
性ガスを使用せず、金属粉末自体の燃焼熱で連続的に他
の金属粉末を燃焼させて形成される火炎を利用してもよ
い。この場合、金属粉末を吹き込むと共に着火すれば、
後は金属粉末の吹き込み、酸素ガスの吹き込みだけで連
続的に火炎が形成される。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1記載の金属
酸化物粉末の製造方法、及び請求項2記載の金属酸化粒
粉末の製造装置では、ノズルは先端部側の内径が大きい
段付き形状となっているので、キャリアガスとともに火
炎中に吹き込まれる金属粉末の吹き込み速度が遅くなる
ので、結晶成長途上にある粒子の火炎高温部周辺におけ
る滞留時間が長くなり、したがって、生成された金属酸
化物粒子の急冷を防ぐことができ、これにより金属酸化
物粉末中における安定な結晶相の比率を増加させること
が可能となる。しかも、キャリアガス流量、すなわち金
属原料の供給量を低下させることなく、上記吹き込み速
度を低下させることができるので、製造効率の低下を招
くことなく、金属酸化物粉末中における安定な結晶相の
比率を増加させることが可能となる。
【0060】また、火炎中での金属粉末の滞留時間が長
くなることに伴い、生成される粒子の成長が促進される
ので、粒径の大きな金属酸化物粉末を得ることができる
という効果もある。請求項3記載の金属酸化物粉末の製
造方法では、火炎中に種結晶が添加されているので、こ
の種結晶を核として特定の結晶相が成長し易くなり、結
晶成長が促進される。このため、金属酸化物粉末中にお
ける安定な結晶相の比率を増加させることが可能とな
る。
【0061】したがって、燃焼後の雰囲気を適当な手段
により加熱するといった設備コスト及びランニングコス
トの面から不利な方法を採用することなく、金属酸化物
粉末中における安定な結晶相の比率を増加させることが
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係る製造装置の模式図である。
【図2】実施例1に係る製造装置のバーナの断面図であ
る。
【図3】実施例2に係る製造装置の模式図である。
【図4】実施例2に係る製造装置のバーナの断面図であ
る。
【図5】実施例2に係る製造装置において、第1粉末捕
集器で捕集した金属酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ
である。
【図6】実施例2に係る製造装置において、第2粉末捕
集器で捕集した金属酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ
である。
【図7】実施例2に係る製造装置において、第1粉末捕
集器で捕集した金属酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ
である。
【図8】実施例2に係る製造装置において、第2粉末捕
集器で捕集した金属酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ
である。
【図9】実施例2に係る製造装置において、第1粉末捕
集器で捕集した金属酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ
である。
【図10】実施例2に係る製造装置において、第2粉末
捕集器で捕集した金属酸化物粉末の粒度分布を示すグラ
フである。
【図11】実施例2に係る製造装置において、バーナの
数及び配置を変更した他の態様を示す平面図である。
【図12】実施例2に係る製造装置において、バーナの
数及び配置を変更した他の態様を示す平面図である。
【符号の説明】
1、5は反応炉、2、6は金属粉末供給装置、3、7は
バーナ、4、8は回収装置、30、70はノズル、30
aは拡径部である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 之人 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素を含む高温の火炎中に目的とする金
    属酸化物粉末の一部を形成する金属粉末をキャリアガス
    とともに投入して金属酸化物粉末を合成する金属酸化物
    粉末の製造方法において、 先端部側の内径が大きい段付き形状となっているノズル
    を介して上記キャリアガスを吹き込むことによって、該
    キャリアガスの吹き込み速度を該ノズル内で低速にしつ
    つ、該キャリアガスを上記火炎中に投入することを特徴
    とする金属酸化物粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸素を含む高温の火炎中に目的とする金
    属酸化物粉末の一部を形成する金属粉末をキャリアガス
    とともにノズルを介して投入して金属酸化物粉末を合成
    するための金属酸化物粉末の製造装置において、 上記ノズルの内面形状は先端部側の内径が大きい段付き
    形状とされていることを特徴とする金属酸化物粉末の製
    造装置。
  3. 【請求項3】 酸素を含む高温の火炎中に目的とする金
    属酸化物粉末の一部を形成する金属粉末をキャリアガス
    とともに投入して金属酸化物粉末を合成する金属酸化物
    粉末の製造方法において、 上記火炎中に種結晶を添加することを特徴とする金属酸
    化物粉末の製造方法。
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