JPH07246854A - 差動制限トルク制御装置 - Google Patents

差動制限トルク制御装置

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JPH07246854A
JPH07246854A JP6042214A JP4221494A JPH07246854A JP H07246854 A JPH07246854 A JP H07246854A JP 6042214 A JP6042214 A JP 6042214A JP 4221494 A JP4221494 A JP 4221494A JP H07246854 A JPH07246854 A JP H07246854A
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speed difference
differential limiting
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limiting torque
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 左右駆動輪速差情報に基づき左右駆動輪間の
差動制限トルクを電子制御する差動制限トルク制御装置
において、グリップ旋回時でのタイトコーナブレーキ防
止と駆動輪の片輪空転が発生する走行時での高応答によ
るトラクション性能確保との両立を図ること。 【構成】 左駆動輪検出値と右駆動輪検出値のうち大き
いほうを選択して駆動輪速とする駆動輪速決定手段gを
設け、決定した駆動輪速と算出した従動輪速の差である
前後輪車輪速差が設定値以下である時、タイトコーナブ
レーキ防止制御を行ない、算出された前後輪車輪速差が
設定値を超えている時、差動制限トルクの左右駆動輪速
差比例制御を行なう差動制限トルク制御手段kを設け
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、左右駆動輪速差情報に
基づき左右駆動輪間の差動制限トルクを電子制御する差
動制限トルク制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、差動制限トルク制御装置として
は、例えば、特開平1−215628号公報に記載のも
のが知られている。
【0003】上記従来出典には、旋回半径が大きく横加
速度が大きいほど大きな値で与える差動制限トルク成分
と、センサ検出による左右駆動輪スリップ量(左右駆動
輪速値の差)に基づく差動制限トルク成分の和により目
標差動制限トルクを演算し、この目標差動制限トルクを
得る制御を行なう装置が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の差動制限トルク制御装置にあっては、左右駆動輪ス
リップ量をセンサ検出値の差により求めるようにしてい
るため、この左右駆動輪スリップ量には、旋回時の旋回
軌跡差(旋回外輪側が旋回半径が大きく旋回内輪側が旋
回半径が小さくなる)による左右駆動輪速差が含まれる
ことになり、例えば、低速でのグリップ旋回時に実際に
は左右駆動輪にスリップが発生していないにもかかわら
ず、旋回軌跡差に基づく左右駆動輪スリップ量が検出さ
れ、左右駆動輪間に差動制限トルクが付与されることで
タイトコーナブレーキが発生してしまうという問題があ
る。
【0005】そこで、旋回半径を車速と左右従動輪速差
や車速と横加速度により推定し、センサ検出による左右
駆動輪スリップ量を旋回軌跡差分で補正する案あがある
が、上記の様に、低速でのグリップ旋回時にはタイヤ径
や横加速度センサのバラツキによる影響が大きくでて、
旋回軌跡分補正値が真の値からズレてしまい、補正不足
の場合にはタイトコーナブレーキが残るし、補正過剰の
場合には、差動制限トルクの左右駆動輪速差比例制御の
目的である左右スプリットμ路旋回時におけるトラクシ
ョン性能向上が達成されない。
【0006】この問題を解決するために、本出願人は、
特願平4−292617号において、グリップ旋回時に
は各輪の旋回半径の差の分による小さい車輪速差しかで
ないことで前後輪車輪速差の値が小さくなるが、左右ス
プリットμ路走行時には低μ路側の駆動輪スリップが大
きくなることで前後輪車輪速差の値が大きくなるという
点に着目し、前後輪車輪速差の大きさによりグリップ旋
回時か左右スプリットμ路走行時かの判別を行なう発明
を提案した。
【0007】しかし、走行判別を行なう前後輪車輪速差
を左右駆動輪速の平均値と左右従動輪速の平均値との差
により算出した場合、高μ路からスプリットμ路への進
入時、低μ路側の駆動輪が一輪だけ空転し始めても左右
駆動輪速の平均値が用いられることで前後輪車輪速差の
上昇が緩やかとなり、トラクション性能を確保する左右
駆動輪速差比例の差動制限制御の開始時期が遅れてしま
う。
【0008】また、電子制御四輪駆動車やビスカスカッ
プリング付き四輪駆動車等のように、前後輪回転速度差
が発生した場合、駆動輪に伝達されているエンジントル
クを従動輪側へ配分する車両の場合、エンジントルクが
前後輪に配分される制御が働いたら前後輪回転速度差が
小さく抑えられることで、スプリットμ路走行時や低μ
路走行時に左右駆動輪速差比例の差動制限制御が解除さ
れ、良好な加速性が得られなくなる。例えば、スプリッ
トμ路走行時には、エンジントルクの前後輪配分により
低μ路側の駆動輪と従動輪が共に空転し、平均値による
前後輪車輪速差はほぼゼロとなってしまう。また、低μ
路走行時にエンジントルクが前後輪に配分される制御が
働いた場合、対角空転状態や三輪空転状態になることも
あるが、このような場合にも平均値による前後輪車輪速
差はほぼゼロとなってしまう。
【0009】本発明は、上記問題に着目してなされたも
ので、第1の目的とするところは、左右駆動輪速差情報
に基づき左右駆動輪間の差動制限トルクを電子制御する
差動制限トルク制御装置において、グリップ旋回時での
タイトコーナブレーキ防止と駆動輪の片輪空転が発生す
る走行時での高応答によるトラクション性能確保との両
立を図ることにある。
【0010】第2の目的とするところは、前後輪回転速
度差対応制御を行なう四輪駆動車において、グリップ旋
回時でのタイトコーナブレーキ防止と駆動輪の片輪空転
を含む様々な態様の車輪空転走行状態でのトラクション
性能確保との両立を図ることにある。
【0011】第3の目的とするところは、上記目的に加
え、旋回影響を除いた精度のよい左右駆動輪速差情報を
得ることにある。
【0012】第4の目的とするところは、上記目的に加
え、左右駆動輪速差比例制御とタイトコーナ対応制御と
の制御ハンチングの防止を図ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るため第1の発明の差動制限トルク制御装置では、図1
のクレーム対応図に示すように、左右駆動輪間に設けら
れ、外部からの制御指令に応じた差動制限トルクを付与
する差動制限トルク付与手段aと、左右の駆動輪と左右
の従動輪の車輪速をそれぞれ検出する左駆動輪速検出手
段b,右駆動輪速検出手段c,左従動輪速検出手段d,
右従動輪速検出手段eと、左右の駆動輪速差を算出する
左右駆動輪速差算出手段fと、左駆動輪検出値と右駆動
輪検出値のうち大きいほうを選択して駆動輪速とする駆
動輪速決定手段gと、左従動輪検出値と右従動輪検出値
の平均値を算出して従動輪速とする従動輪速算出手段h
と、決定した駆動輪速と算出した従動輪速の差により前
後輪車輪速差を算出する前後輪車輪速差算出手段iと、
算出された前後輪車輪速差が設定値以下である時、左右
駆動輪速差の発生にかかわらず差動制限トルクをゼロも
しくはゼロに近い小さな値に決定し、算出された前後輪
車輪速差が設定値を超えている時、左右駆動輪速差に応
じた差動制限トルクに決定する差動制限トルク決定手段
jと、前記差動制限トルク決定手段jにより決定された
差動制限トルクが得られる制御指令を前記差動制限トル
ク付与手段aに出力する差動制限トルク制御手段kと、
を備えていることを特徴とする。
【0014】上記第2の目的を達成するため第2の発明
の差動制限トルク制御装置では、図1のクレーム対応図
に示すように、請求項1記載の差動制限トルク制御装置
は、エンジンからの駆動力が、前後輪のうち一方の駆動
輪へは直接的に伝達され、他方の従動輪へはトランスフ
ァクラッチmを介して伝達され、このトランスファクラ
ッチmは前後輪回転速度差の発生に応じて締結力を増
し、前後輪回転速度差の発生がない2輪駆動状態から4
輪駆動状態へと駆動力配分が変更される四輪駆動車に搭
載されていることを特徴とする。
【0015】上記第3の目的を達成するため第3の発明
の差動制限トルク制御装置では、図1のクレーム対応図
に示すように、請求項1または請求項2記載の差動制限
トルク制御装置において、旋回時に内輪と外輪との旋回
半径の差により生じる旋回軌跡左右駆動輪速差を算出す
る旋回軌跡左右駆動輪速差算出手段nを設け、前記左右
駆動輪速差算出手段fは、左駆動輪検出値と右駆動輪検
出値との差の絶対値から旋回軌跡左右駆動輪速差算出値
を差し引くことで左右駆動輪速差を算出する手段である
ことを特徴とする。
【0016】上記第4の目的を達成するため第4の発明
の差動制限トルク制御装置では、図1のクレーム対応図
に示すように、請求項1〜請求項3記載の差動制限トル
ク制御装置において、前後輪車輪速差の設定値として、
左右駆動輪速差対応差動制限制御の開始しきい値である
第1設定値と、左右駆動輪速差対応差動制限制御の終了
しきい値である第2設定値とを設定し、第1設定値と第
2設定値とにヒステリシスを持たせた設定値設定手段o
を設けていることを特徴とする。
【0017】
【作用】第1発明の作用を説明する。
【0018】車両走行時、駆動輪速決定手段gにおい
て、左駆動輪検出値と右駆動輪検出値のうち大きいほう
を選択して駆動輪速とされ、従動輪速算出手段hにおい
て、左従動輪検出値と右従動輪検出値の平均値を算出し
て従動輪速とされ、前後輪車輪速差算出手段iにおい
て、決定した駆動輪速と算出した従動輪速の差により前
後輪車輪速差が算出される。そして、前後輪車輪速差算
出手段iにおいて、算出された前後輪車輪速差が設定値
以下である時、差動制限トルク決定手段jにおいて、左
右駆動輪速差の発生にかかわらず差動制限トルクがゼロ
もしくはゼロに近い小さな値に決定され、差動制限トル
ク制御手段kにおいて、差動制限トルク付与手段aに対
し左右駆動輪間に付与する差動制限トルクをゼロもしく
はゼロに近い小さな値とする制御指令が出力される。
【0019】ここで、例えば、後輪駆動車でのグリップ
左旋回時を考えると、各輪の旋回半径が異なることによ
り、右前輪速>右後輪速>左前輪速>左後輪速という関
係を示し、前後輪車輪速差が設定値以下となる。つま
り、前後輪車輪速差が設定値以下という条件によりグリ
ップ旋回が判別され、この時に差動制限トルクがゼロも
しくはゼロに近い小さな値を与えることで、タイトコー
ナブレーキが確実に防止される。
【0020】一方、前後輪車輪速差算出手段iにおい
て、算出された前後輪車輪速差が設定値を超えている
時、差動制限トルク決定手段jにおいて、左右駆動輪速
差算出手段fからの左右駆動輪速差に応じた差動制限ト
ルクに決定され、差動制限トルク制御手段kにおいて、
差動制限トルク付与手段aに対し決定した差動制限トル
クを得る制御指令が出力される。
【0021】ここで、例えば、後輪駆動車での左輪側が
低μで右輪側が高μの左右スプリットμ路走行時の車輪
速を考えると、左後輪速のみが大きな値を示すという関
係を示し、前後輪車輪速差が設定値を超える。つまり、
前後輪車輪速差が設定値を超えるという条件によりスタ
ック時を含む滑りやすい路面走行が判別され、この時に
左右駆動輪速差に対応する差動制限トルクが付与される
ことで、トラクション性能が向上する。しかも、左駆動
輪検出値と右駆動輪検出値のうち大きいほうを選択して
駆動輪速としていることで、平均値を駆動輪速にする場
合に比べ、前後輪車輪速差が設定値を超える時期が早ま
り、駆動輪の片輪空転に対し応答よく左右駆動輪速差対
応の差動制限トルク制御を開始することができる。
【0022】第2発明の作用を説明する。
【0023】請求項1記載の差動制限トルク制御装置
が、前後輪回転速度差の発生に応じて締結力を増し、前
後輪回転速度差の発生がない2輪駆動状態から4輪駆動
状態へと駆動力配分が変更される四輪駆動車に搭載され
ていることで、スプリットμ路走行時に駆動力配分作用
が働くことで低μ路側の前後輪が共に空転状態となった
り、また、低μ路走行時に駆動力配分作用が働くことで
対角空転や三輪空転状態となったりすることがある。こ
のような場合、平均値による駆動輪速と従動輪速の差で
前後輪車輪速差を算出する場合には、前後輪車輪速差が
設定値以下となり左右駆動輪速差対応の差動制限トルク
制御が行なわれないことになるが、セレクトハイにより
駆動輪速を決定していることで、四輪駆動車特有の片側
空転や対角空転や三輪空転状態において前後輪車輪速差
が設定値を超えることで、左右駆動輪速差対応の差動制
限トルク制御により良好な加速性を得るトラクション性
能が確保される。
【0024】第3発明の作用を説明する。
【0025】左右駆動輪速差を算出するにあたって、旋
回軌跡左右駆動輪速差算出手段nにおいて、旋回時に内
輪と外輪との旋回半径の差により生じる旋回軌跡左右駆
動輪速差が算出され、左右駆動輪速差算出手段fにおい
て、左駆動輪検出値と右駆動輪検出値との差の絶対値か
ら旋回軌跡左右駆動輪速差算出値を差し引くことで左右
駆動輪速差が算出される。
【0026】したがって、旋回時に内外輪の先か半径と
車速に基づく左右駆動輪速差の影響が排除され、精度の
よい左右駆動輪速差情報を得ることができる。
【0027】第4発明の作用を説明する。
【0028】差動制限トルクを決定するにあたって、設
定値設定手段oには、左右駆動輪速差対応差動制限制御
の開始しきい値である第1設定値と、左右駆動輪速差対
応差動制限制御の終了しきい値である第2設定値とが設
定されていて、しかも、第1設定値と第2設定値とにヒ
ステリシスが持たせてあるため、前後輪車輪速差が設定
値付近で変動するような場合、差動制限トルクに落差の
ある左右駆動輪速差比例制御とタイトコーナ対応制御と
の制御ハンチングが防止される。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0030】まず、構成を説明する。
【0031】図2は本発明実施例の差動制限トルク制御
装置が適用された後輪駆動車ベースの電子制御トルクス
プリット四輪駆動車の全体システム図である。
【0032】図2において、1はエンジン、2はトラン
スミッション、3はプロペラシャフト、4は電制リミテ
ッドスリップディファレンシャル(以下、電制LSDと
略称する)、5,6は後輪、7,8は前輪、23は電制
トランスファ装置(トランスファクラッチmに相当)、
24はフロントディファレンシャルである。
【0033】前記電制LSD4には、油圧ユニット9か
ら付与されるクラッチ制御圧に応じて左右後輪5,6間
に差動制限トルクを発生させる差動制限クラッチ10が
内蔵されている。
【0034】前記油圧ユニット9は、油圧源11とLS
D制御バルブ12とを有して構成されている。尚、油圧
ユニット9及び差動制限クラッチ10は、差動制限トル
ク付与手段aに相当する。
【0035】前記LSD制御バルブ12は、アクティブ
LSDコントローラ13からの制御電流ILSD により制
御作動をし、差動制限クラッチ10へのクラッチ制御圧
を作り出す。
【0036】前記アクティブLSDコントローラ13に
は、左前輪回転センサ14からの左前輪回転数NFLと、
右前輪回転センサ15からの右前輪回転数NFRと、左後
輪回転センサ16からの左後輪回転数NRLと、右後輪回
転センサ17からの右後輪回転数NRRと、横加速度セン
サ18からの横加速度YG と、前後加速度センサ19か
らの前後加速度XG と、アクセル開度センサ20からの
アクセル開度ACCと、ブレーキスイッチ21からのスイ
ッチ信号BSと、ABSコントローラ22からのABS作
動信号ASなどが入力される。
【0037】前記電制トランスファ装置23には、図外
の湿式多板クラッチが内蔵されていて、このクラッチの
締結油圧を電子制御により作り出すことで、クラッチ締
結力に応じて前輪7,8側へエンジントルクを伝達す
る。クラッチ締結油圧は、前後輪回転速度の発生に応
じ、その比例ゲインが横加速度YG が小さいほど高ゲイ
ンにて高まる油圧に制御される。したがって、前後輪駆
動力配分制御としては、前後輪回転速度差の発生のない
後輪駆動状態から前後輪回転速度差の発生に応じて前輪
側への駆動力配分を増してゆく制御となる。
【0038】次に、作用を説明する。
【0039】[差動制限トルク制御作動処理]図3はア
クティブLSDコントローラ13で行なわれる差動制限
トルク制御作動処理の流れを示すフローチャートであ
り、以下、各ステップについて説明する。
【0040】ステップ30では、左前輪回転数NFLと右
前輪回転数NFRと左後輪回転数NRLと右後輪回転数NRR
と横加速度YG が読み込まれる。
【0041】ステップ31では、左前輪回転数NFLと右
前輪回転数NFRと左後輪回転数NRLと右後輪回転数NRR
からそれぞれ左前輪速VFLと右前輪速VFRと左後輪速V
RLと右後輪速VRRが演算される(各車輪速検出手段b〜
eに相当)。
【0042】ステップ32では、車体速VF が左前輪速
VFLと右前輪速VFRのうち小さい方を選択することで求
められ、後輪速VRMが左後輪速VRLと右後輪速VRRのう
ち大きい方を選択することで求められ(駆動輪速決定手
段gに相当)、左右前輪速差ΔVF が左前輪速VFLと右
前輪速VFRの差の絶対値により算出され、左右後輪速差
ΔVR が左後輪速VRLと右後輪速VRRの差の絶対値によ
り算出され、前後輪車輪速差ΔVFRが後輪速VRMと前輪
速平均値VFAの差により算出される(従動輪速算出手段
h及び前後輪車輪速差算出手段iに相当)。
【0043】ステップ33では、第1旋回半径R1,第
2旋回半径R2及び第2旋回半径R2の限界値である限
界旋回半径RLが下記の式によりそれぞれ算出される。
【0044】R1=VF2/YG R2=VF /(K1・ΔVF ) K1;定数 RL=max(f(VF2),x) x;例えば
5m ステップ34では、車体速VF と横加速度YG の大きさ
により下記に示すように旋回半径Rが選択される。
【0045】 i)VF ≦VFO VFO;例え
ば、5km/h R=x ii)VF >VFO,かつ,YG ≦YGO YGO;例え
ば、0.05[G] R=max(R2,RL) iii)VF >VFO,かつ,YG >YGO R=R1 ステップ35では、旋回時に内外輪の旋回軌跡差により
生じる旋回軌跡左右後輪速差ΔVR'が下記の式により算
出される(旋回軌跡左右左右駆動輪速差算出手段nに相
当)。
【0046】 ΔVR'=K2・VF /R K2;定数 ステップ36では、検出による左右後輪速差ΔVR から
補正要素である旋回軌跡左右後輪速差ΔVR'を差し引く
下記の式で制御用左右後輪速差ΔVRRが算出される(左
右駆動輪速差算出手段fに相当)。
【0047】ΔVRR=ΔVR −ΔVR' ステップ37では、左右後輪速差比例の差動制限トルク
TΔVが下記の式により算出される。
【0048】TΔV=C・ΔVRR Cは比例ゲインで、図5に示すように、発進域の車体速
VF で発進性能を高めるために大きな値C1とし、走行
域の車体速VF では修正操舵等の舵の効きを良好にする
ために小さな値C2としている。
【0049】ステップ38では、前後輪車輪速差ΔVFR
の大きさにより下記に示すように差動制限トルクTが決
定される(差動制限トルク決定手段jに相当)。
【0050】 i)TFLAG=0,かつ,ΔVFR≧V1の時 TFLAG=1にセット ii)TFLAG=1,かつ,ΔVFR≦V2の時 TFLAG=0にセット iii)TFLAG=1の時 T=TΔV iv)TFLAG=0の時 T=0 ここで、TFLAG=0は、差動制限トルクTをゼロとする
グリップ旋回対応制御時を示し、TFLAG=1は左右後輪
速差比例制御時を示す。
【0051】また、前後輪車輪速差設定値V1,V2
は、図4に示すように、差動制限トルクTを0からTΔ
Vへと移行させる時は第1設定値V1とし、逆に、TΔ
Vから0へと移行させる時は第2設定値V2(<V1)
として、両設定値V1,V2にヒステリシスを持たせて
いる(設定値設定手段oに相当)。
【0052】ステップ39では、ステップ38で決定さ
れた差動制限トルクTが得られる制御電流ILSD がLS
D制御バルブ12に出力される(差動制限トルク制御手
段kに相当)。ちなみに、T=TΔVで与えられる左右
後輪速差比例制御時には、図5に示す特性により左右の
後輪5,6間に差動制限トルクが付与される。
【0053】[旋回半径の推定]旋回発進時や旋回停止
時等の極低速旋回時には、ステップ34で旋回半径Rが
一定値xで与えられる。
【0054】つまり、5km/h以下の車速の時には、タイ
ヤも極低速回転するので、パルス信号をカウントして車
輪速を得る各車輪速センサ14,15,16,17から
の車輪速検出精度が保証されず、左右前輪速差ΔVF を
用いても旋回半径Rを正確に算出することができない。
勿論、横加速度センサ18を用いる場合、極低横加速度
域では出力オフセットの影響が大きくでて検出精度が保
証されない。
【0055】そこで、5km/h以下の車速の時には、旋回
補正に影響しないように、旋回半径Rを一定値x(5
m)で与えるようにしている。
【0056】車体速VF が設定車速VFO(5km/h)を超
え、かつ、横加速度YG が設定横加速度YGO(0.05G)
以下の低横加速度旋回時には、ステップ34で旋回半径
Rが、R=max(R2,RL)で与えられる。
【0057】つまり、低横加速度域での横加速度センサ
18からの出力は、Gセンサ出力オフセットの影響が大
きくでて検出精度が保証されない。これに対し、低横加
速度域ではタイヤの路面グリップ状態が良好なので、各
車輪速センサ14,15,16,17からの車輪速検出
精度が十分に保証される。
【0058】そこで、低横加速度旋回時には基本的に、
旋回半径Rとして、車体速VF と左右前輪速差ΔVF に
より求められる第2旋回半径R2を選択することで、精
度の高い旋回半径Rが推定される。
【0059】車体速VF が設定車速VFO(5km/h)を超
え、かつ、横加速度YG が設定横加速度YGO(0.05G)
を超える高横加速度旋回時には、ステップ34で旋回半
径Rが、R=R1で与えられる。
【0060】つまり、高横加速度域での横加速度センサ
18からの出力は、Gセンサ出力オフセットの影響が小
さく抑えられ検出精度が十分に保証される。これに対
し、高横加速度域での各車輪速センサ14,15,1
6,17からの車輪速検出精度は、タイヤスリップやタ
イヤ径のバラツキの影響が大きくでて車輪速検出精度が
保証されない。
【0061】そこで、高横加速度旋回時には、旋回半径
Rとして、車体速VF と横加速度YGにより求められる
第1旋回半径R1を選択することで、精度の高い旋回半
径Rが推定される。
【0062】[グリップ旋回時]高μ路での低速旋回等
によるグリップ旋回時には、旋回半径Rの推定により本
来、検出による左右後輪速差ΔVR と旋回軌跡左右後輪
速差ΔVR'とが同じ値となり、ステップ37での左右後
輪速差比例の差動制限トルクTΔVの算出結果はゼロと
なるべきである。しかし、旋回半径Rが推定である限り
は必ずしも差動制限トルクTΔV=0とはならず、差動
制限トルクが付与されてタイトコーナブレーキを発生す
る場合がある。
【0063】そこで、例えば、タイヤ径が一定であり左
右後輪5,6の駆動スリップがなく、差動制限トルクを
付与することでタイトコーナブレーキが発生するような
低速での左旋回時を考えると、図6に示すように、各輪
の旋回半径の関係は、右前輪旋回半径>右後輪旋回半径
>左前輪旋回半径>左後輪旋回半径という関係を示し、
このように旋回半径が異なることで、右前輪速VFR>右
後輪速VRR≧左前輪速VFL>左後輪速VRLとなり、セレ
クトハイによる後輪速VRMと前輪速平均値VFAとの差で
ある前後輪車輪速差ΔVFRが第1設定値V1未満とな
る。
【0064】したがって、車輪速が旋回半径により決ま
る時には後輪速VRMと従動輪速平均値VFAとの差である
前後輪車輪速差ΔVFRが第1設定値V1未満となること
で、グリップ旋回時を判別できる。
【0065】この点に着目し、ステップ38では、TFL
AG=0の時にT=0とし、TFLAG=0であれば前後輪車
輪速差ΔVFRが設定値V1に達するまでT=0を維持す
るグリップ旋回対応制御時を行なうことで、グリップ旋
回時には確実にタイトコーナブレーキを防止するように
している。
【0066】 [スタック時を含む滑りやすい路面での走行時]例え
ば、図7(イ) に示すように、タイヤ径が一定であり、左
輪側が低μで右輪側が高μの左右スプリットμ路での発
進緩加速時の車輪速を考えると、図7(ロ)に示すよう
に、最初は停車のままで低μ路側駆動輪である左後輪速
VRLのみが空転し、その後、前輪への駆動力配分制御が
働くと、低μ路側従動輪である左前輪速VFLが空転し始
め、高μ路側の右後輪速VRRと右前輪速VFRは車両の緩
加速にしたがって滑らかに上昇する特性を示す。
【0067】よって、左右スプリットμ路発進時には、
図8に示すように、片側空転状態となり、前後輪車輪速
差を後輪速平均値VRAと前輪速平均値VFAとの差ΔVF
R’で与えた場合、ΔVFR’≒0となり、差動制限トル
クが付与されず片側空転を許し、トラクション性能が劣
る。
【0068】これに対し、前後輪車輪速差ΔVFRをセレ
クトハイによる後輪速VRMと前輪速平均値VFAとの差で
与えた場合、ΔVFRは第1設定値V1以上となる。
【0069】この片輪空転状態と同様に、図8に示す対
角空転状態,三輪空転状態,一輪空転状態の各態様場合
には、いずれも駆動輪である後輪の片輪が空転してい
て、この空転している後輪速がセレクトハイにより後輪
速VRMとして選択され、後輪車輪速差ΔVFRが第1設定
値V1以上となることで、スタック時を含む滑りやすい
路面での走行時を判別できる。
【0070】この点に着目し、ステップ83では、TFL
AG=1の時にT=TΔVとし、TFLAG=1であれば前後
輪車輪速差ΔVFRが設定値V2に達するまでT=ΔVを
維持する左右後輪速差比例制御を行なうことで、スタッ
ク時を含む滑りやすい路面での走行時においてトラクシ
ョン性能の向上が図られる。
【0071】しかも、セレクトハイにより後輪速VRMを
選択して駆動輪速としていることで、平均値を駆動輪速
にする場合に比べ、前後輪車輪速差ΔVFRが第1設定値
V1を超える時期が早まり、後輪の片輪空転に対し応答
よく左右後輪速差比例の差動制限トルク制御を開始する
ことができる。
【0072】次に、効果を説明する。
【0073】(1)左右後輪速差情報に基づき左右後輪
5,6間の差動制限トルクを電子制御する差動制限トル
ク制御装置において、セレクトハイによる後輪速VRMと
前輪速平均値VFAとの差である前後輪車輪速差ΔVFRが
第1設定値V1より大きいか否かで走行判別し、グリッ
プ旋回時であるとの判別時には差動制限トルクTをゼロ
とするタイトコーナブレーキ防止制御を行ない、スタッ
ク時を含む滑りやすい路面走行時であるとの判別時には
差動制限トルクTの左右駆動輪速差比例制御を行なう装
置としたため、グリップ旋回時でのタイトコーナブレー
キ防止と駆動輪の片輪空転が発生する走行時での高応答
によるトラクション性能確保との両立を図ることができ
る。
【0074】(2)実施例の差動制限制御装置が適用さ
れる車両を、後輪駆動ベースで前後輪回転速度の発生に
応じて前輪側への駆動力配分を増してゆく電子制御トル
クスプリット四輪駆動車としたため、グリップ旋回時で
のタイトコーナブレーキ防止と図8に示す後輪の片輪空
転を含む様々な態様の車輪空転走行状態でのトラクショ
ン性能確保との両立を図ることができる。
【0075】(3)検出による左右後輪速差ΔVR から
推定により求められた旋回半径Rに基づく旋回軌跡左右
後輪速差ΔVR'を差し引く式で制御用左右後輪速差ΔV
RRを得る装置としたため、旋回影響を除いた精度のよい
左右駆動輪速差情報を得ることができる。
【0076】(4)グリップ旋回時か滑りやすい路面走
行時かを判別する前後輪車輪速差ΔVFRの設定値V1,
V2にヒステリシスを持たせたため、1つの設定値でタ
イトコーナブレーキ防止制御と左右駆動輪速差比例制御
とを切り換える場合、設定値前後の前後輪車輪速差ΔV
FRが発生する状況下で差動制限トルクが高低を繰り返す
制御ハンチングを防止することができる。
【0077】以上、実施例を図面により説明してきた
が、具体的な構成は実施例に限られるものではなく、本
発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加等があ
っても本発明に含まれる。
【0078】例えば、適用車両が後輪駆動車や前輪駆動
車であってもグリップ旋回時でのタイトコーナブレーキ
防止と駆動輪の片輪空転が発生する走行時での高応答に
よるトラクション性能確保との両立を図ることができる
し、前輪駆動ベースの四輪駆動車(ビスカス式や電子制
御式)にも適用できる。
【0079】また、実施例では、油圧式の多板クラッチ
により差動制限トルクを付与する例を示したが、外部か
らの制御指令により可変に差動制限トルクを制御できる
ものであれば電磁クラッチなどであっても良い。
【0080】
【発明の効果】請求項1記載の第1の発明にあっては、
左右駆動輪速差情報に基づき左右駆動輪間の差動制限ト
ルクを電子制御する差動制限トルク制御装置において、
左駆動輪検出値と右駆動輪検出値のうち大きいほうを選
択して駆動輪速とする駆動輪速決定手段を設け、決定し
た駆動輪速と算出した従動輪速の差である前後輪車輪速
差が設定値以下である時、タイトコーナブレーキ防止制
御を行ない、算出された前後輪車輪速差が設定値を超え
ている時、差動制限トルクの左右駆動輪速差比例制御を
行なう装置としたため、グリップ旋回時でのタイトコー
ナブレーキ防止と駆動輪の片輪空転が発生する走行時で
の高応答によるトラクション性能確保との両立を図るこ
とができるという効果が得られる。
【0081】請求項2記載の第2の発明にあっては、請
求項1記載の差動制限トルク制御装置を前後輪回転速度
差の発生がない2輪駆動状態から4輪駆動状態へと駆動
力配分が変更される四輪駆動車に搭載したため、グリッ
プ旋回時でのタイトコーナブレーキ防止と駆動輪の片輪
空転を含む様々な態様の車輪空転走行状態でのトラクシ
ョン性能確保との両立を図ることができるという効果が
得られる。
【0082】請求項3記載の第3の発明にあっては、請
求項1または請求項2記載の差動制限トルク制御装置に
おいて、左駆動輪検出値と右駆動輪検出値との差の絶対
値から旋回軌跡左右駆動輪速差算出値を差し引くことで
左右駆動輪速差を算出する装置としたため、上記効果に
加え、旋回影響を除いた精度のよい左右駆動輪速差情報
を得ることができるという効果が得られる。
【0083】請求項4記載の第4の発明にあっては、請
求項1〜請求項3記載の差動制限トルク制御装置におい
て、左右駆動輪速差対応差動制限制御の開始しきい値で
ある第1設定値と、左右駆動輪速差対応差動制限制御の
終了しきい値である第2設定値とにヒステリシスを持た
せた装置としたため、上記効果に加え、左右駆動輪速差
比例制御とタイトコーナ対応制御との制御ハンチングの
防止を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の差動制限トルク制御装置を示すクレー
ム対応図である。
【図2】実施例の差動制限トルク制御装置が適用された
後輪駆動車の全体システム図である。
【図3】実施例装置のアクティブLSDコントローラで
行なわれる差動制限トルク制御作動処理の流れを示すフ
ローチャートである。
【図4】実施例装置での前後輪車輪速差設定値V1,V
2のヒステリシス特性図である。
【図5】実施例装置での左右後輪速差比例の差動制限ト
ルク特性図である。
【図6】グリップ旋回時の旋回状態説明図である。
【図7】左右スプリットμ路での緩加速発進時での各輪
の車輪速特性図である。
【図8】各走行状態での制御に用いる前後輪車輪速差の
発生状況に示す図である。
【符号の説明】
a 差動制限トルク付与手段 b 左駆動輪速検出手段 c 右駆動輪速検出手段 d 左従動輪速検出手段 e 右従動輪速検出手段 f 左右駆動輪速差算出手段 g 駆動輪速決定手段 h 従動輪速算出手段 i 前後輪車輪速差算出手段 j 差動制限トルク決定手段 k 差動制限トルク制御手段 m トランスファクラッチ n 旋回軌跡左右駆動輪速差算出手段 o 設定値設定手段

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 左右駆動輪間に設けられ、外部からの制
    御指令に応じた差動制限トルクを付与する差動制限トル
    ク付与手段と、 左右の駆動輪と左右の従動輪の車輪速をそれぞれ検出す
    る左駆動輪速検出手段,右駆動輪速検出手段,左従動輪
    速検出手段,右従動輪速検出手段と、 左右の駆動輪速差を算出する左右駆動輪速差算出手段
    と、 左駆動輪検出値と右駆動輪検出値のうち大きいほうを選
    択して駆動輪速とする駆動輪速決定手段と、 左従動輪検出値と右従動輪検出値の平均値を算出して従
    動輪速とする従動輪速算出手段と、 決定した駆動輪速と算出した従動輪速の差により前後輪
    車輪速差を算出する前後輪車輪速差算出手段と、 算出された前後輪車輪速差が設定値以下である時、左右
    駆動輪速差の発生にかかわらず差動制限トルクをゼロも
    しくはゼロに近い小さな値に決定し、算出された前後輪
    車輪速差が設定値を超えている時、左右駆動輪速差に応
    じた差動制限トルクに決定する差動制限トルク決定手段
    と、 前記差動制限トルク決定手段により決定された差動制限
    トルクが得られる制御指令を前記差動制限トルク付与手
    段に出力する差動制限トルク制御手段と、 を備えていることを特徴とする差動制限トルク制御装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の差動制限トルク制御装置
    は、エンジンからの駆動力が、前後輪のうち一方の駆動
    輪へは直接的に伝達され、他方の従動輪へはトランスフ
    ァクラッチを介して伝達され、このトランスファクラッ
    チは前後輪回転速度差の発生に応じて締結力を増し、前
    後輪回転速度差の発生がない2輪駆動状態から4輪駆動
    状態へと駆動力配分が変更される四輪駆動車に搭載され
    ていることを特徴とする差動制限トルク制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の差動制限
    トルク制御装置において、 旋回時に内輪と外輪との旋回半径の差により生じる旋回
    軌跡左右駆動輪速差を算出する旋回軌跡左右駆動輪速差
    算出手段を設け、 前記左右駆動輪速差算出手段は、左駆動輪検出値と右駆
    動輪検出値との差の絶対値から旋回軌跡左右駆動輪速差
    算出値を差し引くことで左右駆動輪速差を算出する手段
    であることを特徴とする差動制限トルク制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項1〜請求項3記載の差動制限トル
    ク制御装置において、 前後輪車輪速差の設定値として、左右駆動輪速差対応差
    動制限制御の開始しきい値である第1設定値と、左右駆
    動輪速差対応差動制限制御の終了しきい値である第2設
    定値とを設定し、第1設定値と第2設定値とにヒステリ
    シスを持たせた設定値設定手段を設けていることを特徴
    とする差動制限トルク制御装置。
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