JPH07223868A - 摺動部材用β−サイアロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の製造方法 - Google Patents
摺動部材用β−サイアロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の製造方法Info
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- JPH07223868A JPH07223868A JP6037927A JP3792794A JPH07223868A JP H07223868 A JPH07223868 A JP H07223868A JP 6037927 A JP6037927 A JP 6037927A JP 3792794 A JP3792794 A JP 3792794A JP H07223868 A JPH07223868 A JP H07223868A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 耐磨耗性、耐焼付き性等の摺動特性に優れ、
この特性を長時間に渡り高く維持できる摺動部材用β−
サイアロン基焼結体及びその製法を提供する。 【構成】 β−サイアロン粒子を主体とする基本粒子
と、ガラス相及び結晶相の少なくとも一方により構成さ
れる粒界相と、を備え、上記β−サイアロン粒子の下記
(I)式で示される固溶度Zの標準偏差が0.03以上
である。 Z=6XAl/(XSi+XAl) (I) 但し、XSiはβ−サイアロン粒子を構成するSi及びA
lの全体を100原子%としたときのSiの原子%を示
し、XAlはAlの原子%を示す。また、焼成を、10℃
/分以上の昇温速度(1500〜1800℃迄)で行っ
た後、その温度で2時間以下保持し、10℃/分以上の
降温速度で降温して行うことにより上記の様な焼結体を
製造する方法を提供する。
この特性を長時間に渡り高く維持できる摺動部材用β−
サイアロン基焼結体及びその製法を提供する。 【構成】 β−サイアロン粒子を主体とする基本粒子
と、ガラス相及び結晶相の少なくとも一方により構成さ
れる粒界相と、を備え、上記β−サイアロン粒子の下記
(I)式で示される固溶度Zの標準偏差が0.03以上
である。 Z=6XAl/(XSi+XAl) (I) 但し、XSiはβ−サイアロン粒子を構成するSi及びA
lの全体を100原子%としたときのSiの原子%を示
し、XAlはAlの原子%を示す。また、焼成を、10℃
/分以上の昇温速度(1500〜1800℃迄)で行っ
た後、その温度で2時間以下保持し、10℃/分以上の
降温速度で降温して行うことにより上記の様な焼結体を
製造する方法を提供する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、摺動部材用β−サイア
ロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の
製造方法に関する。本発明は、自動車用の摺動部材(例
えば、ロッカーアーム・カムローラ等)、ポンプ等のシ
ールリング、光ディスクのスウィングアーム、レーザー
プリンタ・ファクシミリ及びバーコード読み取り機等の
回転駆動部のボールベアリング、工作機械用主軸の軸受
け等の各種摺動部材に広く利用される。
ロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の
製造方法に関する。本発明は、自動車用の摺動部材(例
えば、ロッカーアーム・カムローラ等)、ポンプ等のシ
ールリング、光ディスクのスウィングアーム、レーザー
プリンタ・ファクシミリ及びバーコード読み取り機等の
回転駆動部のボールベアリング、工作機械用主軸の軸受
け等の各種摺動部材に広く利用される。
【0002】
【従来の技術】自動車用のロッカーアーム、カムロー
ラ、レーザープリンタの回転駆動部のボールベアリング
等に利用される各種摺動部材(摺動部材用のセラミック
焼結体)には、機械的強度、耐磨耗性及び耐焼付き性等
が優れることが要求されている。これらの要求を満足さ
せんとして、Si3 N4 を主成分とし、Y、Mg及び
Ceを酸化物換算で所定量ずつ含む〔Y;Y2 O3 換算
で2〜20重量%、Mg;MgO換算で1〜0.9重量
%(1〜10重量%)、Ce;CeO2 換算で1〜10
重量%(1〜0.9重量%)〕焼結体からなるセラミッ
ク摺動部材(特開平2−204364号公報、特開平2
−204365号公報)等が提案されている。また、特
に、高速摺動等の激しい摺動条件に耐え得る摺動部材と
して、一定値以上の線密度(長さ30μm当たり35
個以上)を有する結晶粒子を含み、粒界相の体積率が一
定値(15体積%)以下に抑えられ、微細な気孔(最大
径;20μm以下)を所定量以下含有する(気孔率;3
%以下)ものも提案されている特開平5−117036
号公報)。
ラ、レーザープリンタの回転駆動部のボールベアリング
等に利用される各種摺動部材(摺動部材用のセラミック
焼結体)には、機械的強度、耐磨耗性及び耐焼付き性等
が優れることが要求されている。これらの要求を満足さ
せんとして、Si3 N4 を主成分とし、Y、Mg及び
Ceを酸化物換算で所定量ずつ含む〔Y;Y2 O3 換算
で2〜20重量%、Mg;MgO換算で1〜0.9重量
%(1〜10重量%)、Ce;CeO2 換算で1〜10
重量%(1〜0.9重量%)〕焼結体からなるセラミッ
ク摺動部材(特開平2−204364号公報、特開平2
−204365号公報)等が提案されている。また、特
に、高速摺動等の激しい摺動条件に耐え得る摺動部材と
して、一定値以上の線密度(長さ30μm当たり35
個以上)を有する結晶粒子を含み、粒界相の体積率が一
定値(15体積%)以下に抑えられ、微細な気孔(最大
径;20μm以下)を所定量以下含有する(気孔率;3
%以下)ものも提案されている特開平5−117036
号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
及びに代表される様な摺動部材(摺動部材用のセラミ
ック焼結体)では、自動車用のロッカーアーム(自動車
エンジンの吸、排気バルブをエンジンの回転数に応じて
作動させる摺動部品である。)等の様に、高い耐磨耗性
及び耐焼き付け性を長時間に渡り、要求される摺動部品
に適用するには、未だ十分とはいえない。即ち、上記従
来の摺動部材を用いた場合には、上記ロッカーアームの
チップとエンジンに取着されたカム(主に、金属製)と
の両摺動面同士が、互いに激しくたたきあう為、エンジ
ンを長時間駆動させると、チップ、カム、双方とも激し
く磨耗したり、焼き付いてしまうことが多い。また、一
般に、ディーゼルエンジン(特に、EGRシステム付デ
ィーゼルエンジン)では、すすが潤滑油に混入し易い
為、時間の経過と共にロッカーアームの磨耗が著しくな
る等の問題点を有している。
及びに代表される様な摺動部材(摺動部材用のセラミ
ック焼結体)では、自動車用のロッカーアーム(自動車
エンジンの吸、排気バルブをエンジンの回転数に応じて
作動させる摺動部品である。)等の様に、高い耐磨耗性
及び耐焼き付け性を長時間に渡り、要求される摺動部品
に適用するには、未だ十分とはいえない。即ち、上記従
来の摺動部材を用いた場合には、上記ロッカーアームの
チップとエンジンに取着されたカム(主に、金属製)と
の両摺動面同士が、互いに激しくたたきあう為、エンジ
ンを長時間駆動させると、チップ、カム、双方とも激し
く磨耗したり、焼き付いてしまうことが多い。また、一
般に、ディーゼルエンジン(特に、EGRシステム付デ
ィーゼルエンジン)では、すすが潤滑油に混入し易い
為、時間の経過と共にロッカーアームの磨耗が著しくな
る等の問題点を有している。
【0004】本発明は、上記問題点を解決するものであ
り、耐磨耗性、耐焼付き性等の摺動特性に優れると共
に、この特性を長時間に渡り高く維持できる摺動部材用
β−サイアロン基焼結体及びこの様な焼結体を製造する
方法を提供することを目的とする。
り、耐磨耗性、耐焼付き性等の摺動特性に優れると共
に、この特性を長時間に渡り高く維持できる摺動部材用
β−サイアロン基焼結体及びこの様な焼結体を製造する
方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、基本粒子
を構成するβ−サイアロン粒子間の硬度のバラツキを一
定以上とすることにより、長期に渡る摺動特性に優れた
摺動部材用β−サイアロン基焼結体を得ることができる
ことを見出して本発明を完成するに至ったのである。即
ち、本第1発明の摺動部材用β−サイアロン基焼結体
(以下、「β−サイアロン基焼結体」という。)は、β
−サイアロン粒子を主体とする基本粒子と、ガラス相及
び結晶相の少なくとも一方により構成される粒界相と、
を備え、上記β−サイアロン粒子の上記(I)式で示さ
れる固溶度Zの標準偏差が0.03以上であることを特
徴とする。
を構成するβ−サイアロン粒子間の硬度のバラツキを一
定以上とすることにより、長期に渡る摺動特性に優れた
摺動部材用β−サイアロン基焼結体を得ることができる
ことを見出して本発明を完成するに至ったのである。即
ち、本第1発明の摺動部材用β−サイアロン基焼結体
(以下、「β−サイアロン基焼結体」という。)は、β
−サイアロン粒子を主体とする基本粒子と、ガラス相及
び結晶相の少なくとも一方により構成される粒界相と、
を備え、上記β−サイアロン粒子の上記(I)式で示さ
れる固溶度Zの標準偏差が0.03以上であることを特
徴とする。
【0006】上記「基本粒子」の主体をなす「β−サイ
アロン」とは、Si3 N4 と、Al2 O3 、AlN、S
iO2 等と、が焼結中に反応して、上記Si3 N4 にお
けるSiの一部をAlにより、同Si3 N4 におけるN
の一部をOにより置換した置換型固溶体である(組成
式;Si6-y Aly O8-y Ny 、但し、0≦y≦4.
2)。尚、この「サイアロン」には、α型のもの〔組成
式;MX (Si、Al)12(O、N)16、但し、M;L
i、Mg、Ca、Y等、0<X≦2〕も存在するが、上
記β型のものの方が結晶粒が針状晶に発達し易い等の理
由で、強度、靱性等が優れているため、本発明では、β
型のサイアロンを主体とする基本粒子を備える焼結体
(β−サイアロン基焼結体)としたのである。尚、この
基本粒子とは、焼結体の主要部をなす粒子(即ち、焼結
体中において、付属的に存在する粒界相、気孔等を除く
部分を構成する粒子)の意である。
アロン」とは、Si3 N4 と、Al2 O3 、AlN、S
iO2 等と、が焼結中に反応して、上記Si3 N4 にお
けるSiの一部をAlにより、同Si3 N4 におけるN
の一部をOにより置換した置換型固溶体である(組成
式;Si6-y Aly O8-y Ny 、但し、0≦y≦4.
2)。尚、この「サイアロン」には、α型のもの〔組成
式;MX (Si、Al)12(O、N)16、但し、M;L
i、Mg、Ca、Y等、0<X≦2〕も存在するが、上
記β型のものの方が結晶粒が針状晶に発達し易い等の理
由で、強度、靱性等が優れているため、本発明では、β
型のサイアロンを主体とする基本粒子を備える焼結体
(β−サイアロン基焼結体)としたのである。尚、この
基本粒子とは、焼結体の主要部をなす粒子(即ち、焼結
体中において、付属的に存在する粒界相、気孔等を除く
部分を構成する粒子)の意である。
【0007】また、この「β−サイアロン粒子を主体と
する」とは、上記焼結体を構成する基本粒子が全てβ−
サイアロン粒子により構成されている場合の他に、同基
本粒子の一部が、α型サイアロン粒子やα、β型の窒化
珪素粒子等のβ−サイアロン粒子以外の粒子により構成
されている場合(焼結反応が進行した後、焼結体中にα
型サイアロン粒子等が残留する場合)を含む意である。
但し、本発明の目的を確実に達成するためには、基本粒
子全体を100容積%とした場合に、β−サイアロン粒
子が85容積%(特に、90容積%)以上含有する基本
粒子であることが好ましい。
する」とは、上記焼結体を構成する基本粒子が全てβ−
サイアロン粒子により構成されている場合の他に、同基
本粒子の一部が、α型サイアロン粒子やα、β型の窒化
珪素粒子等のβ−サイアロン粒子以外の粒子により構成
されている場合(焼結反応が進行した後、焼結体中にα
型サイアロン粒子等が残留する場合)を含む意である。
但し、本発明の目的を確実に達成するためには、基本粒
子全体を100容積%とした場合に、β−サイアロン粒
子が85容積%(特に、90容積%)以上含有する基本
粒子であることが好ましい。
【0008】また、上記「粒界相」は、ガラス相及び結
晶相の少なくとも一方により構成されていてもよいし、
ガラス相及び結晶相の双方により構成されていてもよ
い。更に、上記焼結体には、上記基本粒子及び上記粒界
相以外の第3成分が含まれていてもよい。この第3成分
は、耐磨耗性の更なる向上、靱性の向上等に有効なもの
とすることができる。例えば、周期律表第IVa、V
a、VIa族遷移金属の酸化物、炭化物、窒化物、炭窒
化物、炭窒酸化物、硼化物等を用いることができる。
晶相の少なくとも一方により構成されていてもよいし、
ガラス相及び結晶相の双方により構成されていてもよ
い。更に、上記焼結体には、上記基本粒子及び上記粒界
相以外の第3成分が含まれていてもよい。この第3成分
は、耐磨耗性の更なる向上、靱性の向上等に有効なもの
とすることができる。例えば、周期律表第IVa、V
a、VIa族遷移金属の酸化物、炭化物、窒化物、炭窒
化物、炭窒酸化物、硼化物等を用いることができる。
【0009】また、上記「固溶度Z」を算出するために
は、Si及びAlの原子%〔上記(I)式のXSi及びX
Al〕を求めることが必要となるが、その求め方は特に問
わない。例えば、走査型透過電子顕微鏡(以下、「ST
EM」という。)を用いて、測定したSi、Alの成分
定量より求める方法を例示することができる。更に、上
記の如く、固溶度Zの標準偏差を定めるのは、同値が
0.03以上であれば、β−サイアロン基焼結体を構成
するβ−サイアロン粒子間の硬度に、ある程度のバラツ
キを持たせることができ、同焼結体の長時間に渡る摺動
特性(以下、「長時間摺動特性」という。)を向上させ
ることができるからである。また、この標準偏差の値を
0.04以上とすることが、上記硬度のバラツキをより
確実に確保する上で、特に好ましい。更に、上記「標準
偏差」を導き出すために、算出する上記Z値の個数(標
本の大きさ)は、20個以上であることが好ましい。
は、Si及びAlの原子%〔上記(I)式のXSi及びX
Al〕を求めることが必要となるが、その求め方は特に問
わない。例えば、走査型透過電子顕微鏡(以下、「ST
EM」という。)を用いて、測定したSi、Alの成分
定量より求める方法を例示することができる。更に、上
記の如く、固溶度Zの標準偏差を定めるのは、同値が
0.03以上であれば、β−サイアロン基焼結体を構成
するβ−サイアロン粒子間の硬度に、ある程度のバラツ
キを持たせることができ、同焼結体の長時間に渡る摺動
特性(以下、「長時間摺動特性」という。)を向上させ
ることができるからである。また、この標準偏差の値を
0.04以上とすることが、上記硬度のバラツキをより
確実に確保する上で、特に好ましい。更に、上記「標準
偏差」を導き出すために、算出する上記Z値の個数(標
本の大きさ)は、20個以上であることが好ましい。
【0010】本第2発明のβ−サイアロン基焼結体は、
上記標準偏差を0.04〜0.2とし、上記の定義に示
される焼き付き停止時間Tが25分以上である。上記標
準偏差を上記の様な範囲(0.04〜0.2)とするの
は、β−サイアロン基焼結体の上記焼き付き停止時間T
を十二分に長くする(25分以上とする)ことができる
からである。この標準偏差の上限値を0.2とするの
は、この値が0.2を越えると個々のサイアロン粒子の
格子歪の差が大きくなり、その結果、内部応力(残留応
力)が大きくなり、焼結体強度を低下させるからであ
る。
上記標準偏差を0.04〜0.2とし、上記の定義に示
される焼き付き停止時間Tが25分以上である。上記標
準偏差を上記の様な範囲(0.04〜0.2)とするの
は、β−サイアロン基焼結体の上記焼き付き停止時間T
を十二分に長くする(25分以上とする)ことができる
からである。この標準偏差の上限値を0.2とするの
は、この値が0.2を越えると個々のサイアロン粒子の
格子歪の差が大きくなり、その結果、内部応力(残留応
力)が大きくなり、焼結体強度を低下させるからであ
る。
【0011】尚、本第2発明では、上記「長時間摺動特
性」を評価するために、上記停止時間Tを用いたが、他
の尺度(例えば、ボールオンリング法等による磨耗量変
化や表面粗度変化)を用いた評価を行うこともできる。
また、上記の様に、「焼き付き停止時間T」により評価
する場合であっても、上記「荷重の大きさ」「試験片の
回転速度」、「試験片の形状」、「試験片の表面粗さ」
等は、上記「定義」に示すものに限られるものではな
い。例えば、上記「表面粗さ」を上記「中心線平均粗さ
(Ra)」ではなく、「被測定断面(の曲線)における
最大高さ(RX )」、「被測定断面(の曲線)に十点平
均粗さ(RZ )」等により示すこともできる。更に、こ
の様な他の評価方法、数値を用いた場合には、同「焼き
付き停止時間T」を規定する「試験片に加えるトルクの
値」を、上記「初期トルクの値」の2倍以外の他の値と
することもできる。
性」を評価するために、上記停止時間Tを用いたが、他
の尺度(例えば、ボールオンリング法等による磨耗量変
化や表面粗度変化)を用いた評価を行うこともできる。
また、上記の様に、「焼き付き停止時間T」により評価
する場合であっても、上記「荷重の大きさ」「試験片の
回転速度」、「試験片の形状」、「試験片の表面粗さ」
等は、上記「定義」に示すものに限られるものではな
い。例えば、上記「表面粗さ」を上記「中心線平均粗さ
(Ra)」ではなく、「被測定断面(の曲線)における
最大高さ(RX )」、「被測定断面(の曲線)に十点平
均粗さ(RZ )」等により示すこともできる。更に、こ
の様な他の評価方法、数値を用いた場合には、同「焼き
付き停止時間T」を規定する「試験片に加えるトルクの
値」を、上記「初期トルクの値」の2倍以外の他の値と
することもできる。
【0012】また、本第3発明は、上記第1及び2発明
に示す様な焼結体の製造方法の一例を示したものであ
り、焼成工程における昇温速度(10℃/分以上)と、
焼成温度〔以下、この「焼成温度」を焼成工程全体を通
じた最高の温度(1500〜1800℃)の意で用い
る。〕及びその温度の保持時間(2時間以下)と、降温
速度(10℃/分以上)と、を規制するものである。上
記の如く、昇温・降温速度を一定速度以上とし、また、
焼成温度の保持時間を比較的短めにするのは、Si3 N
4 と助剤成分との反応を不均質にし、所望のバラツキを
もつβサイアロン粒子を得るためである。
に示す様な焼結体の製造方法の一例を示したものであ
り、焼成工程における昇温速度(10℃/分以上)と、
焼成温度〔以下、この「焼成温度」を焼成工程全体を通
じた最高の温度(1500〜1800℃)の意で用い
る。〕及びその温度の保持時間(2時間以下)と、降温
速度(10℃/分以上)と、を規制するものである。上
記の如く、昇温・降温速度を一定速度以上とし、また、
焼成温度の保持時間を比較的短めにするのは、Si3 N
4 と助剤成分との反応を不均質にし、所望のバラツキを
もつβサイアロン粒子を得るためである。
【0013】
【作用】本発明のβ−サイアロン基焼結体は、それを構
成するβ−サイアロン粒子の固溶度Zの標準偏差を0.
03以上とし、同β−サイアロン粒子間の硬度のバラツ
キを大きなものとすることにより、長期間摺動特性〔特
に金属(主に、鋼等)に対する摺動特性〕を向上させた
ものである。即ち、Si3 N4 に、Al2 O3 、Al
N、SiO2 等が反応して、β−サイアロン(β−サイ
アロン基焼結体)を生じる反応を、粒子レベルのミクロ
な面から観察すれば、各粒子間に微妙な成分変動が存在
する。そして、β−サイアロン基焼結体中には、この粒
子間の成分変動により、固溶度の異なるβ−サイアロン
粒子が存在し、これらの固溶度の差異に応じて、β−サ
イアロン粒子間で硬度が異なることになる。
成するβ−サイアロン粒子の固溶度Zの標準偏差を0.
03以上とし、同β−サイアロン粒子間の硬度のバラツ
キを大きなものとすることにより、長期間摺動特性〔特
に金属(主に、鋼等)に対する摺動特性〕を向上させた
ものである。即ち、Si3 N4 に、Al2 O3 、Al
N、SiO2 等が反応して、β−サイアロン(β−サイ
アロン基焼結体)を生じる反応を、粒子レベルのミクロ
な面から観察すれば、各粒子間に微妙な成分変動が存在
する。そして、β−サイアロン基焼結体中には、この粒
子間の成分変動により、固溶度の異なるβ−サイアロン
粒子が存在し、これらの固溶度の差異に応じて、β−サ
イアロン粒子間で硬度が異なることになる。
【0014】この様に、硬度の異なるβ−サイアロン粒
子により構成される焼結体を適宜研磨して、所定の摺動
部材に加工した場合には、ミクロレベル(β−サイアロ
ン粒子毎)に研磨の状態が異なったものとなり、同ミク
ロレベルで凹凸を形成することになると考えられる。そ
して、この様な凹凸が存在すると考えられる摺動部材で
は、以下に述べる実施例にも示す様に、長時間に渡り優
れた摺動特性を発揮する。
子により構成される焼結体を適宜研磨して、所定の摺動
部材に加工した場合には、ミクロレベル(β−サイアロ
ン粒子毎)に研磨の状態が異なったものとなり、同ミク
ロレベルで凹凸を形成することになると考えられる。そ
して、この様な凹凸が存在すると考えられる摺動部材で
は、以下に述べる実施例にも示す様に、長時間に渡り優
れた摺動特性を発揮する。
【0015】本第2発明のβ−サイアロン基焼結体で
は、上記標準偏差を0.04〜0.2とする。この結
果、上記硬度のバラツキが最適となり、優れた長時間摺
動特性を確実に得ることができる。本第3発明の製造方
法では、上記Si3 N4 と上記Al2 O3 、AlN等の
助剤の焼結(反応)を、10℃/分以上の昇温速度で、
1500〜1800℃に昇温させた後、その温度で2時
間以下保持し、更に、10℃/分以上の降温速度で降温
して行う。この方法を用いれば、上記の様な焼結体を得
ることが容易である。
は、上記標準偏差を0.04〜0.2とする。この結
果、上記硬度のバラツキが最適となり、優れた長時間摺
動特性を確実に得ることができる。本第3発明の製造方
法では、上記Si3 N4 と上記Al2 O3 、AlN等の
助剤の焼結(反応)を、10℃/分以上の昇温速度で、
1500〜1800℃に昇温させた後、その温度で2時
間以下保持し、更に、10℃/分以上の降温速度で降温
して行う。この方法を用いれば、上記の様な焼結体を得
ることが容易である。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (1)実施例1 本実施例は、β−サイアロン基焼結体を構成するβ−サ
イアロン粒子間の硬度のバラツキが、摺動特性与える影
響を調べたものである。 試験片の作製 先ず、各原料粉末として、平均粒径0.7μmのSi3
N4 粉末(α相90容積%以上、比表面積10m2 /
g、酸素含有量1.5重量%)に、平均粒径0.8μm
のAl2 O3 粉末と、平均粒径1.2μmのAlN粉末
(酸素含有量2.0重量%)と、平均粒径0.9μmの
Y2 O3 (純度;99.9%以上)と、を表1に示す各
配合組成(試験例1〜10)に従ってそれぞれ秤量し
た。
る。 (1)実施例1 本実施例は、β−サイアロン基焼結体を構成するβ−サ
イアロン粒子間の硬度のバラツキが、摺動特性与える影
響を調べたものである。 試験片の作製 先ず、各原料粉末として、平均粒径0.7μmのSi3
N4 粉末(α相90容積%以上、比表面積10m2 /
g、酸素含有量1.5重量%)に、平均粒径0.8μm
のAl2 O3 粉末と、平均粒径1.2μmのAlN粉末
(酸素含有量2.0重量%)と、平均粒径0.9μmの
Y2 O3 (純度;99.9%以上)と、を表1に示す各
配合組成(試験例1〜10)に従ってそれぞれ秤量し
た。
【0017】
【表1】
【0018】次いで、上記各原料粉末を窒化珪素製ポッ
ト及び窒化珪素製球石を用いて、エタノール中で湿式混
合した。そして、得られた各混合粉末を乾燥した後に、
フルイ通し(60メッシュパス)を行った。更に、この
フルイ通しのなされた各混合粉末を2000kgf/c
m2 の圧力の下でCIP(冷間静水圧)成形して、略円
板状の各成形体(試験例1〜10)を得た。但し、各成
形体の形状は、この円板状に限るものではなく、例え
ば、直方体形状、立方体形状等の他の形状であってもよ
い。
ト及び窒化珪素製球石を用いて、エタノール中で湿式混
合した。そして、得られた各混合粉末を乾燥した後に、
フルイ通し(60メッシュパス)を行った。更に、この
フルイ通しのなされた各混合粉末を2000kgf/c
m2 の圧力の下でCIP(冷間静水圧)成形して、略円
板状の各成形体(試験例1〜10)を得た。但し、各成
形体の形状は、この円板状に限るものではなく、例え
ば、直方体形状、立方体形状等の他の形状であってもよ
い。
【0019】そして、上記各成形体を、表1に示す各焼
成条件(昇温速度、焼成温度、保持時間及び降温速度を
それぞれ規制)の下で焼成して試験例1〜10の円柱状
焼結体〔径;33mmφ、厚み;7mm、いずれも理論
密度比(混合則により算出)97%以上の緻密体であ
る。〕を得た。具体的には、試験例1〜7(実施例)に
おいては、10〜20℃/分の速度にて、1650〜1
770℃の温度まで昇温し、この温度を1若しくは2時
間保持した後に、10℃/分の速度にて、1000℃ま
で降温し、その後冷却した。一方、試験例8〜10(比
較例)においては、2〜10℃/分の速度にて、170
0〜1750℃の温度まで昇温し、この温度を2若しく
は4時間保持した後に、5℃/分の速度にて、1000
℃まで降温し、その後冷却した。
成条件(昇温速度、焼成温度、保持時間及び降温速度を
それぞれ規制)の下で焼成して試験例1〜10の円柱状
焼結体〔径;33mmφ、厚み;7mm、いずれも理論
密度比(混合則により算出)97%以上の緻密体であ
る。〕を得た。具体的には、試験例1〜7(実施例)に
おいては、10〜20℃/分の速度にて、1650〜1
770℃の温度まで昇温し、この温度を1若しくは2時
間保持した後に、10℃/分の速度にて、1000℃ま
で降温し、その後冷却した。一方、試験例8〜10(比
較例)においては、2〜10℃/分の速度にて、170
0〜1750℃の温度まで昇温し、この温度を2若しく
は4時間保持した後に、5℃/分の速度にて、1000
℃まで降温し、その後冷却した。
【0020】尚、上記各成形体の焼成は、いずれも窒素
雰囲気、1気圧の雰囲気圧力の下で行ったものである。
この焼成雰囲気は特に問わないが、上記原料粉末中のS
i3N4 の分解を防ぐ等のために、本実施例の様に窒素
を含有した非酸化性雰囲気とすることが好ましい。ま
た、雰囲気圧力も、1気圧以上が好ましく、焼成温度
は、1500〜1800℃の範囲内(特に、好ましく
は、1600〜1750℃)とすることが好ましい。焼
成温度を1500〜1800℃の範囲内とするのが好ま
しいのは、1500℃未満であると緻密化が促進せず、
1800℃を越えると揮発分解が激しく健全な焼結体が
得られないからである。また、1600〜1750℃が
特に好ましいのは、緻密化が促進され、焼結体強度も6
0kgf/mm2 以上のものが得られるからである。
〔更に、上記焼成工程の後(焼結後)に、HIP(ホッ
トアイソタスクティックプレス)を施してもよい。〕
雰囲気、1気圧の雰囲気圧力の下で行ったものである。
この焼成雰囲気は特に問わないが、上記原料粉末中のS
i3N4 の分解を防ぐ等のために、本実施例の様に窒素
を含有した非酸化性雰囲気とすることが好ましい。ま
た、雰囲気圧力も、1気圧以上が好ましく、焼成温度
は、1500〜1800℃の範囲内(特に、好ましく
は、1600〜1750℃)とすることが好ましい。焼
成温度を1500〜1800℃の範囲内とするのが好ま
しいのは、1500℃未満であると緻密化が促進せず、
1800℃を越えると揮発分解が激しく健全な焼結体が
得られないからである。また、1600〜1750℃が
特に好ましいのは、緻密化が促進され、焼結体強度も6
0kgf/mm2 以上のものが得られるからである。
〔更に、上記焼成工程の後(焼結後)に、HIP(ホッ
トアイソタスクティックプレス)を施してもよい。〕
【0021】次いで、上記各焼結体の上面(摺動面)を
♯600のダイアモンドホイールにより研磨し、更にラ
ッピングして(鏡面研磨によりRa=0.1μm以下に
して)、試験例1〜10の各試験片を作製した。そし
て、各試験片のサイアロン粒子の固溶度(Z)を測定
し、同各試験片毎に標準偏差〔各試験片毎に標本数(大
きさ)50ずつである。〕を算出した結果を表1に併記
する。但し、各固溶度(Z)の測定は、STEM(ビー
ム径;約80〜100nm)を用い、上記各試験片のS
i及びAlの成分定量を測定し、これを用いて各原子%
XSi、XAlを求めた後に、上記(I)式を用いて算出し
たものである。
♯600のダイアモンドホイールにより研磨し、更にラ
ッピングして(鏡面研磨によりRa=0.1μm以下に
して)、試験例1〜10の各試験片を作製した。そし
て、各試験片のサイアロン粒子の固溶度(Z)を測定
し、同各試験片毎に標準偏差〔各試験片毎に標本数(大
きさ)50ずつである。〕を算出した結果を表1に併記
する。但し、各固溶度(Z)の測定は、STEM(ビー
ム径;約80〜100nm)を用い、上記各試験片のS
i及びAlの成分定量を測定し、これを用いて各原子%
XSi、XAlを求めた後に、上記(I)式を用いて算出し
たものである。
【0022】尚、試験例3の焼結体の基本粒子中には、
8容積%のα−サイアロン粒子が存在し、試験例4の焼
結体の基本粒子中には、4容積%のα−サイアロン粒子
が存在したが、他の試験例の焼結体の基本粒子は、β−
サイアロン粒子のみにより構成されていた。(尚、これ
らの容積%は、X線回折により量測定して求めたもので
ある。)また、比較のため、超硬材〔WC材(30%N
i添加)〕を用いて、上記各試験片と同様な形状、大き
さ、摺動面を有する試験片(試験例11)をも作製し
た。
8容積%のα−サイアロン粒子が存在し、試験例4の焼
結体の基本粒子中には、4容積%のα−サイアロン粒子
が存在したが、他の試験例の焼結体の基本粒子は、β−
サイアロン粒子のみにより構成されていた。(尚、これ
らの容積%は、X線回折により量測定して求めたもので
ある。)また、比較のため、超硬材〔WC材(30%N
i添加)〕を用いて、上記各試験片と同様な形状、大き
さ、摺動面を有する試験片(試験例11)をも作製し
た。
【0023】性能試験及びその評価 本実施例では、上記各試験片の摺動特性を調べるため
に、図1及び2に示す様な摺動試験装置を用いて性能試
験を行った。この摺動試験装置は、各図に示す様に、同
装置の上方側を占めると共に、所定のシャフト12の軸
線方向に沿って上下動可能な昇降可動部1と、同装置の
下方側を占めると共に、所定のシャフト22を中心に回
転可能な回転可動部2と、を備えている。また、この回
転可動部2の上端側には、所定の潤滑油(商品名「日石
スーパーオイルC」)Oが配置されている。
に、図1及び2に示す様な摺動試験装置を用いて性能試
験を行った。この摺動試験装置は、各図に示す様に、同
装置の上方側を占めると共に、所定のシャフト12の軸
線方向に沿って上下動可能な昇降可動部1と、同装置の
下方側を占めると共に、所定のシャフト22を中心に回
転可能な回転可動部2と、を備えている。また、この回
転可動部2の上端側には、所定の潤滑油(商品名「日石
スーパーオイルC」)Oが配置されている。
【0024】そして、以上の様な装置を用いて、以下の
様にして性能試験を行った。先ず、図1に示す様に、上
記各試験片Aを上記回転可動部2の上端部の略中央に、
同上端部に取着された所定のチャック21を用いて固定
する。また、所定のリング状鋼部材(外径;25mm、
内径;20mm、厚み;7mm、材質;S50C、硬
度;HRC=55、Ra=0.1〜0.3μm)Bを上記
昇降可動部1の下端部の略中央に、同下端部に取着され
た所定のチャック11を用いて固定する。このとき、同
図に示す様に、上記各試験片Aの上面(摺動面)及び上
記リング状鋼鉄部Bの下面は所定の間隔をおいて向き合
った状態になっている。
様にして性能試験を行った。先ず、図1に示す様に、上
記各試験片Aを上記回転可動部2の上端部の略中央に、
同上端部に取着された所定のチャック21を用いて固定
する。また、所定のリング状鋼部材(外径;25mm、
内径;20mm、厚み;7mm、材質;S50C、硬
度;HRC=55、Ra=0.1〜0.3μm)Bを上記
昇降可動部1の下端部の略中央に、同下端部に取着され
た所定のチャック11を用いて固定する。このとき、同
図に示す様に、上記各試験片Aの上面(摺動面)及び上
記リング状鋼鉄部Bの下面は所定の間隔をおいて向き合
った状態になっている。
【0025】次いで、図2に示す様に、上記昇降可動部
1をシャフト12の軸線方向に降下させ、上記リング状
鋼鉄部Bの下面を上記各試験片Aの上面に衝合させる。
このとき、上記リング状鋼鉄部B及び上記各試験片A
は、上記潤滑油Oに完全に浸された状態になっている。
尚、この様な潤滑油Oの存在しない状態で、本性能試験
を行うこともできる。
1をシャフト12の軸線方向に降下させ、上記リング状
鋼鉄部Bの下面を上記各試験片Aの上面に衝合させる。
このとき、上記リング状鋼鉄部B及び上記各試験片A
は、上記潤滑油Oに完全に浸された状態になっている。
尚、この様な潤滑油Oの存在しない状態で、本性能試験
を行うこともできる。
【0026】更に、上記昇降可動部1に、上記シャフト
22の軸線の下方側に向かう荷重(図2の矢印X方向に
向かう300kgfの荷重)を加え、これにより、上記
リング状鋼鉄部Bから、上記各試験片Aに向かい負荷
(300kgf)を加える。これと同時に、上記回転可
動部2を回転させる(図2の矢印Y方向に500rpm
で回転させる。)。このとき、いずれの試験片を用いた
場合にも、同回転可動部2を回転させるために、30k
gf・cmのトルク(初期トルク)を同可動部2に加え
ることが必要であった。
22の軸線の下方側に向かう荷重(図2の矢印X方向に
向かう300kgfの荷重)を加え、これにより、上記
リング状鋼鉄部Bから、上記各試験片Aに向かい負荷
(300kgf)を加える。これと同時に、上記回転可
動部2を回転させる(図2の矢印Y方向に500rpm
で回転させる。)。このとき、いずれの試験片を用いた
場合にも、同回転可動部2を回転させるために、30k
gf・cmのトルク(初期トルク)を同可動部2に加え
ることが必要であった。
【0027】そして、「トルク変化量」及び「焼き付き
停止時間」を測定し、各試験片の性能の評価を行った。
但し、この「トルク変化量」とは、上記回転可動部2を
回転させはじめてから、15分経過後の時点における同
可動部2の回転に要するトルク値と、上記「初期トルク
値」と、の差を示している。また、上記「焼き付き停止
時間」は、上記定義に示すものである。尚、本実施例の
装置は、初期トルクの2倍の大きさのトルクが回転可動
部2(各試験片)に加えられた瞬間に、同可動部2の回
転を自動的に停止させる構造になっている(このとき、
上記リング状鋼鉄部B及び上記各試験片Aは焼き付いた
状態になっていることが多い。)。そして、以上の性能
試験の結果を表2に示す。
停止時間」を測定し、各試験片の性能の評価を行った。
但し、この「トルク変化量」とは、上記回転可動部2を
回転させはじめてから、15分経過後の時点における同
可動部2の回転に要するトルク値と、上記「初期トルク
値」と、の差を示している。また、上記「焼き付き停止
時間」は、上記定義に示すものである。尚、本実施例の
装置は、初期トルクの2倍の大きさのトルクが回転可動
部2(各試験片)に加えられた瞬間に、同可動部2の回
転を自動的に停止させる構造になっている(このとき、
上記リング状鋼鉄部B及び上記各試験片Aは焼き付いた
状態になっていることが多い。)。そして、以上の性能
試験の結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】以上の性能試験によれば、固溶度(Z)の
標準偏差が0.02以下の試験例9〜10(比較例)の
各試験片では、WC材を用いた試験例11の試験片に比
べ、トルクの変化量が約2/3になり、停止時間が約5
〜6倍になっているものの、未だ十分な摺動特性を示し
ているとはいえない。
標準偏差が0.02以下の試験例9〜10(比較例)の
各試験片では、WC材を用いた試験例11の試験片に比
べ、トルクの変化量が約2/3になり、停止時間が約5
〜6倍になっているものの、未だ十分な摺動特性を示し
ているとはいえない。
【0030】これに対して、同標準偏差が0.04以上
の試験例1〜7(実施例)の各試験片では、上記「トル
ク変化量」が、±5kgf・cm以内(上記各比較例の
約半分)の安定した値を示している。また、上記各実施
例の「停止時間」は、上記各比較例の「停止時間」の
1.5倍以上となっており、摺動特性が格段に向上して
いることが判る。これは、本実施例の各試験片では、摺
動試験に際して、摺動面の面荒れが少なかったためと考
えられる。この様に、本実施例の焼結体においては、摺
動特性(特に、長時間に渡る摺動特性)が大きく向上し
ている。
の試験例1〜7(実施例)の各試験片では、上記「トル
ク変化量」が、±5kgf・cm以内(上記各比較例の
約半分)の安定した値を示している。また、上記各実施
例の「停止時間」は、上記各比較例の「停止時間」の
1.5倍以上となっており、摺動特性が格段に向上して
いることが判る。これは、本実施例の各試験片では、摺
動試験に際して、摺動面の面荒れが少なかったためと考
えられる。この様に、本実施例の焼結体においては、摺
動特性(特に、長時間に渡る摺動特性)が大きく向上し
ている。
【0031】(2)実施例2 本実施例は、潤滑油中のすすが、各試験片に与える影響
を調べたものである。上記潤滑油O中に、粒径2〜3μ
mのカーボンブラックを混入したこと(上記潤滑油2,
000mlに対して、30mgの割合で混入)以外は、
上記実施例1と同様の性能試験を行った。但し、この性
能試験は、上記各試験片のうちの試験例3及び9につい
てのみ行ったものである。これによれば、試験例9(比
較例)では、トルク変化量が±16kgf・cm以上)
となり、焼き付き停止時間は9分となった。一方、試験
例3(実施例)では、トルク変化量が±6kgf・cm
以上)となり、焼き付き停止時間は33分となった。
を調べたものである。上記潤滑油O中に、粒径2〜3μ
mのカーボンブラックを混入したこと(上記潤滑油2,
000mlに対して、30mgの割合で混入)以外は、
上記実施例1と同様の性能試験を行った。但し、この性
能試験は、上記各試験片のうちの試験例3及び9につい
てのみ行ったものである。これによれば、試験例9(比
較例)では、トルク変化量が±16kgf・cm以上)
となり、焼き付き停止時間は9分となった。一方、試験
例3(実施例)では、トルク変化量が±6kgf・cm
以上)となり、焼き付き停止時間は33分となった。
【0032】この様に、試験例9では、潤滑油O中への
カーボンブラックの混入により、長時間特性が大きく低
下しているが、試験例3では若干の低下はあるものの許
容範囲内であるといえる。従って、本発明(試験例3)
の焼結体では、この様に異物が混入し、劣悪な状態とな
っている潤滑油の中においても、摺動面に摺動特性を大
きく低下させる様な面荒れが生じなかった。この結果、
本発明の焼結体は、潤滑油中にすすの混入し易いディー
ゼルエンジン等の部品としても、長時間に渡り、高い性
能を維持したまま使用することができる。
カーボンブラックの混入により、長時間特性が大きく低
下しているが、試験例3では若干の低下はあるものの許
容範囲内であるといえる。従って、本発明(試験例3)
の焼結体では、この様に異物が混入し、劣悪な状態とな
っている潤滑油の中においても、摺動面に摺動特性を大
きく低下させる様な面荒れが生じなかった。この結果、
本発明の焼結体は、潤滑油中にすすの混入し易いディー
ゼルエンジン等の部品としても、長時間に渡り、高い性
能を維持したまま使用することができる。
【0033】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、
本実施例の焼結体の製造方法、大きさ、形状等は、上記
実施例に示されるものに限られない。また、上記β−サ
イアロン基焼結体は、上記摺動部材以外にも応用するこ
とができる。
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、
本実施例の焼結体の製造方法、大きさ、形状等は、上記
実施例に示されるものに限られない。また、上記β−サ
イアロン基焼結体は、上記摺動部材以外にも応用するこ
とができる。
【0034】
【発明の効果】以上の様に、本発明の摺動部材用β−サ
イアロン基焼結体では、耐磨耗性及び耐焼付き性等の摺
動特性を長時間に渡り高く維持することができる。ま
た、本発明の製造方法によれば、この様な焼結体を容易
に得ることができる。
イアロン基焼結体では、耐磨耗性及び耐焼付き性等の摺
動特性を長時間に渡り高く維持することができる。ま
た、本発明の製造方法によれば、この様な焼結体を容易
に得ることができる。
【図1】実施例で用いた摺動試験装置に試験片等を装着
した状態を示す一部縦断面図である。
した状態を示す一部縦断面図である。
【図2】本実施例における摺動試験の状態を説明するた
めの一部縦断面図である。
めの一部縦断面図である。
A;試験片、B;リング状鋼部材、1;昇降可動部、
2;回転可動部、11、21;チャック、12、22;
シャフト、O;潤滑油。
2;回転可動部、11、21;チャック、12、22;
シャフト、O;潤滑油。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C10N 40:02 50:08 70:00
Claims (3)
- 【請求項1】 β−サイアロン粒子を主体とする基本粒
子と、ガラス相及び結晶相の少なくとも一方により構成
される粒界相と、を備え、 上記β−サイアロン粒子の下記(I)式で示される固溶
度Zの標準偏差が0.03以上であることを特徴とする
摺動部材用β−サイアロン基焼結体。 Z=6XAl/(XSi+XAl) (I) 但し、XSiはβ−サイアロン粒子を構成するSi及びA
lの全体を100原子%としたときのSiの原子%を示
し、XAlはβ−サイアロン粒子を構成するSi及びAl
の全体を100原子%としたときのAlの原子%を示
す。 - 【請求項2】 上記標準偏差が0.04〜0.2であ
り、以下の定義に示される焼き付き停止時間Tが25分
以上である請求項1記載の摺動部材用β−サイアロン基
焼結体。 「焼き付き停止時間T」の定義;「所定の潤滑油中に
て、上記摺動部材用β−サイアロン基焼結体からなる試
験片(形状:33mmφ×7mmt )の摺動面〔表面粗
さ(中心線平均粗さ)Ra;0.1μm以下〕に、所定
の金属性の部材の摺動面を300kgfの荷重を加えな
がら押しつけると共に、同試験片に所定の初期トルクを
加えて500rpmの回転速度で回転させて摺動試験を
開始する。そして、この500rpmの回転速度を維持
し続けるために、同試験片に加えるトルクが上記初期ト
ルクの2倍になったときに、上記試験開始時より経過し
た時間を焼き付き停止時間Tという。」 - 【請求項3】 Si3 N4 粉末と、所定の焼結助剤粉末
と、を備えた原料粉末を所定形状に成形した後に、焼成
して摺動部材用β−サイアロン基焼結体を製造する方法
において、 上記焼成を、10℃/分以上の昇温速度で、1500〜
1800℃に昇温させた後、その温度で2時間以下保持
し、更に、10℃/分以上の降温速度で降温して行うこ
とを特徴とする摺動部材用β−サイアロン基焼結体の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6037927A JPH07223868A (ja) | 1994-02-10 | 1994-02-10 | 摺動部材用β−サイアロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6037927A JPH07223868A (ja) | 1994-02-10 | 1994-02-10 | 摺動部材用β−サイアロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07223868A true JPH07223868A (ja) | 1995-08-22 |
Family
ID=12511194
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6037927A Pending JPH07223868A (ja) | 1994-02-10 | 1994-02-10 | 摺動部材用β−サイアロン基焼結体及び摺動部材用β−サイアロン基焼結体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07223868A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009007226A (ja) * | 2007-06-29 | 2009-01-15 | Ntn Corp | 摺動装置、摺動部材およびその製造方法 |
-
1994
- 1994-02-10 JP JP6037927A patent/JPH07223868A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009007226A (ja) * | 2007-06-29 | 2009-01-15 | Ntn Corp | 摺動装置、摺動部材およびその製造方法 |
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