JPH0721846Y2 - エンジンのデコンプ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、エンジンのデコンプ装置の構造に関するもの
である。

［従来の技術］ エンジンのデコンプ装置として、カム軸にデコンプ用ピ
ンをスライド可能に組み込んだり、デコンプ用副カムを
スライド可能に組み付けたりしたものは公知である（実
開昭60−190910号公報及び実開昭61−74604号公報等参
照）。

［考案が解決しようとする課題］ しかしながら、これらは何れもデコンプ用部品をスライ
ド可能となるようカム軸に直接組み込みまたは組み付け
るため、カム軸自体の加工を必要とし、且つカム軸の構
造が複雑となってその組立も面倒なものとなっていた。

そこで本考案の目的は、カム軸側にデコンプ用部品を配
設するエンジンにおいて、カム軸構造を簡素なものとし
ながら、必要なデコンプ機能が得られるようにした新規
構造によるデコンプ装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 以上の課題を達成すべく本考案は、カム軸の主カムでロ
ッカーアームを揺動し、このロッカーアームで吸・排気
弁を駆動するエンジンにおいて、前記主カムの隣に副カ
ムを配置した状態で、これら主カム及び副カムをカム軸
に一体形成し、又、前記ロッカーアームに、前記主カム
と前記副カムとにまたがるカム係合面を設け、このカム
係合面と前記副カムとの間にデコンプ用プレートを抜き
差しするようにしたことを特徴とするエンジンのデコン
プ装置である。

また、前記デコンプ用プレートを、ロータリーソレノイ
ドにリンク結合している。

［作用］ デコンプ用の副カムとカム係合面との間にデコンプ用プ
レートを差込むと、このプレートがカム係合面を押し上
げるので、ロッカーアームは揺動してエンジンをデコン
プ状態にする。

また、デコンプ用プレートは、リンクを介してロータリ
ーソレノイドで駆動される。

［実施例］ 以下に添付図面を基に実施例を説明する。

本考案を適用した一例のエンジン構造の各部を示す第１
図乃至第３図において、１はピストン、２はシリンダブ
ロック、３はシリンダボア、４はシリンダヘッド、５は
燃焼室、６は吸気ポート、７は排気ポート、８は点火プ
ラグの挿入孔、９はヘッドカバー、11はカム軸、17,18
はロッカー軸、19はアッパー軸受ホルダーである。

エンジンは図示の如くSOHC二気筒エンジンであって、両
燃焼室5,5に対し左右のシリンダボア3,3の内側寄りに各
吸気ポート6,6を設け、且つ対向して左右のシリンダボ
ア3,3の外側寄りに各排気ポート7,7を設けてなる吸排気
がクロスフロー形式のものであり、両吸気ポート6,6は
シリンダヘッド４壁面で合流している。

カム軸11には各気筒毎の吸気カム12,12と排気カム13,13
が設けられ、第４図にも示すように左側気筒用の吸気カ
ム12及び排気カム13間に幅広のデコンプ用カム14が設け
られており、また右側気筒用の吸気カム12と排気カム13
の各外側に幅狭のデコンプ用カム15,16が設けられてい
る。ここで、吸気カム12,12と排気カム13,13が主カムで
あり、デコンプ用カム14,15,16が副カムである。このよ
うに、第２図及び第４図に示すように、主カム12,13の
隣に副カム14,15,16が配置された状態で、これら主カム
12,13及び副カム14,15,16が単一のカム軸11に一体形成
されている。

両ロッカー軸17,18には吸排気弁用のロッカーアーム21
が二本づつ支持されており、このロッカーアーム21はカ
ム軸11及びロッカー軸17,18の軸線方向に対する傾斜角
度が同じであり、つまり吸排気弁用に共通のロッカーア
ーム21となっている。またロッカー軸17側の中央寄りの
二本が吸気弁用ロッカーアーム21,21であって、ロッカ
ー軸18側の外側方寄りの二本が排気弁用ロッカーアーム
21,21である。

そしてロッカー軸17側のロッカーアーム21,21の一端部
が吸気カム12,12に上方から摺接係合するスリッパー面
（カム係合面）22,22となっており、またロッカー軸18
側のロッカーアーム21,21の一端部が排気カム13,13に上
方から摺接係合するスリッパー面22,22となっている。
更にロッカー軸17側のロッカーアーム21,21の他端部に
吸気弁頭23,23が係合保持され、ロッカー軸18側のロッ
カーアーム21,21の他端部に排気弁頭24,24が係合保持さ
れている。

以上において、左側気筒用の排気弁用ロッカーアーム21
と吸気弁用ロッカーアーム21との間にデコンプ用プレー
ト25を配設するとともに、右側気筒用の吸気弁用ロッカ
ーアーム21の左側にもデコンプ用プレート25を配設す
る。左側のデコンプ用プレート25の先端部26はデコンプ
用カム14に上方から摺接可能であり、右側のデコンプ用
プレート25の先端部26はデコンプ用カム15に上方から摺
接可能となっており、両デコンプ用プレート25,25は中
間部のボルト27,27にてシリンダヘッド４に略水平方向
へ揺動自在に枢着されている。

そして両デコンプ用プレート25,25の基端部間にはリン
クロッド28を架設し、更に右側のデコンプ用プレート25
の基端部にリンクロッド29を連結する。一方、シリンダ
ヘッド４の外壁にロータリーソレノイド31を設置し、そ
の回転軸32に設けたレバー33にリンクロッド29を連結す
る。

また第４図に拡大して示すように前記四本の各ロッカー
アーム21…のスリッパー面22…は、夫々の主カム12,13
からそれに隣接する各副カム14,15,16上へとまたがる幅
広形状に形成されている。

以上のデコンプ装置によるデコンプ作動時は、第４図仮
想線で示す如くである。

即ちエンジンの始動及び停止時の一定回転数によりロー
タリーソレノイド31がONされて、回転軸32の回転により
レバー33を介して各リンクロッド29,28が移動し、両デ
コンプ用プレート25,25が同一方向に揺動して先端部26,
26がその右側の両吸気弁用ロッカーアーム21,21の各ス
リッパー面22,22の下方へ移動する。この過程をデコン
プ用カム15部分について説明すれば第５図及び第６図に
示す如くであり、第５図の非デコンプ状態でデコンプ用
プレート先端部26はロッカーアームスリッパー面22から
左側に離れており、第６図のデコンプ状態ではデコンプ
用プレート先端部26が右側方にスライド移動してロッカ
ーアームスリッパー面22の下側に位置する。

以上によりロッカーアームスリッパー面22がデコンプ用
カム15のリフト作用によってプレート先端部26を介して
押し上げられ、これによりロッカーアーム21が吸気弁頭
23を押し下げて吸気ポート６を開き、所期のデコンプ機
能が得られる。

尚、ロータリーソレノイド31はON時間またはエンジン回
転数によって自動的にOFFされ、プレート25が初期位置
に戻り、ロッカーアーム21は通常の弁開閉作用のみを行
う。

ここで、第５図の非デコンプ状態で、デコンプ用カム15
のベース円部に摺接するプレート先端部26上面とロッカ
ーアームスリッパー面22とにクリアランスａを設けてお
き、デコンプ用カム15のカムトップ部のリフト量ｂとプ
レート先端部26の板厚との和を、主カム12のベース円部
径より大きく設定することで、第６図のデコンプ状態で
のロッカーアームスリッパー面22のデコンプリフト量ｃ
が得られる。

このような設定によりデコンプ用プレート25は、副カム
15のリフトによってロッカーアームスリッパー面22を押
し上げている瞬間以外の時に、自由に揺動することが可
能である。即ちロッカーアームスリッパー面22の下側へ
のスライド移動によるプレート先端部26の飛び込みが許
容される。

またプレート25のボルト枢着部にガタを設けたり、バネ
板材を素材として用いることで、プレート先端部26のリ
フト挙動及び復帰挙動が許容される。

以上の実施例では、ロッカー軸17側に両デコンプ用プレ
ート25,25を配設して吸気弁用の各ロッカーアーム21,21
を押し上げるものとしたが、別のロッカー軸18側に両デ
コンプ用プレート25,25を配設して副カム14,16を夫々利
用して排気弁用の各ロッカーアーム21,21を押し上げる
ものとしても良く、また吸排気弁用ともに個々に設ける
ようにしても良い。

尚、ロッカーアームに代えて他のカム係合部材を用いた
ものにも本考案は適用される。またエンジン機種や形式
についても実施例のみに本考案が限定されるものではな
い。

［考案の効果］ 以上のように本考案によれば、主カムの隣に副カムを配
置した状態で、これら主カム及び副カムをカム軸に一体
形成し、又、ロッカーアームに、主カムと副カムとにま
たがるカム係合面を設け、このカム係合面と副カムとの
間にデコンプ用プレートを抜き差しするようにしたこと
により、デコンプ用の副カムとカム係合面との間にデコ
ンプ用プレートを差込み、カム係合面を押し上げてロッ
カーアームを揺動させ、エンジンをデコンプ状態にする
ことができる。

このため、カム軸には、このカム軸と一体形成された副
カム以外にデコンプ用部品を全く組み込む必要がない。

従って、エンジンをデコンプ状態にするための機構が簡
素であるにもかかわらず、カム軸の構造も極めて簡素に
なり、また、組立も簡単である。

また、デコンプ用プレートを、リンクを介してロータリ
ーソレノイドで駆動するようにしたので、エンジンをデ
コンプ状態にするための機構が簡素で小型になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案を適用した一例としての動弁機構の平面
図、第２図は第１図の矢印II−II線に沿ったエンジン要
部の断面図、第３図は第２図の矢印III−III線に沿った
シリンダヘッドの断面図、第４図はカム軸及びロッカー
アームとデコンプ装置の関係を示す拡大平面図、第５図
は非デコンプ状態を示す要部の説明図、第６図はデコン
プ状態を示す同様の説明図である。 尚、図面中、11はカム軸、12は主カム（吸気カム）、13
は主カム（排気カム）、14,15,16は副カム（デコンプ用
カム）、21はロッカーアーム、22はカム係合面（スリッ
パー面）、25はデコンプ用プレート、28,29はリンク、3
1はロータリーソレノイドである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 久和原 茂明 埼玉県和光市中央１丁目４番１号 株式会 社本田技術研究所内 (56)参考文献 実開 昭64−44307（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭64−46409（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】カム軸の主カムでロッカーアームを揺動
   し、このロッカーアームで吸・排気弁を駆動するエンジ
   ンにおいて、 前記主カムの隣に副カムを配置した状態で、これら主カ
   ム及び副カムをカム軸に一体形成し、又、前記ロッカー
   アームに、前記主カムと前記副カムとにまたがるカム係
   合面を設け、このカム係合面と前記副カムとの間にデコ
   ンプ用プレートを抜き差しするようにしたことを特徴と
   するエンジンのデコンプ装置。
2. 【請求項２】前記デコンプ用プレートは、ロータリーソ
   レノイドにリンク結合されたことを特徴とする請求項１
   記載のエンジンのデコンプ装置。