JPH07211284A - イオントラップ型質量分析計 - Google Patents
イオントラップ型質量分析計Info
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- JPH07211284A JPH07211284A JP144394A JP144394A JPH07211284A JP H07211284 A JPH07211284 A JP H07211284A JP 144394 A JP144394 A JP 144394A JP 144394 A JP144394 A JP 144394A JP H07211284 A JPH07211284 A JP H07211284A
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- trap
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 高感度,高分解能を実現したイオントラップ
型質量分析計を提供する。 【構成】 2以上に偶数分割されたリング電極1と,リ
ング電極の軸方向へ磁場を印加する磁場印加手段と,リ
ング電極のそれぞれに磁場と直交し,かつ,互いに位相
が反転した交流電場を印加する可変周波数交流電場印加
手段7と,リング電極の開口端に配置され中心から外周
に向かうに従って順次イオントラップのポテンシャルが
低くなるような電圧が印加された一対のトラップ電極2
と,リング電極とトラップ電極で形成される空間に測定
ガスを導入し該ガスをイオン化するイオン化手段5,5
aと,リング電極及びトラップ電極の外周付近に配置さ
れたイオン引出し電極8と,該イオン引出し電極の後段
に配置され前記イオンを電気信号に変換するイオン検出
手段9とを備えている。
型質量分析計を提供する。 【構成】 2以上に偶数分割されたリング電極1と,リ
ング電極の軸方向へ磁場を印加する磁場印加手段と,リ
ング電極のそれぞれに磁場と直交し,かつ,互いに位相
が反転した交流電場を印加する可変周波数交流電場印加
手段7と,リング電極の開口端に配置され中心から外周
に向かうに従って順次イオントラップのポテンシャルが
低くなるような電圧が印加された一対のトラップ電極2
と,リング電極とトラップ電極で形成される空間に測定
ガスを導入し該ガスをイオン化するイオン化手段5,5
aと,リング電極及びトラップ電極の外周付近に配置さ
れたイオン引出し電極8と,該イオン引出し電極の後段
に配置され前記イオンを電気信号に変換するイオン検出
手段9とを備えている。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,単体で或いはガス若し
くは液体クロマトグラフと組合せて使用される質量分析
計に関し,さらに詳しくは,イオンサイクロトロン共鳴
を利用して高感度,高分解能の実現を図ったイオントラ
ップ型質量分析計に関するものである。
くは液体クロマトグラフと組合せて使用される質量分析
計に関し,さらに詳しくは,イオンサイクロトロン共鳴
を利用して高感度,高分解能の実現を図ったイオントラ
ップ型質量分析計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,例えばガスクロマトグラフ用の質
量検出部には,主として四重曲質量分析装置(Q−M
S)が用いられている。この装置は4本のロッドに直流
と交流電圧を印加して,その電圧の条件によって通過す
るイオンを質量によって弁別するものである。その他,
Q−MSを3次元に拡張し電場のみでイオンをトラップ
するポールトラップ型質量分析計や電場と磁場でイオン
をトラップするフーリェ変換イオンサイクロトロン共鳴
質量分析計(FT-ICR-MS)がある。FT-ICRについて簡単に
説明する。
量検出部には,主として四重曲質量分析装置(Q−M
S)が用いられている。この装置は4本のロッドに直流
と交流電圧を印加して,その電圧の条件によって通過す
るイオンを質量によって弁別するものである。その他,
Q−MSを3次元に拡張し電場のみでイオンをトラップ
するポールトラップ型質量分析計や電場と磁場でイオン
をトラップするフーリェ変換イオンサイクロトロン共鳴
質量分析計(FT-ICR-MS)がある。FT-ICRについて簡単に
説明する。
【0003】一様な磁場中のイオンは,磁場の方向に螺
旋運動を行う。この運動を磁場に垂直な面に投影すると
円運動になる。ここで,イオンの電荷をq,イオンの質
量をm,磁場の強さをBとすると,その回転周波数(f
c)は fc=qB/2πm となる。この式から明らかなように,回転周波数fcと
磁場の強さBを測定することによりイオンの質量電荷m
/qを求めることが出来る。FT-ICRはこのような原理を
用いて静電場と静磁場によりイオンを真空中でトラップ
し,トラップされたイオンにサイクロトロン共鳴周波数
の交流電圧を一定時間かけることによりイオンを強制的
に励起し,加速されたイオンを検出してその周期運動の
周波数解析を行ってイオンの質量分析を行うものであ
る。
旋運動を行う。この運動を磁場に垂直な面に投影すると
円運動になる。ここで,イオンの電荷をq,イオンの質
量をm,磁場の強さをBとすると,その回転周波数(f
c)は fc=qB/2πm となる。この式から明らかなように,回転周波数fcと
磁場の強さBを測定することによりイオンの質量電荷m
/qを求めることが出来る。FT-ICRはこのような原理を
用いて静電場と静磁場によりイオンを真空中でトラップ
し,トラップされたイオンにサイクロトロン共鳴周波数
の交流電圧を一定時間かけることによりイオンを強制的
に励起し,加速されたイオンを検出してその周期運動の
周波数解析を行ってイオンの質量分析を行うものであ
る。
【0004】図6は従来から用いられているFT-ICR分析
計の共鳴セルの要部構成図である。図において励起電極
21a,21b及び検出電極23a,23bはそれぞれ
矩形円弧状に湾曲形成されていて励起電極対及び検出電
極対として用いられるものであり,各電極対が互いに直
交するように配置されていて円筒型の検出部Aを構成し
ている。トラップ電極25a,25bは中央に貫通孔
7,8を有する円板状に形成され,励起電極1a,1b
と検出電極23a,23bで形成される円筒型の検出部
Aの両端を塞ぐように配置されている。29はフィラメ
ント,30はグリッド,31は加速電極でトラップ電極
25の貫通孔7に向かって電子線を出射する電子銃Bを
構成している。この電子銃Bから出射される電子線はト
ラップ電極25bの貫通孔8を通ってコレクタ32に入
射する。
計の共鳴セルの要部構成図である。図において励起電極
21a,21b及び検出電極23a,23bはそれぞれ
矩形円弧状に湾曲形成されていて励起電極対及び検出電
極対として用いられるものであり,各電極対が互いに直
交するように配置されていて円筒型の検出部Aを構成し
ている。トラップ電極25a,25bは中央に貫通孔
7,8を有する円板状に形成され,励起電極1a,1b
と検出電極23a,23bで形成される円筒型の検出部
Aの両端を塞ぐように配置されている。29はフィラメ
ント,30はグリッド,31は加速電極でトラップ電極
25の貫通孔7に向かって電子線を出射する電子銃Bを
構成している。この電子銃Bから出射される電子線はト
ラップ電極25bの貫通孔8を通ってコレクタ32に入
射する。
【0005】このように構成される円筒型の検出部A内
で生成されて捕えられるイオンは熱エネルギーの速度で
回転運動し,その回転半径は小さく,位相もイオン毎に
バラバラでそのまま検出することは困難である。そこで
磁場に平行な励起電極21a,21bにサイクロトロン
共鳴周波数の交流電圧を印加してイオンを強制的に加速
する。これにより,イオンの位相は揃って速度が増し、
その回転半径が大きくなる。そして加速されたイオンは
磁場に平行な検出電極3a,3bにより検出される。
で生成されて捕えられるイオンは熱エネルギーの速度で
回転運動し,その回転半径は小さく,位相もイオン毎に
バラバラでそのまま検出することは困難である。そこで
磁場に平行な励起電極21a,21bにサイクロトロン
共鳴周波数の交流電圧を印加してイオンを強制的に加速
する。これにより,イオンの位相は揃って速度が増し、
その回転半径が大きくなる。そして加速されたイオンは
磁場に平行な検出電極3a,3bにより検出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,FT-ICR
では高分解能は得られるが運動しているイオンが誘起す
る誘導電流を検出するため測定にはある程度(例えば1
00個以上)のイオンがセル内に存在していなければな
らず,検出感度はQ−MS等に比較して低いと考えられ
ている。また,Q−MSでは質量分解能はあまり良くな
く試料気体をイオン化する部分(イオン源)が隔ってお
り,そこからイオンを引出すときにロスが発生する。そ
して,広い質量範囲を検出するフルスキャンのモードで
は,弁別するタイミングに合わなかったイオンは検出さ
れないので感度が悪くなるという問題がある。本発明は
上記従来技術の問題を解決するためになされたもので,
高感度、高分解能を実現したイオントラップ型質量分析
計を提供することを目的とする。
では高分解能は得られるが運動しているイオンが誘起す
る誘導電流を検出するため測定にはある程度(例えば1
00個以上)のイオンがセル内に存在していなければな
らず,検出感度はQ−MS等に比較して低いと考えられ
ている。また,Q−MSでは質量分解能はあまり良くな
く試料気体をイオン化する部分(イオン源)が隔ってお
り,そこからイオンを引出すときにロスが発生する。そ
して,広い質量範囲を検出するフルスキャンのモードで
は,弁別するタイミングに合わなかったイオンは検出さ
れないので感度が悪くなるという問題がある。本発明は
上記従来技術の問題を解決するためになされたもので,
高感度、高分解能を実現したイオントラップ型質量分析
計を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する為に
本発明は,両端が開口した筒体が軸方向に少なくとも2
以上に偶数分割され互いに電気的に非接触な状態で配置
されたリング電極と,該リング電極の軸方向へ磁場を印
加する磁場印加手段と,前記リング電極のそれぞれに前
記磁場と直交し,かつ,互いに位相が反転した交流電場
を印加する交流電場印加手段と,前記リング電極の開口
端に電気的に非接触な状態で配置され中心から外周に向
かうに従って順次イオントラップのポテンシャルが低く
なるような電圧が印加された一対のトラップ電極と,前
記リング電極とトラップ電極で形成される空間に測定ガ
スを導入し該ガスをイオン化するイオン化手段と,前記
リング電極及びトラップ電極の外周付近で,かつ,これ
らの電極と電気的に非接触な状態で配置されたイオン引
出し電極と,該イオン引出し電極の後段に配置され前記
イオンを電気信号に変換するイオン検出手段と,を備え
たことを特徴とするものである。
本発明は,両端が開口した筒体が軸方向に少なくとも2
以上に偶数分割され互いに電気的に非接触な状態で配置
されたリング電極と,該リング電極の軸方向へ磁場を印
加する磁場印加手段と,前記リング電極のそれぞれに前
記磁場と直交し,かつ,互いに位相が反転した交流電場
を印加する交流電場印加手段と,前記リング電極の開口
端に電気的に非接触な状態で配置され中心から外周に向
かうに従って順次イオントラップのポテンシャルが低く
なるような電圧が印加された一対のトラップ電極と,前
記リング電極とトラップ電極で形成される空間に測定ガ
スを導入し該ガスをイオン化するイオン化手段と,前記
リング電極及びトラップ電極の外周付近で,かつ,これ
らの電極と電気的に非接触な状態で配置されたイオン引
出し電極と,該イオン引出し電極の後段に配置され前記
イオンを電気信号に変換するイオン検出手段と,を備え
たことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】セル空間内のイオンは磁場とトラップ電極に印
加された電圧により空間の中央付近に分布する。リング
電極の中心軸をZ軸,トラップ電極の外周方向をR軸と
する円筒座標系で考えると,イオンはR軸方向にはその
時のエネルギーに相当する軌道半径をもつサイクロトロ
ン回転運動をしており,Z軸方向にはトラップ電極に印
加された電圧によってつくり出される電場によって補足
された調和振動運動をしていることになる。
加された電圧により空間の中央付近に分布する。リング
電極の中心軸をZ軸,トラップ電極の外周方向をR軸と
する円筒座標系で考えると,イオンはR軸方向にはその
時のエネルギーに相当する軌道半径をもつサイクロトロ
ン回転運動をしており,Z軸方向にはトラップ電極に印
加された電圧によってつくり出される電場によって補足
された調和振動運動をしていることになる。
【0009】イオンはリング電極に印加された位相の反
転した可変周波数交流電場により,その周波数に対応す
る質量のイオン種がサイクロトロン共鳴を起こす。サイ
クロトロン共鳴を起こしたイオンは回転速度が増大し軌
道半径が大きくなる。トラップ電極にはR方向が大きく
なる(外周方向)に従って順次トラップポテンシャルが
低くなるような電圧が印加されているので,軌道が大き
くなったイオンはZ方向に広い範囲にわたって運動し得
ることになり外周付近に達したイオンは引出し電極によ
り引出されイオン検出手段により検出される。このとき
周波数を掃引すれば周波数に対応した複数のイオンを順
次検出することができ,質量スペクトルを得ることがで
きる。
転した可変周波数交流電場により,その周波数に対応す
る質量のイオン種がサイクロトロン共鳴を起こす。サイ
クロトロン共鳴を起こしたイオンは回転速度が増大し軌
道半径が大きくなる。トラップ電極にはR方向が大きく
なる(外周方向)に従って順次トラップポテンシャルが
低くなるような電圧が印加されているので,軌道が大き
くなったイオンはZ方向に広い範囲にわたって運動し得
ることになり外周付近に達したイオンは引出し電極によ
り引出されイオン検出手段により検出される。このとき
周波数を掃引すれば周波数に対応した複数のイオンを順
次検出することができ,質量スペクトルを得ることがで
きる。
【0010】
【実施例】図1は本発明によるトラップ型質量分析計の
一実施例を示す要部構成図である。図において,1はリ
ング電極で両端が開口した筒体が軸方向に2分割され互
いに電気的に非接触な状態で配置されている。2はリン
グ電極の開口端に電気的に非接触な状態で配置され,中
心から外周方向に向かうに従って順次イオントラップの
ポテンシャルが低くなるような電圧が印加された一対の
トラップ電極で,この電極は例えば図2(a)に示すよ
うに中心部に+30V,外周に向かうに従ってそれぞれ
+20,+10,+1Vと順次低くなっている(なお,
図1では電圧印加手段を代表して3,3’のみを示して
いる)。
一実施例を示す要部構成図である。図において,1はリ
ング電極で両端が開口した筒体が軸方向に2分割され互
いに電気的に非接触な状態で配置されている。2はリン
グ電極の開口端に電気的に非接触な状態で配置され,中
心から外周方向に向かうに従って順次イオントラップの
ポテンシャルが低くなるような電圧が印加された一対の
トラップ電極で,この電極は例えば図2(a)に示すよ
うに中心部に+30V,外周に向かうに従ってそれぞれ
+20,+10,+1Vと順次低くなっている(なお,
図1では電圧印加手段を代表して3,3’のみを示して
いる)。
【0011】点線で示す矢印Bはリング電極の軸方向か
ら図示しない磁場形成手段により形成された磁場であ
る。4は測定ガスを前記リング電極とトラップ電極で形
成されるセル内に供給する試料気体供給装置で例えばガ
スクロマトグラフである。5は電子銃,5aは電子コレ
クターからなるイオン化手段で,電子銃5から出射した
電子がセル内を通って電子コレクタ5aに達するように
配置されている。
ら図示しない磁場形成手段により形成された磁場であ
る。4は測定ガスを前記リング電極とトラップ電極で形
成されるセル内に供給する試料気体供給装置で例えばガ
スクロマトグラフである。5は電子銃,5aは電子コレ
クターからなるイオン化手段で,電子銃5から出射した
電子がセル内を通って電子コレクタ5aに達するように
配置されている。
【0012】7,7’は分割されたリング電極のそれぞ
れに接続された交流電場印加手段で各電極には同一周波
数で,かつ,位相が反転した電圧が印加される。8はリ
ング電極及びトラップ電極の外周付近で,かつ,これら
の電極と非接触な状態で配置されたイオン引出し電極で
あり,例えば−1Vの負電圧が印加されている。9はイ
オン引出し電極の後段に配置され引き出されたイオンを
電気信号に変換するイオン検出手段である。なお,セル
内は1×10-5トル程度の真空に維持されている。
れに接続された交流電場印加手段で各電極には同一周波
数で,かつ,位相が反転した電圧が印加される。8はリ
ング電極及びトラップ電極の外周付近で,かつ,これら
の電極と非接触な状態で配置されたイオン引出し電極で
あり,例えば−1Vの負電圧が印加されている。9はイ
オン引出し電極の後段に配置され引き出されたイオンを
電気信号に変換するイオン検出手段である。なお,セル
内は1×10-5トル程度の真空に維持されている。
【0013】上記の構成において,セル内にガスが導入
され,イオン化手段5,5aによりガスがイオン化され
る。その場合,本実施例ではトラップ電極2が正電位と
されているので負イオンは電圧印加手段のアース側へ流
れ,正イオンはセルの中央付近に分布するようになる。
本発明では,トラップ電極の中心から外周に向かうに従
って順次電圧が低くなるような電圧が印加されているの
で,Z方向のイオンのトラップ力は中心が強く外周が弱
くなっている。
され,イオン化手段5,5aによりガスがイオン化され
る。その場合,本実施例ではトラップ電極2が正電位と
されているので負イオンは電圧印加手段のアース側へ流
れ,正イオンはセルの中央付近に分布するようになる。
本発明では,トラップ電極の中心から外周に向かうに従
って順次電圧が低くなるような電圧が印加されているの
で,Z方向のイオンのトラップ力は中心が強く外周が弱
くなっている。
【0014】次に,可変周波数交流電場印加手段7,
7’から磁場と直交し,かつ,互いに位相が反転した可
変周波数交流電場を印加する。その場合,例えば低い周
波数から高い方に掃引すると周波数に対応した質量のイ
オンが順次サイクロトロン共鳴を起こし,励起され共鳴
したイオンは回転半径が大きくなり外周に向かう。この
ときイオンのトラップ力は中心が強く外周が弱くなって
いるので,イオンはZ方向に広い範囲にわたって運動で
きるようになり最終的には引出し電極8の位置からセル
の外へ排出される。
7’から磁場と直交し,かつ,互いに位相が反転した可
変周波数交流電場を印加する。その場合,例えば低い周
波数から高い方に掃引すると周波数に対応した質量のイ
オンが順次サイクロトロン共鳴を起こし,励起され共鳴
したイオンは回転半径が大きくなり外周に向かう。この
ときイオンのトラップ力は中心が強く外周が弱くなって
いるので,イオンはZ方向に広い範囲にわたって運動で
きるようになり最終的には引出し電極8の位置からセル
の外へ排出される。
【0015】図2(a),(b)はトラップ電極に印加
される電圧が中心から外周に向かって低くなっている状
態を示す斜視図および断面図である。図3は位相の反転
した交流電圧をそれぞれのリング電極に印加した状態で
あり,その交流電圧によりセル内のイオンが励起されて
サイクロトロン共鳴により回転している状態を模式的に
示している。(a)〜(c)図はセル内でイオンが回転
している位置のトラップポテンシャルの深さを模式的に
示す図であり,矢印の範囲はイオンがZ方向に振動可能
な距離を示している。トラップのポテンシャルは外側に
向かって(a)→(b)→(c)の順に低くなってお
り,(c)図では引出し電極の効果でイオンがトラップ
電極の外側に引出された状態を示している。
される電圧が中心から外周に向かって低くなっている状
態を示す斜視図および断面図である。図3は位相の反転
した交流電圧をそれぞれのリング電極に印加した状態で
あり,その交流電圧によりセル内のイオンが励起されて
サイクロトロン共鳴により回転している状態を模式的に
示している。(a)〜(c)図はセル内でイオンが回転
している位置のトラップポテンシャルの深さを模式的に
示す図であり,矢印の範囲はイオンがZ方向に振動可能
な距離を示している。トラップのポテンシャルは外側に
向かって(a)→(b)→(c)の順に低くなってお
り,(c)図では引出し電極の効果でイオンがトラップ
電極の外側に引出された状態を示している。
【0016】図4(a)は共振したイオンの回転が次第
に大きくなりリング電極とトラップ電極の外周付近に配
置されたイオン引出し電極により引き出されている状態
を示している。(b)及び(c)図はリング電極に印加
される周波数と質量の関係を示すもので,例えば周波数
f1のときには質量m1に対応するイオンが,周波数f 2
のときには質量m2に対応するイオンが検出されている
状態を示している。
に大きくなりリング電極とトラップ電極の外周付近に配
置されたイオン引出し電極により引き出されている状態
を示している。(b)及び(c)図はリング電極に印加
される周波数と質量の関係を示すもので,例えば周波数
f1のときには質量m1に対応するイオンが,周波数f 2
のときには質量m2に対応するイオンが検出されている
状態を示している。
【0017】ここで,イオン種に対応する固有のサイク
ロトロン共鳴周波数(fc)は fc=qB/(2πm) … であり,2種類のイオンを選択して分離するためには Δfc/fc>ΔB/B … の条件が必要である そして Δfc/fc=(fc1−fc2)/fc1=(m2−m1)/m
2…サイクロトロン共鳴周波数の変化の割合 ΔB/B …磁場の均一度 であるから,質量mとm+Δmを選択分離できる最小の
差異は式から 1−m/(m+Δm)>ΔB/B なので Δm>{(ΔB/B)/(1−ΔB/B)}・m となる。従って,磁場の均一度ΔB/Bを1×10
-3(0.1%),1×10-4(0.01%)と仮定して
種々のmについてΔm(分離可能最小質量差)を求める
と次表の通りとなる。
ロトロン共鳴周波数(fc)は fc=qB/(2πm) … であり,2種類のイオンを選択して分離するためには Δfc/fc>ΔB/B … の条件が必要である そして Δfc/fc=(fc1−fc2)/fc1=(m2−m1)/m
2…サイクロトロン共鳴周波数の変化の割合 ΔB/B …磁場の均一度 であるから,質量mとm+Δmを選択分離できる最小の
差異は式から 1−m/(m+Δm)>ΔB/B なので Δm>{(ΔB/B)/(1−ΔB/B)}・m となる。従って,磁場の均一度ΔB/Bを1×10
-3(0.1%),1×10-4(0.01%)と仮定して
種々のmについてΔm(分離可能最小質量差)を求める
と次表の通りとなる。
【0018】 | 磁場の均一度(ΔB/B) m(質量) |0.1(%) | 0.01(%) 10 (amu)|0.01(amu) | 0.001(amu) 100(〃) |0.10(〃) | 0.010(〃) 500(〃) |0.50(〃) | 0.050(〃) 800(〃) |0.80(〃) | 0.080(〃) 上記の値はQ−MSやポールトラップ型MSの0.5〜
1.0に対して1〜2桁良い値となっている。なお,本
発明ではイオンをサイクロトロン共鳴させ,リング電極
の外周付近に達したイオンを引き出しているので原理的
にはイオンが1個存在しているだけでも検出が可能であ
る。また,磁場が印加されているため電子衝撃イオン化
時に電子の飛程が長くなるのでポールトラップ型に比較
して生成イオン自体が多くなる。またQーMSのように
イオン源からイオンを引き出す損失もないので高感度な
分析が可能である。
1.0に対して1〜2桁良い値となっている。なお,本
発明ではイオンをサイクロトロン共鳴させ,リング電極
の外周付近に達したイオンを引き出しているので原理的
にはイオンが1個存在しているだけでも検出が可能であ
る。また,磁場が印加されているため電子衝撃イオン化
時に電子の飛程が長くなるのでポールトラップ型に比較
して生成イオン自体が多くなる。またQーMSのように
イオン源からイオンを引き出す損失もないので高感度な
分析が可能である。
【0019】なお,本実施例においてはトラップ電極
2,2’の対称位置に同じ電圧30V,20V,10
V,1Vを印加した図を示したが,引出し電極8が配置
された側のトラップ電極2側に中心から外側に向かって
例えば20V,15V,10V,1Vのように順次低く
なるような電圧を印加することも可能である。その場
合,セル内のイオンを引出し電極が配置された側へ引寄
せることができ引出し効率の向上を図ることができる。
また,セル内のイオンを引出し電極8側に引寄せる手段
として,トラップ電極2側の電圧を一瞬0にしたり或い
は交流電圧を重畳してイオンの位相を揃えた後引出すこ
とも可能である。
2,2’の対称位置に同じ電圧30V,20V,10
V,1Vを印加した図を示したが,引出し電極8が配置
された側のトラップ電極2側に中心から外側に向かって
例えば20V,15V,10V,1Vのように順次低く
なるような電圧を印加することも可能である。その場
合,セル内のイオンを引出し電極が配置された側へ引寄
せることができ引出し効率の向上を図ることができる。
また,セル内のイオンを引出し電極8側に引寄せる手段
として,トラップ電極2側の電圧を一瞬0にしたり或い
は交流電圧を重畳してイオンの位相を揃えた後引出すこ
とも可能である。
【0020】また,本実施例においてはリング電極を2
分割した例について説明したが,4分割,6分割それ以
上の分割数であってもよい。その場合,印加する交流は
隣り合う電極に対して90°,30°のように位相がず
れた電圧を印加する。また,リング電極の形状は円筒状
に限ることなく,例えば図5に示すような矩形であって
もよい。
分割した例について説明したが,4分割,6分割それ以
上の分割数であってもよい。その場合,印加する交流は
隣り合う電極に対して90°,30°のように位相がず
れた電圧を印加する。また,リング電極の形状は円筒状
に限ることなく,例えば図5に示すような矩形であって
もよい。
【0021】
【発明の効果】以上実施例とともに具体的に説明した様
に本発明によれば,高感度、高分解能を実現したトラッ
プ型質量分析計を実現することが出来る。
に本発明によれば,高感度、高分解能を実現したトラッ
プ型質量分析計を実現することが出来る。
【図1】本発明の一実施例を示すトラップ型質量分析計
の要部構成図である。
の要部構成図である。
【図2】トラップ電極に印加される電圧が中心から外周
に向かって低くなっている状態を示す斜視図(a),断
面図(b)である。
に向かって低くなっている状態を示す斜視図(a),断
面図(b)である。
【図3】セル内でイオンが回転している位置のトラップ
ポテンシャルの深さを模式的に示す図である。
ポテンシャルの深さを模式的に示す図である。
【図4】共振したイオンの回転がイオン引出し電極によ
り引き出されている状態(a),リング電極に印加され
る周波数と質量の関係を示す図(b)である。
り引き出されている状態(a),リング電極に印加され
る周波数と質量の関係を示す図(b)である。
【図5】他の実施例を示す図である
【図6】従来例を示す要部構成図である。
1 リング電極 2 トラップ電極 3 電圧印加手段 4 ガスクロマトグラフ 5,5a イオン化手段 7 交流電場印加手段 8 イオン引出し電極 9 イオン検出手段
Claims (1)
- 【請求項1】両端が開口した筒体が軸方向に少なくとも
2以上に偶数分割され互いに電気的に非接触な状態で配
置されたリング電極と,該リング電極の軸方向へ磁場を
印加する磁場印加手段と,前記リング電極のそれぞれに
前記磁場と直交し,かつ,互いに位相が反転した交流電
場を印加する交流電場印加手段と,前記リング電極の開
口端に電気的に非接触な状態で配置され中心から外周に
向かうに従って順次イオントラップのポテンシャルが低
くなるような電圧が印加された一対のトラップ電極と,
前記リング電極とトラップ電極で形成される空間に測定
ガスを導入し該ガスをイオン化するイオン化手段と,前
記リング電極及びトラップ電極の外周付近で,かつ,こ
れらの電極と電気的に非接触な状態で配置されたイオン
引出し電極と,該イオン引出し電極の後段に配置され前
記イオンを電気信号に変換するイオン検出手段と,を備
えたことを特徴とするイオントラップ型質量分析計。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP144394A JP3305473B2 (ja) | 1994-01-12 | 1994-01-12 | イオントラップ型質量分析計 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP144394A JP3305473B2 (ja) | 1994-01-12 | 1994-01-12 | イオントラップ型質量分析計 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07211284A true JPH07211284A (ja) | 1995-08-11 |
JP3305473B2 JP3305473B2 (ja) | 2002-07-22 |
Family
ID=11501590
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP144394A Expired - Fee Related JP3305473B2 (ja) | 1994-01-12 | 1994-01-12 | イオントラップ型質量分析計 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3305473B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006234782A (ja) * | 2005-01-28 | 2006-09-07 | Hitachi High-Technologies Corp | 電子捕獲解離反応装置及び電子捕獲解離を備えた質量分析装置 |
WO2008126976A1 (en) * | 2007-04-17 | 2008-10-23 | Korean Basic Science Institute | Apparatus for signal improvement of fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometer |
JP2014528147A (ja) * | 2011-09-20 | 2014-10-23 | ジ・ユニバーシティ・オブ・サセックスThe University Of Sussex | イオントラップ |
-
1994
- 1994-01-12 JP JP144394A patent/JP3305473B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006234782A (ja) * | 2005-01-28 | 2006-09-07 | Hitachi High-Technologies Corp | 電子捕獲解離反応装置及び電子捕獲解離を備えた質量分析装置 |
WO2008126976A1 (en) * | 2007-04-17 | 2008-10-23 | Korean Basic Science Institute | Apparatus for signal improvement of fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometer |
JP2014528147A (ja) * | 2011-09-20 | 2014-10-23 | ジ・ユニバーシティ・オブ・サセックスThe University Of Sussex | イオントラップ |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3305473B2 (ja) | 2002-07-22 |
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LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |