JPH07206618A - 抗菌活性をもつ複分岐サイクロデキストリン - Google Patents

抗菌活性をもつ複分岐サイクロデキストリン

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JPH07206618A
JPH07206618A JP2377594A JP2377594A JPH07206618A JP H07206618 A JPH07206618 A JP H07206618A JP 2377594 A JP2377594 A JP 2377594A JP 2377594 A JP2377594 A JP 2377594A JP H07206618 A JPH07206618 A JP H07206618A
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昭一 小林
Wakako Tsuzuki
和香子 都築
Noriyasu Watanabe
則康 渡辺
Ryuichi Oya
隆一 大矢
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は抗菌または静菌作用があり、安全性に
優れた食品保存に幅広く利用できる抗菌剤に関する。 【構成】複分岐サイクロデキストリンを有効成分として
含有してなる抗菌剤。更に詳細には、ACタイプ及び/
又はADタイプである抗菌剤であり、各種細菌に対して
抗菌・静菌作用を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗菌剤に関し、詳しく
は、複分岐サイクロデキストリンを有効成分として含有
してなる抗菌剤、更に詳細にはAC及び/又はADタイ
プの二分岐グルコシル−サイクロデキストリン骨格をも
つ抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】これまでの抗菌剤としては各種のものが
あり、例えば食品用としては安息香酸、ソルビン酸、デ
ヒドロ酢酸、プロピオン酸、オルトフェニルフェノール
などの合成食品添加物、天然素材としてはキチン、キト
サン、プロタミン、ワサビ、シナモン、茶タンニン、ヒ
ノキチオール、ベタイン、ナツメグ、メース、寒天オリ
ゴ糖などがあり、金属ではカルシウム製剤に効果がある
ことが知られている。
【0003】しかし、合成品では安全性の面で利用し難
く、また、ワサビ、シナモンなど多くの天然素材では安
定性に劣り、揮散性であるなどの問題点もある。さら
に、キチン、寒天オリゴ糖、カルシウム製剤などでは味
質、テクスチャーに影響を及ぼす可能性もある。
【0004】これらの食品素材の不利な点を補い、さら
にそのもの自体に抗菌または静菌作用があり、安全性に
優れた食品素材があれば食品保存に幅広く利用できるで
あろうし、医薬への応用も可能となる。
【0005】このような素材として、すでにβ-サイク
ロデキストリンが一般に知られており、例えば漬け物に
添加することにより静菌効果が期待できるとされてい
る。
【0006】しかし、添加効果は大きなものではなく、
本発明者らの検討によれば菌種によっては効果が認めら
れないものも多く存在していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】サイクロデキストリン
(以下、CDとする)にはα−CD、β−CD、γ−C
Dが知られ、そのほかにも、本発明者らの開発した方法
で生産される分岐CDにはグルコースの枝を一個もつグ
ルコシル-CD(G1-CD)、n個のグルコースからな
るグルカンを枝にもつGn-CD(マルトースの枝をもつ
CD:G2-CD、パノースの枝をもつCD:Pan-CDな
ど)、グルコースの枝を二個もつジグルコシル-CD
((G1)2-CD、二分岐グルコシル-CD)なども報告さ
れている。
【0008】例えば、α−CDやβ−CDを基本骨格に
した場合には、(G1)2-CDについては図1のように、
枝の位置により3種の異性体、すなわち、グルコースが
CD環に二個隣合わせに結合したABタイプ[(G1)2-
CDAB]、一個離れた位置に結合したACタイプ
[(G1)2-CDAC]、二個離れたADタイプ[(G1)2-C
AD]がある。
【0009】しかし、(G1)2-CDの性質については本
発明者らのグループにより包接体形成能、安定性につい
て検討されているのみである。
【0010】また、(G1)2-CD、3種異性体の酵素的
生産方法は本発明者らが開発したものであり、これ以外
には、これまで、その性質を検討するに十分な量を調製
する方法はない。したがって、3種異性体の機能性につ
いては何人にも知られていなかった。
【0011】3種の(G1)2-CD間での性質の差異は大
きく、ABタイプは元のCDと類似した性質をもち、A
C、ADタイプでは著しく異なることが本発明者らの検
討から明らかにされつつある。
【0012】これらのことから、本発明者らは3種タイ
プのCDを分離、調製し、各々の各種細菌への影響を検
討した。
【0013】本発明者らは、市販品のα-、β-、γ-C
D、G1-α-CD、G1-β-CD、G2-α-CD、G2-β-
CDと、本発明者らが調製した(G1)2-α-CD、(G1)2
-β-CDを用い、各種細菌に各種濃度で添加して培養し
たところ、AC、ADタイプの(G1)2-α-CD、(G1)2
-β-CDが各種細菌に対して、高い生育阻害効果を示す
ことを見い出したのである。即ち、本発明は、複分岐サ
イクロデキストリン(以下、複分岐CDという)を有効
成分として含有してなる抗菌剤に関する。尚、本発明で
は、各種細菌の生育を阻害する抗菌作用、静菌作用を有
する物質を抗菌剤として表示する。
【0014】なお、本発明において(G1)2-CDの分岐
状態を表すために、(G1)2-CDAB、(G1)2-CDAC
(G1)2-CDADの様に表示する。また、これらの二種以
上の混合物であることを特定する場合は(G1)2-CDMIX
と表示する。
【0015】
【課題を解決するための手段】次いで、本発明について
詳述する。本発明に使用する複分岐サイクロデキストリ
ンは、例えば以下のようにして調製することができる。
【0016】マルトースとα−CDを混合(1:3)し
てプルラナーゼを作用させ、G2−CDと(G2)2-CDと
し、更にグルコアミラーゼを作用させ分岐部分を切り揃
えて、以下のようにして精製分別して調製する。
【0017】G1-CDと(G1)2-CDの分離はNH2カラム
を用いてHPLCによって分取した。分取条件は、カラ
ム:YMC-Pack Polyamine II(分取用)、溶媒:55%アセ
トニトリル(w/w)、流速:7.0ml/min、カラム温度:20
℃、である。本条件でG1-CDと(G1)2-CDは明確に
分離することができ、1回当たり150mg程度まで処理で
きた。
【0018】(G1)2-CDAB、(G1)2-CDAC及び(G1)2
-CDAD3種間での分離はHPLC分取用ODSカラム
によって行った。分離条件は、カラム:Inertsile ODS-
2分取用、溶媒:2% エタノール(W/W)、流速:10 ml/mi
n、カラム温度:20℃、である。
【0019】本条件で、(G1)2-CDABは明確に分離で
きるが、(G1)2-CDAC、(G1)2-CDADの分離は困難で
あった。そこで、サイクロデキストリン合成酵素(以
下、CGTaseとする)を(G1)2-α-CDAC、と(G1)2-α-
CDADの混合物に作用させ、ACタイプをカップリング
反応により環構造を開いて直鎖糖にし、ADタイプは殆
ど反応しないので、直鎖糖とADタイプを分離した後、
直鎖糖を再度CGTaseに作用させてACタイプの純品を得
ることができる。
【0020】また、β-CDを用いた場合はマルトース
とβ−CDの混合比を1:9にする以外は上記と同様に
して複分岐サイクロデキストリンを調製することができ
る。しかしながら、この場合はCGTaseにより、AC、A
Dタイプとも分解作用を受け、分離が困難であるので、
混合物が得られた。
【0021】本発明に使用できる複分岐CDは、グルコ
ースの枝がCD環のグルコース残基に一個以上おきの間
隔で結合した分岐CD骨格を有するものであればいずれ
も使用することができる。
【0022】その結合様式は、α-1,6結合、β結合、1,
2結合、1,3結合でも本発明の目的に利用できるがより好
ましくは、α−1,6結合で結合している場合が挙げられ
る。また、例えば(G2)2-CD、G1,G2-CD、G1,Pan
-CDなどを枝としたAC、ADタイプなども使用でき
る。更に、枝部分としてはグルコースに限らずガラクト
ース、マンノースなど他の単糖、オリゴ糖、ガラクトシ
ルグルコースなどのヘテロオリゴ糖でも本発明に使用で
きる。
【0023】実用的には、各種糖質との混合物でもよ
く、例えば、複分岐CD生産の場合の未反応のCD、A
Bタイプ、生成したグルコースなどとの混合物としても
利用できる。
【0024】更に、本発明の複分岐CDにベンジルなど
のアリル、メチル、エチル、プロピルなどのアルキル、
ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、ス
ルフォニル、アミノ基など各種官能基を結合させて機能
性を高めることもできる。
【0025】また、本発明の複分岐CDを他の抗菌剤と
混合して併用したり、各種の安定剤を混合して使用する
こともできる。
【0026】次いで、本発明の抗菌剤の使用法はその適
用対象によって様々であるが、通常0.01%から10%の濃
度で使用することができる。
【0027】その適用対象としては食品分野、医療分野
などであり、使用方法としては混合、噴霧、浸漬などい
ずれの方法でも用いることができる。以下、本発明につ
いて参考例および実施例を示し詳細に説明するが、本発
明はこれらによって限定されるものではない。
【0028】参考例 (G1)2-α-CDACと(G1)2-α-CDADの混合物および
(G1)2-β-CDACと(G1)2-β-CDADの混合物に酢酸な
どの有機酸を結合した各々の部分置換物を調製し、同様
にして調製した部分置換α-CD、部分置換β-CDと比
較検討した。
【0029】調製法(部分アセチル化) CDのアセチル化条件は、耐圧バイアルに各CD100m
g、酢酸1.7ml、水300μlを入れて混合し、80℃で24hr攪
拌反応した。本条件で、CDの殆ど全量が部分アセチル
化される。
【0030】生成物はTLC分析を行った。メルク社
製、キーゼルグール5715を用い、展開溶媒:ブタノール
/エタノール/水=4/3/3、展開は室温1回、p-ア
ニスアルデヒドー硫酸試薬で発色すれば、糖質は藍色、
酢酸はピンク色に染まった。また、アセチル体のRf値は
CDより大きかった。HPLC分析は、LiChrosher NH2
5μm(メルク)、溶媒:55%(W/W)アセトニトリル、流
速0.8ml、室温、RI検出により行うことができ、アセチ
ル化CDの保持時間は元のCDより短かった。
【0031】調整法(部分シトリル化) クエン酸とCDとの反応は、バイアルに各CD200mg、
クエン酸一水和物1g、水200μlを入れて混合し、80℃、
24hr攪拌した。反応終了後、飽和重曹水で中和し、TL
Cにより分析した。メルク社製、キーゼルグール5715を
用い、展開溶媒:ブタノール/エタノール/水=1/1
/1、ブタノール/エタノール/酢酸/水=2/2/1
/1、展開は室温1回、p-アニスアルデヒドー硫酸試薬
で発色した。糖質は藍色、クエン酸は紺色に染まり、C
Dは殆ど部分置換されたCDとなった。また、部分置換
体のRf値はCDより小さかった。
【0032】抗菌性試験には、供試菌株として、Staphy
lococcus aureus(ブドウ球菌、FDA209P)、Streptococcu
s mutans(虫歯菌、MT-6715)、Streptococcus salivariu
s(虫歯菌、IFO 3350)、Bacillus cereus(食中毒菌、IFO
3466)を用いた。
【0033】試験方法は以下のようにした。各菌株を2
〜3時間、StaphylococcusBacill usは表1に示す生育
用培地で、Streptococcusはブレインハートインフュー
ジョン培地で培養後、培養液をOD650が0.3になるように
おのおのの培地で希釈する。
【0034】
【表1】
【0035】希釈した培養液2mlを、水(0.5ml)に溶解
したサンプルとK−緩衝液(表2)1.5mlと混合後、37
℃で3時間培養する。その後、4℃で1時間放置し、65
0nmで吸光度を測定し、菌の増殖度合を調べた。
【0036】
【表2】
【0037】その結果、部分置換(G1)2-CDACと(G1)
2-CDADの混合物が同様の抗菌性を示し、部分置換α-
CDと部分置換β-CDの抗菌性は微弱であった。
【0038】
【実施例】
実施例1Staphylococcus aureus(ブドウ球菌、FDA 209P)を2〜3
時間表1に示す培地で培養後、培養液をOD650が0.3にな
るように同培地で希釈する。希釈した培養液2mlを、水
(0.5ml)に溶解したサンプルとK−緩衝液1.5mlと混合
後、37℃で3時間培養する。その後、4℃で1時間放置
し、650nmで吸光度を測定し、菌の増殖度合を調べた。
その結果は表3に示すように、AC、ADタイプで顕著
な生育阻害を示した。
【0039】
【表3】
【0040】実施例2 菌株として、Streptococcus mutans(虫歯菌、MT-6715)
を、ブレインハートインフュージョン培地を用いた以外
は実施例1と同様にして、表4のように、同等な生育阻
害傾向を示す結果を得た。
【0041】
【表4】
【0042】実施例3Streptococcus salivarius(虫歯菌、IFO 3350)を用いた
以外は、実施例2と同様にして、表5に示すように、同
様な結果を得た。
【0043】
【表5】
【0044】実施例4Bacillus cereus(食中毒菌、IFO 3466)を用いた以外は
実施例1と同様にして、表6に示すように、同様な結果
を得た。
【0045】
【表6】
【0046】実施例5 各CDをアセチル化、処理した後、Sephadex G-15のカ
ラムでCD部分を分離し、混合物全体をアセチル化CD
として実験に供した。また、クエン酸処理も同様にし、
置換体の混合物をシトリル化CDとして実験に供した。
添加終濃度を0.625%と一定にし、生育阻害を測定した結
果は、表7に示すように、AC、ADタイプに有機酸を
結合しても効果は低下せず、むしろ僅かではあるが高ま
る傾向を示した。一方、ABタイプでは阻害効果は見ら
れなかった。
【0047】
【表7】
【0048】
【発明の効果】本発明は複分岐CDの特定構造の機能を
明らかにし、本構造物が各種細菌に対して特異的に生育
阻害することを利用する抗菌剤を提供する。
【0049】Streptococcus mutansStreptococcus sa
livariusなど虫歯菌の生育を阻害できるので、菓子への
添加により虫歯予防ができる。また、Bacillus cereus
など食中毒菌に対して抗菌性を示すので各種食品の保存
料としても利用でき、しかも、安全で安定であるので食
品素材として最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】三種タイプの複分岐グルコシル−CDの構造を
示す。○はグルコシル残基、−はα-1,4結合、矢印はα
-1,6結合を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 則康 茨城県つくば市松代2丁目8−3 アマノ ハイツつくば102 (72)発明者 大矢 隆一 愛知県西春日井郡西春町野崎乾出15

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複分岐サイクロデキストリンを有効成分と
    して含有してなる抗菌剤。
  2. 【請求項2】請求項1記載の複分岐サイクロデキストリ
    ンがACタイプ及び/又はADタイプである請求項1記
    載の抗菌剤。
  3. 【請求項3】複分岐サイクロデキストリンが二分岐グル
    コシル−サイクロデキストリンである請求項1又は請求
    項2記載の抗菌剤。
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