JPH07189015A - 血液透析用中空糸およびその製造方法 - Google Patents

血液透析用中空糸およびその製造方法

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JPH07189015A
JPH07189015A JP13722294A JP13722294A JPH07189015A JP H07189015 A JPH07189015 A JP H07189015A JP 13722294 A JP13722294 A JP 13722294A JP 13722294 A JP13722294 A JP 13722294A JP H07189015 A JPH07189015 A JP H07189015A
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hollow fiber
hemodialysis
liquid
aliphatic alcohol
carbon atoms
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JP13722294A
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Takeyuki Kawaguchi
武行 川口
Satoshi Omori
智 大森
Takahiro Omichi
高弘 大道
Hiroo Matsuda
裕生 松田
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】繊維形成性ポリマーを有機溶剤に溶解し芯液と
して液状パラフィンを用いて紡糸した中空糸を、オゾン
層破壊につながるフレオンを使用せず、かつ、中空糸膜
の性能を低下させることなく洗浄して残存溶剤量、残存
芯液量の極めて少ない安全性の高い血液透析用中空糸を
提供する。 【構成】上述の如く紡糸した血液透析用中空糸の内面
を、炭素数1〜8の脂肪族アルコールで洗浄する。引続
き、該中空糸に、グリセリン等の保湿剤を含有する沸点
30〜150℃の低級脂肪族アルコール及び/又は保湿
剤含有水溶液を通液した後、乾燥することにより保湿剤
含有乾燥中空糸膜が得られる。モジュールを組立てた後
上記脂肪族アルコールで洗浄し、引続き該モジュール内
に水を充填して湿潤モジュールとしてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は血液透析用中空糸および
その製造方法に関するものである。さらに、詳しくは、
血液透析用中空糸を製造する際にポリマーの溶解に用い
る有機溶剤および芯液として用いる液状パラフィンを該
中空糸より洗浄除去した、安全性が高くかつ膜性能の良
好な血液透析用中空糸および該中空糸を環境上問題とな
るフレオンを用いることなく製造する方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】血液透析膜は腎臓機能の悪化した患者の
腎機能を代行するものとして、初期は尿素やクレアチニ
ンなどの低分子を除くために用いられていたが、近年で
はβ2ミクログロブリンなどの中分子量のタンパク質も
効率的に除去できるいわゆる中空糸タイプの高性能透析
膜が開発され、ますますその重要性が増している。
【0003】中空糸タイプの高性能透析膜は、その製造
方法、すなわち繊維形成性ポリマーを開孔剤とともに有
機溶剤(紡糸用溶剤)に溶解した紡糸原液(ドープ)を
紡糸する方法に基いて、乾式法および半乾半湿式法(乾
湿式法)に分類され、特に半乾半湿式法によるものが良
好な性能を示すために、好適に使用されている。
【0004】かかる半乾半湿式法による血液透析用中空
糸の製造に際して使用する芯液としては、液状(流動)
パラフィンやイソプロピルミリステートなどの親油性
(非水溶性)液体や凝固浴と同じ組成の有機溶剤の水溶
液や水が広く用いられている。これらの芯液の中でも、
紡糸過程での中空糸の形状維持や中空糸内面の平滑性お
よび中空糸強度などの点から、凝固浴水溶液に非溶解性
の親油性液体、特に液状パラフィン、が好適に用いられ
る。
【0005】これらの液状パラフィンなどの親油性(非
水溶性)芯液は、中空糸の内面からフレオンを通液する
ことにより洗浄可能である。しかしながら、フレオン
は、通常保湿剤として用いられるグリセリンを溶解しな
いので、中空糸製造工程で保湿剤としてグリセリンを付
着させた中空糸では表面洗浄しか実現できず、芯液とし
て用いた液状パラフィンの残存量が洗浄後も5000p
pm程度と大きいことから、透析器内での溶血、カテー
テルの汚染、体内蓄積による血液成分との相互作用など
の問題点がある。
【0006】さらに、同様の理由で、フレオン洗浄では
中空糸内に残存する紡糸用溶剤の除去も困難である。特
にN,N―ジメチルフォルムアミドやN―メチル―2―
ピロリドンやN,N―ジメチルアセトアミドのようにL
D 50 が低い有機溶剤を紡糸用溶剤に用いた場合、急性
毒性や細胞毒性などの安全上の問題があり、可能な限り
これら有機溶剤の除去が望まれる。しかし、これらの紡
糸用溶剤を残存量200ppm未満まで除去するのは容
易でなく、紡糸工程で水洗を強化して紡糸用溶剤を除去
する必要があり、水洗工程にかかる負荷が大きくなると
いう問題点がある。 さらに、フレオンはオゾン層破壊
や低沸点で回収が困難という問題点を抱えており、地球
環境上の問題が指摘されている。
【0007】一方、芯液として高級脂肪酸エステルを用
いる場合は、芯液の洗浄は比較的容易であるが、この場
合は芯液として液状パラフィンを用いる場合に比べて中
空糸内表面が乱れやすく、しかも洗浄により芯液のみで
なく中空糸の保湿のために中空糸に含浸されたグリセリ
ンをも溶出するために、膜性能が低下するという問題点
がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の一つの目的
は、上述のような問題を有さず、膜性能も良好な安全性
の高い血液透析用中空糸を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、オゾン層破壊を招く
フレオンを用いることなく、液状パラフィンを芯液とし
て紡糸した中空糸を、効率的にかつ膜性能を低下させる
ことなく、効率的に洗浄して、良好な血液透析用中空糸
を製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の目
的を達成すべく、鋭意研究の結果、芯液として用いた液
状パラフィンは特定の脂肪族アルコールによって効率的
に洗浄除去され、しかもこの洗浄によって中空糸中に残
存する有機溶媒の量も大幅に低減することを見い出し、
本発明を完成するに到った。
【0011】かくして、本発明によれば、中空糸中に不
純物として残留している芯液(液状パラフィン)および
紡糸原液調製用有機溶剤が、該中空糸を形成するポリマ
ー重量に対してそれぞれ2000ppm以下および20
0ppm以下と、極めて少ない範囲まで洗浄・除去され
た、安全性の高い血液透析用中空糸が提供される。
【0012】また、本発明によれば、有機溶剤を用いて
紡糸原液を調製し液状パラフィンを芯液として紡糸した
中空糸の内面を、炭素数1〜8(好ましくは炭素数3〜
8)の脂肪族アルコール(A)から主としてなる洗浄液
で洗浄する方法、さらには、上述の如く洗浄した後、保
湿剤(B)を含有する沸点30〜150℃の液状媒体
(C)を通液し、該保湿剤(B)を中空糸に含浸させる
ことを特徴とする血液透析用中空糸の製造方法が提供さ
れる。
【0013】そして、本発明の一実施態様として、同様
に紡糸した中空糸の内面を、炭素数3〜8の脂肪族アル
コール(a)から主としてなる洗浄液で洗浄した後、該
中空糸膜内面に残存付着した該脂肪族アルコールを
(a)、保湿剤(B)としてのグリセリン(b)を含有
する炭素数2〜4の脂肪族アルコール(c)の溶液を通
液して洗浄するとともに該中空糸にグリセリン(b)を
付与することを特徴とする血液透析用中空糸の製造方法
が提供される。
【0014】以下、本発明についてさらに詳細に説明す
る。
【0015】本発明の血液透析用中空糸を形成する繊維
形成性ポリマー(素材)としては、液状パラフィンを芯
液として用いて中空糸に紡糸できるものであれば特に制
限はないが、好適な具体例としては、セルロースエステ
ル類、再生セルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニ
トリル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられ
る。なかでも、セルロースエステル類、とりわけセルロ
ースアセテート(セルロースジアセテート、セルロース
トリアセテートなど)が好ましい。
【0016】これらのポリマーは、該ポリマーを溶解し
得る有機溶剤および適当な開孔剤とともに均一溶解して
紡糸原液(ドープ)とした後、二重管ノズルを用い、そ
の中心部には液状パラフィンを芯液として供給するとと
もにそれを取囲む環状オリフィス部に紡糸原液を供給し
て、半乾半湿式紡糸を行う方法などにより安定に中空糸
を紡糸することが可能である。
【0017】本発明において好適に用いられる紡糸原液
調製用の有機溶剤(紡糸用溶剤)としては、上記ポリマ
ーの良溶媒であればよく、かかる有機溶剤の具体例とし
ては、N,N―ジメチルフォルムアミド(DMF)、
N,N―ジメチルアセトアミド(DMAC)、N―メチ
ル―2―ピロリドン(NMP)など、後述の脂肪族アル
コール(A)に可溶な溶剤が挙げられる。
【0018】一方、芯液として用いる液状パラフィンと
しては、紡糸過程での曵糸性が良ければ特に制限はない
が、好適な具体例としては、後述の脂肪族アルコール
(A)に少なくとも0.3%重量以上(好ましくは3重
量%以上)可溶性である流動パラフィンおよび直鎖脂肪
族液状パラフィンが挙げられる。このような液状パラフ
ィンの市販品としては、例えば「SCP−0010M」
「スモイルP−60」「スモイルP−120」「スモイ
ルP−200」、流動パラフィン1級などがある。
【0019】好適な液状パラフィンは、例えば炭素数1
0〜30(好ましくは炭素数10〜16)の実質上直鎖
状の脂肪族液状パラフィンである。これらは単独成分で
も混合物でも構わない。炭素数が16より大のものは常
温で固体のものが多いが、この場合は融点以上に加熱し
て使用する。
【0020】かくして紡糸して得られた中空糸は、必要
に応じて水洗、乾燥後、グリセリンを付着して巻取られ
るが、その中空部(芯部)に液状パラフィンを含有して
おり、したがって、実用に際しては該中空糸から液状パ
ラフィンを除去しておかなければならない。このため、
自然落下、圧空吹込みや遠心分離等の物理的手段で液状
パラフィンの大部分を除去した後、中空糸に残存する液
状パラフィンを洗浄する必要がある。
【0021】本発明の方法によれば、該液状パラフィン
の洗浄除去に際し、まず、炭素数1〜8、好ましくは炭
素数3〜8、さらに好ましくは炭素数3〜5の脂肪族ア
ルコール(A)による洗浄が行われる。ここで使用され
る脂肪族アルコール(A)の具体例としては、メタノー
ル、エタノール、n―プロパノール、イソプロパノール
(2―プロパノール)、第3級ブタノール(ter−ブ
タノール)などの水溶性アルコールや、n―ブタノー
ル、イソブタノール(2−メチルプロパノール)、2―
ブタノール(sec−ブタノール)、n―ペンタノー
ル、2―ペンタノール、3―ペンタノール、3―メチル
―2―ブタノール、3―メチル―1―ブタノール、イソ
ペンチルアルコール、第3級アミルアルコール、n―ヘ
キサノール、2―ヘキサノール、3―ヘキサノール、第
2級ヘキシルアルコール、n―オクタノール、2―オク
タノール(カプリルアルコール)、3―オクタノール、
4―オクタノールなどの難水溶性または非水溶性アルコ
ールが挙げられる。これらは単独でも2種以上の組み合
わせでも使用可能である。また、これらの脂肪族アルコ
ール(A)は混和性のある他の溶剤や水と混合して用い
ても構わないが、その混合割合は50重量%以下、好ま
しくは40重量%以下、さらに好ましくは20重量%以
下、とする。これらの脂肪族アルコール(A)は、中空
糸を侵さず、環境破壊性がなく、沸点も約50〜150
℃と扱いやすい範囲にあり、回収も容易である。
【0022】また、これらの脂肪族アルコール(A)の
うち、n−ブタノール、イソブタノールおよび炭素数5
〜8の脂肪族アルコールは、非水溶性であり、その中に
は中空糸に含浸された保湿剤(グリセリン)を溶出しな
いアルコールも存在するが、この場合は洗浄後の保湿剤
処理は不要である。
【0023】なお、芯液として用いる液状パラフィンは
その種類によって脂肪族アルコール(A)への溶解性が
異なるので、液状パラフィンの種類に応じて、溶解度が
0.3重量%以上、好ましくは3重量%以上、の脂肪族
アルコールを選定するのが適当である。
【0024】例えば、本発明者らが検討した多くの液状
パラフィンのうち代表的なものについて低級脂肪族アル
コールへの溶解度を次の表1に示す。表1から明らかな
ように、エタノールおよびメタノールは、芯液として特
定の液状パラフィンを使用した場合に有効であり、本発
明方法により洗浄を行うに当っては、芯液の種類に応じ
て脂肪族アルコールの種類を選定する必要がある。
【0025】
【表1】
【0026】なお、表1中の「SCP―0010M」
(日本精蝋(株)製)はC12パラフィンと称されるも
のであり、「スモイル」(松村石油研究所(株)製)は
流動パラフィンに属するもの、「流動パラフィン1級」
(関東化学(株)製)は通常の流動パラフィンである。
【0027】なお、イソプロパノールなどの低級アルコ
ールで直接洗浄可能な中空糸用芯液として、イソプロピ
ルミリステートなどの高級脂肪酸エステルが知られてい
るが、すでに述べたように、これらを用いた場合は得ら
れる透析膜の性能が液状パラフィンを芯液に用いて得た
膜の性能に比べて低くなるので、好ましくない。
【0028】本発明方法では、紡糸後に中空糸内部の液
状パラフィンを自然落下その他の物理的手段で一応除去
した後、該中空糸内部に含まれる残余の液状パラフィン
を上記の脂肪族アルコール(A)を主体とする洗浄液で
効率的に洗浄するが、その具体的な方法は特に限定され
ない。例えば、中空糸を該脂肪族アルコール中に浸漬す
る方法、中空糸内面に該脂肪族アルコールを導入した後
自然落下させる方法、中空糸内面に該脂肪族アルコール
を流す方法、中空系外面側から該脂肪族アルコールを中
空部に圧入しながら洗浄する方法などが採用できる。こ
れらの洗浄方法を採用するに当たって好適な条件は中空
糸内面に付着している液状パラフィンの種類や量に応じ
て実験によって決めることができる。
【0029】この際、炭素数1〜5(好ましくは炭素数
3〜5)の低級脂肪族アルコール、例えばイソプロパノ
ール、により芯液及び紡糸原液調製用有機溶媒の洗浄を
行うと、中空糸に含浸された保湿剤(グリセリン等)が
該低級脂肪族アルコールにより溶出するので、中空糸の
膜を通しての洗浄が可能となり、中空糸に含浸していた
紡糸用有機溶剤や芯液などの不純物が徹底的に除去さ
れ、極めて安全性の高い中空糸を得ることができる。
【0030】脂肪族アルコール(A)による洗浄のみで
紡糸用溶剤や芯液が完全に除去し得ない場合は、他の洗
浄方法(例えば、水による洗浄)と併用しても差しつか
えないが、本発明方法では多くの場合その必要はない。
【0031】上記の低級脂肪族アルコール(A)のうち
炭素数1〜5(特に炭素数3〜5)の低級脂肪族アルコ
ールによる洗浄により、中空糸中の芯液および有機溶剤
がほぼ完全に除去されるが、中空糸中に含浸されている
グリセリン等の保湿剤も同時にほぼ完全に溶出してしま
うので、該中空糸を乾燥モジュールに成型する場合に
は、該中空糸の性能保持のため保湿剤を補う必要があ
る。
【0032】この場合、本発明方法では、上述のような
脂肪族アルコールでの洗浄によって中空糸に含まれる芯
液用液状パラフィンおよび紡糸用有機溶剤を洗浄除去し
た後、該中空糸に保湿剤(B)を含有する液状媒体
(C)の液を通液し、該中空糸に保湿剤(B)を含浸さ
せる。
【0033】この保湿剤処理において用いられる保湿剤
用の液状媒体(溶剤)(C)としては、保湿剤(B)を
溶解し、中空糸を溶解しないものであれば使用可能であ
るが、処理後の乾燥によって容易に除去できるものが特
に好ましい。本発明方法において好適に用いられる保湿
剤用の液状媒体(溶剤)(C)としては、沸点30〜1
50℃、好ましくは沸点50〜150℃の液体、例えば
イソプロパノール、エタノールなどの炭素数1〜5の脂
肪族アルコール、その水溶液、水などがあげられる。一
方、保湿剤(B)としてはグリセリンが好ましい。グリ
セリン含有中空糸を製造する場合には、液状媒体(C)
としてグリセリン可溶性であってかつ処理後の乾燥によ
って容易に揮発する低沸点のものが望ましいため、この
場合の脂肪族アルコールとしては炭素数1〜4のものが
好ましい。
【0034】保湿剤含有溶液における保湿剤(B)の濃
度は、例えば保湿剤(B)としてグリセリンを用いる場
合、10〜80(重量)%、好ましくは20〜70(重
量)%、さらに好ましくは40〜70(重量)%が採用
される。保湿剤含有溶液による処理は、適宜の方法で中
空糸に該液を通液することにより行われる。かくして保
湿剤処理された中空糸は、保湿剤含有溶液中の液状媒体
(溶剤)(C)を除去するために、脱液・乾燥処理され
たのち、実用に供される。
【0035】なお、本発明方法では、最初の洗浄で使用
する脂肪族アルコール(A)と保湿剤処理の液状媒体
(C)として使用する脂肪族アルコールとして、同種の
もの、例えばともにイソプロパノールを用いても良好な
結果が得られ、工業的には、このように同種の脂肪族ア
ルコールの使用がコスト面、回収面から好ましい。
【0036】本発明方法では、このような2段処理を行
うことによって、良好な品質をもつ乾燥状態の血液透析
用中空糸が得られる。すなわち、従来のフレオンを用い
る洗浄では、その効果が不十分であり、また、低級アル
コールで洗浄する方法では、保湿剤が溶出し、乾燥によ
って膜性能が低下する問題があった。しかし、本発明方
法では最初に保湿剤を含まない脂肪族アルコール(A)
で洗浄するが、乾燥させずに連続して、保湿剤(B)を
含有する液状媒体(C)による処理を実施し、中空糸に
保湿剤(グリセリン等)を付与させたのち乾燥すること
により、洗浄乾燥による性能低下の問題は解決される。
【0037】上述の洗浄・処理の各工程は、中空糸をモ
ジュールに組込んだ後に実施するのが好適であるが、工
程の一部又は全部を糸条の状態で行ってもよい。
【0038】また、本発明方法によれば、中空糸の芯液
を炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール、なかでも水溶
性の脂肪族アルコールで洗浄する場合は、まず未洗浄中
空糸をモジュールに組込んだのち、該脂肪族アルコール
でモジュール内の中空糸を洗浄後、水洗を行い、該モジ
ュール内に清浄な水を充填して水充填モジュール(湿潤
モジュール)として使用に供することもできる。この場
合は、当然、保温剤(B)による処理は不要となり、ま
た、病院等において使用前に行う血液透析用モジュール
の湿潤処理も不要となる。
【0039】かくして、得られた血液透析用中空糸は、
その中に残存する有機溶剤の量が200ppm以下(特
に好ましい条件では20ppm以下)に低下しており、
しかも残留する液状パラフィンの量が2000ppm以
下と極めて少なく、安全性にすぐれている。
【0040】
【発明の効果】以上の如く、本発明によれば、ポリマー
の紡糸用溶剤として有機溶剤を用い芯液として液状パラ
フィンを用いて紡糸した中空糸の洗浄を、フレオンの如
き環境破壊につながる物質を用いることなく、効率的に
実施することができ、しかも洗浄による中空糸膜の性能
低下も生じないので、安全性が高く、性能の良好な血液
透析用中空糸が提供される。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例によりさ
らに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれら
によって限定を受けるものではない。なお、例中の透水
性は中空糸膜を内外圧差300mmHgにて20mlの
純水が通過する時間を35℃で測定し、水の量(ml/
2 /hr/mmHg)で表示したものである。また、
中空糸に残留する流動パラフィン、NMPの量は、それ
ぞれ中空糸の乾燥重量当りのppmで表わす。
【0042】[参考例1] (セルローストリアセテート中空糸膜モジュールの作
成)セルローストリアセテート20重量部、トリエチレ
ングリコール24重量部およびN―メチル―2―ピロリ
ドン(以下NMPと略称)56重量部を、二軸押し出し
機中で150℃にて攪拌混合後、脱泡しながら均一溶液
となした。該溶液(紡糸原液)をフィルターで濾過した
後、芯液として炭素数10〜20の流動パラフィンを用
い、両液を二重管ノズルから吐出し、エアギャップを通
過させた後、吐出糸条をNMP水溶液中にて凝固させ中
空糸を得た。さらに、この中空糸を温水浴中で該中空糸
中に残存する溶剤を水洗除去後、グリセリ水溶液を用い
て中空糸にグリセリンを付着させ、乾燥した。かくして
得られた内径200μm、膜厚15μmの中空糸480
本を束ねた後、ポリカーボネート樹脂製の円筒ケースに
収納し、末端部をウレタン樹脂で封止し、50℃にて3
時間熱処理することにより、中空糸膜モジュールを作成
した。
【0043】[実施例1]参考例1で得た中空糸膜モジ
ュールの片側端面から微量定量ポンプを用いてn―ペン
タノールを20ml/minの流量で2分間通液した。
しかるのち、グリセリンを40重量%溶解したイソプロ
パノールをさらに5分間通液して、中空糸内面にグリセ
リンを付与した。そして中空糸に残存するグリセリンの
イソプロパノール溶液を圧空で除去した。かくして得ら
れた中空糸膜モジュールを、50℃にて3時間熱処理し
たのち、該中空糸の透水性を評価したところ、215m
l/m2 /h/mmHgと高い値を示した。また、中空
糸膜に残存するNMPおよび流動パラフィンの量はきわ
めて微量であった。
【0044】[比較例1]参考例1で得た中空糸膜モジ
ュールの内面を洗浄しないで、透水性の評価を行ったと
ころ、120ml/m2 /h/mmHgと実施例1に比
べて非常に低い値を示した。
【0045】また、参考例1で得たモジュールの片側端
面から、グリセリンを40重量%溶解したイソプロパノ
ールを5分間通液したのち、中空糸内面に付着残存した
グリセリンのイソプロパノール溶液を圧空で除去した。
かくして得られた中空糸モジュールを、50℃にて3時
間熱処理したのち、中空糸の透水性を評価したところ、
150ml/m2 /h/mmHgと、実施例1に比べて
低い値を示した。
【0046】これらの例から、非洗浄モジュール、保温
剤含有液処理だけのモジュールはいずれも透水性が悪い
ことがわかる。
【0047】[実施例2〜9]実施例1において、脂肪
族アルコール(A)としてn―ペンタノールを用いる代
わりに表2記載の各種脂肪族アルコールを用いるほかは
実施例1と同様にして中空糸の内面の洗浄と保湿剤処理
を行ったのち、透水性の評価および残存流動パラフィ
ン、NMPの分析を行った。その結果を表2に示す。表
2から明らかなように、各中空糸は比較例1の2サンプ
ルに比べて高い透水性を示した。
【0048】
【表2】
【0049】[実施例10]参考例1で得たモジュール
の片側端面から微量定量ポンプを用いてイソプロパノー
ル500ml/minの流量で1分間通液した。しかる
のち、グリセリンを40重量%溶解したイソプロパノー
ルをさらに30分間通液してグリセリン付与を行い、中
空糸内面に付着残存したイソプロパノール溶液を圧空で
除去した。かくして得られた中空糸モジュールを、30
℃にて5時間熱処理したのち、中空糸の透水性を評価し
たところ、200ml/m2 /h/mmHgと高い値を
示した。また、該中空糸の残存流動パラフィン量、NM
P量を分析したところ、それぞれ1800ppm、1
9.5ppmと非常に低い値を示した。
【0050】[比較例2]参考例1で得たモジュールの
片側端面から、フレオンの1種である1,1,2―トリ
フロロ―1,2,2―トリクロロエタンを5分間通液す
ることにより、中空糸内部の流動パラフィンを除去し
た。しかる後、該モジュールを50℃にて15時間熱処
理したのち、その透水性を評価したところ、160ml
/m2 /h/mmHgと実施例10に比べて低い値を示
した。また、残存流動パラフィン量は2600ppmで
あった。これらのモジュール6本を用いて、溶血試験を
行ったところ、6本とも溶血現象が見られ、安全性試験
は不合格であった。
【0051】[実施例11〜14]実施例10におい
て、イソプロパノールを用いる代わりに表3記載の各種
脂肪族アルコールを用いて中空糸内面の洗浄を行ったの
ち、同様に保湿剤処理を行った中空糸モジュールについ
て、透水性、残存芯剤量および残存溶媒量の評価を行っ
た。その結果を表3に示す。表3から明らかなように、
各中空糸とも比較例2に比べて高い透水性、低い残存溶
剤量と低い残存芯液量を示した。
【0052】
【表3】
【0053】[実施例15]参考例1で得た中空糸膜モ
ジュールにおいて、モジュール内の中空糸膜内面にイソ
プロパノールを1000ml/分の流量で約20分間流
して、該中空糸膜に残存する流動パラフィンおよびNM
Pを除去した。次いで圧空によりイソプロパノールの大
部分を除いた後、逆透浸膜を通した清浄水により水洗を
行い、次いで該モジュールに同様の清浄水を充填して、
水充填モジュールとした。該モジュールにおける中空糸
に残存するイソプロパノールは50ppm、液状パラフ
ィンは300ppm、NMPは40ppmであった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松田 裕生 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株式 会社岩国研究センター内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維形成性ポリマーを有機溶剤に溶解し
    た紡糸原液を用い中空糸形成用の芯液として液状パラフ
    ィンを用いて紡糸した血液透析用中空糸であって、該中
    空糸に残存する液状パラフィンの量が該中空糸を形成す
    るポリマー重量に対して2000ppm以下であり、か
    つ紡糸原液調製用溶剤の量が該ポリマー重量に対して2
    00ppm以下であることを特徴とする血液透析用中空
    糸。
  2. 【請求項2】 血液透析用中空糸を形成するポリマーが
    セルロースアセテートであることを特徴とする請求項1
    記載の血液透析用中空糸。
  3. 【請求項3】 繊維形成性ポリマーを有機溶剤に溶解し
    た紡糸原液を用い液状パラフィンを中空糸の芯液として
    用いて紡糸した血液透析用中空糸の内面を、炭素数1〜
    8の脂肪族アルコール(A)から主としてなる洗浄液で
    洗浄することを特徴とする血液透析用中空糸の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 繊維形成性ポリマーを有機溶剤に溶解し
    た紡糸原液を用い液状パラフィンを中空糸の芯液として
    用いて紡糸した血液透析用中空糸の内面を、炭素数1〜
    8の脂肪族アルコール(A)から主としてなる洗浄液で
    洗浄し、次いで、保湿剤(B)を含有する沸点30〜1
    50℃の液状媒体(C)を通液して該保湿剤(B)を中
    空糸に含浸させることを特徴とする血液透析用中空糸の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 液状パラフィンとして、炭素数1〜8の
    脂肪族アルコールに少くとも0.3重量%以上可溶性の
    液状パラフィンを用いることを特徴とする請求項3また
    は請求項4記載の血液透析用中空糸の製造方法。
  6. 【請求項6】 液状媒体(C)として、水または/およ
    び50〜150℃の沸点を有する炭素数1〜5の脂肪族
    アルコールから選ばれた少くとも一種を用いることを特
    徴とする請求項3、請求項4または請求項5記載の血液
    透析用中空糸の製造方法。
  7. 【請求項7】 保湿剤(B)として、グリセリンを用い
    ることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記
    載の血液透析用中空糸の製造方法。
  8. 【請求項8】 繊維形成性ポリマーが、セルロースアセ
    テートであることを特徴とする請求項3〜請求項7のい
    ずれかに記載の血液透析用中空糸の製造方法。
  9. 【請求項9】 脂肪族アルコール(A)として、n−プ
    ロパノール、イソプロパノール、ter−ブタノールか
    ら選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールを用いる
    ことを特徴とする請求項3〜請求項8のいずれかに記載
    の血液透析用中空糸の製造方法。
  10. 【請求項10】 血液透析用中空糸の内面を、炭素数3
    〜8の脂肪族アルコール(a)から主としてなる洗浄液
    で洗浄し、次いで、該中空糸にグリセリン(b)を含有
    する炭素数2〜4の脂肪族アルコール(c)の溶液を通
    液して該中空糸にグリセリンを付与することを特徴とす
    る血液透析用中空糸の製造方法。
  11. 【請求項11】 液状パラフィンが炭素数10〜30の
    直鎖脂肪族炭化水素であり、脂肪族アルコール(a)お
    よび脂肪族アルコール(c)がともにイソプロパノール
    であることを特徴とする請求項10記載の血液透析用中
    空糸の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5968358A (en) * 1996-12-10 1999-10-19 Nissho Corporation Method for washing hollow fiber membrane
JP2002177748A (ja) * 2000-12-08 2002-06-25 Nok Corp 多孔質有機中空糸膜の処理方法
JP2011056458A (ja) * 2009-09-14 2011-03-24 Toyobo Co Ltd 中空糸膜の製造方法

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