JPH07185903A - 刃物回動型切削装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スローアウェイチップの回動が常に安定した
ものとなるようにして切刃の不均一な摩耗を防ぎ、工具
寿命の向上をはかる。 【構成】 回動しながら切削加工を行う丸形スローアウ
ェイチップ２をそなえた刃物回動型切削装置１におい
て、スローアウェイチップ２の上端面，下端面，外周面
側に、スローアウェイチップを保持する液圧を与える液
圧付与機構として、それぞれ、上端面側液溜まり４ａ，
下端面側液溜まり４ｂ，外周面側液溜まり４ｐを設ける
と共に、各々の液圧を独立して制御する液圧制御弁６
（６ａ，６ｂ，６ｐ）を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、回動しながら切削加工
を行う丸形スローアウェイチップをそなえた刃物回動型
切削装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の丸形スローアウェイチップをそな
えた刃物回動型切削装置としては、例えば、図１４に示
すようなものがある。この刃物回動型切削装置５１は、
工具ホルダー５２と、この工具ホルダー５２に下端側を
固定した中心軸５３を中心穴５４ａに貫通させてこの中
心軸５３のまわりを自由に回動する丸形スローアウェイ
チップ５４と、このスローアウェイチップ５４を上下方
向において安定させるとともにチップブレーカとしても
作用するスペーサ５５と、前記中心軸５３の上端側を固
定すると共にスペーサ５５を支持するための押さえ板５
６およびボルト５７をそなえたものである。

【０００３】また、図１５は、従来の丸形スローアウェ
イチップをそなえた刃物回動型切削工具の他の例を示す
ものであって、この刃物回動型切削装置６１は、工具ホ
ルダー６２と、中心穴６４ａをテーパとした丸形スロー
アウェイチップ６４と、このテーパとした中心穴６４ａ
を利用してスローアウェイチップ６４を工具ホルダー６
２に支持するためのクランプスクリュー６５と、ワッシ
ャ６６と、スローアウェイチップ６４のクランプ力を調
整するためのセットスクリュー６７をそなえたものであ
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の刃物回動型切削装置５１，６１にあっては、
丸形スローアウェイチップ５４，６４に中心穴５４ａ，
６４ａを設け、中心穴５４ａ，６４ａに挿入した中心軸
５３やクランプスクリュー６５などの支持部材を基準と
してスローアウェイチップ５４，６４を回動させる構造
となっていたため、スローアウェイチップ５４，６４と
支持部材（５３，６５）との間での摩擦によって回動が
不安定なものとなることがあり、スローアウェイチップ
５４，６４の切刃に不均一な摩耗が発生することがある
という問題点があった。したがって、このような問題点
を解決することが課題であった。

【０００５】

【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、スローアウェイチップの
回動が常時良好であって、スローアウェイチップの回動
が常に安定したものとなり、スローアウェイチップの切
刃に不均一な摩耗を発生することがないようにした刃物
回動型切削装置を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係わる刃物回動
型切削装置は、回動しながら切削加工を行う丸形スロー
アウェイチップをそなえた刃物回動型切削装置におい
て、スローアウェイチップの端面（両端面）および円周
面（外周面，中心軸をもつ場合は内周面を含む。）のう
ち少なくとも一方側に、前記スローアウェイチップを保
持する液圧を与える液圧付与機構をそなえた構成とした
ことを特徴としている。

【０００７】本発明に係わる刃物回動型切削装置の実施
態様においては、スローアウェイチップの端面および円
周面のうち少なくとも一方側に、前記スローアウェイチ
ップを保持する液圧を与える液溜まりをそなえた構成と
することができ、液圧付与機構は、スローアウェイチッ
プの端面および円周面を液圧により保持する独立した液
圧付与流路と、液圧を制御する独立した液圧制御弁をそ
なえた構成とすることができ、同じく実施態様におい
て、液圧付与機構は、被削材に接触して回転する回転体
と、前記回転体の回転動力によって液を圧送する液圧発
生機構をそなえた構成とすることができ、同じく実施態
様において、スローアウェイチップを液圧で保持する液
圧付与流路を有する工具保持カートリッジを工具ホルダ
ーに着脱可能にそなえた構成とすることができ、同じく
実施態様において、切削加工工程で切削状態にある場合
は、スローアウェイチップの端面および円周面のうち少
なくとも一方側に液を流すことで前記スローアウェイチ
ップを液圧により保持し、切削加工前後の非切削状態に
ある場合は、スローアウェイチップのどちらか一方の端
面に液圧を付与することで前記スローアウェイチップを
工具ホルダー（または工具保持カートリッジ）に当接さ
せる液圧付与機構をそなえた構成とすることができる。

【０００８】

【発明の作用】本発明に係わる刃物回動型切削装置は、
上記した構成としており、丸形スローアウェイチップは
液圧により保持されることとなるので、従来の丸形スロ
ーアウェイチップの中心穴に支持部材を挿入してこの支
持部材を中心にして回動させる場合のようにスローアウ
ェイチップの中心穴と支持部材との間での摩擦にもとづ
く問題点が解消されることとなり、スローアウェイチッ
プの回動が常時良好なものとなって、スローアウェイチ
ップの回動が常に安定したものとなり、スローアウェイ
チップの切刃に不均一な摩耗が生じなくなって、切削性
のより一層の向上ならびにスローアウェイチップのより
一層の寿命延長がもたらされることとなる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。

【００１０】図１は、本発明に係わる刃物回動型切削装
置の一実施例を示すものであって、この刃物回動型切削
装置１は、丸形スローアウェイチップ２の保持部３ａを
形成した工具ホルダー３をそなえていると共に、この工
具ホルダー３には、丸形スローアウェイチップ２の下端
面および外周面をそれぞれ液圧で保持するための液溜ま
り（油溜まり）４ｂ，４ｂ，４ｐおよび前記液溜まり４
ｂ，４ｂ，４ｐに液（水や油）を導いて液圧を生じさせ
るための液圧付与流路５を形成しており、さらには、前
記液溜まり４ｂ，４ｂ，４ｐにおける液圧を調整するた
めの液圧制御弁６および液圧制御装置７ならびに液圧を
発生するためのポンプ８およびタンク９ならびにこれを
接続する配管１０などよりなる液圧付与機構をそなえた
ものである。

【００１１】そこで、このような刃物回動型切削装置１
を用いて、図２に示すような負または図３に示すような
正の横すくい角をもって被削材１１を切削する場合に
は、スローアウェイチップ２が被削材１１を切削する際
の切削抵抗によって、スローアウェイチップ２が回動す
る。このとき、液圧付与機構を作動させ、タンク９内の
液をポンプ８により配管１０内に送り出し、制御弁６を
通って液圧付与流路５および液溜まり４ｂ，４ｂ，４ｐ
へと流し、液溜まり４ｂ，４ｂ，４ｐに付与した液圧に
よってスローアウェイチップ２を保持することで、スロ
ーアウェイチップ２と工具ホルダー３との間での摺動面
における摩擦係数を小さなものとすることができ、回動
を不安定にする摩擦力を小さなものにすることができ、
スローアウェイチップ２は常時円滑に回動することとな
る。このような液圧によるスローアウェイチップ２の支
持構造とすることで、スローアウェイチップ２の回動が
安定するため、外周切刃の全周を均一に使用することが
可能となり、工具寿命を更に伸ばすことができる。

【００１２】ところで、スローアウェイチップ２の回動
を不安定にする力は、大きく分けて、スローアウェイチ
ップ２の端面に働く摩擦力と、スローアウェイチップ２
の外周面に働く摩擦力である。

【００１３】そこで、図４に示す本発明の他の実施例の
ように、上端面側液溜まり４ａ，下端面側液溜まり４ｂ
および外周面側液溜まり４ｐのそれぞれにつながる液圧
付与流路５（５ａ，５ｂ，５ｐ），液圧制御弁６（６
ａ，６ｂ，６ｐ）および配管１０（１０ａ，１０ｂ，１
０ｐ）を各々独立した構成とし、これら各液溜まり４
ａ，４ｂ，４ｐの液圧を独立して液圧制御装置７におい
て制御することによって、端面に働く摩擦力と外周面に
働く摩擦力を効果的に低下させることが可能となり、ス
ローアウェイチップ２の回動をより一層安定させること
が可能となって、工具の寿命をさらに向上させることが
できるようになる。

【００１４】このように、液圧付与流路５（５ａ，５
ｂ，５ｐ）等を独立した構成とした切削装置１におい
て、切削加工工程における液圧の制御方法について述べ
ると、切削状態にある場合は、摩擦力を小さくして回動
安定性を向上させるために、下端面側液溜まり４ｂ，４
ｂと外周面側液溜まり４ｐに液圧を供給し、切削加工前
後の非切削時には、スローアウェイチップ２の脱落防止
のために、上端面側液溜まり４ａ，４ａに液圧を供給す
る。また、スローアウェイチップ２の交換に際して、図
１４に示した従来例の場合には、ボルト５７をゆるめ押
え板５６を取り外して行わざるを得なかったのに対し、
本実施例では、スローアウェイチップ２を差し替えるだ
けで交換が可能である。

【００１５】図５は本発明のさらに他の実施例を示すも
のであって、図５に示すように、工具ホルダー３に、回
転体１３とギヤ式液圧発生機構１４とをベルト１５で結
んだ液圧付与機構を設けたものとし、切削状態におい
て、被削材１１に回転体１３を押し当てることによっ
て、この回転体１３の回転動力をベルト１５を介して液
圧発生機構１４に伝達し、この液圧発生機構１４によっ
てタンク９内にある液を吸入し、液圧を上昇させて液溜
まり４ａ，４ｂ，４ｐに供給する構造とすることも可能
である。このような構造とした場合においても、スロー
アウェイチップ２は液溜まり４ａ，４ｂ，４ｐに供給さ
れた液圧により保持される。

【００１６】このような刃物回動型切削装置１において
は、スローアウェイチップ２の回動等により、工具ホル
ダー３におけるチップ保持部３ａの摺動部に摩耗，破損
が生じて修復が必要となることがある。このような場合
には、図６ないし図８にさらに他の実施例として示すよ
うに、工具ホルダー３の一部を着脱可能な工具保持カー
トリッジ１７の構造とすることで、摩耗，破損部分の修
復が容易にできるだけでなく、耐摩耗性に優れた超硬や
セラミクス等を部分的に使用することができる。そし
て、このような工具保持カートリッジ１７では、上端面
側液溜まり４ａ，下端面側液溜まり４ｂ，外周面側液溜
まり４ｐを設けていると共に、液圧付与流路５ａ，５
ｂ，５ｐとそれぞれ連通する液圧付与流路１７ａ，１７
ｂ，１７ｐを形成したものとしている。

【００１７】また、図７および図８に示すように、同一
の工具ホルダー３で工具保持カートリッジ１７を交換す
ることにより異なる外径のスローアウェイチップ２を使
用するようになすこともできる。

【００１８】図９は、本発明に係わる刃物回動型切削装
置のさらに他の実施例を示すものである。

【００１９】この実施例は、生産の効率化のために、ス
ローアウェイチップ２を支持する液圧の制御と連動した
スローアウェイチップ自動交換装置２１を設定した加工
ラインである。すなわち、スローアウェイチップ２の交
換が必要となったときには、工具ホルダー３のチップ保
持部３ａよりスローアウェイチップ２を取り出し、シュ
ート２２上で待機している更新のスローアウェイチップ
２を回動アーム２３で差し替える。

【００２０】図１０は、本発明のさらに他の実施例を示
すものであって、図６に示した実施例の工具保持カート
リッジ１７に、チップブレーカ２５を設けた形状とした
ものであり、このようなチップブレーカ２５を設けたも
のとすることによって、切削屑の巻き込み等が防止され
ると共に、切削屑の処理が容易なものとなる。

【００２１】図１１は、本発明を中心軸を持った刃物回
動型切削装置に適用した場合を示すものであり、液圧付
与機構として下端面側液溜まり４ｂを設けているだけで
なく、中心軸２６にも内周面側液溜まり４ｃを設けた構
成となっている。

【００２２】図１２は、さらに他の実施例を示すもので
あって、スローアウェイチップ２の切刃部分に形成され
る構成刃先等に対応するための逃げ２７を工具ホルダー
３のチップ保持部３ａに設けた構成としたものである。

【００２３】図１３は、さらの他の実施例を示すもので
あって、上端面側液溜まり４ａ，下端面側液溜まり４
ｂ，内周面側液溜まり４ｃをいずれもスローアウェイチ
ップ２側に設けた場合を示すものである。もちろん、各
液溜まり４ａ，４ｂ，４ｃ，４ｐの一部を工具ホルダー
３や工具保持カートリッジ１７側に設けると共に他部を
スローアウェイチップ２側に設けるなど、適宜の組み合
わせとすることももちろん可能である。

【００２４】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係わ
る刃物回動型切削装置では、回動しながら切削加工を行
う丸形スローアウェイチップの端面（両端面）および円
周面（外周面，中心軸をもつ場合は内周面を含む。）の
うち少なくとも一方側に、前記スローアウェイチップを
保持する液圧を与える液圧付与機構をそなえた構成とし
たため、スローアウェイチップの回動が常に良好なもの
となって、スローアウェイチップの回動の安定性が著し
く向上したものとなり、このようなスローアウェイチッ
プの回動の安定性向上によって、工具寿命を大幅に延長
させることができ、また、中心軸を持たないスローアウ
ェイチップの場合は、端面および外周面の液圧による保
持を独立した液圧回路で制御することにより、スローア
ウェイチップの自動交換ができるという著しく優れた効
果がもたらされる。

【００２５】また、刃物回動型切削装置の不得意とする
加工として、隅Ｒの小さな切削加工をあげることがで
き、従来の場合に、スローアウェイチップの中心穴を必
要とする構造のため、中心穴径の限界により外径をあま
り小さくすることができず、隅Ｒの小さな切削加工を行
うことができなかったのに対して、本発明によれば、ス
ローアウェイチップの中心穴を必要としないものとする
ことも可能であるため、外径の小さなスローアウェイチ
ップを使用することが可能であり、この結果、隅Ｒの小
さな切削加工も行うことが可能になるという顕著な効果
がもたらされる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる刃物回動型切削装置の一実施例
を示す説明図である。

【図２】図１の切削装置によって負の横すくい角をもっ
て被削材を切削加工する様子を示す説明図である。

【図３】図１の切削装置によって正の横すくい角をもっ
て被削材を切削加工する様子を示す説明図である。

【図４】本発明に係わる刃物回動型切削装置の他の実施
例を示す説明図である。

【図５】本発明に係わる刃物回動型切削装置のさらに他
の実施例を示す説明図である。

【図６】本発明に係わる刃物回動型切削装置のさらに他
の実施例を示す説明図である。

【図７】図６の実施例で用いた工具保持カートリッジの
一例を示す上方向から見た説明図（図７の（Ａ））およ
び横方向から見た説明図（図７の（Ｂ））である。

【図８】図６の実施例で用いた工具保持カートリッジの
他の例を示す上方向から見た説明図（図８の（Ａ））お
よび横方向から見た説明図（図８の（Ｂ））である。

【図９】本発明の実施例で用いることのできるスローア
ウェイチップ自動交換装置を示す説明図である。

【図１０】本発明に係わる刃物回動型切削装置のさらに
他の実施例を示す説明図である。

【図１１】本発明に係わる刃物回動型切削装置のさらに
他の実施例を示す説明図である。

【図１２】本発明に係わる刃物回動型切削装置のさらに
他の実施例を示す説明図である。

【図１３】本発明に係わる刃物回動型切削装置のさらに
他の実施例におけるスローアウェイチップを示す平面説
明図（図１３の（Ａ））および断面説明図（図１３の
（Ｂ））である。

【図１４】従来の刃物回動型切削装置の一例を示す説明
図である。

【図１５】従来の刃物回動型切削装置の他の例を示す説
明図である。

【符号の説明】

１ 刃物回動型切削装置 ２ 丸形スローアウェイチップ ３ 工具ホルダー ３ａ 丸形スローアウェイチップ保持部 ４ａ 上端面側液溜まり（液圧付与機構） ４ｂ 下端面側液溜まり（液圧付与機構） ４ｃ 内周面側液溜まり（液圧付与機構） ４ｐ 外周面側液溜まり（液圧付与機構） ５ 液圧付与流路（液圧付与機構） ６ 液圧制御弁（液圧付与機構） ７ 液圧制御装置（液圧付与機構） ８ ポンプ（液圧付与機構） ９ タンク（液圧付与機構） １０ 配管（液圧付与機構） １１ 被削材 １３ 回転体（液圧付与機構） １４ 液圧発生機構（液圧付与機構） １７ 工具保持カートリッジ ２１ スローアウェイチップ自動交換装置 ２５ チップブレーカ ２７ 逃げ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂 田 尚 志 神奈川県横浜市神奈川区宝町２番地 日産 自動車株式会社内

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回動しながら切削加工を行う丸形スロー
   アウェイチップをそなえた刃物回動型切削装置におい
   て、スローアウェイチップの端面および円周面のうち少
   なくとも一方側に、前記スローアウェイチップを保持す
   る液圧を与える液圧付与機構をそなえたことを特徴とす
   る刃物回動型切削装置。
2. 【請求項２】 スローアウェイチップの端面および円周
   面のうち少なくとも一方側に、前記スローアウェイチッ
   プを保持する液圧を与える液溜まりをそなえた請求項１
   に記載の刃物回動型切削装置。
3. 【請求項３】 液圧付与機構は、スローアウェイチップ
   の端面および円周面を液圧により保持する独立した液圧
   付与流路と、液圧を制御する独立した液圧制御弁をそな
   えた請求項１または２に記載の刃物回動型切削装置。
4. 【請求項４】 液圧付与機構は、被削材に接触して回転
   する回転体と、前記回転体の回転動力によって液を圧送
   する液圧発生機構をそなえた請求項１ないし３のいずれ
   かに記載の刃物回動型切削装置。
5. 【請求項５】 スローアウェイチップを液圧で保持する
   液圧付与流路を有する工具保持カートリッジを工具ホル
   ダーに着脱可能にそなえた請求項１ないし４のいずれか
   に記載の刃物回動型切削装置。
6. 【請求項６】 切削加工工程において切削状態にある場
   合は、スローアウェイチップの端面および円周面のうち
   少なくとも一方側に液を流すことで前記スローアウェイ
   チップを液圧により保持し、切削加工前後の非切削状態
   にある場合は、スローアウェイチップのどちらか一方の
   端面に液圧を付与することで前記スローアウェイチップ
   を工具ホルダー側に当接させる液圧付与機構をそなえた
   請求項１ないし５のいずれかに記載の刃物回動型切削装
   置。