JPH07184649A - 新規なプロテアーゼ、該酵素の製造方法、該酵素をコードする遺伝子、該酵素の変異体酵素 - Google Patents

新規なプロテアーゼ、該酵素の製造方法、該酵素をコードする遺伝子、該酵素の変異体酵素

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JPH07184649A
JPH07184649A JP7222394A JP7222394A JPH07184649A JP H07184649 A JPH07184649 A JP H07184649A JP 7222394 A JP7222394 A JP 7222394A JP 7222394 A JP7222394 A JP 7222394A JP H07184649 A JPH07184649 A JP H07184649A
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protease
enzyme
dna
nprl
peptide
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Tadayuki Imanaka
忠行 今中
Shigeru Kawano
茂 川野
Takuya Maeda
拓也 前田
Masahiro Takagi
昌宏 高木
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Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 タンパク質またはペプチドの限定分解などに
有用な新規なプロテアーゼを提供する。 【構成】 ラクトバチルス属に属する微生物が新規なプ
ロテアーゼNprLを生産することを見いだし、該酵素
をコードする遺伝子をクローニングし、その塩基配列を
明らかにした。また、該酵素を精製し、その酵素化学的
性質を明らかにした。更に、プロテアーゼNprLのア
ミノ酸を置換させた変異型プロテアーゼを作成し、新た
な特異性を持ったプロテアーゼを得た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な酵素、該酵素を
用いてタンパク質またはペプチドを選択的に加水分解す
る方法、微生物を用いた該酵素の製造方法、該酵素をコ
ードする遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクター
を含む形質転換体、該酵素の変異体酵素、該変異体酵素
をコードする遺伝子、該変異体酵素を用いてタンパク質
またはペプチドを選択的に加水分解する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より動物、植物、微生物などから数
多くのプロテアーゼが単離され、食品加工、光学分割、
タンパク質やペプチドの低分子化や限定分解、ペプチド
やタンパク質の合成、洗剤など数多くの分野で工業化さ
れ、利用されている。特に、特異性の厳密なプロテアー
ゼは、タンパク質やペプチドの限定分解、遺伝子組換え
技術により生産した融合タンパク質からの目的とするタ
ンパク質、ペプチド部分の切り出し、ペプチドの合成な
どに有用である。
【0003】特異性の厳密なプロテアーゼのうち、カル
ボキシル末端側のペプチド結合を特異的に加水分解する
プロテアーゼとしては、アルギニン、リジンのカルボキ
シル末端側のペプチド結合を特異的に加水分解するトリ
プシン、リジンのカルボキシル末端側のペプチド結合を
特異的に加水分解するリジルエンドペプチダーゼ、酸性
アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)のカルボキ
シル末端側のペプチド結合を特異的に加水分解するV8
プロテアーゼ、プロリンのカルボキシル末端側のペプチ
ド結合を特異的に加水分解するプロリルエンドペプチダ
ーゼ、アスパラギンのカルボキシル末端側のペプチド結
合を特異的に加水分解するアスパラギニルエンドペプチ
ダーゼなどが知られている。
【0004】また、疎水性アミノ酸に特異的なプロテア
ーゼとしては、チロシンやフェニルアラニンなどの芳香
族アミノ酸のカルボキシル末端側のペプチド結合を優先
的に加水分解するキモトリプシン、ロイシン、バリン、
イソロイシンなど疎水性アミノ酸のアミノ末端側のペプ
チド結合を優先的に加水分解するサーモリシンなどが知
られている。
【0005】しかし、ロイシンまたはフェニルアラニン
のアミノ末端側で優先的にペプチド結合を加水分解する
プロテアーゼは知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ロイ
シンまたはフェニルアラニンのアミノ末端側で優先的に
ペプチド結合を加水分解するプロテアーゼNprLを提
供することにある。また、該酵素を用いてタンパク質ま
たはペプチドを選択的に加水分解することにある。 ま
た本発明の目的は、微生物を用いて該酵素を製造するこ
とにある。
【0007】本発明の別の目的は、該酵素をコードする
遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクターを含む形
質転換体を提供することにある。
【0008】本発明の更なる目的は、該酵素の変異体酵
素、該変異体酵素をコードするDNAを提供することに
ある。また、該変異体酵素を用いてタンパク質またはペ
プチドを選択的に加水分解することにある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、前記目的
を達成するため鋭意検討の結果、ペプチド性抗生物質で
あるグラミシジンSを分解し、窒素源として利用できる
微生物が、新規なプロテアーゼを生産することを見いだ
した。そして該プロテアーゼをNprLと命名した。
【0010】即ち、本発明は、次の〜に示す性質を
有するプロテアーゼNprLを提供するものである。
【0011】作用:ペプチドまたはタンパク質に作用
し、ペプチド結合を加水分解する。
【0012】基質特異性:ロイシンまたはフェニルア
ラニンのアミノ末端側で優先的にペプチド結合を加水分
解する 至適pH及びpH安定性:至適pHは7〜9であり、
中性から弱アルカリ性で安定である。
【0013】本発明の酵素は上記の条件を満たすもので
あればいかなる酵素でもよいが、典型的な本願発明の酵
素の上記以外の理化学的性質、及び酵素学的性質は以下
の通りである。
【0014】作用適温の範囲:至適反応温度は、60
℃である。
【0015】阻害剤に対する挙動:PMSF(フェニ
ルメタンスルフォニルフルオリド)では活性が阻害され
ず、金属イオンキレーターであるEDTA(エチレンジ
アミン4酢酸)により活性が阻害される。
【0016】分子量:ドデシル硫酸ナトリウム存在下
におけるポリアクリルアミド電気泳動において分子量は
約37000である。
【0017】なお、プロテアーゼNprLの酵素活性の
測定方法は以下の通りである。
【0018】5mg/mlのアゾカゼイン(シグマ社
製)を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)及
び5mM塩化カルシウムからなる基質液600μLに、
酵素液200μLを混合し、37℃で20分反応させ
た。停止液(15%トリクロロ酢酸)を480μL添加
して反応を停止し、卓上遠心分離機で15000回転/
分で10分間遠心分離し、上清600μLを別のチュー
ブに取った。この上清に、10N水酸化ナトリウム30
μLを添加混合し、440nmの吸光度を測定した。対
照は、酵素液と停止液を添加する順番を逆にした。活性
の単位(1U)は、光路長1cmのキュベットを用いて
上記反応条件下に、吸光度を0.1増加させる酵素活性
とした。
【0019】また、プロテアーゼNprLの精製は、例
えば以下の方法で行うことができる。
【0020】プロテアーゼNprL生産能を有するラク
トバチルス属に属する微生物またはプロテアーゼをコー
ドする遺伝子が導入された微生物を培養し、培養液を遠
心分離して培養上清を得る。培養上清を限外濾過などに
より濃縮し、硫安を85%飽和まで添加する。遠心分離
により沈澱を回収し、適当な緩衝液に溶解し(例えば、
50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)及び5mM塩
化カルシウム)、同緩衝液に対して透析後、DEAE−
セファデックス(Sephadex)−50カラムに添加し、塩
濃度勾配で溶出し、活性画分を得ることにより精製でき
る。
【0021】次に、プロテアーゼNprL生産能を有す
る微生物について記述する。本発明のプロテアーゼNp
rLを生産する微生物は、通常以下の性質を有してい
る。
【0022】(1)形態:短桿菌 (2)胞子形成:形成しない (3)グラム染色:陽性 (4)カタラーゼ:陰性 (5)絶対好気条件:増殖せず (6)通性好気もしくは微好気条件:増殖する (7)グルコースからの酸生成:する (8)グルコースからのガス生成:しない (9)硫化水素の生成:しない (10)増殖温度:25〜45℃ (11)増殖pH:5.0〜9.5 これらの性質を「Anaerobe Laborato
ry Manual(第4版)」に記載の方法により分
類同定した結果、前記性質を有する微生物はラクトバチ
ルス(Lactobacillus )属に属することが明らかになっ
た。本発明にかかるラクトバチルス属に属する微生物
は、プロテアーゼNprLをコードする遺伝子をゲノム
内に含み、プロテアーゼNprL産生能を有する限り特
に限定されない。好ましいラクトバチルス属に属する微
生物としては、例えば、ラクトバチルス・エスピー(La
ctobacillus sp. )No.1が挙げられる。この微生物
は、平成5年3月26日に通産省工業技術院生命工学工
業技術研究所に微生物菌寄第P−13563号(FER
M P−13563)として寄託されている。
【0023】ラクトバチルス属に属する微生物は、本発
明のプロテアーゼNprL以外にも菌体外にプロテアー
ゼを分泌し、プロテアーゼNprLの生産量が低下する
場合がある。この場合には、プロテアーゼNprLをよ
り効率よく生産するために、プロテアーゼNprLをコ
ードする遺伝子をクローニングし、該遺伝子を任意のプ
ロモーターの支配下に大腸菌、枯草菌など適当な宿主微
生物において発現することにより生産することが望まし
い。また、プロテアーゼNprLをコードするDNAを
得ることにより、プロテアーゼを構成するいくつかのア
ミノ酸が欠失、置換、挿入した変異型プロテアーゼを容
易に作成でき、プロテアーゼの特異性、安定性などが変
化したプロテアーゼを容易に製造することが可能とな
る。
【0024】プロテアーゼNprLをコードするDNA
としては、例えば配列番号2に示すアミノ酸配列をコー
ドするDNAが挙げられ、特に配列番号1に示す塩基配
列を有するDNAが挙げられる。
【0025】プロテアーゼNprLのクローニングは、
プロテアーゼを生産するラクトバチルス属に属する微生
物より染色体DNAを調製し、適当な制限酵素により切
断したDNA断片を適当なベクターに導入し、得られた
プラスミドを適当な宿主に導入し、プロテアーゼ生産能
を付与された形質転換株を選択することにより行うこと
ができる。
【0026】例えば、ラクトバチルス・エスピーNo.
1株より染色体DNAを調製し、制限酵素Sau3AI
で部分消化した後、DNA断片を温度制御可能な発現ベ
クターpISAts412のBamHI部位に導入し、菌
体外プロテアーゼ活性が低下した宿主バチルス・ズブチ
リス(Bacillus subtilis )DB104株に導入し、テ
トラサイクリン及びカゼインを含むプレートに植菌し、
プロテアーゼ生産能を付与されたことによりプレート上
にクリアーゾーンを形成する形質転換株を選択する。得
られた形質転換株が保有するプラスミドのBamHI挿
入断片の塩基配列を明らかにすることによりプロテアー
ゼNprLをコードするDNA配列及び該DNAがコー
ドするアミノ酸配列を決定することができる。
【0027】本発明のDNAの発現は、大腸菌、枯草
菌、乳酸菌など発現しようとする宿主に合わせてその宿
主中で機能するベクターを選択し、そのベクター上にプ
ロモーター、ターミネーターとともにアミノ酸配列をコ
ードする部分(オープンリーディングフレーム)を適当
な位置に挿入し、得られたプラスミドにより宿主を形質
転換し、得られたプロテアーゼNprL生産性を付与さ
れた形質転換株を培養することにより行うことができ
る。
【0028】例えば、枯草菌由来のアルカリプロテアー
ゼや中性プロテアーゼ、アミラーゼのプロモーター、黄
色ブドウ球菌由来のプロテインAのプロモーター、大腸
菌由来のβ−ガラクトシダーゼやトリプトファンオペロ
ン、ファージ由来のT7RNAポリメラーゼやλPLプロ
モーターなどの制御下において発現することにより実施
できる。
【0029】好ましいプロモーターには、安全性及び分
泌生産能が高いバチルス属細菌において効率的に機能す
るプロモーター、例えば枯草菌のα−アミラーゼ遺伝子
(amy E)のプロモーター等が含まれる。なお、プロモ
ーターは、アミノ酸配列に基づいて化学合成してもよ
い。
【0030】プラスミドベクターには、通常、リボソー
ム結合部位として機能するSD(Shine-Dalgarno)配列
が前記プロモーターの下流側に連結されている場合が多
い。SD配列は、通常、前記プロテアーゼNprLをコ
ードする遺伝子と前記プロモーターとの間に連結され
る。
【0031】また、分泌蛋白質をコードするDNAの翻
訳開始点から下流側には、シグナル配列を有している場
合が多い。前記バチルス属細菌、特に枯草菌由来のプロ
モーターを利用する場合、プロテアーゼNprLの分泌
生産能を高めるため、分泌蛋白質のシグナル配列を利用
するのが有効である。分泌蛋白質のシグナル配列として
は、枯草菌(バチルス・サブチリス)、バチルス・アミ
ロリキファシエンス、バチルス・リケニホルミスなどの
バチルス属細菌が分泌する蛋白質のシグナル配列(例え
ばα−アミラーゼ、アルカリプロテアーゼ、中性プロテ
アーゼ、レバンシュークラーゼなどのシグナル配列)が
含まれる。前記シグナル配列のうち、特に枯草菌のα−
アミラーゼのシグナル配列が好適に利用される。
【0032】また、前記SD配列の下流に連結されたプ
ロテアーゼNprL遺伝子の下流には、ターミネーター
が連結されていてもよい。ターミネーターは、特に限定
されず、例えば、枯草菌のα−プロテアーゼ遺伝子、ア
ルカリプロテアーゼ遺伝子のターミネーターや、これに
対応して化学合成したターミネーターなどであってもよ
い。
【0033】プロテアーゼNprL遺伝子を含むDNA
断片を、制限酵素で切断したベクターに結合させること
により、プラスミドベクターを構築できる。また、リボ
ソームDNAとの相同組換えなどを利用して、染色体D
NAに導入して発現させることも可能である。ベクター
は、宿主内で安定に複製可能であればよく、宿主の種類
に応じて適当に選択できる。宿主が枯草菌である場合、
ベクターとしては、例えば、プラスミドpUB110、
pC194、pE194、pTHT15、pBD16、
温度制御可能な発現ベクターpISAts412やその誘
導体などが使用できる。
【0034】好ましいベクターには、例えば、α−アミ
ラーゼ遺伝子(Amy E)のシグナル配列の下流側に、制
限酵素BamHIの認識部位を有する14.2kbの環
状プラスミドである温度制御可能な発現ベクターpIS
ts412などが含まれる。
【0035】なお、組換えプラスミドベクターの構築
は、「Molecular Cloning (第2版),J.Sambrook et
al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)」な
どに記載された公知の方法、例えば、前記プロモータ
ー、SD配列、シグナル配列遺伝子、プロテアーゼNp
rL遺伝子およびターミネーターをベクターに連結する
ことにより、本発明の組換えプラスミドベクターを構築
できる。
【0036】なお、制限酵素によるプロテアーゼNpr
L遺伝子の切断部位、制限酵素によるベクターの切断部
位は、特に制限されないが、例えば、制限酵素Sau
AIにより部分消化したプロテアーゼNprL遺伝子の
DNA断片を用いる場合、このDNA断片は、前記ベク
ターpISAts412の制限酵素BamHIによる切断
部位に導入することができる。ベクターpISAts41
2の制限酵素BamHIによる切断部位にプロテアーゼ
NprL遺伝子のDNA断片が導入されたプラスミドを
プラスミドpNP45と称する。
【0037】このようにして得られたプラスミドベクタ
ーを、宿主に導入して形質転換することにより、プロテ
アーゼNprLの生産性の高い微生物(形質転換株)が
得られる。
【0038】前記プラスミドベクターによる宿主の形質
転換は、慣用の方法、例えば、カルシウムイオンなどを
用いるコンピテントセル法、ポリエチレングリコールに
よるプロトプラスト形質転換法[Chang, S., et al., M
ol. Gen. Genet., 168, 111-115 (1979)]などを利用し
て行うことができる。
【0039】前記宿主としては、例えば、大腸菌、枯草
菌、乳酸菌、酵母などが挙げられる。宿主微生物のう
ち、バチルス(Bacillus)属の微生物は、大腸菌などと
は異なり、エンドトキシンを生産しないこと、人体に寄
生しないことなどの理由から極めて安全性の高い微生物
である。また、蛋白質を菌体外に分泌生産する能力を有
しており、日本においては古くから納豆の製造に用いら
れている他、酵素、アミノ酸、抗生物質などの工業的な
生産菌としても用いられており、極めて利用しやすい微
生物である。
【0040】バチルス属細菌の中でも好ましい宿主は、
安全性が高く、菌体外に蛋白質を多量に分泌する枯草菌
[バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)]であ
る。さらに、枯草菌の中でも、突然変異などの手法によ
り菌体外へのプロテアーゼ活性を低下させた菌株が好ま
しい。このような菌株を宿主とすると、宿主由来のプロ
テアーゼによる分解を抑制できるため、プロテアーゼN
prLの生産に有利である。
【0041】プロテアーゼ活性の低い枯草菌には、例え
ば、バチルス・サブチリス104HL株[バイオケミカ
ル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケ
ーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.),128;
601-606, 1985];バチルス・サブチリス104HL株
pap 遺伝子を導入したバチルス・サブチリスDY−1
6株(微工研菌寄第9488号);アルカリプロテアー
ゼおよび中性プロテアーゼの生産能を欠き、且つプロテ
アーゼ活性が野生株の3%以下の枯草菌に、sp o 0A△67
7 変異遺伝子を導入した菌株などが挙げられる。好まし
い菌株には、例えば、バチルス・サブチリス104HL
株にspo 0A△677 変異遺伝子を導入したバチルス・サブ
チリスSPO11株(微工研菌寄第10987号)、バ
チルス・サブチリスDY−16株にspo 0A△677 変異遺
伝子を導入したバチルス・サブチリスSPL14株(微
工研菌寄第10988号)などが含まれる(特開平3−
143387号公報参照)。
【0042】菌体外プロテアーゼ活性が低下した好まし
い宿主のうち、バチルス・ズブチリスDB104株は、
分泌生産能が高く、宿主としての安全性が高く、菌体外
にほとんどプロテアーゼを生産しないという特色があ
る。
【0043】なお、形質転換株は、前記ベクターのマー
カー、例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子などを利用
して、カゼインなどを含む固体培地などに植菌し、培地
プレート上にクリアーゾーンを形成する形質転換株を選
択することにより得ることができる。
【0044】前記プラスミドpNP45を含むバチルス
・ズブチリスDB104株は、平成5年3月26日に、
バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)DB10
4(pNP45)株として、通産省工業技術院生命工学
工業技術研究所に、微生物寄託番号:微生物菌寄第P−
13562号(FERM P−13562)として寄託
されている。
【0045】プロテアーゼNprLは、慣用の方法、例
えば、ラクトバチルス属に属するロイシン特異的プロテ
アーゼ生産能を有する天然の微生物又は形質転換株を培
養することにより得ることができる。
【0046】微生物の培養は、慣用の液体培養に準じて
行うことができる。すなわち、形質転換株の培養は、慣
用の成分、例えば、無機塩、炭素源、窒素源、増殖因子
成分などを含む液体培地で、振盪培養または通気撹拌培
養法により行うことができる。培地のpHは、例えば7
〜8程度である。培養は、微生物の培養に通常採用され
る条件、例えば、温度15〜45℃、好ましくは25〜
40℃、培養時間6〜60時間程度の条件で行うことが
できる。
【0047】宿主微生物が生産したプロテアーゼNpr
Lの分離生成は、慣用の方法、例えば、溶解度の差を利
用した塩析方法(例えば、硫酸アンモニウムによる沈澱
など)、溶媒沈澱法、透析法、限外濾過法、SDS−ア
ガロースゲル電気泳動法、SDS−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動法、電気溶出法、イオン交換クロマトグラ
フィー法、疎水クロマトグラフィー法、アフィニティー
クロマトグラフィー法、ゲル濾過クロマトグラフィー
法、逆相高速液体クロマトグラフィー法、水素結合クロ
マトグラフィー法などやこれらを組合わせた方法で行う
ことができる。なお、培養液は、通常、遠心分離に供さ
れ、得られた培養上清は、必要に応じて適当なの濃縮手
段(例えば、限外濾過など)により濃縮できる。
【0048】溶解度差を利用する方法においては、例え
ば、必要に応じて濃縮した培養上清に硫酸アンモニウム
を85%飽和まで添加し、遠心分離により沈澱物を回収
し、適当な緩衝液(例えば、50mMトリス塩酸緩衝液
(pH7.5)及び5mM塩化カルシウム)に溶解し、
同緩衝液に対して透析した後、DEAE−セファデック
ス(Sephadex)A−50カラムに添加し、塩濃度勾配で
溶出することにより、活性画分を得ることができる。
【0049】プロテアーゼNprLが菌体内やペリプラ
ズムに蓄積される場合には、慣用の方法、例えば、菌体
を粉砕し、前記分離精製に供することにより、プロテア
ーゼNprLを得ることができる。
【0050】また、プロテアーゼNprLをコードする
DNAに部位特異的変異を導入することにより、基質特
異性や安定性などが変化した変異型プロテアーゼを生産
することができる。変異型プロテアーゼの作成は、例え
ば以下の方法で行うことができる。変異を導入したいア
ミノ酸を含むアミノ酸配列に対応する2本鎖DNAを化
学合成し、この合成したDNAの(+)鎖と(−)鎖と
をそれぞれプライマーとする(以下これらのプライマー
をそれぞれMXR、MXFと称する)。これら2種類の
プライマーと対になるPCRプライマーを変異導入部位
の上流及び下流に存在するDNA配列をもとに合成する
(以下これらのプライマーをそれぞれP1、P2と称す
る)。次に、P1とMXR、P2とMXFの組み合わせ
でPCRを行い、変異型DNAを含む2種類のDNAを
増幅することができる。これら2種類のDNAは、MX
F及びMXRプライマーの部分が共通している。次に、
増幅された2種類のDNAを鋳型としてプライマーP
1、プライマーP2を用いてPCRを行うことにより変
異が導入された2本鎖DNAを調製することができる。
得られた2本鎖DNAを発現ベクターに接続し、該ベク
ターで形質転換した微生物を培養し、培養物から酵素を
取得することによって、野生型酵素と同様に変異型酵素
を製造することができる。
【0051】変異型酵素の例としては、配列番号2に示
したアミノ酸配列のうち111位に位置するチロシンが
トリプトファンに置換した変異酵素(Y111W)及び
同部位がシステインに置換した変異酵素(Y111C)
を挙げることができる。これら変異型酵素Y111W、
Y111Cは、インスリンB鎖を基質として切断を行っ
た結果、野生型酵素に比較してインスリンB鎖のPhe
24−Phe25間ペプチド結合の切断活性が低下して
いたが、Gly23−Phe24間ペプチド結合の切断
活性はほとんど影響されなかった。更に、変異酵素Y1
11W及びY111Cを、通常の反応条件(30℃)よ
りも低温(15℃以下)で反応することにより、インス
リンB鎖Tyr16−Leu17間の切断活性が著しく
低下し、ほぼGly23−Phe24間に特異的なプロ
テアーゼを得ることができた。
【0052】
【実施例】以下に、実施例により本発明を詳細に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】[実施例1] プロテアーゼNprLをコ
ードする遺伝子のクローニング ラクトバチルス・エスピーNo. 1株をL培地(バクト
トリプトン10g、酵母エキス5g,塩化ナトリウム5
g/1L)に0.01%のグラミシジンSを添加した培
地中、37℃で振盪培養し、遠心分離により菌体を調製
した。得られた菌体から常法により(T.Imanaka,et a
l.,J.Bacteriol.,147,776-786(1981) )染色体DNAを
調製し、制限酵素Sau3AIで部分消化し、図1に示
す温度制御可能な発現ベクターpISAts412のBa
mHI部位に連結し、プロテアーゼ活性の低下した宿主
バチルス・ズブチリスDB104株にコンピテントセル
法によって導入し、該宿主を形質転換した。
【0054】プロテアーゼ生産株の選択は、1%乳製カ
ゼインと25μg/mLのテトラサイクリンとを含むL
−プレート上での、コロニー周囲のハロ(クリアーゾー
ン)形成を指標として行った。その結果、約20000
株の形質転換株中10株のハロ形成株が得られた。これ
らの株が生産するプロテアーゼの分子量はいずれもドデ
シル硫酸ナトリウム存在下におけるポリアクリルアミド
電気泳動(SDS−PAGE)において約37000で
あった。これらの株はいずれも同様のプロテアーゼ生産
能を有し、ほぼ同じ大きさの挿入断片がベクターにみら
れた。これらの株のうち1株が保持するプラスミドをp
NP45と命名した。pNP45の構造を図2に示す。
【0055】[実施例2] プロテアーゼ遺伝子の塩基
配列及び該塩基配列によってコードされるアミノ酸配列 プラスミドpNP45の挿入断片のマッピング及びプロ
テアーゼ生産能を指標にしてプロテアーゼNprLをコ
ードする遺伝子の領域を限定し、挿入断片の制限酵素地
図とともに図3に示した。
【0056】なお、図2、図3においてS1、S4は制
限酵素Sau3AI; Xは制限酵素XbaI; H1、H
2、H3は制限酵素HindIII; Nは制限酵素Nr
uI; Dは制限酵素DraI; Eは制限酵素EcoT2
2I; S2は制限酵素SphI; P1、P2は制限酵素
PstIによる認識部位をそれぞれ示している。
【0057】次に、特定されたプロテアーゼNprLを
コードする領域の塩基配列を決定した。決定された塩基
配列を配列番号1(配列部分のみ図13)に示す。得ら
れた配列よりプロテアーゼNprLの構造遺伝子は、1
698塩基からなり、566アミノ酸をコードしている
ことが明らかになった。塩基配列から予想されるアミノ
酸配列を配列番号2(配列部分のみ図14〜図16)に
示す。菌体外に分泌された成熟タンパク質から得られた
アミノ末端アミノ酸配列との比較から、構造遺伝子の最
初の27アミノ酸はシグナルペプチドであることが判明
した。更に、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域を含むゲ
ノムDNAの塩基配列を配列番号3(配列部分のみ図1
7〜図21)に示す。
【0058】[実施例3] プロテアーゼNprLの生
産及び精製 宿主バチルス・ズブチリスDB104株(アルカリプロ
テアーゼ及び中性プロテアーゼ欠損株)をpNP45で
コンピテントセル法により形質転換し、L培地(バクト
トリプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム5
g/L)に最終濃度25μg/mLのテトラサイクリン
及び塩化カルシウムを5mMを添加した培地で37℃で
終夜振盪培養し、培養液を8000Gで10分間遠心分
離し、上清を回収した。該上清を分画分子量1万の膜を
用いて限外濾過により約2倍濃縮し、濃縮液に硫安を8
5%飽和まで添加し、1晩4℃に放置した後、1000
0G、60分間遠心分離し沈澱を回収した。該沈澱を2
0mlの50mMトリス塩酸緩衝液(pH7. 5)、5
mM塩化カルシウムに溶解し、同緩衝液に1晩透析し
た。透析した酵素液を、同緩衝液で平衡化したDEAE
−セファデックス(Sephadex)A50カラム(1.5c
m内径×50cm)を用いて分画した。酵素を塩濃度勾
配で溶出し、活性画分を回収し、精製酵素を得た。
【0059】[実施例4] プロテアーゼNprLの基
質特異性 インスリンA鎖は、下記の21個のアミノ酸配列からな
ることが知られている。
【0060】(N末端)Gly−Ile−Val−Gl
u−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile
−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−
Glu−Asn−Tyr−Cys−Asn(C末端) インスリンA鎖にプロテアーゼNprLを37℃1時間
作用させ、氷酢酸を添加して反応を停止した。分解物を
逆相液体クロマトグラフィー[溶出条件:0〜40%の
直線濃度勾配(20分)のアセトニトリル−水混合溶媒
(0.1%のトリフルオロ酢酸含有)]により解析した
結果、図4(a)に示されるように3つのピークが検出
され、生成したペプチドのアミノ末端アミノ酸配列を解
析した結果、切断部位はSer12−Leu13間及び
Gln15- Leu16間と同定された。前記インスリ
ンA鎖のアミノ酸配列を考慮すると、インスリンA鎖は
プロテアーゼNprLによって、ロイシンのアミノ末端
側で選択的に切断されたことが明らかになった。なお、
対照として、基質を含まない反応液のクロマトグラムを
図4(b)に、基質インスリンA鎖のクロマトグラムを
図4(c)に示した。
【0061】また、(N末端)Orn−Leu−D−P
he−Pro−Val(C末端)(Ornはオルニチン
を表す)のペンタペプチドにプロテアーゼNprLを作
用させ、シリカゲルプレートにより生成物を分析した結
果(展開はブタノール:酢酸:水=4:1:1(体積
比))により行い、発色はニンヒドリン反応により行っ
た。図5に示す)、オルニチンのみが分解産物として検
出されたことから、該ペンタペプチドはプロテアーゼN
prLによって、ロイシンのアミノ末端側で選択的に切
断されたことが明らかになった。
【0062】インスリンB鎖は、下記の30個のアミノ
酸配列からなることが知られている。
【0063】(N末端)Phe−Val−Asn−Gl
n−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His
−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−
Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−G
ly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Ly
s−Thr(C末端) インスリンB鎖とプロテアーゼNprLを基質/酵素=
800(μg/U)の比率で30℃、10分間反応させ
た結果、図6に示すように、主にGly23−Phe2
4、Phe24−Phe25、Tyr16−Leu1
7、Ala14−Leu15、His10−Leu11
間における切断を示すピーク(それぞれ図6におけるピ
ーク3とピーク7、ピーク2とピーク9、ピーク4とピ
ーク5、ピーク3とピーク6、ピーク1とピーク8)が
検出されたことから、前記インスリンB鎖のアミノ酸配
列を考慮すると、インスリンB鎖はプロテアーゼNpr
Lによって、ロイシン及びフェニルアラニンのアミノ末
端側で優先的に切断されたことが明らかになった。
【0064】[実施例5] プロテアーゼNprLの理
化学的性質の測定 実施例3において取得されたプロテアーゼNprLの理
化学的性質は以下の通りであった。
【0065】(分子量) ドデシル硫酸ナトリウム存在
下におけるポリアクリルアミド電気泳動において分子量
は約37000であった。
【0066】(至適pH) 標準的な活性測定法で、緩
衝液のみを50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.
5〜8.5)または50mMトリス塩酸緩衝液(pH
8.0〜10.0)に変えて活性を測定した。活性のp
H依存性は図7に示される通りであり、至適pHは、7
〜9であった。
【0067】(温度依存性) 標準的な活性測定方法で
温度のみを20℃〜80℃まで変えて測定した。活性の
温度依存性は図8に示す通りであり、至適温度は、60
℃であった。
【0068】(阻害剤) プロテアーゼNprLの酵素
液に、1mMEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添
加したところ、活性が阻害された。これに対して、1m
MPMSF(フェニルメタンスルフォニルフルオリド)
を添加したところ、活性は阻害されなかった。
【0069】[実施例6] プラスミドpNP45−1
の構築 プロテアーゼNprLへの変異導入操作を容易に行うた
めに、プロテアーゼNprLをコードするDNAを含む
プラスミドpNP45の誘導体を構築した。まず、pN
P45のプロテアーゼNprLをコードするDNA以外
の部分に存在する2カ所のBanI部位の除去を行っ
た。図9に示したpNP45の図の実線部分にBanI
部位が存在しており、この領域が温度感受性を示す発現
制御を担っている。pNP45をSau3AIで部分消
化し、プロテアーゼNprLをコードするDNAを切り
出し、枯草菌における低コピー数ベクターpTB524
のBamHI部位にサブクローニングし、pNP45−
1(14.8kb)を構築した。
【0070】[実施例7] 変異酵素Y111Wをコー
ドするDNAの作成 プロテアーゼNprLの111位に存在するチロシンを
トリプトファンに置換した変異酵素Y111Wを以下の
ように製造した。
【0071】まず、変異を導入しようとする111位の
チロシンに対応するコドンをトリプトファンに対応する
TGGに置換した、以下の塩基配列を有するプライマー
M6F, M6Rを合成した。
【0072】 M6F:5'-C-GGA-AGT-AAG-TGG-AAT-AAT-G-3' M6R:3'-G-CCT-TCA-TTC-ACC-TTA-TTA-C-5' なお、M6F、M6Rに対応するアミノ酸配列はGly
−Ser−Lys−Trp−Asn−Asnである。M
6F, M6Rと対となるPCRプライマーとしてそれぞ
れプライマーP2, プライマーP1を合成した。塩基配
列は以下の通りである。
【0073】 プライマーP1、P2にはそれぞれEcoT22I、S
phIの制限酵素部位を導入してある。各プライマーの
NprL遺伝子における相対的な位置関係を図10に示
した。プライマーP1、P2は、PCR増幅した断片を
プロテアーゼNprLの残りの領域に結合できるように
設計した。
【0074】PCR反応は以下のように行った。鋳型D
NA10ng、各プライマー20pmol、塩化カリウ
ム1μmol、硫酸アンモニウム1μmol、硫酸マグ
ネシウム0.2μmol、トリス塩酸緩衝液(pH8.
8)2μmol、トライトンX−100(Triton X-10
0)0.1mg、dATP・dTTP・dGTP・dC
TP各20nmol、VentDNAポリメラーゼ2U
を含む100μLの反応液中で94℃2分間、52℃2
分間、72℃3分間のサイクルを30サイクル繰り返し
た。
【0075】PCRにより変異導入部位を含むDNA断
片を調製し、EcoT22I及びSphI消化により6
25bpのEcoT22I−SphI断片を得た。この
DNA断片をM13mp19のPstI、SphI間に
導入し、M13PSmutを得た。変異導入部位の配列
を塩基配列を決定することにより確認後、変異導入部位
を含むBanI−SphI断片480bpを切り出し、
pNP45−1のBanI−SphI断片と断片を交換
し、pNP45−1mutを得た。
【0076】以上の工程を図10に示す。なお、図10
において*は変異が導入された部位を示す。
【0077】[実施例8] 変異酵素Y111Wの特性 変異酵素Y111Wのアゾカゼインに対する比活性は7
56U/mgであり、野生型プロテアーゼNprLの1
250U/mgに対して60%であった。
【0078】前記インスリンB鎖に変異酵素Y111W
を酵素/基質=800(μg/U)の条件で30℃5分
間作用させた後の切断パターンを図11(b)に示し
た。野生型のNprL(図6)に比較してPhe24−
Phe25間の切断活性が著しく低下していた。
【0079】[実施例9] 変異酵素Y111Wの低温
での基質特異性の変化 インスリンB鎖に対して、変異酵素Y111Wを実施例
8と同様な条件下で温度のみ60℃、30℃、15℃、
0℃と変えて作用させ、同程度な分解の程度になる時間
にサンプリングした。該切断における切断パターンの温
度による差異を図11に示した。
【0080】15℃、0℃における反応においては、3
0℃、60℃における反応に比較して明らかにTyr1
6−Leu17間における切断活性が低下しており、切
断反応はほとんどGly23−Phe24間に特異的で
あった。
【0081】[実施例10] 変異酵素Y111Cの作
成 実施例7と同様な方法によって、プロテアーゼNprL
の111位に存在するチロシンがシステインに置換した
変異酵素Y111Cを製造した。製造したY111Cを
実施例8及び実施例9と同様な方法においてインスリン
B鎖に作用させた。切断パターンを図12に示す。Y1
11Cは、Y111Wと同様30℃における反応におい
てPhe24−Phe25間の切断活性が著しく低下
し、15℃、0℃の低温においてはTyr16−Leu
17間における切断活性も低下し、切断反応は殆どGl
y23−Phe24間に特異的であった。
【0082】[配列の種類等]以下、本明細書で表示さ
れている配列の番号、長さ、型、種類、起源および特徴
について以下に示す。なお、配列自体は、図面中に図示
している。
【0083】配列番号1の配列について、 配列番号:1 配列の長さ:1698 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源 生物名:ラクトバチルス(Lactobacillus ) 株名:sp.No.1 配列の特徴 特徴を表す記号:CDS 存在位置:1..1698 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:sig peptide 存在位置:1..81 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:mat peptide 存在位置:82..1698 特徴を決定した方法:E (配列自体は図13に示す) 配列番号2の配列について、 配列番号:2 配列の長さ:566 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:タンパク質 起源 生物名:ラクトバチルス(Lactobacillus ) 株名:sp.No.1 配列の特徴 特徴を表す記号:sig peptide 存在位置:1..27 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:mat peptide 存在位置:28..566 特徴を決定した方法:E (配列自体は図14〜図16に示す) 配列番号3の配列について、 配列番号:3 配列の長さ:2138 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源 生物名:ラクトバチルス(Lactobacillus ) 株名:sp.No.1 配列の特徴 特徴を表す記号:-35 signal 存在位置:156..161 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:-10 signal 存在位置:179..184 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:RBS 存在位置:245..249 特徴を決定した方法:E 配列の特徴 特徴を表す記号:CDS 存在位置:258..1955 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:sig peptide 存在位置:258..338 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:mat peptide 存在位置:339..1955 特徴を決定した方法:E (配列自体は図17〜図21に示す)
【0084】
【発明の効果】本発明のプロテアーゼNprLは、タン
パク質またはペプチドのロイシンまたはフェニルアラニ
ン残基のアミノ末端側で、優先的にタンパク質またはペ
プチドを加水分解する。この性質を利用して、タンパク
質またはペプチドをその中に含まれるロイシンまたはフ
ェニルアラニン残基のアミノ末端側で特異的に分解する
ことができる。また、プロテアーゼNprLの逆反応を
利用して、ロイシンまたはフェニルアラニン残基のアミ
ノ末端側で、タンパク質またはペプチドを特異的に合成
することができる。また、ラクトバチルス(Lactobacil
lus )属に属する微生物またはプロテアーゼNprLを
含有するベクターで形質転換された微生物を培養するこ
とによって、プロテアーゼNprLを効率良く産生する
ことができる。更に、プロテアーゼNprLに置換、挿
入、欠失などの変異を導入することにより新しい特異性
を持ったプロテアーゼを得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】プロテアーゼNprLのクローニングに用いた
ベクターpISAts412の構造を示す図である。
【図2】プラスミドpNP45の構造を示す図である。
【図3】プロテアーゼNprLの遺伝子断片の制限酵素
地図等の構造を示す図である。
【図4】プロテアーゼNprLをインスリンA鎖と反応
させた生成物(a)酵素単独(b)基質単独(c)の液
体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す図であ
る。
【図5】プロテアーゼNprLをペンタペプチドと反応
させた生成物のシリカゲル薄層クロマトグラフィーのク
ロマトグラムを示す図である。
【図6】プロテアーゼNprLとインスリンB鎖と反応
させた生成物の高速液体クロマトグラフィーにおけるク
ロマトグラム(a)及び生成したピークをアミノ酸分析
及びペプチドシーケンシングにより同定を行った結果
(b)を示す図である。
【図7】プロテアーゼNprL活性のpH依存性を示す
図である。
【図8】プロテアーゼNprL活性の温度依存性を示す
図である。
【図9】プラスミドpNP45−1の構築方法を示す図
である。
【図10】変異型酵素Y111W及びY111Cの構築
方法を示す図である。
【図11】変異型酵素Y111WをインスリンB鎖と反
応させ、生成したペプチドを逆相液体クロマトグラフィ
ーで解析したクロマトグラムを示す図である。
【図12】変異型酵素Y111CをインスリンB鎖と反
応させ、生成したペプチドを逆相液体クロマトグラフィ
ーで解析したクロマトグラムを示す図である。
【図13】配列番号1の配列を示す図である。
【図14】配列番号2の配列を示す図である。
【図15】配列番号2の配列を示す図である。
【図16】配列番号2の配列を示す図である。
【図17】配列番号3の配列を示す図である。
【図18】配列番号3の配列を示す図である。
【図19】配列番号3の配列を示す図である。
【図20】配列番号3の配列を示す図である。
【図21】配列番号3の配列を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 9/52 C12R 1:125) (C12N 1/21 C12R 1:125) (C12N 15/09 C12R 1:225) C12R 1:225)

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次のからに示す性質を有するプロテ
    アーゼNprL。 作用:ペプチドまたはタンパク質に作用し、ペプチド
    結合を加水分解する。 基質特異性:ロイシンまたはフェニルアラニンのアミ
    ノ末端側で優先的にペプチド結合を加水分解する。 至適pH及びpH安定性:至適pHは7〜9であり、
    中性から弱アルカリ性で安定である。
  2. 【請求項2】 タンパク質またはペプチドに請求項1記
    載の酵素を作用させることにより、タンパク質またはペ
    プチド中のロイシン残基またはフェニルアラニン残基の
    N末端側のペプチド結合を選択的に加水分解する方法。
  3. 【請求項3】 ラクトバチルス(Lactobacillus )属に
    属する請求項1記載のプロテアーゼNprLを産生する
    能力を有する微生物を培養し、培養物から請求項1に記
    載の酵素を取得することを含む、請求項1記載のプロテ
    アーゼNprLを製造する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の酵素をコードするDNA
    を含むことを特徴とするDNA。
  5. 【請求項5】 請求項4記載のDNAにおいて、ラクト
    バチルス(Lactobacillus )属に属する微生物の染色体
    に由来するDNA。
  6. 【請求項6】 配列番号2に示されるタンパク質をコー
    ドする塩基配列を含むことを特徴とする請求項4記載の
    DNA。
  7. 【請求項7】 請求項4記載のDNAにおいて、プロテ
    アーゼ活性を有しかつ配列番号2に示される配列中の1
    個または複数個のアミノ酸を置換、挿入又は欠失したア
    ミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列を
    含むことを特徴とするDNA。
  8. 【請求項8】 請求項4、請求項5、請求項6または請
    求項7のいずれかに記載のDNAを含むことを特徴とす
    るベクター。
  9. 【請求項9】 請求項8記載のDNAにより形質転換さ
    れた微生物。
  10. 【請求項10】 微生物が細菌である請求項9記載の微
    生物。
  11. 【請求項11】 請求項9または請求項10記載の微生
    物を培養し、培養物から請求項1に記載の酵素を取得す
    ることを含む、請求項1記載の酵素の製造方法。
  12. 【請求項12】 配列番号2に示されるアミノ酸配列の
    うち、111位に位置するチロシンがトリプトファンに
    置換されたアミノ酸配列を有する変異体酵素。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の変異体酵素をコード
    するDNAを含むことを特徴とするDNA。
  14. 【請求項14】 配列番号2に示されるアミノ酸配列の
    うち、111位に位置するチロシンがシステインに置換
    されたアミノ酸配列を有する変異体酵素。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の変異体酵素をコード
    するDNAを含むことを特徴とするDNA。
  16. 【請求項16】 タンパク質またはペプチドに、請求項
    12または請求項14記載の変異体酵素を低温で作用さ
    せることにより、タンパク質またはペプチド中のフェニ
    ルアラニン残基のN末端側のペプチド結合を選択的に加
    水分解する方法。
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