JPH0717802Y2 - 自動車用内燃機関の車載型トルク，出力計測装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、自動車用内燃機関の発生トルクと出力を通
常運転状態のまま計測する車載型の計測装置に関する。

従来の技術 例えば自動車用内燃機関においては、機関回転数や冷却
水温等の情報は、通常、運転席の計器盤上に表示される
ようになっているが、機関の発生トルクや出力は、その
ような表示がなされず、また自動変速機等の各種制御機
構におけるデータとしても使用されていない。これは運
転中のトルクや出力の検出が容易に行えないためであ
る。

例えば自動車用内燃機関のトルク検出を正確に行うため
にはシャーシダイナモを用いた台上試験が必要となる。
また、そのほか、動力伝達系に介在する軸の微小なねじ
れを検出するようにしたトルクセンサが用いられる場合
もある。

しかしながら、このような方法では大掛かりな装置や高
価なトルクセンサが必要であり、通常の走行中に簡易に
トルク検出を行うことはできない。

これに対し、実開昭63-58732号公報には、機関回転数と
吸気管圧力とをセンサにて検出し、予め作成したエンジ
ントルクマップに基づいて実際の運転時のトルクを求め
る技術が開示されている。

考案が解決しようとする課題 しかしながら、上記従来のトルク計測装置は、内燃機関
の燃料噴射制御装置の一部として構成されているもので
あり、例えば自動車を購入したユーザサイドで後から取
付を行ういわゆるオプション部品としての提供には到底
適用できない。特に、上記公報の装置では、複数の信号
つまり機関回転数センサからの信号と吸気管圧力からの
信号とを取り込む必要があるため燃料噴射制御用のエン
ジンコントロールユニットとは別にトルク計測装置を構
成しようとすると、信号の授受や配線が複雑かる困難と
なりやすい。

そこで、この考案は、エンジンコントロールユニット側
から単一の信号のみを取り込んで、内燃機関のトルクお
よび出力の計測を簡易に行うようにしたものである。

課題を解決するための手段 この考案は、内燃機関のエンジンコントロールユニット
が出力する燃料制御系の噴射パルス信号のみが入力さ
れ、該信号に基づいて内燃機関のトルク及び出力を計測
する自動車用内燃機関の車載型トルク，出力計測装置で
あって、 上記噴射パルス信号の周期から内燃機関の回転数を算出
する手段と、 上記噴射パルス信号の噴射パルス幅に所定の定数を乗じ
て機関の発生トルクを算出する手段と、 このトルクと上記機関回転数とから所定の演算式に基づ
いて機関出力を算出する手段と、 この算出したトルクと出力とを表示する手段と、 を備えて構成されている。

作用 電磁式燃料噴射弁を介して燃料供給を行うようにした内
燃機関では、周知のように、燃料噴射弁に印加される噴
射パルス信号の噴射パルス幅に略比例した量の燃料が間
欠的に噴射供給される。この燃料噴射は、クランク角36
0°毎に一回もしくは720°毎に一回といったように機関
の回転に同期した形で行われるので、その噴射パルス信
号の周期から機関回転数が求められる。

また燃料噴射量は、基本的には機関の吸入空気量に略比
例するように制御されるので、燃料噴射量つまり噴射パ
ルス幅によって発生トルクが近似的に求められる。そし
て機関出力は、トルクと回転数に比例するから、両者を
用いて算出することができる。

実施例 以下、この考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
する。

第１図はこの考案に係るトルク，出力計測装置の一実施
例を示す構成説明図であって、内燃機関１の吸気通路２
に絞弁３が介装されているとともに、その上流側にエア
クリーナ４が配設されており、かつ各吸気ポートへ向け
て、個別に燃料供給を行う電磁式燃料噴射弁５が装着さ
れている。そして、上記吸気通路２の例えば絞弁３上流
側に、通過空気流量つまり機関吸入空気量を検出する熱
線式エアフロメータ６が介装されている。また上記絞弁
３に対しては、その開度変化から加速度合を検出するた
めに絞弁開度センサ７が設けられている。

また内燃機関１のクランク軸1aの前端部等に、該クラン
ク軸1aの一定回転角毎にパルス信号を発するクランク角
センサ８が配設されている。９は、上記内燃機関１の冷
却水温を検出する水温センサである。

10は、上記の各センサ類および燃料噴射弁５とともに燃
料制御系を構成するエンジンコントロールユニットであ
る。このエンジンコントロールユニット10は、所謂マイ
クロコンピュータシステムからなり、所定のプログラム
に従って、上記燃料噴射弁５の噴射量，噴射タイミング
等を制御している。

また11は、内燃機関１の出力（PS）およびトルク（kg・
ｍ）を逐次算出する計測ユニットであり、その回路部と
一体のケーシング前面に、算出結果をデジタル表示する
表示器12が設けられている。この表示器12を備えた計測
ユニット11は、例えば自動車の計器盤等に配設されてい
る。上記計測ユニット11は、やはりマイクロコンピュー
タシステムを利用したもので、燃料制御系のエンジンコ
ントロールユニット10から後述する基本噴射パルス幅Tp
を示す基本噴射パルス信号が入力されている。

次に上記構成における作用を説明する。

先ず、燃料制御系を構成するエンジンコントロールユニ
ット10においては、主に、エアフロメータ６が検出する
吸入空気量Ｑとクランク角センサ８のパルス信号から求
められた機関回転数Ｎとに基づいて、次式のように基本
噴射パルス幅（基本燃料噴射量）Tpが演算される。

Tp＝ｋ・Q/N（但し、ｋは定数） すなわちサイクル毎の吸入空気量に比例した形で基本噴
射パルス幅Tpが与えられる（第３図参照）。

そして、次式に従って最終的な噴射パルス幅（燃料噴射
量）Tiが決定される。

Ti＝Tp×COEF×α＋Ts ここでCOEFは各種補正係数であり、水温センサ９の検出
温度に基づく水温増量補正係数や加速時の加速増量補正
係数などからなる。Tsは燃料噴射弁５の無効時間を補う
ための電圧補正分、αは図示せぬ排気系のO₂センサの検
出信号に基づくフィードバック補正係数である。

このようにして決定された噴射パルス幅Tiに基づき、エ
ンジンコントロールユニット10から所定のタイミング
で、Ti（ms）のパルス幅を有する噴射パルス信号が出力
される。これによって燃料噴射弁５が開き、上記パルス
幅Tiに略比例した量の燃料が供給される。この燃料噴射
は、全気筒同時に行うものと各気筒個別のタイミングで
行うものとがあるが、各気筒で見れば、例えばクランク
角720°毎もしくは360°毎のように一定クランク角毎に
間欠的に燃料噴射が行われる。

一方、計測ユニット11においては、上記エンジンコント
ロールユニット10から得られる基本噴射パルス信号のみ
に基づいて機関出力とトルクが計測され、かつ表示され
る。

第２図は、上記計測ユニット11において繰り返し実行さ
れる計測プログラムの概略を示しており、以下、これを
説明する。

先ず、ステップ１で、エンジンコントロールユニット10
が出力する基本噴射パルス信号からそのときの基本噴射
パルス幅Tpが読み込まれ、かつステップ２で、基本噴射
パルス信号のパルス周期ｔ（第３図参照）が読み込まれ
る。そして、ステップ３で、上記のパルス周期ｔに基づ
いて機関回転数Ｎ（rpm）が求められる。

次いで、上記基本噴射パルス幅Tpに基づいて発生トルク
Ｔが次式によって算出される（ステップ４）。

Ｔ＝k₀×Tp ここでk₀は、燃料噴射弁５の噴射特性等によって定まる
定数である。

そしてステップ５で、上記のように求めたトルクＴと機
関回転数Ｎとを用いて、機関出力Ｐが次式によって算出
される。

このようにして算出されたトルクＴと出力Ｐは、計測ユ
ニット11前面の表示器12において逐次表示される（ステ
ップ６）。

従って、運転者は運転中常に機関の出力ＰとトルクＴを
知ることができ、変速時期の決定等に際して非常に便利
なものとなる。

尚、上記のようにして求めたトルクＴ等を単に表示する
だけでなくトラクションコントロール等の入力データと
して利用することも勿論可能である。

次に第４図および第５図は、エンジンコントロールユニ
ット10から燃料噴射弁５に対し出力される最終的な噴射
パルス信号（Ti）を用いて出力Ｐ等の算出を行うように
した実施例を示している。

上記の最終的な噴射パルス信号における噴射パルス幅Ti
は、前述したように加速等に対する増量補正がなされて
いるので、例えば急加速時には、基本噴射パルス幅Tpに
比してかなり大きな値となり、多量の燃料を供給するこ
とになるが、実際の内燃機関の出力は、燃料噴射量を過
度に大きくしたとしても一定限度以上には増大しない。
そこで、この実施例では、ステップ１で読み込んだ噴射
パルス幅Tiを上限値Tmと比較し（ステップ４）、これよ
りも大きい場合には、その上限値Tmの値を、トルク算出
の基礎となる噴射パルス幅Tiとして（ステップ５）、ト
ルクＴの算出を行うようにしている（ステップ６）。

この実施例によれば、エンジンコントロールユニット10
から実際に燃料噴射弁５に出力される噴射パルス信号を
そのまま用いて噴射パルス幅Tiおよびパルス周期ｔを容
易に知ることができるので、基本噴射パルス幅Tpを利用
する場合に比して、トルク，出力計測装置をいわゆるオ
プション部品として設定する場合などには非常に都合の
良いものとなる。

考案の効果 以上の説明で明らかなように、この考案に係る自動車用
内燃機関の車載型トルク，出力計測装置によれば、単一
の信号つまりエンジンコントロールユニットが出力する
燃料制御系の噴射パルス信号のみを用いて機関の発生ト
ルクおよび出力を運転中に容易に計測することができ
る。従って、エンジンコントロールユニット側との間で
の信号の授受および配線が非常に容易となり、特にオプ
ション部品として自動車に後から装着する場合に、信号
の利用がきわめて容易となる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係るトルク，出力計測装置の一実施
例を示す構成説明図、第２図はそのフローチャート、第
３図は基本噴射パルス信号の波形図、第４図はこの考案
の異なる実施例を示す構成説明図、第５図はそのフロー
チャートである。 １……内燃機関、５……燃料噴射弁、10……エンジンコ
ントロールユニット、11……計測ユニット、12……表示
器。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】内燃機関のエンジンコントロールユニット
   が出力する燃料制御系の噴射パルス信号のみが入力さ
   れ、該信号に基づいて内燃機関のトルクおよび出力を計
   測する自動車用内燃機関の車載型トルク，出力計測装置
   であって、 上記噴射パルス信号の周期から内燃機関の回転数を算出
   する手段と、 上記噴射パルス信号の噴射パルス幅に所定の定数を乗じ
   て機関の発生トルクを算出する手段と、 このトルクと上記機関回転数とから所定の演算式に基づ
   いて機関出力を算出する手段と、 この算出したトルクと出力とを表示する手段と、 を備えてなる自動車用内燃機関の車載型トルク，出力計
   測装置。