JPH07174742A - 結晶欠陥測定方法 - Google Patents

結晶欠陥測定方法

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JPH07174742A
JPH07174742A JP5320457A JP32045793A JPH07174742A JP H07174742 A JPH07174742 A JP H07174742A JP 5320457 A JP5320457 A JP 5320457A JP 32045793 A JP32045793 A JP 32045793A JP H07174742 A JPH07174742 A JP H07174742A
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ultrasonic
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temperature
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JP5320457A
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Hiroshi Kaneda
寛 金田
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Fujitsu Ltd
Original Assignee
Fujitsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】単結晶半導体層中に生じる固有点欠陥やそれに
起因する複合欠陥の測定方法に関し、固有点欠陥の濃度
を測定すること。 【構成】結晶試料に外部磁場を印加し、冷却しながら該
結晶試料に超音波を通過させて、該結晶試料での超音波
音速変化又は超音波吸収変化と結晶試料冷却温度との関
係を測定することを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、結晶欠陥測定方法に関
し、より詳しくは、単結晶半導体層中に生じる固有点欠
陥やそれに起因する複合欠陥の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子デバイス用のシリコン結晶は、他の
一般的な結晶に比べて完全性が高く、結晶欠陥密度は非
常に低いとされている。しかし、スターティングマテリ
アルであるシリコン結晶基板の微量かつ微妙な結晶欠陥
状態を正確に把握することは、デバイスの微細化をさら
に進めたり、複雑な製造プロセスによるデバイスの劣化
をなくすために必須となってきている。結晶欠陥を把握
することは、もともと結晶に含まれる欠陥や不純物によ
る悪影響、或いは半導体装置製造プロセス中に生じる二
次的な欠陥による悪影響を低減するために必要である。
【0003】シリコン結晶中には、ごく微量ではあるが
原子空孔や格子間シリコン原子のような固有点欠陥が存
在し、固有点欠陥を含む複合体欠陥或いは固有点欠陥に
起因した複合体欠陥が生じると、結晶中の不純物酸素を
析出する際の析出特性に悪影響を及ぼしたり、或いは、
シリコンウェハ上に作られるシリコン酸化膜の電気的特
性を劣化させたりすることがわかりつつある。
【0004】しかし、固有点欠陥の濃度は一般にきわめ
て低く、従来の結晶欠陥測定手段では殆ど検出不可能で
ある。これまで、原子空孔や格子間シリコン原子などの
固有点欠陥が検出できたのは、様々な手段により人為的
にその濃度を高めた場合、即ち加速実験を行った場合で
あり、電子デバイス用の通常のシリコン結晶の固有点欠
陥の検出は未だ報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電子デバイス用の通常
のシリコン結晶或いはこれと同程度の高い完全性を有す
るシリコン結晶に関しては、原子空孔や格子間シリコン
原子などの固有点欠陥、或いはその複合体欠陥を直接検
出しかつ定量する手段は開発されていないのが現状であ
る。
【0006】固有点欠陥やその複合体欠陥を検出したこ
れまでの例は、すべて加速実験であり、これらが関与し
たと考えられるような二次的、三次的な現象の程度から
定性的に推察したもに過ぎない。これらの欠陥の濃度を
直接検出することが困難な最も大きな理由は、その濃度
が著しく低いからと考えられる。本発明はこのような事
情に鑑みてなされたものであって、固有点欠陥の濃度を
測定できる結晶欠陥測定方法を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した課題は、図7
に、図10に例示するように、結晶試料2に外部磁場を
印加し、冷却しながら該結晶試料2に超音波を通過させ
て、該結晶試料2での超音波音速変化又は超音波吸収変
化と結晶試料冷却温度との関係を測定することを特徴と
する結晶欠陥測定方法によって達成する。
【0008】または、前記結晶試料2での超音波音速変
化又は超音波吸収変化と前記結晶試料2の冷却温度との
関係を示す曲線の急峻な落ち込み量に基づいて固有点欠
陥濃度を求めることを特徴とする請求項1記載の結晶欠
陥測定方法により達成する。または、前記外部磁場の強
度が少なくとも0〜10テスラの範囲にはいることを特
徴とする請求項1記載の結晶欠陥測定方法によって達成
する。
【0009】または、前記冷却温度は少なくとも0〜1
0Kの範囲に入ることを特徴とする請求項1記載の結晶
欠陥測定方法によって達成する。または、前記超音波
は、中心周波数が10KHz 〜10GHz の範囲にある超音
波パルスを用いることを特徴とする請求項1記載の結晶
欠陥測定方法によって達成する。
【0010】または、前記超音波速度の測定には参照波
と試料通過波の特定番目のパルスの位相差を検出する位
相比較法を使用することを特徴とする請求項1記載の結
晶欠陥測定方法によって達成する。
【0011】
【作 用】本発明によれば、結晶試料に外部磁場を印加
し、冷却しながら該結晶試料に超音波を通過させて、該
結晶試料での超音波音速変化又は超音波吸収変化と該結
晶試料の冷却温度との関係を測定するようにしている。
これは次のような理由による。
【0012】例えばシリコン結晶中の固有点欠陥、特に
原子空孔は、低エネルギーのトンネル励起(等価なヤー
ン−テラー歪みの間のトンネル運動)と同時に電子スピ
ンや軌道角運動量による磁気モーメントを有するという
特徴を持つ。この低エネルギーのトンネル励起は、結晶
格子の歪みに対して敏感であると考えられる。トンネル
励起の励起エネルギーはわかっていないが、1cm- 1
下と相当に低いと思われる。
【0013】従って、結晶中の超音波音速と温度との関
係を示す曲線(V−T曲線)を測定して、V−T曲線上
で固有点欠陥によるディップ状の急峻な落ち込み、即ち
音速異常が現れるとすれば1K以下の温度である。シリ
コン結晶中の固有点欠陥、特に原子空孔は磁気モーメン
トを持つために、外部磁場を印加すると、トンネル励起
準位のサブレベルとしてゼーマン準位が発生する。即
ち、零磁場状態で角運動(磁気モーメント)に関して縮
退していた準位が、磁場を印加することによりゼーマン
分裂する。
【0014】シリコン結晶中の固有点欠陥、特に原子空
孔は、低エネルギーのトンネル励起および磁気的な励起
のために、格子歪みと磁場に対して敏感に官能するエネ
ルギー準位をもつことになる。このため、V−T曲線上
において温度が1K以下でディップ状の急峻な落ち込み
(音速異常)が現れ、この強度(ディップ深さ)やディ
ップ温度が磁場依存性を示せば、それは固有点欠陥、特
に原子空孔によるものである可能性が高い。
【0015】そして、実験をしたところ、零磁場でのV
−T曲線にそのようなディップが生じることが確認され
(図5)、さらに、磁場を印加するとディップ発生温度
は高温側にシフトしてそのディップの落ち込み量が容易
に測定できることが確認された(図7)。固有点欠陥濃
度は、磁場印加時のその落ち込み量から比例換算によっ
て容易に求められる。
【0016】
【実施例】固有点欠陥による物理的シグナルを発見する
ために、本発明者は、次のような考察をし、基礎実験を
行った。 (1)シリコン結晶の主な製造方法として、チョクラル
ルスキー法(CZ法)とフロートゾーン法(FZ法)が
ある。
【0017】CZ法により成長した結晶は、固有点欠陥
に比べて多量な不純物酸素を含み、これに起因した様々
な形態の複合体欠陥も多量に含まれることになる。この
酸素誘起複合体欠陥は、固有点欠陥による微小な検出信
号を発見するうえで邪魔をする可能性がある。即ち、酸
素誘起複合体欠陥による検出信号と固有点欠陥によるシ
グナルとが区別できなくなる。
【0018】これに対し、FZ法により成長した結晶
は、酸素を殆ど含まないので酸素誘起複合体欠陥は存在
せず、固有点欠陥による検出信号が酸素誘起複合体欠陥
による検出信号に邪魔されて見えなくなることはない。
一般に、FZ法による結晶は、CZ法による結晶に比べ
て不純物濃度が格段に低いとされている。さらに、FZ
結晶では、固有点欠陥の存在が多方面から、間接的では
あるが確かめられている。
【0019】そこで、本発明者は、固有点欠陥の検出方
法を見いだすためにFZ法による結晶を用いることにし
た。 (2)シリコン結晶中の固有点欠陥、特に原子空孔を検
出するために、次のような現象を考察した。一般に、結
晶歪みに敏感に官能するような低エネルギー励起を有す
る不純物や欠陥は、超音波音速の温度変化曲線(V(vel
ocity)−T(temperature) 曲線)に大きな影響を与える
ことは特開平1─98960号公報などで報告されてい
る。
【0020】そこで、次にV−T曲線と固有点欠陥との
関係をNaCl結晶を例にあげて説明する。NaCl結晶では、
図1(a) に示すように不純物であるOHイオンがClイオン
と置換して結晶中に入る。この場合、Clイオンの半径よ
りもOHイオンの半径が極めて小さいために、OHイオンの
回りにあるNaイオンとOHイオンの間の原子間バネ定数
は、本来的なNaイオンとClイオン間の原子間バネ定数よ
りも大幅に弱まる。このため、OHイオンの振動励起エネ
ルギー、即ち固有振動数ωは大幅に低下する。なお、固
有振動数ωは、ω=√(k/m)(k;ボルツマン定
数、m;は質量数)で求められる。
【0021】このように、NaCl結晶中のOHは低エネルギ
ー振動励起を有するようになる。この際の振動励起のポ
テンシャルエネルギーEはE=kx2 /2(x;波数)
で、エネルギー準位の間隔ΔはΔ=4πhωであり、光
の波数に対して2〜3cm-1である(図2)。そして、こ
のエネルギー準位の間隔Δは結晶格子の歪みに対して敏
感に変化することが知られている。
【0022】このように低エネルギー励起が存在し、そ
れが結晶格子歪みに対して敏感である場合に、図3に示
すような超音波速度Vと温度Tとの関係を示すV−T曲
線はその励起エネルギーに対応する温度のところでディ
ップ状の急峻な落ち込み、即ち音速異常が発生する。な
お、縦軸は試料を通過しない超音波の速度V0 と試料を
通過する超音波の速度Vの相対音速V/V0 を示してい
る。
【0023】例えばOHイオンに起因する励起エネルギー
がEであるとするなら、大まかにはE=kT1 を満たす
ような温度T1 のところでV−T特性はディップ状の落
ち込みが現れ、音速異常を生じる。そして、この落ち込
みの大きさ、即ちディップの深さδが不純物欠陥の濃度
に比例する。逆にいえば、ディップを生じる温度T1
ら励起エネルギーを知ることができ、その値からそのよ
うな低エネルギー励起を有する欠陥の大まかな特定も可
能になる。 (3)以上のことから、シリコン結晶中の固有点欠陥、
特に原子空孔がある場合にも図1(b) に示すような空孔
に繋がるシリコンの原子バネ定数も低下するので、その
空孔濃度を検出するためにV−T曲線を測定することが
有効なことがわかる。
【0024】FZ法により成長したシリコン結晶の酸素
濃度は極めて少ないので、V−T曲線上に音速異常が現
れれば、それは固有点欠陥、特に原子空孔によるもので
あると判断できる。そして、FZ法により成長したシリ
コン結晶のV−T極性を測定した結果、図4に示すよう
な特性が得られた。そのシリコン結晶は10Ωm以下で
ある。
【0025】これは、零磁場下において、10MHzの
縦波超音波を用いて測定したものである。測定温度の下
限、即ち最低到達温度は0.35Kである。欠陥が全く
無い場合(完全結晶)の正常なV−T曲線を破線で示し
てある。10〜2Kの温度領域に緩やかな窪みがあり、
更に、2K以下で僅かであるが鋭い落ち込み(音速異
常)がある。これが、固有点欠陥によるものである。
【0026】図3の10K以下の部分を拡大したのが図
5である。この測定結果によれば、2K以下の鋭い落ち
込みは、この場合の最低温度0.35Kにおいてもまだ
底をついておらず、零磁場下における落ち込み(音速異
常)のミニマム点温度は、0.35K以下となる。しか
し、これだけでは正確な落ち込み量の底がわからず、正
確な固有点欠陥濃度の測定はできないことになる。
【0027】そこで、次のような方法により正確な落ち
込み量を測定できることを見いだした。 (4)シリコン結晶中の固有点欠陥、特に原子空孔は低
エネルギーのトンネル励起(等価なヤーン−テラー歪み
の間のトンネル運動)と同時に電子スピンや軌道角運動
量による磁気モーメントを有するという特徴を持つ。
【0028】この低エネルギーのトンネル励起は、結晶
格子の歪みに対して敏感であると考えられる。トンネル
励起の励起エネルギーはわかっていないが、1cm- 1
下と相当に低いと思われる。従って、V−T曲線上で固
有点欠陥によるディップ状の急峻な落ち込み(音速異
常)が現れるとすれば1K以下の温度である。
【0029】シリコン結晶中の固有点欠陥、特に原子空
孔は磁気モーメントを持つために、外部磁場を印加する
と、トンネル励起準位のサブレベルとしてゼーマン準位
が発生する。即ち、零磁場状態で角運動(磁気モーメン
ト)に関して縮退していた準位が、磁場を印加すること
によりゼーマン分裂する。この様子を図6に模式的に示
す。
【0030】ようするに、シリコン結晶中の固有点欠
陥、特に原子空孔は、低エネルギーのトンネル励起およ
び磁気的な励起のために、格子歪みと磁場に対して敏感
に官能するエネルギー準位をもつことになる。このた
め、V−T曲線上において温度が1K以下でディップ状
の落ち込み(音速異常)が現れ、この強度(ディップ深
さ)やディップ温度が磁場依存性を示せば、それは固有
点欠陥、特に原子空孔によるものである可能性が高い。
【0031】図7は、同様な測定を3テスラの磁場印加
下で行った場合のV−T曲線を0.35〜1.8 以下の温
度範囲で示したものである。零磁場条件の図5に比べ
て、図4では磁場印加があるために、ディップミニマム
点温度は0.41Kまで動いてきている。このように、
V−T曲線の落ち込みのミニマム点温度が磁場依存性を
示すことは、落ち込みの原因が固有点欠陥によるもので
あるとした上記の考えを支持するものである。
【0032】図5と図7から、温度を固定して磁場Hの
強さを変えた場合にも相対音速V/V0 は強い磁場依存
性を示すことが推定できるが、実際に温度を0.52K
(零磁場状態では落ち込みが始まっている温度)に固定
して、磁場Hを変えた場合の音速−磁場曲線(V−H曲
線)は、図8のように強い磁場依存性を示す。以上のこ
とから、次の手順を踏んで固有点欠陥濃度を求めること
ができる。
【0033】即ち、まず、零磁場下においてV−T曲
線を測定し、2K以下の落ち込みがあることを確認し、
次に、その落ち込みが、数テスラの磁場印加によって
高温側にシフトすることを確認し、そして、 図4の
ようにディップ状の落ち込みの全貌が見えたところで、
ティップの深さから固有点欠陥濃度を比例換算によって
求めるようにする。
【0034】その他、次のようにして固有点欠陥濃度を
求めてもよい。 (i) まず、一定温度(例えば図4のように0.5K程
度)に固定し、一定磁場(例えば図4のように3テスラ
程度の磁場)をかけて、図4に示すようにディップ状の
落ち込みの全貌が捉えられるようにしておく。次に、(i
i)ディップの深さから固有点欠陥濃度を比例換算により
求める。そして、(iii) 磁場を変えて(例えば零磁場に
して)、音速低下量が変化することを確認する。
【0035】なお、上記した2つの方法のうちの一部を
省略してもよく、例えばと、又は(i) 、(ii)だけで
も十分である。なお、上述のような超音波音速異常が発
生する場合には、同様な温度、磁場印加の下で、超音波
吸収が増大する超音波吸収異常が発生することが、クラ
マース−クローニーヒ関係式から一般に期待されるの
で、上記と同じ測定条件で、音速の代わりに音波吸収を
測定しても目的を達成できる。(5)次に、本発明に係
る結晶中の不純物濃度測定装置の一実施例を説明する。
【0036】図9は、不純物濃度測定装置を全体的に示
す断面図である。図9に示すように、結晶中の不純物濃
度測定装置は、低温クライオスタット1、試料測定箱4
及び測定棒5を備えている。低温クライオスタット1の
低温槽は3つの槽からなり、外側の真空槽11は外界と
内部との熱接触を遮断するためロータリーポンプで減圧
さている。中間の液体窒素槽12とその内側の液体ヘリ
ウム槽13は冷媒槽であり、それぞれ液体窒素と液体ヘ
リウム3(3He)が充満されている。そして、液体窒素槽
12の内部は液体窒素温度(約77.34K)まで低下
され、さらに液体ヘリウム槽13の内部は液体ヘリウム
温度(3.195K)まで低下されることになるが、ポ
ンピングによって0.35Kまでは到達可能である。
【0037】そして、液体ヘリウム槽13の中に測定棒
5が挿入され、その測定棒5の下端には円筒形状の試料
測定箱4が位置している。測定棒5の上端からは、図1
0に示すような超音波パルス発生装置31に接続される
ケーブル31bと、超音波パルス検出装置32に接続さ
れるケーブル32bと、試料測定箱4内の結晶試料2の
温度を制御するための図示しない温度制御装置にヒータ
線14を接続するケーブル14bと、抵抗温度計15に
接続されるケーブル15bとが引き出されている。
【0038】図10は、測定棒5の下端に収納される試
料測定箱4の断面とこれに接続される装置を示す構成図
である。試料測定箱4は、基台4a及び円筒形状のハウ
ジング4bから構成され、ハウジング4bは取外し可能
にされていて、結晶シリコンなどの結晶試料2の取替え
などが簡単に行えるように構成されている。
【0039】また、ハウジング4bの外周には、ヒータ
線14が巻かれ、このヒータ線14はケーブル14bで
不図示の温度制御装置に接続され、この温度制御装置に
より試料測定箱4内の温度を電気的に連続的に可変制御
できるようになされている。その可変範囲は、液体ヘリ
ウム3を使用する場合には0.35〜10Kであり、さ
らに他の冷却媒体を使用する場合に0〜10Kの範囲に
入る又はその範囲を含む温度制御もできる。
【0040】さらに、試料測定箱4内では、超音波パル
スを発生するための第一のピエゾ素子超音波トランスデ
ューサ31aと、超音波パルスの音速を検出するための
第二のピエゾ素子超音波トランスデューサ32aとが対
向して配置され、これらの間に結晶試料2を挟んで固定
するようになされている。そして、第一のピエゾ素子超
音波トランスデューサ31aにはケーブル31bを通し
て超音波パルス発生装置31で発生させたパルス信号が
印加され、第一のピエゾ素子超音波トランスデューサ3
1aはその圧電効果によりパルス信号を超音波振動に変
換して結晶試料2の一端を振動させる。また、結晶試料
2内を伝わってその他端に到達した超音波振動は第二の
ピエゾ素子超音波トランスデューサ32aに伝わる。さ
らに、第二のピエゾ素子超音波トランスデューサ32a
は、その超音波振動を圧電効果により電気的パルスに変
換し、ケーブル32bを介して超音波パルス検出装置3
2にパルス信号を出力するようになされている。
【0041】これにより、結晶試料2を伝達して第一の
ピエゾ素子超音波トランスデューサ31aから第二のピ
エゾ素子超音波トランスデューサ32aに伝わった超音
波パルスのと相対音速V/V0 の測定は、超音波パルス
発生装置31で発生されたパルス信号と超音波検出装置
32で検出されたパルス信号とを比較して行われ、例え
ば、位相差を検出する位相比較法によって行われる。
【0042】位相比較法は、図11に示すように、結晶
試料2を介さないで伝達して検出されるパルス信号、即
ちパルス発生装置31で発生したパルス信号を参照波と
し、結晶試料2を通過して検出されたパルス信号をその
参照波と比較して超音波の遅れを調べる方法であって、
参照波と試料通過波のそれぞれのパルス波によって描か
れる包絡線内の得定番目(n番目;nは整数)の波の振
幅零となる点を位相の比較点として音速の遅れを調べる
方法である。
【0043】超音波パルスは、中心周波数が少なくとも
10kHz 〜1GHz の周波数範囲内のものを使用する。と
ころで、図10に示すように、結晶試料2を配置する場
所の周囲には、銅などの高い熱伝導性の金属より形成さ
れたホルダー41が配置され、これにより結晶試料2の
温度分布が一様になされる。このホルダー41には抵抗
温度計15の温度検出部15aが取り付けられ、ホルダ
ー31の温度(略、結晶試料2の温度と等しい)を検出
して結晶試料2の温度を制御できるようになされてい
る。
【0044】このような試料測定箱4を有する冷却装置
は、図示しない超伝導磁石の間に挿入され、この磁石に
よって少なくとも0〜10テスラの磁場を連続的に変化
させて印加できるようになっている。以上のような装置
によって、図4、図5、図7に示すような音速測定結果
が得られた。3テスラの磁場印加の下で得られた図7の
V−T曲線の落ち込み量から、比例換算によって固有点
欠陥の濃度を求める。落ち込み量と固有点欠陥の濃度と
が比例するからである。
【0045】図4のV−T曲線の落ち込み量は、0.0
0005であり、1ppm の固有点欠陥濃度に対して、
0.001の相対音速低下があるとすれば、この落ち込
み量から、固有点欠陥の濃度は約0.05ppmと見積も
られる。なお、上記した結晶欠陥測定方法は、シリコン
結晶の固有点欠陥を調べる方法に限定されるものではな
く、その他の単結晶の欠陥を調べる場合にも当然適用で
きる。
【0046】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、冷却
しながら結晶試料に外部磁場を印加しかつ超音波を通過
させて、結晶試料での超音波音速変化又は超音波吸収変
化と試料冷却温度との関係を測定するようにしているの
で、格子歪と磁場に対して敏感に官能するエネルギー準
位を持つ結晶試料の固有点欠陥の濃度を調べるために測
定するV−T曲線には、磁気印加によって深さや発生温
度が変化するディップが生じることになり、固有点欠陥
濃度が容易に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶中のNaCl結晶とSi結晶の原子結合状態を示
す図である。
【図2】二次元のエネルギーバンドを示す図である。
【図3】結晶における超音波速度と温度との関係を示す
特性図である。
【図4】本発明における零磁場下での試料温度と超音波
相対速度の関係を示す特性図である。
【図5】図4に示した試料温度・超音波相対速度特性図
の拡大図である。
【図6】磁気モーメントと結合したトンネル励起のエネ
ルギー準位を示す図である。
【図7】本発明における磁場印加下での試料温度と超音
波相対速度の関係を示す特性図である。
【図8】本発明の温度を一定に保持した状態での試料印
加磁界と超音波相対速度の関係を示す特性図である。
【図9】本発明の結晶中の不純物測定装置の一実施例を
全体的に示す断面図である。
【図10】本発明の結晶中の不純物測定装置の一実施例
の要部を示す断面図である。
【図11】本発明に用いる位相比較法を説明する波形図
である。
【符号の説明】
1 低温度発生手段 2 結晶試料 4 試料測定箱 5 測定棒 11 真空槽 12 液体窒素槽 13 液体ヘリウム槽 14 ヒータ線 15 抵抗温度計 31 超音波パルス発生装置 32 超音波パルス検出装置

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶試料(2)に外部磁場を印加し、冷却
    しながら該結晶試料(2)に超音波を通過させて、該結
    晶試料(2)での超音波音速変化又は超音波吸収変化と
    結晶試料冷却温度との関係を測定することを特徴とする
    結晶欠陥測定方法。
  2. 【請求項2】前記結晶試料(2)での超音波音速変化又
    は超音波吸収変化と前記結晶試料(2)の冷却温度との
    関係を示す曲線の急峻な落ち込み量に基づいて固有点欠
    陥濃度を求めることを特徴とする請求項1記載の結晶欠
    陥測定方法。
  3. 【請求項3】前記外部磁場の強度が少なくとも0〜10
    テスラの範囲にはいることを特徴とする請求項1記載の
    結晶欠陥測定方法。
  4. 【請求項4】前記冷却温度は少なくとも0〜10Kの範
    囲に入ることを特徴とする請求項1記載の結晶欠陥測定
    方法。
  5. 【請求項5】前記超音波は、中心周波数が10KHz 〜1
    0GHz の範囲にある超音波パルスを用いることを特徴と
    する請求項1記載の結晶欠陥測定方法。
  6. 【請求項6】前記超音波速度の測定には参照波と試料通
    過波の特定番目のパルスの位相差を検出する位相比較法
    を使用することを特徴とする請求項1記載の結晶欠陥測
    定方法。
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