JPH07114104B2 - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

電子放出素子及びその製造方法

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JPH07114104B2
JPH07114104B2 JP10248588A JP10248588A JPH07114104B2 JP H07114104 B2 JPH07114104 B2 JP H07114104B2 JP 10248588 A JP10248588 A JP 10248588A JP 10248588 A JP10248588 A JP 10248588A JP H07114104 B2 JPH07114104 B2 JP H07114104B2
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J2201/00Electrodes common to discharge tubes
    • H01J2201/30Cold cathodes
    • H01J2201/316Cold cathodes having an electric field parallel to the surface thereof, e.g. thin film cathodes
    • H01J2201/3165Surface conduction emission type cathodes

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は電子放出素子詳しくは表面伝導形電子放出素子
及びその製造方法に関するものである。
[従来の技術] 従来、簡単な構造で電子の放出が得られる素子として、
例えば、エム アイ エリンソン(M.I.Elinson)等に
よって発表された冷陰極素子が知られている。[ラジオ
エンジニアリング エレクトロン フィジィッス(Ra
dio Eng.Electron.Phys.)第10巻,1290〜1296頁,1965
年] これは、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平
行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利
用するもので、一般には表面伝導形放出素子と呼ばれて
いる。
この表面伝導形放出素子としては、前記エリンソン等に
より開発されたSnO2(Sb)薄膜を用いたもの、Au薄膜に
よるもの[ジー・ディトマー“スイン ソリド フィル
ムス”(G.Dittmer:“Thin Solid Films"),9巻,317頁
(1972年)],ITO薄膜によるもの[エム ハートウェル
アンド シー ジー フォンスタッド“アイ イー
イー イー トランス”イー ディー コンファレンス
(M.Hartwell and C.G.Fonstad:“IEEE Trans.ED Con
f.")519頁,(1975年)],カーボン薄膜によるもの
[荒木久他:“真空",第26巻,第1号,22頁,(1983
年)]などが報告されている。
これらの表面伝導形放出素子の典型的な素子構成を第11
図に示す。同第11図において、16および17は電気的接続
を得る為の電極、18は電子放出材料で形成される薄膜、
19は基板、20は電子放出部を示す。
従来、これらの表面伝導形放出素子に於いては、電子放
出を行う前にあらかじめフォーミングと呼ばれる通電処
理によって電子放出部を形成する。即ち、前記電極16と
電極17の間に電圧を印加する事により、薄膜18に通電
し、これにより発生するジュール熱で薄膜18を局所的に
破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態
にした電子放出部20を形成することにより電子放出機能
を得ている。
上述、電気的に高抵抗状態とは、薄膜18の一部に0.5μ
m〜5μmの亀裂を有し、且つ亀裂内が所謂島構造を有
する不連続状態膜を云う。島構造とは一般に数十Åから
数μm径の微粒子が基板19にあり、各微粒子は空間的に
不連続で電気的に連続な膜を云う。
従来、表面伝導形電子放出素子は上述高抵抗不連続膜に
電極16,17により電圧を印加し、素子表面に電流を流す
ことにより、上述微粒子より電子放出せしめるものであ
る。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記の様な従来の通電によるフォーミン
グ処理は、本質的には通電のジュール熱による膜の部分
的な破壊又は変質そのものなので、以下のような欠点が
あった。
1)電子放出部となる島構造の設計が不可能な為、素子
の改良が難しく、素子間のバラツキも生じやすい。
2)島構造の寿命が短かく且つ安定性が悪く、また外界
の電磁波ノイズにより素子破壊も生じやすい。
3)フォーミング工程の際に生じるジュール熱が大きい
為、基板が破壊しやすくマルチ化が難しい。
4)島の材料が金、銀、SnO2、ITO等に限定され仕事関
数の小さい材料が使えない為、大電流を得ることができ
ない。
5)素子製造にフォーミング工程を有する為に素子形状
が限定される。
[発明の目的] 以上のような問題点があるため、表面伝導形放出素子
は、素子構造が簡単であるという利点があるにもかかわ
らず、産業上積極的に応用されるには至っていなかっ
た。
本発明は、上記の様な従来例の欠点を除去するためにな
されたものであり、前記の如き従来のフォーミングと呼
ばれる処理を施すことなく、フォーミング処理により得
られる電子放出素子と同等以上の品質を有し、特性のば
らつきが少なく、しかも特性の制御が可能であり、かつ
電子放出部の位置も制御できる新規な構造を有する電子
放出素子及び該素子の製造方法を提供することを目的と
するものである。
[課題を解決するための手段および作用] 本発明は、相対向する電極間に絶縁層を有し、該絶縁層
に導電性の微粒子が分散配置されていることを特徴とす
る電子放出素子を提供するものである。
本発明の電子放出素子において、該電極間に電流を流す
と、導電性の微粒子より電子が放出されるのである。
ただし、現在のところ、本発明において電極間に電流が
流れるメカニズムは解明されていないが、絶縁体膜の表
面を流れる説、または絶縁体中に存在する不純物準位の
ホッピング説などが考えられる。
上述のような本発明の素子構造をとることにより、前記
従来例の問題点を解決するばかりでなく、低電力で高密
度の放出電流が得られる電子放出素子を提供できる。
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は、本発明による電子放出素子の第一実施形態を
示す斜視図である。
同図においてガラス等の基板1上に絶縁層6、更にその
上に電圧印加用の低抵抗体からなる電極2および3が微
小間隔をおいて設けられ、その間に微粒子5が分散され
た不連続な電子放出部4が形成されている。また不図示
であるが、電子放出部の上面に間隔を取って、放出され
た電子を引き出す為の引き出し電極を設けてある。真空
中で電極2,3間に電圧を印加する(この電圧をVfとす
る)ことにより、電極間に電流が流れ(If)、引き出し
電極を+側として電圧を印加すると、電子放出部4より
ほぼ紙面に垂直方向に電子を放出するものである。(こ
の電子放出の電流をIeとする。) 第2図及び第3図は第1図のAB方向の模式的断面図であ
る。同図において、基板1上の微粒子は粒径が数十Å〜
数μmで、さらに各微粒子間の間隔が数十Å〜数μmの
範囲内で形成されるとよい。
本発明で用いられる微粒子の材料は非常に広い範囲にお
よび通常の金属、半金属、半導体といった導電性材料の
殆ど全てを使用可能である。なかでも低仕事関係で高融
点かる低蒸気圧という性質をもつ通常の陰極材料や、ま
た従来のフォーミング処理で表面伝導形電子放出素子を
形成する薄膜材料や、2次電子放出係数の大きな材料な
どが好適である。
こうした材料から必要とする目的に応じて適宜材料を選
んで微粒子として用いることにより、所望の電子放出素
子を形成することができる。
具体的にはLaB6,CeB6,YB4,GdB4などの硼化物、TiC,ZrC,
HfC,TaC,SiC,Wcなどの炭化物、TiN,ZrN,HfNなどの窒化
物、Nb,Mo,Rh,Hf,Ta,W,Re,Ir,Pt,Ti,Au,Ag,Cu,Cr,Al,C
o,Ni,Fe,Pb,Pd,Cs,Baなどの金属、In2O3、SnO2,Sb2O3
どの金属酸化物、Si,Geなどの半導体、カーボン,AgMgな
どを一例として挙げることができる。なお本発明は上記
材料に限定されるものではない。さらに、また、本発明
では上述の材料のうち異なる物質を選び、目的に応じ
て、少なくとも2種以上の異なる物質の微粒子を分散さ
せてもよい。
次に第1図で示した素子の製造方法を以下に示す。
第4図〜に各製造工程中の素子断面図を示してあ
る。
ガラス、セラミック等から成る基板1の表面の脱脂
及び洗浄を行う。
基板1の表面に液体コーティング焼成法や印刷焼成
法、真空堆積法等により、低融点ガラスから成る絶縁層
6を成膜する。低融点ガラス材としては、基板1の材料
の歪点温度よりも軟化点温度が低く、かつ基板と熱膨張
係数が近似しているものがよい。一般に酸化鉛系の低融
点ガラスは軟化点が400℃前後にあり熱膨張係数も一般
的に使用されるソーダライムガラス基板の熱膨張係数に
近似している。該絶縁層6の厚みは数10Åから数10μm
程度の範囲で形成されるとよい。
で得た絶縁層の上に真空堆積法及びフォトリソエ
ッチング法又はリフトオフ法、あるいは印刷法等により
電極2,3を形成する。電極材としては、一般的な導電性
材料、Au,Pt,Ag等の金属の他SnO2,ITO等の酸化物導電性
材料でも使用できる。電極2,3の厚みは数100Åから数μ
m程度が適当であるが、この数値に限るものではない。
また電極間隔Lの寸法は電極対向間隔が数100Åから数1
0μmが手伊藤であり、間隔幅Wは数μmから数mm程度
が適当である。しかしこの寸値に限るものではない。
次にで得た電極ギャップ部へ微粒子5を塗布す
る。塗布には微粒子の分散液を用いる。酢酸ブチルやア
ルコール等から成る有機溶剤に微粒子及び微粒子の分散
を促進する添加剤を加え、撹拌等により、微粒子の分散
液を調整する。この微粒子分散液を試料表面にディッピ
ングやスピンコート等の方法により塗布し、溶媒等が蒸
発する温度、例えば250℃で10分程度仮焼成を行う。こ
れにより微粒子が電極間隔L中の絶縁層6の表面に配置
される。もちろん微粒子5は試料全面に配置されるが、
電子放出に際し電極間隔L部以外の微粒子5は実質的に
電圧が印加されないため、何ら支障をきたさない。従っ
て図面上図示していない。微粒子5の配置密度は塗布条
件、及び微粒子分散液の調整により変化し、これに合わ
せて電極間隔Lに流れる電流量も変化する。で得た電
極ギャップ部へ微粒子5を分散させる方法としては、上
述の塗布形成の他にも、例えば有機金属化合物の溶液を
基板上に塗布した後、熱分解によって金属粒子を形成す
る手法もある。また蒸着可能な材料については、基板温
度等の蒸着条件の制御やマスク蒸着等の蒸着的手法によ
っても微粒子を形成することができる。
この後までの工程で得られた試料を絶縁層6であ
る低融点ガラスの軟化点以上の温度、例えば酸化鉛系の
低融点ガラスであれば450℃に加熱、約20分程度焼成を
行う。これにより低融点ガラスから成る絶縁層6上に配
置された微粒子5は低融点ガラス内に侵入し、結果とし
て絶縁層6に包含されるか又は少なくとも一部が絶縁層
6より露出する程度に侵入、固定される。
微粒子5を絶縁層6中に全て包含した状態にするか、又
は表面は露出した状態で、一部のみ絶縁層6中に侵入し
た状態にするかは、工程における焼成温度を選択する
ことによって調整することができる。
焼成温度が高い程微粒子5は絶縁層6内に深く侵入し包
含、固定されやすい。また焼成温度が低いと、微粒子5
は絶縁層6内に侵入しにくく、露出した形で固定されや
すい。
Pd等前述の具体例で示した材料には、前記工程で加熱
した結果、該材料の表面が酸化膜でおおわれてしまい、
その結果、電極間隔Lに流れる電流量が減少してしまう
場合もあるので、必要に応じて酸洗いをし、酸化膜を除
去する工程を導入してもよい。
さらに本発明では微粒子5を絶縁層6内に完全に含有さ
せた後、エッチング処理を行い微粒子の一部を露出させ
て素子を形成してもよい。
第4図で示す作成工程で形成した素子の他にも、以下に
述べる方法で形成した素子も従来のフォーミング処理が
ほどこされた素子に比べかなり改善された電子放出素子
とすることができる。
その1例を第5図および第6図(a),(b)に示す。
第5図の製造工程を説明する。
基板1上に電極2,3を形成し、その上に微粒子分散液、
又は有機金属化合物溶液に低融点フリットガラスを混合
調整した分散液を電極間隔部L付近に塗布し、低融点フ
リットガラスの軟化点温度以上で焼成を行い、微粒子を
低融点ガラスから成る絶縁層7に包含または、少なくと
も一部を露出させ固定する。この時、焼成温度を高く設
定(例えば650℃)すると絶縁層7は平坦化し、連続し
た膜とすることができる。
該図においては、絶縁層7の膜厚は数10Å〜数μm程度
で形成されるのが好ましい。
この時、低融点フリットガラスの代りに液体コーティン
グ絶縁層(例えば、東京応化OCD,SiO2絶縁層)を用いて
もよい。
また、液体コーティング絶縁層を用いる場合、本発明の
電子放出素子を以下のようにして得ることもできる。ま
ずガラスやセラミックス等から成る基板1上に微粒子5
を含んだ絶縁層6を液体コーティング法により堆積させ
る。つまり微粒子を液体コーティング剤等に混合、分散
させて基板上にスピンコート又はディッピングコート等
により塗布、焼成することによって得られる。
次に絶縁層6上に真空堆積法等前述の方法で電極を形成
して電子放出素子とする。
該方法によると、微粒子は、絶縁膜を得る液体の絶縁層
材料に混合、分散した状態で、基板上に塗布されるた
め、塗布、焼成後も絶縁膜を得る絶縁層材料の塗布膜中
に良好に分散されたままである。従って微粒子は、凝集
が少なく均一に絶縁層材料によって得られる絶縁層中に
分散される。
また、本構造では、まず、基板上に微粒子を含む絶縁層
を形成するために、通常絶縁層形成前の基板表面は均一
面であり特別なパターンや凹凸はない。従って均一面に
微粒子を含む絶縁層を塗布、焼成するために、パターン
や凹凸部での塗布むらによる、膜厚や微粒子分散の不均
一性がなく、微粒子が分散された支持体層を基板表面上
へ均一に形成することができる。このように均一な絶縁
層を得ることによって、多数個の電子放出素子を同一基
板上に設けた場合の素子特性のバラツキ等が小さくでき
る。
また、絶縁層を液体コーティング法により堆積させた
後、絶縁層上の表面をエッチングし、第3図に示すよう
に微粒子の一部を突出させてもよい。ただ、この場合該
方法で微粒子含有絶縁層を形成されていると、微粒子の
分散状態は絶縁層の厚み方向でも均一であるから、エッ
チング量を変えても基本的に同様な微粒子が突出した面
を得ることができる。従って該エッチング工程で広い範
囲の条件設定が可能となる。
さらに、本構造では例えば液体の絶縁層材料による酸化
物系絶縁層形成時に、400℃程度以上の空気中熱処理工
程が必要となるが、絶縁層形成熱処理を電極形成前に行
うために、電極自体は熱処理工程を経ない。従って電極
の熱酸化や絶縁層との熱拡散等を考慮する必要がなく、
電極材料の選択幅を広げることができる。
つまり、前述の通常使用される電極材料以外でも、例え
ばCu,Al,Ni,Pd,W,Ta,Mo,Cr,Ti等の電極材料で好適に使
用可能である。よって耐電圧性、耐熱性、加工性、耐酸
化性、寿命、比抵抗、取り出せる電流量等の各条件に応
じ適宜選択すればよい。該絶縁層の材料としては、例え
ばSiO2,MgO,TiO2,Ta2O5,Al2O3等、あるいはこれらの積
層物や混合物が挙げられる。膜厚は10Å程度から数μm
程度で、微粒子6が分散され固定される厚みであれば良
い。
又、第6図に示す構造を有する電子放出素子でもよい。
第6図の電子放出素子は、絶縁層7の低融点フリットガ
ラスを混合調整した微粒子分散液を塗布した後(ここで
は第5図で説明したのと同様に行う)、焼成温度をやや
低く設定して(例えば500℃ぐらい)、絶縁層8を不連
続な島状の膜とする。
第6図に示す電子放出素子は、図でも示されている通
り、電極間隔部Lを絶縁層8が完全に覆っていないため
に、電極2,3の電極間隔部L側の電極端、すなわち最も
高電界が発生する部分と絶縁層8の表面及び膜内が接続
された形となっている。このため、電流経路の自由度が
大きくなり、第5図の素子より、より電極間を流れる電
流量を増加させることができる。
第5図の電子放出素子も第6図の電子放出素子も、絶縁
層と微粒子の形成を同時に行えるので、製造工程の簡易
化が図れるという利点がある。
更に、本発明の電子放出素子は第7図に示される構造を
有する素子であってもよい。
第7図中、1は基板、2,3は電極、5は微粒子、9は絶
縁層を示す。
次に第7図で示した素子の製造方法を以下に示す。
第8図1)〜5)に各製造工程中の素子断面図を示して
ある。
1)ガラス、セラミックス等から成る基板1の表面の脱
脂及び洗浄を行う。
2)第4図のと同様にして電極2及び3を形成する。
3)第4図の工程と同様にして微粒子を分散する。
4)絶縁層9をEB蒸着法、スパッタ法やプラズマCVD
法、熱CVD法等の真空堆積法等の手法により形成させ
る。該絶縁層9の材料としては、SiO2,Al2O3の様な酸化
物、Si3N4の様な窒化物、SiC,TiCの様な炭化物の他、真
空堆積又は溶液塗布焼成で得られるガラスやポリイミド
のような有機高分子絶縁膜等が使用できる。又、該層9
の膜厚は数十Å〜数μmであるとよい。この時、一般に
絶縁層9は微粒子5の表面にも堆積し、微粒子5の粒径
で凸部を作るように堆積される。
以上、1)〜4)の工程で作製した電子放出素子は、従
来のフォーミング素子に比べ、はるかに優れた特性を有
する素子とすることができる。本発明の電子放出素子は
1)〜4)の工程で得た素子でも充分、良い特性を示す
が、しかし、以下の5)の工程をさらにほどこした素子
は、絶縁層の堆積厚みと、エッチング量の調整により絶
縁層に固定された微粒子の露出程度を調整することがで
き、ひいては電極間の電流制御、並びに電子放出量の制
御が可能となるので、より好ましい。
5)4)で得られた絶縁層9の凸部表面にエッチングを
する。例えば、試料を斜めにセッティングした状態でイ
オンミーリング等を行うと、絶縁層9の凸部表面がエッ
チングされる。すると、エッチングされた部分は絶縁層
9から微粒子5の一部が露出し、かつ絶縁層9で固定さ
れた構造となる。
さらに上記1)〜5)工程において、絶縁層9の材料を
低融点ガラスとし、第8図5)の工程の後、低融点ガラ
スの軟化点温度以上で試料を焼成することにより、微粒
子5をさらに強力に低融点ガラスから成る絶縁層9に固
定することができる。これによりさらに安定した電子放
出素子を提供することができる。
また本発明の電子放出素子は第9図(a),(b)及び
第10図(a),(b)に示すものであってもよい。
第9図(a)は本発明の電子放出素子を説明する平面
図、第9図(b)は同(a)図の断面図である。12は多
孔質ガラス中にAg,Ba,Pb,W,Sn等の金属13あるいはBaO,P
bO,SnO2等の金属酸化物13などを析出せしめた基板であ
る。10と11は基板上に設けた電極である。
上記多孔質ガラスはコーニングガラス社のバイコールガ
ラスや旭硝子社の多孔質ガラスMPGが使用でき、その孔
径としては40Åから50μmのもの、さらに好ましくは孔
径が100Åから0.5μmのものを用いる。該孔径と等しい
か、又はそれ以下の金属あるいは金属酸化物の微粒子が
孔径内に析出される。また本実施例は多孔質ガラスに限
定されるものではなく、ガラス表面を弗化水素水で粗ら
したものや、その他のポーラス状絶縁基板でも実施でき
る。
金属を多孔質ガラスの孔中に析出固定させるには、通常
よくつかわれる方法、例えばAgNO3,Ba(NO32,PbNO3
の硝酸塩水溶液あるいは硫酸水溶液をポーラスガラスに
含浸させ、乾燥後、還元雰囲気中で焼成させることによ
り得ることができる。金属酸化物を析出させるには、析
出した金属を酸素雰囲気中で適当な温度で焼成させれば
良い。
多孔質ガラスの表面から金属あるいは金属酸化物を突出
させる時には、ガラス表面を5%弗酸溶液で1分間処理
し、水洗、乾燥させればよい。それにより、所望の基板
12が作成できる。
上記基板12は、多孔質ガラスの表面が粗れている為、厚
さ0.5μm以上形成させるとより好ましい。
第10図(a)は本発明のさらに別の電子放出素子を説明
する平面図、第10図(b)は同(a)図の断面図であ
る。
14は金,銀,白金等の金属コロイド微粒子15を含有する
ガラスで、通称着色ガラスと呼ばれるガラス基板であ
る。10あるいは11は基板上に設けた電極である。
着色ガラス内の金属コロイド微粒子の粒径は20Å〜6000
Åが適当で、さらには100Å〜2000Åが望ましい。又、
微粒子の密度は粒径や微粒子の材料にも異なるが、空間
的に離れていて駆動電圧付近で電気的に接続のある状態
が適当である。このような着色ガラスをつくるには、通
常よく使われる技術、即ち、ガラス主成分中へAuCl3,Ag
NO3の着色剤原料を溶解し、これを温度600℃〜900℃で1
0〜20分間熱処理し、金コロイド,銀コロイドの微粒子
をガラス中に析出させる方法で容易に製造することがで
きる。このような通常方法でつくられた基板は金属微粒
子がほとんどガラス表面から析出していないので、電極
を形成する基板表面の平滑性は優れている為、該素子は
電極の厚さを薄くできる等の利点がある。
又、該素子において、金属微粒子をガラス中に析出した
後、前述の第9図で説明した素子と同じように、弗化水
素水により基板表面を処理し、金属コロイドをガラス基
板表面より多数突出させても本発明の目的とする効果は
得られる。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
[実施例] 実施例1 第1図の構成において、ソーダライムガラス基板1上
に、厚み約1μmの酸化鉛系低融点ガラスコーティング
膜の絶縁層6を形成した。
さらにその上に厚み1000Å、L=0.5μm、W=300μm
のPt電極2,3を形成し、該電極間に微粒子5として直径
数100ÅのPdを分散配置した。
Pd微粒子は有機パラジウム化合物をPd金属換算比率で0.
3%程度含む酢酸ブチル溶液(奥野製薬工業製キャタペ
ーストCCP−4230)を用いてスピンコート(300rpm、5
回塗布)して250℃で加熱処理した。そして450℃,20分
焼成し、微粒子5を絶縁層6中に含有せしめた。
ここで電極間隔部Lに流れる電流量は5μA/5V程度であ
った。この試料を5%〜10%Vol%のHCl水溶液で酸洗い
を行うと、電流量は250μA/5Vとなった。
以上の工程により作製された試料を10-5Torr以上の真空
下に置き、先に述べたように電極2,3間に電圧を印加す
ると電流Vfが絶縁層6の表面又は、内部及び微粒子5を
介して流れ、引き出し電極(不図示)を+側として電圧
を印加すると安定した電子放出が確認された。さらに酸
洗いをしない試料に関しても電子放出は確認された。
本実施例において作製した電子放出素子の各測定結果を
表1に示す。放出電流のゆらぎは1×10-3Hz以下の放出
電流の変化量ΔIeを放出電流Ieで除して100倍した値、
つまり とする。
上記結果は、従来技術であるフォーミングを必要とする
ITO材から成る表面伝導形電子放出素子の測定結果(素
子の駆動電圧20V、放出電流1.2μA、効率5×10-3、寿
命35時間、放出電流のゆらぎ20〜60%)と比較して、以
下のようにいえる。
本実施例の電子放出素子は安定で寿命が長く、電子放出
効率が高い特性を示している。
実施例2 実施例1における450℃,20分焼成を490℃,2時間完全に
焼成することにかえた他は、全て同様の実験を行った。
上記実験により得られた素子は、微粒子5が絶縁層6中
に全て侵入し、包含された素子(第2図)となる。
この電子放出素子に実施例1と同様の測定を行ったとこ
ろ、実施例1と同様な電子放出を得ることができたが、
さらに寿命はのびる方向に、放出電流のゆらぎは少なく
なる傾向にあった。
すなわち、本実施例2のように微粒子を絶縁層内に包含
させた電子放出素子では、第1の実施例の効果の他に寿
命及び放出電流のゆらぎがより改善されるという特徴を
有している。
実施例3 実施例1における450℃,20分焼成を420℃,10分焼成にか
えた他は全て同様の実験を行った。
上記実験により得られた素子は、第3図に示す素子とな
る。このように微粒子を絶縁層内にわずかに侵入させ、
露出させた電子放出素子では、第1の実施例の効果の他
に放出電流及び放出電流効率(Ie/If)がより改善され
た電子放出素子が得られた。
実施例4 実施例2で得られた電子放出素子の電極間隔L部の絶縁
層6の表面を5Vol%HF水溶液でエッチングすることによ
り、微粒子5を絶縁層6から露出させ、前記実施例3と
同様な構造を有する素子を得ることができた。
実施例5 孔径80Å〜1000Åの多孔質ガラスに金微粒子を、素子抵
抗が1MΩから10MΩとなるように析出させた基板12を用
い、本発明の電子放出素子とした。(第9図) 該素子の測定を実施例1と同様にして行った。結果を表
2に示す。
上記結果により本発明の電子放出素子は、従来の金のフ
ォーミング素子と比べて(素子の駆動電圧16V、放出電
流0.8μA、効率1.2×10-3、寿命35時間、ゆらぎ20〜60
%)、きわめて安定(放出電流のゆらぎが小さい)で、
寿命が長く、電子放出効率が高い電子放出素子となるこ
とがわかった。又、電子放出実験後、走査形電子顕微鏡
で素子劣化の程度を確認したが、電極間に存在する金の
微粒子の径や分布にはほとんど変化が見られなかった
が、金のフォーミング素子は上述、従来例で述べた高抵
抗部の劣化が著しかった。
又、本実施例5は、一基板上に多数の素子を作成しても
個々の素子のバラツキが少なく簡易に集積できるもので
あった。
実施例6 第10図において、金コロイドを有する着色ガラス(金赤
ガラス)基板14からなる電子放出素子を得た。
該電子放出素子に実施例1と同様の測定を行った。結果
を表3に示す。
表3からも明らかなように、本実施例の電子放出素子は
きわめて安定(放出電流のゆらぎが小さい)で、寿命が
長く、電子放出効率が高い。又、電子放出実験後、走査
形電子顕微鏡で素子劣化の程度を確認したが、電極間に
存在する金の微粒子の径や分布にはほとんど変化が見ら
れなかった。それに比べ従来のITOのフォーミング素子
は高抵抗部が著しく劣化する。
又、金属微粒子をガラス中に析出させた後、弗化水素水
により基板表面を処理し、金属コロイドをガラス基板表
面より多数突出させて、本発明の電子放出素子として
も、同様の効果が得られた。
実施例7 清浄な厚み約1mmの石英ガラス基板上にSiO2液体コーテ
ィング剤(東京応化工業製OCD)に有機パラジウム化合
物を含む有機溶媒(奥野製薬工業製キャタペーストCC
P)を混合し、SiO2:Pdのモル比を約5:1に調製した溶液
を作り、スピンナーにより回転塗布した。その後約400
℃で1時間焼成し、膜厚約1000ÅのPd微粒子5を含んだ
SiO2絶縁層6を得た。この後絶縁層6表面をフッ酸水溶
液でエッチングし、微粒子5を絶縁層6より突出させ
た。(第3図参照) 次に、SiO2絶縁層6上にフォトリソグラフィにより、電
極間隔Lとなる形状にフォトレジストを厚み約0.8μm
程度で形成する。さらにSiO2絶縁層6及び該フォトレジ
スト上に電極形状を得るマスクEB蒸着によってNi薄膜を
1000Å厚みで堆積した。その後、フォトレジストを剥離
し、フォトレジスト上の不要なNi薄膜を取り除くリフト
オフ工程を行う。これによって第12図に示す電極2,3、
電極間隔Lの形状が形成できる。この際第12図に示す各
寸法をL=0.5μm,W=300μm,A=2mmとした。
以上の工程で得られた電子放出素子の電子放出特性を測
定した結果、素子の駆動電圧Vf=30Vで放出電流Ie=1
μA、放出効率α=5×10-3程度の電子放出が得られ
た。なお、寿命、放出電流のゆらぎは、実施例1とほぼ
同程度であった。
実施例8 実施例7の有機パラジウム化合物を粒径が平均100ÅのS
nO2微粒子に変えた他は同様の電子放出素子とし、同様
の実験を行った。結果は、実施例1とほぼ同程度の電子
放出が得られた。
[発明の効果] 以上、説明したように相対向する電極間に、絶縁層が形
成されており、さらに、導電性の微粒子が該絶縁層に分
散配置されている素子構造に特徴を有する電子放出素子
にすることで、従来フォーミング工程を有する表面伝導
形電子放出素子と比べ、つぎのような効果がある。
1.微粒子が絶縁層に固定されている為、動作中に微粒子
が移動することなく、安定で寿命を延ばすのに効果があ
る。
2.微粒子の密度を適当に調整することにより、電子放出
効率を向上させるのに効果がある。
3.フォーミング工程がない為、素子を多数に集積化する
ことができる。
4.フォーミング工程がない為、素子形状が自由に設計で
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の電子放出素子を説明する一実施例斜視
図、 第2図及び第3図は第1図の素子の断面図、 第4図〜は第1図に示す電子放出素子の製造工程を
説明する図、 第5図、第6図(a),(b)、第7図、第9図
(a),(b)、第10図(a),(b)は、それぞれ本
発明の電子放出素子を説明する他の実施例模式図、 第8図1)〜5)は、第7図に示す電子放出素子の製造
工程を説明する図、 第11図は従来の電子放出素子の平面図、 第12図は実施例7及び8を説明する図である。 1……基板、2,3……電極、4……電子放出部 5……微粒子、6……絶縁層、7,8,9……絶縁層 10,11……電極、12……基板、13……微粒子 14……基板、15……微粒子、16,17……電極 18……薄膜、19……基板、20……電子放出部
フロントページの続き (72)発明者 坂野 嘉和 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 鱸 英俊 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 横野 幸次郎 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (56)参考文献 特公 昭40−10338(JP,B1)

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】相対向する電極間に絶縁層を有し、該絶縁
    層に導電性の微粒子が分散配置されていることを特徴と
    する電子放出素子。
  2. 【請求項2】前記微粒子が、数十Åないし数μmの粒径
    を有する微粒子であることを特徴とする請求項1に記載
    の電子放出素子。
  3. 【請求項3】前記微粒子が、前記絶縁層中に完全に包含
    されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電
    子放出素子。
  4. 【請求項4】少なくとも前記微粒子の一部が、前記絶縁
    層上に露出していることを特徴とする請求項1又は2に
    記載の電子放出素子。
  5. 【請求項5】前記微粒子が、硼化物、炭化物、窒化物、
    金属、半導体あるいはカーボンのいずれかよりなること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子放出
    素子。
  6. 【請求項6】前記絶縁層の厚さが、数十Åないし数十μ
    mであるとを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載
    の電子放出素子。
  7. 【請求項7】前記絶縁層が、酸化物、窒化物、炭化物あ
    るいは有機高分子のいずれかよりなることを特徴とする
    請求項1〜6のいずれかに記載の電子放出素子。
  8. 【請求項8】前記相対向する電極が絶縁性基板上に形成
    されており、前記絶縁層は該絶縁性基板の表面層であ
    り、該絶縁層の少なくとも上記電極間の領域に前記微粒
    子が分散配置されていることを特徴とする請求項1〜6
    のいずれかに記載の電子放出素子。
  9. 【請求項9】前記絶縁性基板が多孔質ガラスであり、前
    記微粒子が該多孔質ガラス中に析出した金属又は金属酸
    化物の微粒子であることを特徴とする請求項8に記載の
    電子放出素子。
  10. 【請求項10】前記絶縁性基板が、前記微粒子として金
    属コロイド微粒子を分散した着色ガラスであることを特
    徴とする請求項8に記載の電子放出素子。
  11. 【請求項11】基板上に絶縁層を形成する工程と、該絶
    縁層上に相対向する電極を形成する工程と、該電極間に
    導電性の微粒子を分散する工程と、該絶縁層を加熱・焼
    成して該微粒子の一部又は全部を該絶縁層中に包含せし
    める工程とを有することを特徴とする電子放出素子の製
    造方法。
  12. 【請求項12】基板上に絶縁層を形成する工程と、該絶
    縁層上に相対向する電極を形成する工程と、該電極間に
    導電性の微粒子を分散する工程と、該絶縁層を加熱・焼
    成して該微粒子を該絶縁層中に包含せしめる工程と、該
    絶縁層をエッチングすることにより該微粒子を一部露出
    させる工程とを有することを特徴とする電子放出素子の
    製造方法。
  13. 【請求項13】基板上に相対向する電極を形成する工程
    と、該電極間に導電性の微粒子を分散する工程と、該微
    粒子の表面に絶縁層を形成する工程とを有することを特
    徴とする電子放出素子の製造方法。
  14. 【請求項14】基板上に相対向する電極を形成する工程
    と、該電極間に導電性の微粒子を分散する工程と、該微
    粒子の表面に絶縁層を形成する工程と、該絶縁層をエッ
    チングすることにより該微粒子を一部露出させる工程と
    を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  15. 【請求項15】前記絶縁層を形成する工程が、低融点ガ
    ラスの成膜を行う工程であることを特徴とする請求項11
    又は12に記載の電子放出素子の製造方法。
  16. 【請求項16】前記微粒子を分散する工程が、微粒子を
    分散させた有機溶剤を塗布・焼成する工程であることを
    特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の電子放出素
    子の製造方法。
  17. 【請求項17】前記微粒子を分散する工程が、蒸着法に
    より微粒子を形成する工程であることを特徴とする請求
    項11〜14のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  18. 【請求項18】前記微粒子を分散する工程が、有機金属
    化合物溶液を塗布・焼成する工程であることを特徴とす
    る請求項11〜14のいずれかに記載の電子放出素子の製造
    方法。
  19. 【請求項19】基板上に、導電性の微粒子を含有する絶
    縁層材料を塗布・焼成することにより該微粒子を分散し
    た絶縁層を形成する工程と、該絶縁層上に相対向する電
    極を形成する工程とを有することを特徴とする電子放出
    素子の製造方法。
  20. 【請求項20】基板上に相対向する電極を形成する工程
    と、該電極間に導電性の微粒子を含有する絶縁性材料を
    塗布・焼成することにより該電極間に該微粒子を分散し
    た絶縁層を形成する工程とを有することを特徴とする電
    子放出素子の製造方法。
  21. 【請求項21】前記微粒子を分散した絶縁層を形成した
    後、該絶縁層をエッチングすることにより該微粒子を一
    部露出させる工程を有することを特徴とする請求項19又
    は20記載の電子放出素子の製造方法。
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