JPH0710707Y2 - 全沈式ミシンのクロスプレート開閉装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、クロスプレートがミシンテーブルのテーブル
面と同じ高さとなるようにミシンを低い位置に設置した
全沈式ミシンのクロスプレート開閉装置に関する。

従来技術 クロスプレートとミシンテーブルが同じ高さの全沈式ミ
シンは、布がクロスプレート上で動き易いことからサー
ジング用ミシンとして、すなわち布縁のほつれ防止のた
め縁かゞり縫いを行う工程において広く用いられてい
る。第１図はこうしたサージング用ミシンについて示す
もので、クロスプレート１上には一般に、押え金２の手
前にプレート状の透明な布ガイド３と、その下で布厚に
相当する厚みを有し、かつ布縁端の当て定規としての機
能を果たすスペーサ４とが設置され、布ガイド下に挿入
した布縁を押え金下まで案内する作用を行うようになっ
ている。

こうした全沈式ミシンにおいて、クロスプレートより下
方で糸通しを行う場合や各部の調整を行う場合には、ク
ロスプレートをスライドさせ或いは水平に旋回させて開
閉しているが、クロスプレートの開閉は、一般に針が上
死点にあって送り歯が針板から上方に突出した状態で行
われるためクロスプレート上に布ガイドとスペーサとを
設置したサージング用ミシンにおいては、スペーサが送
り歯に引掛かりがちである。

クロスプレートの開閉時にミシン本体を昇降させるよう
にしたものもあるが、ミシン本体を昇降させるための駆
動装置が必要となって構造が複雑となり、クロスプレー
トの開閉にも手間がかゝる。

考案が解決しようとする課題 本考案は構造が簡単で、開閉時に障害を生ずることのな
いようにしたクロスプレートの開閉装置を提供すること
を目的とする。

課題の解決手段 本考案はそのため開閉時にクロスプレートを持上げ、ス
ライド若しくは、水平に旋回させるときに送り歯その他
ミシンの各部に引掛からないようにしたものである。

すなわち本考案は、クロスプレートがミシンテーブル面
と同じ乃至ほゞ同じ高さに配置され、テーブル上に枢軸
によって水平に旋回できるように支持されるか或いは一
部が水平移動可能に支持される全沈式ミシンにおいて、
クロスプレートを持上げる昇降手段と、クロスプレート
を閉じたとき該プレートの昇降によって係脱し、クロス
プレートの旋回或いは水平移動を阻止する係止手段とを
設けたことを特徴とするものである。

ここで昇降手段としては、エアシリンダーが代表的な例
として挙げられる。この場合ピストンロッドは、その上
端を摺擦するクロスプレートの動きがスムースに行える
ように、好ましくはピストンロッド上端を球状にしてク
ロスプレートとの接触面積を少なくし、摩擦抵抗を小さ
くするか又は上端を摩擦係数の小さな素材で形成した
り、コーティング加工をするのが望ましく、更には上端
を球状にするとともに摩擦係数の小さな素材で形成する
のがより望ましい。

係止手段としては、例えばクロスプレートとミシンテー
ブルいづれか一方に植設され、他方に穿設される嵌合孔
に係脱可能に嵌合するピン、クロスプレートに係脱可能
に吸着する磁石などが例示される。ピンを使用する場合
には磁石を併用するのが望ましい。磁石を使用すること
により前後左右はもちろんのこと、上下にも動きが拘束
され、ミシン駆動中におけるクロスプレートの微振動を
防止することができるからである。

上記の目的を達成するための別の考案は、クロスプレー
トがミシンテーブル面と同じ乃至ほゞ同じ高さに配置さ
れ、クロスプレートの水平方向の移動によりクロスプレ
ートを開閉するようにした全沈式ミシンにおいて、少な
くともクロスプレートの一か所をミシンテーブルに上下
に移動可能に支持するとともに、クロスプレートをミシ
ンテーブル上方の上位置に維持する維持手段と、クロス
プレートの下位置において水平移動を阻止し、上位置に
おいてその阻止が解除される係止手段とを設けたことを
特徴とするものである。

本考案の一つの態様において、クロスプレートはミシン
テーブルに枢軸によって水平に旋回可能かつ枢軸の軸方
向に移動可能で、水平に持上げることができるようにさ
れる。枢軸はミシンテーブルに固定で、クロスプレート
が枢軸の上方位置に止ネジによって止着されるか或いは
ミシンテーブルとの間に介装されるスペーサによって上
方位置に維持される。

好ましい態様において、クロスプレートを上方位置に維
持する維持手段は、係止手段を構成する上記ピンより構
成される。すなわちピンが嵌合孔より係脱することによ
ってクロスプレートの水平移動の阻止或いはその解除を
行うとともにクロスプレートをミシンテーブル上に突き
上げ、上方位置に支持する機能をも果すようになる。

別の態様において、クロスプレートに回転のみ可能に取
着される枢軸がミシンテーブルに回動かつ上下動可能に
支持され、枢軸より側方に突出するピンをカム（溝）に
係合させ、枢軸を回転させると、枢軸が軸方向に進退す
るようにされる。

更に別の態様においては、枢軸より側方に突出する上記
ピンが倒Ｌ形の鉤溝に嵌合し、枢軸を押上げて回動させ
ると、ピンが溝の鉤部分に係合し、上方位置に維持させ
る。

したがって本考案でいう維持手段の例としては、上述す
るような止ネジ、スペーサ、係止手段を兼用するピン、
枢軸より側方に突出するピンとカム（溝）或いは鉤溝な
どが挙げられる。

係止手段は、前述したと同様のもの、すなわちピン、磁
石などが例示される。

上記の目的を達成するための更に別の考案においては、
クロスプレートとミシンテーブルのいづれか一方にピ
ン、凸部、膨隆部等の突部を設けるとともに他方に、該
突部が係脱可能に係合し、突部が滑動する摺接部を設
け、上記突部が摺接部に係合したときクロスプレートが
ミシンテーブル上に持上げられるようにされる。

突部はクロスプレートを閉じたとき、クロスプレートよ
り或いはミシンテーブルより外れるようにしてもよい
が、好ましくはクロスプレート或いはミシンテーブルに
凹部を設け、これに係脱可能に嵌合するようにされる。
突部が凹部に嵌合することによりクロスプレートの持上
げが解除されてミシンテーブルに密着するようになり、
かつクロスプレートの動きが拘束されて固定されるよう
にもなるからで、クロスプレートを固定するための手段
を新たに設ける必要がなくなるからである。

摺接部はクロスプレートの底面或いはミシンテーブルの
表面であってもよいし、クロスプレート或いはミシンテ
ーブルに形成される案内溝や、レール等で、突部の動き
が案内されるようなものであってもよい。

上述のいづれの考案にあってもクロスプレートの開閉
は、安全のためミシンの回転が停止したときのみ行われ
るようにするのが望ましい。そのためには例えば安全ス
イッチを設け、安全スイッチの動作時にミシンの回転が
停止され、クロスプレートの上昇や水平移動が動作可能
な状態にされる。

作用 昇降手段によってクロスプレートを持上げると、該プレ
ートが係止手段より離脱する。この状態でクロスプレー
トを水平に旋回或いは移動させると、送り歯その他ミシ
ンの各部に引掛かることなく昇降手段上を滑動する。

クロスプレートがミシンテーブルに上下に移動可能に支
持されるものにおいては、クロスプレートを上位置に移
動させると、係止手段による水平移動の阻止が解除され
る。そして維持手段により上位置に維持させた状態で水
平に移動させると、送り歯その他ミシンの各部に引掛か
ることなく開く。

クロスプレートとミシンテーブルのいづれか一方に凸部
が設けられる場合には、クロスプレートを手で持上げ、
水平に旋回或いは移動させて突部を摺接部に係合させる
と、クロスプレートが持上げられた状態にされる。この
状態で更に水平に旋回或いは移動させると、凸部が摺接
部を滑動する。

実施例 第１図は、裁断布の布縁をほつれ防止のために重ね合せ
縫いに先立って縁かゞり縫いを行うサージング用オーバ
ーロックミシンを示すもので、クロスプレート１がテー
ブル５とほゞ同一平面となるように、ミシン本体６がミ
シンテーブル５の取付孔７の下方に設置されている。

クロスプレート１は通常のミシンのクロスプレートより
も大きく、テーブル５の前部から左後方に伸び、この上
で布が自由に回動したり、滑動できるようにしてある。
そして左後方の一端において、テーブル５を貫通して下
方に突出するピン８により水平に旋回可能に軸支され、
ピン下端に取着のカラー９により上方への抜け止めが行
えるようになっている。

クロスプレート１には更にテーブル前部の右端部にピン
嵌合孔10が穿設される一方、ミシンテーブル５には、ク
ロスプレート１の厚みと同じ高さだけテーブル上に突出
するピン11が植設され、ピン嵌合孔10に嵌合することに
よりクロスプレート１の回り止めが行われ、またクロス
プレート１の右端部を持上げると、ピン11より離脱し
（第３図参照）、クロスプレート１の旋回が行えるよう
になっている。

テーブル５にはその前部に閉じたクロスプレート１に吸
着する磁石12と縦向きのエアシリンダー13とが埋設さ
れ、エアシリンダー13のロッド上端にはクロスプレート
１の下面に接する突子14が固着され、突子表面はクロス
プレート１が滑動し易いように球状をなしている。

テーブル５にはまた、クロスプレート１の旋回を規制し
てクロスプレートの位置決めを行い、ピン嵌合孔10をピ
ン11に一致させるストッパー15と、エアシリンダー作動
用のスイッチ16とが設けられるとともにその下にテーブ
ル支持脚17が取付けられ、ミシン上部に設けた安全スイ
ッチ18を入力状態にしてミシンの回転を停止状態にした
とき、スイッチ16の操作によりエアシリンダー13を作動
させうるようになっている。

このミシンはまた、本出願人が先に特願昭63-97553号
（特開平1-268590号）で示したものと類似したサージン
グ用布制御装置21を備えている。この装置は、クロスプ
レート上に配置され、縫製される布縁の形状に応じて選
ばれる彎曲した形状のスペーサ４及びその上に覆い被さ
るプレート状の透明な布ガイド３と、押え金２の左側方
に配置される補助押え23とより構成され、前二者のスペ
ーサ４と布ガイド３は、二本のボルト24によってクロス
プレート１上に固定され、ボルト24の突出部分はハンド
ルとしての機能を有している。特にこの例においてスペ
ーサ４は曲率の小さい凹部をもつ布縁を案内することが
できるように案内縁部を凸形曲線状とするとともに、そ
の先端4aをメス28の近傍まで針に近付け、布を適切に案
内して小回りさせることができるようにしている。一方
補助押え23は、回転かつ昇降可能で、図示しない布端検
出センサーの信号により降下し、布を針板上に押付けて
送り歯25の布送り作用に伴って回転するようになってお
り、これにより布がクロスプレート１及び針板26上で旋
回して布縁端をスペーサ４に当て、布送り中、布縁端を
スペーサ４で案内させて曲線状の縁部を有するものであ
っても縫い外れが生じないようにしている。

図中、27は直線ガイドで、第２図に詳細に示されるよう
に、布縁切断用メス機構28の手前で、切断線の延長線上
に位置し、布ガイド３に固定される筒体29と、筒体29お
よび布ガイド３を通してクロスプレート１に達し、クロ
スプレート上に供給される布の布縁を案内するピン31と
より構成され、ピン31は回動かつ上下動可能で、側方に
突出するストッパーピン32が筒体上面に係合する上位置
においては、布ガイド３より引込められ、ストッパーピ
ン32が筒体上面に形成される溝33に嵌合する下位置にお
いては、布ガイド３より突出してクロスプレート面に接
触し、布縁を案内する作用を行うようになっており、直
線部分の縫製時に使用される。

安全スイッチ18は上述するように、入力によってミシン
の駆動が停止され、誤って操作ペダルを踏込んでもミシ
ンが駆動されるようなことがないようにしてあるが、こ
れとともに押え足35が押え解除レバー36の操作により解
放されて側方へ回避できるようにもしてある。

以上のように構成されたミシンにおいて、ルーパ糸を通
すときには、安全スイッチ18を入力状態にしてミシンが
不意に回転しないようにし、押え足35を送り歯上より側
方に回避させたのちすスイッチ16を押す。するとエアシ
リンダー13の突子14がクロスプレート１を突上げ、ピン
８で支持されているクロスプレート１を上方に撓ませ、
テーブル５から持上げる（第３図）。これによりクロス
プレート１はピン11と磁石12との係合から解放され、ク
ロスプレート上に取付けられるスペーサ４も針板26から
持上がる。この状態でスペーサ４はもちろんのことクロ
スプレート１は送り歯25が針板上に突出していても送り
歯に引掛かることなくピン８の回りに旋回することが可
能となる。クロスプレート１の旋回は、ボルト24の突出
部分を掴んで回動操作することにより行われ、クロスプ
レート１を開いたのち補助押え23を側方又は手前に回避
させ、前カバーを開いて糸通し作業を行う。

糸通しを経たのちボルト24を掴んでクロスプレート１を
反時計方向にストッパー15に突当るまで旋回させ、ピン
嵌合孔10をピン11に合わせた状態にしてスイッチ16を戻
す（切る）。これにより突子14が降下してピン11が嵌合
孔10に嵌合するとともに磁石12が吸着してクロスプレー
ト１が固定される。その後安全スイッチ18を非作動状態
にして縫製作業が行われる。

上記実施例では、クロスプレートが水平に旋回して開閉
するようになっているが、別の実施例ではクロスプレー
トの左側部がスライド可能に支持され、右端部を持上げ
た状態でスライドさせることによって開閉される。

上記実施例はまた、本考案をサージング用オーバーロッ
クミシンに適用した例について示したが、サージング用
ミシン以外の他の全沈式ミシン（クロスプレートとミシ
ンテーブルが同じか或いはほゞ同じ高さのミシン）につ
いても同様に適用することができる。

考案の効果 本考案の全沈式ミシンにおけるクロスプレートは以上の
ように、水平に旋回させたり、スライドさせて開閉する
ときに持上げられて障害物から退避するようにしてある
ため、送り歯その他のミシンの各部に引掛かったり、支
えたり或いはまたこれによって傷付いたりすることがな
く、従来のクロスプレートと比べスムースな開閉を行う
ことができる。

係止手段がピンや磁石である場合、クロスプレートを持
上げ或いは下ろすだけで係脱することが可能であり、こ
とにピンの場合、一旦持上げないと解放することができ
ず、誤って開くことがないため安全である。

ピンに磁石を併用したものの場合には更に、クロスプレ
ートの上下並びに前後左右の動きが拘束され、縫製中ク
ロスプレートが微振動するのを防ぐことができる。

クロスプレートがミシンテーブルに上下に移動可能に支
持されるものにおいては、クロスプレートを撓わませる
ことなく水平に持上げることができる。

クロスプレート或いはミシンテーブルのいづれか一方に
突部を設けたものにおいては、クロスプレートを持上げ
るための昇降手段が不要となり、構造が簡単となる。ま
た他方に突部が係脱可能に嵌合する凹部を設ければ、ク
ロスプレートの固定手段も不要となり、構造がより簡素
なものとなる。

安全スイッチを並設した場合には、ミシンが誤って駆動
されるようなことがなくなり、ルーパへの糸通しなどク
ロスプレート下での作業を安全に行うことができる。

サージング用ミシンにおいては、開閉時に布縁端の案内
作用を行うスペーサが送り歯に引掛かって傷付くような
ことがない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に掛かるサージング用オーバーロックミ
シンの斜視図、第２図は同ミシンの要部斜視図、第３図
は同ミシンの一部を切欠いた要部正面図である。 １……クロスプレート、３……布ガイド、４……スペー
サ、５……ミシンテーブル、６……ミシン本体、８……
ピン、10……ピン嵌合孔、11……ピン、12……磁石、13
……エアシリンダー、15……ストッパー、16……スイッ
チ、18……安全スイッチ、23……補助押え

Claims (9)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】クロスプレートがミシンテーブル面と同じ
   乃至ほゞ同じ高さに配置され、テーブル上に枢軸によっ
   て水平に旋回できるように支持されるか或いは一部が水
   平移動可能に支持される全沈式ミシンにおいて、クロス
   プレートを持上げる昇降手段と、クロスプレートを閉じ
   たとき該プレートの昇降によって係脱し、クロスプレー
   トの旋回或いは水平移動を阻止する係止手段とよりなる
   クロスプレート開閉装置
2. 【請求項２】クロスプレートがミシンテーブル面と同じ
   乃至ほゞ同じ高さに配置され、クロスプレートの水平方
   向の移動によりクロスプレートを開閉するようにした全
   沈式ミシンにおいて、少なくともクロスプレートの一か
   所をミシンテーブルに上下に移動可能に支持するととも
   に、クロスプレートをミシンテーブル上方の上位置に維
   持する維持手段と、クロスプレートの下位置において水
   平移動を阻止し、上位置においてその阻止が解除される
   係止手段とを設けたクロスプレート開閉装置
3. 【請求項３】係止手段は、クロスプレートとミシンテー
   ブルのいずれか一方に設けられ、他方に形成される嵌合
   孔に係脱可能に嵌合するピンである請求項１又は２記載
   のクロスプレート開閉装置
4. 【請求項４】係止手段は磁石である請求項１又は２記載
   のクロスプレート開閉装置
5. 【請求項５】係止手段として磁石が併用される請求項３
   記載のクロスプレート開閉装置
6. 【請求項６】クロスプレートがミシンテーブル面と同じ
   乃至ほゞ同じ高さに配置され、テーブル上に枢軸によっ
   て水平に旋回できるように支持されるか或いは一部が水
   平移動可能に支持される全沈式ミシンにおいて、クロス
   プレートとミシンテーブルのいづれか一方に突部を、他
   方に該突部が係脱可能に係合し、突部が滑動する摺接部
   を設け、上記突部が摺接部に係合したときクロスプレー
   トがミシンテーブル上に持上げられるクロスプレート開
   閉装置
7. 【請求項７】上記他方には突部が係脱可能に嵌合する凹
   部が設けられる請求項６記載のクロスプレート開閉装置
8. 【請求項８】ミシンには安全スイッチが併設され、安全
   スイッチの動作時にミシンの回転が停止されるとともに
   昇降手段が動作可能な状態にされる請求項1,2又は５の
   いづれかの請求項に記載のクロスプレート開閉装置
9. 【請求項９】ミシンはサージング用ミシンである請求項
   1,2又は５のいづれかの請求項に記載のクロスプレート
   開閉装置