JPH07106905B2 - 超電導体の製造方法及び超電導体 - Google Patents

超電導体の製造方法及び超電導体

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JPH07106905B2
JPH07106905B2 JP2414440A JP41444090A JPH07106905B2 JP H07106905 B2 JPH07106905 B2 JP H07106905B2 JP 2414440 A JP2414440 A JP 2414440A JP 41444090 A JP41444090 A JP 41444090A JP H07106905 B2 JPH07106905 B2 JP H07106905B2
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  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、バリウム、希土類金属及び銅か
らなる複合金属酸化物超電導体の製造方法及び超電導体
に関するものである。
【0002】
【従来技術】超電導性複合金属酸化物膜(以下、超電導
体膜とも言う)を得るために、バリウム、希土類元素及
び銅の各有機酸塩、アルコキシド又はキレート化合物を
含む溶液を作り、この溶液を支持体表面に塗布し、空気
中において約500℃で仮焼して、基材表面に炭酸バリウ
ムと希土類元素酸化物と銅酸化物からなる膜をあらかじ
め形成し、次いで空気又は酸素中で900℃より高い温度
で本焼成する方法は知られている。また、基材表面に、
複合金属酸化物の超電導性の安定化及び/又は超電導性
複合金属酸化物と基材との反応の抑制のためにあらかじ
め貴金属膜を形成した後前記の方法で超電導性複合金属
酸化物膜を製造する方法も知られている。このようにし
て基材表面に形成された複合金属酸化物膜は比較的高い
臨界温度で超電導を示すが、本焼成に900℃より高い温
度を用いるため、複合金属酸化物膜と基材及び/又は貴
金属膜との反応によりその超電導体膜の劣化が起り、超
電導を与える複合金属酸化物膜の正味量が減少し、超電
導状態における電流密度が低下するという問題があっ
た。一方、本焼成温度を下げて超電導体膜と基材及び/
又は貴金属との反応を防止しようとすると、この場合に
は炭酸バリウムの熱分解速度が遅く、基材上に形成され
る複合金属酸化物の超電導特性が著しく損われるという
問題を生じる。
【0003】
【発明の課題】本発明は、従来技術に見られる前記問題
点を解決し、超電導を示す臨界温度が高く、かつ超電導
状態における電流密度の高い複合金属酸化物超電導体の
製造方法及び超電導体を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、基材上にあらかじ
め形成された炭酸バリウム、希土類金属酸化物及び銅酸
化物からなる膜を低酸素濃度又は低酸素分圧下におい
て、基材と膜との間の反応を実質的に生じさせない温度
で焼成した後、さらに、基材と膜との間の反応を実質的
に生じさせない温度で分子状酸素により酸化することに
よって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0005】即ち、本発明によれば、表面に貴金属膜を
有していてもよい基材に形成された炭酸バリウム、希土
類金属酸化物及び銅酸化物からなる膜を、酸素濃度が1v
ol%以下の不活性ガス雰囲気下又は酸素分圧が0.01atm
(絶対圧)以下の減圧下において該膜と基材及び/又は貴
金属膜との間の反応は実質的に生じさせない温度で焼成
して該膜中に含まれる炭酸バリウムから炭酸ガスを除去
しつつ炭酸バリウムと希土類金属酸化物と銅酸化物を反
応させた後、さらに、該膜と基材及び/又は貴金属膜と
の間の反応を実質的に生じさせない温度で分子状酸素に
より酸化してバリウム、希土類金属及び銅からなる複合
金属酸化物膜を形成させることを特徴とする超電導体の
製造方法が提供される。
【0006】また、本発明によれば、表面に貴金属膜を
有していてもよい基材上に炭酸バリウム、希土類金属酸
化物及び銅酸化物からなる無機質膜を形成する工程と、
貴金属膜を形成する工程を交互に複数回行った後、酸素
濃度が1vol%以下の不活性ガス雰囲気下又は酸素分
圧が0.01atm(絶対圧)以下の減圧下において該
無機質膜と基材及び/又は貴金属膜との間の反応を実質
的に生じさせない温度で焼成して該無機質膜中に含まれ
る炭酸ガスを除去しつつ炭酸バリウムと希土類酸化物と
銅酸化物を反応させ、次いで得られた金属酸化物膜と基
材及び/又は貴金属膜との間の反応を実質的に生じさせ
ない温度で分子状酸素により酸化してバリウム、希土類
金属及び銅からなる超電導性複合金属酸化物膜を形成す
ることを特徴とする超電導体の製造方法が提供される。
【0007】本発明を実施するには先ず、従来公知の方
法に従って、超電導性複合金属酸化物膜形成材料として
の原料溶液を調製する。本発明で用いる原料溶液は、バ
リウム、希土類金属及び銅の各有機酸塩、各アルコキシ
ド及び/又は各有機キレート化合物(以下、単に金属含
有化合物とも言う)を含むものである。有機酸塩として
は、例えば、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、カプ
リル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、酪酸、プロピオン
酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、フェノール、カ
テコール、安息香酸、サリチル酸等の塩が挙げられる。
アルコキシドとしては、例えば、エタノール、プロパノ
ール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン等
のアルコールのアルコキシドが挙げられる。有機キレー
ト化合物としては、アセチルアセトナート、EDTA等
が挙げられる。
【0008】原料溶液の調製は、あらかじめ所定の成分
組成に配合した金属含有化合物の混合物を溶媒に溶解し
て実施し得る他、各金属含有化合物の溶媒溶液をあらか
じめ調製し、これらの溶媒溶液を混合するか又は他の溶
媒で溶媒置換する等の方法により実施することができ
る。溶液中の金属濃度は特に制約されず、その上限は金
属含有化合物の溶解度等によって決められるが、一般に
は、金属含有化合物換算で3〜40重量%である。さらに、
この溶液には、補助成分として、高分子物質等を適量添
加することもできる。
【0009】溶媒としては、前記した金属含有化合物を
溶解し得るものであればよく、各種のものが単独又は混
合物の形で使用される。このような溶媒としては、例え
ば、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、テトラ
リン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパ
ノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン
等のケトン類、ジブチルエーテル等のエーテル類、アセ
トアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、ギ
酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、ラウリン
酸、ステアリン酸、ナフテン酸、リノール酸、オレイン
酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、フェノール、p-トルイ
ル酸等の有機酸類、ブチルブチレート等のエステル類、
ジメチルアミン、アニリン等のアミン類、N-メチルアセ
トアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のホ
ルムアミド誘導体等のアミド類、ジメチルスルホキシド
等の硫黄含有化合物、クロロホルム、四塩化炭素等の塩
素含有化合物、ピリジン、メチルピリジン、ビニルピリ
ジン等のピリジン誘導体、フルフラール等の複素環物質
類等を挙げることができる。これらの溶媒は、具体的に
用いる金属含有化合物の種類に応じて1種又は2種以上の
組合せで適当に選定される。
【0010】本発明による好ましい原料溶液を金属含有
化合物との関連で例示すると次の通りである。 (1) 金属アルコキシド含有溶液 この溶液の場合、金属アルコキシドが安定的に溶解する
ように、有機酸又はピリジンもしくはその誘導体、ある
いはそれらの混合物を含む溶媒を用いるのが好ましい。
溶媒は、それらの化合物のみから形成し得る他、それら
の化合物と他の溶媒、例えば、エタノール、ブタノー
ル、アセトン等のアルコールやケトンとの混合物から形
成することができる。この場合、有機酸としては、ギ
酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン
酸、ヘプタン酸、オクタン酸等が挙げられ、ピリジン誘
導体としては、メチルピリジン、ビニルピリジン等が挙
げられる。
【0011】(2) 金属アセチルアセトナート又はその誘
導体含有溶液 この溶液の場合、金属アセチルアセトナート又はアセチ
ルアセトン誘導体〔CH3COCH2COR(R:有機基)〕の金属塩
が安定的に溶解するように、前記金属アルコキシド含有
溶液の場合と同様に、有機酸又はピリジンもしくはその
誘導体あるいはそれらの混合物を含む溶媒を用いるのが
好ましい。これらの溶媒は、必要に応じ、他の溶媒、例
えば、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン
等のアルコールやケトンとの混合溶媒であることができ
るし、これら溶媒を用いた溶媒置換により形成した溶媒
であることができる。この場合、有機酸及びピリジン誘
導体としては、金属アルコキシド溶液に関して示したも
のが挙げられる。 (3) 金属有機酸塩 この溶液の場合、溶媒としては、各種のもの、例えば、
有機酸、アルコール、ケトン類、炭化水素類等が用いら
れる。
【0012】本発明で用いる原料溶液中の金属種の組成
は、前記したように、超電導性を示す金属複合酸化物に
対応するように選べばよい。例えば、次の組成式(I)で
表わされる超電導複合金属酸化物に対応するように選ぶ
ことができる。 ABa2Cu3Oy (I) (式中、Aは希土類金属であり、例えば、Y,La,Nd,Sm,Eu,
Gd,Dy,Ho,Er,Yb,Lu又はこれらの2種以上の混合物が用い
られる。yは7-xであり、xは-1<x<1の範囲の数である)
【0013】さらに、原料金属含有化合物が昇華又は蒸
発等により組成変化を起こす場合には、超電導性複合酸
化物が形成されるように補正した金属種の組成を選ぶこ
とができる。
【0014】本発明により超電導性複合金属酸化物膜を
得るには、原料溶液を基材上に塗布して金属含有化合物
溶液の塗膜を形成した後、乾燥し、仮焼成し、本焼した
後、酸化処理する。次に、これらの各工程について詳述
する。
【0015】〔原料溶液の塗布工程〕 この工程は、原料溶液を、基材上に塗布して、金属含有
化合物の溶液薄膜を形成する工程である。この場合、そ
の溶液塗布法としては、従来公知の方法、例えば、浸漬
法、スピンコート法、スプレー法、ハケ塗り法等の各種
の方法を用いることができる。基材としては、各種の材
料及び形状のものを用いることができる。この場合、材
料としては、例えば、銅、チタン、金、銀等の金属や、
アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、炭化
ケイ素、黒鉛等のセラミックスが用いられ、またその形
状としては、曲面及び平面を問わず採用され、例えば、
板状、線状、コイル状、繊維状、編織布状、管状等任意
の形状が採用される。支持体は、多孔質のものであって
もよい。基材がセラミックスの場合、その表面には金属
膜、特に貴金属膜をあらかじめ形成することができる。
【0016】〔乾燥工程〕 前記のようにして基材上に形成された原料溶液塗膜を室
温又は加温下で常圧又は減圧下で乾燥させる。この乾燥
工程後に続く仮焼工程の初期において乾燥を完結するこ
とができるため、この乾燥工程においては塗膜を完全に
乾燥させなくとも良い。また、後続の仮焼成工程を乾燥
工程として兼用させ得ることから、この乾燥工程は省略
することもできる。
【0017】〔仮焼工程〕 この工程は、前記のようにして基材上に形成された金属
含有化合物の薄膜を加熱焼成し、その薄膜を、炭酸バリ
ウム、希土類金属酸化物及び銅酸化物からなる膜に変換
させる工程である。焼成温度としては、400〜700℃、好
ましくは500〜600℃の温度が採用される。焼成雰囲気と
しては、空気、酸素、窒素、アルゴン等の雰囲気が採用
される。また、この焼成工程は、真空中や減圧中で実施
することもできる。さらに、この焼成工程は、あらかじ
め加熱した基材に原料溶液を吹き付けることによっても
行うことができる。この場合には、前記した原料溶液の
塗布工程は省略される。
【0018】〔貴金属膜形成工程〕 この工程は、必要に応じて採用されるもので、基材表面
及び又は前記仮焼工程で形成された炭酸バリウム、希土
類金属酸化物及び銅酸化物からなる膜の表面に貴金属膜
を形成する工程である。この工程は蒸着法、スパッタ法
等の物理的方法、無電解メッキ法、貴金属微粉末を含む
ペースト等のハケ塗り法等の他、貴金属含有化合物溶液
を塗布、乾燥し、加熱分解させることにより行うことが
できる。
【0019】貴金属含有溶液としては、超電導性複合金
属酸化物膜の形成に関連して示した如きの各種の溶液が
用いられる。好ましい溶液を示すと、次の通りである。 (1)貴金属アセチルアセトナート又はその誘導体含有
溶液 この溶液の場合、溶媒としては、各種のもの、例えば、
有機酸、アルコール、炭化水素類、イオウ含有溶媒、ハ
ロゲン化炭化水素、ピリジン誘導体等が用いられる。 (2)貴金属有機酸塩含有溶液 この溶液の場合、溶媒としては前記で示したものが用い
られる。この貴金属含有溶液から形成された乾燥塗膜
は、これを加熱分解させることにより貴金属膜に変換す
ることができる。前記仮焼工程前に形成した乾燥塗膜
は、仮焼工程において貴金属膜に変換される。
【0020】この貴金属膜形成工程は、前記のように原
料溶液の塗布工程の前及び又は仮焼工程の後に適用し得
る他、原料溶液の塗膜の乾燥工程の後に適用することが
できる。また、この貴金属膜形成工程の後に、再び前記
した原料溶液の塗布工程、乾燥工程及び仮焼工程を行う
ことができる。即ち、原料溶液の塗布工程、乾燥工程及
び仮焼工程からなる炭酸バリウム、希土類金属酸化物及
び銅酸化物からなる膜形成工程と、貴金属膜形成工程
は、交互に複数回繰返し行うことができる。貴金属とし
ては、金、銀、白金、パラジウム又はそれらの合金が挙
げられる。
【0021】〔本焼工程〕 この工程は、前記仮焼工程で形成された膜を焼成して炭
酸バリウムから炭酸ガスを除去しつつ、炭酸バリウムと
希土類金属酸化物と銅酸化物を反応させる工程である。
本発明においては、この焼成工程は、雰囲気中の酸素濃
度が1%(Vol%)以下、好ましくは0.005-1%の条件下で行
う。酸素濃度1%以下の条件は、不活性ガスを用いること
によって形成することができる。また、この焼成工程
は、酸素分圧0.01atm(絶対圧)以下、好ましくは0.000
05-0.01atmの減圧下(真空下)において実施することもで
きる。このような焼成条件の採用により、前記仮焼工程
で形成された膜中の炭酸バリウムの分解が促進されると
ともに、複合金属酸化物膜が形成される。また、この焼
成工程では、前記のように低酸素濃度又は低酸素分圧の
条件を採用することから、炭酸バリウムの分解は低めら
れた温度で円滑に実施することができるため、基材及び
/又は貴金属膜と複合金属酸化物との間の反応を実質的
に回避させることができる。この工程における一般的な
焼成温度は700〜900℃である。本発明における前記のよ
うな焼成条件により、従来見られたような基材及び/又
は貴金属膜と複合金属酸化物との間の反応を実質的に防
止することができる。
【0022】〔酸化工程〕 この工程は、前記本焼工程で形成された複合金属酸化物
膜を分子状酸素を用いて酸化処理し、超電導性を有する
複合金属酸化物膜とする工程である。前記本焼工程で
は、雰囲気中の酸素濃度を1%以下又は酸素分圧を0.01at
m以下に保持したため、得られる複合金属酸化物膜の超
電導特性は不満足のものであるが、この酸化工程により
超電導特性にすぐれた複合金属酸化物膜に変換すること
ができる。分子状酸素としては、純酸素又は空気が用い
られる。酸化剤として空気を用いる場合、その中に含ま
れる炭酸ガスによって膜の超電導特性が悪影響を受ける
ことから、空気中の炭酸ガス濃度は、脱炭酸により、10
ppm以下、好ましくは5ppm以下に調整するのがよい。こ
の酸化工程は、中高温で行われ、基材及び/又は貴金属
膜と複合金属酸化物との間の反応を実質的に回避させる
ことができる。この酸化工程の温度は、一般には、40
0〜900℃である。本発明の方法を実施する場合、前
記仮焼工程、本焼工程及び酸化工程は、同一装置内で連
続的に実施することができる。本発明の方法により、基
材表面上に、膜厚が約100Å〜20μm、特に1000Å〜10
μmの超電導性複合金属酸化物膜を形成させることがで
きる。この場合、膜厚は、原料溶液中の金属濃度を調節
することにより制御し得る他、前記した原料の塗布・仮
焼工程を繰返すことによって制御することができる。
【0023】
【発明の効果】本発明においては、その仮焼工程、本焼
工程及び酸化工程はいずれも基材及び/又は貴金属と複
合金属酸化物との間の反応を実質的に回避させながら実
施されるため、基材上に形成される複合金属酸化物膜
は、超電導特性にすぐれたものであり、超電導を示す臨
界温度(Tc)が高い上に、その超電導状態における電流密
度(Jc)も大きいという特性を有する。
【0024】また、本発明においては、超電導性複合酸
化物膜が貴金属膜を介して複数層構造に形成された超電
導体は、超電導体が磁束逃躍によって常電導化した時に
その貴金属膜を介して電流のバイパスが起るという利点
がある。しかも、この貴金属膜の使用により、炭酸バリ
ウムの熱分解によって無機質膜の体積収縮が起るときに
発生する応力や、超電導性複合金属酸化物膜と基材との
間の熱膨張係数の差により生じる応力が緩衝され、品質
の良い超電導体を得ることができる。
【0025】(実施例) 次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。 実施例1 Ba-アセチルアセトナート、Y-アセチルアセトナート及
びCu-アセチルアセトナートを、その金属原子比Ba:Y:Cu
が2.0:1.0:3.0になるように、ピリジンとプロピオン酸
との混合溶媒に溶解し、ロータリーエバポレーター中で
加熱して溶媒の大部分を除去したのち、残渣をメタノー
ルに再溶解して原料溶液を得た(金属含有化合物の濃
度:10重量%)。次に、この原料溶液を、基材として
のイットリア安定化ジルコニアからなる板状体にスピン
コート法で塗布した後、空気中において、昇温速度2℃/
分で室温から500℃に加熱昇温させ、この温度で30分間
保持した後冷却した。この原料溶液の塗布と加熱昇温を
8回繰返して、基材上に炭酸バリウム、酸化イットリウ
ム及び酸化銅からなる膜(膜厚:5μm)を形成した。次
に、このようにして基材上に形成した仮焼膜を、酸素濃
度が0.1%に調節されたアルゴンガス雰囲気下において、
表1に示す各種焼成温度(本焼温度)に加熱昇温し、この
温度で1時間保持した後、雰囲気ガスを酸素ガスに変
え、同一温度において0.5時間保持し、次いで酸素ガス
雰囲気下で室温まで徐冷して製品を得た。このようにし
て基材上に形成された複合金属酸化物膜は、X線回折の
結果、YBa2Cu3Oyが主成分であることが確認された。次
に、その複合金属酸化物膜上に、約2mmの間隔で4ケ所に
銀を蒸着して電極を形成し、四端子法で室温から77Kま
での温度における電気伝導度を測定した。膜の電気抵抗
は室温から徐々に減少し、表1に示した臨界温度(Tc)で
電気抵抗がゼロになり、完全超電導の状態が観測され
た。また、その膜の77Kにおける臨界電流密度(Jc)を求
め、その結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】実施例2 実施例1において、本焼工程における酸素濃度を1%に
し、本焼工程の焼成温度を820℃にした以外は同様に
して実験を行った結果、得られた複合金属酸化物膜は、
Tc:84K、Jc:17A/cm2を示した。
【0028】実施例3 実施例1において、本焼工程における酸素濃度を0.0
2%にし、本焼工程の焼成温度を860℃又は880℃
にした以外は同様にして実験を行った結果、得られた複
合金属酸化物膜は、Tc:88K、Jc:72又は31
0A/cm2を示した。
【0029】実施例4 実施例1において、本焼成工程における酸素濃度を0.
02%にし、本焼成工程を750℃で24時間保持した
以外は同様にして実験を行った結果、得られた複合金属
酸化物膜は、Tc:85K、Jc:30A/cm2を示
した。
【0030】実施例5 実施例4において支持体を銀板とした以外は同様にして
実験を行った結果、得られた複合金属酸化物膜は、T
c:84K、Jc:30A/cm2を示した。
【0031】実施例6 実施例1において、出発原料をBa−アセチルアセトナ
ート、Yb−アセチルアセトナート及びCu−アセチル
アセトナートとし、本焼成工程における酸素濃度を1%
にし、本焼工程の焼成温度を820℃にした以外は同様
にして得られた複合金属酸化物膜は、Tc:88K、J
c:100A/cm2を示した。
【0032】実施例7 実施例1において、出発原料をBa−アセチルアセトナ
ート、Er−アセチルアセトナート及び、Cu−アセチ
ルアセトナートとし、本焼成工程における酸素濃度を
0.02%にし、本焼成工程の焼成温度を750℃で2
4時間保持した以外は同様にして得られた複合金属酸化
物膜は、Tc:81K、Jc:10A/cm2を示し
た。
【0033】実施例8 実施例4において、あらかじめ支持体としてイットリア
安定化ジルコニアからなる板状体に、蒸着法により金か
らなる膜(膜厚0.2μm)を形成した以外は同様にし
て得られた複合金属酸化物膜はTc:83K、Jc:2
0A/cm2を示した。
【0034】実施例9 実施例4において、あらかじめ支持体としてのイットリ
ア安定化ジルコニアからなる板状体に、ナフテン酸銀の
トルエン溶液(貴金属含有化合物の濃度:5重量%)を
スピンコート法で塗布した後、アルゴン気流中において
昇温速度5℃/分で室温から500℃に加熱昇温させ、
この温度で30分間保持した後冷却して、銀からなる膜
(膜厚0.2μm)を形成した以外は同様にして得られ
た複合金属酸化物膜はTc:86K、Jc:80A/c
2を示した。
【0035】実施例10 実施例9において、銀からなる膜(膜厚:0.2μm)
と炭酸バリウム、酸化イットリウム及び酸化銅からなる
膜(膜厚:2μm)を交互に3回ずつ形成した以外は同
様にして得られた複合金属酸化物膜はTc:86K、J
c:50A/cm2を示した。
【0036】比較例1 実施例1において、本焼工程における酸素濃度を0.1%に
し、本焼工程の焼成温度を950℃にした以外は同様にし
て実験を行った結果、得られた複合金属酸化物膜は、抵
抗が高く、77Kにおいても超電導を示さなかった。
【0037】比較例2 実施例10において、本焼工程の焼成温度を950℃に
した以外は同様にして実験を行った結果、得られた複合
金属酸化物膜は、抵抗が高く、77Kにおいても超電導を
示さなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 近藤 和吉 茨城県つくば市東1丁目1番地 工業技術 院化学技術研究所内 (72)発明者 水田 進 茨城県つくば市東1丁目1番地 工業技術 院化学技術研究所内 (72)発明者 南上 英博 東京都台東区下谷2丁目20番5号 日本化 学産業株式会社内 審査官 平塚 政宏 (56)参考文献 特開 平2−183915(JP,A) 特公 平7−10732(JP,B2)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に貴金属膜を有していてもよい基材
    上に形成された炭酸バリウム、希土類金属酸化物及び銅
    酸化物からなる無機質膜を、酸素濃度が1vol%以下
    の不活性ガス雰囲気下又は酸素分圧が0.01atm
    (絶対圧)以下の減圧下において該膜と基材及び/又は
    貴金属膜との間の反応を実質的に生じさせない温度で焼
    成して該膜中に含まれる炭酸バリウムから炭酸ガスを除
    去しつつ炭酸バリウムと希土類酸化物と銅酸化物を反応
    させた後、次いで得られた金属酸化物膜と基材及び/又
    は貴金属膜との間の反応を実質的に生じさせない温度で
    分子状酸素により高温酸化してバリウム、希土類金属及
    び銅からなる複合金属酸化物膜を形成させることを特徴
    とする超電導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 表面に貴金属膜を有していてもよい基材
    上に炭酸バリウム、希土類金属酸化物及び銅酸化物から
    なる無機質膜を形成する工程と、貴金属膜を形成する工
    程を交互に複数回行った後、酸素濃度が1vol%以下
    の不活性ガス雰囲気下又は酸素分圧が0.01atm
    (絶対圧)以下の減圧下において該無機質膜と基材及び
    /又は貴金属膜との間の反応を実質的に生じさせない温
    度で焼成して該無機質膜中に含まれる炭酸ガスを除去し
    つつ炭酸バリウムと希土類酸化物と銅酸化物を反応さ
    せ、次いで得られた金属酸化物膜と基材及び/又は貴金
    属膜との間の反応を実質的に生じさせない温度で分子状
    酸素により酸化してバリウム、希土類金属及び銅からな
    る超電導性複合金属酸化物膜を形成することを特徴とす
    る超電導体の製造方法。
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