JPH07102555A - 地すべり抑止用鋼管杭 - Google Patents

地すべり抑止用鋼管杭

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JPH07102555A
JPH07102555A JP26842693A JP26842693A JPH07102555A JP H07102555 A JPH07102555 A JP H07102555A JP 26842693 A JP26842693 A JP 26842693A JP 26842693 A JP26842693 A JP 26842693A JP H07102555 A JPH07102555 A JP H07102555A
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screw
steel pipe
joint portion
pile
pipe pile
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敏雄 篠原
Hisatoshi Shimaoka
久壽 島岡
Kimihisa Takano
公寿 高野
Gen Mori
玄 森
Hiroyuki Maeno
博之 前野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 地すべり抑止用鋼管杭の継手部を数回転でネ
ジ込みが完了するように設定された傾斜およびネジ山間
隔を有するテーパ状のネジ継手構造とし継杭作業時間を
短縮する。前記継手部を、鋼管杭本体と同等の曲げ強度
とする。 【構成】 端部にテーパ状の雌ネジ継手部2を有する鋼
管杭本体1aと、端部に同じテーパ状の雄ネジ継手部3を
有する鋼管杭本体1bとをネジ込み結合してなる。雌ネジ
継手部2の雌ネジおよび雄ネジ継手部3の雄ネジの各々
は、ネジ込む方向を向いた面14が、ネジ込む方向に対し
て斜め方向を向く角度に形成され、ネジ込む方向と反対
の方向を向いた面16が、ネジ込む方向に対して直角以下
であって直角に近い方向を向く角度に形成されている。
雄ネジ継手部3には、雌ネジ継手部2のネジ込みが完了
時にその先端面2aが当接する位置にショルダー部8が設
けられている

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ネジ継手部により継
杭される地すべり抑止用鋼管杭に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地すべり抑止用鋼管杭は、地すべり地帯
に設置されるので、その施工場所は重機等の搬入が困難
な急斜地であることが多く、打撃により杭を打ち込むこ
とが不可能なため、プレボーリングした孔に杭を建て込
んでいる。ところで、地すべり抑止用鋼管杭の全長は、
現地の状況によって相違するが、一般に20〜30mに達す
る場合が多いが、輸送等の制限があるため現場で継杭し
ながら施工するのが通常である。この継杭作業は、不安
定な作業環境下で行なわれるため、迅速且つ確実な作業
が強く要求される。
【0003】このような、地すべり抑止用鋼管杭には、
以下のような特徴がある。 外径が小さく厚さが大きい(小径厚肉杭)。 地すべりの崩壊面は、どの面で起こるかを予測する
ことが難しいため、継手部分に杭本体と同等の強度(特
に曲げ強度)が要求される。 上記のようにボーリングマシン等で予め地盤に杭を
削孔してから鋼管杭を孔中に装入し、設置するという施
工法による。 山岳地斜面上の非常に狭い用地内で施工するため、
特別な機械を使用しにくい。また、使用すると不経済に
なる。
【0004】このような地すべり抑止用鋼管杭の継杭
は、従来、現場での溶接作業によって実施されている。
しかしながら、このような現場溶接は作業環境が悪いう
え、下記に示す問題点を有している。 継杭作業に多くの時間を要する。例えば、外径φ30
0mm ×厚さ30mm程度の鋼管杭を溶接で継杭する場合に
は、2〜3時間必要である。 溶接部の品質が天候に大きく左右される。 熟練した溶接工が必要であるが、優れた溶接技能工
を確保しにくい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】地すべり抑止用鋼管杭
では、以上述べたように、従来から溶接による継杭方法
が使用されているが、これに代わって継杭にネジ継手を
使用する方法が検討されている。このようにネジ継手を
使用する技術については、既に、以下に示す技術が開示
されている。
【0006】(1) 実開昭57-133645 号公報:(以下、
「先行技術1」という) 図14は先行技術1を示す断面図である。先行技術1
は、鋼管杭全般を対象とした継手であるが、以下の理由
から地すべり抑止用鋼管杭には不適当である。 雄ネジ3、3を有する継手金物19の中央付近の断面
係数を杭本体部1、1と同等に確保するのは、小径で厚
肉の杭の場合、困難であり、継手部の曲げ耐力は、杭本
体部より小さくなる。 ネジ込みとそのトルクの管理に特別な機械が必要に
なり、山岳斜面上の狭い用地内で施工する地すべり抑止
用鋼管杭には向かない。
【0007】(2) 実開昭59-98923 号公報:(以下、
「先行技術2」という) 図15は先行技術2を示す断面図、図16は平面図であ
る。先行技術2のテーパネジ付継手管は、強度上は問題
なく設計することができるが、継手部9(継手金物20)
の外径が杭本体1よりも大きくなり、鋼管杭を地盤内に
設置するために地盤の削孔径を大きくせざるを得ず、施
工費が増大する。このため、全体工事費が従来の溶接方
法よりも大きくなり、現実的でない。
【0008】(3) 実開平2-112728号公報:(以下、「先
行技術3」という) 図17は先行技術3を示す断面図である。先行技術3は
建造物等の基礎杭を対象としたネジ継手式鋼管杭である
が、ネジ込みに特別な機械を必要とするとともに、先行
技術2と同様に継手部9の外径が杭本体1よりも大きく
なるため、地すべり抑止用鋼管杭としては不適当であ
る。また、継手部9は杭本体1をそのまま、または、拡
径してからネジ加工するため継手部強度は杭本体より弱
くならざるを得ない。即ち、雄ネジ終点部はネジの谷部
で断面積と断面係数が小さくなるため、継手部の引張耐
力、剪断耐力および曲げ耐力は、杭本体より小さくなら
ざるを得ない。また、雌ネジ終点部も断面積が減少し、
引張耐力および剪断耐力が減る。
【0009】(4) 特開平4-70414 号公報:(以下、
「先行技術4」という) 図18は先行技術4を示す一部断面図、図19は図18
の拡大断面図である。先行技術4では、ネジ込みに特別
な機械を必要とする。また、強く締め付けることにより
曲げ強度を大きくすることができると記載されている
が、締め付け力は理論上曲げ強度の増加には寄与しな
い。従って、継手金物19の中央付近(フランジ21の両
側)においては、小径で厚肉の鋼管杭の場合、曲げ強度
は杭本体1より小さくならざるを得ない。従って、実用
上地すべり抑止用鋼管杭には不適当である。
【0010】従って、この発明の目的は、継杭作業から
溶接の使用を排除し、特別な機械を使用せずに人力でネ
ジ込みを短時間で実施でき、現場での作業効率を大幅に
省力化し、更に、継手部の外径を杭本体の外径と同径と
しても継手部が杭本体と同等以上の曲げ強度を有する地
すべり抑止用鋼管杭を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、端部にテー
パー状の雌ネジ継手部を有する鋼管杭本体と、端部に前
記雌ネジ継手部と同じ角度を持つテーパー状の雄ネジ継
手部を有する鋼管杭本体とをネジ込み結合してなる地す
べり抑止用鋼管杭であって、前記雌ネジ継手部の雌ネジ
および前記雄ネジ継手部の雄ネジの各々は、ネジ込む方
向を向いた面が、ネジ込む方向に対して斜め方向を向く
角度に形成され、ネジ込む方向と反対の方向を向いた面
が、ネジ込む方向に対して直角以下であって直角に近い
方向を向く角度に形成され、且つ前記雌ネジ継手部およ
び前記雄ネジ継手部のうちの少なくとも1つには、他方
のネジ継手部のネジ込みが完了時にその先端面が当接す
る位置にショルダー部が設けられていることに特徴を有
するものである。前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継
手部のネジ山は、1/5 から1/10のテーパ角度、5から10
mmのネジ山ピッチ、および、2から4mmのネジ山高さを
有することが好ましい。
【0012】
【作用】次に、この発明を、上述のように構成した理由
を、図面を参照しながら説明する。
【0013】(1) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、
両継手部が同じ勾配を有するテーパ状ネジ継手とする。 図1はこの発明の地すべり抑止用鋼管杭の1実施態
様を示す一部断面平面図、図10は現場での継杭作業の
様子を示す断面図である。図10に示すように、現場で
の継杭作業は、山岳斜面22の地盤を削孔した孔13の中に
雌ネジ継手部2を上端に位置させて先行杭1aを設置した
後、雄ネジ継手部3を下端に位置させて後行杭1bをクレ
ーン(図示せず)等で吊り下げて上下杭1a,1bのネジ継
手部2,3を当接して噛み合わせネジ込むことにより行
なわれる。長尺重量物である後行杭1bがブラブラ揺れて
両者を合わせにくいが、図1に示すように、ネジ継手部
2,3はテーパ状のテーパネジであり、容易に噛み合わ
せることができ、多少のずれがあっても噛み合わせ可能
である。1cは杭内周面、1dは杭外周面を示す。
【0014】 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部の必
要なネジ山の数は、そのピッチ等により異なるが、我々
の試設計によれば、15〜30山程度になる。テーパネジ
は、テーパの角度とネジ山の間隔を適当に調整すること
により、人力により数回転でネジ込みを完了させること
ができる作用を有している。実用上、回転数は3〜5回
転程度に設定する。このような、ネジ山とするには、ネ
ジ山のテーパ角度は1/5から1/10、ネジ山ピッチは5か
ら10mm、および、ネジ山高さは2から4mmが好ましい。
これに対して、従来の平行ネジでは、噛み合わせてから
ネジ込み完了までにネジ山の数だけ後行杭を回転させる
必要がある。しかし、地すべり抑止用鋼管杭の施工現場
は、一般に山腹の狭い斜面上であるため、作業環境が極
めて悪く、特殊なあるいは大型の機械を使用しにくいた
め、15〜30回も回転することは容易でない。
【0015】(2) 雌ネジ継手部の雌ネジおよび雄ネジ継
手部の雄ネジの各々は、ネジ込む方向を向いた面が、ネ
ジ込む方向に対して斜め方向を向く角度に形成され、ネ
ジ込む方向と反対の方向を向いた面が、ネジ込む方向に
対して直角以下であって直角に近い方向を向く角度に形
成されている。 一般に用いられているネジ山の形状は、三角形、台
形、長方形、または、これらに近似した形状である。図
7、図8に示すように、三角形および台形のネジ山は、
継手部9の圧縮側だけでなく、引張側も大きな曲げモー
メントが作用したとき、ネジが外れようとする動きが発
生する。圧縮側は、後述するショルダーを設けることに
よりこれを防止できるが、引張側はその効果が出るはず
はなく、雌雄ネジが外れて十分な曲げ強度を得ることが
できない。また、図9に示すように、長方形のネジ山
は、接触部面が杭軸方向と直角に近い角度であるため、
摩擦抵抗が大きく、人力でネジ込むことができない。
【0016】 図2および図4はこの発明の地すべり
抑止用鋼管杭のネジ継手部の断面図、図3はネジ継手部
のネジ山の拡大断面図である。図4に示すように、雌ネ
ジ継手部2を有する先行杭1aを地盤に設けた孔の中に入
れて固定し、次に、雌ネジ継手部2と雄ネジ継手部3と
を噛み合わせて後行杭1bを回転させてネジ込むときに、
図2および図3に示すネジ山形状であれば、ネジ込む方
向Rを向いた面14が、ネジ込む方向Rに対して斜め方向
を向く角度(具体的には、ほぼ60〜30°の角度)に形成
され、雌・雄ネジ継手部2と3の接触部が杭軸方向に対
して斜めに当接するために、後行杭1bの重量Wによって
その接触部15に発生する摩擦力を小さくすることができ
る。一方ネジ込む方向Rに対して直角以下であって直角
に近い角度をもった面16同士は、隙間が開くため(17は
隙間)、摩擦力は発生しない。この結果、人力でもネジ
込むことが可能となる。
【0017】 鋼管杭に地すべり力が作用したとき、
図5に示すように、鋼管杭1には曲げモーメントが発生
し、杭断面の中立軸18の片側には引張力が、他方側には
圧縮力が発生する。継手部9にも同様な力が発生する。
引張力が作用している部分においては、図6に示すよう
に、引張側は、引張力が杭軸方向(引張力作用方向)に
対して直角以下であって直角に近い角度(具体的には、
80〜90°の角度)をなす面16同士で雌・雄のネジ継手部
2、3が接触しているため、ネジ山には互いにずれよう
とする動きが発生しにくく、従って、曲げに対して十分
な抵抗を有する。
【0018】(3) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部のう
ちの少なくとも1つに、他方のネジ継手部のネジ込みが
完了時にその先端面が当接する位置にショルダー部を設
ける。 図6に示すようにショルダー部がないと、圧縮側に
おいては、ネジ山の接触部の面は、杭軸方向に対して斜
めの方向であるため、雄ネジ継手部3は、杭断面の内側
方向に、雌ネジ継手部2は杭断面の外側方向に、各々動
こうとする動きが発生してネジ同士が外れようとする。
【0019】 そこで、ショルダー部を設けることに
より、このような動きを、ネジ継手部の先端面を他方の
ショルダー部に当接させて抑える。図1、図2、図4に
おいては、雄ネジ継手部3の雌ネジ継手部2のネジ込み
が完了時にその先端面2aが当接する位置にショルダー部
8が設けられ、これにより、雌ネジ継手部2のネジ込み
が完了時に、雌ネジ継手部2の先端面2aが当接し、上述
で述べた動きを抑えることができる。同図面では、シ
ョルダー部は雄ネジ継手部3に設けられているが、ショ
ルダー部は雌ネジ継手部、または、両ネジ継手部に設け
てもよい。上記(2) および(3) の作用により、継手部
は、曲げモーメントに対して大きな曲げ強度を有するこ
とができる。
【0020】
【実施例】次に、この発明を図面に示す実施例に基づい
て、更に詳細に説明する。本発明地すべり抑止用鋼管杭
のネジ継手部の強度について調べた。内径φ318.5mm ×
厚さt25mmの寸法を有する鋼管を杭本体として使用し
た。前記杭本体を2本用意し、1本の端部にテーパ状の
雌ネジ継手部2を、もう1本の端部にテーパ状の雄ネジ
継手部3を、それぞれ接続した。ネジ山のテーパ角度は
1/6 、ネジ山ピッチは8.5mm 、および、ネジ山高さは2.
4 〜2.5mm であった。また、雌ネジ、雄ネジは、ネジ込
む方向を向いた面が、ネジ込む方向に対して45°の角
度、ネジ込む方向と反対の方向を向いた面が、ネジ込む
方向に対して87°の角度となるように形成した。そし
て、この2本を雌ネジ継手部2と雄ネジ継手部3とによ
りネジ結合し(10はネジ螺合部)、この発明の範囲内の
地すべり抑止用鋼管杭(以下、「本発明鋼管杭」とい
う)を調製した。調製した本発明鋼管杭の継手部の軸方
向の断面形状を図11に示す。本発明鋼管杭は、杭本体
1が65kg鋼、雌ネジ継手部2および雄ネジ継手部3が杭
本体1より材料強度が高い80kg鋼からなっており、杭本
体1と雌ネジ継手部2、雄ネジ継手部3とは工場におい
て溶接によって接続を実施した。4はその溶接部であ
る。
【0021】次いで、図12に示すように継手部9を中
心にして両端を支点11の上に載置した。次いで、継手部
9の両側上面の載荷点12から下方に荷重Pをかけること
により、4点載荷純曲げ試験を実施し、曲げ耐荷力を調
べた。その結果を図13に示す。なお、試験において
は、図12に示すように、支点11,11間の距離は5400m
m、荷重をかける載荷点12, 12間の距離は1500mmであっ
た。比較のため、本発明鋼管杭に使用した鋼管杭1と同
寸法、同材質の鋼管(以下、「比較用鋼管」という)を
使用し、同条件の4点載荷純曲げ試験を実施した。その
結果を図13に併せて示す。なお、図13において、A
は本発明鋼管杭、そして、Bは比較用鋼管を示し、全断
面降伏荷重(118.45tf)、縁降伏荷重(86.15tf )は、
鋼材の理論上の耐荷力を示す。
【0022】図13に示すように、本発明鋼管杭はその
継手部において、比較用鋼管と同等以上の曲げ耐荷力を
有していた。この結果、本発明鋼管杭は、継手部を含む
ほぼ全長にわたってどの部分でも継手部なしの鋼管杭の
曲げ耐力と同等の耐荷力を均一に有していることがわか
る。
【0023】次に、上述の実験に使用したものと同じ形
状、寸法の本発明鋼管杭を使用して継杭を実施した。即
ち、図10に示すように、ウインチまたはクレーン(図
示せず)で後行杭1bを吊り、先行杭1aと鉛直芯をあわせ
た後、徐々に後行杭1bを降下させた。後行杭1bの雄ネジ
継手部3の先端が先行杭1aの雌ネジ継手部2に当たった
ら、後行杭1bの重量の一部を吊りワイヤ5で負担する程
度に半吊り状態にした。次いで仮設足場6上の作業員7
が、後行杭1bを約2回転素手で回転させてネジ込んだ。
次に、チェーントング(小道具)を用いて、ネジ継手部
の先端がショルダー部に当たるまで約1.5 回転締め込ん
だ。
【0024】上述の実験および継杭作業に使用した本発
明鋼管杭は、実作業に使用する実物大の鋼管杭である。
そして、我々は、上記継杭作業が、一人の作業員による
人力だけで、2〜3分の短時間で、最後まで締め込むこ
とができることを確認した。しかも、この作業に従事し
た作業員は、ネジ継手施工は初体験であった。この結
果、従来の溶接工法では数時間要する作業時間を本発明
では著しく短縮することができることがわかった。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、以下に示す工業上有用な効果がもたらされる。 本発明のネジ山の形状により、特殊な機械および技
能を用いなくとも、人力でネジを締め込むことができる
とともに、継杭に要する作業時間を大幅に短縮すること
ができ、工事費用を大幅に低減できる。 テーパー状のネジ継手を本発明のネジ山形状とし、
且つ、ショルダー部を設けたことにより、継手部の外径
を杭本体より拡大することなく、剪断強度および引張強
度は勿論、杭本体と同等の曲げ強度を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の地すべり抑止用鋼管杭の1実施態様
を示す一部断面平面図である。
【図2】この発明の地すべり抑止用鋼管杭のネジ継手部
を示す断面図である。
【図3】図2のネジ継手部のネジ山の拡大断面図であ
る。
【図4】この発明の地すべり抑止用鋼管杭のネジ継手部
を示す断面図である。
【図5】曲げモーメントが作用している状態を示す説明
図である。
【図6】大きな曲げが発生したときの継手部の動きを説
明する断面図である。
【図7】ネジ山の形状が三角形のネジ継手を示す断面図
である。
【図8】ネジ山の形状が台形のネジ継手を示す断面図で
ある。
【図9】ネジ山の形状が長方形のネジ継手を示す断面図
である。
【図10】現場での継杭作業の様子を示す断面図であ
る。
【図11】実施例に使用された本発明鋼管杭の継手部を
示す断面図である。
【図12】実施例における試験方法を示す説明図であ
る。
【図13】荷重と中央変位との関係を示すグラフであ
る。
【図14】先行技術1を示す断面図である。
【図15】先行技術2を示す断面図である。
【図16】先行技術2を示す平面図である。
【図17】先行技術3を示す断面図である。
【図18】先行技術4を示す一部断面図である。
【図19】図18の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 鋼管杭本体 1a 先行杭 1b 後行杭 1c 杭外周面 1d 杭内周面 2 雌ネジ継手部 2a 先端面 3 雄ネジ継手部 4 溶接部 5 ワイヤ 6 仮設足場 7 作業員 8 ショルダー部 9 継手部 10 ネジ螺合部 11 支点 12 荷重をかける載荷点 13 孔 14 ネジ込む方向を向いた面 15 接触部 16 ネジ込む方向に対して直角以下であって直角に近い
角度をもった面 17 隙間 18 中立軸 19 継手金物 20 継手金物 21 フランジ 22 山岳斜面 R ネジ込む方向 W 後行杭の重量
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年7月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正内容】
【0006】(1)実開昭57−133645号公報:
(以下、「先行技術1」という) 図14は先行技術1を示す断面図である。先行技術1
は、鋼管杭全般を対象とした継手であるが、以下の理由
から地すべり抑止用鋼管杭には不適当である。 雄ネジ3、3を有する継手金物19の中央付近の断
面係数を杭本体部1、1と同等に確保するのは、小径で
厚肉の杭の場合、困難であり、継手部の曲げ耐力は、杭
本体部より小さくなる。 該技術による継手はテーパネジを採用していないた
め締め付け時に大きな締め付けトルクを必要とし、その
ためネジ込みとそのトルクの管理に特別な機械が必要に
なり、山岳斜面上の狭い用地内で施工する地すべり抑止
用鋼管杭には向かない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】(3)実開平2−112728号公報:
(以下、「先行技術3」という) 図17は先行技術3を示す断面図である。先行技術3は
建造物等の基礎杭を対象としたネジ継手式鋼管杭である
が、テーパネジが用いられてないためネジ込みに特別な
機械を必要とするとともに、先行技術2と同様に継手部
9の外径が杭本体1よりも大きくなるため、地すべり抑
止用鋼管杭としては不適当である。また、継手部9は杭
本体1をそのまま、または、拡径してからネジ加工する
ため継手部強度は杭本体より弱くならざるを得ない。即
ち、ネジ底部分の残厚は杭本体にくらべ、ネジ山高さ分
だけ薄くなり、その結果雄ネジ、雌ネジとも、ネジ底部
分の断面積と断面係数が小さくなるため、継手部の引張
耐力、剪断耐力および曲げ耐力は、杭本体より小さくな
らざるを得ない。また、雌ネジ終点部も断面積が減少
し、引張耐力および剪断耐力が減る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】(4) 特開平4−70414号公報:
(以下、「先行技術4」という) 図18は先行技術4を示す一部断面図、図19は図18
の拡大断面図である。先行技術4では、テーパネジが用
いられてないためネジ込みに特別な機械を必要とする。
また、強く締め付けることにより曲げ強度を大きくする
ことができると記載されているが、締め付け力は理論上
曲げ強度の増加には寄与しない。従って、継手金物19
の中央付近(フランジ21の両側)においては、小径で
厚肉の鋼管杭の場合、曲げ強度は杭本体1より小さくな
らざるを得ない。従って、実用上地すべり抑止用鋼管杭
には不適当である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部の必
要なネジ山の数は、そのピッチ等により異なるが、我々
の試設計によれば、15〜30山程度になる。テーパネ
ジは、テーパの角度とネジ山の間隔、ネジ山高さおよび
ネジ山の形状を適当に調整することにより、数回転でネ
ジ込みを終了させることができ、そのため機械を使わ
ず、人力でネジ込みが可能になるという利点を有する。
実用上、回転数は3〜5回転程度に設定する。このよう
な、ネジ山とするには、ネジ山のテーパ角度は1/3
ら1/10、ネジ山ピッチは5から15mm、および、
ネジ山高さは2からmmが好ましい。これに対して、
従来の平行ネジでは、噛み合わせてからネジ込み完了ま
でにネジ山の数だけ後行杭を回転させる必要がある。し
かし、地すべり抑止用鋼管杭の施工現場は、一般に山腹
の狭い斜面上であるため、作業環境が極めて悪く、特殊
なあるいは大型の機械を使用しにくいため、15〜30
回も回転することは容易でない。数値限定の理由を以下
に示す。 (イ)テーパ角度1/3〜1/10:継手強度を確保す
るにはネジ長さをある程度以上とし、且つ、ネジ底部の
厚みを確保する必要がある。テーパ角度が1/3を超え
ると継手先端付近のネジ底部の厚みが薄くなり継手とし
て意味がなくなるためテーパ角度は1/3以下とするの
が常識である。次に、1/10未満だとテーパネジの効
果がなくなり、ネジ込みが容易でなくなる。そのためテ
ーパ角度は1/10以上1/3以下とする。 (ロ)ピッチ5mm以上15mm以下:5mm未満だと
ネジ込みのための回転数が増加し低能率となる。また噛
み合っているネジ山数が増加するためネジ同士の摩擦力
が大きくなり、人力でのネジ込み作業が困難になる。次
に、15mmを超えるとネジピッチが荒すぎネジとして
の効果が現れず、従ってピッチは15mm以下とするの
が常識である。そのためピッチは5mm以上15mm以
下とする。 (ハ)高さ2mm以上5mm以下:2mm未満だと曲げ
荷重を負荷されると容易にスッポ抜ける。一方、5mm
を超えるとネジ谷が深くなりネジ部の肉厚不足が発生す
る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】 図2および図4はこの発明の地すべり
抑止用鋼管杭のネジ継手部の断面図、図3はネジ継手部
のネジ山の拡大断面図である。図4に示すように、雌ネ
ジ継手部2を有する先行杭1aを地盤に設けた孔の中に
入れて固定し、次に、雌ネジ継手部2と雄ネジ継手部3
とを噛み合わせて後行杭1bを回転させてネジ込むとき
に、図2および図3に示すネジ山形状であれば、ネジ込
む方向Rを向いた面14が、ネジ込む方向Rに対して斜
め方向を向く角度(具体的には、ほぼ80〜45゜の角
度)に形成され、雌・雄ネジ継手部2と3の接触部が杭
軸方向に対して斜めに当接するために、後行杭1bの重
量Wによってその接触部15に発生する摩擦力を小さく
することができる。一方ネジ込む方向Rに対して直角以
下であって直角に近い角度をもった面16同士は、隙間
が開くため(17は隙間)、摩擦力は発生しない。この
結果、人力でもネジ込むことが可能となる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】 鋼管杭に地すべり力が作用したとき、
図5に示すように、鋼管杭1には曲げモーメントが発生
し、杭断面の中立軸18の片側には引張力が、他方側に
は圧縮力が発生する。継手部9にも同様な力が発生す
る。引張力が作用している部分においては、図6に示す
ように、引張側は、引張力が杭軸方向(引張力作用方
向)に対して直角以下であって直角に近い角度(具体的
には、85〜90゜の角度)をなす面16同士で雌・雄
のネジ継手部2、3が接触しているため、ネジ山には互
いにずれようとする動きが発生しにくく、従って、曲げ
に対して十分な抵抗を有する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】 そこで、ショルダー部を設けることに
より、このような動きを、ネジ継手部の先端面を他方の
ショルダー部に当接させて抑える。図1、図2、図4に
おいては、雄ネジ継手部3の雌ネジ継手部2のネジ込み
が完了時にその先端面2aが当接する位置にショルダー
部8が設けられ、これにより、雌ネジ継手部2のネジ込
みが完了時に、雌ネジ継手部2の先端面2aが当接し、
上述で述べた動きを抑えることができる。同図面で
は、ショルダー部は雄ネジ継手部3に設けられている
が、ショルダー部は雌ネジ継手部、または、両ネジ継手
部に設けてもよい。上記(2)および(3)の作用によ
り、継手部は、曲げモーメントに対して大きな曲げ強度
を有することができる。 更に、該ショルダーはネジ込み時雄ネジの進みに対
するストッパーの役割を果たす。そのため過大なネジ込
みトルクが加わってもネジが限度以上に進んでネジ部が
破損することがない。即ち、ストッパーを設けることに
より、ネジ込み時トルク管理が不要になるという利点を
持つ。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】上述の実験および継杭作業に使用した本発
明鋼管杭は、実作業に使用する実物大の鋼管杭である。
そして、我々は、上記継杭作業が、一人の作業員による
人力だけで、2〜3分の短時間で、最後まで締め込むこ
とができることを確認した。しかも、この作業に従事し
た作業員は、ネジ継手施工は初体験であった。この結
果、従来の溶接工法では数時間要する作業時間を本発明
では著しく短縮することができることがわかった。
た、継手のネジ形状に関し、ネジ込む方向を向いた面が
45°の場合に加え、60°および80°の場合につい
ても確認試験を行った結果、45°の場合と同等の結果
が得られた。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、以下に示す工業上有用な効果がもたらされる。 本発明の地すべり抑止用鋼管杭の継手はネジ式の継
手であるため、現場溶接による継手に比べ、継手強度に
対する信頼性が格段に向上する。即ち、現場溶接におい
ては、溶接作業者の技量、天候条件によって、継手性能
がばらつくのに対し、本発明の継手はそのような問題点
は生じない。 本発明のネジ山の形状により、締め付け機械および
特殊な技能を用いなくとも、人力でネジを締め込むこと
ができるとともに、継杭に要する作業時間を大幅に短縮
することができ、工事費用を大幅に低減できる。また、
締め込みにトルク管理も不要である。 テーパー状のネジ継手を本発明のネジ山形状とし、
且つ、ショルダー部を設けたことにより、継手部の外径
を杭本体より拡大することなく、剪断強度および引張強
度は勿論、杭本体と同等の曲げ強度を得ることができ
る。また、掘削径を杭本体の径以上に大きくする必要が
ないため施工費を抑えることができる。
フロントページの続き (72)発明者 森 玄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 前野 博之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 端部にテーパー状の雌ネジ継手部を有す
    る鋼管杭本体と、端部に前記雌ネジ継手部と同じ角度を
    持つテーパー状の雄ネジ継手部を有する鋼管杭本体とを
    ネジ込み結合してなる地すべり抑止用鋼管杭であって、 前記雌ネジ継手部の雌ネジおよび前記雄ネジ継手部の雄
    ネジの各々は、ネジ込む方向を向いた面が、ネジ込む方
    向に対して斜め方向を向く角度に形成され、ネジ込む方
    向と反対の方向を向いた面が、ネジ込む方向に対して直
    角以下であって直角に近い方向を向く角度に形成され、
    且つ前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部のうちの
    少なくとも1つには、他方のネジ継手部のネジ込みが完
    了時にその先端面が当接する位置にショルダー部が設け
    られていることを特徴とする地すべり抑止用鋼管杭。
  2. 【請求項2】 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手
    部のネジ山は、1/5から1/10のテーパ角度、5から10mm
    のネジ山ピッチ、および、2から4mmのネジ山高さを有
    する請求項1記載の地すべり抑止用鋼管杭。
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