JPH07100840B2 - 耐衝撃性に優れる歯車 - Google Patents
耐衝撃性に優れる歯車Info
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- JPH07100840B2 JPH07100840B2 JP26526087A JP26526087A JPH07100840B2 JP H07100840 B2 JPH07100840 B2 JP H07100840B2 JP 26526087 A JP26526087 A JP 26526087A JP 26526087 A JP26526087 A JP 26526087A JP H07100840 B2 JPH07100840 B2 JP H07100840B2
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Description
(産業上の利用分野) 本発明は、自動車を始めとする機械類に利用され、特に
衝撃強度に優れた歯車に関する。 (従来の技術) 近年、機械類に用いられる歯車に対する高品質化が強く
望まれるようになった。特に自動車においては高出力
化,軽量化が進み、高強度化,高靭性化の要望がますま
す高まって来ている。 このような状況のもとに、本発明者のひとりは先に、特
願昭58−128787として、Si低減による粒界酸化の防止、
P低減Mo添加による粒界強度増、Al,N,Nb添加による結
晶粒微細化、Ni添加による粒界強度増、等の手段に基づ
く高強度高靭性歯車用鋼の提案を行っている。 (発明が解決しようとする問題点) しかしながら、自動車用動力伝達歯車は、自動車の出力
向上や小型軽量化に伴って歯車自体も小型化されるな
ど、さらに苛酷な状況で使用されるようになり、急速発
進・加速時、あるいは変速過程での衝撃荷重によって歯
車が破損する例がないとはいえず、さらに高靭性,高強
度の歯車の開発が求められていた。 (発明の目的) 本発明は上記問題点を解決するべくなされたものであっ
て、その目的とするところは、衝撃的な荷重がかかって
も破損することのない高靭性を備え、信頼性の高い歯車
を提供することにある。
衝撃強度に優れた歯車に関する。 (従来の技術) 近年、機械類に用いられる歯車に対する高品質化が強く
望まれるようになった。特に自動車においては高出力
化,軽量化が進み、高強度化,高靭性化の要望がますま
す高まって来ている。 このような状況のもとに、本発明者のひとりは先に、特
願昭58−128787として、Si低減による粒界酸化の防止、
P低減Mo添加による粒界強度増、Al,N,Nb添加による結
晶粒微細化、Ni添加による粒界強度増、等の手段に基づ
く高強度高靭性歯車用鋼の提案を行っている。 (発明が解決しようとする問題点) しかしながら、自動車用動力伝達歯車は、自動車の出力
向上や小型軽量化に伴って歯車自体も小型化されるな
ど、さらに苛酷な状況で使用されるようになり、急速発
進・加速時、あるいは変速過程での衝撃荷重によって歯
車が破損する例がないとはいえず、さらに高靭性,高強
度の歯車の開発が求められていた。 (発明の目的) 本発明は上記問題点を解決するべくなされたものであっ
て、その目的とするところは、衝撃的な荷重がかかって
も破損することのない高靭性を備え、信頼性の高い歯車
を提供することにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明者は、高靭性歯車の開発を目的として、合金成分
のみならず、歯車の製造方法や熱処理方法等についても
鋭意検討した結果、浸炭用鋼の靭性評価の指標として今
回新たに見出した鋼中のMo/(10Si+100P+Mn+Cr)で
表わされる比を大きくした素材を用いると共に、これに
条件的に最適化した熱処理,表面加工硬化、さらには冷
間鍛造による歯形成形等を施すことによって衝撃強さの
極めて優れた歯車を得ることができることを見出すに至
った。 本発明は、上記知見に基づくもので、本発明に係る歯車
は、重量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.15%未満、Mn:0.
50〜1.50%、P:0.015%未満、Si0.020%未満、Cr:0.50
〜1.50%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.050%、N:0.
005〜0.025%、O:0.0015%未満、残部実質的にFeからな
り、かつ Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.10より大きい鋼を素材
とし、これにビッカース硬さ550以上となる有効硬化層
深さが0.6〜1.0mmとなる浸炭焼入れ・焼もどしを施し、
さらに、場合によってはショットピーニングによる表面
の変形高さであるアークハイトが0.4〜1.0Aとなってい
るものであることを特徴としている。 また、本発明におけるさらに望ましい歯車は、重量%
で、C:0.10〜0.20%、Si:0.10%未満、Mn:0.50〜0.80
%、P:0.015%未満、S:0.005%未満、Cr:0.50〜1.00
%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.050%、N:0.005〜
0.025%、O:0.0015%未満、残部実質的にFeからなり、
かつMo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.15より大きい鋼を
素材として、冷間鍛造による歯形成形およびビッカース
硬さ550以上となる有効硬化層深さが0.6〜1.0mmとなる
浸炭焼入れ・焼もどしを施し、さらに、場合によっては
ショットピーニングによる表面の変形高さであるアーク
ハイトが0.4〜1.0Aとなっているものであることを特徴
としている。 (作用) 次に、本発明における各構成要件の作用効果と共にそれ
ら数値の限定理由について述べる。 Mo/(10Si+100P+Mn+Cr):0.10より大 本発明者は、合金成分の検討過程で得た種々のデータを
綿密に検討した結果、はだ焼鋼の靭性は上記パラメータ
で整理でき、衝撃値と上記パラメータとは良好な相関を
示すことを見出した。 すなわち、第1図は種々の成分組成の鋼を浸炭焼入れ
(910℃で浸炭,830℃で保持後焼入れ),焼もどし(160
℃空冷)した場合の10mmRCノッチシャルピー衝撃値をMo
/(10Si+100P+Mn+Cr)で表わされる比で整理したも
ので、良好な相関を示すことが判る。実用歯車におい
て、急発進などの衝撃的な荷重をも考慮した場合、歯車
用鋼としては2Kgf−m/cm2程度の衝撃値が必要とされて
おり、そのためにはMo/(10Si+100P+Mn+Cr)で表わ
される比が0.10より大きくなければならないが、さらに
安全性を見込むならば、例えば冷間鍛造により歯形を成
形するような場合は0.15より大きくすることがより望ま
しいと言える。 C:0.10〜0.30% Cは、歯車の心部強度を維持するために0.10%以上を必
要とする。しかしC量が高すぎると心部強度が高くなり
すぎ靭性が低下するため0.30%以下に限定される。な
お、冷間鍛造により成形する場合には鍛造性をも考慮し
て0.20%以下とする。 Si:0.15%未満 Siは酸化物形成傾向が大きく、粒界酸化を助長するため
低い程望ましいが0.15%未満であれば許容できる。な
お、冷間鍛造を実施する場合には鍛造性の点から0.10%
未満に限定される。 Mn:0.50〜1.50% Mnは焼入れ性を向上させるのに有効な成分であり、歯車
の心部強度維持のため0.50%以上を必要とする。一方、
多すぎると心部強度が高くなりすぎて靭性を低下させる
ほか、酸化物形成傾向が大きく粒界酸化を助長するので
1.50%を上限とするが、冷間鍛造により歯形を成形する
場合には鍛造性を確保するため0.80%以下とする必要が
ある。 P:0.015%未満 Pは浸炭時、加熱中にオーステナイト粒界に偏析して浸
炭層の靭性を劣化させるため、低い程望ましいが、0.01
5%未満であれば実用上許容できる。 Si0.020%未満 SはMnSなどの介在物を形成し、衝撃破壊の起点となる
ので含有量は低い程望ましいが、0.020%未満であれば
実質的な問題はない。ただし、冷間鍛造を施す場合に
は、鍛造性が劣化するため0.005%未満とする。 Cr:0.50〜1.50% CrはMnと同様焼入れ性を向上させ、歯車の心部強度を維
持させるため0.50%以上を添加するが、多くしすぎると
心部の強度が高くなりすぎ靭性を劣化させるので1.50%
をその上限とする。なお冷間鍛造を実施する場合には鍛
造性の点から1.00%以下に限定される。 Mo:0.30〜0.70% Moは焼入れ性を向上させるばかりでなく、浸炭層の靭性
を高め歯車の耐衝撃性向上に寄与する元素であるが、こ
のような効果を発揮させるには少なくとも0.30%は必要
であるが、0.70%を超えて添加しても効果は、もはやそ
れ以上増大しない。 Al:0.010〜0.050% N:0.005〜0.025% これら元素は、微細なAlN粒子を形成し、オーステナイ
ト結晶粒を微細化する働きがあり、靭性を向上させる。 しかし、Al,N量のいずれかが0.010%,0.005%にそれぞ
れ満たない場合には上記効果が発揮できない。また、そ
れぞれ0.050%,0.025%を超えて添加しても効果はそれ
以上増加されることはない。 O:0.0015%未満 Oは酸化物を形成し、疲労破壊の起点となるため、低い
方が望ましいが、0.0015%未満であれば実質的な問題は
ない。 有効硬化層深さ:0.6〜1.0mm 一般に歯車は、表面層のみを硬化させて、耐摩耗性,耐
疲労性を与えるとともに、心部には靭延性を付与するた
め、浸炭焼入れ・焼もどしを施して使用される。 本発明者は、この処理による有効硬化層(ビッカース硬
さ550以上)深さを0.6〜1.0mmの範囲にコントロールす
ることによって、表面硬化処理による効果が最も有効に
働き、かつ製品としての性能のばらつきが防止できるこ
とを見出した。すなわち、有効硬化層深さが0.6mm以下
では耐摩耗性、疲れ強さが確保できず、逆に1.0mmを超
えると耐衝撃性が劣化する。 なお、このコントロールは、カーボンポテンシャルの調
整,浸炭・拡散時間の調整等によって行うことができ
る。 アークハイト:0.4〜1.0A 耐衝撃性のみならず疲れ強さをも高める場合にショット
ピーニングが有効であるが、アークハイトが0.4A未満で
はその効果がなく、1.0Aを超えた場合にはむしろ靭性を
低下させるため上記範囲に限定した。なお、アークハイ
トはショットピーニングによる素材表面(本発明の場合
は歯車表面)の変形高さを言い、アルメンストリップに
より測定さ、このコントロールは、ショット粒,投射速
度,投射時間,カバレッジ等の調整により行うことがで
きる。 冷間鍛造 冷間鍛造により歯形に沿ったファイバーフローを形成さ
せることにより、疲れ強さ、衝撃強さをともに向上させ
得ることを見出した。 なお、冷間鍛造を施す場合には、鍛造性をも考慮して、
C,Si,Mn,S,Crの各成分範囲がより低く限定される。 (実施例) 第1表に示す合金成分を有する鋼を溶製し、90mm径の棒
鋼に圧延、焼ならしした後、機械加工によって、あるい
は冷間鍛造と機械加工によって、ピッチ円直径:70mm,モ
ジュール:2.5,歯数:28,圧力角:20゜の歯車に加工し、次
いで、浸炭焼入れ・焼もどしを行い、さらに、一部の歯
車にはショットピーニングを施し歯車試験片とした。 この歯車試験片を第2図に示すハンマー1と、モーメン
トアーム2とを備えかつ固定歯車3aおよび回転歯車3bを
備えた歯車衝撃試験機(ハンマー重量:138Kg,ふり子長
さ:1.2m,最大衝撃荷重:4000Kg,最大ハンマー速度:3.4m/
sec)および動力循環式歯車試験機(回転数:3500r.p.m,
歯車:モジュール2.5,歯数:28と32との組合せ)にかけ
て、歯車衝撃破断荷重および歯車疲れ限度をそれぞれ測
定した。 なお、浸炭焼入れは、カーボンポテンシャルを0.8〜0.9
とし、910℃×3時間浸炭、2.5時間拡散,830℃×30分保
持後油冷、次いで、160℃×2時間の焼もどし後空冷の
条件を標準とし、主に浸炭,拡散時間を変えることによ
って有効硬化層深さを調整した。 また、ショットピーニングは、インペラータイプの加工
機を用い、ショット粒:SB−6P,投射速度:40〜80m/sec,
投射時間:2分,カバレッジ:300%を標準とし、主にショ
ット粒,投射速度を変化させることによってアークハイ
トを調整した。アークハイトは市販のアルメンストリッ
プAを用いて測定した。 これらの結果を第2表に示す。 この表に示す結果から明らかなように、本発明例1〜3
の歯車は素材鋼の合金組成が適正で、有効硬化層深さの
適切な熱処理が施されているため、衝撃破断荷重,疲れ
限度ともに良好な値でバランスがとれているのに対し,
鋼中のMo/(10Si+100P+Mn+Cr)で表される比が低い
比較鋼F,G,Iを素材として用いた比較例4,5,7、特にMoが
低くSi,O含有量も高い比較例7では衝撃破断荷重、疲れ
限度共に低い効果となっている。また、O含有量が高く
Al,N量の低い比較鋼Hを用いた比較例6では結晶粒の微
細化が十分でなく、衝撃破断荷重が低い結果となった。 さらに成分的には適切な鋼を用いた場合でも、浸炭焼入
れ条件の選択を誤ると衝撃破断荷重と疲れ限度のバラン
スが崩れた歯車となることが比較例8,9より明らかであ
る。 適正な条件でショットピーニングが加えられた本発明例
10〜12では、特に疲れ限度が改善されるが、比較例14で
見るとおり過度のショットピーニングはかえって衝撃破
断荷重を低下させる。 組成的にもより望ましい範囲の素材鋼D,Eを用いて冷間
鍛造を加えた本発明例15,16の歯車では、極めて優れた
衝撃破断荷重と疲れ限度を示し、さらにこれにショット
ピーニングを施すことにより衝撃破断荷重は若干低下す
るものの、疲れ限度がさらに改善されることが本発明例
17,18から明らかである。
のみならず、歯車の製造方法や熱処理方法等についても
鋭意検討した結果、浸炭用鋼の靭性評価の指標として今
回新たに見出した鋼中のMo/(10Si+100P+Mn+Cr)で
表わされる比を大きくした素材を用いると共に、これに
条件的に最適化した熱処理,表面加工硬化、さらには冷
間鍛造による歯形成形等を施すことによって衝撃強さの
極めて優れた歯車を得ることができることを見出すに至
った。 本発明は、上記知見に基づくもので、本発明に係る歯車
は、重量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.15%未満、Mn:0.
50〜1.50%、P:0.015%未満、Si0.020%未満、Cr:0.50
〜1.50%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.050%、N:0.
005〜0.025%、O:0.0015%未満、残部実質的にFeからな
り、かつ Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.10より大きい鋼を素材
とし、これにビッカース硬さ550以上となる有効硬化層
深さが0.6〜1.0mmとなる浸炭焼入れ・焼もどしを施し、
さらに、場合によってはショットピーニングによる表面
の変形高さであるアークハイトが0.4〜1.0Aとなってい
るものであることを特徴としている。 また、本発明におけるさらに望ましい歯車は、重量%
で、C:0.10〜0.20%、Si:0.10%未満、Mn:0.50〜0.80
%、P:0.015%未満、S:0.005%未満、Cr:0.50〜1.00
%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.050%、N:0.005〜
0.025%、O:0.0015%未満、残部実質的にFeからなり、
かつMo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.15より大きい鋼を
素材として、冷間鍛造による歯形成形およびビッカース
硬さ550以上となる有効硬化層深さが0.6〜1.0mmとなる
浸炭焼入れ・焼もどしを施し、さらに、場合によっては
ショットピーニングによる表面の変形高さであるアーク
ハイトが0.4〜1.0Aとなっているものであることを特徴
としている。 (作用) 次に、本発明における各構成要件の作用効果と共にそれ
ら数値の限定理由について述べる。 Mo/(10Si+100P+Mn+Cr):0.10より大 本発明者は、合金成分の検討過程で得た種々のデータを
綿密に検討した結果、はだ焼鋼の靭性は上記パラメータ
で整理でき、衝撃値と上記パラメータとは良好な相関を
示すことを見出した。 すなわち、第1図は種々の成分組成の鋼を浸炭焼入れ
(910℃で浸炭,830℃で保持後焼入れ),焼もどし(160
℃空冷)した場合の10mmRCノッチシャルピー衝撃値をMo
/(10Si+100P+Mn+Cr)で表わされる比で整理したも
ので、良好な相関を示すことが判る。実用歯車におい
て、急発進などの衝撃的な荷重をも考慮した場合、歯車
用鋼としては2Kgf−m/cm2程度の衝撃値が必要とされて
おり、そのためにはMo/(10Si+100P+Mn+Cr)で表わ
される比が0.10より大きくなければならないが、さらに
安全性を見込むならば、例えば冷間鍛造により歯形を成
形するような場合は0.15より大きくすることがより望ま
しいと言える。 C:0.10〜0.30% Cは、歯車の心部強度を維持するために0.10%以上を必
要とする。しかしC量が高すぎると心部強度が高くなり
すぎ靭性が低下するため0.30%以下に限定される。な
お、冷間鍛造により成形する場合には鍛造性をも考慮し
て0.20%以下とする。 Si:0.15%未満 Siは酸化物形成傾向が大きく、粒界酸化を助長するため
低い程望ましいが0.15%未満であれば許容できる。な
お、冷間鍛造を実施する場合には鍛造性の点から0.10%
未満に限定される。 Mn:0.50〜1.50% Mnは焼入れ性を向上させるのに有効な成分であり、歯車
の心部強度維持のため0.50%以上を必要とする。一方、
多すぎると心部強度が高くなりすぎて靭性を低下させる
ほか、酸化物形成傾向が大きく粒界酸化を助長するので
1.50%を上限とするが、冷間鍛造により歯形を成形する
場合には鍛造性を確保するため0.80%以下とする必要が
ある。 P:0.015%未満 Pは浸炭時、加熱中にオーステナイト粒界に偏析して浸
炭層の靭性を劣化させるため、低い程望ましいが、0.01
5%未満であれば実用上許容できる。 Si0.020%未満 SはMnSなどの介在物を形成し、衝撃破壊の起点となる
ので含有量は低い程望ましいが、0.020%未満であれば
実質的な問題はない。ただし、冷間鍛造を施す場合に
は、鍛造性が劣化するため0.005%未満とする。 Cr:0.50〜1.50% CrはMnと同様焼入れ性を向上させ、歯車の心部強度を維
持させるため0.50%以上を添加するが、多くしすぎると
心部の強度が高くなりすぎ靭性を劣化させるので1.50%
をその上限とする。なお冷間鍛造を実施する場合には鍛
造性の点から1.00%以下に限定される。 Mo:0.30〜0.70% Moは焼入れ性を向上させるばかりでなく、浸炭層の靭性
を高め歯車の耐衝撃性向上に寄与する元素であるが、こ
のような効果を発揮させるには少なくとも0.30%は必要
であるが、0.70%を超えて添加しても効果は、もはやそ
れ以上増大しない。 Al:0.010〜0.050% N:0.005〜0.025% これら元素は、微細なAlN粒子を形成し、オーステナイ
ト結晶粒を微細化する働きがあり、靭性を向上させる。 しかし、Al,N量のいずれかが0.010%,0.005%にそれぞ
れ満たない場合には上記効果が発揮できない。また、そ
れぞれ0.050%,0.025%を超えて添加しても効果はそれ
以上増加されることはない。 O:0.0015%未満 Oは酸化物を形成し、疲労破壊の起点となるため、低い
方が望ましいが、0.0015%未満であれば実質的な問題は
ない。 有効硬化層深さ:0.6〜1.0mm 一般に歯車は、表面層のみを硬化させて、耐摩耗性,耐
疲労性を与えるとともに、心部には靭延性を付与するた
め、浸炭焼入れ・焼もどしを施して使用される。 本発明者は、この処理による有効硬化層(ビッカース硬
さ550以上)深さを0.6〜1.0mmの範囲にコントロールす
ることによって、表面硬化処理による効果が最も有効に
働き、かつ製品としての性能のばらつきが防止できるこ
とを見出した。すなわち、有効硬化層深さが0.6mm以下
では耐摩耗性、疲れ強さが確保できず、逆に1.0mmを超
えると耐衝撃性が劣化する。 なお、このコントロールは、カーボンポテンシャルの調
整,浸炭・拡散時間の調整等によって行うことができ
る。 アークハイト:0.4〜1.0A 耐衝撃性のみならず疲れ強さをも高める場合にショット
ピーニングが有効であるが、アークハイトが0.4A未満で
はその効果がなく、1.0Aを超えた場合にはむしろ靭性を
低下させるため上記範囲に限定した。なお、アークハイ
トはショットピーニングによる素材表面(本発明の場合
は歯車表面)の変形高さを言い、アルメンストリップに
より測定さ、このコントロールは、ショット粒,投射速
度,投射時間,カバレッジ等の調整により行うことがで
きる。 冷間鍛造 冷間鍛造により歯形に沿ったファイバーフローを形成さ
せることにより、疲れ強さ、衝撃強さをともに向上させ
得ることを見出した。 なお、冷間鍛造を施す場合には、鍛造性をも考慮して、
C,Si,Mn,S,Crの各成分範囲がより低く限定される。 (実施例) 第1表に示す合金成分を有する鋼を溶製し、90mm径の棒
鋼に圧延、焼ならしした後、機械加工によって、あるい
は冷間鍛造と機械加工によって、ピッチ円直径:70mm,モ
ジュール:2.5,歯数:28,圧力角:20゜の歯車に加工し、次
いで、浸炭焼入れ・焼もどしを行い、さらに、一部の歯
車にはショットピーニングを施し歯車試験片とした。 この歯車試験片を第2図に示すハンマー1と、モーメン
トアーム2とを備えかつ固定歯車3aおよび回転歯車3bを
備えた歯車衝撃試験機(ハンマー重量:138Kg,ふり子長
さ:1.2m,最大衝撃荷重:4000Kg,最大ハンマー速度:3.4m/
sec)および動力循環式歯車試験機(回転数:3500r.p.m,
歯車:モジュール2.5,歯数:28と32との組合せ)にかけ
て、歯車衝撃破断荷重および歯車疲れ限度をそれぞれ測
定した。 なお、浸炭焼入れは、カーボンポテンシャルを0.8〜0.9
とし、910℃×3時間浸炭、2.5時間拡散,830℃×30分保
持後油冷、次いで、160℃×2時間の焼もどし後空冷の
条件を標準とし、主に浸炭,拡散時間を変えることによ
って有効硬化層深さを調整した。 また、ショットピーニングは、インペラータイプの加工
機を用い、ショット粒:SB−6P,投射速度:40〜80m/sec,
投射時間:2分,カバレッジ:300%を標準とし、主にショ
ット粒,投射速度を変化させることによってアークハイ
トを調整した。アークハイトは市販のアルメンストリッ
プAを用いて測定した。 これらの結果を第2表に示す。 この表に示す結果から明らかなように、本発明例1〜3
の歯車は素材鋼の合金組成が適正で、有効硬化層深さの
適切な熱処理が施されているため、衝撃破断荷重,疲れ
限度ともに良好な値でバランスがとれているのに対し,
鋼中のMo/(10Si+100P+Mn+Cr)で表される比が低い
比較鋼F,G,Iを素材として用いた比較例4,5,7、特にMoが
低くSi,O含有量も高い比較例7では衝撃破断荷重、疲れ
限度共に低い効果となっている。また、O含有量が高く
Al,N量の低い比較鋼Hを用いた比較例6では結晶粒の微
細化が十分でなく、衝撃破断荷重が低い結果となった。 さらに成分的には適切な鋼を用いた場合でも、浸炭焼入
れ条件の選択を誤ると衝撃破断荷重と疲れ限度のバラン
スが崩れた歯車となることが比較例8,9より明らかであ
る。 適正な条件でショットピーニングが加えられた本発明例
10〜12では、特に疲れ限度が改善されるが、比較例14で
見るとおり過度のショットピーニングはかえって衝撃破
断荷重を低下させる。 組成的にもより望ましい範囲の素材鋼D,Eを用いて冷間
鍛造を加えた本発明例15,16の歯車では、極めて優れた
衝撃破断荷重と疲れ限度を示し、さらにこれにショット
ピーニングを施すことにより衝撃破断荷重は若干低下す
るものの、疲れ限度がさらに改善されることが本発明例
17,18から明らかである。
以上説明したように、本発明に係わる歯車は、合金成分
的に最適化した素材鋼を用い、これに最も有効な浸炭焼
入れ、表面加工硬化処理、さらには冷間鍛造による歯形
成形を組合わせ適用することによって、極めて優れた耐
衝撃性と疲労強度を付与したもので、自動車を始めとす
る各種機械類に適用した場合、小型軽量化、性能向上,
信頼性の増大などに果たす効果が大きい。
的に最適化した素材鋼を用い、これに最も有効な浸炭焼
入れ、表面加工硬化処理、さらには冷間鍛造による歯形
成形を組合わせ適用することによって、極めて優れた耐
衝撃性と疲労強度を付与したもので、自動車を始めとす
る各種機械類に適用した場合、小型軽量化、性能向上,
信頼性の増大などに果たす効果が大きい。
第1図は鋼中のMo/(10Si+100P+Mn+Cr)と衝撃靭性
との関係を示すグラフ、第2図は本発明実施例における
歯車の耐衝撃性評価に用いた歯車衝撃試験機を示す概略
図である。
との関係を示すグラフ、第2図は本発明実施例における
歯車の耐衝撃性評価に用いた歯車衝撃試験機を示す概略
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯久保 知人 愛知県名古屋市熱田区一番1丁目20―34
Claims (4)
- 【請求項1】重量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.15%未
満、Mn:0.50〜1.50%、P:0.015%未満、S:0.020%未
満、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.
050%、N:0.005〜0.025%、O:0.0015%未満、残部実質
的にFeからなり、かつ Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.10より大きい鋼を素材
とし、浸炭焼入れ・焼もどし後の有効硬化層深さがビッ
カース硬さ550以上の領域で0.6〜1.0mmとなっているこ
とを特徴とする耐衝撃性に優れる歯車。 - 【請求項2】重量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.15%未
満、Mn:0.50〜1.50%、P:0.015%未満、S:0.020%未
満、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.
050%、N:0.005〜0.025%、O:0.0015%未満、残部実質
的にFeからなり、かつ Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.10より大きい鋼を素材
とし、浸炭焼入れ・焼もどし後の有効硬化層深さがビッ
カース硬さ550以上の領域で0.6〜1.0mmとなっており、
さらに、ショットピーニングによる表面の変形高さであ
るアークハイトが0.4〜1.0Aとなっていることを特徴と
する耐衝撃性に優れる歯車。 - 【請求項3】重量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.10%未
満、Mn:0.50〜0.80%、P:0.015%未満、S:0.005%未
満、Cr:0.50〜1.00%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.
050%、N:0.005〜0.025%、O:0.0015%未満、残部実質
的にFeからなり、かつ Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.15より大きい鋼を素材
として冷間鍛造により歯形成形され、浸炭焼入れ・焼も
どし後の有効硬化層深さがビッカース硬さ550以上の領
域で0.6〜1.0mmとなっていることを特徴とする耐衝撃性
に優れる歯車。 - 【請求項4】重量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.10%未
満、Mn:0.50〜0.80%、P:0.015%未満、S:0.005%未
満、Cr:0.50〜1.00%、Mo:0.30〜0.70%、Al:0.010〜0.
050%、N:0.005〜0.025%、O:0.0015%未満、残部実質
的にFeからなり、かつ Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)が0.15より大きい鋼を素材
として冷間鍛造により歯形成形され、浸炭焼入れ・焼も
どし後の有効硬化層深さがビッカース硬さ550以上の領
域で0.6〜1.0mmとなっており、さらに、ショットピーニ
ングによる表面の変形高さであるアークハイトが0.4〜
1.0Aとなっていることを特徴とする耐衝撃性に優れる歯
車。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26526087A JPH07100840B2 (ja) | 1987-10-22 | 1987-10-22 | 耐衝撃性に優れる歯車 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26526087A JPH07100840B2 (ja) | 1987-10-22 | 1987-10-22 | 耐衝撃性に優れる歯車 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH01108347A JPH01108347A (ja) | 1989-04-25 |
JPH07100840B2 true JPH07100840B2 (ja) | 1995-11-01 |
Family
ID=17414760
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26526087A Expired - Lifetime JPH07100840B2 (ja) | 1987-10-22 | 1987-10-22 | 耐衝撃性に優れる歯車 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07100840B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11332799B2 (en) | 2016-09-09 | 2022-05-17 | Jfe Steel Corporation | Case hardening steel, method of producing the same, and method of producing gear parts |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4853366B2 (ja) * | 2007-04-13 | 2012-01-11 | 住友金属工業株式会社 | ショットピーニングを施した鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品 |
-
1987
- 1987-10-22 JP JP26526087A patent/JPH07100840B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11332799B2 (en) | 2016-09-09 | 2022-05-17 | Jfe Steel Corporation | Case hardening steel, method of producing the same, and method of producing gear parts |
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH01108347A (ja) | 1989-04-25 |
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