JPH07100271B2 - 工具ホルダークランプ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ＮＣ工作機械のスピン
ドルに自動工具交換装置のマニピュレータによって装着
される工具ホルダーをクランプするための工具ホルダー
クランプ装置に関するもので、通常は回転工具が取付け
られる工具ホルダーに溝切りシェーパー等の非回転切削
工具を取付け、スピンドルを固定したままでワークを直
線移動させながら溝切り等の切削加工を行うような場合
に使用される。

【０００２】

【従来の技術】上記のように工具ホルダーに非回転切削
工具を取付け、このホルダーをスピンドルに装着してス
ピンドルを固定したままワークを移動させながら切削加
工を行うような場合、従来では、工具ホルダーをクラン
プするための装置は特に存在せず、ただ、スピンドル先
端に設けてあるホルダー廻り止め用のストッパ片を、工
具ホルダーのマニピュレータ把持用フランジ部に設けら
れた軸方向切欠溝部に係入することによりスピンドルに
対する工具ホルダーの相対回転を阻止しておいて、スピ
ンドルを回転駆動装置の制動作用によって固定させた状
態で上記のような切削加工を行うようにしていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のように単にスピンドル側のストッパ片をホルダー側
の切欠溝部に係入して工具ホルダーをスピンドルに対し
一体的に連結することで工具ホルダーを固定させる方法
では、上記ストッパ片を切欠溝部との間には通常回転方
向に関する若干の間隙があるため、工具ホルダー側に遊
びができてがたを生ずることになり、したがって工具ホ
ルダーを、定位置に確実に固定することができなかっ
た。

【０００４】本発明が解決しようとする課題は、工具ホ
ルダーを定位置に確実に固定できるようにすることであ
る。

【０００５】

【問題点を解決するための手段】本発明は、上記課題を
解決したものであって、次の通りの構成よりなるもであ
る。

【０００６】すなわち、工作機械のスピンドルに取付け
られると共に、外周面に係合凹部を有するホルダー本体
と、工作機械の固定部に設けた流体圧シリンダからなる
クランプ軸駆動手段と、該シリンダのピストンロッドに
連設され、先端の係合軸部が前記係合凹部に係脱自在に
楔係合されるクランプ軸とを備えてなる構成からなるも
のである。そして、上記流体圧シリンダとしては、例え
ばエアシリンダを用いることができる。

【０００７】また関連発明（請求項２）は、工作機械の
スピンドルに取付けられるホルダー本体と、外周面に係
合凹部を有し、ホルダー本体におけるマニピュレータ把
持用フランジの先方側に回転可能に外嵌される取付リン
グと、工作機械の固定部に設けたクランプ軸駆動手段に
よって先端の係合軸部が前記係合凹部に係脱自在に楔係
合されるクランプ軸とを備え、ホルダー本体には取付リ
ングが外嵌される外周面に環状溝を周設し、取付リング
にはその周方向に所要間隔をおいて複数のねじ孔を貫設
し、各ねじ孔には先端部に係合部を有するねじ具をねじ
込んで、その係合部を前記環状溝に楔係合するようにし
たものである。

【０００８】上記クランプ軸の係合軸部と取付リングの
係合凹部とは楔係合するものであるから、係合軸部とし
ては先細テーパ状のもの、即ち、円錐台形状軸部、また
係合凹部としては、少なくとも取付リングの周方向に対
向する内側壁面が係合軸部のテーパに対応するテーパ状
に形成されたものをそれぞれ一例として挙げることがで
きる。

【０００９】また、上記ねじ具の先端係合部としては先
細テーパ状、即ち円錐台形状のものが好ましく、これが
楔係合する環状溝は、該溝の相対向する内側壁面のうち
少なくとも上記フランジ部側から遠い方の内側壁面が先
端係合部のテーパに対応する傾斜状に形成されたものが
好ましい。

【００１０】

【００１１】

【作用】特定発明によれば、ホルダー本体に設けた係合
凹部が、クランプ軸先端の係合軸部と対応するよう位置
合せした状態でホルダー本体を自動工具交換装置のマニ
ピュレータにより把持してスピンドルに装着し、しかる
後クランプ軸駆動手段を作動してクランプ軸先端の係合
軸部をホルダー本体の係合凹部に突入し楔係合すること
によって、その楔作用によってホルダー本体は工作機械
の固定部に動揺やがたつきを生じることなく固定され
る。

【００１２】関連発明によれば、ホルダー本体に取付リ
ングを外嵌し、該リングの各ねじ孔にはねじ具を緩くね
じ込んだ状態で、このホルダー本体を自動工具交換装置
のマニピュレータにより把持してスピンドルに装着し、
そして取付リング外周側の係合凹部を、クランプ軸先端
の係合軸部に対し位置合せすべく回転させる。しかし
て、係合軸部と係合凹部との位置が合った状態で各ねじ
具を締め込んで、係合軸部を係合凹部に楔係合すると、
その楔作用により取付リングがホルダー本体のフランジ
端面に圧接され、それによって取付リングはホルダー本
体に一体的に固定される。こうしてホルダー本体に一体
的に固定された取付リングの係合凹部に対し、クランプ
軸駆動手段を作動してクランプ軸先端の係合軸部を突入
し楔係合すると、その楔作用によってクランプ軸と取付
リングとが一体的に結合され、それによってホルダー本
体は取付リング、クランプ軸、クランプ軸駆動手段を介
して工作機械の固定部に固定される。

【００１３】

【実施例】次に本発明に係る工具ホルダークランプ装置
の一実施例を図１〜図４に基づいて説明する。

【００１４】図１〜図３において１は工作機械のスピン
ドル２に装着されるホルダー本体で、その先端部には溝
切りシェーパー等の非回転切削工具３を固定するチャッ
ク部４が設けられ、後端部側にはスピンドル２のテーパ
穴部５に嵌合されるテーパシャンク部６が、また中間部
にはマニピュレータ把持用のフランジ７がそれぞれ形成
されている。８はホルダー本体１におけるフランジ７の
先方側外周面９に回転可能に外嵌される取付リングであ
り、１０は先端に係合軸部１１を備えたクランプ軸で、
工作機械の固定部１２に取付けられたクランプ軸駆動手
段としてのエアシリンダ１３に連動連結されて、前記取
付リング８の外周面に対し遠近移動可能となっている。

【００１５】上記構造について更に詳しく説明すると、
ホルダー本体１には取付リング８が外嵌配置される外周
面９に環状溝１４が周設してあって、この環状溝１４は
その相対向する内側壁面１９，２０が外方へ拡開するよ
うな傾斜状に形成されている。そしてここに外嵌される
取付リング８には、図３で明らかなように、外周面の１
箇所に上記クランプ軸１０の係合軸部１１と係脱自在に
楔嵌合する係合凹部１５が設けられていると共に、当該
取付リング８の周方向に一定間隔をおいた位置に複数個
（例えば３個）のねじ孔１６が貫設されている。

【００１６】上記係合凹部１５は図１〜図３を参照して
明らかなように、取付リング８の一端面から切り欠かれ
たような平面視略Ｕ字状の切欠溝よりなるもので、取付
リンク８の周方向に相対向する内側壁面２１，２１が外
方へ拡開するようなテーパ状に形成され、またこの係合
凹部１５の溝奥壁面部分も前記テーパに対応する傾斜面
状に形成されている（図１参照）。この係合凹部１５に
楔係合するクランプ軸１０の係合軸部１１は前記内側壁
面２１，２１のテーパに対応するテーパをもつ円錐台形
状に形成されている。

【００１７】上記取付リング８の各ねじ孔１６には先端
部に係合部１７を有するねじ具１８がねじ込まれ、その
係合部１７が前記環状溝部１４に楔係合される。この係
合部１７は環状溝部１４の傾斜状内側壁面１９，２０に
対応するテーパをもつ円錐台形状に形成されている。

【００１８】しかして、取付リング８をホルダー本体１
上に取付け固定するにあたっては、この取付リング８を
ホルダー本体１の外周面９にその先方側より外嵌して取
付リング８の後側端面がフランジ７の先方側端面２２に
当接した状態で各ねじ具１８を各ねじ孔１６にねじ込
み、先端のテーパ状係合部１７を図１に示すようにフラ
ンジ７から遠い方の傾斜状内側壁面１９に摺接係合させ
つつ、このねじ具１８を締め込むと、テーパ状係合部１
７と傾斜状内側壁面１９の楔作用により取付リング８が
フランジ７側に引き寄せられて、この取付リング８の後
側端面がフランジ７の端面２２に強力に圧接され、これ
によって取付リング８はホルダー本体１上の定位置に固
定されることになる。

【００１９】尚、各ねじ具１８が各ねじ孔１６にねじ込
まれて先端係合部１７が環状溝１４の一方の傾斜状内側
壁面１９に係合するに至った状態において、この係合部
１７と他方の傾斜状内側壁面２０との間にわずかに間隙
ができるように設定されている。また、各ねじ具１８に
は図４にも示すようにその基端面側に回転操作具係合穴
２３が設けてあり、この係合穴２３に適当な回転操作具
を係合させてねじ込みあるいは取外しを行えるようにな
っている。

【００２０】駆動手段としてのエアシリンダ１３は、図
１で明らかなように、シリンダ本体２４を取付台２５を
介して工作機械の固定部１２に取着し、シリンダ本体２
４の竪形シリンダ室２６にピストン２７を上下摺動可能
に配置すると共に、シリンダ室２６の上部室２８をエア
室とし、下部室２９にはピストン２７とシリンダ本体２
４との間にピストン２７を常時上向きに付勢するコイル
ばね３０を介装してなるもので、ピストンロッド３６の
下端部にクランプ軸１０を一体的に連結している。

【００２１】したがってこのエアシリンダ１３によれ
ば、エア供給管３１よりシリンダ室２６の上部室２８に
圧力エアが供給されると、ピストン２７がコイルばね３
０の付勢力に抗し下動し、それによりクランプ軸１０が
図１、図２の一点鎖線図示位置より同図実線図示位置へ
と下降して先端の係合軸部１１が取付リング８の係合凹
部１５に係合し、ホルダー本体１が固定されることにな
り、また圧力エアが排気されると、ピストン２７がコイ
ルばね３０で押し上げられ、クランプ軸１０の係合軸部
１１は係合凹部１５から脱離し、ホルダー本体１の固定
が解除される。

【００２２】また、マニピュレータ把持用のフランジ７
にはその直径方向両側部に一対の軸方向切欠溝部３２，
３２が設けてあり、そしてこれら一対の切欠溝部３２，
３２に係入しうるストッパ片３３，３３がスピンドル２
の先端面に突設されている。尚、非回転切削工具固定用
のチャック部４は、例えばホルダー本体１の先端部に挿
着される割りコレット３４と、このコレット３４に係合
しホルダー本体１の先端部に螺嵌される締付ナット３５
よりなるものである。

【００２３】次に、上述したような構成を有する工具ホ
ルダークランプ装置の使用態様を説明する。

【００２４】先ず、所要の非回転切削工具３を装着した
ホルダー本体１を自動工具交換装置のマニピュレータ
（図示せず）により把持してスピンドル２に装着する。
このホルダー本体１のスピンドル２への装着に際して
は、ホルダー本体１のテーパシャンク部６をスピンドル
２のテーパ穴部５に挿入する前に、マニピュレータによ
って把持されているホルダー本体１のフランジ７の切欠
溝部３２とこれに係入するスピンドル２側のストッパ片
３３との位置合せを行うために、工作機械側のスピンド
ル駆動装置によりスピンドル２を数回駆動回転させなが
ら位置検出センサー（図示せず）によってストッパ片３
３の位置を切欠溝部３２の位置に合せ、こうして位置合
せした時点ではスピンドル２はその駆動装置により制動
されてロックされた状態にあり、しかしてその後マニピ
ュレータによってホルダー本体１のテーパシャンク部６
をスピンドル２のテーパ穴部５に挿入し、同時に切欠溝
部３２にストッパ片３３を係入する。尚、このとき、ク
ランプ軸１０は図１、図２の一点鎖線図示位置（非クラ
ンプ位置）に待機しており、また取付リング８はホルダ
ー本体１の外周面９に回転可能な状態に嵌合されてい
る。つまり、ねじ具１８は先端の係合部１７がホルダー
本体１側の環状溝部１４に軽く当接する程度にねじ孔１
６に緩くねじ込んである。

【００２５】上記のようにしてホルダー本体１をスピン
ドル２に装着した後、ホルダー本体１上の取付リング８
を手で適宜回転させながらこの取付リング８の係合凹部
１５の位置をクランプ軸１０の係合軸部１１の位置に合
せる。しかして、係合軸部１１に対する係合凹部１５の
位置合せを終えたならば、各ねじ具１８を強く締め込
み、環状溝部１４の傾斜状内側壁面１９に対する各ねじ
具１８先端の係合部１７の楔係合により取付リング８を
フランジ７側へ引き寄せて、取付リング８の後側端面を
フランジ７の端面２２に圧接し、これによって取付リン
グ８をホルダー本体１に一体的に固定する。

【００２６】しかる後、エアシリンダ１３の作動させ
て、クランプ軸１０を下降し先端の係合軸部１１を取付
フランジ８の係合凹部１５に係入させる。これによりテ
ーパ状係合軸部１１が係合凹部１５の傾斜状内側壁面２
１，２１に楔係合し、この取付フランジ８を介してホル
ダー本体１がクランプされる。こうしてホルダー本体１
をクランプした後、チャック部４に固定された非回転切
削工具３によって所要の切削加工を行う。すなわち、工
作機械側は固定したまま、ワーク側を所要の直線方向に
移動させつつ、非回転切削工具３によって例えば溝切り
加工を行う。

【００２７】上記の切削加工においては、ホルダー本体
１が上述したクランプ装置によって定位置に確実に固定
されているから、非回転切削工具３がガタつきを生ずる
ことがない。

【００２８】

【発明の効果】本発明のホルダークランプ装置によれ
ば、工具ホルダーを定位置に確実に固定することがで
き、スピンドルとホルダー本体とを連結するストッパ片
と切欠溝部との間に隙間があってホルダー本体側に遊び
ができていても、切削加工中に非回転切削工具がガタつ
きを生ぜず、したがって加工精度の向上を図ることがで
きる。また、クランプ軸駆動手段として流体圧シリンダ
を用い、このピストンロッドにクランプ軸を連設するよ
うにしたため、一層簡単且つコンパクトな構成によって
ホルダー本体をガタつくことなく定位置に固定すること
ができる。

【００２９】また、そのうち関連発明によれば、取付リ
ングをホルダー本体に対し回転可能とすることができる
から、クランプ操作を行う際に、取付リングの係合凹部
が任意の位置にあっても、この取付リングを適宜回転さ
せることによって、その係合凹部を固定位置にあるクラ
ンプ軸の係合軸部に対して容易に位置決めすることがで
きる。

【００３０】そして、係合軸部を先細テーパ状に形成
し、係合凹部は取付リングの周方向に対向する内側壁面
をテーパ状に形成することによって、係合軸部と係合凹
部との楔作用がより有効となる。また同様に、ねじ具の
先端係合部を先細テーパ状と成し、環状溝はその相対向
する内側壁面のうち少なくともフランジ側から遠い方の
内側壁面を傾斜状と成すことによって、先端係合部と環
状溝との楔作用がより有効となる。

【００３１】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す工具ホルダークランプ
装置の一部断面側面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線断面図である。

【図３】ホルダー本体から取付リングを取り外した状態
の一部欠截分解斜視図である。

【図４】ねじ具を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ ホルダー本体 ２ スピンドル ３ 非回転切削工具 ７ マニピュレータ把持用のフランジ ８ 取付リング ９ ホルダー本体におけるフランジの先方側外周面 １０ クランプ軸 １１ 係合軸部 １３ エアシリンダ（クランプ軸駆動手段） １４ 環状溝 １５ 係合凹部 １６ ねじ孔 １７ 係合部 １８ ねじ具 １９ 環状溝の傾斜状内側壁面 ２０ 環状溝の傾斜状内側壁面 ２１ 係合凹部の傾斜状内側壁面

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】工作機械のスピンドルに取付けられると共
   に、外周面に係合凹部を有するホルダー本体と、工作機
   械の固定部に設けた流体圧シリンダからなるクランプ軸
   駆動手段と、該シリンダのピストンロッドに連設され、
   先端の係合軸部が前記係合凹部に係脱自在に楔係合され
   るクランプ軸とを備えてなる工具ホルダークランプ装
   置。
2. 【請求項２】工作機械のスピンドルに取付けられるホル
   ダー本体と、外周面に係合凹部を有し、ホルダー本体に
   おけるマニピュレータ把持用フランジの先方側に回転可
   能に外嵌される取付リングと、工作機械の固定部に設け
   たクランプ軸駆動手段によって先端の係合軸部が前記係
   合凹部に係脱自在に楔係合されるクランプ軸とを備え、
   ホルダー本体には取付リングが外嵌される外周面に環状
   溝を周設し、取付リングにはその周方向に所要間隔をお
   いて複数のねじ孔を貫設し、各ねじ孔には先端部に係合
   部を有するねじ具をねじ込んで、その係合部を前記環状
   溝に楔係合するようにしてなる請求項１記載の工具ホル
   ダークランプ装置。
3. 【請求項３】上記クランプ軸の係合軸部は先細テーパ状
   に形成され、これが係合する係合凹部は、少なくともホ
   ルダー本体または取付リングの周方向に対向する内側壁
   面がテーパ状に形成されている請求項１または２記載の
   工具ホルダークランプ装置。
4. 【請求項４】上記ねじ具の先端係合部は先細テーパ状に
   形成され、これが係合する取付リングの環状溝は、該溝
   の相対向する内側壁面のうち少なくとも前記フランジ側
   から遠い方の内側壁面が傾斜状に形成されている請求項
   ２または３記載の工具ホルダークランプ装置。