JPH0695290A - 粘土薄膜およびその製造方法 - Google Patents

粘土薄膜およびその製造方法

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JPH0695290A
JPH0695290A JP4268114A JP26811492A JPH0695290A JP H0695290 A JPH0695290 A JP H0695290A JP 4268114 A JP4268114 A JP 4268114A JP 26811492 A JP26811492 A JP 26811492A JP H0695290 A JPH0695290 A JP H0695290A
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thin film
clay thin
hydrotalcite
producing
molecule
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JP4268114A
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English (en)
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Tsuneo Kuwabara
恒男 桑原
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TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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Publication date
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  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)
  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 機能性分子を吸着して層間化合物を形成する
ことのできる透明度の高い粘土薄膜を提供することを目
的とし、また、このような粘土薄膜に機能性分子が吸着
された機能性粘土薄膜を提供することを目的とする。 【構成】 0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層
間化合物の水分散液を膜状化して乾燥し、次いで、必要
に応じて熱処理を施して層間のゲスト種の少なくとも一
部を排出した後、フォトクロミック分子等の機能性分子
を層間に吸着させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フォトクロミック分子
等の機能性分子をゲスト種として吸着可能な粘土薄膜
と、前記ゲスト種が吸着された粘土薄膜と、これらの薄
膜の製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】粘土鉱物などの無機層状結晶物質の層間
に有機機能材料を挿入して層間化合物を形成し、新しい
機能を発現させようとする試みが近年盛んになっている
が、その多くは粉体での取り扱いである。
【0003】このような層間化合物を実用化するにあた
っては、薄膜化することによりその適用範囲を大幅に広
げることができる。また、透明な薄膜となれば、光学的
な応用分野も広がる。
【0004】ところで、超高密度記録が可能な次世代の
光記録材料としてフォトンモード記録材料が注目され、
スピロピラン系化合物等のフォトクロミック材料につい
て多くの検討がなされているが、着色体の安定性、非破
壊読み出し、繰り返し耐久性などについて多くの問題が
あり、未だ実用化には至っていない。フォトクロミック
材料の一種であるスピロベンゾピラン類は、光照射前後
での吸収スペクトルの差が大きく、置換基を選択するこ
とにより多彩な発色が得られるなどの特徴をもつが、熱
的安定性が低い。このため、スピロベンゾピラン類をバ
インダ樹脂中に分散させる方法が試みられている。しか
し、この場合、記録、読み出し、消去の速度が低下し、
光記録材料としての性能が低下してしまうという問題が
あった。このため、上記した層間化合物を利用する各種
の提案がなされている。
【0005】例えば、特公平4−16776号公報で
は、直鎖状の高級アルキル基を有するカチオン性界面活
性剤とアニオン性層状粘土化合物とのイオンコンプレッ
クスより得られた粘土と二分子膜の複合層状構造を有す
るフィルム中に、スピロベンゾピラン類を分散させた光
記録材料を提案している。この提案では、アニオン性層
状粘土化合物として、イオン交換性ケイ酸塩でカチオン
性有機化合物を層間に挿入できるもの、例えばモンモリ
ロナイトなどが用いられている。そして、層間化合物を
形成後、キャスト法により厚さ0.01mmのフィルムを
形成している。
【0006】また、特開平2−264246号公報に
は、スピロピランを容易にしかも安定性高く固相系マト
リックスに担持させる提案として、カチオン性のスピロ
ピランを用い、モンモリロナイト等の三層構造をもつケ
イ酸塩鉱物(スメクタイト群鉱物)をマトリックスとし
て用いることが開示されている。同公報では、スピロピ
ラン吸着後のマトリックスを遠心分離し、沈殿部分をメ
ンブレンフィルターにて減圧濾過し、さらに、減圧下、
室温にて乾燥させることにより、フィルターから淡黄色
の粘土−スピロピラン複合体フィルムを剥離させてい
る。
【0007】しかし、スメクタイトは薄膜化した場合、
透明度が低い。このため、フォトクロミック薄膜などの
光学的用途に適用した場合、良好なS/Nが得られにく
い。また、上記各提案では、アニオン性のスピロピラン
系化合物の安定性を向上させることはできないので、置
換基の選択に制限が生じ、発色等が制限されてしまう。
【0008】なお、特開平4−151142号公報に
は、アニオン性基を有するフォトクロミック物質とカチ
オン性界面活性物質とでイオンコンプレックスを形成
し、ラングミュア−ブロジェット法を用い前記イオンコ
ンプレックスの薄膜を形成する方法が開示されている
が、ラングミュア−ブロジェット法では、大面積の膜を
均一に形成することが困難であり、また、工業的に量産
することが難しい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、機能性分子
を吸着して層間化合物を形成することのできる透明度の
高い粘土薄膜を提供することを目的とし、また、このよ
うな粘土薄膜に機能性分子が吸着された機能性粘土薄膜
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(14)の本発明により達成される。 (1)ハイドロタルサイト型化合物が含まれることを特
徴とする粘土薄膜。 (2)厚さが0.1μm 以上であり、可視域における光
学密度が1000cm-1以下である上記(1)の粘土薄
膜。 (3)層間化合物のホスト種としてハイドロタルサイト
型化合物が含まれる上記(1)または(2)の粘土薄
膜。 (4)アニオン性のフォトクロミック分子とアニオン性
極性分子とがハイドロタルサイト型化合物のゲスト種と
して含まれる上記(3)の粘土薄膜。 (5)中性のフォトクロミック分子と非極性分子とがハ
イドロタルサイト型化合物のゲスト種として含まれる上
記(3)の粘土薄膜。 (6)前記フォトクロミック分子がスピロピラン系化合
物である上記(4)または(5)の粘土薄膜。 (7)上記(1)または(2)の粘土薄膜を製造する方
法であって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系
層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥し、次いで、熱
処理により層間のゲスト種の少なくとも一部を排出する
ことを特徴とする粘土薄膜の製造方法。 (8)上記(3)の粘土薄膜を製造する方法であって、
0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層間化合物の
水分散液を膜状化して乾燥することを特徴とする粘土薄
膜の製造方法。 (9)上記(3)の粘土薄膜を製造する方法であって、
0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層間化合物の
水分散液を膜状化して乾燥し、次いで、熱処理によりゲ
スト種を排出した後、ハイドロタルサイト型化合物の層
間に他のゲスト種を吸着することを特徴とする粘土薄膜
の製造方法。 (10)上記(3)の粘土薄膜を製造する方法であっ
て、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層間化合
物の水分散液中においてゲスト交換を行なった後、水分
散液を膜状化して乾燥することを特徴とする粘土薄膜の
製造方法。 (11)上記(4)または(6)の粘土薄膜を製造する
方法であって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト
系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥した後、ハイ
ドロタルサイト型化合物の層間にアニオン性のフォトク
ロミック分子とアニオン性極性分子とを吸着することを
特徴とする粘土薄膜の製造方法。 (12)水分散液を膜状化して乾燥した後、ハイドロタ
ルサイト型化合物の層間にアニオン性のフォトクロミッ
ク分子とアニオン性極性分子とを吸着する前に、熱処理
により層間のゲスト種の少なくとも一部を排出する上記
(11)の粘土薄膜の製造方法。 (13)上記(5)または(6)の粘土薄膜を製造する
方法であって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト
系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥した後、ハイ
ドロタルサイト型化合物の層間にアニオン性極性分子を
吸着させる第1処理と、中性のフォトクロミック分子と
その溶媒を構成する非極性分子とをハイドロタルサイト
型化合物の層間に吸着させる第2処理とをこの順で行な
うことを特徴とする粘土薄膜の製造方法。 (14)水分散液を膜状化して乾燥した後、第1処理を
行なう前に、熱処理により層間のゲスト種の少なくとも
一部を排出する上記(13)の粘土薄膜の製造方法。
【0011】
【作用および効果】本発明の粘土薄膜は、ハイドロタル
サイト型化合物を含むので、極めて透明度が高く、上記
のような光学密度が得られる。このため、光学的性質を
利用する機能性分子を吸着させた場合に、機能性分子の
作用が阻害されない。例えば、機能性分子としてフォト
クロミック分子を用いた場合には、極めて良好なS/N
およびコントラストが得られる。そして、ハイドロタル
サイト型化合物の層間に挿入することにより、機能性分
子の安定性が向上する。
【0012】この粘土薄膜は、ハイドロタルサイト系層
間化合物の水分散液を膜状化して乾燥することにより形
成する。そして、この薄膜と機能性分子の溶液とを反応
させれば、ハイドロタルサイト系層間化合物のゲスト種
と機能性分子とがゲスト交換により入れ替わり、機能性
を有する粘土薄膜が形成される。また、層間化合物の種
類によっては、薄膜に熱処理を施して予め層間のゲスト
種を排出することで機能性分子の吸着が容易となるの
で、必要に応じて熱処理を施した後、機能性分子を吸着
する。
【0013】本発明では上記範囲の濃度の水分散液を用
いるので、大面積の膜を割れなく形成することができ
る。
【0014】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0015】本発明の粘土薄膜には、ハイドロタルサイ
ト型化合物が含まれる。本発明は、フォトクロミック分
子等の機能性分子を吸着する担体となる粘土薄膜と、機
能性分子を吸着している粘土薄膜、すなわち、ハイドロ
タルサイト型化合物と機能性分子とが層間化合物を構成
している粘土薄膜とを包含するが、まず、担体となる粘
土薄膜について説明する。
【0016】ハイドロタルサイト型化合物は、MgO6
やZnO6 などとAlO6 とからなる八面体シートで構
成される粘土鉱物であり、Mg2+、Zn2+等がAl3+
置換されることによって、層状骨格がカチオン性を帯び
ている。このため、層間に無機アニオンやアニオン性有
機分子を取り込むことができる。ハイドロタルサイト型
化合物は、例えば「表面 vol.30,No.7,598-607,(1992)
」などに記載されている。
【0017】本発明で用いるハイドロタルサイト型化合
物は特に限定されないが、通常、マグネシウム−アルミ
ニウムハイドロタルサイト型化合物が好ましい。マグネ
シウム−アルミニウムハイドロタルサイト型化合物は、
層間に炭酸イオンが挿入されている場合、{Mg1-x
x (OH)2 }(CO3x/2 (通常、xは0.2〜
0.33)}で表わされる。層間にイオンが挿入されて
いる場合のマグネシウム−アルミニウムハイドロタルサ
イト型化合物の単位層の構造は、下記化1で表わされ
る。
【0018】
【化1】
【0019】この粘土薄膜は、ハイドロタルサイト型化
合物の水分散液を膜状化して乾燥することにより製造さ
れる。前記水分散液の濃度は、0.1〜5重量%とする
ことが好ましい。濃度が前記範囲未満となると均一な膜
状化が難しくなり、前記範囲を超えると乾燥時に粘土薄
膜に割れが頻発する。
【0020】水分散液を膜状化するためには、均質に膜
状化できる方法、例えばディップコート法、スピンコー
ト法、キャスト法などを用いて基板上に塗布する方法を
用いればよい。この場合の基板の材質としては、ガラス
やセラミックス、樹脂等から適宜選択すればよいが、後
述する熱処理を施す場合には、耐熱性の材質を用いるこ
とが好ましい。
【0021】粘土薄膜の厚さは0.1μm 以上とするこ
とが好ましい。厚さが0.1μm 未満の均質な膜を形成
することは困難である。粘土薄膜の厚さの上限は特にな
いが、通常、100μm 以下とする。膜を厚くすれば機
能性分子の吸着量も増えるが、膜を厚くしてしかも大面
積にした場合には、膜に割れが発生しやすい。このため
膜を厚くする必要のある場合には、膜を面積の小さな単
位に区分して割れを防ぐことが好ましい。具体的には、
例えば光ディスクなどに適用する場合には、基板に同心
円状やスパイラル状のグルーブを設け、このグルーブ内
に粘土薄膜を形成することが好ましい。また、画像等の
表示パネルに適用する場合には、基板上に画素ごとに矩
形や円形等の凹部を設け、各凹部内に粘土薄膜を形成す
ることが好ましい。
【0022】上記のようにして形成された粘土薄膜は、
ハイドロタルサイト型化合物の粉末の製造方法によって
も異なるが、ハイドロタルサイト型化合物をホスト種と
し、その層間に炭酸イオン等のゲスト種が吸着している
層間化合物からなる。この粘土薄膜に機能性分子を吸着
するためには、機能性分子の溶液と粘土薄膜とを反応さ
せる。
【0023】また、ゲスト交換が困難な場合には、この
ようにして形成された粘土薄膜に熱処理を施し、炭酸イ
オン等のゲスト種の少なくとも一部を排出してもよい。
この場合の熱処理条件は、400〜600℃で1〜5時
間程度とすることが好ましい。処理温度が低すぎたり処
理時間が短すぎるとゲスト種の排出が不十分となり、機
能性分子の吸着が困難となることがある。処理温度が高
すぎたり処理時間が長すぎると、薄膜や基板に応力が発
生することがあり、薄膜が割れたり剥離したりするおそ
れがある。また、基板の材料が限定されてしまう。
【0024】このような熱処理を施した粘土薄膜中で
は、ハイドロタルサイト型化合物はゲスト種の少なくと
も一部を失う他、熱分解により構造の一部が変化するこ
ともある。
【0025】本発明の粘土薄膜はハイドロタルサイト型
化合物を主成分とするため、機能性分子を吸着しない状
態において、可視域(波長400〜800nm程度)にお
ける光学密度を1000cm-1以下とすることができ、極
めて高い透明度が得られる。
【0026】本発明の粘土薄膜には、種々の機能性分子
を吸着させることができる。ハイドロタルサイト型化合
物はアニオン吸着能を有するので、各種アニオン性分
子、例えば、フォトクロミック材料等の各種感光材料、
ルミネッセンス材料、フォトリフラクティブ材料、フォ
トメカニカル材料、PHB材料、非線型光学材料等の各
種分子を吸着することができる。また、中性分子も吸着
させることができるが、この場合、アニオン性極性分子
を予め吸着させて層間を拡大しておき、次いで中性分子
と反応させることにより、中性分子を容易に吸着させる
ことができる。
【0027】以下、機能性分子吸着の一例として、本発
明の粘土薄膜にアニオン性のフォトクロミック分子を吸
着させる方法を説明する。
【0028】フォトクロミック分子は、アゾ色素やイン
ディゴ色素等のシス−トランス異性型、フルギド等の閉
環反応型、スピロピラン系化合物等の開環反応型などか
ら選択することができるが、上述したようにフォトクロ
ミック特性が良好であることから、スピロピラン系化合
物を用いることが好ましい。
【0029】スピロピラン系化合物としては、下記化2
に示される一般式で表わされるスピロベンゾピラン系化
合物が好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】上記化2において、X、R1 、R2 および
3 は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、スルホン
基、カルボキシル基、リン酸基、ニトロ基、水酸基、ア
ルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル
基、アルキルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基等
から適宜選択することができ、X、R1 、R2 およびR
3 のうち少なくとも一つをアニオン性を示す基とすれば
よい。前記アルキル基としては、炭素数が1〜5程度の
ものが好ましい。また、アルキル基は、スルホン基、カ
ルボキシル基、リン酸基、ニトロ基、水酸基、アミノ基
等の置換基を有していてもよい。また、スルホン基は、
トリエチルアミン等のアミンと塩を形成していてもよ
い。
【0032】具体的には、アニオン性を与える基、例え
ばスルホン基、カルボキシル基またはリン酸基、あるい
はこれらを有する基を、X、R1 、R2 およびR3 の少
なくとも1箇所に有する化合物を用いればよい。下記表
1に具体的化合物例を示す。
【0033】
【表1】
【0034】粘土薄膜にアニオン性のフォトクロミック
分子を吸着させる場合、フォトクロミック分子とアニオ
ン性極性分子とをゲスト種として共吸着させることが好
ましい。
【0035】この場合に用いるアニオン性極性分子は、
有機分子であることが好ましく、例えば、芳香族や脂肪
族のスルホン酸、カルボン酸などの各種有機酸、具体的
には、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフ
タリンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホ
ン酸や、これらの誘導体であるナフトールスルホン酸、
スルファニル酸など、あるいは、安息香酸やナフトエ
酸、各種脂肪酸、これらの誘導体などから選択すること
が好ましい。
【0036】アニオン性フォトクロミック分子は、下記
の方法により吸着させることが好ましい。まず、フォト
クロミック分子およびアニオン性極性分子を水に加え、
これらを溶解して反応液を調製する。アニオン性極性分
子とフォトクロミック分子のモル比率は、アニオン性極
性分子が過剰であることが好ましい。次いで、40〜8
0℃程度に保った反応液中に上記粘土薄膜を浸漬して1
〜100時間程度反応を進め、フォトクロミック分子お
よびアニオン性極性分子を吸着させた後、乾燥する。な
お、反応は不活性ガス雰囲気下で行なうことが好まし
い。
【0037】粘土薄膜に対するフォトクロミック分子お
よびアニオン性極性分子の合計吸着量は、0.1〜3me
q/g 程度である。
【0038】また、この他、まず、アニオン性極性分子
の水溶液に粘土薄膜を浸漬してハイドロタルサイト型化
合物の層間にアニオン性極性分子を吸着させた後、乾燥
し、次いで、アニオン性フォトクロミック分子の水溶液
中においてフォトクロミック分子をハイドロタルサイト
型化合物の層間に吸着する方法を用いてもよい。
【0039】なお、アニオン性フォトクロミック分子を
吸着させる粘土薄膜には、必要に応じて前述した熱処理
を施してもよい。
【0040】次に、粘土薄膜に中性のフォトクロミック
分子を吸着させる場合について説明する。この場合、中
性のフォトクロミック分子と非極性分子とがハイドロタ
ルサイト型化合物のゲスト種となる構成とすることが好
ましい。
【0041】中性のフォトクロミック分子の吸着には、
下記の方法を用いることが好ましい。この方法では、ハ
イドロタルサイト型化合物の層間にアニオン性極性分子
を吸着させる第1処理と、中性のフォトクロミック分子
とその溶媒を構成する非極性分子とをハイドロタルサイ
ト型化合物の層間に吸着させる第2処理とをこの順で行
なう。
【0042】中性のフォトクロミック分子としては、中
性のスピロピラン系化合物が好ましく、上記化2の一般
式において、化合物が全体として中性を示すようにX、
1、R2 およびR3 が適宜選択されたものが好まし
い。この場合のX、R1 、R2およびR3 としては、水
素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、アルキル
基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、ア
ルキルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基のいずれ
かであることが好ましい。前記アルキル基としては、炭
素数が1〜5程度のものが好ましい。また、アルキル基
は、ニトロ基、水酸基等の置換基を有していてもよい。
【0043】下記表2に具体的化合物例を示す。
【0044】
【表2】
【0045】中性スピロピラン系化合物をハイドロタル
サイト型化合物の層間に直接挿入することは容易ではな
いが、まず第1処理として、スルホン基等を有するアニ
オン性極性分子を挿入することによりハイドロタルサイ
ト型化合物の層間を拡大し、次いで第2処理を施すこと
により、非極性分子と中性スピロピラン系化合物とを容
易に吸着することができる。第1処理において挿入され
たアニオン性極性分子は、第2処理において非極性分子
および中性スピロピラン系化合物に少なくとも一部が交
換され、フォトクロミズムを示す層間化合物が得られ
る。
【0046】第1処理では、アニオン性極性分子を水に
加えて溶解し、反応液を調製する。次いで、40〜80
℃程度に保った反応液中に粘土薄膜を浸漬し、1〜10
0時間程度保持して反応を進め、アニオン性極性分子を
ハイドロタルサイト型化合物の層間に吸着させる。な
お、反応は不活性ガス雰囲気下で行なうことが好まし
い。また、この場合、粘土薄膜には上記した熱処理を施
しておいてもよい。
【0047】得られた層間化合物薄膜を反応液から引き
上げて乾燥した後、第2処理を行なう。
【0048】第2処理では、中性フォトクロミック分子
を非極性分子からなる溶媒中に加えて溶解し、反応液を
調製する。このときに用いる非極性分子は特に限定され
ないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサ
ンなどの環状化合物、常温で液体の脂肪族炭化水素、こ
れらのハロゲン化物、アセトンなどのケトン類、テトラ
ヒドロフラン等から選択することが好ましい。
【0049】次いで、アニオン性極性分子を吸着してい
る粘土薄膜を反応液中に浸漬して第1処理と同様な条件
下で反応を進め、ゲスト交換を行なう。これにより、ア
ニオン性極性分子の少なくとも一部に替わってフォトク
ロミック分子および溶媒の非極性分子がハイドロタルサ
イト型化合物の層間に共吸着される。得られた層間化合
物は、非極性溶媒により湿潤された状態でフォトクロミ
ック材料として用いることが好ましいが、乾燥して用い
てもよい。
【0050】第1処理において粘土薄膜に対するアニオ
ン性極性分子の吸着量は、0.1〜3meq/g 程度であ
る。また、第2処理において粘土薄膜に対するフォトク
ロミック分子および非極性分子の合計吸着量は、0.1
〜2meq/g 程度である。
【0051】なお、層間化合物が形成されていること
は、X線回折、FTIR等により確認することができ、
層間への挿入量は、ガス分析や熱分析等により測定する
ことができる。
【0052】本発明で用いるハイドロタルサイト型化合
物、フォトクロミック分子、アニオン性極性分子、非極
性分子などは、常法に従って製造すればよく、あるいは
市販のものを用いてもよい。
【0053】以上では、粘土薄膜形成後に機能性分子を
吸着させる態様について説明したが、粘土薄膜形成の際
に用いる水分散液中においてゲスト交換により機能性分
子を吸着した後、膜状化して粘土薄膜を形成する態様も
本発明に包含される。
【0054】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0055】<ハイドロタルサイト型化合物の合成>下
記A液とB液とを準備した。 A液:NaOH8.0g とNa2 CO3 0.53g とを
1リットルの蒸留水に溶解した溶液 B液:Mg(NO32 2.60g とAl(NO33
1.60g とを50mlの蒸留水に溶解した溶液
【0056】常温でA液にB液を加えて2時間攪拌し、
白色の沈殿を得た。遠心分離機により沈殿と溶媒とを分
離し、沈殿をA液と同組成の液で3回洗浄した。さらに
蒸留水で3回洗浄した後、水を分離し、炭酸イオンを層
間に取り入れているマグネシウム−アルミニウムハイド
ロタルサイト型化合物を含むゼリー状の固形物を得た。
この固形物中のハイドロタルサイト型化合物の含有率を
乾燥法(80℃で6時間乾燥後に秤量)により測定した
ところ、9重量%であった。
【0057】次に、上記固形物を用いてハイドロタルサ
イト型化合物の1重量%水分散液を調製し、ディップコ
ート法により清浄なガラス基板上に塗布し、60℃で5
時間乾燥させたところ、厚さ約2μm の透明な連続薄膜
が得られた。波長400nmにおけるこの薄膜の光学密度
は、100cm-1であった。X線回折の結果、このときの
層間隔は8A であった。なお、可視光の吸収は400nm
で最大であった。膜厚は段差計(DekTak)により、光学
密度はVIS-UV分光光度計により求めた。
【0058】この薄膜を450℃で3時間熱処理したと
ころ、透明性はほぼ維持され、厚さの変化も認められ
ず、基板から剥離することもなかった。熱処理後の薄膜
の400nmにおける光学密度は200cm-1であった。こ
の熱処理により、薄膜は炭酸イオンが脱離したマグネシ
ウム−アルミニウムハイドロタルサイト型化合物(Mg
0.7 Al0.31.15)に変化し、X線回折の結果、この
ときの層間隔は4A であった。
【0059】熱処理後の薄膜を1meq/l のスピロベンゾ
ピラン系化合物{上記化2において、XがH、R1 が−
(CH23 SO3 H・N(C253 、R2 がNO
2 、R3 がHである化合物(日本感光色素製SP−15
0)}水溶液に浸漬し、窒素雰囲気下60℃で24時間
保持した後、乾燥し、薄膜の吸収スペクトルを測定した
ところ、水溶液中のSP−150と類似した吸収スペク
トルが得られ、SP−150が吸着されていることが推
定された。また、X線回折の結果、このときの層間隔は
8A であった。
【0060】比較のために、ハイドロタルサイト型化合
物の10重量%水分散液を調製し、これを用いて上記と
同様にして薄膜化したところ、60℃で5時間の乾燥に
より膜にクラックが発生し、基板から剥離してしまっ
た。
【0061】また、カチオン吸着能を有する粘土鉱物で
あるモンモリロナイト{クニミネ工業(株)製クニピア
−F}の1重量%水分散液を調製して薄膜化したとこ
ろ、連続薄膜が得られたが、この薄膜は白色であり、4
00nmにおける光学密度は3000cm-1であって、透明
度が不十分であった。
【0062】以上の実施例の結果から、本発明の効果が
明らかである。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハイドロタルサイト型化合物が含まれる
    ことを特徴とする粘土薄膜。
  2. 【請求項2】 厚さが0.1μm 以上であり、可視域に
    おける光学密度が1000cm-1以下である請求項1の粘
    土薄膜。
  3. 【請求項3】 層間化合物のホスト種としてハイドロタ
    ルサイト型化合物が含まれる請求項1または2の粘土薄
    膜。
  4. 【請求項4】 アニオン性のフォトクロミック分子とア
    ニオン性極性分子とがハイドロタルサイト型化合物のゲ
    スト種として含まれる請求項3の粘土薄膜。
  5. 【請求項5】 中性のフォトクロミック分子と非極性分
    子とがハイドロタルサイト型化合物のゲスト種として含
    まれる請求項3の粘土薄膜。
  6. 【請求項6】 前記フォトクロミック分子がスピロピラ
    ン系化合物である請求項4または5の粘土薄膜。
  7. 【請求項7】 請求項1または2の粘土薄膜を製造する
    方法であって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト
    系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥し、次いで、
    熱処理により層間のゲスト種の少なくとも一部を排出す
    ることを特徴とする粘土薄膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項3の粘土薄膜を製造する方法であ
    って、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層間化
    合物の水分散液を膜状化して乾燥することを特徴とする
    粘土薄膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項3の粘土薄膜を製造する方法であ
    って、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層間化
    合物の水分散液を膜状化して乾燥し、次いで、熱処理に
    よりゲスト種を排出した後、ハイドロタルサイト型化合
    物の層間に他のゲスト種を吸着することを特徴とする粘
    土薄膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項3の粘土薄膜を製造する方法で
    あって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイト系層間
    化合物の水分散液中においてゲスト交換を行なった後、
    水分散液を膜状化して乾燥することを特徴とする粘土薄
    膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項4または6の粘土薄膜を製造す
    る方法であって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイ
    ト系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥した後、ハ
    イドロタルサイト型化合物の層間にアニオン性のフォト
    クロミック分子とアニオン性極性分子とを吸着すること
    を特徴とする粘土薄膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 水分散液を膜状化して乾燥した後、ハ
    イドロタルサイト型化合物の層間にアニオン性のフォト
    クロミック分子とアニオン性極性分子とを吸着する前
    に、熱処理により層間のゲスト種の少なくとも一部を排
    出する請求項11の粘土薄膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項5または6の粘土薄膜を製造す
    る方法であって、0.1〜5重量%のハイドロタルサイ
    ト系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥した後、ハ
    イドロタルサイト型化合物の層間にアニオン性極性分子
    を吸着させる第1処理と、中性のフォトクロミック分子
    とその溶媒を構成する非極性分子とをハイドロタルサイ
    ト型化合物の層間に吸着させる第2処理とをこの順で行
    なうことを特徴とする粘土薄膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 水分散液を膜状化して乾燥した後、第
    1処理を行なう前に、熱処理により層間のゲスト種の少
    なくとも一部を排出する請求項13の粘土薄膜の製造方
    法。
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