JPH0694121A - 流体継手の締結力制御装置 - Google Patents

流体継手の締結力制御装置

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JPH0694121A
JPH0694121A JP27370192A JP27370192A JPH0694121A JP H0694121 A JPH0694121 A JP H0694121A JP 27370192 A JP27370192 A JP 27370192A JP 27370192 A JP27370192 A JP 27370192A JP H0694121 A JPH0694121 A JP H0694121A
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Kozo Ishii
弘三 石居
Takuji Fujiwara
卓治 藤原
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Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 減速時に流体継手のロックアップクラッチを
フィードバック制御によってスリップ制御させるものに
おいて、ロックアップクラッチを解放状態からスリップ
状態へ確実に移行させるようにすることを目的とする。 【構成】 減速時に運転状態がロックアップクラッチ7
の解放領域からスリップ領域に移行したときに、該クラ
ッチ7の締結力をフィードバック制御における目標締結
力よりも一時的に大きくなるようにフィードフォワード
制御により急速に増大させると共に、フィードフォワー
ド制御中の出力回転速度に対する入力回転速度の落込量
の最大値が所定範囲内に納まるように該制御に使用する
制御特性を学習補正する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動変速機などに用
いられる流体継手、特にロックアップクラッチを備えた
流体継手の締結力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車に搭載される自動変速機
には流体継手が装備されるようになっているが、この種
の流体継手としてはトルク変換機能を有するトルクコン
バータが用いられるのが通例である。このトルクコンバ
ータにおいては、該コンバータの所謂すべりに起因する
エンジン燃費性能の悪化を低減するため、トルク増大作
用や変速ショック吸収作用を要しない所定の運転領域で
該コンバータの入、出力部材を直結するロックアップク
ラッチが備えられることがある。
【0003】ところで、この種のトルクコンバータ(流
体継手)において、例えばアクセルペダルの開放操作に
よる減速状態のときにロックアップクラッチが締結して
いたのでは、エンジンの振動がダイレクトに変速機側に
伝達されて、当該自動車の乗り心地が悪化するという問
題がある。
【0004】このような問題に対しては、減速時に所定
の運転領域でトルクコンバータをロックアップクラッチ
が半ば締結したスリップ状態に制御することがある。つ
まり、減速時にロックアップクラッチを完全に解放する
と、エンジン回転がアイドル回転まで低下してしまい、
コースティング後の再加速時にアクセルペダルを踏み込
んでもエンジン回転の上昇にタイムラグが生じて加速応
答性が低下するので、ロックアップクラッチをスリップ
状態とすることにより、ロックアップクラッチを完全に
締結させる場合のエンジン振動の変速機側への伝達を回
避しながら、再加速時における加速応答性を向上させよ
うというものである。その場合に、このスリップ制御
は、トルクコンバータの入、出力部材間の相対速度差、
即ちスリップ量を所定の目標スリップ量に維持するよう
にフィードバック制御するのが通例である。つまり、例
えばロックアップクラッチ作動用油圧を調整する制御弁
を設けると共に、トルクコンバータの入、出力回転数か
ら求められる実スリップ量が所定の目標スリップ量より
も大きいときには、ロックアップクラッチの締結力が増
大する方向に上記制御弁を駆動し、また上記実スリップ
量が目標スリップ量よりも小さいときには今度は締結力
が減少する方向に上記制御弁を駆動することにより、該
ロックアップクラッチを締結方向または解放方向に作動
させて、実スリップ量を目標スリップ量に維持するので
ある。
【0005】ところで、上記のように減速時にトルクコ
ンバータのスリップ量をフィードバック制御するように
したものにおいては、ロックアップクラッチが完全に解
放されるコンバータ領域から半ば締結されるスリップ領
域への移行時に、ロックアップクラッチの締結不良を生
じるという問題がある。
【0006】つまり、図9に示すように、この種のトル
クコンバータAにおいては、通常の運転状態においては
エンジン出力軸BにケースCを介して連結されたポンプ
Dの外周部からタービンE側に作動油が流れるようにな
っているが、減速時においてはタービンEの回転数がポ
ンプDの回転数よりも相対的に高くなって作動油の流動
方向が逆転し、図の矢印aで示すように、タービンEの
外周部からポンプD側に作動油が流れることになる。し
たがって、タービンEの背部にロックアップクラッチF
との間に形成された締結室G内の作動油がタービンEか
らポンプD側に流れる作動油の流れaに随伴して、矢印
bで示すようにタービンEとポンプDとの間の間隙から
ポンプD内に吸入されるという現象が発生する。そし
て、この現象のため上記締結室G内の圧力が低下して、
ロックアップクラッチFをケース内壁面C1に押し付け
ようとする力が弱められる。その場合に、減速初期にお
いては、エンジン回転の低下によってポンプDの回転数
(入力回転数)が急速に落ち込むのに対して、タービン
Eの回転数(出力回転数)は当該自動車に作用する慣性
力によって殆ど低下せず、出力回転数と入力回転数との
間の回転数差が急速に増大することになる。その場合
に、スリップ制御に際しては、例えばロックアップクラ
ッチFとケースCとの間に形成した解放室Hの油圧(解
放圧)を給排することにより、この解放圧と締結圧とが
適度にバランスするように調整してロックアップクラッ
チFの締結力をコントロールするようになっているの
で、ロックアップクラッチFを締結方向に作動させる解
放圧の減少率に比べて上記吸引作用による締結圧の減少
率が相対的に大きくなって、ロックアップクラッチFの
締結方向への移動が遅れて上記回転数差が更に拡大する
ことになる。特に、フィードバック制御によってスリッ
プ制御を行う場合には、その応答遅れによってロックア
ップクラッチFの締結方向への移動が更に遅れて上記回
転数差がより一側拡大することになる。そのためa方向
の流れによる締結室G内の作動油の吸引作用が一層増大
してスリップ状態への移行が更に遅れて、最悪の場合締
結不能を生じるおそれがある。
【0007】このようなスリップ制御への移行時におけ
るフィードバック制御の応答性の悪さに起因する問題に
対しては、フィードバック制御に移行する前に応答性に
優れたフィードフォワード制御によってロックアップク
ラッチのスリップ力を制御しようという考え方がある。
【0008】例えば特公平1−39503号公報には、
減速時にロックアップクラッチをスリップ制御するよう
にしたトルクコンバータにおいて、ロックアップクラッ
チが完全に締結されるロックアップ領域からスリップ領
域への移行時に所定の制御特性に従ってロックアップク
ラッチの締結力をフィードフォワード制御すると共に、
所定期間の経過後にロックアップクラッチの締結力のフ
ィードバック制御を開始する技術思想が開示されてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記公報記載
の従来技術においては、フィードフォワード制御におけ
る目標締結力がフィードバック制御における目標スリッ
プ量に対応する値に設定されており、したがってコンバ
ータ領域からスリップ領域への移行時に際してはトルク
コンバータにおけるポンプの吸引作用に起因する締結室
内の圧力不足によってロックアップクラッチの締結力が
不足することになり、締結不良という上記の問題を解消
するには至らない。
【0010】この発明は、流体継手に備えられたロック
アップクラッチを減速時にフィードバック制御によって
スリップ状態に制御する場合における上記の問題に対処
するもので、ロックアップクラッチを解放状態からスリ
ップ状態へ確実に移行させるようにすることを主たる目
的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、本願の請求項
1(以下、第1発明という)に係る流体継手の締結力制
御装置は、流体継手の入、出力部材を直結するロックア
ップクラッチが解放される解放領域と、該クラッチを半
ば締結させるスリップ領域とが設定されていると共に、
減速時において運転状態が上記スリップ領域に属すると
きに上記ロックアップクラッチの締結力を所定の目標ス
リップ量に維持するようにフィードバック制御を行うフ
ィードバック制御手段が設けられた流体継手の締結力制
御装置において、運転状態が上記解放領域からスリップ
領域に移行したときに、ロックアップクラッチの締結力
をフィードバック制御における目標スリップ量に対応す
る締結力よりも一時的に大きくなるように所定の制御特
性に従って急速に増大させるフィードフォワード制御手
段と、流体継手におけるフィードフォワード制御中の出
力回転速度に対する入力回転速度の落込量を検出する入
力回転速度落込量検出手段と、該検出手段によって検出
される上記落込量の最大値が所定値よりも大きいとき
に、該落込量が減少する方向にフィードフォワード制御
手段に対する制御特性を学習補正する制御特性補正手段
とを設けたことを特徴とする。
【0012】また、本願の請求項2(以下、第2発明と
いう)に係る流体継手の締結力制御装置は、流体継手の
入、出力部材を直結するロックアップクラッチが解放さ
れる解放領域と、該クラッチを半ば締結させるスリップ
領域とが設定されていると共に、減速時において運転状
態が上記スリップ領域に属するときに上記ロックアップ
クラッチの締結力を所定の目標スリップ量に維持するよ
うにフィードバック制御を行うフィードバック制御手段
が設けられた流体継手の締結力制御装置であって、運転
状態が上記解放領域からスリップ領域に移行したとき
に、ロックアップクラッチの締結力をフィードバック制
御における目標スリップ量に対応する締結力よりも一時
的に大きくなるように所定の制御特性に従って急速に増
大させるフィードフォワード制御手段と、流体継手にお
けるフィードフォワード制御中の出力回転速度に対する
入力回転速度の落込量を検出する入力回転速度落込量検
出手段と、該検出手段によって検出される上記落込量の
最大値が所定範囲内に納まるようにフィードフォワード
制御手段に対する制御特性を学習補正する制御特性補正
手段とを設けたことを特徴とする。
【0013】そして、本願の請求項3(以下、第3発明
という)に係る流体継手の締結力制御装置は、上記第
1、第2発明における制御特性補正手段によって学習補
正される制御特性としてロックアップクラッチの締結力
の増大率を採用したことを特徴とする。
【0014】さらに、本願の請求項4(以下、第4発明
という)に係る流体継手の締結力制御装置は、上記第
1、第2発明における制御特性補正手段によって学習補
正される制御特性としてロックアップクラッチの締結力
の最大増大量を採用したことを特徴とする。
【0015】
【作用】上記の構成によれば、次のような作用が得られ
る。
【0016】すなわち、第1〜第4発明のいずれにおい
ても、減速時において運転状態がロックアップクラッチ
の解放領域からスリップ領域に移行したときには、ロッ
クアップクラッチの締結力がフィードバック制御におけ
る目標スリップ量に対応する締結力よりも一時的に大き
くなるように所定の制御特性に従ってフィードフォワー
ド制御されることになる。したがって、エンジン回転の
低下によって流体継手の入力回転数が落ち込みすぎる前
にロックアップクラッチがスリップ状態へ移行すること
になって、入力回転数が落ち込みすぎることによるロッ
クアップクラッチの締結不良が防止されることになる。
【0017】ところで、フィードフォワード制御は応答
性が優れているという長所がある反面、制御特性が量産
による品質のバラツキや経年変化などの影響を受け易い
という欠点がある。これに対して、本発明においては、
フィードフォワード制御中における流体継手の入力回転
数の落込量の最大値が所定値よりも大きいときに、該落
込量が減少する方向にフィードフォワード制御の制御特
性を学習補正するようにしているので、量産による品質
のバラツキや経年変化などに影響されることなくロック
アップクラッチが確実にスリップ状態へ移行することに
なって、流体継手における入力回転数が落ち込みすぎる
ことによるロックアップクラッチの締結不良が確実に防
止されることになる。
【0018】特に、第2発明によれば、上記落込量の最
大値が所定範囲内に納まるようにフィードフォワード制
御の制御特性を学習補正するようにしているので、上記
の作用に加えてロックアップクラッチの解放状態からス
リップ状態への移行時に生じるショックも軽減されるこ
とになる。
【0019】
【実施例】先ず、図1により流体継手としてのトルクコ
ンバータの構造とその制御用油圧回路について説明する
と、トルクコンバータ1は、エンジン出力軸2に結合さ
れたケース3内の一側部に固設されて、エンジン出力軸
2と一体回転するポンプ4と、該ポンプ4と対向するよ
うにケース3内の他側部に回転自在に備えられて、ポン
プ4の回転により作動油を介して回転駆動されるタービ
ン5と、ポンプ4とタービン5との間に介設されたスタ
ータ6と、タービン5とケース3との間に介設されたロ
ックアップクラッチ7とを有する。そして、タービン5
の回転がタービンシャフト8により出力されて図示しな
い変速歯車機構に入力されるようになっており、また上
記ロックアップクラッチ7がこのタービンシャフト8に
連結されて、ケース3に対して締結されたときに、該ケ
ース3を介して上記エンジン出力軸2とタービンシャフ
ト8とを直結するようになっている。
【0020】また、このトルクコンバータ1には、図示
しないオイルポンプから導かれたメインライン9によ
り、ロックアップバルブ10およびコンバータインライ
ン11を介して作動油が導入されるようになっており、
上記タービン5とロックアップクラッチ7との間に形成
された締結室12内の作動油の圧力(締結圧)によって
上記ロックアップクラッチ7が常時締結方向に付勢され
ていると共に、該クラッチ7とケース3との間に形成さ
れた解放室13には、上記ロックアップバルブ10から
導かれたロックアップ解放ライン14が接続され、該ラ
イン14から上記解放室13内に油圧(解放圧)が導入
された時にロックアップクラッチ7が解放されるように
なっている。また、このトルクコンバータ1には保圧弁
15を介してオイルクーラー16に作動油を送り出すコ
ンバータアウトライン17が接続されている。
【0021】一方、上記ロックアップバルブ10は、ス
プール10aとこれを図面上、右方へ付勢するスプリン
グ10bとを有すると共に、上記ロックアップ解放ライ
ン14が接続された出力ポート10cの両側に、メイン
ライン9が接続された調圧ポート10dとドレンポート
10eとが設けられている。また、該バルブ10の図面
上、右側の端部には上記スプール10aにパイロット圧
を作用させる制御ライン18が接続されていると共に、
この制御ライン18から分岐されたドレンライン19に
はデューティソレノイドバルブ20が設置されている。
このデューティソレノイドバルブ20は、入力信号に応
じたデューティ率(1ON−OFF時間中のON時間比
率)DでON、OFFを繰り返してドレンライン19を
極く短い周期で開閉することにより、制御ライン18内
のパイロット圧を上記デューティ率Dに対応する値に調
整する。そして、このパイロット圧が上記ロックアップ
バルブ10のスプール10aにスプリング10bの付勢
力と対抗する方向に印加されると共に、該スプール10
aにはスプリング10bの付勢力と同方向にロックアッ
プ解放ライン14内の解放圧が作用するようになってお
り、これらの油圧ないし付勢力の力関係によってスプー
ル10aが移動して、上記ロックアップ解放ライン14
がメインライン9(調圧ポート10d)またはドレンポ
ート10eに連通されることにより、ロックアップ解放
圧が上記パイロット圧、すなわちデューティソレノイド
バルブ20のデューティ率Dに対応する値に制御される
ようになっている。ここで、デューティ率Dが最小値
(例えば0%)のときに制御ライン18からの排圧量が
最大となって、パイロット圧ないし解放圧が最小となる
ことによりロックアップクラッチ7が完全に締結され、
またデューティ率Dが最大値(例えば100%)のとき
に上記排圧量が最小となって、パイロット圧ないし解放
圧が最大となることによりロックアップクラッチ7が完
全に解放されるようになっている。そして、最大値と最
小値の中間のデューティ率Dではロックアップクラッチ
7がスリップ状態とされ、この状態で解放圧がデューテ
ィ率Dに応じて調整されることにより、該ロックアップ
クラッチ7のスリップ量が制御されるようになってい
る。
【0022】次に、このロックアップクラッチ7の締結
力を制御する制御システムについて説明すると、図2に
示すように、この制御システムはコントローラ21を有
する。このコントローラ21は、運転者によって操作さ
れるロックアップスイッチ22からの信号と、当該自動
車の車速を検出する車速センサ23からの信号と、エン
ジンのスロットル開度を検出するスロットルセンサ24
からの信号と、エンジン回転数を検出するエンジン回転
センサ25からの信号と、上記タービンシャフト8の回
転数を検出するタービン回転センサ26からの信号とを
入力して、これらの信号に基づいて自動的にあるいは運
転者の要求により、トルクコンバータ1(ロックアップ
クッチ7)の制御を行う。
【0023】つまり、コントローラ21は、図3に示す
ように車速とスロットル開度とをパラメータとして予め
ロックアップ領域Lと減速スリップ領域Sとを設定した
ロックアップ用マップに、現実の車速Vとスロットル開
度θとが示す運転状態を照らし合わせて、運転状態がロ
ックアップ領域Lもしくはスリップ領域Sに属するとき
に、トルクコンバータ1をロックアップもしくはスリッ
プ状態とし、またこれらの領域L,S以外のコンバータ
領域Cではコンバータ状態とするように、上記デューテ
ィソレノイドバルブ20にデューティ制御信号を出力す
る。なお、減速スリップ領域Sは中、高車速域にわたっ
て設定されている。
【0024】そして、この実施例においては、運転状態
がコンバータ領域からスリップ領域へ移行したときの減
速スリップ制御が、図4に示すフローチャートに従って
次のように行われる。
【0025】すなわち、コントローラ21はステップS
1で各種信号を読み込んだ上で、ステップS2でスリッ
プ制御フラグFSの値を判別する。このスリップ制御フ
ラグFSは、運転状態が図3のロックアップマップにお
ける減速スリップ領域Cに属するときに1にセットさ
れ、それ以外のときには0にリセットされる。
【0026】そして、コントローラ21はスリップ制御
フラグFSの値が1であると判定したときには、ステッ
プS3に進んで今度はフィードフォワード制御フラグF
Fの今回値を判定する。このフィードフォワード制御フ
ラグFFは、運転状態が例えばコンバータ領域Cから減
速スリップ領域Sに移行したときに1にセットされ、そ
の時点から所定時間が経過したときに0にリセットされ
るようになっている。
【0027】コントローラ21は、上記ステップS3に
おいてフィードフォワード制御フラグFFの今回値が1
であると判定したときには、次にステップS4を実行し
てフィードフォワード制御フラグFFの前回値を判定す
る。そして、フィードフォワード制御フラグFFの前回
値が非フィードフォワード制御状態を示す0であると判
定したとき、つまり初回のフィードフォワード制御であ
ると判定したときには、ステップS5に進んでフィード
フォワード制御用に予め設定されたデューティ下限値D
Bと100からデューティ低減値△Dを減算した値とを
比較し、両者のうちの大きいほうをデューティソレノイ
ドバルブ20に出力するデューティ率Dとしてセットす
ると共に、ステップS6で現実のエンジン回転数NEか
らタービン回転数NTを減算した値を、タービン5に対
するポンプ4の最小相対回転速度△NSとしてセットす
る。ここで、上記デューティ低減値△Dはデューティ率
Dが急速に低下するように大きな値に設定されている。
【0028】一方、コントローラ21は、上記ステップ
S4においてフィードフォワード制御フラグFFの前回
値が1であると判定したときには、今度はステップS7
に移って上記デューティ下限値DBと現在のデューティ
率Dからデューティ低減値△Dを減算した値とを比較
し、両者のうちの大きいほうをデューティ率Dとしてセ
ットする。つまり、デューティ率Dがデューティ下限値
DBよりも小さくならないようにするのである。このデ
ューティ下限値DBはロックアップクラッチ7が解放状
態から締結状態へ確実に移行するように予め実験的に求
められている。
【0029】次いで、コントローラ21はステップS8
を実行して、現実のエンジン回転数NEからタービン回
転数NTを減算することにより、その時点におけるター
ビン5に対するポンプ4の相対回転速度△Nを算出する
と共に、ステップS9で上記ステップS6において設定
した最小相対回転速度△NSとステップS8で求めた相
対回転速度△Nとを比較して、現時点の相対回転速度△
Nのほうが最小相対回転速度△NSよりも小さいときに
は、ステップS10を実行して上記相対回転速度△Nを
最小相対回転速度△NSに置き換える。つまり、フィー
ドフォワード制御中におけるタービン5の回転速度に対
するポンプ4の回転速度の落込量の最大値を求めるので
ある。
【0030】そして、フィードフォワード制御フラグF
Fが非フィードフォワード制御状態を示す0に切り換わ
ったときに、後述するようにフィードバック制御に移行
する。
【0031】このフィードバック制御に移行するまでの
経過を説明すれば、図5のタイムチャートに従ったもの
となる。
【0032】すなわち、アクセルペダルの完全開放操作
によって運転状態が図3の矢印(a)で示すようにコン
バータ領域Cから減速スリップ領域Sに移行したときに
は、スリップ制御フラグFSとフィードフォワード制御
フラグFFとがそれぞれ0から1に切り換わってフィー
ドフォワード制御に移行し、デューティ率Dがデューテ
ィ下限値DBに到達するまでデューティ低減値△Dに従
って急速に低減される。その場合に、デューティ率Dと
ロックアップクラッチ7の締結力との関係は、上記した
ようにデューティ率Dが小さいほど締結力が大きくなる
ように設定されていることから、デューティ率Dの低下
に伴って締結力が急速に増大することになる。したがっ
て、エンジン回転数NEは符号(a)で示すようにター
ビン回転数NTを通り過ぎて一旦低下した後再び上昇す
ることになる。これにより、ロックアップクラッチ7が
確実にスリップ状態へ移行することになって、エンジン
回転数NEが落ち込みすぎることによる締結不良が回避
されることになる。
【0033】この実施例においては、フィードフォワー
ド制御が終了すると、次のような制御動作が行われる。
【0034】すなわち、コントローラ21は図4のフロ
ーチャートに戻って、上記ステップS3においてフィー
ドフォワード制御フラグFFの今回値が非フィードフォ
ワード制御状態を示す0であると判定したときには、ス
テップS11に分岐して上記ステップS4と同様にフィ
ードフォワード制御フラグFFの前回値を判定する。そ
して、フィードフォワード制御フラグFFの前回値がフ
ィードフォワード制御状態を示す1であると判定したと
き、すなわちフィードフォワード制御が終了したと判定
したときに、ステップS12を実行してフィードフォワ
ード制御用の制御特性の学習補正を行った後、ステップ
S13を実行して所定のフィードバック制御に移行す
る。つまり、コントローラ21は、例えばエンジン回転
数NEとタービン回転数NTとからタービン5に対する
ポンプ4の相対回転速度△Nを算出して、この相対回転
速度△Nが所定の目標相対回転速度(目標スリップ量)
△N0よりも大きいときには、ロックアップクラッチ7
の締結力が増大する方向に上記ロックアップバルブ10
を駆動し、また上記相対回転速度△Nが目標相対回転速
度△N0よりも小さいときには今度は締結力が減少する
方向に上記ロックアップバルブ10を駆動することによ
り、該ロックアップクラッチ7を締結方向または解放方
向に作動させて、タービン5に対するポンプ4の相対回
転速度を目標相対回転速度に維持するのである。
【0035】そして、この実施例においては、上記学習
補正処理が図6のフローチャートに従って次のように行
われる。
【0036】すなわち、コントローラ21はステップS
21でフィードフォワード制御中におけるタービン5に
対するポンプ4の最小相対回転速度△NSがタービン回
転数NTよりも低回転数側に設定された所定の許容下限
値△N1よりも大きいか否かを判定する。なお、この許
容下限値△N1は、図5に示すように、タービン回転数
NTに対して一定間隔となるように変化する変動値であ
る。そして、コントローラ21は、上記最小相対回転速
度△Nが許容下限値△N1よりも大きくないと判定した
ときには、ステップS22を実行してデューティ低減値
△Dに所定のデューティ低減値補正値△D0を加算す
る。
【0037】一方、コントローラ21は、上記ステップ
S21において上記最小相対回転速度△NSが許容下限
値△N1よりも大きいと判定したときには、ステップS
23に移って該相対回転速度△NSが今度は所定の許容
上限値△N2(>N1)よりも小さいか否かを判定す
る。この場合においても、許容上限値△Nはタービン回
転数NTよりも低回転数側に設定されていると共に、タ
ービン回転数NTに対して一定間隔となるように変化す
る。そして、コントローラ21は最小相対回転速度△N
Sが上記許容上限値△N2よりも小さくないと判定した
ときには、ステップS24を実行してデューティ低減値
△Dから上記デューティ低減値補正値△Dを減算する。
【0038】このようにデューティ低減値△Dを学習補
正することにより、次のような作用効果が得られる。
【0039】つまり、フィードフォワード制御時におけ
るタービン5に対するポンプ4の最小相対回転速度△N
S、即ちエンジン回転数NEの落込量の最大値が、図5
の符号(b)で示すように、上記許容下限値△N1と許
容上限値△N2とによって規定される上、下限ラインL
2,L1に挟まれた斜線領域よりも小さいときには、次
回のフィードフォワード制御時においては、デューティ
率Dがデューティ低減値△D’(>△D)に従って低減
されることになり、したがってデューティ率Dは符号
(c)で示すように前回よりも更に急な勾配で変化する
ことになる。これにより、ロックアップクラッチ7の締
結力は前回よりも急速に増大され、それに伴ってエンジ
ン回転数NEが過度に落ち込みすぎることがなくなっ
て、ロックアップクラッチ7の締結不良がより確実に防
止されることになる。
【0040】一方、エンジン回転数NEの落込量の最大
値が、今度は符号(d)で示すように、上、下限ライン
L2,L1に挟まれた斜線領域よりも大きいときには、
次回のフィードフォワード制御時においては、デューテ
ィ率Dがデューティ低減値△D”(<△D)に従って低
減されることになり、したがってデューティ率Dは符号
(e)で示すように前回よりも緩やかな勾配で変化する
ことになる。これにより、ロックアップクラッチ7の締
結力は前回に対して緩やかに増大されることになって、
過大な締結ショックも防止されることになる。
【0041】次に、この発明の第2実施例を説明する。
【0042】この第2実施例においては、図7のフロー
チャートに示すようにフィードフォワード制御に使用す
るデューティ下限値を学習補正するようになっている。
【0043】つまり、コントローラ21はステップS3
1でフィードフォワード制御中におけるタービン5に対
するポンプ4の最小相対回転速度△NSが許容下限値△
N1よりも大きいか否かを判定して、該最小相対回転速
度△Nが許容下限値△N1よりも大きくないと判定した
ときには、ステップS32を実行してデューティ下限値
DBから所定のデューティ下限値補正値D0を減算す
る。
【0044】一方、コントローラ21は、上記ステップ
S31において上記最小相対回転速度△NSが許容下限
値△N1よりも大きいと判定したときには、ステップS
33に移って該相対回転速度△NSが今度は許容上限値
△N2よりも小さいか否かを判定する。そして、最小相
対回転速度△NSが上記許容上限値△N2よりも小さく
ないと判定したときには、ステップS34を実行してデ
ューティ下限値DBに上記デューティ下限値補正値D0
を加算する。
【0045】この実施例によれば、次のような作用効果
が得られる。
【0046】つまり、フィードフォワード制御時におけ
るタービン5に対するポンプ4の最小相対回転速度△N
S、即ちエンジン回転数NEの落込量の最大値が、図8
の符号(f)で示すように、上記許容下限値△N1と許
容上限値△N2とによって規定される上、下限ラインL
2,L1に挟まれた斜線領域よりも小さいときには、次
回のフィードフォワード制御時においては、符号(g)
で示すように、デューティ率Dが前回よりも大きいデュ
ーティ下限値DB’(>DB)に到達するまで低減され
ることになる。これにより、ロックアップクラッチ7の
締結力の最大増大量は前回よりも大きくなり、それに伴
ってエンジン回転数NEが過度に落ち込みすぎることが
なくなって、この場合においてもロックアップクラッチ
7の締結不良がより確実に防止されることになる。
【0047】一方、エンジン回転数NEの落込量の最大
値が、今度は符号(h)で示すように、上、下限ライン
L2,L1に挟まれた斜線領域よりも大きいときには、
次回のフィードフォワード制御時においては、符号
(g)で示すように、デューティ率Dが前回よりも小さ
いデューティ下限値DB”(<DB)に到達するまで低
減されることになる。これにより、ロックアップクラッ
チ7の締結力の最大増大量は前回よりも小さくなって、
この場合においても過大な締結ショックが防止されるこ
とになる。
【0048】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、流体継手
に備えられたロックアップクラッチを、減速時に所定の
運転領域でフィードバック制御によってスリップ状態に
制御するようにした流体継手の締結力制御装置におい
て、減速時において運転状態がロックアップクラッチの
解放領域からスリップ領域に移行したときに、ロックア
ップクラッチの締結力がフィードバック制御における目
標スリップ量に対応する締結力よりも一時的に大きくな
るように所定の制御特性に従ってフィードフォワード制
御するようにしているので、エンジン回転の低下によっ
て流体継手の入力回転数が落ち込みすぎる前にロックア
ップクラッチがスリップ状態へ移行することになって、
入力回転数が落ち込みすぎることによるロックアップク
ラッチの締結不良が防止されることになる。
【0049】特に本発明によれば、フィードフォワード
制御中における流体継手の入力回転数の落込量の最大値
が所定値よりも大きいときに、該落込量が減少する方向
にフィードフォワード制御の制御特性を学習補正するよ
うにしているので、量産による品質のバラツキや経年変
化などに影響されることなくロックアップクラッチが確
実にスリップ状態へ移行することになって、入力回転数
が落ち込みすぎることによるロックアップクラッチの締
結不良が確実に防止されることになる。
【0050】また、実施例のように、上記落込量の最大
値を所定範囲内に納まるようにフィードフォワード制御
の制御特性を学習補正することにより、上記の作用に加
えてロックアップクラッチの解放状態からスリップ状態
への移行時に生じるショックも軽減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トルクコンバータの構造及びその油圧制御回
路を示す図面である。
【図2】 トルクコンバータの制御システム図である。
【図3】 制御領域を示すマップである。
【図4】 スリップ制御を示すフローチャート図であ
る。
【図5】 実施例の作用を示すタイムチャート図であ
る。
【図6】 フィードフォワード制御に使用する制御特性
の学習補正を示すフローチャート図である。
【図7】 上記制御特性の学習補正の第2実施例を示す
フローチャート図である。
【図8】 第2実施例の作用を示すフローチャート図で
ある。
【図9】 従来の問題点を示すトルクコンバータの概略
構成図である。
【符号の説明】
1 トルクコンバータ 2 エンジン出力軸 7 ロックアップクラッチ 8 タービンシャフト 10 ロックアップバルブ 20 デューティソレノイドバルブ 21 コントローラ 25 エンジン回転センサ 26 タービン回転センサ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体継手の入、出力部材を直結するロッ
    クアップクラッチが解放される解放領域と、該クラッチ
    を半ば締結させるスリップ領域とが設定されていると共
    に、減速時において運転状態が上記スリップ領域に属す
    るときに上記ロックアップクラッチの締結力を所定の目
    標スリップ量に維持するようにフィードバック制御を行
    うフィードバック制御手段が設けられた流体継手の締結
    力制御装置であって、運転状態が上記解放領域からスリ
    ップ領域に移行したときに、ロックアップクラッチの締
    結力をフィードバック制御における目標スリップ量に対
    応する締結力よりも一時的に大きくなるように所定の制
    御特性に従って急速に増大させるフィードフォワード制
    御手段と、流体継手におけるフィードフォワード制御中
    の出力回転速度に対する入力回転速度の落込量を検出す
    る入力回転速度落込量検出手段と、該検出手段によって
    検出される上記落込量の最大値が所定値よりも大きいと
    きに、該落込量が減少する方向にフィードフォワード制
    御手段に対する制御特性を学習補正する制御特性補正手
    段とが設けられていることを特徴とする流体継手の締結
    力制御装置。
  2. 【請求項2】 流体継手の入、出力部材を直結するロッ
    クアップクラッチが解放される解放領域と、該クラッチ
    を半ば締結させるスリップ領域とが設定されていると共
    に、減速時において運転状態が上記スリップ領域に属す
    るときに上記ロックアップクラッチの締結力を所定の目
    標スリップ量に維持するようにフィードバック制御を行
    うフィードバック制御手段が設けられた流体継手の締結
    力制御装置であって、運転状態が上記解放領域からスリ
    ップ領域に移行したときに、ロックアップクラッチの締
    結力をフィードバック制御における目標スリップ量に対
    応する締結力よりも一時的に大きくなるように所定の制
    御特性に従って急速に増大させるフィードフォワード制
    御手段と、流体継手におけるフィードフォワード制御中
    の出力回転速度に対する入力回転速度の落込量を検出す
    る入力回転速度落込量検出手段と、該検出手段によって
    検出される上記落込量の最大値が所定範囲内に納まるよ
    うにフィードフォワード制御手段に対する制御特性を学
    習補正する制御特性補正手段とが設けられていることを
    特徴とする流体継手の締結力制御装置。
  3. 【請求項3】 学習補正される制御特性がロックアップ
    クラッチの締結力の増大率であることを特徴とする請求
    項1もしくは請求項2のいずれかに記載の流体継手の締
    結力制御装置。
  4. 【請求項4】 学習補正される制御特性がロックアップ
    クラッチの締結力の最大増大量であることを特徴とする
    請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載の流体継手
    の締結力制御装置。
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