JPH0694086B2 - 主軸摺動型自動旋盤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は主軸摺動型自動旋盤、特
にワークを回転主軸がチャッキングして軸方向に移動
し、刃物台の近傍でワークを固定ガイドブッシュが支持
するロングストローク加工可能な主軸摺動型自動旋盤の
改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】ワークをチャッキングすると共に軸方向
に摺動自在な回転主軸を備えた主軸摺動型自動旋盤が周
知であり、主としてＮＣ制御された自動旋盤として実用
化されている。

【０００３】この種の旋盤では、素材送り装置によって
ワークを次々と回転主軸に送り込み、回転主軸は必要に
応じて所定ストロークを往復動してワークを回転させな
がら刃物台へ供給する。そして、刃物台の近傍ではワー
クを固定ガイドブッシュが支持し、これによってワーク
の回転振れを取り除きながら精度の高い加工を行うこと
ができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この種
の主軸摺動型自動旋盤を用いてロングストローク加工を
行う場合には、回転主軸と固定ガイドブッシュとの間の
スパンが著しく大きくなり、例えばワーク径の１０倍以
上のスパンを持ったロングストローク加工においては、
回転主軸と固定ガイドブッシュとの間でワークが回転振
れを起して弓成りとなる現象が生じる。このような弓成
り現象が生じると、加工寸法に著しく大きな誤差が発生
し、また切削工具の寿命を著しく短くしてしまうという
問題が生じる。

【０００５】近年においては、このようなロングストロ
ーク加工が広く要望され、例えばプリンタその他のＯＡ
機器用長尺シャフトあるいは特殊モータのシャフトなど
では長尺細径でかつ高精度の加工が望まれ、加工効率の
高い主軸摺動型自動旋盤によってロングストローク加工
を行うことが強く要望されているが、前記弓成り現象に
よって実際上このようなロングストローク加工には限界
があった。

【０００６】一方において、従来の各種旋盤においてワ
ークの振れ止め装置が周知であり、ワークの加工先端を
押える振れ止めあるいは素材送り装置から主軸へのワー
ク振れを防止する振れ止め装置が各種提案されている。

【０００７】しかしながら、従来においては、主軸摺動
型自動旋盤において回転主軸と固定ガイドブッシュの間
で振れ止めを行う装置は提案されていなかった。

【０００８】従来において、このような振れ止め装置と
近似した技術がカム式送り旋盤において、実開昭５３−
１０６８７９号として知られている。

【０００９】この自動旋盤によれば、ワークは主軸にチ
ャッキングされてガイドブッシュに送り込まれ、前記主
軸には材料支持装置が固定されている。

【００１０】しかしながら、このような従来装置では以
下に説明する各種の欠点が存在していた。

【００１１】すなわち、支持部材は主軸に固定されてい
るので、その振れ止めに寄与する突出長には限界があ
り、到底近年必要なロングストローク加工のワークを正
しく回転主軸と固定ガイドブッシュ間で振れ止め支持す
ることはできなかった。

【００１２】また、従来装置では、ショートストローク
加工を行うため、前記支持部材はその先端がガイドブッ
シュ内に侵入し、このために加工可能なワーク径も極め
て限られた細径となっていた。

【００１３】更に、従来では、支持部材が軸受筒体とな
っているので、ワークの直径が変わる度にこれを交換し
なければならないという煩しさがあった。

【００１４】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたも
のであり、主軸摺動型自動旋盤でロングストローク加工
をする時に、回転主軸から固定ガイドブッシュまでの間
で弓成り現象が生じることのない改良された装置を提供
することにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、後退位置の前記回転主軸と前記ガイドブ
ッシュとの間に設けられ、前記ワークの外周に向って伸
長及び退避可能なワークホルダを備えた振れ止め装置を
有することを特徴とする。

【００１６】

【作用】従って、本発明によれば、ロングストローク加
工を行う際に、後退位置にある回転主軸と固定ガイドブ
ッシュとの間に少なくとも１個の振れ止め装置が設けら
れることにより、ロングストローク加工時にワークが回
転振れを起す弓成り現象を確実に防止して、精度の高い
加工を可能とする。

【００１７】そして、本発明における振れ止め装置は、
ワークから退避可能なワークホルダを有しているので、
回転主軸の軸方向移動時にも振れ止め装置が加工の障害
になることがなく、無駄のない高効率の加工を行うこと
ができる。

【００１８】

【実施例】以下図面に基づいて本発明の好適な実施例を
説明する。

【００１９】図１には本発明に係る主軸摺動型自動旋盤
の好適な実施例が概略的に示されている。

【００２０】図示していないテーブルにＺ軸方向に摺動
自在に設けられた主軸台１０には回転主軸１１が内蔵さ
れ、この回転主軸１１がワーク１２をチャッキングする
と共にワーク１２に所望の回転駆動力を与える。

【００２１】従って、ワーク１２は回転主軸１１によっ
てチャッキングされたまま回転及びＺ軸方向の移動を行
うこととなる。

【００２２】ワーク１２の先端はテーブルに固定された
ガイドブッシュ１３にて支持されており、この固定ガイ
ドブッシュ１３は刃物台１４の近傍に配置されている。
従って、刃物台１４に固定された工具１５によってワー
ク１２は固定ガイドブッシュ１３の支持部近傍でワーク
１２に対して所望の加工を行い、回転振れのない高精度
加工が可能となる。本発明において、前記固定ガイドブ
ッシュ１３は主軸（Ｚ）方向に移動しないよう固定され
ており、もちろんこの固定ガイドブッシュはボールベア
リング等を内蔵して内輪がワークと共に回転するロータ
リガイドブッシュを含む。

【００２３】本発明において特徴的なことは、後退位置
にある回転主軸１１と固定ガイドブッシュ１３との間に
振れ止め装置が設けられていることであり、実施例にお
いて２組の振れ止め装置２１，２２が設けられ、ロング
ストローク加工されるワーク１２を所定間隔で振れ止め
支持することができる。

【００２４】図２には図１に示した振れ止め装置が示さ
れており、ワーク１２を挟んで直径方向に対向配置され
たシリンダ２３，２４を含み、各シリンダ２３，２４は
それぞれワーク１２に向って伸長及び退避可能なワーク
ホルダ２５，２６を有する。これら各シリンダ２３，２
４は油圧でもあるいは空圧でも良く、また使用するワー
ク径に合わせて、必要に応じてワークホルダ２５，２６
の位置決め調整を行うためのストッパを内蔵することも
良い。

【００２５】このような直動シリンダ２３，２４によれ
ば、ワークホルダ２５，２６はワーク１２に対して振れ
止めを行う場合には、図２のように、その先端がワーク
１２の外周に当接あるいは僅かな間隙をもって近接した
位置まで送り駆動され、この状態でワーク１２を両側か
ら挟んで確実な振れ止めを行う。

【００２６】図１に戻って、前述した振れ止め装置２
１，２２によりワーク１２はロングストロークでありな
がら、確実にその弓成り現象を排除することが可能とな
り、図において、回転主軸１１は図の実線位置から鎖線
位置まで移動し、最大ロングストロークを得ることが可
能となる。

【００２７】本発明において更に特徴的なことは、前記
最大ロングストロークを回転主軸１１が移動する時、各
振れ止め装置２１，２２は順次そのワークホルダを回転
主軸１１あるいは主軸台１０の通過位置から退避できる
ことであり、前述した図２の直動シリンダ２３，２４を
退避駆動することによって極めて容易に回転主軸１１の
移動領域から退避可能である。

【００２８】図１において、各振れ止め装置２１，２２
の退避は振れ止めコントローラ２７によって制御されて
いる。

【００２９】すなわち、主軸台１０の移動はテーブルに
固定されたポジションセンサ２８及び２９によって監視
されており、これらのセンサ２８，２９を動作するため
に、主軸台１０にはドグ３０が設けられている。そし
て、各ポジションセンサ２８，２９を例えばリミットス
イッチで構成すれば、回転主軸１１が第１の振れ止め装
置２１に接近したことを第１のセンサ２８が検出し、振
れ止めコントローラ２７はこのときに第１の振れ止め装
置２１の直動シリンダ２３，２４に退避指令を送り、両
ワークホルダ２５，２６を回転主軸１１及び主軸台１０
の通過領域から退避させる。

【００３０】同様に、回転主軸１１が第２の振れ止め装
置２２に接近した時には、ドグ３０の位置を第２のセン
サ２９が検出して、振れ止めコントローラ２７は第２の
振れ止め装置２２を退避させる。

【００３１】従って、このような振れ止め装置の退避動
作により、回転主軸１１は最大ロングストロークを移動
して、ワーク１２を無駄なくかつ所望のロングストロー
クで効率良く加工することが可能となる。

【００３２】勿論、本発明において、前記振れ止めコン
トローラ２７は主軸摺動型自動旋盤のＮＣコントローラ
内に組み込むことも可能であり、またポジションセンサ
２８，２９も、ＮＣコントローラで各振れ止め装置２
１，２２の退避動作を制御すれば不要となる。

【００３３】図３には本発明に係る振れ止め装置の他の
実施例が示されている。

【００３４】ワーク１２を挟むワークホルダ３１，３２
はそれぞれ支軸３３，３４に回動自在に軸支されたアー
ム３５，３６に設けられており、直動シリンダ３７，３
８が各アーム３５，３６を移動させる。

【００３５】図３の振れ止め装置によれば、直動シリン
ダ３７，３８の移動量を拡大してワークホルダ３１，３
２に伝達することが可能である。

【００３６】また、図３において鎖線で示すように、ア
ーム３５，３６をそれぞれロータリアクチュエータ３
９，４０で駆動することも可能である。

【００３７】図４には本発明における振れ止め装置の更
に他の実施例が示されており、一方のワークホルダ４１
は前述した実施例と同様に直動シリンダ４２によって駆
動されるが、他方のワークホルダ４３はラック４４に固
定されており、このラック４４は前記直動シリンダ４２
のラック４５とピニオン４６によって連動されており、
この図４の実施例によれば、一対の振れ止め装置に対し
て１個の直動シリンダ４２のみでワーク１２の挟み押え
あるいは退避を同時に行うことが可能である。図５には
更に他の振れ止め装置が示され、単一の直動シリンダ５
１によって一対のアーム５２，５３を同時に移動し、こ
れらのアーム５２，５３に設けられているワークホルダ
５４，５５をシザーズ運動させている。

【００３８】以上のようにして、本発明によれば、各種
の振れ止め機構が採用可能であり、いずれの場合におい
ても、ワークホルダが回転主軸の邪魔になるときに迅速
に退避可能である。

【００３９】前述した各実施例において、ワークホルダ
はその先端の平面部でワーク１２と当接あるいは近接す
るが、本発明において、ワークホルダ６１，６２の先端
を図６で示すようにＶ溝とすることによってワーク１２
の保持作業を更に安定させることができる。

【００４０】同様に、図７はワークホルダ６３，６４の
先端がワーク１２の外形に適合した凹面形状とされてい
る実施例を示す。

【００４１】図８は更にワーク１２に対して３個のロー
ラ６５，６６，６７をワークホルダとして用いた実施例
であり、この場合においてもワーク１２に対してその外
周を３点押えするので極めて安定した振れ止めを行うこ
とができる。

【００４２】更に図９はワーク１２に対してベルト７
１，７２をワークホルダとして利用した実施例を示し、
各ベルト７１，７２はそれぞれ一対のプーリ７３，７４
そして７５，７６にて回転可能に設けられており、ワー
ク１２の回転につれてベルト７１，７２が移動し、ワー
ク１２に対して負荷を小さくしながら所望の振れ止めを
行うことができる。

【００４３】なお、本発明において、振れ止め装置はワ
ーク径と加工ストロークとの関係から任意に設定され、
ワーク径と加工ストロークの比が大きい場合には、振れ
止め装置の設置数を多くすることが好ましい。

【００４４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
主軸摺動型自動旋盤において、後退位置にある回転主軸
と固定ガイドブッシュとの間でワークを振れ止め装置に
よって押えるので、ロングストローク加工が極めて容易
になり、また本発明の振れ止め装置は回転主軸の移動と
共にその移動領域から退避するので、加工の進行に対し
て邪魔にならず、自動旋盤の高効率特性を阻害すること
なく良好な加工を行い得る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る主軸摺動型自動旋盤の好適な実施
例を概略的に示す説明図である。

【図２】図１における振れ止め装置の側面図である。

【図３】本発明に係る振れ止め装置の他の実施例を示す
説明図である。

【図４】本発明に係る振れ止め装置の更に他の実施例を
示す説明図である。

【図５】本発明の振れ止め装置の更に他の実施例を示す
説明図である。

【図６】本発明におけるワークホルダの他の実施例を示
す説明図である。

【図７】本発明におけるワークホルダの更に他の実施例
を示す説明図である。

【図８】本発明におけるワークホルダを３点支持ローラ
とした実施例を示す説明図である。

【図９】本発明に係るワークホルダをベルトとした実施
例を示す説明図である。

【符号の説明】

１０ 主軸台 １１ 回転主軸 １２ ワーク １３ 固定ガイドブッシュ １４ 刃物台 １５ 工具 ２１，２２ 振れ止め装置 ２５，２６ ワークホルダ ２７ 振れ止めコントローラ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ワークをチャッキングすると共に軸方向に
   摺動自在な回転主軸と、刃物台の近傍で前記ワークを支
   持する固定ガイドブュッシュと、を含む主軸摺動型自動
   旋盤において、後退位置の前記回転主軸と前記ガイドブ
   ッシュとの間に設けられ、前記ワークの外周に向って伸
   長及び退避可能なワークホルダを備えた振れ止め装置を
   有することを特徴とする主軸摺動型自動旋盤。