JPH0689611A - 電線被覆用材料および電線の製造方法 - Google Patents

電線被覆用材料および電線の製造方法

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JPH0689611A
JPH0689611A JP23718792A JP23718792A JPH0689611A JP H0689611 A JPH0689611 A JP H0689611A JP 23718792 A JP23718792 A JP 23718792A JP 23718792 A JP23718792 A JP 23718792A JP H0689611 A JPH0689611 A JP H0689611A
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良隆 神戸
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 接着強度の優れたフッ素系樹脂からなる電線
被覆用材料およびそれを被覆した電線の製造方法。 【構成】 電線被覆用材料は、フッ素系樹脂に該フッ素
系樹脂の押し出し温度以上で昇華する有機バインダを混
合してなり、電線の製造方法はこの電線被覆用材料を導
体に押し出し被覆する工程と、この被覆材料を電子線架
橋する工程とからなる。導体に材料を被覆する溶融押し
出し工程で電線被覆用材料中に残存した有機バインダ
が、電子線架橋(架橋時温度300℃以下)の際の昇温
により昇華し、被覆表面に凹凸を形成するので、フッ素
系樹脂を被覆した電線の接着力が著しく向上する。ま
た、有機バインダは架橋時の温度により充分に昇華する
ので、電線被覆用材料の特性を従来通り確保できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電線被覆材料および電線
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録
商標))、ポリフッ化エチレンプロピレン、フッ素ゴム
等のフッ素系樹脂は、耐熱性に優れ、最高の電気絶縁性
を有するので、主に耐熱電線用被覆材料として、エレク
トロニクス、自動車、航空機など種々の用途に使用され
ている。例えば、特開平2−22307号公報にはフッ
素樹脂で導体の周囲を押し出し成形により被覆、その後
電子線架橋することが記載されている。
【0003】しかしながら、このフッ素系樹脂を被覆し
たいわゆるテフロン系電線は、他の物質との接着性に劣
る性質があり、電線を複数本束ねるためにテープ等で巻
回して固定することが困難である。
【0004】そのため、従来テフロン系電線の固定は次
のような方法がとられていた。 (1)テフロンの分子構造を変えて接着性を向上させ
る。 (2)成形治具を変更して被覆表面に凹凸を付ける。 (3)熱溶着によって他の物質を接着する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記第
1のテフロンの分子構造を変えて接着性を向上させる方
法においては、テフロンペレット等を作る工程が増加す
ること、および素材料が増加するなどの理由から、コス
トが大幅に増加するという欠点がある上に、分子構造を
変えるためにテフロン系電線の本来有する耐熱性および
絶縁性等の特性が劣化する可能性が大きい。
【0006】また、第2の成形治具を変更して被覆表面
に凹凸を付ける方法では、成形治具構造が複雑になるた
めに、設備費および保守費用が大幅に増加するという問
題点がある。
【0007】さらに、第3の熱溶着によって他の物質を
接着する方法では、熱溶着工程が増加するため、製造コ
ストが増加し、製造歩留りが悪化する。その上、熱溶着
による接着では、被覆を変形させるためテフロン系電線
の耐熱性および絶縁性等の性能が劣化する。
【0008】本発明はフッ素系樹脂を被覆したテフロン
系電線の前記のごとき問題点を解決するためになされた
ものであって、フッ素系樹脂の分子構造を変えたり、他
の物質を熱溶着したりしてテフロン系電線の特性を劣化
させることなく、安価な方法で接着性を向上させること
のできる電線用被覆材料および電線の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者は特別な成形治具
を用いないで被覆材の表面に凹凸を付ける方法について
鋭意研究を重ねた。そこで、被覆材が電子線架橋の際に
150〜300℃に昇温されることに着目した。その結
果、その温度で昇華する有機バインダをフッ素樹脂に混
合することを着想し、電子線架橋の昇温の際にこれら有
機バインダを昇華させると、テフロン系電線の特性を劣
化させることなく、被覆表面に凹凸が形成され接着力が
著しく向上することを新たに知見して本発明を完成し
た。
【0010】本発明の電線被覆用材料は、フッ素系樹脂
に該フッ素系樹脂の押し出し温度以上で昇華する有機バ
インダを混合してなることを要旨とする。また、本発明
の電線の製造方法は、導体にフッ素系樹脂に該フッ素系
樹脂の押し出し温度以上で昇華する有機バインダを混合
してなる被覆材料を押し出し被覆する工程と、前記被覆
材料を電子線架橋する工程とからなることを要旨とす
る。
【0011】本発明が適用されるフッ素系樹脂として
は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFT)、
4フッ化エチレンと6フッ化プロピレンとの共重合体
(FEP)、4フッ化エチレンとパーフルオロエチレン
(PFA)との共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PV
DF)のようなフッ素樹脂、またはフッ化ビニリデン−
6フッ化ポリプロピレン共重合体、4フッ化エチレン─
ポリプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ポ
リプロピレン共重合体のようなフッ素ゴムが用いられ
る。
【0012】フッ素系樹脂に混合する有機バインダは以
下の特性を具備する必要がある。 (a)被覆成型後の電子線架橋時(温度が150〜30
0℃)に昇華すること。 (b)被覆の溶融押し出し工程時において、成型性が優
れていること。 (c)低分子溶媒(例えばエタノール系)に溶解するこ
と。高分子溶媒に溶解する有機材料であると、フッ素系
樹脂自体も溶解し、被覆成型ができなくなる。
【0013】前記特性を具備する有機バインダとして、
例えばエタノール系のポリビニルアルコール、SBバイ
ンダー(坂本技研(株)製、商品名)等を用いることが
できる。これら有機バインダのフッ素系樹脂への混合
は、一般的な方法、例えば溶液重合法などでテフロンペ
レットを製造する際に有機材料を物理的に所望の重量%
で混入させることにより行なう。なお、表1は、前記特
性を具備する有機材料と具備しない有機バインダの特性
を比較したものである。
【0014】
【表1】
【0015】有機バインダの混合量は重量%で10〜2
0%とすることが好ましい。有機バインダの混合量が1
0%未満であると、接着力の向上が充分に得られないか
らであり、20%を越えると引張強度および絶縁性が劣
化するからである。電線を被覆する電線被覆用材料の膜
厚は、数μm以上であればよい。
【0016】電子線架橋は、電子線照射により電子が被
照射物に飛び架橋が行われる。その際に被照射物は電子
振動により昇温する。電子線の照射条件は通常の電子線
架橋の条件でよく、500〜1000kv、0.1秒程
度とすることが好ましい。
【0017】
【作用】フッ素系樹脂と有機バインダからなる本発明の
電線被覆用材料は、溶融押出方法により押し出され導体
の周囲を覆う。その際、有機バインダは溶融押出温度以
下では昇華しないので、そのまま電線被覆用材料の中に
残存する。
【0018】次に、フッ素系樹脂の重合度を上げるため
に、電子線架橋(架橋時温度300℃以下)が行われ
る。その際電子線照射による昇温のため、電線被覆用材
料の中に混合されている有機バインダが昇華し、被覆表
面に凹凸ができる。これにより、接着力が著しく向上す
る。また、有機バインダは架橋時の温度により充分に昇
華するので、電線被覆用材料の特性を従来通り確保でき
る。
【0019】
【実施例】本発明の具体的な実施例を説明し、本発明の
効果を明らかにする。表2に示す重量%の昇華温度22
0℃のPVA系有機バインダを、テフロンペレットに混
合して電線被覆用材料を調製した。なお、有機バインダ
にはポリビニルアルコールに、可塑剤としてフタレイン
酸系を、解膠剤としてホレイン酸系を、エタノール溶媒
と共に混合したものであって、その混合割合はPVA:
可塑剤:解膠剤:溶媒=100:2:3:10であっ
た。
【0020】得られた電線被覆用材料を用い、押し出し
温度180℃の溶融押し出し法により、Cu系電線の周
囲を電線被覆材料で100μmの膜厚で覆った。次いで
テフロン樹脂の重合度を向上させるために、500k
V、0.1秒の条件で、電子線架橋を行なった。被覆材
料は3000℃まで昇温した。この際電線被覆用材料の
PVA系有機バインダが、熱により昇華して、被覆表面
に凹凸が形成された。
【0021】この電子線架橋を終わった電線被覆材料を
被覆した電線について、接着強度、絶縁性および引張強
度を測定した。得られた結果は表2にまとめて示した。
なお、接着強度は本発明品に粘着テープを貼着し、この
テープを10mm/minの速度で剥がすときの荷重を
測定したものである。また、絶縁性は高インピーダンス
メータで導体と被覆材料間の抵抗を測定したものであ
る。引張強度は径1mmで長さ300mmのテストピー
スを用い、引張試験機(ピールテスタ)にて10cm/
minの速度で試験したものである。
【0022】
【表2】
【0023】表2に示したように、PVA系有機バイン
ダの添加量が0であったものは、接着強度が0.5kg
以下であった。また、5%のものは接着強度が2.0k
gであって、接着強度の向上が充分でなかった。
【0024】有機バインダの添加量が30%以上になる
と、接着強度は8.5kgで充分な接着力を有するもの
の、引張強度が急激に低下し、また80%では絶縁性も
劣化した。
【0025】これに対して有機バインダ添加量が10%
および20%のものは、接着強度が8.0〜8.5kg
に向上し、絶縁性の低下がなく、また引張強度の劣化も
ごく僅かであって、本発明の効果を確認することができ
た。なお、図1は本実施例で得られた接着強度、絶縁性
および引張強度と有機バインダ添加量との関係を示した
図である。図1からも明らかなように、有機バインダ添
加量が10〜20%で最良の結果が得られることがわか
る。
【0026】
【発明の効果】本発明の電線被覆用材料は、フッ素系樹
脂に該フッ素系樹脂の押し出し温度以上で昇華する有機
バインダを混合してなり、本発明の電線の製造方法の発
明はこの電線被覆用材料を導体に押し出し被覆する工程
と、この被覆材料を電子線架橋する工程とからなること
を特徴とするものであって、導体に材料を被覆する溶融
押し出し工程で電線被覆用材料中に残存した有機バイン
ダが、電子線架橋(架橋時温度300℃以下)の際の発
熱により昇華し、被覆表面に凹凸を形成するので、フッ
素系樹脂を被覆した電線の接着力が著しく向上する。ま
た、有機バインダは架橋時の温度により充分に昇華する
ので、電線被覆用材料の特性を従来通り確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で得られた接着強度、絶縁性および引
張強度と有機バインダ添加量との関係を示した図であ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ素系樹脂に該フッ素系樹脂の押し出
    し温度以上で昇華する有機バインダを混合してなること
    を特徴とする電線被覆用材料。
  2. 【請求項2】 導体にフッ素系樹脂に該フッ素系樹脂の
    押し出し温度以上で昇華する有機バインダを混合してな
    る被覆材料を押し出し被覆する工程と、前記被覆材料を
    電子線架橋する工程とからなることを特徴とする電線の
    製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012004849A1 (ja) * 2010-07-05 2012-01-12 リケンテクノス株式会社 コーティング組成物および積層体
JP2014525846A (ja) * 2011-06-20 2014-10-02 タイコ エレクトロニクス ユーケー リミテッド 高温絶縁テープ及びそれに覆われた電線又はケーブル

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WO2012004849A1 (ja) * 2010-07-05 2012-01-12 リケンテクノス株式会社 コーティング組成物および積層体
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