JPH0688909B2 - 免疫活性化剤及びその製造法 - Google Patents

免疫活性化剤及びその製造法

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JPH0688909B2
JPH0688909B2 JP1058552A JP5855289A JPH0688909B2 JP H0688909 B2 JPH0688909 B2 JP H0688909B2 JP 1058552 A JP1058552 A JP 1058552A JP 5855289 A JP5855289 A JP 5855289A JP H0688909 B2 JPH0688909 B2 JP H0688909B2
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昭三 戸田
素直 山崎
明 大久保
春巳 鈴木
賢治 飯山
康宏 大橋
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野田食菌工業株式会社
昭三 戸田
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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、担子菌の菌糸体培養物から抽出された免疫活
性化剤及びその製造法に関する。
「従来の技術」 生体防御を構成する多くの要素の中で、免疫は重要な役
割を果たしている。免疫は、生体内に微生物などの異物
が侵入したときに、その異物を特異的に排除する作用で
あり、免疫グロブリンと呼ばれる抗体が作用する体液性
免疫と、リンパ球が分裂し機能分化した感作リンパ球が
作用する細胞性免疫とがある。
生体防御機構において、マクロファージ、好中球などで
代表される食細胞は、異物の生体内への侵入初期の段
階、免疫の成立過程、免疫の発現過程を通して、重要な
働きをなしている。
すなわち、これらの食細胞は、異物の侵入初期の段階に
おいて、異物粒子を細胞内に取り込み、消化して異物を
排除する。また、免疫の成立過程においては、取り込ん
だ異物の非自己抗原を膜表面に並べてリンパ球へ受け渡
す。更に、免疫の発現過程においては、Bリンパ球によ
って産生される抗体や、感作リンパ球によって産生され
るリンホカインなどの影響を受け、異物の強力な排除に
寄与する。
このようなことから、マクロファージなどの食細胞を活
性化させることにより、免疫を中心とする生体防御作用
を亢進させ、種々の病気に対する予防及び治療を図るこ
とができると考えられており、マクロファージの活性化
が免疫活性作用の一つの指標とされている。
ところで、近年、このような免疫活性化剤として各種の
物質が提案されている。本出願人らも、特開昭59−2041
29号及び特開昭62−270532号において、免疫活性化作用
を有する物質を既に提案している。これらの物質は、い
ずれも椎茸等の菌糸体培養物から抽出された物質であ
る。
「発明が解決しようとする課題」 このように、椎茸等の菌糸体培養物から抽出された物質
の中に免疫活性化作用があることは既に見いだされてい
たが、上記の抽出物質は、糖質、蛋白質、無機質、その
他各種の成分を含む低分子から高分子に至る複雑な物質
群で構成されていたため、免疫活性化に直接寄与しない
物質も多く含まれていた。
このため、本発明者らは、上記の抽出物質から有効成分
を効果的に分離してより免疫活性化作用の強い物質を得
ようと試みたが、そのためには、上記のような複雑な物
質群の中から最も免疫活性化作用の強い物質を分離し、
その正体を解明する必要があった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなさ
れたものであり、その目的は、椎茸等の菌糸体培養物か
ら抽出された物質の中から最も免疫活性化作用の強い物
質を分離することにより、優れた効果を有する免疫活性
化剤及びその製造法を提供することにある。
「課題を解決するための手段」 本発明者らは、上記目的を達成するため、椎茸等の菌糸
体培養物から、熱水抽出、アルコール分別沈殿及び疎水
クロマトグラフィーなどの手段によって、免疫活性化作
用の最も強い物質を分離し、この物質を詳細に分析した
結果、免疫活性化に最も寄与している物質が水溶性リグ
ニンであることを見いだし、本発明を完成するに至っ
た。
すなわち、本発明による免疫活性化剤は、リグニンを含
有する植物から調製された原料を主成分とする培地を用
いて担子菌を培養し、この菌糸体培養物から抽出された
水溶性リグニンを有効主成分とするものである。
また、本発明による免疫活性化剤の製造法は、リグニン
を含有する植物から調製された原料を主成分とする培地
を用いて担子菌を培養し、この菌糸体培養物から水溶性
リグニンに富む成分を抽出することを特徴とする。
以下、本発明についてその好ましい態様を挙げながら更
に詳細に説明する。
本発明で使用する担子菌としては、例えば椎茸、カワラ
茸、ヒラ茸、エノキ茸、マンネン茸、マイ茸など各種の
ものが挙げられるが、この中でも特に椎茸菌が好まし
い。
本発明では、これらの担子菌の菌糸体を培養してその培
養物から有効成分を抽出する。この場合、培地としては
固体培地、液体培地のいずれも使用できるが、培地成分
中にリグニンを含有する植物から調製された原料を含有
させることが必要である。リグニンを含有する植物とし
ては、特に禾本科植物が好ましく用いられ、このような
原料としては、例えばバガス、麦わら、稲わら、とうも
ろこしの茎葉、米糠、小麦ふすまなどが挙げられる。特
にバガスを主成分とし、必要に応じ他の栄養成分とし
て、米糠、鋸屑、ペプトン、イースト、甘庶廃糖蜜など
を添加混合した培地が好ましく用いられる。
担子菌の菌糸体の培養は、例えば担子菌の胞子を液体培
養して得られる菌糸体ペレットを上記のような培地に接
種して行なう。菌糸体を接種した後、固体培地の場合
は、例えば温度18〜25℃、湿度50〜90%程度に空調され
た培養室で3カ月〜6カ月程度培養する。最も理想的に
は、温度20〜25℃、湿度60%に空調した培養室で4〜6
カ月程度培養する。こうして菌糸体が蔓延した培地は、
温度処理室に移して変温処理を行なうことが好ましい。
変温処理は、例えば最初に32〜34℃で24〜48時間加温
し、次に低温処理室に移して4〜8℃、湿度85%にて5
〜7日間低温処理を行なう。この変温処理は、製品の品
質の安定上好ましく採用されるが、必ずしも必要なもの
ではない。その後、培地を栽培室に移して放置すると、
子実体の発生が始まるが、この時点で培養を終了し、後
述するように培養物を粉砕機により粉砕する。一方、液
体培地の場合は、通気培養もしくは振とう培養により、
15〜30℃の温度条件で1週間〜1カ月程度培養を行な
う。培養は、培地中に菌糸体が蔓延した状態で終了す
る。
培養終了後、菌糸体に内在する酵素を利用して菌糸体を
自己消化させるとともに、培養物を抽出する。その好ま
しい方法として、固体培地の場合は、まず、培養が終了
した培養物を粉砕し、粉砕物を40〜90℃で3〜6時間程
度処理して菌糸体の酵素によって自己消化させる。次
に、この粉砕物に40℃以上の温水又は熱水を注いで有効
成分を抽出する。抽出方法の最も好ましい態様を挙げる
と、上記粉砕物600gに対して約5の水を加え、約1時
間煮沸すると共に攪拌する。この攪拌によって菌糸体の
代謝産物及び菌糸体細胞中に含有されている有効成分が
熱水に溶脱される。こうして得られた懸濁液を例えばネ
ル布地の濾過袋に充填し、これを加圧、濾過し、この濾
液を更にメンブランフィルターで濾過して除菌し、有効
成分が含有された抽出液を得る。一方、液体培地の場合
は、必要に応じて菌糸体を破砕した後、40℃〜60℃に加
熱して自己消化を行なわせ、菌糸体が溶解した液状の懸
濁培養物を得る。この培養物を上記と同様に濾過、除菌
して抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、必
要に応じて限外濾過膜、エバポレータ等の手段で濃縮
し、これを凍結乾燥等にて褐色の粉末体とすることもで
きる。
本発明の免疫活性化剤の製造に際しては、こうして得ら
れた抽出液またはその乾燥粉末から更に水溶性リグニン
に富む成分を精製することが好ましい。この精製方法と
しては、例えば次のような方法が採用される。
上記乾燥粉末に、10〜20倍量程度の水を加え、pH7.2程
度に調製して溶解させる。この溶液あるいはこの溶液に
相当する濃度の抽出液にエチルアルコール(他の低級ア
ルコールでもよい)を加え、沈殿物を得る。後述する実
施例からも明らかなように、免疫活性化作用は、特にア
ルコール濃度37.5%で可溶であり、アルコール濃度50%
で不溶となる画分に強く認められる。したがって、アル
コール濃度37.5%可溶、50%不溶画分を採取することが
特に好ましい。
また、こうして得られたアルコール沈殿物を更に各種の
クロマトグラフィーにかけて活性画分を分取することも
できる。クロマトグラフィーとしては、疎水クロマトグ
ラフィー(例えばPhenyl Sepharose CL-4Bなど)が好ま
しく用いられる。疎水クロマトグラフィーは、リグニン
の芳香核がゲルの芳香核と強く相互作用することから効
果的にリグニンが精製できると考えられる。例えば上記
アルコール沈殿物をフェニルセファロースカラム(Phen
yl Sepharose CL-4B)に吸着した場合、75%エチレング
リコールで溶出する画分に、特に顕著な免疫活性化作用
が認められる。
こうして得られた免疫活性化剤は、水溶性リグニンを主
成分とするものであり、次のような理化学的性質を有し
ていることがわかった。
分子量…1万〜150万 化学組成 蛋白…2〜5% 糖…12〜20% 水溶性リグニン…70〜85% 「作用」 本発明の免疫活性化剤は、禾本科植物中などに含まれる
リグニンが、椎茸等の担子菌の出すパーオキシダーゼ等
の酸化酵素により、酸化分解及び縮合を起こし変性した
水溶性リグニンを有効主成分とするものである。
本発明の免疫活性化剤は、マクロファージ活性化作用に
おいて、公知の典型的なマクロファージ活性化物質であ
る細菌内毒素LPSを凌ぐ程の活性を示した。前述したよ
うに、マクロファージの活性化が免疫活性作用の一つの
指標とされているので、上記のようなマクロファージ活
性化作用を有するということは、本発明の免疫活性化剤
により、免疫を中心とする生体防御作用を亢進させ、種
々の病気に対する予防及び治療を図ることができること
を意味する。
また、本発明の免疫活性化剤は、天然物から得られたも
のであるため、合成化学薬品などにおける副作用の心配
は全くない。
更に、本発明の免疫活性化剤の製造法によれば、強い免
疫活性化作用を有する成分を効果的に抽出し、分離する
ことができる。
「実施例」 1.免疫活性化剤の精製 1−1.椎茸菌糸体培養抽出物(LEM)の調製 (1) バガス90%、米ぬか5%、ふすま等の栄養源5
%を配合した固定培地を常法により殺菌し、これに液体
培地などで前培養した椎茸菌の菌糸又は固体種菌を接種
する。その後、培地を温度20〜25℃、湿度60%に空調し
た培養室内に移して3〜6カ月程度培養する。培地中に
菌糸体が蔓延した後、温度処理室に移して5〜8℃、湿
度85%にて5〜7日間低温処理を行なう。その後、培地
を栽培室に移して放置し、培地表面から子実体が発生し
始めたら、培地を取り出して粉砕機で破砕する。
(2) 上記破砕物を80℃前後で3〜4時間通気加熱し
て酵素反応を促進させ、菌糸体の自己消化を行うととも
に、水分3〜5%まで乾燥する。この破砕物600gに対し
て約5の水を加え、約1時間煮沸するとともに攪拌す
る。この攪拌によって、菌糸体によるバガスの分解物、
菌糸体の代謝産物及び菌糸体細胞液中に含有されている
水溶性成分が溶出する。
(3) こうして得られた懸濁液をネル布地の濾過袋に
充填し、これを加圧、濾過して濾液を得る。この濾液を
更にメンブランフィルタで濾過して除菌し抽出液を得
る。この抽出液を限外濾過膜等によって濃縮し、凍結乾
燥等にて乾燥させ、褐色の粉末を得る。以下の説明にお
いては、この粉末を「LEM」とした。
1−2.マクロファージ活性化作用の検定法 マクロファージの活性化には数段階のステージ(stag
e)があると言われており、その活性化の指標の一つと
して細胞の接着及び伸展(spreading)の促進、及びグ
ルコース消費の亢進が知られている。そこで、マクロフ
ァージのグルコース消費の亢進を指標として、LEMから
マクロファージ活性化物質の精製を行なった。
マクロファージのグリコリシス(グルコース消費)アッ
セイの方法を以下に示す。
a.マクロファージの調製 8〜12週齢のマウス(ddy、雄)を腹腔常在細胞を、ヘ
バリンを含むHBSS(Hauks balanced salt solution)で
常法通り採取し、HBSSで2回洗浄したのちFCS(fetal c
alf serum)を10%含むPRMI1640培地に懸濁し、生細胞
をトリパンブルーで計測してマクロファージとした。
b.検定法 (1) 98ウェルのマイクロプレートに1ウェルあたり
1×105個/100μlずつ分注し、更にHBSSに溶かして0.2
2μmのメンブランフィルターで濾過滅菌した試料を100
μl加えて、全量を200μlとする。試料は2倍希釈系
列で加えてゆく。
(2) 37℃で4日間培養後、試験管に培養上清を25μ
l採取し、500μlのグルコースオキシダーゼ酵素液
(グルコースB−テストワコー、和光純薬製)を加えて
37℃で20分間インキュベートした後、更に2mlの蒸留水
を加えて505nmの吸光度を測定する。
(3) 細胞を入れない培地中のグルコース量(400μg
/200μl/well、なおグルコースは上記酵素液中に予め含
まれている)から、それぞれの測定値を差し引くことに
より、マクロファージ1ウェルあたりのグルコース消費
量を算出する。
このマクロファージグリコリシスアッセイは簡便に行え
るので、多量のサンプルの活性を測定するのに有利であ
り、精製の指標とするのに適当である。
LEMのマクロファージグリコリシス活性の測定結果を第
1図に示す。マクロファージのグルコース消費量(μg/
well)はLEMの濃度に依存して増加し、400μg/mlの濃度
で最大に達した。また、グルコース消費量の増加にとも
ない、マクロファージのプラスチック面への伸展も促進
していた。
1−3.LEMの精製 マクロファージのグリコリシスアッセイを指標としてLE
Mの精製を行った。精製は、エタノール分別沈殿、疎水
クロマトグラフィーにより行い、更にゲル濾過、陰イオ
ン交換等についても検討した。
1−3−1.エタノール分別沈殿 a.方法 (1) 25gのLEMを250mlの水に溶解し、NaOH水溶液でp
Hを7.2に合わせた後、不溶物を遠心分離により除く。
(2) 上清に50mlのエタノール(EtOH)を加え、氷冷
下でよく攪拌した後、遠心により沈殿を分別した。
(3) 更に、この上清に50mlずつのEtOHを順次加えて
EtOH濃度を上げてゆき、生じた沈殿を次々に分離した。
(4) このようにして、Ea(16.7%EtOH不溶画分)、
Eb(16.7%EtOH可溶、28.6%EtOH不溶画分)、Ec(28.6
%EtOH可溶、37.5%EtOH不溶画分)、Ed(37.5%EtOH可
溶、44.4%EtOH不溶画分)、Ee(44.4%EtOH可溶、50%
EtOH不溶画分)、Ef(50%EtOH可溶画分)の六つの画分
に分画した。
b.結果 これらの画分のマクロファージグリコリシス活性を検定
した結果、Eb、Ec、Ed、Eeにおいて濃度依存的に活性の
上昇がみられたが、Ed画分およびEe画分に高い活性が観
察された。
c.neoPPT1画分 以上の結果から、Ed画分とEe画分を合わせた画分、すな
わち37.5%EtOH可溶/50%EtOH不溶画分をneoPPT1画分と
命名し、以後の精製に用いた。
neoPPT1のグリコリシス活性をLEMと比較した結果を第1
図に示す。neoPPT1は明らかにLEMより高い活性を示し
た。
1−3−2.疎水クロマトグラフィー a.方法 次に、phenyl Sepharose CL-4B(Pharmacia社製)を用
いた疎水クロマトグラフィーによって、neoPPT1を更に
分画した。このクロマトグラフィーは物質の疎水性をも
とにして分画する方法である。
(1) neoPPT1を1Mの硫安を含む10mMリン酸ナトリウ
ム緩衝液pH7.2(buffer1)に溶解し、不溶物を遠心によ
り除いた後、phenyl Sepharoseカラム(80φ×400mm)
にのせ、buffer1で溶出する。このとき、カラムに吸着
せずに素通りしてくる画分を透析し、更に凍結乾燥し
て、EP1画分とした。
(2) 次に、このカラムを10mMリン酸ナトリウム緩衝
液pH7.2(buffer2)を用いて溶出し、溶出液を透析し、
更に凍結乾燥して、EP2画分とした。
(3) 更に、75%エチレングリコールを含むbuffer2
(buffer3)で溶出し、カラムから溶出してくる画分を
透析し、更に凍結乾燥して、EP3画分とした。
b.結果 これらの画分のマクロファージグリコリシスアッセイに
おける結果を第2図に示す。EP3画分が最も高いグリコ
リシス活性を示し、EP2、EP1の順に活性は低くなってい
た。また、光学顕微鏡観察によるマクロファージの伸展
もグリコリシス活性とよく相関し、200μg/mlのEP3画分
では、ウェルの底面全面に広がっていた。この分画法で
は、EP1、2、3の順に疎水性の高い物質が分離されて
くることから、マクロファージの伸展及びグリコリシス
を亢進させる活性を持つ物質は疎水性の高い物質であっ
た。
1−3−3.ゲル濾過 a.方法 次にEP3画分をSephacryl S-300(Pharmacia社製)を用
いたゲル濾過により分画した。
溶出液を280nmの吸光度でモニターしながらフラクショ
ンコレクターに集めた結果を、第3図に示す。
すなわち、void volume(150万)の高分子領域からbed
volumeに至るまで広い分子量範囲にわたって非常にブロ
ードな一つのピークを与えた。これを便宜的に四つの画
分に分別し、分子量の高い方からEPS1、EPS2、EPS3、EP
S4とした。それぞれの画分の分子量は分子量マーカーの
位置から、EPS1(110万以上)、EPS2(40〜110万)、EP
S3(10〜40万)、EPS4(1〜10万)程度であった。
b.結果 これらの画分の活性を検定した結果を第4図に示す。EP
S1を除いた他の3つの画分はどれもEP3とほぼ同じ活性
を示した。
以上の結果より、EP3中に含まれている活性物質は特定
の分子量を持つものでなく、広い分子量範囲に分散して
いるポリマー様の物質であることが明らかとなった。従
って、LEM中に含まれるマクロファージ活性化物質を単
離することは不可能であると判断し、EP3画分を最終精
製画分として以後の実験に用いた。
2.EP3画分中の活性物質の同定 2−1.成分分析 EP3画分中に存在するマクロファージ活性化物質の同定
を目的として、EP3の成分分析を行った。
2−1−1.元素分析 EP3の元素分析を行なった結果、EP3は5.7%の灰分を含
むが、それ以外の部分は有機物であり、水素含量が4.68
%、炭素含量が44.6%、窒素含量が1.74%であった。す
なわち、水素含量と窒素含量が少ないという特徴を持っ
ていた。
2−1−2.蛋白質 EP3は280nmの強い吸収を持つことから、蛋白質を含んで
いると考えられた。Lowry法によりBSA(bovin serumalb
umin)を標準として測定した蛋白質含量は33.0%であっ
たが、元素分析値における窒素含量から計算すると10.9
%以上の蛋白質を含むことはありえないので、EP3のア
ミノ酸分析を行い、全アミノ酸量から蛋白質含量を算出
した。アミノ酸分析は試料を常法に従い加水分解し、ア
ミノ酸アナライザーで測定した。
その結果アミノ酸の組成自体は特に特徴のあるものでは
なかったが、それぞれのアミノ酸量を加算した総アミノ
酸含量はわずか3.2%であった。従って、EP3の蛋白質含
量は極めて少ないことが明らかとなった。
2−1−3.中性糖 フェノール硫酸法によりグルコースを標準として測定し
たEP3の中性糖含量は33.1%であった。フェノール硫酸
法は還元糖の定量に広く用いられている方法であるが、
多糖の発色率が単糖のそれと異なる場合も少なくないの
で、硫酸加熱分解により中性糖を完全に単糖まで分解し
た後、グルコースを標準としてSomogyi-Nelson法によっ
て糖含量を測定した。
その結果、EP3の糖含量は12.2%であった。EP3は前述し
たように疎水クロマトグラフィーにより精製した疎水性
の高い画分であり、多糖が単独でこの画分に入ってくる
ことはありえず、この12.2%を占める糖はなんらかの形
で疎水性の高い物質と結合しているものと考えられた。
2−1−4.ウロン酸 EP3は中性溶液中で強い陰荷電を示すことから、ウロン
酸(酸性糖)の定量を行った。前述の方法で中性糖を単
糖にまで分解した試料を、カルバゾール硫酸法でグルク
ロン酸を標準として測定した結果、EP3のウロン酸含量
は3.7%であった。
以上の結果から、EP3の主成分は窒素含量が少く疎水性
を示す不飽和度の高い有機物であると考えられた。
2−2.リグニン分析 発明者らは、EP3が褐色を呈すること、280nmの強い紫外
部吸収を持つこと、疎水性が高いこと、水素及び窒素含
量が低いことなどの事実から考えて、EP3中の約80%を
占める不飽和度の高い有機化合物は水溶性化したリグニ
ンと考え、以下の実験を行った。
2−2−1.リグニン リグニンはセルロース、ヘミセルロースと共に植物体中
の骨格を形成する主要成分であり、その含有量は木材、
草木などで15〜30%に達し、セルロースに次いで多量に
存在する有機物である。リグニンは、フェニルプロパン
骨格を基本単位とした3種のアルコール、すなわちコニ
フェリルアルコール、シンナミルアルコール、クマリル
アルコールが、酵素的に脱水素されて生じたラジカルの
ランダムな重合によって生成した複雑な三次元構造を持
つ芳香族高分子化合物の総称である。
他の規則的な天然高分子(多糖、蛋白質)と違い、リグ
ニンを構成するフェニルプロパン単位は1種類の単位間
結合によるのではなく、種々の異なったC-C及びエーテ
ル結合によって形成されている。従って、リグニンの化
学構造は統計的に示されるものであり、単一の化学構造
を示すことは無意味である。
LEMを調製する際の培地にはバガス(サトウキビの絞り
かす:リグニンを20%含んでいる)を使用しており、ま
た、椎茸菌はリグニンを分解することができる担子菌で
あること(沖妙他:木材学会誌,27,696,1981参照)か
ら、LEM中には椎茸菌により分解を受け可溶性となった
バガス由来のリグニンが存在している可能性が高いと考
えられた。
2−2−2.アセチルブロマイド法 まず、リグニンの比色定量法として一般的に用いられて
いるアセチルブロマイド法(K.Iiyama他:Wood Sci.Tech
nol.,22,27,1988参照)によりEP3のリグニン含量を測定
した。
その結果、EP3のリグニン含量は81.1%であった。この
値はEP3中の糖、蛋白質以外の残りの部分に合致した。
2−2−3.ニトロベンゼン酸化 次に、リグニン分析の常法であるニトロベンゼン酸化
(G.Meshitsuka他:J.Wood chem.Techonol.,2,251,1982
参照)を行った。リグニンは、ニトロベンゼン酸化によ
り、その構成核に応じたアルデヒド、すなわちp-ヒドロ
キシフェニル核→p-ヒドロキシベンズアルデヒド
(H)、グアイシル核→バニリン(V)、シリンギル核
→シリンガアルデヒド(S)を与えることが知られてお
り(第5図(H)、(V)、(S)参照)、本法はこれ
らの収量から分解前のリグニンの芳香核構造を推定する
方法である。
その結果、上記に示したリグニン構成核のアルデヒド誘
導体である(H)、(V)、(S)の他に、構成核のカ
ルボン酸誘導体であるp-ヒドロキシ安息香酸(HA)、バ
ニリン酸(VA)、シリンガ酸(SA)(第5図(HA)、
(VA)、(SA)参照)が生成し、これらの合計は5.4%
であった。
したがって、アセチルブロマイド法で得たリグニン含量
(81.1%)から考えると、ニトロベンゼン酸化における
対リグニンあたりのアルデヒド収率は6.7%となる。未
処理バガス中のリグニンのアルデヒド収率は約25%であ
ることが知られており、EP3中のリグニンのアルデヒド
収率は未処理バガス中のリグニンに比べ約1/4であるこ
とが明らかとなった。リグニンのプロパン鎖部分のα位
(リグニン化学においては慣用的に芳香環に近い炭素か
ら順にα、β、γ位と命名しており、IUPAC命名法とは
逆になっている。本分においては以後すべてこの慣用名
を使用する)や芳香環に炭素−炭素結合による縮合構造
を持っている場合はニトロベンゼン酸化では分解されな
いため、アルデヒド収率が低下することが知られてい
る。すなわち、ニトロベンゼン酸化によるアルデヒドの
収量が未処理バガス中のリグニンに比べてかなり小さい
のは、EP3中のリグニンが未処理バガス中のリグニンに
比べてα位や芳香環に縮合構造を多数持っていることを
示している。
2−4.UVスペクトル リグニンの紫外部吸収スペクトルでは、一般的に205n
m、280nm付近に吸収極大を持ち、310〜350nm付近にも弱
い吸収が見られる。リグニンのアルカリ性溶液中(1N N
aOH)でのスペクトルから、微酸性溶液中でのスペクト
ルを差し引いたイオン化示差スペクトル(Δε)は29
5nm付近にピークを持ち、これは遊離フェノール性水酸
基、すなわちエーテル結合にあずからない4位のフェノ
ール性水酸基に由来するものである(O.Goldschmidt:An
al.Chem.,26,1421,1954参照)。
第6図には、EP3の中性溶液中における紫外部吸収スペ
クトル(−)、アルカリ溶液中における紫外部吸収スペ
クトル(‐‐‐‐)、両者の差であるイオン化示差スペ
クトル(・・・・)が示されている。EP3の示差スペク
トルは250nmと295nm付近にピークを持ち、295nmのピー
クの高さから定量した遊離型フェノール性水酸基の含有
は0.45%であり、フェニルプロパン単位あたり0.05個の
水酸基を持つことが明らかとなった。すなわち、20個の
フェニルプロパン単位の水酸基のうち19個はエーテル結
合に使われており、1個だけがフェノール性水酸基とし
て残っていることになる。
一般に種々の単離リグニン(何らかの低分子化を受けて
いる)の遊離型フェノール性水酸基はフェニルプロパン
単位あたり0.2個程度と定量されており、植物組織中の
天然リグニンのそれは溶媒に不溶であるため定量はなさ
れていないが、0.05〜0.1程度と考えられている。従っ
て、EP3中のリグニンは、単離リグニンに比べエーテル
結合が多いことが分かった。
2−5.IRスペクトル 赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)はリグニンを定性
するのに簡便で有用な方法である。IRスペクトルはKBr
錠剤法を用いて島津IR-435型赤外吸光計により測定し
た。この結果を第7図に示す。図中、(−)はEP3のIR
スペクトルであり、(‐‐‐‐)は比較として麦わらの
Bjorkmanリグニン(Bjorkman:Svensk Papperstidn,59,4
77,1956参照)のIRスペクトルを示した。
第7図に示されるように、EP3のIRスペクトルではリグ
ニンに特徴的な吸収(川村一次他:木材学会誌,10,20
0,1964参照)が数多く見られた。
EP3はリグニンに特徴的な吸収を全て持っており、ま
た、他の植物由来のリグニン、例えば麦ワラよりBjorkm
anの方法により調製したリグニン(Bjorkmanリグニン)
のスペクトルと比較して、1660cm-1の蛋白質(アミド結
合)の吸収がほとんどないこと、1600cm-1のカルボン酸
塩の吸収が非常に強いこと、830cm-1の芳香核のとなり
合った水素の吸収がほとんどないことを除けば、EP3とB
jorkmanリグニンの吸収帯はほぼ完全に一致していた。
すなわち、IRスペクトルからもEP3画分のほとんどの部
分はリグニンであり、多数のカルボキシル基を持ち、芳
香核に縮合構造を多く持っていることが明らかとなっ
た。
2−6.NMRスペクトル CP/MAS NMR(cross polarization/magic angle spinnin
g NMR)は試料を固体の状態で測定できるNMRであり、水
や溶媒にとけにくい試料や分子量の大きい試料の測定に
適している(J.schaefer他:Phil.Trans.R.Soc.Lond.,A2
99,593,1981参照)。このCP/MAS NMR(MSL-400、Bruker
社製)において、EP3とヤチダモ(広葉樹)から調製し
たリグニン(milled wood lignin、MWL)の13C-NMRを測
定した。この結果を第8図に示す。図中、(−)はEP3
のスペクトル、(‐‐‐‐)はMWLのスペクトルを表わ
す。
両者のスペクトルはブロードではあるが非常によく一致
し、リグニンに特徴的なメトキシル基(56ppm)および
芳香核(110〜160ppm)のシグナルが見られた。EP3には
それ以外に60〜80ppm付近の糖のシグナルおよび170ppm
付近のカルボキシル基の強いシグナルが存在していた。
以上のように、NMRスペクトルからもEP3が少量の糖を含
み、カルボキシル基を多数持っている水溶性リグニンで
あることが確認された。
2−7.カルボキシル基分析 以上の結果より、EP3中の80%を占める有機物はカルボ
キシル基を多数持った水溶性の変性リグニンであること
が明らかとなった。植物組織中に存在する天然リグニン
は本来、水をはじめあらゆる有機溶媒に不溶性であり、
EP3中のリグニンは多数のカルボキシル基の影響により
水溶性化していると考えるのが妥当である。そこで、EP
3中のカルボキシル基の定量を行い、水溶性との関係に
ついて検討した。
アミド化によるカルボキシル基の定量方法を以下に示
す。
(1) 100mgのEP3を10mlの蒸留水に溶解し、3mmolの
グリシンメチルエステルと2mmolのEDC(カルボジイミ
ド)を加えてpHを4.75に保ちながら4時間室温で攪拌す
る。
(2) 反応液を透析して余分な試薬を除いた後、凍結
乾燥し、EP3のアミド誘導体EP3-GMEを得た。
第9図にEP3(‐‐‐‐)及びEP3-GME(−)のIRスペク
トルを示した。EP3において強い吸収を示した1600cm-1
のカルボキシル基の吸収帯が、EP3-GMEでは小さくなり
(1600cm-1には芳香核の吸収も重なるので吸収は完全に
は消えない)、EP3ではほとんど見られなかった1660cm
-1のアミドの吸収帯がEP3-GMEに現われ、アミド化が完
全に進行したことが確認された。
EP3の窒素含量は1.74%であり(2-1-1項)、EP3-GMEの
窒素含量を測定した結果、4.60%に増加していた。EP3
のカルボキシル基1個につき、グリシンメチルエステル
の窒素原子が1個増加することを考えて計算すると、EP
3は0.243mol/100gのカルボキシル基を持つことになり、
フェニルプロパン単位(単位分子量を200とする)あた
り0.49個と、非常に多量のカルボキシル基を有すること
が明らかとなった。また、EP3-GMEはほとんど水に溶け
ず、同じ濃度のEP3水溶液の280nmの吸光度と比べると、
アミド化によりEP3の99.34%が不溶となったものと考え
られた。なお、天然リグニン中には遊離のカルボキシル
基はまったく見出されていない。
以上の結果より、EP3中のリグニンは高度にカルボキシ
ル化されることにより水溶性化した変性リグニンである
ことが明らかである。
2−8.分子量分布 前述したように、EP3は150万から1万までの幅広い分子
量範囲に広く分散している水溶性リグニンであり、その
分子量分布についてさらに統計学的な検討を加えた。
EP3をSephacryl S-300によりゲル濾過した際の各フラク
ションの吸光度の値と、分子量マーカーにより検定した
各フラクションの分子量の値から算出したEP3の重量平
均分子量(Mw)は32万であり、数平均分子量(Mn)は2
万であった。従って、分散度(Mw/Mn)は15.8となり、
非常に分散度の高い高分子電解質であることが確かめら
れた。
以上の結果より、EP3は蛋白質、糖、及び水溶性リグニ
ンとからなることが明らかとなったが、これらの物質の
いずれがマクロファージの活性化に関与しているについ
て検討を行なった。
蛋白質分解はブロナーゼ処理、糖分解は硫酸加熱分解を
行なった後、それぞれについて残存活性を測定したが、
これらの分解条件では活性の低下がみられなかった。
次に、木材からの脱リグニン法として広く利用されてい
る亜塩素酸塩を用いたWiseらの方法に従ってリグニンの
分解を行った(前川英一他:木材学会誌,29,702,1983
参照)。以下に方法を示す。
(1) 100mgのEP3を7.5mlの蒸留水に溶解し、10μl
の酢酸及び50mgの亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)を加
え、70℃でときどき振とうしながら1時間反応させる。
この溶液をセファデックスG-10で脱塩した後、凍結乾燥
してEP3-DL1と命名した。
(2) 100mgのEP3を(1)と同様に酢酸、NaClO2と反
応させ、1時間後に、同量の酢酸とNaClO2を加えて更に
1時間反応させたもの((1)の操作を2回連続したも
の)を脱塩、凍結乾燥してEP3-DL2とした。
(3) (1)の操作を4回繰り返した後に、脱塩、凍
結乾燥してEP3-DL3とした。
EP3、EP3-DL1、DL2、DL3のマクロファージのグリコリシ
ス活性の測定結果を第10図に示す。
このように、EP3-DL1、DL2、DL3と亜塩素酸処理を重ね
るに従って白色化し、リグニンが分解されてゆくことが
確認された。これらのマクロファージのグリコリシス活
性は、EP3-DL1、ODL2、DL3とリグニンが分解除去される
に伴ない、明らかな活性低下が観察された。同時にマク
ロファージ伸展の促進作用も低下した。
以上の結果より、EP3中のマクロファージを活性化させ
る物質は水溶性化したリグニンであることが確認され
た。
植物中に存在する天然リグニンは、シンナミルアルコー
ル誘導体が種々の結合様式により酸化的に重合してでき
た複雑なポリマーであり、一定の繰り返し構造を持たな
い不溶性の有機化合物である。EP3中のリグニンはカル
ボキシル基をフェニルプロパン単位あたり0.49個と多量
に持っており、カルボキシル基をアミド化すると不溶化
することから、このカルボキシル基により水溶性化した
リグニンであることが明らかとなった。ニトロベンゼン
酸化、UV示差スペクトル、IR、NMRスペクトル等の分析
結果から推定したEP3中の水溶性リグニンの構造的な特
徴を第11図に示した。EP3中の水溶性リグニンの構造的
な特徴を説明すると次の通りである。
非共役型フェノール性水酸基は0.05個/unit(m核以
外は全てエーテル型)。
ニトロベンゼン酸化におけるアルデヒドの収率が天然
リグニンに比べ約1/4、すなわち芳香核5位及び側鎖の
α位での縮合が多い(α核→シリンガアルデヒド、h核
→バニリンを与え、他の核からは生じない)。
ニトロベンゼン酸化でバニリン酸、シリンガ酸を多数
生じる(d核→バニリン酸、o核→シリンガ酸)。
ニトロベンゼン酸化で微量だがp−クマル酸を生じる
(b核)。
カルボキシル基が0.49個/unit存在し、α−カルボン
酸(バニリン酸、シリンガ酸等)よりγ−カルボン酸、
及び芳香核が縮合したα−カルボン酸(ニトロベンゼン
酸化においてj核からはバニリンを生成しない)の方が
多い。
β−o−4エーテル結合(a−d、f−h、e−i、
j−m)、フェニルクマラン構造(g−h)、ビフェニ
ル構造(e−f)は残されている。
芳香核側鎖α位と芳香核との縮合(c−e核)が多
い。
LEMを調製した際の固体培地の主成分はバガス(さとう
きびの絞りかす)であり、このバガス中には約20%のリ
グニンが含まれている。リグニンは微生物分解に対し、
非常に抵抗性が高いが、白色朽菌の一種である椎茸菌は
リグニンを分解できることが知られており、椎茸菌の出
すパーオキシダーゼ等の酸化分解酵素によりリグニンは
酸化分解及び縮合を起こし変性すると考えられる。
詳細な分析によって得られたEP3中の水溶性リグニンの
構造も、天然リグニンが酸化されて多量のカルボキシル
基を持ち、高度に縮合して変性したリグニンであること
が明らかとなった。なお、EP3は疎水クロマトグラフィ
ーを用いて精製された画分であり多糖や蛋白質が単独で
混入することは考えられない。従って、EP3中に若干含
まれている糖及び蛋白質はリグニンと複雑に化学結合し
ているものと考えられる。実際、植物体中のリグニンは
多糖(セルロース、ヘミセルロース)と化学結合を形成
していることが知られている。
以下にEP3の各成分の分析値を示す。
蛋白質 2.1〜4.9% 糖 12.1〜20.0% 中性糖 9.2〜15.8% 酸性糖 2.9〜4.2% 水溶性リグニン 69.7〜84.8% 「発明の効果」 以上説明したように、本発明の免疫活性化剤は、バガス
などの植物中に含まれるリグニンが、椎茸等の担子菌の
出す酵素によって変性された水溶性リグニンを有効主成
分とするものであり、この水溶性リグニンは顕著なマク
ロファージ活性化作用を有している。従って、本発明の
免疫活性化剤により、免疫を中心とする生体防御作用を
亢進させ、種々の病気に対する予防及び治療を図ること
ができる。また、本発明の免疫活性化剤は、天然物から
得られるものであり、合成化学薬品などにおける副作用
の心配は全くない。更に、本発明の免疫活性化剤の製造
法によれば、強い免疫活性化作用を有する成分を効果的
に抽出し、分離することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はLEMとアルコール濃度37.5%可溶、50%不溶画
分(neoPPT1)のマクロファージ活性化作用を示す図、
第2図は上記neoPPT1を疎水クロマトグラフィーにかけ
て得られたそれぞれの画分のマクロファージ活性化作用
を示す図、第3図は上記におけるEP3画分についてゲル
濾過クロマトカラムにかけたときの溶出曲線を示す図、
第4図は上記ゲル濾過クロマトカラムにかけて得られた
それぞれの画分のマクロファージ活性化作用を示す図、
第5図(H)、(V)、(S)、(HA)、(VA)、(S
A)はリグニンをニトロベンゼン酸化させたときに与え
られる各構成核のアルデヒド及びカルボン酸の化学構造
を示す図、第6図はEP3のUVスペクトルを示す図、第7
図はEP3及び麦わらのリグニンのIRスペクトルを示す
図、第8図はEP3とヤチダモのリグニンのNMRスペクトル
を示す図、第9図はEP3とEP3をアミド化したEP3-GMEのI
Rスペクトルを示す図、第10図はEP3のリグニン分解によ
る活性変化を示す図、第11図は各種の分析データから推
測される本発明の免疫活性化剤に含まれる水溶性リグニ
ンの化学構造を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯山 賢治 東京都板橋区中台3―27―B―410 (72)発明者 大橋 康宏 千葉県野田市岩名1―51―11

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リグニンを含有する植物から調製された原
    料を主成分とする培地を用いて担子菌を培養し、この菌
    糸体培養物から抽出された水溶性リグニンを有効主成分
    とする免疫活性化剤。
  2. 【請求項2】バガスを主成分とする培地を用いて椎茸の
    菌糸体を培養し、子実体形成直前にこの菌糸体培養物か
    ら抽出された水溶性リグニンを有効主成分とする請求項
    1記載の免疫活性化剤。
  3. 【請求項3】菌糸体を自己消化させた菌糸体培養物を熱
    水抽出し、熱水抽出物のアルコール濃度37.5%可溶、50
    %不溶画分から得られた水溶性リグニンを有効主成分と
    する請求項1又は2記載の免疫活性化剤。
  4. 【請求項4】分子量1万〜150万の水溶性リグニンを有
    効主成分とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の免
    疫活性化剤。
  5. 【請求項5】リグニンを含有する植物から調製された原
    料を主成分とする培地を用いて担子菌を培養し、この菌
    糸体培養物から水溶性リグニンに富む成分を抽出するこ
    とを特徴とする免疫活性化剤の製造法。
  6. 【請求項6】バガスを主成分とする培地を用いて椎茸の
    菌糸体を培養し、子実体形成直前にこの菌糸体培養物か
    ら水溶性リグニンに富む成分を抽出する請求項5記載の
    免疫活性化剤の製造法。
  7. 【請求項7】菌糸体を自己消化させた菌糸体培養物を熱
    水抽出し、この熱水抽出物からアルコール濃度37.5%可
    溶、50%不溶画分を分取する請求項5又は6記載の免疫
    活性化剤の製造法。
  8. 【請求項8】菌糸体を自己消化させた菌糸体培養物を熱
    水抽出し、この熱水抽出物からアルコール濃度37.5%可
    溶、50%不溶画分を分取し、この画分を更に疎水クロマ
    トグラフィーにかけて活性画分を分取する請求項7記載
    の免疫活性化剤の製造法。
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