JPH0688180A - 溶融金属めっき設備における振動防止方法および装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 めっき浴中ロールの振動を抑え、めっき品質
を高める。 【構成】 ワイピングノズル７の直上に、鋼帯１の振れ
量を検出する検出手段９を配設する。検出手段９が検出
する鋼帯１の振れ量が小さくなるように、サポートロー
ル６の押し込み量を調節して、フレーム振動を抑える。
押し込み量の調節と共に、または押し込み量の調節に代
えて、ライン速度を調節することにより、フレーム振動
を抑えることもできる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融金属めっき設備に
おいて、めっき浴中ロールの振動を抑える振動防止方法
および装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、自動車用鋼板や土木、建築用ある
いは家電用鋼板として、耐食性に優れた表面処理鋼板の
需要が急増している。これらの表面処理鋼板の製造法と
しては、溶融亜鉛めっき法や溶融アルミニウムめっき法
が多用されている。

【０００３】図１は連続溶融亜鉛めっき設備の概略構成
図である。鋼帯１は、連続炉にて機械的性質や温度を調
節された後、スナウト２を介してめっきポット３内のめ
っき浴４中に進入する。めっき浴４中に進入した鋼帯１
は、めっき浴４中に浸漬配置された非駆動のシンクロー
ル５により方向を変えられ、同じくめっき浴４中に浸漬
配置されたサポートロール６を経由してめっき浴４から
引き上げられる。めっき浴４から引き上げられた鋼帯１
は、ワイピングノズル７によりめっき金属の付着量を調
整された後、トッブロール８を通過して常温にまで冷却
される。

【０００４】ここで、めっき浴４中に浸漬配置されため
っき浴中ロールの機能は、シンクロール５について前述
したとおり鋼帯１の方向転換にある。一方、サポートロ
ール６は非駆動のシンクロール５と異なり、めっき浴４
外から駆動シャフト等により強制駆動されるのが一般的
であり、その機能は内側のスタビライジングロール６ａ
についてはワイピング時のパイスラインの確保および安
定化、外側のコレクティングロール６ｂについては主に
鋼帯１の板反り修正とされている。更に、これらのサポ
ートロール６は、鋼帯押し込み量の調節により鋼帯表面
に付着したドロス等の異物の掻き落としも行う。

【０００５】しかしながら、めっき浴中に配設されたこ
れらの浴中ロールは、その使用環境上、軸受にすべり軸
受等のある程度クリアランスのある軸受が採用されてい
ること、ロールを支持するフレームの剛性不足、更に、
サポートロールについては、めっき浴外から駆動される
ため、その駆動シャフトがめっき浴に対して、侵入角度
を持つことによる角速度の脈動が原因となって、激しい
振動を生じる。この振動のため、鋼帯表面に付着したド
ロス等の異物がこれらの浴中ロールとの間をすり抜け、
表面欠陥の原因となる。例えば、自動車の外装用鋼板に
おいては、プレス時にプレスブツと称する表面不均一部
分が生じ、塗装後の鋼板の鮮映性が害されるだけでな
く、その不均一部分に局部電池が形成され、耐食性の低
下も引き起こす。

【０００６】従来、溶融金属めっき設備における振動防
止については、浴中ロールの側から振動防止を図った事
例は殆どない。一方、めっき浴から引き上げられた鋼帯
の振動を抑えるために、めっき浴中のシンクロール上方
で鋼帯の表裏面にめっき浴を吹き付ける技術は特公昭６
３−５０４１８号公報に開示され、ワイピングノズルの
近傍で鋼帯の両側端部を支持する技術は、特開昭６２−
２３８３５７号公報に開示されている。また、ガスワイ
ピング後の鋼帯を挟んで静圧パッドを対向配置し、該静
圧パッドにより鋼帯表面に気体を吹き付けて鋼帯を静圧
支持する技術は、特開昭６１−２１３３６３号公報、特
公昭５９−１１６６２号公報等に開示されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】これらの開示技術は、
いずれもガスワイピング後の鋼帯を支持してその振れを
抑えるものであるが、めっき浴中ロールの振動は前述し
たように種々の要因が複雑に作用して生じるものである
から、鋼帯の振動を抑えても浴中ロールの振動まで抑制
することはできない。また、鋼帯を支持するといっても
これを完全にクランプするわけではないので、かなりの
振れが残り、その結果、浴中ロールの振動が助長され
る。従って、浴中ロールの振動による付着異物のロール
すり抜けは防止されない。

【０００８】また、現在の溶融亜鉛めっき設備は、溶融
亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板の両方を製
造するものが主流になってきている。このようなめっき
設備では、ワイピングノズルの直上に合金化炉やエッジ
バーナー等の付帯装置が設置されているため、前記開示
技術の装置を設置するスペースの確保が困難であり、事
実、その装置が設置されためっき設備は殆どないのが実
態である。即ち、現状のめっき設備はガスワイピング後
の鋼帯の振れすらも充分に抑制されておらず、鋼帯の振
れによる浴中ロールの振動もかなりの部分を占めている
のである。

【０００９】本発明の目的は、これまで省みられること
のなかっためっき浴中ロールの振動を抑えて、付着異物
のロールすり抜けによる表面欠陥の発生を防ぐ溶融金属
めっき設備における振動防止方法および装置を提供する
ことにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者は、実操業上の
経験から、サポートロールの押し込み量の調節による鋼
帯支持力の調節や、鋼帯進行速度の調節、即ちライン速
度の調節が、めっき浴中ロールの振動の抑制に有効なこ
とを確認している。しかし、浴中ロールの振動は、前述
したように種々の要因が複雑に関連して発生しており、
鋼帯支持力の調節やライン速度の調節を行うにしても、
管理指標がないため、その操作はオペレータの経験と勘
に頼らざるを得ず、オペレータの個人差によるばらつき
が大きいという問題があった。

【００１１】この問題を解決するため、本発明者らは、
鋼帯支持力の調節やライン速度の調節する際の管理指標
について様々な検討を行った結果、ワイピングノズル直
上のワイピングノズルに近接した位置で鋼帯の振れ量を
検出し、その検出値を管理指標として、該検出値を小さ
くするよう鋼帯支持力および／またはライン速度を調節
すれば、付着異物のロールすり抜けによる欠陥発生が安
定して防止されることを知見した。

【００１２】本発明の溶融金属めっき設備における振動
防止方法は、溶融金属めっきポット内のめっき浴に進入
した鋼帯を浴中ロールにより案内支持し、前記めっき浴
から進出した鋼帯の表面にワイピングノズルによりワイ
ピングガスを吹き付けてめっき金属の付着量を調整する
溶融金属めっき設備において、前記ワイピングノズル直
上のワイピングノズルに近接した位置でめっき鋼帯の振
れ量を検出し、検出されためっき鋼帯の振れ量が小さく
なるように、めっきポット内における鋼帯支持力および
／または鋼帯進行速度を調節することを特徴とする。

【００１３】本発明の溶融金属めっき設備における振動
防止装置は、溶融金属めっきポット内のめっき浴に進入
した鋼帯を浴中ロールにより案内支持し、前記めっき浴
から進出した鋼帯の表面にワイピングノズルによりワイ
ピングガスを吹き付けてめっき金属の付着量を調整する
溶融金属めっき設備において、前記ワイピングノズル直
上のワイピングノズルに近接した位置に配設されてめっ
き鋼帯の振れ量を検出する手段と、検出された鋼帯の振
れ量を入力され、鋼帯支持力および／または鋼帯進行速
度を調節する機構に、前記振れ量が小さくなるように動
作指令を出力する制御手段とを具備することを特徴とす
る。

【００１４】鋼帯支持力の調節は、サーポートロール、
特に裏側のコレクティングロールの押し込み量の調節に
よって行うのが良い。なぜなら、スタビライングロール
は、前述のようにパスラインの確保・安定化が主目的で
あり、これを動かすとワイピングのパスが変化し、めっ
き付着量分布のばらつきを生じ好ましくないためであ
る。

【００１５】

【作用】図２は特定の条件下でコレクティングロールの
押し込み量を変化させたときのフレームの振動速度の変
化およびワイピングノズル直上での鋼帯の振れ量の変化
を示すグラフである。この条件下では、コレクティング
ロールの押し込み量が３０ｍｍのときに振動速度が最小
となり、また鋼帯の振れ量も最小となる。

【００１６】図３は特定の条件下でライン速度を変化さ
せたときのフレームの振動速度の変化およびワイピング
ノズル直上での鋼帯の振れ量の変化を示すグラフであ
る。ライン速度とフレーム振動およびライン速度と鋼帯
の振れ量はほぼ比例しており、ライン速度を遅くするこ
とによりフレーム振動を抑えることができ、また鋼帯の
振れ量も小さくなる。

【００１７】従って、ワイピングノズル直上での鋼帯の
振れ量に基づいて、めっき浴ポット内における鋼帯支持
力および／または鋼帯進行速度を調節することにより、
フレーム振動が抑制され、浴中ロールの振動に伴う付着
異物のロールすり抜けが防止されて、表面欠陥の発生が
防止される。

【００１８】本発明の振動防止方法においては、鋼帯支
持力および／または鋼帯進行速度を手動または自動で調
節することができる。

【００１９】本発明の振動防止装置は、この調節を自動
で行ない、操業条件等が変更されてもフレーム振動を常
に表面欠陥の発生しないレベルに抑えることができる。

【００２０】具体的な操作としては、鋼帯進行速度の低
下は生産性等に直接影響を与えるので、先ず鋼帯支持力
の調節によりフレーム振動を最小値まで抑え、これで表
面欠陥の発生を充分に防止できないときに鋼帯進行速度
を低下させるのが良い。これにより、ライン速度の低下
を可及的に抑えて、フレーム振動を抑制できる。

【００２１】

【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。

【００２２】図４は本発明の一実施例を示す連続溶融亜
鉛めっき設備の概略構成図である。

【００２３】シンクロール５は、下部をめっき浴４中に
浸漬させたフレーム５０の下端部に回転自在に取り付け
られている。サポートロール６、即ち、スタビライジン
グロール６ａおよびコレクティングロール６ｂも、下部
をめっき浴４中に浸漬させたフレーム６０ａおよび６０
ｂの各下端部にそれぞれ回転自在に取り付けられてい
る。

【００２４】フレーム６０ａは、フレーム５０の浴外部
分に上部が連結され、フレーム５０に取り付けられた移
動機構により鋼帯に向かって前後方向に移動されて、ス
タビライジングロール６ａの押し込み量を調節する。フ
レーム６０ｂは、めっき浴４上に配設された固定ベース
６１に上部が連結され、固定ベース６１に取り付けられ
た移動機構６２により同じく鋼帯に向かって前後方向に
移動されて、コレクティングロール６ｂの押し込み量を
調節する。

【００２５】ワイピングノズル７の直上には、鋼帯１の
振れ量を検出する検出手段９が、ワイピングノズル７に
接近して配設されている。該検出手段９は、図５に示す
ように、鋼帯１に対向するセンサヘッド９ａを有する。
センサヘッド９ａは、レーザ変位計であって、防熱ボッ
クス９ｂ内に収容され、防熱ボックス９ｂに設けた耐熱
ガラス９ｃを通して鋼帯１までの距離の変化を検出する
ことにより、鋼帯１の振れ量を検出する。検出された振
れ量は、アンプ９ｄを通して表示器１１に送られる一
方、制御手段１０に与えられる。なお、防熱ボックス９
ｂ内には、冷却用のエアがドライヤ９ｅ、フィルター９
ｆを通してパージされる。

【００２６】制御手段１０は、与えられた鋼帯の振れ量
が最小値となるように移動機構６２に動作指令を与え
て、コレクティングロール６ｂの押し込み量を調節す
る。コレクティングロール６ｂの押し込み量を調節して
も振動による欠陥発生を充分に防止できないときは、ラ
イン速度調節機構に指令信号を送って、欠陥発生を充分
に防止できるレベルまでライン速度を低下させる。

【００２７】表１に示す条件の連続溶融亜鉛めっき操業
において、コレクティングロールの押し込み量を種々調
節して、押し込み量が鋼帯の振れ量およびフレームの振
動速度に与える影響を調査した。調査結果を示したのが
前掲の図２である。表３に示す条件下でライン速度を種
々調節したときの、鋼帯の振れ量の変化およびロールフ
レームの振動速度の変化を示したのが前掲の図３であ
る。

【００２８】

【表１】

【００２９】

【表２】

【００３０】従来、表１の条件の操業においては、コレ
クティングロールの押し込み量はオペレーターの経験及
び鋼帯の振れ状況の目視チェック等により約２０ｍｍに
設定されていた。この場合、鋼帯の振れ量は約１８ｍ
ｍ、フレーム振動速度は約２ｍｍ／ｓであり、ドロス格
落ち発生率は1.５％、チャタマーク発生率は0.５％であ
った。そこで、コレクティングロールの押し込み量を３
０ｍｍにして鋼帯の振れ量を最小値（約７ｍｍ）にし
た。その結果、フレームの振動速度も最小値（約1.５ｍ
ｍ／ｓ）になり、ドロス格落ち発生率は1.５％から0.３
％に、チャタマーク発生率は0.５％から0.３％にそれぞ
れ減少した。

【００３１】即ち、鋼帯の振れ量に基づくコレクティン
グロールの押し込み量の調節のみで、ライン速度を低下
させることなく、表面欠陥がほぼ完全に防止された。

【００３２】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の溶融金属めっき設備における振動防止方法および装置
は、めっき浴中ロールの振動を抑制することにより、鋼
帯表面に付着する異物のロールすり抜けを阻止できるの
で、表面欠陥の発生を防止できる。従って、めっき鋼帯
の格落ち防止による歩留り向上を達成できる。また、浴
中ロール振動の管理指標として鋼帯の振れ量を導入して
その定量化を図ったので、オペレータの個人能力に頼る
ことなく安定に振動を抑制でき、振動抑制のための作業
の平準化および完全自動化を可能にする。更に、ライン
速度を必要以上に低下させることがないので、生産性の
低下を防止できる利点もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】連続溶融亜鉛めっき設備の概略構成図である。

【図２】コレクティングロールの押し込み量がフレーム
振動および鋼帯振れ量に及ぼす影響を示すグラフであ
る。

【図３】ライン速度がフレーム振動および鋼帯振れ量に
及ぼす影響を示すグラフである。

【図４】本発明の一実施例を示す連続溶融亜鉛めっき設
備の概略構成図である。

【図５】鋼帯振れ量検出手段の構成を示すブロック図で
ある。

【符号の説明】

１ 鋼帯 ３ めっきポット ４ めっき浴 ５ シンクロール ６ サポートロール ６ａ スタビライジングロール ６ｂ コレクティングロール ７ ワイピングノズル ９ 振れ量検出手段 ５０，６０ａ，６０ｂ フレーム

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶融金属めっきポット内のめっき浴に進
   入した鋼帯を浴中ロールにより案内支持し、前記めっき
   浴から進出した鋼帯の表面にワイピングノズルによりワ
   イピングガスを吹き付けてめっき金属の付着量を調整す
   る溶融金属めっき設備において、前記ワイピングノズル
   直上のワイピングノズルに近接した位置でめっき鋼帯の
   振れ量を検出し、検出されためっき鋼帯の振れ量が小さ
   くなるように、めっきポット内における鋼帯支持力およ
   び／または鋼帯進行速度を調節することを特徴とする溶
   融金属めっき設備における振動防止方法。
2. 【請求項２】 溶融金属めっきポット内のめっき浴に進
   入した鋼帯を浴中ロールにより案内支持し、前記めっき
   浴から進出した鋼帯の表面にワイピングノズルによりワ
   イピングガスを吹き付けてめっき金属の付着量を調整す
   る溶融金属めっき設備において、前記ワイピングノズル
   直上のワイピングノズルに近接した位置に配設されてめ
   っき鋼帯の振れ量を検出する手段と、検出された鋼帯の
   振れ量を入力され、鋼帯支持力および／または鋼帯進行
   速度を調節する機構に、前記振れ量が小さくなるように
   動作指令を出力する制御手段とを具備することを特徴と
   する溶融金属めっき設備における振動防止装置。