JPH0687760B2 - ギムネマ・シルベスタ抽出物の苦味低減方法 - Google Patents

ギムネマ・シルベスタ抽出物の苦味低減方法

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JPH0687760B2
JPH0687760B2 JP62155303A JP15530387A JPH0687760B2 JP H0687760 B2 JPH0687760 B2 JP H0687760B2 JP 62155303 A JP62155303 A JP 62155303A JP 15530387 A JP15530387 A JP 15530387A JP H0687760 B2 JPH0687760 B2 JP H0687760B2
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浩 羽根
五郎 堅正
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大日本製糖株式会社
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【発明の詳細な説明】 イ.発明の目的 産業上の利用分野 本発明は、薬用及び低カロリー飲食物として有用なギム
ネマ・シルベスタ抽出物の苦味を低減する方法に関する
ものである。
従来の技術 ギムネマ・シルベスタ(Gymnema,Sylvestre R.Br.-以下
GSと云う)はインド、中国、東南アジア、アフリカ等の
熱帯、亜熱帯に自生するカガイモ科に属する植物で、GS
の水又はアルコール抽出物は甘味抑制効果がある一方、
腸管における糖の吸収抑制効果もあることが判り、薬用
及び低カロリー飲食物への利用が可能である。又抗齲蝕
効果があることも判り、虫歯予防剤としての利用も可能
である。
伝統的にGSを用いているインドでは乾燥葉自体を粉末化
して食用しており、糖尿病その他の病気の治療薬として
用いられている。この薬効成分はGSの水等による抽出物
にあると論じられており、下記ギムネマ酸を含む複合成
分の相互作用によると考えられている。
このような効果を示すGSの有効成分はギムネマ酸(以下
GAと云う)と云われ、ギムネマ酸はA1〜A4の同族体があ
り、その基本構造は、トリテルペンでるギムネマゲニン
(3β,16β,21β,22α,23,28−ヘキサヒドロキシオレ
アン−12エン)の誘導体とD−グルクロン酸から成る配
糖体である。又トリテルペンの水酸基は種々の有機酸で
エステル化されており、有機酸の種類はそれぞれの同族
体で異っている。
GSの利用に際しては、GSを水又はアルコールで抽出し、
次いで濃縮した後噴霧乾燥した粉末として各種の用途に
用いられている。
しかしながら、このGS抽出物は苦味が強く、食用及び薬
用への適用に大きな妨げとなっているが、有効な苦味除
去法は未だ確立されていない。
天然の配糖体は苦味を呈するものが多く、その苦味の低
減について各種の方法が考案され実用化されているが、
GS抽出物の苦味の低減には有効でない。
発明が解決しようとする問題点 本発明はGS抽出物の服用に妨げとなる苦味を低減する方
法を提供することを目的とする。
ロ.発明の構成 問題点を解決するための手段 本発明のGS抽出物の苦味低減方法は、GS抽出物に、その
5重量倍以上の澱粉を加え、水相でサイクロデキストリ
ン・グルコシル・トランスフェラーゼ(cyclodextrin g
lucano transferase:以下CGTと云う)を作用させてGS抽
出物中のGAにグルコースを転移させると共に、同時に生
成するγ−サイクロデキストリンによる包接を行わせる
ことを特徴とする。
CGTはB.Macerans、B.Megaterium等が分泌する酵素で、
B.Macerans由来のものはコンチザイム(天野製薬(株)
製)の名で市販されている。その特質は、澱粉単独に作
用させるとサイクロデキストリン(以下CDと云う)を生
成し、澱粉と配糖体が存在すると配糖体の糖部にグルコ
ース残基を転移させる作用がある。
GSの場合、有効成分であり且つ苦味成分であるGAの基本
構造から、そのD−グルクロン酸部位への酵素によるグ
ルコース転移と疎水性トリテルペン部位のCDの包接が行
われる。
CDにはα、β、γの3つの型があるが、包接して苦味を
抑える効果を有するのはγ型のみであり(後記参考例参
照)、CGTの作用により澱粉から生成したγ−CDによりG
Sの半ば以上を包接するには、GS抽出物に、その5重量
倍以上、好ましくは10重量倍以上の澱粉を加える必要が
ある。
以下実施例、比較例及び参考例により本発明の構成及び
効果を説明する。
[試料調製] GSの水又はアルコール抽出物には有効成分であるGAの他
に葉緑素等の多くの物質が含まれており、これらの中に
は苦味を呈する物質も少なくないので、実験の効果を明
確にするため、GA以外の苦味物質を下記の方法により前
以って除去した。
GSの含水エタノール抽出物の水溶液に塩酸を加え、pH1.
0〜2.0として酸析し、析出した沈殿をエタノールで抽出
し抽出物を蒸発乾固した。乾固物を水に溶解し、水飽和
n−ブタノールで抽出し、抽出したブタノール層にジェ
チルエーテルを加え再結晶させた。結晶は遠心分離し沈
殿物を乾燥し粗GAとした。なお必要な場合はジェチルエ
ーテル再結晶操作をさらに一回繰返してもよい。
こうして得られたGS抽出物精製品(粗GA)は少量の不純
物を含むがGAの異性体の集合物であり、前述の各種の効
力を強力に示すが、強い苦味を呈する。
[比較例1] 前記の粗GAに3重量倍の澱粉を加えてCGTを作用させ、
苦味の低減程度及びグルコース転移の確認をした。
粗GA400mg及び可溶性澱粉1200mgを10mlの酢酸バッファ
ーでpH6.0の水溶液とし、CGTとしてコンチザイム110Uを
加え50℃で48時間反応させた。
ここで1Uとは、pH5.5、0.02Mの酢酸緩衝液及び2×10-3
Mの塩化カルシウムを含む0.3重量%のソリュブルスター
チ溶液5mlに適当に希釈した酵素液0.2mlを加え40℃で10
分間反応した後、その反応液0.5mlをとり、0.02N硫酸水
溶液15mlに混合して反応を停止させ、さらにこの反応停
止液に0.1Nヨウ素ヨウ化カリウム溶液0.2mlを加えて発
色させ、ついで660nmにおける吸光度を測定して、40℃
で40分間反応させることによりソリュブルスターチ15mg
のヨウ素の呈色を完全に消失させる酵素量のユニットを
いう。
反応後沸騰水浴中で酵素を失活させ、苦味の評価および
薄層クロマトグラフィ(以下TLCと云う)によるグルコ
ース転移の確認を行った。
苦味は男女各5名づつの10人のパネルによる味覚試験で
評価した。
TLCは反応前後の試料につき一次展開の後、分離したス
ポットにグルコアミラーゼ(生化学工業(株)製)を噴
霧し二次展開した。反応前のTLCは直線であり、反応後
は転移グルコース残基が分離していることからグルコー
ス転移を確認した。
TLC条件 プレート:メルクHPTLC Art 5631 展開溶媒:CH3Cl:CH3OH:H2O=60:35:10 発色剤 :2N H2SO4、0.5%バニリン 比較例1において粗GAへのグルコース転移は確認された
が、反応液の苦味は幾分弱くなった程度であり、グルコ
ース転移だけでは苦味低減効果は殆ど認められなかっ
た。
[参考例] CDにより包接が行われることは各種の実験で判明してい
るが、CDにはα、β、γの3つの型があり、いずれの型
が苦味低減効果が優れているのかを見た。
前記粗GA100mgに対して、α−、β−又はγ−CD各100mg
を水10mlに溶かし、2時間撹拌した後苦味を見た。結果
は次の通りである。
α−CD 苦味あり β−CD 苦味あり γ−CD 苦味は弱くなっている 従ってγ−CDにより包接のみが苦味低減効果のあること
が判るが、γ−CDはCDの内でも高価であり、実際の使用
ではコストアップとなる。
B.Macerans由来のCGTは、澱粉に作用させると、たとえ
ば90分では、α:β:γ=2.2:1.0:0.7の割合でCDを生
成するとされている。(アミラーゼシンポジウム(197
3),8,P21〜27;岡田等) またCDによる包接効果の効率が良いのは等モル比付近で
あるとされている。GAの平均分子量は約800、γ−CDの
分子量は1297であるので、澱粉からCGTによるグルコー
ス転移と、生成するγ−CDによる包接効果を期待するに
は多量の澱粉が必要であると予想される。
[実施例1及び2] 前記のGS抽出物精製品(粗GA)100mgに対して澱粉500mg
(実施例1)又は(実施例2)1500mgを10mlの20mモル
酢酸バッファー(pH=6.0)に溶解し、CGTとしてコンチ
ザム120Uを加え54℃で48時間反応させ、反応終了後沸騰
水浴中で酵素を失活させたのち苦味を見た。又生成した
γ−CDを測定した。結果を第1表に示す。
なおCDは、反応液にグルコアミラーゼを加え50℃で20時
間反応させ残存澱粉を分解し、沸騰水浴中で酵素を失活
させた後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により
測定した。
HPLC条件 カラム Licrosorb-NH2 検出 RI 溶媒 CH3CN:H2O=71:29 実施例1の如く粗GAに対して5重量倍の澱粉を加えたた
場合66mgのγ−CDが生成しGAの苦味は低減され、実施例
2の如く粗GAに対して15重量倍の澱粉を加えたた場合13
3mgのγ−CDが生成しGAの苦味はなくなった。
実施例2の場合の粗GAとγ−CDのモル比は見掛け上1:0.
8となるが、粗GAは不純物を若干含有しているので、GA
とγ−CDの比は実質的にほぼ等モル比となっていると考
えられる。
即ちGS抽出物精製品である粗GAに5重量倍以上、好まし
くは10重量倍以上の澱粉を加えてCGTを作用させること
により、まず粗GAにグルコース転移を生じ、次いで過剰
の澱粉からγ−CDが生成され粗GAを包接することにより
苦味が低減されるものと考えられる。
なお粗GAに対する最適澱粉量は粗GA中のGA含有量により
変化するので一概には定められないが、過剰に使用して
も澱粉はGS抽出物に比べ安価であり、コストアップにつ
ながらない。
又過剰に使用した場合、多量の澱粉が未反応物として反
応物中に混在することになるが、GAの効果は強いので、
その効果を弱めることなく増量剤として用いることが出
来る。
実際のGS抽出物の苦味低減方法においては、実施例1及
び2に示したようにGSの水又はアルコール抽出物を更に
精製した原料を使用する必要はなく、GS抽出物の酸析物
を原料としても充分苦味は弱められ、実用に耐えるもの
となる。
[実施例3] GS乾燥葉4gを30%エタノール40mlで3回抽出し、抽出液
を蒸発乾固して抽出物1gを得た。抽出物1gを水10mlで溶
解し塩酸にてpH1.5に調整した。生成した沈殿は遠心分
離により分離し、乾燥した。
乾燥粉末300mgと澱粉3000mgを30mlの20mモル酢酸バッフ
ァー(pH6.0)に溶解し、CGT(コンチザイム)250Uを加
え54℃で48時間反応させた。反応終了後沸騰水浴水で10
分間加熱し、酵素を失活させた後反応液は遠心分離し上
清を減圧濃縮した後乾燥し、乾燥物3000mgを得た。
この乾燥物は苦味が完全にないものであった。
作用 ギムネマ・シルベスタ抽出物に、その3重量倍の澱粉を
加え、水相でサイクロデキストリン・グルコシル・トラ
ンスフェラーゼを作用させても苦味の低減は殆ど認めら
れないが(比較例1)、5重量倍の澱粉を加えて同様に
処理すれば明らかに苦味が減少したことが認められ(実
施例1)、15重量倍の澱粉を加えた場合(実施例2)及
び10重量倍の澱粉を加えた場合(実施例3)には苦味が
感じられなくなる。
これはギムネマ・シルベスタ抽出物中のギムネマ酸への
グルコース転移及び同時に生成するγ−サイクロデキス
トリンによる包接と対応する効果であることが認められ
た。
ハ.発明の効果 GS抽出物の各種用途への適用に際して問題となる苦味の
低減が、安価な澱粉と市販の普及した酵素の作用により
実施可能となり、安価な苦味低減GS抽出物を提供出来
る。又、その方法は簡単であり実用化に適合した方法で
ある。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ギムネマ・シルベスタ抽出物に、その5重
    量倍以上の澱粉を加え、水相でサイクロデキストリン・
    グルコシル・トランスフェラーゼを作用させてギムネマ
    ・シルベスタ抽出物中のギムネマ酸にグルコースを転移
    させると共に、同時に生成するγ−サイクロデキストリ
    ンによる包接を行わせることを特徴とするギムネマ・シ
    ルベスタ抽出物の苦味低減方法。
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