JPH0681984B2 - 無端チェーン給油装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はスプロケットに懸装し無端回走するチェーンの
給油装置に関する。

従来技術 第４図にローラチェーンを断面して示す如く、同チェー
ン２はスプロケット１に懸装する屈曲運動部において、
リンク２′を連結するピン３とブッシュ４間に経常的な
摺動が生ずるため、同ピン３及びブッシュ４が摩滅して
短期に寿命に至ることが多い。この摩滅の進行を遅延す
るためには、ピン３とブッシュ４間に頻繁に給油するこ
とが必要とされており、通常はチェーンの運転中又は停
止中に油差による点滴、或はポンプを利用した強制潤滑
により注油が行なわれているが、前者の如く運転中の給
油は危険を伴なうことに加え斑なく短時間で給油するこ
とが困難であり、又後者は給油は確実であるが概して装
置が大掛りとなる。上記の問題を改善する手段として、
例えば特公昭61−3978号、実開昭61−49727号において
は、チェーン構造を変えてチェーン本体内に油溜り部を
設けて給油を長時間維持する構造にしている。

又実公昭54−44381号はチェーン側面に潤滑剤タンクを
設け、該タンクとチェーン枢軸部とを給油管で直結し給
油する構造にしている。

又実開昭55−2288号はスプロケット軸をスプロケットの
内側で支えるケースに穿けた油孔から潤滑油を送り込ん
でスプロケット軸周面を滲潤させつつ、この油をスプロ
ケット外側面に添設した防音弾性リングの内周面の溝で
受け止め、この溝で受け止めた油を回転遠心力により防
音弾性リングの添設面に形成した油孔を通じチェーンに
案内するように構成している。

発明が解決しようとする問題点 而して、特公昭61−3978号は、チェーンのピン断面形状
を楔形として油溜り部を設け、実開昭61−49727号はチ
ェーンプレートに皿状の凹部を油溜り部として設けてい
るが、何れもチェーンを特殊な構造にする必要があり、
高価となる問題がある。

又実公昭54−44381号は、チェーン装置が大掛りで高重
量となり、小型チェーンには不適である。

又実公昭55−2288号は、油溜り部がないため、チェーン
に経常的に給油することができないばかりか、運転中ケ
ースに穿けた油孔からチェーンが一順するまで油を差し
つづける必要があり、一連のチェーンの速度が遅い場
合、或は長さが長い場合、完全給油するためには、長時
間を必要とし、又スプロケット内側に油差しを差し向け
る際、チェーンとスプロケットの噛み込み部に巻き込ま
れる危険もある。又油道が長く、且つスプロケット軸周
面への油の滲潤を介するので油道末端のチェーンに適量
の油を確実に誘導し難い欠点がある。

而して本発明は、チェーン構造を全く変えることなく、
又大掛りな装置とすることなく汎用のチェーンに対して
経常的に適量の潤滑油を安全，確実且つ容易に給油でき
るようにしたチェーンの給油装置を提供する。よって上
記各従来例の問題点を有効に解決するものである。

問題点を解決するための手段 本発明は上記目的を達成する手段として、チェーンを懸
装せるスプロケットの外側面に油溜り容器を添設してス
プロケットと一体回転するようにし、該油溜り容器の油
溜り室外周壁に給油口を形成し、更に油溜り容器の外周
壁からスプロケット歯形に懸装されたチェーン外側面と
対向するチェーンガードを張り出し、該チェーンガード
の内側に開口せる該給油口を通じて油溜り室内の潤滑油
を油溜り容器外周域に配された上記懸装チェーンに給油
するように構成したものである。

作用 本発明においては、チェーンを懸装するスプロケット外
側面に油溜り容器が添設されて同スプロケット側面に常
時油溜りが形成されている。

スプロケットが回転すると、油溜り容器も共に回転しこ
れに遠心力が加わり、この遠心力の作用で油溜り容器の
油溜り室外周壁に設けた給油口から同室内の油を外周域
に放油し、これを上記油溜り容器外周域のスプロケット
歯形に懸装のチェーンに給油することとなる。

この給油動作はチェーン運転時、即ちスプロケット回転
時経常的に続けられる。更に上記油溜り容器の外周壁か
ら張り出したチェーンガードによって、チェーン運転時
における油溜り容器への補油が安全に行なえ、ひいては
チェーンガードを給油口からの油止めとして有効に機能
させることができる。

実施例 以下本発明の実施例を第１図乃至第３図に基いて説明す
る。

本発明は前記のようにスプロケット１に懸装して無端回
走するようにしたチェーン２の給油装置に関するもの
で、第１図乃至第３図に示すように、上記スプロケット
１の外側面に油溜り容器５を添設してスプロケット１と
一体回転するようにする。

該油溜り容器５及びその油溜り室７はスプロケット１と
同心にして配し、その外周域に接近してスプロケット１
の歯形６及びこれに懸装するチェーン２が配置されるよ
うにする。

例えば油溜り容器５又は油溜り容器５と油溜り室７の外
形を円形にし、これをスプロケット１と同心円にして添
設し、該円形油溜り容器外周域の同心円上に上記チェー
ンを懸装せる歯形が接近して配置されるようにする。

上記の如く配した油溜り容器５の油溜り室７の外周壁８
に環状又は間隔的に給油口９を設ける。該給油口９は一
端が油溜り室７内に開口し、他端が油溜り室外周壁８の
外周面においてチェーン２の内周面に向って開口する。

好ましくは歯形６の谷部11付近のスプロケット外側面に
おいて開口させる。

斯くして上記油溜り容器５はチェーン運転中、スプロケ
ット１と共に回転し、その回転遠心力の作用を受ける。
この結果上記油溜り室７内の潤滑油10は給油口９を通じ
て外周域へ放油され、同外周域に存在し回走するチェー
ン２に万遍なく殆どダイレクトに給油され、ピン３やブ
ッシュ４間に行き渡ることとなる。

第１図，第２図に示した第１実施例に基き詳述すると、
同実施例においてはスプロケット１の外側面にカップ形
の油溜り容器５を添設して一体回転可となし、その開口
面、即ち油溜り室７開口面をスプロケット外側面にて閉
塞する。即ち油溜り室７は油溜り容器５とスプロケット
１の外側面にて密閉状態にされて内部に潤滑油10を保有
し、外周壁８に設けた前記給油口９を通じチェーン２へ
の給油を行なう。

上記油溜り容器５をスプロケット１の外側面に一体回転
可に添設する手段として、第１図に示すように油溜り容
器５の油溜り室外周壁８をスプロケット１外側面に据
え、該据え付け部位の要所においてボルト12締する。

第２図に示すように少なくとも上記ボルト12締する部位
付近を据付面において突設し、これを据付座13とする。
例えばボルト挿通孔14（雌ねじ孔であっても良い）の口
縁を据付面において突出し、これを据付座13とする。

上記給油口９は上記据付座13以外の全周において開口
し、環状給油口とする。

又上記油溜り容器５全体を弾性を有する合成樹脂にて形
成し、上記ボルト12の締付け量によって上記据付座13を
圧縮，復元させるようにし、上記給油口９の開口量を調
整できるようにしている。この趣旨に従い、据付座13を
スプリングワッシャー、又はその他の弾性的に圧縮，復
元可能な部材に置き換え、ボルト12の締付量を多くする
と、据付座13を圧縮して給油口９の開口量を狭小にし、
同締付量を少なくして同開口量を大に調整することがで
きる。該開口量の調整はスプロケット回転速度、即ち遠
心力の程度、潤滑油の粘度等によって設定される。この
場合油溜り容器５は金属等の剛体であって良い。

又上記油溜り容器５には潤滑油を油溜り室７に補充する
補油口15を設ける。該補油口15を例えば油溜り容器５の
外側壁19中心部に穿けてスプロケット１の中心と同心に
配し、スプロケット外側を覆う保護カバー16に補油口15
と対向する油差口20を設ける。

上記補油口15は常にスプロケット中心において定心回転
であり、実質的には静止状態にあるので、スプロケット
回転時の油補充が容易に且つ安全に行なえる。

又上記油溜り容器５の外周壁から上記スプロケット歯形
６に懸装するチェーン２外側を隠蔽するフランジを張り
出し、これをチェーンガード17とする。該チェーンガー
ド17は油補充時の巻き込み等を防止し、又側方への油は
ねを防止する。換言すると、チェーンガード17はスプロ
ケット歯形の外側面と対向し、且つこれに懸装したチェ
ーン２の外側面と対向する如く張り出され、このチェー
ンガード17の内側の油溜り容器５外周面内縁部において
上記給油口９を開口せしめる。

実施例として上記油溜り容器５を透視性合成樹脂にて形
成し油溜り室７内の潤滑油10の量を確認できるようにす
る。

次に第３図に示す実施例は、油溜り室７を油溜り容器５
自身で画成する密閉容器で形成し、該油溜り室７の外周
壁８にチェーン内周面に接近して開口する給油口９を設
けている。

該給油口９が環状或は間隔的配置、例えば放射状配置で
あっても良いこと、又既に述べた構成を同実施例で採用
し得ることは勿論である。

又同実施例は前記給油口９の他の開口量調整手段とし
て、給油口９を間隔的に複数配し、各給油口９に調整螺
子18を螺入し、その螺入量によって給油口９の開口量を
調整する。又は調整螺子18を油溜り容器５の外側面側か
ら環状又は一定角度に亘って開口する給油口９内へ向っ
て螺挿し、該螺子先端を給油口９のねじ込み側と反対側
の壁に当接し得るようにし、該壁に螺子先を当接しつつ
ねじ込むことによって外周壁８及び外側壁19を外側方へ
開き上記給油口９の開口度を調整し得るようにする。こ
の場合、調整螺子18は給油口９の開口領域の複数個所に
設けても良い。油溜り容器５をボルト12にてスプロケッ
ト１の外側面に取付けた場合、該取付部位を支点として
上記外周壁と外側壁とを変位し、給油口９の開口度を調
整することができる。

上記各実施例で述べた油溜り容器５はスプロケット１の
外側面と内側面の双方又は一方に取付けることができ
る。

発明の効果 本発明によれば、チェーンの運転中、スプロケットの回
転により油溜り容器が一体に回転し、スプロケット回転
に伴なう遠心力の作用を受けて油溜り容器の油溜り室外
周壁に設けた給油口から潤滑油を放油することができ、
該容器外周域に対向し配されたスプロケット懸装チェー
ンへ、従ってチェーンを枢結するピン及びブッシュ間へ
直ちに給油することができ、該給油が確実で、且つスプ
ロケット回転中均一に給油することができる。

又油溜り容器の外周壁にスプロケットに懸装せるチェー
ン外側と対向するチェーンガードを設け、このチェーン
ガード内側において上記給油口を開口させたので、チェ
ーン運転中作業員が油差しする場合の如き巻き込みの危
険を伴なわず安全なる利点がある。従って、この種チェ
ーン駆動装置において求められている安全性確保の目的
を有効に達成しながら、チェーンへの給油目的が遺憾な
く達成でき、加えてチェーンガードを同ガード内側にお
いて開口する給油口から抽出される潤滑油の油止めとし
て有効に機能させることができる。又スプロケットの外
側面に油溜り容器を添設し給油する構造であるから、チ
ェーンに油溜りを形成する従来例の如くチェーンの構造
を変更することなく汎用のチェーンにおいて容易に実施
できる。加えて構造が簡素であり、従来の如き給油装置
による大型化を解消できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を、チェーン懸装スプロケッ
ト部の油溜り容器を断面して示す正面図、第２図は上記
スプロケットに添設される油溜り容器の斜視図、第３図
は本発明の他の実施例を、チェーン懸装スプロケット部
の油溜り容器を断面して示す正面図、第４図は本発明が
実施される汎用チェーンを例示する断面図である。 １…スプロケット、２′…リンク、３…ピン、４…ブッ
シュ、５…油溜り容器、６…スプロケット歯形、７…油
溜り室、８…外周壁、９…給油口、10…潤滑油。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】チェーンを懸装するスプロケットの外側面
   に油溜り容器を添設して、該油溜り容器の外周域にチェ
   ーンを懸装せるスプロケットの歯形を配すると共に、該
   油溜り容器の油溜り室外周壁に油溜り室内の潤滑油を上
   記油溜り容器外周域のチェーンに給油する給油口を設
   け、上記油溜り容器の外周壁にスプロケット歯形に懸装
   されたチェーン外側面に対向するチェーンガードを設
   け、このチェーンガード内側において上記給油口を開口
   させたことを特徴とする無端チェーン給油装置。
2. 【請求項２】上記油溜り容器の油溜り室を上記スプロケ
   ット外側面で閉塞し、上記油溜り室外周壁のスプロケッ
   ト外側面への添設面に上記給油口を設けたことを特徴と
   する請求項１記載の無端チェーン給油装置。