JPH0678973A - 蒸気滅菌器及びその制御方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スタートスイッチをONした時のチャンバー内
の温度や、チャンバー内に収納する被滅菌物の量等に影
響されることなく、また大気圧による影響も受けること
なく、開閉弁を常に最適なタイミングで閉じるようにし
た蒸気滅菌器を提供する。 【構成】 チャンバー１１内の飽和蒸気を排出するため
の排出管１６と、この排出管１６の途中に設けられた開
閉弁１７と、チャンバー１１内に設けられた内部温度を
検出する温度検出器１５と、この温度検出器１５による
検出温度に基づいて温度勾配を計測する温度勾配計測部
２と、この温度勾配計測部２により計測された温度勾配
の値が予め設定された一定値以下となった時点から所定
時間経過後に、排水管１６を閉じるように開閉弁１７を
制御する制御部３とを備えた構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、所定量の水が供給され
たチャンバー内に被滅菌物を収納し、チャンバー内に設
けられたヒータを加熱して水を蒸発させることにより、
その飽和蒸気を利用して前記被滅菌物の滅菌を行う蒸気
滅菌器及びその制御方法に関し、例えば外科、内科、歯
科等で用いられる医療用器具の滅菌処理に利用される。

【０００２】

【従来の技術】外科、内科、歯科等で用いられる医療用
器具は、使用後に十分滅菌する必要があることから、そ
のための装置として従来より種々の蒸気滅菌器が提供さ
れている（例えば、実公平３−４７６４９号公報）。

【０００３】この蒸気滅菌器は、チャンバー内を確実に
飽和蒸気圧にする必要があるため、常圧での水の沸点が
１００℃であるので、この１００℃に近い一定温度を検
出後、所定時間（ここでは９０秒）経過したときに、バ
ルブを閉じるようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、蒸気滅菌器
のスタートスイッチをONした時のチャンバー内の温度
や、チャンバー内に収納する被滅菌物の量等により、そ
の後の温度上昇率（温度勾配）が異なることになる。そ
のため、スタートスイッチのON時から１００℃に近い一
定温度に達するまでの時間もこれらの要因によって異な
ることから、一定温度に達したとき、すでにチャンバー
内部が飽和蒸気圧に達している場合もある。

【０００５】チャンバー内部が最も早く飽和蒸気圧に達
するのは、スタートスイッチのON時のチャンバー内の温
度が高く、かつ収納した被滅菌物の量が少ない場合であ
り、また最も遅く飽和蒸気圧に達するのは、スタートス
イッチのON時のチャンバー内の温度が低く、かつ収納し
た被滅菌物の量が多い場合である。

【０００６】つまり、スタートスイッチのON時のチャン
バー内の温度が低く、かつ収納した被滅菌物の量が多い
場合の温度勾配は小さく、そのため蒸気エネルギーのほ
とんどが内部温度を上げるために消費される。その結果
蒸気は結露し、内部の空気はあまり排出されない。従っ
て、温度勾配が小さいときには、チャンバー本体、被滅
菌物、排気管等を十分に熱しなければならず、飽和蒸気
圧に達するまでに時間がかかることになる。

【０００７】また、スタートスイッチのON時のチャンバ
ー内の温度が高く（例えば、８０℃等）、かつ収納した
被滅菌物の量が少ない場合の温度勾配は大きく、そのた
めチャンバーの内部温度が急激に上昇するが、発生させ
る蒸気エネルギーは一定なので、早い時期から空気を排
出するため、飽和蒸気に早く達する。上記した従来の蒸
気滅菌器では、このような場合の残留空気を完全に排出
するために、一定温度に達した後、所定時間経過してか
らバルブを閉じるようになっている。

【０００８】つまり、上記した従来の蒸気滅菌器では、
この所定時間を、上記した残留空気を確実に排出できる
時間に設定する必要がある。そのため、内部温度が一定
温度に達しているときに、すでに飽和蒸気圧になってい
るような場合（上記した飽和蒸気圧に最も早く達する場
合）には、その後の所定時間バルブを開いていること
は、全く無駄な動作となり、ユーザーにとっては、その
分滅菌処理の待ち時間が長くなるといった不具合を生じ
る。

【０００９】また、このような不具合を解消する手段と
して、所定時間をユーザーに設定させるようにすること
も可能であるが、この場合には、ユーザーの設定ミスに
より被滅菌物が十分に滅菌処理されないまま再使用され
るといった極めて重大な事態が発生する場合もある。

【００１０】さらに、飽和水蒸気となる温度は大気圧に
より左右されるため、上記した一定温度を１００℃にで
きるだけ近づけて設定すると、例えば高地では一定温度
まで上昇しなくても沸騰することとなり、この場合に
は、いつまでたってもバルブが閉じず、滅菌処理が行え
ないといった不具合も生じる。

【００１１】本発明は係る実情に鑑みてなされたもの
で、その目的は、スタートスイッチをONした時のチャン
バー内の温度や、チャンバー内に収納する被滅菌物の量
等に影響されることなく、また大気圧による影響も受け
ることなく、開閉弁を常に最適なタイミングで閉じるよ
うにした蒸気滅菌器及びその制御方法を提供することに
ある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係わる蒸気滅菌器は、所定量の水が供給さ
れたチャンバー内に被滅菌物を収納し、チャンバー内に
設けられたヒータを加熱して水を蒸発させることによ
り、その飽和蒸気を利用して前記被滅菌物の滅菌を行う
ものにおいて、前記チャンバー内の飽和蒸気を排出する
ための排出管と、この排出管の途中に設けられ、飽和蒸
気による前記被滅菌物の滅菌中は閉じられる開閉弁と、
前記チャンバー内に設けられた内部温度を検出する温度
検出器と、この温度検出器による検出温度に基づいて温
度勾配を計測する温度勾配計測部と、この温度勾配計測
部により計測された温度勾配の値が予め設定された一定
値以下となった時点から所定時間経過後に、前記排水管
を閉じるように前記開閉弁を制御する制御部とを備えた
構成とする。

【００１３】また、本発明に係わる蒸気滅菌器の制御方
法は、所定量の水が供給されたチャンバー内に被滅菌物
を収納し、チャンバー内に設けられたヒータを加熱して
水を蒸発させることにより、その飽和蒸気を利用して前
記被滅菌物の滅菌を行う蒸気滅菌器に適用し、ヒータの
加熱を開始してからの前記チャンバー内の温度を計測
し、その計測結果に基づく温度勾配の値が予め設定され
た一定値以下となった時点から所定時間経過後に、前記
排水管を閉じるように前記開閉弁を制御するものであ
る。

【００１４】

【作用】スタートスイッチのON時、排出管に設けられた
開閉弁は「開」の状態になっており、チャンバー内部の
空気や後に発生する水蒸気を排出するようになってい
る。

【００１５】この状態において、温度検出器は、スター
トスイッチのON時からのチャンバー内部の温度を一定時
間毎に（又は連続的に）検出し、その検出温度を温度勾
配計測部に与える。

【００１６】温度勾配計測部では、温度検出器からの検
出温度に基づいて温度勾配を計測し、その計測結果を制
御部に与える。

【００１７】制御部では、温度勾配計測部により計測さ
れた温度勾配の値と、予め内部に設定された一定値との
比較を行い、計測値が一定値以下となった時点から所定
時間経過後に、排水管を閉じるように開閉弁を制御す
る。

【００１８】これにより、外気圧に左右されることな
く、内部が飽和蒸気圧になったとき、確実に開閉弁を閉
じることが可能となる。

【００１９】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。

【００２０】図２は、本発明に係わる飽和蒸気の制御方
法が適用された蒸気滅菌器の概略構成図である。

【００２１】同図において、図示しない被滅菌物を収納
するチャンバー１１は、開閉蓋１２によって一側部が開
閉可能に閉塞されている。このチャンバー１１の底部に
は、蒸気発生用のヒータ１３が配置されており、このヒ
ータ１３の上部に、被滅菌物を載置するための載置台１
４が設けられている。また、チャンバー１１の上部に
は、内部温度を検出するための温度検出器１５が取り付
けられている。

【００２２】一方、チャンバー１１の他側部には、内部
の空気や発生した水蒸気を排出するための排出管１６が
接続されており、この排出管１６の途中に開閉弁１７が
設けられている。また、排出管１６の先端側１６１は排
水容器１８内に挿入され、内部に貯留された冷却水１９
内にその先端１６２が位置するように配置されている。
なお、図中の符号２０は、チャンバー１１を収容支持す
るケース本体である。

【００２３】図１は、上記構成の蒸気滅菌器において、
本発明に係わる開閉弁の制御方法を実現するための電気
的構成を示すブロック図である。

【００２４】同図において、温度検出器１５の出力は、
蒸気滅菌器の全体を制御する制御装置１の温度勾配計測
部２に導かれており、温度勾配計測部２の出力は、制御
部３に導かれている。また、制御部３には、図示しない
スタートスイッチ等を備えたキー入力部４の出力が導か
れるとともに、その出力は、開閉弁１７を開閉駆動する
弁駆動部５に導かれた構成となっている。

【００２５】上記構成において、温度勾配計測部２及び
制御部３は、マイクロコンピュータ上で動作するソフト
ウエアを含む構成となっている。

【００２６】次に、上記構成の蒸気滅菌器の制御動作に
ついて、検出温度の変化の様子を示す図３のグラフを参
照して説明する。

【００２７】ただし、制御開始時には、排出管１６に設
けられた開閉弁１７は「開」の状態となっているものと
する。

【００２８】開閉弁１２が「開」の状態において、制御
装置１のキー入力部４に設けられたスタートスイッチを
ON操作すると、温度検出器１５は、スタートスイッチの
ON時からのチャンバー１１の内部温度を一定時間毎に検
出し、その検出温度を温度勾配計測部２に与えている。
ここで、一定時間は、本実施例の場合１０秒に設定して
いる。

【００２９】温度勾配計測部２では、温度検出器１５か
らの検出温度に基づき、チャンバー１１の内部温度が所
定温度Ｔ₀ （本実施例では、５０℃としている）に達し
た時点ａ₀ から温度勾配の計測を開始する。ここで、計
測開始温度を５０℃からとしたのは、例えば０℃からと
すると、ヒータ１３の加熱開始時の温度上昇は僅かであ
ることから、この時点の温度勾配は極めて小さな値とな
り、その結果、後述する制御部３での一定値との比較に
おいて、求めた温度勾配の値が一定値以下となる不具合
が発生する可能性があるからである。

【００３０】従って、温度勾配計測部２では、チャンバ
ー１１の内部温度が５０℃を超えた時点ａ₀ 以降に、温
度検出器１５から一定時間間隔（つまり、１０秒間隔）
で与えられる検出温度の計測を行う。つまり、計測開始
時点ａ₀ から１０秒経過時点ａ₁ における温度Ｔ₁ 、２
０秒経過時点ａ₂ における温度Ｔ₂ 、３０秒経過時点ａ
₃ における温度Ｔ₃ 、４０秒経過時点ａ₄ における温度
Ｔ₄ 、・・・というように順次計測を行う。そして、計
測開始時点ａ₁ から４０秒経過した時点ａ₄ で、それま
での温度Ｔ₀ 〜Ｔ₄ （すなわち、過去５回分の計測温
度）からまず最初の温度勾配ｇ₁ を求め、次に計測開始
時点ａ₁ から５０秒経過した時点ａ₅ で、それまでの過
去５回分の計測温度Ｔ₁ 〜Ｔ₅ から次の温度勾配ｇ₂ を
求め、さらに計測開始時点ａ₁ から６０秒経過した時点
ａ₆ で、それまでの過去５回の計測温度Ｔ₂ 〜Ｔ₆ から
その次の温度勾配ｇ₃ を求める。このようにして温度勾
配を順次求めていく。このようにして求めた温度勾配ｇ
₁ ，ｇ₂ ，ｇ₃ ・・・の値は、制御部３に順次与えられ
るようになっている。

【００３１】制御部３では、このようにして温度勾配計
測部２から１０秒毎に与えられる温度勾配ｇ₁ ，ｇ₂ ，
ｇ₃ ・・・の各値を、内部に予め設定された一定値ｂ
（例えば、１℃）と順次比較する。そして、温度勾配の
値が一定値ｂ以下となったとき（例えば、ｇ₃ ≦ｂとな
ったとき）、その温度勾配ｇ₃ を求めた時点ａ₆ でのチ
ャンバー１１の内部温度Ｔ₆ が、飽和蒸気になる温度Ｔ
_V であると判断して、その時点ａ₆ から所定時間ｔ₁ 経
過後に、弁駆動部５を制御する。すなわち、図示しない
内部タイマーによって、所定時間ｔ₁ （本実施例では、
２０秒に設定している）を計測すると、弁駆動部５に制
御信号を出力して、開閉弁１７を閉じるように制御を行
う。

【００３２】ここで、所定時間ｔ₁ とは、チャンバー１
１内部の温度が飽和蒸気温度Ｔ_V に達した後、飽和蒸気
圧になるまでの時間、つまり残留空気がチャンバー１１
内から確実に排出される時間のことである。この所定時
間ｔ₁ は、実験的に求めることもできるが、温度勾配の
値によって予測することも可能である。

【００３３】以上のような制御を行うことにより、スタ
ートスイッチをONした時のチャンバー１１の内部温度や
収納する被滅菌物の量等による影響を受けることなく、
また大気圧による影響も受けることなく、開閉弁１７を
常に最適なタイミングで閉じることが可能となる。

【００３４】なお、上記実施例では、所定温度（計測開
始温度）Ｔ₀ を５０℃としているが、例えば４０℃、６
０℃等とすることが可能である。また、上記実施例で
は、温度勾配を求めるに際して、過去５回分の検出温度
を使用しているが、過去５回分に限定されるものではな
く、その精度をどの程度に見込むかにより、任意の回数
に設定することが可能である。すなわち、精度を上げる
場合には、回数を増やせばよく、精度を余り問題としな
い場合には、例えば１０秒毎に温度勾配を求めるように
してもよい。さらに、温度勾配計測部２での計測間隔を
１０秒毎として説明しているが、これも１０秒毎に限定
されるものではなく、例えば５秒毎等とすることが可能
である。

【００３５】

【発明の効果】本発明の制御方法を適用した蒸気滅菌器
は、チャンバー内の飽和蒸気を排出するための排出管
と、この排出管の途中に設けられ、飽和蒸気による前記
被滅菌物の滅菌中は閉じられる開閉弁と、チャンバー内
に設けられた内部温度を検出する温度検出器と、この温
度検出器による検出温度に基づいて温度勾配を計測する
温度勾配計測部と、この温度勾配計測部により計測され
た温度勾配の値が予め設定された一定値以下となった時
点から所定時間経過後に、前記排水管を閉じるように前
記開閉弁を制御する制御部とを備えた構成としたので、
スタートスイッチをONした時のチャンバーの内部温度や
収納する被滅菌物の量等による影響を受けることなく、
また大気圧による影響も受けることなく、開閉弁を常に
最適なタイミングで閉じることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる蒸気滅菌器の制御方法を実現す
るための電気的構成を示すブロック図である。

【図２】本発明の制御方法が適用された蒸気滅菌器の概
略構成図である。

【図３】検出温度の変化を示すグラフである。

【符号の説明】

１ 制御装置 ２ 温度勾配計測部 ３ 制御部 ４ キー入力部 ５ 弁駆動部 １１ チャンバー １５ 温度検出器 １７ 開閉弁

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定量の水が供給されたチャンバー内に
   被滅菌物を収納し、チャンバー内に設けられたヒータを
   加熱して水を蒸発させることにより、その飽和蒸気を利
   用して前記被滅菌物の滅菌を行う蒸気滅菌器において、 前記チャンバー内の飽和蒸気を排出するための排出管
   と、 この排出管の途中に設けられ、飽和蒸気による前記被滅
   菌物の滅菌中は閉じられる開閉弁と、 前記チャンバー内に設けられた内部温度を検出する温度
   検出器と、 この温度検出器による検出温度に基づいて温度勾配を計
   測する温度勾配計測部と、 この温度勾配計測部により計測された温度勾配の値が予
   め設定された一定値以下となった時点から所定時間経過
   後に、前記排水管を閉じるように前記開閉弁を制御する
   制御部とを備えたことを特徴とする蒸気滅菌器。
2. 【請求項２】 所定量の水が供給されたチャンバー内に
   被滅菌物を収納し、チャンバー内に設けられたヒータを
   加熱して水を蒸発させることにより、その飽和蒸気を利
   用して前記被滅菌物の滅菌を行う蒸気滅菌器の制御方法
   において、 ヒータの加熱を開始してからの前記チャンバー内の温度
   を計測し、その計測結果に基づく温度勾配の値が予め設
   定された一定値以下となった時点から所定時間経過後
   に、前記排水管を閉じるように前記開閉弁を制御するこ
   とを特徴とする蒸気滅菌器の制御方法。