JPH0673511A - 高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 - Google Patents

高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Info

Publication number
JPH0673511A
JPH0673511A JP4247180A JP24718092A JPH0673511A JP H0673511 A JPH0673511 A JP H0673511A JP 4247180 A JP4247180 A JP 4247180A JP 24718092 A JP24718092 A JP 24718092A JP H0673511 A JPH0673511 A JP H0673511A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
grain size
steel sheet
crystal grains
steel plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP4247180A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2855994B2 (ja
Inventor
Kunikazu Tomita
邦和 冨田
Toshiharu Iizuka
俊治 飯塚
Yoshihiko Oda
善彦 尾田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NKK Corp, Nippon Kokan Ltd filed Critical NKK Corp
Priority to JP4247180A priority Critical patent/JP2855994B2/ja
Publication of JPH0673511A publication Critical patent/JPH0673511A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2855994B2 publication Critical patent/JP2855994B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【目的】 Si多量添加による冷間圧延性や打ち抜き加
工性の劣化、磁束密度の低下を招くことなく、無方向性
電磁鋼板の高周波特性、特に高周波鉄損特性を改善する
こと 【構成】 Si:2.00〜4.00wt%、Si+A
l:2.500〜4.500wt%を含み、板厚0.0
8〜0.22mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板表
面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶
粒径(ds)ND、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面
内、圧延方向の平均結晶粒径(ds)RD、同じく圧延直角
方向の平均結晶粒径(ds)TD、鋼板内部に存在する結晶
粒の鋼板断面内平均結晶粒径dcが下式(t:鋼板の板
厚)を満足する無方向性電磁鋼板 【数1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高周波磁気特性に優れ
た無方向性電磁鋼板、特に周波数200〜2000Hz
で使用される各種電気機器用の鉄芯材料として好適な無
方向性電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、掃除機用モーター、電気自動車用
モーター等の小型高速回転モーターやインテリジェント
ビルの蛍光燈安定器等の小型トランス、さらにはロボッ
ト制御用モーター等が急速に注目されつつある。これら
電気機器の鉄芯は、機器の小型化や制御精度向上の観点
から200Hz以上、多くは600Hz程度で使用され
ており、これらに使用される鉄芯材料は所謂高周波特性
に優れていることが不可欠の要件となる。
【0003】この場合、考慮すべき特性としては磁束密
度と鉄損があるが、周知のように周波数の増加に伴って
鉄損が急激に増大し、機器のエネルギー効率を大きく下
げるため、高周波域においては磁束密度よりも優れた鉄
損特性を得ることの方がより重要な課題となる。さら
に、上述した機器類の設計磁束密度が概ね0.5〜1.
5Tであることを考え合せると、具体的にはW10600
が1つの評価指標となり、W10600≦30w/kgを
満たすことが目安であると考えられるが、現状ではこれ
を十分満足する鉄芯材料は得られていない。例えば、旧
来の無方向性電磁鋼板の最高級グレードとして、3.0
%Si−1.0%Al程度で板厚が0.35mmのもの
があるが、これは50Hzでの鉄損特性には優れている
ものの、高周波特性はW10600≒40w/kgと満足
できるものではない。
【0004】このようなことから、これまでにも高周波
での鉄損を改善しようとするいくつかの提案がなされて
いるが、これらの提案は全て周波数が上がると全鉄損に
占める渦流損の割合が高くなることにのみ着目し、この
渦流損を下げるために板厚を薄くし且つ固有抵抗を上げ
ることに終始した技術であり、このため次のような欠点
を有している。
【0005】即ち、特開昭60−238421号にはS
i:3.5〜7.0wt%を含む鋼にAl,Ni,Mn
等の合金元素を多量に添加した板厚0.1〜0.35m
mの鋼板が、また、特開昭62−196358号にはS
i:2.5〜7.0wt%を含む鋼にAl,Cr,N
i,Mn等の合金元素を多量に添加した板厚0.001
〜0.3mmの鋼板がそれぞれ開示されており、さら
に、特開昭63−26312号、特開昭63−6022
5号および特開平2−267246号には板厚0.1〜
0.35mmの所謂6.5%Si鋼板が開示されてい
る。
【0006】しかし、これらの鋼板はいずれも高周波鉄
損特性には優れているものの、Siを多量に含むため通
常の冷間圧延では破断を生じ、このため温間圧延やCV
D法、或いは急冷凝固法による製造が必須となり、製造
コストが高いという欠点がある。加えて、硬質低延性の
ため打ち抜き加工性にも劣り、さらにはSiの多量添加
に起因して磁束密度がB50で1.5〜1.6T前後と極
めて低いという欠点もある。磁束密度の確保に関して
は、高周波域ではその比重が鉄損特性ほど大きくないこ
とを先に述べたが、これは程度の問題であって、上記従
来技術のように極端に磁束密度が低下する場合には、電
磁鋼板として看過できない重大な欠点となる。したがっ
て、このような問題を回避しつつ高周波鉄損特性を改善
しようとすると、成分的には旧来の無方向性電磁鋼板の
最高級グレードと同様、SiとAlの含有量を4.0w
t%程度に抑えることが前提となり、その上で何らかの
方策を講じることが必要となる。
【0007】さて、鉄損、特に渦流損を大きく支配する
因子としては、上記した板厚、固有抵抗以外に結晶粒径
があり、固有抵抗、即ち成分は旧来の無方向性電磁鋼板
の最高級グレードとほぼ同水準に維持しつつ、薄手化
(板厚0.1〜0.25mm)とこの結晶粒径の適正化
によって高周波鉄損の低減を試みた技術が特開平3−2
23445号に開示されている。これによれば、結晶粒
径を5〜60μmに制御すれば渦流損が減少し、400
Hz以上での鉄損特性が改善されることが述べられてい
るが、実際には以下に示すような問題がある。即ち、上
記の開示に従い、板厚0.2mmの3.0%Si−0.
5%Al鋼板を用い、結晶粒径を種々変えて高周波鉄損
(W10600)を測定したところ(リング試験片、内径
38mm−外径43mm)、結晶粒径を適正値である3
0μmに揃えても鉄損は32w/kg〜37w/kgの
範囲で大きくばらつき、最小値でも32w/kgに過ぎ
ず、満足のいくレベルまで鉄損を低減することができな
かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従
来の問題に鑑みなされたもので、従来技術のようにSi
を多量に添加することなく、すなわち、Si多量添加に
よる冷間圧延性や打ち抜き加工性の劣化、さらには磁束
密度の低下をきたすことなく、高周波特性とりわけ高周
波鉄損特性に優れた無方向性電磁鋼板を提供することを
その目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】高周波域の鉄損をSi,
Al等の成分を増やすことなく(すなわち、固有抵抗を
上げることなく)低減するには、上述した板厚の減少と
結晶粒径の適正化が有効であるが、本発明者らはこの結
晶粒径の適正化について再度詳細な検討を行った。
【0010】周知のように鉄損は渦流損とヒステリシス
損とに大別できるが、従来では、周波数が増加するとヒ
ステリシス損よりも渦流損の方が大きく増加するとの認
識の下で、鉄損低減に当っては専ら渦流損を下げること
に比重が置かれ、研究、提案がなされてきた。しかしな
がら、高周波鉄損の低減のために板厚減少を図った薄手
材においては、従来技術のように渦流損の低減にのみ主
体を置くことには大きな疑問がある。その理由は次の通
りである。すなわち、結晶粒のうち鋼板表面に存在する
結晶粒は、鋼板内部に存在する結晶粒とは異なり、鋼板
表面によって磁壁移動が妨げられることによりヒステリ
シス損が増大することが考えられる。そして、薄手材に
おいては、こうした鋼板表面に存在する結晶粒の割合が
相対的に大きくなるため、ヒステリシス損の割合も通常
の板厚のものに比べて必然的に大きくなることが予想さ
れるからである。
【0011】そこで実際に、0.2mm材において渦流
損とヒステリシス損とを分離測定したところ、1000
Hzという比較的高い周波数においても、なお全鉄損の
30%以上をヒステリシス損が占めており、ヒステリシ
ス損も看過し得ない要素であることが判明した。さら
に、この30%という値が全結晶粒の平均値であること
を考慮すると、実際には、鋼板表面に存在する結晶粒に
ついてはヒステリシス損の割合が30%をかなり超えて
いること、一方、それ以外の結晶粒(鋼板内部の結晶
粒)については30%を下回っていることが推測され
る。
【0012】本発明者らは以上のような考察の下にさら
に検討を重ね、その結果、薄手材の鉄損を低減させるた
めには、次の1)〜3)の点が重要な要件であるとの結
論に至った。 1)鋼板表面に存在する結晶粒は、鋼板内部に存在する
結晶粒に比べてヒステリシス損の増加分だけ鉄損が大き
いため、磁気特性上好ましくなく、したがって、鋼板表
面に存在する結晶粒の全結晶粒に占める割合を低下させ
る必要がある。 2)鋼板表面に存在する結晶粒については、上記のよう
にヒステリシス損の存在を看過し得ないため、渦流損の
みならずヒステリシス損をも考慮して鉄損の低減を図る
べきであり、そのためには鋼板板面内粒径の適正化が重
要である。 3)鋼板内部の結晶粒については、ヒステリシス損の割
合が小さいため渦流損の低減を主体に結晶粒径の適正化
を考えればよいが、鋼板全体としての鉄損は、鋼板表面
に存在する結晶粒の鉄損との和となるため、これを考慮
した上で粒径の適正化を図ることが必要である。
【0013】本発明は、以上のような基本思想に基づき
なされたもので、その構成は、C:0.0050wt%
以下、Si:2.00〜4.00wt%、Mn:0.1
0〜1.50wt%、P:0.200wt%以下、S:
0.020wt%以下、Al:0.004wt%以下若
しくは0.100〜1.500wt%、N:0.005
0wt%以下、Si+Al:2.500〜4.500w
t%、残部Feおよび不可避的不純物からなる板厚0.
08〜0.22mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板
の結晶粒径が下式を満足することを特徴とする高周波磁
気特性に優れた無方向性電磁鋼板である。
【0014】
【数2】
【0015】ここで、上記結晶粒径の定義について説明
する。図1および図2は本発明における結晶粒径の定義
を明らかにするために、鋼板断面内(図1)および鋼板
板面内(図1)における組織を模式的に示したものであ
る。まず、鋼板表面に存在する結晶粒とは、鋼板表面に
露出し、粒界の一部が鋼板表面で構成された結晶粒を意
味し、具体的には図1の鋼板断面組織において斜線を施
した結晶粒を指す。そして、これらの結晶粒について、
鋼板断面内で板厚方向(図1中の矢印a方向)に切断法
を用いて結晶粒径の平均値を求めたものを鋼板表面に存
在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向に測定した平均結
晶粒径(ds)NDとする。
【0016】図2に鋼板表層直下における鋼板板面組織
を示した。鋼板表層直下とはその部分の各結晶粒がいず
れも鋼板表面に存在する結晶粒であることを意味する
が、同図に示したように、これらの結晶粒について鋼板
板面内で圧延方向(図2中の矢印b方向)に切断法にて
結晶粒径の平均値を求めたものを、鋼板表面に存在する
結晶粒の鋼板板面内、圧延方向に測定した平均結晶粒径
(ds)RDとする。同様に、鋼板板面内で圧延直角方向
(図2中の矢印c方向)に切断法にて結晶粒径の平均値
を求めたものを、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面
内、圧延直角方向に測定した平均結晶粒径(ds)TD
する。
【0017】次に、鋼板内部に存在する結晶粒とは、上
述した鋼板表面に存在する結晶粒以外の全ての結晶粒を
指し、具体的には図1で斜線を施していない結晶粒を指
す。これらの結晶粒について、鋼板断面内で板厚方向
(図1中の矢印d方向)と圧延方向(図1中の矢印e方
向)にそれぞれ切断法にて結晶粒径の平均値を求め、さ
らに、これら平均値を平均したものを、鋼板内部に存在
する結晶粒の鋼板断面内で測定した平均結晶粒径dcと
する。
【0018】
【作用】次に、本発明鋼板の構成をその限定理由ととも
に詳細に説明する。まず、本発明鋼板の化学成分の限定
理由は以下の通りである。C:磁気特性自体を劣化させ
るとともに、磁気時効を引き起こす元素である。特に、
本発明のような高周波用途では磁気時効が大きな問題と
なり、これを回避するためにはCを0.0050wt%
以下とする必要がある。
【0019】Si:固有抵抗を上げ、主として渦流損の
低減を通じて鉄損を下げる元素であるが、含有量が2.
00wt%未満ではこの効果が小さく、したがって、S
iは2.00wt%以上とする必要がある。一方、4.
00wt%を超えると磁束密度が劣化するため、Siの
上限は4.00wt%とする。Mn:熱間脆性を防止す
るため0.10wt%以上の添加が必要である。一方、
1.50wt%を超えるとこの効果が飽和するだけでな
く、磁束密度が劣化するため、Mnの上限は1.50w
t%とする。
【0020】P:打ち抜き性を向上させる元素であり、
必要に応じて適量添加することができる。但し、0.2
00wt%を超えるとこの効果が飽和するとともに磁束
密度の低下が著しくなるため、Pの上限は0.200w
t%とする。S:MnSを形成することで磁気特性を劣
化させる元素であり、また、このMnSの存在により粒
成長性が阻害される。本発明にあっては、結晶粒径を旧
来の無方向性電磁鋼板の高級クレードほど大きくする必
要はないが、Sの過剰含有により粒成長性がある程度以
上阻害されると、所定の結晶粒径を得るために徒らに高
温の焼鈍が必要となり、それに伴って内部酸化や窒化を
生じ特性の劣化をきたす。これを避けるため、Sは0.
020wt%以下とする必要がある。
【0021】Al:Alを微量含む場合には微細なAl
Nが形成され、これが磁気特性および粒成長性を阻害す
る。したがって、このような微細なAlNの形成を避け
るためには、Alを0.004wt%以下とする必要が
ある。逆に、Alを0.100wt%以上含む場合に
は、形成されるAlNが十分に粗大であるため、磁気特
性や粒成長性は特に劣化せず、固有抵抗の増大を通じて
鉄損低減に寄与する。このような粗大AlNを形成させ
るためにはAlを0.100wt%以上添加することが
必要である。但し、この場合にAlが1.500wt%
を超えると磁束密度が著しく低下するため、上限は1.
500wt%となる。したがって、Alの添加量は0.
004wt%以下か、若しくは0.100〜1.500
wt%に限定される。
【0022】N:磁気特性を劣化させるため0.005
0wt%以下とする必要がある。Si+Al:Si+A
l量が2.500wt%未満では、固有抵抗が低いため
渦流損が増大し、所定の鉄損特性が得られない。このた
め、Si+Al量は2.500wt%以上とする必要が
ある。一方、4.500wt%を超えると、冷間圧延
性、打ち抜き加工性が著しく劣化するとともに、磁束密
度が大きく低下するため、上限は4.500wt%とす
る必要がある。
【0023】なお、上記の成分以外に、磁気特性を向上
させる元素として、Sb,Sn,Se,Ge,Co,C
u,B,Zr,REM等があり、必要に応じてこれら元
素の1種または2種以上を適量添加することが可能であ
る。また、耐食性向上を目的としてNi,Crの1種ま
たは2種を添加すること、機械的特性を改善するためN
b,V,Ti,W,Moの1種または2種以上を添加す
ること等、合金元素添加により付加的な特性を付与する
ことも可能である。
【0024】次に、板厚の限定理由を説明する。上述し
たように板厚は主として渦流損を支配し、板厚が薄いほ
ど鉄損の低減化を図ることができるが、0.08mm以
下の板厚の鋼板は、圧延能力や破断発生等の問題から現
状の設備において工業的に製造することが難しく、この
ため、板厚の下限は0.08mmとする。一方、板厚が
0.22mmを超えると渦流損が増大し、所望の鉄損が
得られないため、板厚の上限は0.22mmとする。
【0025】次に、結晶粒径の限定理由について説明す
る。上述した化学成分、板厚と同様、結晶粒径も鉄損低
減を図る上で重要な冶金因子である。高周波鉄損低減の
ために板厚減少を図った薄手材においては、その結晶粒
径の適正化は、従来行われてきた渦流損の面からの適正
化だけでなく、ヒステリシス損の面からの適正化も重要
であること、また、そのためには先に挙げた1)〜3)
の要件を十分満足する必要があることは先に述べた通り
である。
【0026】本発明者らは、上述した1)〜3)の要件
に関してより具体的な条件について検討を行い、その結
果、適正結晶粒径を以下のように定式化できることを見
出した。すなわち、上記1)〜3)の要件のうち、1)
を満たすためには、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断
面内、板厚方向に測定した平均結晶粒径(ds)ND(単
位μm、以下同様)を、5≦(ds)ND≦0.35t
〔但し、t:鋼板板厚(μm)〕とする必要があり、
また、上記2)の要件を満たすためには、鋼板表面に存
在する結晶粒の鋼板板面内、圧延方向に測定した平均結
晶粒径(ds)RD(単位μm、以下同様)と、同じく鋼
板板面内、圧延直角方向に測定した平均結晶粒径(d
s)TD(単位μm、以下同様)を、1.7(ds)ND
((ds)RD+(ds)TD)/2≦200とする必要が
あり、さらに、上記3)の要件を満たすためには、鋼板
内部に存在する結晶粒の鋼板断面内で測定した平均結晶
粒径dc(単位μm、以下同様)を、下記のようにする
必要があることが判った。
【0027】
【数3】
【0028】次に、これら結晶粒径の限定理由を実験デ
ータに基づいて説明する。上述のような結晶粒径の特定
を行うに当り、本発明者らは種々の成分を有する鋼を溶
製し、これらを種々の条件で熱間圧延−酸洗−(熱延板
焼鈍)−冷間圧延−焼鈍、若しくは熱間圧延−酸洗−(熱
延板焼鈍)−冷間圧延−焼鈍−調質圧延−焼鈍すること
で、板厚および結晶粒径の異なる無方向性電磁鋼板を製
造し、これらの鋼板の磁気特性を測定した(試験片は内
径38mm−外径43mmのリング形状)。
【0029】上記各鋼板の製造においては、主として冷
間圧延時のロール径、潤滑状態を変えることで鋼板表層
部と板厚中央部の歪量の配分を変化させ、或いは冷間圧
延−焼鈍後にさらに調質圧延−焼鈍を施し、この調質圧
延での調圧率を変えることにより鋼板表層に付加される
歪量を変え、これらと焼鈍温度を組み合せることによ
り、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向
に測定した平均結晶粒径(ds)NDを変化させた。ま
た、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面内、圧延方向
に測定した平均結晶粒径(ds)RDと同じく圧延直角方
向に測定した平均結晶粒径(ds)TDについては、主と
して焼鈍温度及び焼鈍雰囲気(H2/N2体積比、露点)
を変えることでその大きさを変化させた。さらに、鋼板
内部に存在する結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒径dc
については、上記鋼板表層部と板厚中央部の歪量の配分
と焼鈍温度並びに焼鈍雰囲気の組み合せを変えることに
より、その大きさを変化させた。
【0030】図3は、上記のようにして製造した無方向
性電磁鋼板のうち、本発明鋼種である表1記載の鋼C
(Si+Al≒2.64wt%)および鋼F(Si+A
l≒4.10wt%)からなる板厚0.10mm、0.
20mm(いずれも本発明範囲の板厚)の鋼板であっ
て、結晶粒径に関して下記、の構成を有し、且つ鋼
板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向に測定
した平均結晶粒径(ds)NDを種々変化させた鋼板につ
いて、高周波域での鉄損W10600を上記平均結晶粒径
(ds)NDで整理して示したものである。
【0031】 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面
内、圧延方向に測定した平均結晶粒径(ds)RDと、同
じく圧延直角方向に測定した平均結晶粒径(ds)
TDが、本発明条件を満たす下記の範囲にある。((d
s)RD+(ds)TD)/2=1.9(ds)ND〜2.1
(ds)ND 鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内で測定した
平均結晶粒径dcが、板厚0.10mmの場合にはdc
≒22μm、板厚0.20mmの場合にはdc≒30μ
mであり、いずれも本発明範囲にある。
【0032】図3によれば、成分と板厚、さらには鋼板
表面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒径
((ds)RD+(ds)TD)/2と鋼板内部に存在する
結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒径dcが本発明範囲に
あっても、鋼C、鋼Fのいずれの板厚の鋼板も、鋼板表
面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向に測定した
平均結晶粒径(ds)NDが5μm未満になるとW10
600が急増し、W10600>30w/kgとなって優れた
鉄損特性が得られない。また、(ds)NDが過大である
場合にも鉄損特性が劣っており、板厚0.10mmの鋼
C、鋼Fでは(ds)NDが35μmを超えるとW10
600が急増し、また、板厚0.20mmの鋼C、鋼Fで
は(ds)NDが70μmを超えるとW10600が急増
し、それぞれW10600>30w/kgとなって優れた
鉄損特性が得られない。
【0033】ここで、(ds)NDが5μm未満において
10600が急増するのは、(ds)NDが5μm未満で
はヒステリシス損を増加させる鋼板表面に存在する結晶
粒の全結晶粒に占める割合自体は小さいものの、結晶粒
径が過少であるため、これによるヒステリシス損の増加
代自体が大きくなるためであると考えられる。また、
(ds)NDが35μm超(板厚0.10mm)或いは7
0μm超(板厚0.20mm)においてW10600が急
増するのは、鋼板表面に存在する結晶粒の全結晶粒に占
める割合が高いため、ヒステリシス損が増加するためで
あると考えられる。このように、鋼板表面に存在する結
晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒径には下限値
(ds)ND*と上限値(ds)ND**が存在することに
なる。
【0034】ここで、上記下限値(ds)ND*について
は、図3に示されるように鋼成分(鋼C、鋼F)および
板厚(0.10mm、0.20mm)の如何に拘らず一
定であり、したがって成分、板厚には依存しないことは
明らかであるが、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面
内粒径との関係、鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面
内粒径との関係は必ずしも明らかでない。また、上限値
(ds)ND**については、板厚が同じであれば鋼成分
に拘らず一定であるため成分依存性がないことは明らか
であるが、板厚との関係は必ずしも明らかでない。
【0035】そこで、鋼Cと鋼Fについて下記〜に
示すように板厚および結晶粒径を本発明条件中の広い範
囲で変化させた鋼板を用いて図3と同様の整理を試み、
(ds)NDの下限値と上限値をそれぞれ求めてみた。 板厚:0.09〜0.21mm 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒
径:((ds)RD+(ds))TD/2=1.72(d
s)ND〜2.89(ds)ND 鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒
径:dc=15〜70μm
【0036】図4はその結果を鋼板の板厚tで整理して
示したものである。同図から、成分、板厚、さらには鋼
板表面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒径
((ds)RD+(ds)TD)/2、鋼板内部に存在する
結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒径dcの如何に拘ら
ず、(ds)NDの下限値(ds)ND*は5μmであるこ
と、一方、上限値(ds)ND**は板厚tにのみ依存
し、(ds)ND**=0.35tで表されることが判
る。このため本発明では、鋼板表面に存在する結晶粒の
鋼板断面内、板厚方向に測定した平均結晶粒径(ds)
NDを以下のように規定した。5≦(ds)ND≦0.35
【0037】次に、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板
面内の平均結晶粒径:((ds)RD+(ds)TD)/2
について考察する。図5は、表1記載の本発明鋼種であ
る鋼Cの板厚0.20mm(本発明範囲の板厚)の鋼板
および鋼Fの板厚0.10mm(本発明範囲の板厚)の
鋼板であって、下記、の構成を有し、且つ上記
((ds)RD+(ds)TD)/2を種々変化させた鋼板
について、高周波鉄損W10600を((ds)RD+(d
s)TD)/2で整理して示したものある。 鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内の平均結晶
粒径が、本発明範囲のdc≒40μmである。 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向
の平均結晶粒径が(ds)ND≒10μm、25μm、6
0μm(但し、(ds)ND≒60μmは鋼Cのみ)であ
り、いずれも本発明範囲にある。
【0038】図5から、成分、板厚、さらには鋼板表面
に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒
径(ds)ND、鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内
の平均結晶粒径dcがそれぞれ本発明範囲にあっても、
鋼F(板厚0.10mm)、鋼C(板厚0.20mm)
ともに、(ds)ND≒10μmの場合は((ds)RD
(ds)TD)/2が17μm未満において、また、(d
s)ND≒25μmの場合は43μm未満において、さら
に、(ds)ND≒60μmの場合は102μm未満にお
いてそれぞれ鉄損が急増し、W10600>30w/kg
となって優れた鉄損特性が得られない。また、((d
s)RD+(ds)TD)/2が200μm超では(ds)
NDの値に拘らず、鋼F、鋼Cともに鉄損が急増し、W10
600>30w/kgとなっている。このように、鋼板
表面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒径にも
下限値((ds)RD+(ds)TD)/2*と上限値
((ds)RD+(ds)TD)/2**が存在し、鋼板表
面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒径をこの
範囲に制御する必要があることが判る。
【0039】このように((ds)RD+(ds)TD)/
2に下限値、上限値が存在する理由は、以下の通りであ
る。すなわち、鋼板表面に存在する結晶粒は、先に述べ
たように鋼板表面によって磁壁移動が妨げられるために
ヒステリシス損が劣化するが、板面内粒径をある程度大
きくすると粒界による磁壁移動の抑制作用を低減でき、
これが鋼板表面による磁壁移動抑制に起因したヒステリ
シス損の劣化分を補償することになる。そして、鋼板表
面に存在する結晶粒の板面内粒径が上記下限値を下回る
とこの補償効果が十分でなく、一方、上限値を超える
と、鋼板表面に存在する結晶粒の渦流損分を増加させ、
全鉄損の急増を招くことになる。
【0040】ここで、上記の下限値((ds)RD+(d
s)TD)/2*については、成分、板厚の異なる鋼C
(板厚0.10mm)、鋼F(板厚0.20mm)と
も、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向
の平均結晶粒径(ds)NDが同じであれば同じ値をとる
ため、成分、板厚依存性はなく、鋼板表面に存在する結
晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒径(ds)ND
に依存して変化することは明らかであるが、鋼板内部に
存在する結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒径dcとの関
係は必ずしも明らかではない。また、上限値((ds)
RD+(ds)TD))/2**については成分、板厚およ
び鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の
平均結晶粒径(ds)NDの如何に拘らず一定であるた
め、成分、板厚、(ds)NDのいずれにも依存しないこ
とは明らかであるが、鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板
断面内の平均結晶粒径dcとの関係は必ずしも明らかで
ない。
【0041】そこで、鋼Cと鋼Fについて下記〜に
示すように板厚、結晶粒径を本発明条件中の広い範囲で
変化させた鋼板を用いて図5と同様の整理を試み、
((ds)RD+(ds)TD)/2の下限値と上限値をそ
れぞれ求めてみた。 板厚:0.09〜0.21mm 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の
平均結晶粒径:(ds)ND=8〜73μm 鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒
径:dc=15〜70μm
【0042】図6は、その結果を鋼板表面に存在する結
晶粒の鋼板断面内、板厚方向に測定した平均結晶粒径
(ds)NDで整理して示したものである。同図から、成
分、板厚、(ds)NDおよびdcの如何に拘らず、
((ds)RD+(ds)TD)/2の上限値((ds)RD
+(ds)TD)/2**は200μmであること、一
方、下限値((ds)RD+(ds)TD)/2*は鋼板表
面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向に測定した
平均結晶粒径(ds)NDにのみ依存し、((ds)RD
(ds)TD)/2*=1.7(ds)NDで表されること
が判る。このため本発明では、鋼板表面に存在する結晶
粒の鋼板板面内の平均結晶粒径((ds)RD+(ds)
TD)/2を以下のように規定した。1.7(ds)ND
((ds)RD+(ds)TD)/2≦200
【0043】なお、上記の下限値((ds)RD+(d
s)TD)/2*が(ds)NDに比例するのは、鋼板表面
に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒
径(ds)NDが大きいということは、鋼板表面に存在す
る結晶粒の全結晶粒に占める割合が大きく、したがっ
て、鋼板表面の磁壁移動抑制作用によるヒステリシス損
の劣化代が鉄損全体に対してより大きな割合を占めるこ
とを意味し、このため、板面内粒径をより大きくし、粒
界による磁壁移動抑制作用をより大きく低減させる必要
が生じるためであると考えられる。
【0044】図7は、鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板
断面内の平均結晶粒径dcについて検討した結果を示し
たもので、表1記載の本発明鋼種である鋼Cの板厚0.
10mm(本発明範囲の板厚)の鋼板および鋼Fの板厚
0.20mm(本発明範囲の板厚)の鋼板であって、下
記、の構成を有し、且つ鋼板内部に存在する結晶粒
の鋼板断面内の平均結晶粒径dcを種々変化させた鋼板
について、それらの高周波鉄損W10600を平均結晶粒
径dcで整理して示したものである。
【0045】 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面
内の平均結晶粒径が、本発明条件を満たす下記の範囲に
ある。((ds)RD+(ds)TD)/2=2.1(d
s)ND〜2.3(ds)ND 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向
の平均結晶粒径が(ds)ND=8〜25μm(鋼C)、
(ds)ND=8〜65μm(鋼F)であり、いずれも本
発明範囲にある。
【0046】同図から、成分、板厚、さらには鋼板表面
に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒
径(ds)NDおよび鋼板板面内の平均結晶粒径((d
s)RD+(ds)TD)/2が本発明範囲にあっても、鋼
C、鋼Fともに平均結晶粒径dcが図中に示したそれぞ
れの下限値dc*を下回ったり、或いはそれぞれの上限
値dc**を超えた場合には、W10600>30w/k
gとなり、優れた高周波鉄損特性が得られない。
【0047】ここで、dcが下限値をもつのは、この下
限値未満では鋼板内部に存在する結晶粒のヒステリシス
損の増大に起因してW10600>30w/kgとなるか
らであり、一方、上限値をもつのは、この上限値を超え
ると鋼板内部に存在する結晶粒の渦流損の増大に起因し
てW10600>30w/kgとなるからである。したが
って、鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内の平均結
晶粒径dcに関しては、粒径減少によるヒステリシス損
の増加と、粒径増大による渦流損の増加がともにそれほ
ど大きくなく、両者の和が30w/kg以下となる範囲
に制御する必要がある。但し、先に述べたように鋼板内
部に存在する結晶粒は渦流損に比べてヒステリシス損が
小さいため、上記適正範囲は主として渦流損の適正化に
比重を置いてなされることになる。
【0048】なお、鋼C、鋼Fともに、鋼板表面に存在
する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒径(d
s)NDが大きいほどW10600がdcに強く依存してお
り、結果的にdcの適正範囲が狭くなっている。この理
由は必ずしも明らかでないが、次の2つの理由が考えら
れる。第一に、(ds)NDが大きいほど鋼板表面に存在
する結晶粒の全結晶粒に占める割合が大きくなり、その
一方で鋼板内部に存在する結晶粒の割合が小さくなる。
このことは、鋼板表面の磁壁移動抑制作用によるヒステ
リシス損の劣化代が大きくなる一方で、これを少数の鋼
板内部に存在する結晶粒の鉄損適正化によって補償する
必要があることを意味し、その結果、dcをより厳しく
適正化する必要が生じるものと思われる。第二に、(d
s)NDが大きく鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面に
占める面積が小さい場合には、(ds)NDが小さく鋼板
内部に存在する結晶粒の鋼板断面に占める面積が大きい
場合と比較して、dcが同じ量だけ変化しても、この面
積に対するdcの変化量の割合が相対的に大きく、見か
け上W10600がdcによって大きく変化する点が挙げ
られる。
【0049】次に、dcの下限値dc*および上限値d
c**と成分、板厚、鋼板表面に存在する結晶粒の平均
結晶粒径(ds)NDおよび((ds)RD+(ds)TD
/2との関係を見てみると、成分、板厚が異なるにも拘
らず、板厚が0.10mmの鋼Cで(ds)NDが15μ
mの場合と、板厚が0.20mmの鋼Fで(ds)ND
30μmの場合では、それぞれdc*とdc**が16
μm、57μmと同一の値をもつことが判る。ここで、
(ds)NDの値を板厚比r(=(ds)ND/t)で表し
た場合、鋼Cの板厚0.10mmではr=15μm/1
00μm=0.15となり、また、鋼Fの板厚0.20
mmでもr=30μm/200μm=0.15となって
両者は一致する。このことは、(ds)NDの板厚比rが
同じであれば、dc*、dc**は成分、板厚に依存し
ないことを示している。さらに、鋼Cの(ds)ND:8
μm、25μmの場合と、鋼Fの(ds)ND:8μm、
65μmの場合を同じように板厚比rで表すと、それぞ
れr=0.08および0.25とr=0.04および
0.325となり、先のr=0.15の場合も含めて、
これらとdc*、dc**の関係を見ると、dc*はr
の増加につれて増加し、dc**はrの増加につれて減
少することが判る。これらのことから、dcの下限値お
よび上限値は成分、板厚に拘らず、(ds)NDの板厚比
rに依存していることが判る。
【0050】そこで、この点をさらに明確にするため
に、また、dc*、dc**と鋼板表面に存在する結晶
粒の鋼板板面内の平均結晶粒径((ds)RD+(ds)
TD)/2との関係を明らかにするために、鋼Cと鋼Fに
ついて下記〜に示すように板厚、結晶粒径を本発明
条件中の広い範囲で変化させた鋼板を用いて図7と同様
の整理を試み、dcの下限値と上限値をそれぞれ求めて
みた。 板厚:0.09〜0.21mm 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の
平均結晶粒径:(ds)ND=8〜73μm 鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒
径:((ds)RD+(ds)TD)/2=1.72(d
s)ND〜2.89(ds)ND
【0051】図8は、その結果を(ds)NDの板厚比r
(=(ds)ND/t)で整理して示したものである。同
図から、成分、板厚、さらには((ds)RD+(ds)
TD)/2の如何に拘らず、鋼板内部に存在する結晶粒の
鋼板断面内の平均結晶粒径の下限値dc*と上限値dc
**は、ともに(ds)NDの板厚比rにのみ依存して変
化し、それぞれ下式で表されることが判る。
【0052】
【数4】
【0053】
【数5】
【0054】このため本発明では、鋼板内部に存在する
結晶粒の鋼板断面内での平均結晶粒径dcを以下のよう
に規定した。
【0055】
【数6】
【0056】以上述べた本発明鋼板は、従来技術では達
成し得なかった冷間圧延性や打ち抜き加工性の劣化や磁
束密度の低下をきたすことがなく、しかも優れた高周波
特性、特に周波数200〜2000Hzにおける優れた
高周波鉄損特性を得ることができ、したがって、周波数
200〜2000Hzにおいて使用される鉄芯材料とし
て極めて好適なものである。周波数が200Hz未満の
用途では、旧来の無方向性電磁鋼板の最高級グレードで
も目的とする磁気特性が得られる。また、本発明は従来
考えられていた渦流損の低減という観点だけからでな
く、ヒステリシス損の低減という観点からも鉄損を低減
させようとする技術思想であるが、周波数が2000H
zを超えると鉄損に占めるヒステリシス損の割合が小さ
くなり、したがって、渦流損の低減により鉄損を低減さ
せる従来技術が適用できるようになる。したがって、本
発明鋼板の従来技術と対比した有用性は、周波数200
〜2000Hzで使用される用途において特に顕著なも
のである言える。
【0057】本発明鋼板は、上述した構成(鋼成分、板
厚及び結晶粒径)を満足しさえすれば優れた高周波磁気
特性(特に、高周波鉄損特性)を得ることができ、した
がって、鋼板の製造条件については特に規定する必要は
ない。結晶粒径については、通常の無方向性電磁鋼板の
製造工程である、熱間圧延−酸洗−(熱延板焼鈍)−冷
間圧延−焼鈍、あるいは熱間圧延−酸洗−(熱延板焼
鈍)−冷間圧延−焼鈍−調質圧延−焼鈍等の一連の工程
において各製造条件を適宜制御することにより本発明範
囲の結晶粒径とする。
【0058】以下、本発明鋼板の好ましい製造条件につ
いて説明する。熱間圧延条件: 熱間圧延条件は結晶粒
径に対する影響は小さく、したがって、通常の一般的な
条件で熱間圧延することが可能である。酸洗条件: 熱
間圧延条件と同じく結晶粒径に対する影響は小さいた
め、通常の条件で実施することが可能である。
【0059】熱延板焼鈍条件: 集合組織を改善する目
的で熱延板焼鈍を実施してもよいが、必須の処理ではな
い。熱延板焼鈍を実施する場合には、750℃〜105
0℃程度の焼鈍温度が適当である。750℃未満では焼
鈍による効果が小さく、一方、1050℃超では組織が
粗大となり過ぎ、冷間圧延時の板厚変動を引き起すとと
もに製品に所謂粗大粒模様を生じる恐れがある。
【0060】冷間圧延条件: 冷間圧延時のロール径が
小さ過ぎると、鋼板表層部と板厚中央部の歪量配分が鋼
板表層側にずれ、表層部の歪量が相対的に大きくなっ
て、続く焼鈍時、鋼板表層部の再結晶粒の成長速度が大
きくなり、結果的に鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断
面内、板厚方向の平均結晶粒径(ds)NDが相対的に大
きくなるため好ましくない。一方、ロール径が大き過ぎ
ると、本発明のような薄手材を圧延するには圧延荷重が
過大となり、工業的に好ましくない。以上の点から冷間
圧延時のロール径は、230mmφ〜900mmφ程度
が最も好ましい。
【0061】また、潤滑が悪いと鋼板表層部に付加され
る剪断歪が大きくなって、上記と同様に(ds)NDが相
対的に大きくなる。一方、潤滑過多で薄手材を圧延した
場合、鋼板のスリップを招き易くなり好ましくない。以
上の点から潤滑油の粘度は30〜200(RW50℃)
程度が最も好ましい。また、冷圧率に関しては、これが
変わっても特定の結晶粒が特定方向に成長し易くなると
いったこともないため、結晶粒径の適正化という観点か
らは特別規定するような範囲はない。したがって、圧延
機の能力に応じて冷間圧延を1回で行ってもよく、ある
いは中間焼鈍をはさむ2回以上の冷間圧延を行ってもよ
い。
【0062】焼鈍条件: 焼鈍温度は、鋼成分、冷間圧
延条件、調圧率に応じて適正結晶粒径を得るため適宜選
択されるが、概ね650℃〜950℃の範囲が適当であ
る。また、焼鈍雰囲気については、通常、無方向性電磁
鋼板の焼鈍はN2−H2混合雰囲気で行われるが、その際
2%が過多であると窒化を生じ、鋼板表面に存在する
結晶粒の鋼板板面内での粒成長を妨げるため、N2%は
80%以下とすることが好ましい。また、露点が高いと
鋼板表面に発生する外部スケール及び鋼板表層直下に生
成するサブスケール層が、鋼板表面に存在する結晶粒の
鋼板板面内での粒成長を妨げるため、露点は−25℃以
下とするのことが好ましい。
【0063】調圧率: 調質圧延を実施する場合、調圧
率が大き過ぎると表層部の歪量が過大となり、鋼板表面
に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向の平均結晶粒
径(ds)NDが相対的に大きくなるとともに、鋼板板面
内の平均結晶粒径が相対的に小さくなる。これを避ける
ため調圧率は10%以下とすることが好ましい。
【0064】
【実施例】表1に記載の鋼A,B,D,E,G,H,I
を用い、これらを板厚2.0mmに熱間圧延し、酸洗
後、表2〜表4に記載の条件(ロール径、潤滑油の粘
度)で板厚0.06mm〜0.25mmに冷間圧延し、
次いで、表2〜表4に記載の条件で2分間焼鈍した後、
磁気特性を測定した。また一部の鋼板については、上記
の焼鈍後、さらに表2〜表4に記載の条件で調質圧延−
焼鈍(焼鈍時間1.5分)を実施し、磁気特性を測定し
た。磁気特性の測定は、内径38mm−外径43mmの
リング試験片を用い、励磁周波数600Hzで行った。
【0065】各鋼板の磁気特性をその板厚、結晶粒径と
ともに表5〜表7に示す。同表によれば、成分、板厚お
よび結晶粒径が本発明条件を満足する鋼板は、W10
600≦30w/kgと高周波鉄損特性に優れており、ま
た、磁束密度B50600も1.62T以上と十分高位の
値が得られている。これに対し、Si+Al量が本発明
範囲を下回る比較例、板厚が本発明範囲を超えた比較
例、結晶粒径が本発明範囲外の比較例は全てW10600
>30w/kgであり、高周波鉄損特性に劣っている。
また、Si+Al量が本発明範囲を超えた比較例では、
冷間圧延においてコイルの破断を生じ、温間圧延が必要
であるとともに、W10600は20w/kgと低いもの
の、B50600が本発明例に比べて0.03T以上低
く、磁束密度に問題がある。さらに、板厚が0.06m
mの比較例は、冷間圧延時にコイル破断が生じ、結局磁
気特性を測定できなかった。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【発明の効果】以上述べた本発明の無方向性電磁鋼板
は、打ち抜き加工性の劣化等を生じたり磁束密度が損な
われることなく、優れた高周波特性とりわけ高周波鉄損
特性を有しており、また、通常の冷間圧延により工業的
に安定して且つ安価に製造できることから、高周波用
途、特に200〜2000Hzの高周波用途の鉄芯材料
として極めて有用な鋼板である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における結晶粒径の定義を示すための鋼
板断面内組織の模式図
【図2】本発明における結晶粒径の定義を示すための鋼
板板面内組織の模式図
【図3】高周波鉄損(W10600)と鋼板表面に存在す
る結晶粒の鋼板断面内、板厚方向に測定した平均結晶粒
径(ds)NDとの関係を示すグラフ
【図4】鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚
方向に測定した平均結晶粒径(ds)NDの上下限値を鋼
板板厚との関係で示すグラフ
【図5】高周波鉄損(W10600)と鋼板表面に存在す
る結晶粒の鋼板板面内の平均結晶粒径((ds)RD
(ds)TD)/2との関係を示すグラフ
【図6】鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板板面内の平均
結晶粒径((ds)RD+(ds)TD)/2の上下限値
を、鋼板表面に存在する結晶粒の鋼板断面内、板厚方向
に測定した平均結晶粒径(ds)NDとの関係で示すグラ
【図7】高周波鉄損(W10600)と鋼板内部に存在す
る結晶粒の鋼板断面内の平均結晶粒径dcとの関係を示
すグラフ
【図8】鋼板内部に存在する結晶粒の鋼板断面内の平均
結晶粒径dcの上下限値を、鋼板表面に存在する結晶粒
の鋼板断面内、板厚方向に測定した平均結晶粒径(d
s)NDの板厚比rとの関係で示すグラフ

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.0050wt%以下、Si:
    2.00〜4.00wt%、Mn:0.10〜1.50
    wt%、P:0.200wt%以下、S:0.020w
    t%以下、Al:0.004wt%以下若しくは0.1
    00〜1.500wt%、N:0.0050wt%以
    下、Si+Al:2.500〜4.500wt%、残部
    Feおよび不可避的不純物を含む板厚0.08〜0.2
    2mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板の結晶粒径が
    下式を満足することを特徴とする高周波磁気特性に優れ
    た無方向性電磁鋼板。 【数1】
JP4247180A 1992-08-25 1992-08-25 高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 Expired - Fee Related JP2855994B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4247180A JP2855994B2 (ja) 1992-08-25 1992-08-25 高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4247180A JP2855994B2 (ja) 1992-08-25 1992-08-25 高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0673511A true JPH0673511A (ja) 1994-03-15
JP2855994B2 JP2855994B2 (ja) 1999-02-10

Family

ID=17159634

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4247180A Expired - Fee Related JP2855994B2 (ja) 1992-08-25 1992-08-25 高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2855994B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08288115A (ja) * 1995-04-13 1996-11-01 Kawasaki Steel Corp 鉄損の低い方向性電磁鋼板
JP2006249555A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Jfe Steel Kk 高周波域での鉄損が低い電磁鋼板およびその製造方法
WO2015107967A1 (ja) * 2014-01-14 2015-07-23 Jfeスチール株式会社 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
JP2017119897A (ja) * 2015-12-28 2017-07-06 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法
US10006109B2 (en) 2013-08-20 2018-06-26 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet and hot rolled steel sheet thereof
US10102951B2 (en) 2013-03-13 2018-10-16 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet having excellent magnetic properties
US10597759B2 (en) 2013-08-20 2020-03-24 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet having high magnetic flux density and motor
JP2021509442A (ja) * 2017-12-26 2021-03-25 ポスコPosco 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08288115A (ja) * 1995-04-13 1996-11-01 Kawasaki Steel Corp 鉄損の低い方向性電磁鋼板
JP2006249555A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Jfe Steel Kk 高周波域での鉄損が低い電磁鋼板およびその製造方法
US10102951B2 (en) 2013-03-13 2018-10-16 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet having excellent magnetic properties
US10006109B2 (en) 2013-08-20 2018-06-26 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet and hot rolled steel sheet thereof
US10597759B2 (en) 2013-08-20 2020-03-24 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet having high magnetic flux density and motor
WO2015107967A1 (ja) * 2014-01-14 2015-07-23 Jfeスチール株式会社 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
JP2015131993A (ja) * 2014-01-14 2015-07-23 Jfeスチール株式会社 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
JP2017119897A (ja) * 2015-12-28 2017-07-06 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2021509442A (ja) * 2017-12-26 2021-03-25 ポスコPosco 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
US11486019B2 (en) 2017-12-26 2022-11-01 Posco Non-oriented electrical steel sheet and manufacturing method therefor

Also Published As

Publication number Publication date
JP2855994B2 (ja) 1999-02-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4240823B2 (ja) Fe−Ni系パーマロイ合金の製造方法
JP7153076B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
US11486019B2 (en) Non-oriented electrical steel sheet and manufacturing method therefor
KR102164113B1 (ko) 낮은 철손 및 우수한 표면품질을 갖는 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
KR100484989B1 (ko) 자기특성이 우수한 전자강판 및 그 제조방법
JPH0673511A (ja) 高周波磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板
JP2910508B2 (ja) 鉄損特性の優れた高周波用無方向性電磁鋼板
JP2000104144A (ja) L方向及びc方向の磁気特性に優れた電磁鋼板及びその製造方法
KR102026271B1 (ko) 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
JP4622162B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JPH1060532A (ja) 磁気特性と表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JPH03229820A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
US20210340651A1 (en) Non-oriented electrical steel sheet and manufacturing method therefor
CN115135794B (zh) 无取向电工钢板及其制造方法
JP3883030B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP4852804B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP3178270B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JPS5974258A (ja) 鉄損の少ない無方向性珪素鋼板
KR20190047468A (ko) 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
JPH03122236A (ja) Ni―Fe系高透磁率磁性合金
JP2888229B2 (ja) 高周波用無方向性電磁鋼板
JPH03140442A (ja) 磁気特性に優れた珪素鋼板及びその製造方法
JPH04337050A (ja) 磁気特性の優れた高抗張力磁性材料およびその製造方法
JP2718340B2 (ja) 鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0617548B2 (ja) 耐発錆性に優れた無方向性電磁鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071127

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081127

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091127

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101127

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111127

Year of fee payment: 13

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees