JPH0617548B2 - 耐発錆性に優れた無方向性電磁鋼板 - Google Patents

耐発錆性に優れた無方向性電磁鋼板

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JPH0617548B2
JPH0617548B2 JP62159226A JP15922687A JPH0617548B2 JP H0617548 B2 JPH0617548 B2 JP H0617548B2 JP 62159226 A JP62159226 A JP 62159226A JP 15922687 A JP15922687 A JP 15922687A JP H0617548 B2 JPH0617548 B2 JP H0617548B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 電磁鋼板は、一般に一方向性と無方向性の2種に分類さ
れる。一方向性電磁鋼板は特定の一方向(圧延方向)に
とくにすぐれた磁気特性を示すもの、無方向性電磁鋼板
とは磁気特性が方向に拘りなく一定のものを言う。
本発明はこのうち無方向性電磁鋼板を扱うもので、優れ
た耐発錆性を備え、かつ磁気特性の良好な無方向性電磁
鋼板に関する。
〔従来の技術〕
無方向性電磁鋼板は、主に小型モータや小型変圧器の鉄
心材料として使用される。そして磁気特性としては、低
鉄損であるとともに磁束密度の高いことが必要とされ
る。
ところで無方向性に限らず電磁鋼板は一般に、錆を生じ
易い。このため輸送・保管・使用に際しては発錆に対す
る十分な配慮が求められる。現在、発錆防止のため、例
えば輸送・保管に当たっては防錆紙で厳重に梱包しかつ
なるべく乾燥した場所に置く、また使用に当たっては塗
料や紡錆油を鋼板表面に塗布する等の措置がとられてい
る。
しかしながらかかる発錆対策は、実施が面倒でコストも
かかるのみならず、効果が必ずしも十分でない。
このようなことから、発錆対策を必要としない、すなわ
ち耐発錆性のすぐれた電磁鋼板が求められてくる。
電磁鋼板に耐発錆性(耐候性)を付与する方法について
は、特公昭56−15705号の提案がある。これは、
無方向性電磁鋼板に関しCrを1〜5.5%添加するこ
とにより耐発錆性を付与するというものである。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながらこれでは、Crの添加による磁気特性の劣
化を補償するために複雑な2回冷延が必須となり、コス
トアップが免れない。電磁鋼板は通常、比較的高圧下率
の一回の冷間圧延で製品厚とするが、冷延を2回にする
と磁気特性が改善されることが知られている。しかしな
がらこの2回冷延法では、2回の冷延工程の間に材料軟
化のための中間焼鈍を挟むことが必要で、工程が非常に
繋雑化し、コストが著しく嵩むことになるのである。
本発明は、特に無方向性電磁鋼板に関し、すぐれた耐発
錆性を有し、しかも通常の一回冷延材で良好な磁気特性
を示すものを提供することを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
一般に鋼の耐候性、なかんずく耐発錆性を改善するのに
有効な元素として、Cu,Cr,Pなどが公知である。
このような元素を添加した鋼板は、一般に耐候性鋼板と
して広く知られているが、周知の如く耐候性鋼板は構造
物の外板等の用途を意図するものであり、当然のことな
がら磁気特性については全く配慮されておらず、電磁鋼
板としては有用でない。
本発明者らは、上記Cu,Cr,Pの耐発錆性改善効果
に着目し、鋭意実験、研究を行った結果、その3元素を
使用して無方向性電磁鋼板に、その本来の磁気特性を劣
化させることなく良好な耐発錆性を付与する手段を知見
し、本発明の完成に至ったものである。
すなわち、本発明は、次のような無方向性電磁鋼板を要
旨とする。
重量%で、C0.015%以下、Si3.5%以下、M
n0.05〜1.0%、P0.01〜0.15%、Al
0.5%以下で、Cr0.20〜1.0%を含むか、ま
たはCr0.10〜1.0%とCu0.01〜0.2%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
不純物としてのS,N,Oは、S0.01%以下、N
0.005%以下、O0.005%以下であり、かつM
n+Cr≦1.5%、Cu添加ありの場合は更にCr+
Cu≧0.20%を満足することを特徴とする耐発錆性
に優れた無方向性電磁鋼板。
〔作 用〕
本発明の骨子とするところは、 Pを適量添加するとともに、CrまたはCrとCu
を特定量添加することによって優れた耐発錆性を確保
し、且つ熱間圧延時の脆化を防ぎ、 同時にMnとCrの量を総量規制で適正化すること
によって磁気特性、とくに鉄損を良好なレベルに保つ、 という点にあり、これによって1回冷延材で十分な耐発
錆性と良好な磁気特性とを同時に実現することを可能に
したものである。
以下、本発明における鋼成分限定の理由について述べ
る。
C:磁気特性、とくに鉄損に影響し、鉄損低下の観点か
ら少ない方がよい。とくに、0.015%をこえると、
磁気時効による鉄損増加が大きくなることから、0.0
15%以下とした。なお下限については、上記のとおり
Cは少ないほどよいので特に限定しない。
Si:電磁鋼板において最も需要な元素であり、磁気特
性に対し支配的影響を及ぼす。3.5%までは、その量
が多いほど、より良好な鉄損値が得られるが、3.5%
をこえるとその効果は飽和し、また冷間加工性の劣化が
顕著となる。よって、3.5%以下とした。
Siの添加量は、実際には用途上求められる磁気特性を
考慮し、その要求レベルに応じて選定される。
なお、Siの下限値については、磁気特性の要求レベル
により適正量が変化し一概に言えないので特に規定しな
い。
Mn:熱間圧延時のSによる脆化割れを防止する意味に
おいて、少なくとも0.05%は必要である。しかし
1.0%をこえると、磁気特性を劣化させる。よって、
Mnは0.05〜1.0%とした。なお、MnはCrと
の合計量での規制も必要であるが、この点は後で述べ
る。
P:耐発錆性の向上に寄与する元素であり、その意味か
ら更に詳しくはCuの制限下で良好な耐発錆性を確保す
るために0.05%以上必要である。耐発錆性の観点か
らは多いほど有効であるが、0.15%をこえると加工
性が劣化する。よって、Pは0.05〜0.15%とし
た。
Al:脱酸剤として添加される。またAlは、磁気特性
に対しても有効である。ただし、このうような効果は
0.5%をこえると飽和する。
よって、0.5%以下とした。
なお、下限については、磁気特性と関係の深い結晶粒度
を調整する目的で0.1%以上が望ましいとされる場合
が多いが、Siなどによる脱酸が十分であればそれ以上
でも良く、特に限定しない。
Cr:耐発錆性の改善に有効な元素であり、その意味か
ら必要とされる。必要量は、同等効果をもつCuの添加
の有無によって変わっくる。Cu添加のない場合、十分
な耐発錆性を確保するには少なくとも0.2%の添加が
必要である。一方Cu添加がある場合には、Crは最低
限0.1%あればよい。ただしこの場合には、CrとC
uの合計量が、0.2%以上であることが必要とされ
る。この点については後で詳述する。
Crはその量が多いほど耐発錆性には有効であるが、
1.0%をこえると、磁気特性に顕著な悪影響がみられ
る。また、磁気特性の観点からは、Mnとの合計量が重
要な意味をもち、磁気特性を良好に保つためにはMnと
Crに総量規制を設けることが必要である。第1図は、
Mn+Cr量と鉄損値との関係を示す実験結果である。
これは、C0.003%,Si0.5%,P0.07
%,Al0.15%,S0.005%,N0.002
%,O0.002%系で、Mn+Cr量を0.5〜2.
1%の範囲で変化させ鉄損値への影響をみたもので、供
試材は、後述実施例に示す製造プロセスによった0.5
mm厚の冷延焼鈍板である。鉄損値は、単板磁気測定器に
よる測定値である。
図によると、Cr+Mn量が1.5%をこえたところで
は、鉄損が著しい上昇傾向を示している。すなわち、鉄
損を良好なレベルに保つには、Cr+Mn量が1.5%
以下でなければならない。
よってCrは、Cu添加なしで0.2〜1.0%、Cu
添加ありの場合0.1〜1.0%でかつCr+Mn≦
1.5%を満足する範囲とした。
Cu:Cr同様、耐発錆性を改善する元素であり、必要
に応じ添加される。Crとの複合添加で、0.01%以
上添加すると効果がある。効果は、Crと略々等価であ
る。Cuを添加する場合、Crは0.1%まで下げるこ
とができるが、CuとCrの合計量として0.2%以上
ないと、耐発錆性は十分なものが得られない。第2図に
Cu+Cr量と耐発錆性との関係を調べた結果を示す。
このデータは、C0.003%,Si0.5%,Mn
0.2%,P0.07%,Al0.15%,S0.00
5%,N0.002%,O0.002%系で、Cu+C
r量を1.0%以下のレンジで種々に変化させて耐発錆
性への影響をみたもので、供試材は、実施例と同じ製造
プロセスによった0.5mm厚の冷延焼鈍板である。図の
発錆面積率は、実施例に示す方法で測定した値である。
図によると、Cr+Cu量が0.2%未満になると、発
錆面積率が急激に上昇する傾向が認められ、良好な耐発
錆性を得るにはCr+Cu≧0.2%の条件が必要であ
ることが理解される。
なお、Cu量が0.20%をこえると熱間圧延時に脆化
が生じ、これを防ぐために高価なNiの添加や低温加熱
などの対策をとることが必要となり、実用上問題とな
る。
したがって、Cuは添加量0.01〜0.2%とし、か
つCu+Cr≧0.2%の範囲とした。
Cu量が熱間圧延時に脆化を生じることのない0.2%
以下の少量でも、良好な耐発錆性が得られるのは、この
比較的多量のPが有効に作用するからである。
N:Alと結合して微細なAlNを析出し、粒成長を劣
化させ磁気特性に悪影響を及ぼす元素であり、できるだ
け少なくするのが望ましい。この意味から、0.005
%以下に限定した。
S:Mnと結合してMnSを析出し、N同様磁気特性を
劣化させる元素であり、少なければすくないほどよい。
この意味から、0.005%以下に限定した。
O:酸化物系介在物を生成し、磁気特性を劣化させる元
素であり、少なければ少ないほどよい。この意味から、
0.005%以下に限定した。
本発明電磁鋼板の成分限定理由は以上のとりであるが、
このような電磁鋼板は、工業的には通常一回冷延法にて
製造される。
すなわち、一般的な製造法では、転炉で成分調整した溶
鋼を連続鋳造法で200mm厚程度の鋼片とする。Cの調
整に関しては、真空精錬法を用いる場合が多いが、焼純
工程など次工程で脱Cしてもよい。大型鋼塊に鋳込んだ
後分塊圧延する方法もあるが、経済性および偏析増大の
観点から最近は殆ど使われない。鋳込んだ鋼片は次に熱
間圧延により2〜3mm圧程度のコイルとされる。加熱温
度は1100〜1300℃程度で十分均熱した後タンデ
ム圧延機で圧延される。圧延の仕上温度は800〜90
0℃、コイルの巻取り温度は500〜700℃が普通で
ある。コイルに巻取った後は、室温まで放冷される。次
に鋼表面の酸化スケールを酸洗して除去する。必要に応
じて酸洗いの前又は後に熱延板の焼鈍を行う場合もあ
る。これは熱延板の結晶組織を再結晶させることを目的
とするもので、冷間圧延性や磁気特性の改善に効果があ
る。酸洗後は、冷間圧延で0.35〜0.5mm厚の所定
の板厚に仕上げる。最終焼鈍は普通600〜1100℃
の範囲で行なう。十分再結晶させ、さらに結晶粒度を調
整する必要があり、焼鈍温度は成分系によっても異な
る。焼鈍法は、バッチ式の箱焼鈍で行う場合もあるが、
近年は連続焼鈍が用いられるケースが多い。
電磁鋼板は、この段階で客先に出荷される。フルプロセ
ス材は、打ち抜き加工後、そのまま鉄心に組み立てられ
る。セミプロセス材は、打ち抜き後、鉄心に組み立てら
れる前又は後に歪取り焼鈍を施される。本発明鋼はいず
れに適用しても良い。実施例では、フルプロセス材につ
いて説明するが、セミプロセス材では、打ち抜き歪の解
放や結晶粒成長で磁気特性は更に向上する。
〔実施例〕
次に本発明の実施例について述べる。
第1表に示す、Si量を0.5%,1.5%,2.5%
の3レベルとした種々の組成の鋼を、50kgの高周波真
空溶解炉を用いて溶製し、これを鋳型に鋳込んで鋳片と
なし、この鋳片を熱間鍛造により30mm厚とし、その後
1250℃に再加熱し仕上げ温度850℃で2.3mm厚
まで熱間圧延を行い、圧延後直ちに水スプレーで550
℃まで冷却し、次いで550℃の炉中に装入炉冷した。
なお、熱間圧延時の脆化を防ぐために、鋼中のCu量を
最大でも0.18%に制限した。
このようにして得た熱延板を、酸洗後冷間圧延により
0.5mm厚に仕上げ、その後窒素雰囲気中で、0.5%
Si系:700℃×1min、1.5%Si系:800
℃×1min、2.5%Si系:900℃×1minの
連続焼鈍パターンで最終焼鈍を行った。
得られた最終焼鈍材について、磁気特性(鉄損値、磁束
密度)および耐発錆性を評価した。磁気特性は、単板磁
気測定器により調査し、耐発錆性については、温度50
℃、湿度90%の雰囲気中で48時間の連続曝露湿潤試
験を行って発錆面積率を調査した。
結果を第1表右欄に示す。
試験結果を説明する。
○ 0.5%Si系についていうと、本発明例は鉄損値
6.02〜6.05、磁束密度1.73〜1.75、発
錆面積率16〜22%を記録した。
これに対し、比較例4,5はCu無添加材とCu添加材
で、No.4はCr量、No.5はCr量とCu+Cr量が本発
明範囲を下まわるもので、いずれも発錆面積率が大きな
値となっている。
比較例6はMn+Cr量が本発明範囲をこえるもので、
磁気特性、とくに鉄損値が劣る。
比較例7はC量が本発明範囲をこえるもので、これも鉄
損値が高い。
○ 1.5%Si系では、本発明例は鉄損値4.19〜
4.28、磁束密度は1.70〜1.72、発錆面積率
は15〜20%を達成している。
これに対し、比較例11はCr量が高く本発明範囲外の
もので、鉄損値が高い。
比較例12はPが本発明範囲を下まわるもので、発錆面
積率が大きな値となっている。
比較例13はS量が本発明範囲を上まわるもので、鉄損
値が大きい。
○ 2.5%Si系については、本発明例は鉄損値3.
26〜3.30、磁束密度1.68〜1.69、発錆面
積率16〜19%を実現している。
これに対し、比較例17,18はそれぞれのO,Nが本
発明範囲をこえるもので、何れも鉄損値が高くなってい
る。
比較例19はMnが本発明範囲をこえるもので、これも
鉄損値が高い。
〔発明の効果〕
以上の説明から明らかなように本発明の無方向性電磁鋼
板は、磁気特性が良好で熱間圧延時の脆化も生じない上
に優れた耐発錆性を備えており、保管、運搬、実使用に
際し特別の発錆対策をとる必要がない。また一回冷延法
ですぐれた磁気特性を実現できる上、特別高価な元素を
必要としないという利点もあり、したがってその実用的
価値はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図はCr+Mn量と鉄損特性との関係を示す実験結
果、第2図はCu+Cr量と耐発錆性との関係を示す実
験結果である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C0.015%以下、Si3.
    5%以下、Mn0.05〜1.0%、P0.05〜0.
    15%、Al0.5%以下、Cr0.20〜1.0%を
    含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不純物
    としてのS,N,Oは、S0.01%以下、N0.00
    5%以下、O0.005%以下であり、かつMn+Cr
    ≦1.5%を満足することを特徴とする耐発錆性に優れ
    た無方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】重量%で、C0.015%以下、Si3.
    5%以下、Mn0.05〜1.0%、P0.05〜0.
    15%、Al0.5%以下、Cr0.10〜1.0%、
    Cu0.01〜0.20%を含み、残部Feおよび不可
    避的不純物からなり、不純物としてのS,N,Oは、S
    0.01%以下、N0.005%以下、O0.005%
    以下であり、かつCr+Cu≧0.20%、Mn+Cr
    ≦1.5%を満足することを特徴とする耐発錆性に優れ
    た無方向性電磁鋼板。
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