JPH066239Y2 - ウォータポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、内燃機関の被冷却部分に冷却水を強制的に
循環させるウォータポンプに関する。

従来の技術 自動車用内燃機関の冷却装置に用いられるウォータポン
プとしては、例えば第４図に示すようなものがあり、内
部にポンプ室２を備えたポンプハウジング１と、このポ
ンプハウジング１に設けられた軸受孔３内にベアリング
４を介して回転自在に支承され機関と同期回転する回転
軸５と、この回転軸５の先端側に上記ポンプ室２内に臨
んで取付けられて該ポンプ室２内の冷却水を吐出口７に
圧送するポンプロータたるベーン６とを、備えており、
上記ポンプ室２の内壁面２ａとベーン６の裏側外周部６
ａとの間には、約１〜２mm程度の比較的小さな環状の隙
間Ｃが形成されている。

また、このベーン６と上記回転軸５及び軸受孔３で取り
囲まれた空間内には、メカニカルシール８が配設されて
おり、このメカニカルシール８は、保持部材９の内部に
有する伸縮性シール部材１０と、該伸縮性シール部材１
０内のコイルスプリング１１によって外方向へ付勢され
たシールリング１２と、ベーン６の回転時において上記
コイルスプリング１１のばね力で上記シールリング１２
が摺接するシートリング１３とにより構成されており、
主といて上記シールリング１２によって軸受孔３とポン
プ室２との間を水密的に封止するようになっている。
尚、上記ベーン６のロータ基端部６ｂには、小径な１ま
たは２つのバランス孔１４が穿設されている（実開昭５
９−１１７８９９号公報参照）。

考案が解決しようとする課題 ところで、上述のような従来のウォータポンプにあって
は、一般にポンプ室２内に導入される冷却水中には、エ
アが混入しており、したがって、ベーン６が回転すると
その遠心分離作用によって冷却水はベーン６の外周側に
導かれる一方、エアは上述の隙間Ｃからベーン６裏側と
ポンプ室２内壁面２ａ間の空間部１５に流入してメカニ
カルシール８の上部周辺に滞留してしまう。このため、
シールリング１２とシートリング１３との摺動面１２
ａ，１３ａがエア中に晒らされて不潤滑状態となり、し
たがって、シールリング１２とシートリング１３との摺
動速度が上昇すると両摺動面１２ａ，１３ａ間に高い摩
擦熱が発生し易くなる。依って摺動面１２ａ，１３ａが
高熱により摩耗し易くなるばかりかメカニカルシール８
付近に滞留した冷却水中のメルカプトベンゾチアゾール
（ＭＢＴ）等の有効成分が摺動面１２ａ，１３ａ間に凝
着し易くなる。この凝着や摩耗による面荒れの結果、摺
動面１２ａ，１３ａ間に隙間が発生してシール性能が著
しく低下するといった問題がある。

尚、メカニカルシール８周囲に滞留したエアは、バラン
ス孔１４から僅かに排出されるが、孔径の総面積が小さ
いため、十分なエア排出作用が得られない。

課題を解決するための手段 本考案は、上記従来の問題点に鑑みて案出されたもの
で、とりわけポンプロータに複数のエア排出孔を穿設す
ると共に、ポンプロータ後面のエア排出孔近傍にエア掻
出用の突起を設けたことを特徴としている。

作用 上記構成の本考案によれば、ポンプロータの回転に伴い
その遠心分離作用によって、冷却水に混入したエアが隙
間からメカニカルシールの上部周辺つまりポンプロータ
の後部に回り込むと、突起によってエア混入冷却水がエ
ア排出孔側に掻き集められ、該エア排出孔からポンプロ
ータの前端側へ強制的に排出される。したがって、メカ
ニカルシール付近へのエアの滞留が確実に防止できる。

実施例 以下、この考案の実施例を図面に基づいて詳述する。
尚、上記従来と共通の構成個所には同一の符号を付して
説明する。

第２図はこの考案に係るウォータポンプの一実施例を示
し、１は内部にポンプ室２を有するポンプハウジング、
５は軸受孔３にベアリング４を介して回転自在に支承さ
れた回転軸、６は回転軸５の先端に取付けられたポンプ
ロータたるベーンであって、このベーン６の後部外周端
６ａとポンプ２の内壁面２ａとの間には、従来と同様に
約１〜２mm程度の隙間Ｃが形成されている。７はベーン
６の下流側に形成された冷却水の吐出口、８はベーン６
と回転軸５及びベアリング４の固定壁で取り囲まれた空
間内に配置されたメカニカルシールであって、このメカ
ニカルシール８は、保持部材９内に収納された伸縮性シ
ール部材１０と、コイルスプリング１１によって外方向
へ付勢されたシールリング１２と、ベーン６の回転に伴
い上記シールリング１２と摺接するシートリング１３と
を備えている。

そして、上記ベーン６は第１図Ａ，Ｂに示すように略円
形状のロータ基部６ｂの前側外周に６板のインペラ１７
…が設けられていると共に、該各インペラ１７…間のロ
ータ基部６ｂの対称位置に円形状の２つのエア排出孔２
１，２１が軸方向に穿設されている。このエア排出孔２
１，２１は、上記従来のバランス孔よりも比較的大径に
形成されている。更に、上記ベーン６の凹状後面６ｃに
は、中央孔外周の環状部６ｄと後部外周端６ａとを結ぶ
突起たる２枚の翼部材２２，２２が形成されている。す
なわち、この翼部材２２はエア排出孔２１，２１のベー
ン６回転方向（矢印）の後方側近傍に配置されていると
共に、半径方向に直線ではなく中心方向へ渦巻状に湾曲
形成されている。また、その高さは環状部６ｄや後部外
周端６ａの高さと同一に設定されている。

したがって、この実施例によれば機関の駆動により回転
軸５及びベーン６が回転して吸込口１６からポンプ室２
へ流入したエア混入冷却水が、上記ベーン６の回転遠心
力により吐出口７側に圧送される。ここで、遠心分離作
用により分離されたエアは、第３図に示すように隙間Ｃ
を通ってメカニカルシール８上部周囲の空間部１５内に
流入すると、つまりベーン６の後側に回り込むと、翼部
材２２，２２の内側面２２ａ，２２ａによってエア混入
冷却水がエア排出孔２１，２１側に掻き集められる。し
たがって、このエア混入冷却水は、第３図の矢印で示す
ようにエア排出孔２１，２１からベーン６の前端側ポン
プ室２へ強制的かつ速やかに排出される。依って、この
排出されたエアは吐出口７側へ再び圧送され、その一部
はまた隙間Ｃ空間部１５内に還流するが大部分は冷却水
と共に機関のウォータジャケット側へ圧送される。依っ
て、空間部１５でのエアの滞留が防止され、メカニカル
シール８のシールリング１２とシートリング１３はエア
に晒されることなく空間部１５を循環する冷却水の吸熱
作用によって十分に冷却される。このため、ベーン６が
たとえ高回転になり、摺動面１２ａ，１３ａの摺動速度
が高くなっても摩擦熱の昇温が十分に抑制される。した
がって、摩擦の発生やＭＢＴの凝着が防止できる。

尚、エア排出孔２１，２１は、従来と同様にバランス孔
として作用することは勿論である。

また、本考案はエア排出孔２１，２１の個数や内径を上
記実施例に限定するものではない。更に、翼部材２２，
２２の形状もこれに限定されず、半径方向へ直線的でも
よくまたエア排出孔２１，２１を中心に回転前方へ屈曲
状に形成することも可能である。

考案の効果 以上の説明で明らかなように、本考案に係るウォータポ
ンプによれば、ポンプロータの回転に伴い隙間からメカ
ニカルシールの周辺に流入したエア混入冷却水が突起に
よってエア排出孔側に掻き集められ、そのまま該エア排
出孔からポンプロータの前端側へ強制的に排出される。
このため、メカニカルシール付近へのエアの滞留が確実
に防止できる。したがって、メカニカルシールは循環す
る冷却水により効果的に潤滑かつ冷却され、摺動に伴う
摩擦昇温が十分に抑制される。この結果、摩耗の発生や
ＭＢＴの凝着が防止され良好なシール性能が維持され
る。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａは本考案に係るウォータポンプの一実施例を示
す要部拡大図、同図Ｂは同図Ａの破断図、第２図は本実
施例の断面図、第３図は本実施例の作用を示す説明図、
第４図は従来のウォータポンプを示す断面図である。 １……ポンプハウジング、２……ポンプ室、４……ベア
リング（軸受）、５……回転軸、６……ベーン（ポンプ
ロータ）、６ｃ……後面、８……メカニカルシール、２
１……エア排出孔、２２……翼部材（突起）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸の先端に固定されてポンプハウジン
   グのポンプ室に臨むポンプロータと、該ポンプロータま
   たは回転軸と上記ポンプハウジングとの間に配置された
   シール部材とを備えたウォータポンプにおいて、上記ポ
   ンプロータに複数のエア排出孔を穿設すると共に、ポン
   プロータ後面の上記エア排出孔近傍にエア掻出用の突起
   を設けたことを特徴とするウォータポンプ。