JPH0659146B2 - 海中垂下式アワビ飼育籠 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、海中に垂下して使用するアワビ飼育篭に関
する。

（従来技術） アワビ養殖において最も重要な課題は、飼育管理及び作
業時間の短縮と労力の軽減である。

これらは、飼育篭（いけす）の構造及び取扱い性能によ
って大きく影響されることから、各種の養殖篭が提案さ
れ、また市販されているが、いずれも未だ試行的段階の
製品であって、アワビ養殖も経済的に成功させるまでに
は至っていない。

アワビ飼育篭に要求される一般的条件又は性能として
は、篭内の海水の水質を保持するために通水性が良いこ
と、海中浮遊物及び他の海洋生物の付着を防ぐこと、給
餌作業性がよいこと、引き上げ時の水中抵抗が小さいこ
と、波浪に対する耐久性があること、アワビの剥がし取
り作業性が良く、身に損傷を与えない構造であることな
どである。

本出願人は、先にアワビその他、定着性水産動物等の養
殖を目的として海底に沈設する養殖いけすを提案した
（特開平１−２３１８２８）が、給餌の際の浮上作業に
制約があり、アワビ養殖の専用いけすとしては、経済性
の点で充分なものではないと考えられる。

（目的） 本発明は、水中垂下式として浮上作業に特別の装置を使
用せずに船上に引き上げることができ、給餌その他の作
業が容易にできるうえ、分解、再組立が簡単でしかも海
中耐久性の良好なアワビ飼育篭を提供するものである。

（構成） 本発明に係る飼育篭は、開口方形底板の４隅に断面山型
のアングル柱が垂設された保持枠と、該保持枠の開口底
面及び各側面に取外し可能に設けられた所定の大きさの
網目を有する網板と、前記保持枠のアングル柱に沿って
截頭面を上面とする截頭角錐状の複数の生息棚と、少な
くとも最上部の生息棚の上面開口部を開扉可能に閉塞す
る網板と、前記各生息棚を所定間隔で保持するため前記
アングル柱に内接する４ケのスペーサと、前記保持枠を
吊り下げるロープとから構成される。

本発明において、夫々の網板の取付手段は紐又は耐蝕性
の針金等で容易に着脱できるものが好ましい。

また、保持枠と生息棚及びスペーサは、塩化ビニールそ
の他のプラスチック製又はガラス繊維強化プラスチック
（ＦＲＰ）成型体が好適であり、特に生息棚はＦＲＰ製
がよい。

（実施例） 第１図は、本発明飼育篭の使用例を示すものであって、
篭(1) は、各フロート(3) の間に、吊下げロープ(2) に
よって海中に吊下げられている。(4) はブイである。

飼育篭の外観は第２図のようであって、(10)は保持枠、
(11)は底板を構成する開口方形板、(12)は４隅に立設し
た断面山型のアングル柱である。底板開口部(13)及びア
ングル柱間の各側面(14)には網板(15)(16)が容易に取外
し可能に装着されている。

(17)は截頭角錐状の生息棚であって、棚の表裏面は４つ
の平坦面(18)で形成され、上部開口(19)には給餌時に開
扉する網(20)が図示しない紐などで取付けられている。
なお最上段生息棚以外の上部開口には網(20)は必ずしも
必要ではない。

各棚の階層間隔はスペーサ(21)によって維持されるよう
になっている。(22)は下方傾斜部、(23)は上方傾斜部、
(24)は係止突起であって、生息棚の隅角部の表裏面は、
傾斜部(22)(23)間に挟持され、突起(24)よって側面が支
持される。

保持枠の網板(15)(16)及び生息棚上部開口部の網(20)の
網目の大きさは、アワビの大きさと侵入外敵の大きさを
考慮して選定される。

アワビ（Ａ）は物陰や狭い間隙に潜む習性があり、篭内
においても特に生息棚の裏面に吸着する傾向がある。

アワビの給餌には、１−２週間に１回程度カジメなどを
与える必要がある。また、成長に応じて棚及び網の取り
替えも必要であり、夫々篭を引き上げて船上で作業す
る。

本発明篭において各棚板は全て同一傾斜角度（例えば６
０゜）の斜面で形成されているから、引き上げ時の水中
抵抗が小さく容易に引き上げられる。

給餌のみの場合は、上方から順次下方に網(20)を開扉し
て餌を投入すればよく、移し替えの場合は棚板は極めて
簡単に分離できる上、アワビ（Ａ）の吸着面が全て平坦
面であるので剥し取りが容易に行え、その際アワビの身
を損傷させるこがない利点がある。

アワビの成長に応じて生息棚の間隙を大きくする場合
は、単に所定長さのスペーサと交換するだけでよい。

上記構造の飼育篭であって、保持枠外寸５２cm(h) ×５
１cm(w) 、生息棚外寸、下面５０cm×５０cm、上面開口
部２０cm×２０cm、高さ２１cm、階層数４段の場合、成
長アワビ約２００個を収容して飼育することができた。

（効果） 本発明飼育篭は海中吊下式であって、篭が常時振動して
いる他、全面の網と生息棚の平坦斜面によって、海水交
換性が良好であって、このため一時に大量の給餌をして
も、餌が傷むおそれがないから作業時間の短縮と労力が
軽減される。

また、生息棚が全体として角錐形であるから、引き上げ
時の水中抵抗が小さく、作業が迅速に行なえる。

更に、アワビの吸着面が平坦面であるから観察は勿論、
剥し取りも容易に行え、作業時間が短縮される等の効果
がある。

本発明飼育篭は、その構成部材である保持枠、生息棚、
スペーサ及び網等の全てが分解積み重ね可能であるか
ら、収容時のスペースを要せず、また組立時もボルトナ
ット等の締着具を使用しないので船上での組立作業が簡
単、迅速に行なえるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明飼育篭の使用状態の説明図、第２図は篭
の斜視図、第３図は篭の断面図、第４図は保持枠の斜視
図、第５図は生息棚の斜視図、第６図はスペーサの斜視
図、第７図はスペーサの平面図、第８図はアングル柱と
スペーサの作業関係を示す断面図である。 （１０）は、保持枠、（１１）は、開口方形板、（１
２）は、アングル柱、（１７）は、生息棚、（１９）
は、上部開口、（２１）は、スペーサ。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】開口方形底板の４隅に断面山型のアングル
   柱が垂設された保持枠の前記底面及び各側面に所定の大
   きさの網目を有する網板が取外し可能に設けられると共
   に前記保持枠内に截頭面を上面とする截頭角錐状の複数
   の生息棚が前記各アングル柱に沿う所定長のスペーサに
   よって階層的に積層され且つ前記各生息棚の上面には前
   記網板と同様の網板が紐等によって容易に開扉できるよ
   うに取付けられ、前記保持枠が吊下げロープに取付けら
   れてなる海中垂下式アワビ飼育篭。
2. 【請求項２】スペーサの両端に夫々截頭角錐状生息棚の
   隅角部面に接触する傾斜部が形成されると共に前記スペ
   ーサの一端には前記隅角部の側面に接する突起が形成さ
   れてなる請求項１記載のアワビ飼育篭。