JP2021007324A - 養殖篭、養殖システム及び養殖方法 - Google Patents

養殖篭、養殖システム及び養殖方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被養殖対象物が折り重ならずにストレスなく育成可能な養殖篭、養殖システム及び養殖方法を提供する。【解決手段】養殖篭は、上面支持枠と、上面支持枠に対向し、上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠と、扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、上面支持枠の内部に2面の上部が配置され、下面支持枠が定義する平面の近傍に2面の下部が配置され、それぞれ被養殖対象物を、被養殖対象物の蝶つがい部分を2面の下部側に向けて1枚ずつ収納する複数の小袋を備える構造を養殖ユニットとし、養殖ユニットを用いてイタヤガイ科に属する前記被養殖対象物を養殖することを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明はホタテ貝等のイタヤガイ科に属する二枚貝を養殖するための養殖篭、養殖システム及び養殖方法に関する。
ホタテ貝等のイタヤガイ科に属する二枚貝の養殖方法は、垂下方式と地撒方式に大別される。例えばホタテ貝においては、現在では垂下方式が主流であり、稚貝を円柱状の養殖篭(丸篭、行燈篭)又は耳吊り具等を用いて海中に垂下し、1〜3年かけて育成するのが一般的である。養殖篭を用いた養殖方法の変形的な方法として、特許文献1には、網地から成るポケット状の養殖室が複数段設けられた連段養殖篭の発明が記載されている(特許文献1の図1等参照)。1つのポケット状の養殖室にホタテ貝等の二枚貝が数枚ずつ収容されて育成される。
養殖篭を用いた養殖方法では、養殖篭が揺れたり振動したりすると、養殖篭内に収容されているホタテ貝等の二枚貝のへい死リスクが増大する。揺れや振動が直接的に貝のストレスとなったり、貝殻を閉じてしまうことで摂餌を阻害したりすることによると考えられている。養殖篭の揺れや振動の原因は、海流や潮流の流入、潮汐、海水温差による鉛直対流、季節風等の風、低気圧や台風等、様々である。
揺れや振動が養殖篭に加わると、収容されている貝が篭内で偏ってしまう場合があり、偏った方に重量がかかって養殖篭が傾くため、一度貝が偏ってしまうと元の分散された状態に自然に戻ることは難しい。例えばホタテ貝においては、稚貝が偏って折り重なった状態となると、殻体運動により稚貝が互いに噛み合いをし、外套膜等の互いの軟体部等を傷つけてしまう。傷がついた部分は生育せず、成貝となっても異常貝に分類され、商品としての出荷には向かない。又、稚貝が折り重なっていること自体がストレスであるし、貝の口が開きにくく摂餌も上手くいかず、へい死リスクや異常貝リスクが高まる。
特許文献1に記載の連段養殖篭は、鉛直方向に平たい構造であるため、海の水平方向の揺れの影響を受けやすく、収容されている貝にとって大きなストレスとなる。又、ポケット状の養殖室内で貝が偏ると、狭い養殖室の中では偏りは解消しにくい。
特開2011−55753号
本発明は上記の問題に着目してなされたものであって、イタヤガイ科に属する被養殖対象物が折り重ならずにストレスなく育成可能な養殖篭、養殖システム及び養殖方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(a)上面支持枠と、(b)上面支持枠に対向し、上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠と、(c)扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、上面支持枠の内部に2面の上部が配置され、下面支持枠が定義する平面の近傍に2面の下部が配置され、それぞれ被養殖対象物を、被養殖対象物の蝶つがい部分を2面の下部側に向けて1枚ずつ収納する複数の小袋とを備える構造を養殖ユニットとし、この養殖ユニットを用いてイタヤガイ科に属する被養殖対象物を養殖することを特徴とする養殖篭であることを要旨とする。
本発明の第2の態様は、(a)海中に位置し、中間部分が海面に平行に張られた幹綱と、(b)幹綱の中間部分に吊下げられる複数の養殖篭を備え、イタヤガイ科に属する被養殖対象物を養殖することを特徴とする養殖システムであることを要旨とする。本発明の第2の態様に係る複数の養殖篭のそれぞれは、上面支持枠と、上面支持枠に対向し上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠と、扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、上面支持枠の内部に2面の上部が配置され、下面支持枠が定義する平面の近傍に2面の下部が配置され、それぞれ被養殖対象物を収納する複数の小袋を有した養殖ユニットを構成し、この養殖ユニットを用いてイタヤガイ科に属する被養殖対象物を養殖する。
本発明の第3の態様は、(a)扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、上面支持枠の内部に前記2面の上部が配置され、上面支持枠に対向し上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠が定義する平面の近傍に2面の下部を配置された複数の小袋に、被養殖対象物の蝶つがい部分を2面の下部側に向けて、被養殖対象物を1枚ずつ収容するステップと、(b)上面支持枠、下面支持枠及び複数の小袋を備える養殖ユニットを海中に吊下げるステップとを含み、イタヤガイ科に属する被養殖対象物を養殖することを特徴とする養殖方法であることを要旨とする。
本発明によれば、イタヤガイ科に属する被養殖対象物が折り重ならずにストレスなく育成可能な養殖篭、養殖システム及び養殖方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る養殖篭の左側面図である。 第1実施形態に係る養殖篭の正面図である。 図3(a)は第1実施形態に係る養殖篭の最上段の養殖ユニットの拡大左側面図であり、図3(b)は図2のA部分の拡大斜視図である。 第1実施形態に係る養殖篭の小袋の斜視図である。 第1実施形態に係る養殖篭の小袋を2つ連結させた場合の斜視図である。 第1実施形態に係る養殖篭の小袋に被養殖対象物を格納した場合の斜視図である。 図3(b)の状態から小袋に被養殖対象物を格納した場合の斜視図である。 第1実施形態に係る養殖システムの模式図である。 第1実施形態に係る養殖システムに用いるナマコ礁の模式的な平面図である。 図9のA−A方向から見た断面図である。 図11(a)は本発明の第1実施形態の変形例に係る養殖篭の小袋の斜視図であり、図11(b)は図11(a)の側面図である。 第1実施形態の変形例に係る養殖篭の小袋を2つ連結させた場合の斜視図である。 第1実施形態の変形例に係る養殖篭の小袋に被養殖対象物を格納した場合の斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る稚貝養殖篭の斜視図である。 図15(a)は第2実施形態に係る稚貝養殖篭の最上段の養殖ユニットの拡大斜視図であり、図15(b)は図15(a)の状態から蓋網を除いた構造を示す斜視図である。 第2実施形態の変形例に係る稚貝養殖篭の斜視図である。
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す第1及び第2実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。同様に、以下の説明における「前後」の方向も、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではなく、180度回転すれば「前」を「後」に、「後」を「前」と称することが可能になる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る養殖篭1として、図1に示すような、第1養殖ユニット11a、第1養殖ユニット11aの下の第2養殖ユニット11b、第2養殖ユニット11bの下の第3養殖ユニット11c及び第3養殖ユニット11cの下の第4養殖ユニット11dを備える構造を例示する。最上段の第1養殖ユニット11aは、図3に示すように、第1平面を定義する上面支持枠(第1上面支持枠)31aと、第1上面支持枠31aから離間して第1上面支持枠31aに平行に配置された第2平面を定義する下面支持枠(第1下面支持枠)31bとで、上面から見てマトリクス状に配列された複数の網状の小袋21a〜21d,……のそれぞれを、斜め方向にほぼ並列に収納する小袋収納空間を構成している。複数の網状の小袋21a〜21d,……のそれぞれには、イタヤガイ科に属する被養殖対象物が1枚ずつ収納される。
図1の左側面図では、小袋21a〜21dの左側面が露出した様子を示しているが、図2に示すように、小袋21a〜21dの他にも複数の網状の小袋が配列され、複数の小袋のマトリクス状配列をなしている。図2は、図1及び図2等における複数の支柱33a,33b,……の長手方向を鉛直方向として、複数の支柱33a,33b,……の長手方向と垂直な面を水平方向とした際の正面図である。複数の小袋21a〜21d,……のそれぞれの対向する主面を前面及び背面として、小袋収納空間の第1上面支持枠31aが定義する第1平面の近傍に、前面と背面の上部、即ち開口部を配置し、第1下面支持枠31bが定義する第2平面の近傍に、前面と背面の下部、即ち底部を配置するように傾斜している。そして、第1上面支持枠31a、第1下面支持枠31b及び複数の小袋21a〜21dとで、第1養殖ユニット11aを構成している。前面と背面の2面は、扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面となる。
図1に示すように、2段目の第2養殖ユニット11bは、第1養殖ユニット11aと同様に、第3平面を定義する第2上面支持枠31aと、第3平面に平行に配置された第4平面を定義する第2下面支持枠31bと、第3平面の近傍に開口部を配置し、第4平面の近傍に網状の底部を配置した複数の小袋21a〜21dを備える。3段目の第3養殖ユニット11cは、第1養殖ユニット11aと同様に、第5平面を定義する第3上面支持枠31aと、第5平面に平行に配置された第6平面を定義する第3下面支持枠31bと、第5平面の近傍に開口部を配置し、第6平面の近傍に網状の底部を配置した複数の小袋21a〜21dを備える。4段目の第4養殖ユニット11dは、第1養殖ユニット11aと同様に、第7平面を定義する第4上面支持枠31aと、第7平面に平行に配置された第8平面を定義する第4下面支持枠31bと、第7平面の近傍に開口部を配置し、第8平面の近傍に網状の底部を配置した複数の小袋21a〜21dを備える。
第1実施形態に係る養殖篭1の第1養殖ユニット11aを構成する第1上面支持枠31aが定義する「第1平面」は、図1、図2及び図3(b)等においては、第1上面支持枠31aが挟む長方形が属する平面に対応する。第1上面支持枠31aには厚みがあるが、厚みは一定であり、第1平面は第1上面支持枠31aの厚み方向の中心部分を通るものとする。図3(b)及び図7においては、第1上面支持枠31aの対向する2辺に両端を固定された補助枠51aも、第1平面に含まれる。
第2養殖ユニット11bを構成する第2上面支持枠31aが定義する「第3平面」についても、第1上面支持枠31aの場合と同様に、第2上面支持枠31aが挟む長方形が属する平面に対応する。第3養殖ユニット11cを構成する第3上面支持枠31aが定義する「第5平面」についても、第1上面支持枠31aの場合と同様に、第3上面支持枠31aが挟む長方形が属する平面に対応する。第4養殖ユニット11dを構成する第4上面支持枠31aが定義する「第7平面」についても、第1上面支持枠31aの場合と同様に、第4上面支持枠31aが挟む長方形が属する平面に対応する。
第1実施形態に係る養殖篭1の第1養殖ユニット11aを構成する第1下面支持枠31bが定義する「第2平面」は、図1、図2及び図3(b)等においては、第1下面支持枠31bが挟む長方形が属する平面に対応する。第2養殖ユニット11bを構成する第2下面支持枠31bが定義する「第4平面」についても、第1下面支持枠31bの場合と同様に、第2下面支持枠31bが挟む長方形が属する平面に対応する。第3養殖ユニット11cを構成する第3下面支持枠31bが定義する「第6平面」についても、第1下面支持枠31bの場合と同様に、第3下面支持枠31bが挟む長方形が属する平面に対応する。第4養殖ユニット11dを構成する第4下面支持枠31bが定義する「第8平面」についても、第1下面支持枠31bの場合と同様に、第4下面支持枠31bが挟む長方形が属する平面に対応する。
図1の左側面図では、左側面が露出した小袋21a〜21dのみを示したが、図2の正面図では、小袋21a〜21dに隣接して、複数の小袋22a,22b,22c,22d;23a,23b,23c,23d;24a,24b,24c,24dがマトリクス状に配列されていることが分かる。小袋22a〜22d、23a〜23d、24a〜24dの12個を加えると、第1養殖ユニット11aには全体で16個の小袋がマトリクス状に配列されていることになる。更に下段の養殖ユニットについても同様に、図2で示した小袋21a〜21d、21a〜21d、21a〜21dのように、更に、養殖ユニット1つにつき12個ずつの小袋を備えてマトリクス状に配列されている。即ち、養殖ユニット1つにつき、16個の小袋を備えてマトリクス状に配列されている。図2においては図示の簡素化のため、小袋21a〜21d以外の小袋の網目は省略している。
図4に示す小袋21aに着目して説明すると、小袋21aは第1主面(前面)41a、第2主面(背面)42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aを有し、この5面で、「くさび型6面体」の5面を構成して袋の形状をなしている。第1主面(前面)41a及び第1主面に対向する第2主面(背面)42aが、くさび型6面体の斜面(テーパ面)を構成し、左側面43a及び右側面44aが台形状である。正確には、前面41a、背面42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aとで、頂部が切り取られた「切頂くさび型」を構成しているが、光学のプリズム等では「切頂くさび型」を単に「くさび型」と呼ぶ場合がある。
台形の上底側には小袋21aの底面45aが位置する。台形の下底側となる6面体の上部は、袋の開口部である。即ち、底面45aに対向する6面体の上部には面がない。前面41aの4周は前枠61aで囲まれて縁取られ、背面42aの4周は背枠62aで囲まれて縁取られている。以下、代表的な構造として小袋21aを例に説明していくが、他の小袋の構造についても、特に断りがない限り同様のものとする。
図4に示す小袋21aの前枠61a及び背枠62aの素材としては、天然繊維又は化学繊維から成るロープ(綱)を用いてもよいし、針金等であってもよい。海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されているロープ(綱)でもよいし、ポリ塩化ビニル等の被膜が施されている針金であってもよい。いずれでもよいが、イタヤガイ科に属するホタテ貝等の被養殖対象物を傷つけない観点からは、針金よりは柔軟性があるロープである方が好ましい。特に背枠62aの素材としてロープを用いる場合は、被養殖対象物の重量を支持する観点から、剛性を有するロープであることが好ましい。又、特に前枠61aの素材としてロープを用いる場合は、被養殖対象物の厚み方向の生育を妨げず、かつ、被養殖対象物の摂餌のための開口を妨げない観点から、背枠62aの素材よりは伸縮性のあるロープであることが好ましい。前枠61a及び背枠62aの形状は図4においては横長の長方形であるが、被養殖対象物が収容されるのであれば正方形であっても、縦長の長方形であっても構わない。
図4に示す小袋21aの前面41a、背面42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aの形態は、被養殖対象物を傷つけず、かつ、被養殖対象物の摂餌を妨げない等の観点から、網状であることが好ましい。前面41a、背面42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aの素材としては、例えば1.5分程度のラッセル網を使用することができ、海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されていることが好ましい。図4においては、左側面43a及び右側面44aの網目が前面41a及び背面42aの網目より細かく図示されているが、これは各面の区別をつけやすくするためであって、網目の大きさは5つのそれぞれの面で異なってもよいし、同一であってもよいものとする。
小袋21aについては、図4においては、前枠61aに前面41aの網が面状に張られ、背枠62aに背面42aの網が面状に張られ、前枠61aと背枠62aとの間を繋ぐように左側面43a及び右側面44aの網が面状に張られ、図示は省略するが底部に底面45aの網が面状に張られている。前面41a、背面42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aの5つの網状の面により囲まれた空間を「対象収容空間」と定義する。ホタテ貝等の被養殖対象物を収納する対象収容空間の形成のためには、向かい合せの前枠61a及び背枠62aの外側を覆うように網が面状に張られていてもよい。
即ち、前面41a、背面42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aの5つの網状の面のうちの任意の2つ以上の面が1枚の網から成るものでもよい。例えば、前面41a、背面42a、左側面43a及び右側面44aが1枚の網から成るものでもよいし、前面41a、背面42a及び底面45aが1枚の網から成るものでもよい。前面41a、背面42a、左側面43a、右側面44a及び底面45aの5つの網状の面の任意の2つの面を、前枠61aと背枠62aを介さずに直接的に結合させる場合は、縫い合わせによる結合方法でもよいし、接着剤等の薬剤による結合方法等でもいずれでもよい。
図3(b)の右手前に位置する小袋21aは、開口部を上側に配置し、小袋21aの前枠61a及び背枠62a(図4参照。)の四隅の一部は、養殖ユニットの第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bに固定されている。図3(b)に示すように、小袋21aの開口部は第1上面支持枠31aにより定義された第1平面の近傍に位置し、小袋21aの底部は第1下面支持枠31bにより定義された第2平面の近傍に位置する。小袋21aの「底部」とは、図4に示す前枠61a及び背枠62aの底面45a側の辺と底面45aを含めた部分を指し、前面41b、背面42b、左側面43b及び右側面44bの各下部も含まれるものとする。図3(b)においては、前枠61a及び背枠62aの四隅の開口部側の一部は補助枠51aにも固定されている。前枠61a及び背枠62aの四隅の一部が第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bに固定されていれば、小袋21aは第1養殖ユニットへ固定されていることになるため、補助枠51aは必ずしも必要ではない。
図5に示すように、小袋21aとそれに隣接する小袋22aは、小袋21aと同様に、前面41b、背面42b、左側面43b、右側面44b及び底面45bを有する。小袋21bには底面45bに対向する上部の面がなく、上部は開口部である。前面41bは前枠61bで囲まれ、背面42bは背枠62bで囲まれている。小袋21aとそれに隣接する小袋22aとは、小袋21aの前枠61aと小袋22aの前枠61bが互いの一辺で固定され、小袋21aの背枠62aと小袋22aの背枠62bが互いの一辺で固定されることで連結されている。小袋21aとそれに隣接する小袋22aとの図5に示す連結方法は一例であって、他の方法であっても構わない。
例えば、小袋21aの右側面44bが小袋22aの左側面を兼ねる構造であってもよい。即ち、小袋21aの右側面44b(小袋22aの左側面)の網が、小袋21aの前枠61aと小袋22aの前枠61bとで挟まれ、小袋21aの背枠62aと小袋22aの背枠62bとで挟まれた構造である。更に、小袋21aの前枠61aの右側の一辺が小袋22aの前枠61bの左側の一辺を兼ねる構造であってもよい。背枠62aと背枠62bについても同様である。小袋21aとそれに隣接する小袋22aとで例示したが、他の任意の隣接する2つの小袋の連結方式についても同様である。
図3(b)の右の奥側に位置する小袋22aは、開口部を上側に配置し、手前側の小袋21aに連結されている。小袋22aの開口部は小袋21aと同様、第1平面の近傍に位置し、小袋22aの底部は小袋21aと同様、第2平面の近傍に位置する。又、小袋22aの前枠61b及び背枠62b(図5参照。)の四隅の開口部側の一部は補助枠51aに固定されている。小袋22aが小袋21aに連結されていれば、小袋22aの第1養殖ユニットへの固定は間接的になされているため、補助枠51aは必ずしも必要ではない。補助枠51aがあることで、小袋21a及び小袋22aの第1養殖ユニットへの固定はより強固となる。補助枠51aと対応するように、第1下面支持枠31bへも補助枠が設けられていてもよい。その場合、小袋21aの前枠61a及び背枠62a、並びに小袋22aの前枠61b及び背枠62bのそれぞれの四隅の底部側の一部が、第1下面支持枠31bに設けられた補助枠に固定されることになる。第1下面支持枠31bに設けられた補助枠があることで、小袋21a及び小袋22aの第1養殖ユニットへの固定はより強固となる。
図2に示す最上段の第1養殖ユニットは16個の小袋21a〜21d、22a〜22d、23a〜23d及び24a〜24dを有するが、小袋21a〜21d及び24a〜24dは直接的に最上段の第1養殖ユニットの第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bに固定されている。小袋22a〜22dは隣接する小袋21a〜21dにそれぞれ連結され、更に小袋23a〜23dは隣接する小袋22a〜22d及び24a〜24dにそれぞれ連結されている。即ち、小袋22a〜22d及び23a〜23dは、小袋21a〜21d及び24a〜24dを介して間接的に最上段の第1養殖ユニットに固定されている。図3(b)に示すような補助枠51aは図2においては図示を省略しているが、各隣接する小袋間に設けられ、各小袋が固定されていてもよい。図2に示す最上段の第1養殖ユニットより下段の養殖ユニットについても、最上段の第1養殖ユニットと同様の構造及び結合方式である。
図1等に示す第1上面支持枠31aの素材として、天然繊維又は化学繊維等の剛性を有するロープを用いてもよいし、針金等であってもよい。海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されているロープでもよいし、ポリ塩化ビニル等の被膜が施されている針金であってもよい。第2上面支持枠31a、第3上面支持枠31a、第4上面支持枠31aについても同様である。
図1等に示す第1下面支持枠31bの素材として、天然繊維又は化学繊維等の剛性を有するロープを用いてもよいし、針金等であってもよい。海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されているロープでもよいし、ポリ塩化ビニル等の被膜が施されている針金であってもよい。いずれでもよいが、被養殖対象物を収容した複数の小袋の底部を接続する都合上、ロープよりは強固である針金である方が好ましい。第2下面支持枠31b、第3下面支持枠31b、第4下面支持枠31bについても同様である。
第1実施形態に係る養殖篭1は更に、図1に示すように、複数個の第1養殖ユニット11a、第2養殖ユニット11b、第3養殖ユニット11c及び第4養殖ユニット11dに固定された複数の支柱33a,33b,……と、複数の支柱33a,33b,……のそれぞれの上部に接続された複数の吊下げ縄3a、3b,……と、複数の吊下げ縄3a、3b,……をまとめて固定する環状の吊下げ部9を備える。
図1の方向からは第1支柱33a及び第2支柱33bが見えるが、図2の視座からの方向では、第1支柱33a、第4支柱33dと補助支柱35aが見える。養殖篭1の第1上面支持枠31aは長方形であり、その長方形の四隅に1本ずつ第1支柱33a,第2支柱33b,第4支柱33d,……が固定されている。よって支柱は、図示を省略した第3支柱を含めて計4本である。補助支柱35aは第1上面支持枠31aの一辺の中央に固定されているが、補助的なものであるため、あってもなくてもよい。又、補助支柱は補助支柱35aの他にもあってもよい。図1及び図2等において、複数の支柱33a,33b,33d,……は第2上面支持枠31a、第3上面支持枠31a及び第4上面支持枠31a、並びに第2下面支持枠31b、31b、第3下面支持枠31b及び第4下面支持枠31bへも同様に固定されている。
図1及び図2等に示すように、各養殖ユニット11a,11b,11c,11dは複数の支柱33a,33b,33d,……により接続されているが、上下に直接隣接しているのではなく、離間して接続されている。離間の程度に制限はないが、第1養殖ユニット11aと、第2養殖ユニット11b間の潮通しを良くする観点からは、第1養殖ユニット11a内の第1上面支持枠31aから第1下面支持枠31bまでの鉛直方向の距離の3分の1から2倍程度の離間距離が好ましい。
同様に第2養殖ユニット11bと、第3養殖ユニット11c間の潮通しを良くする観点からは、第2養殖ユニット11b内の第2上面支持枠31aから第2下面支持枠31bまでの鉛直方向の距離の3分の1から2倍程度の離間距離が好ましい。又、第3養殖ユニット11cと、第4養殖ユニット11d間の潮通しを良くする観点からは、第3養殖ユニット11c内の第3上面支持枠31aから第2下面支持枠31bまでの鉛直方向の距離の3分の1から2倍程度の離間距離が好ましい。第2平面と直下の第3平面とは平行であることが好ましく、第4平面と直下の第5平面とは平行であることが好ましい。更に第6平面と直下の第7平面とは平行であることが好ましい。
第1支柱33a、第2支柱33b、第4支柱33dの素材として、天然繊維又は化学繊維等の剛性を有するロープを用いてもよいし、針金等であってもよい。海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されているロープでもよいし、ポリ塩化ビニル等の被膜が施されている針金であってもよい。図示は省略するが、第2支柱33b及び第4支柱33dに隣接する第3支柱についても同様である。
図1及び図2等に示すように、複数の吊下げ縄3a,3b,……は4本の支柱33a,33b,33d,……及び補助支柱35aのそれぞれの上部に接続され、環状の吊下げ部9に収束して固定されている。第1実施形態に係る養殖篭1は、図2においては5本以上の複数の吊下げ縄3a,3b,……を有する。複数の吊下げ縄3a,3b,……のうち、2つの支柱、即ち第2支柱33b及び第4支柱33dに隣接する第3支柱と、第2支柱33bに接続された2本の吊下げ縄3b及び3cは、図1及び図2等に示すように、他の吊下げ縄より短く設定されていてもよい。これにより、吊下げ部9により養殖篭1を海中に吊下げた時に、図1に示す通り、第1平面及び第2平面が水平面に対して傾きを有する。第1平面及び第2平面と水平面とのなす角度(傾き)は、複数の吊下げ縄3a,3b,……の長さの差異を変更することで、自在に制御可能である。
図1のように、第1平面及び第2平面が海面の水平面に対して傾きを有する場合、最上段の第1養殖ユニット11aの小袋21a,21b,21c及び21dは、小袋21aから小袋21dに向かうに従い、養殖篭1内で相対的により上側に位置することになる。図3(a)に示す第1下面支持枠31bと第2支柱33bがなす角度を「第3角度θ」と定義する。第3角度θは90°〜125°の範囲で設定することができる。第1実施形態の養殖篭の重心の安定化や稚貝収容作業の効率化の観点から、第3角度θは95°〜120°の範囲が好ましい。更に養殖篭の潮通しの観点を加味すると、第3角度θは100°〜120°の範囲がより好ましい。図1に示す他の第2養殖ユニット11b、第3養殖ユニット11c及び第4養殖ユニット11dにおいても勿論同様である。
最上段の第1養殖ユニット11aの小袋21dは、図3(a)においては、前面及び背面それぞれが、第1下面支持枠31bが定義する第2平面と垂直の関係ではない。小袋21dの前面と第2平面がなす角度を「第1角度θ」、小袋21dの背面と第2平面がなす角度を「第2角度θ」と定義する。第1角度θは90°〜130°、第2角度θは45°〜80°の範囲が好ましい。小袋21a〜21cについても同様であり、図2に示す小袋22a〜22d、23a〜23d及び24a〜24dにおいても同様であり、図1に示す他の第2養殖ユニット11b、第3養殖ユニット11c及び第4養殖ユニット11dの小袋においても同様である。
図3(a)に示す最上段の第1養殖ユニット11aの小袋21dで設定される前面から背面までの距離のうち、底面に沿った最短距離を小袋21dの「底部の奥行きD」、開口部に沿った最短距離を小袋21dの「開口部の奥行きD」と定義する。養殖予定期間によりホタテ貝等の被養殖対象物の目標サイズが異なることを考慮すると、例えばホタテ貝の養殖であれば、底部の奥行きDは0.5〜2cm、開口部の奥行きDは2〜3.5cm程度に設定することができる。図3(a)に示す養殖篭の養殖ユニットにおいては、底部の奥行きDより開口部の奥行きDの方が長く、図3(a)のように小袋21dの側面から見た際、底部から開口部に向かって末広がりの構造である。
底部の奥行きDが長過ぎると、小袋21dに収容した被養殖対象物の保持力が弱く、被養殖対象物が小袋21d外に出てしまう可能性が高くなる。開口部の奥行きDが短過ぎると、被養殖対象物の保持力は高まるが、摂餌のための開口を妨げ、被養殖対象物に無用なストレスを与えかねず、へい死リスクが大きく高まってしまう。図3(a)の小袋21a〜21cについても同様であり、図2に示す小袋22a〜22d、23a〜23d及び24a〜24dにおいても同様であり、図1に示す他の第2養殖ユニット11b、第3養殖ユニット11c及び第4養殖ユニット11dの小袋においても同様である。
図3(a)に示す、小袋21cと小袋21dの距離のうち、第2平面に沿った最短距離を「底部間隔D」、第1平面に沿った最短距離を「開口部間隔D」と定義する。第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bの大きさにもよるが、養殖篭の省サイズ化と潮通しの観点からは、例えばホタテ貝の養殖であれば、第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bの図3(a)に図示されている一辺が40cm程度の場合は、底部間隔Dは8〜9.5cm程度、開口部間隔Dは6.5〜8cm程度に設定することができる。
図3(a)に示すように、第1上面支持枠31aと第1下面支持枠31bの鉛直方向の距離を「ユニット高H」と定義する。第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bの大きさにもよるが、例えばホタテ貝の養殖であれば、第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bの図3(a)に図示されている一辺が40cm程度の場合は、ユニット高Hは9cm程度に設定することができる。
更に、本発明の第1実施形態に係る養殖篭1は、図1及び図2に示すように、複数の錘下げ縄5a,5b,……と錘7を備える。複数の錘下げ縄5a,5b,……は4本の支柱33a等及び補助支柱35aのそれぞれの下部に接続され、錘7に収束して固定されている。第1実施形態に係る養殖篭1は、図2においては5本以上の複数の錘下げ縄5a,5b,……を有する。複数の錘下げ縄5a,5b,……のうち、2つの支柱、即ち第2支柱33b及び第4支柱33dに隣接する第3支柱と、第2支柱33bに接続された2本の錘下げ縄は、図1等に示すように、他の錘下げ縄より長く設定されていてもよい。
第1平面及び第2平面と水平面とのなす角度(傾き)をどの程度に設定するかにより複数の錘下げ縄5a,5b,……の長さのバランスが決定される。養殖篭1を海中に吊下げた際に吊下げ部9の鉛直下方に錘7が位置するように、錘7及び複数の錘下げ縄5a,5b,……を接続する。錘7の重さは、養殖篭1を海中に吊下げた際に、被養殖対象物を収容していなくとも複数の支柱33a,33b,33d,……がたわんで第1養殖ユニット11a、第2養殖ユニット11b、第3養殖ユニット11c及び第4養殖ユニット11dが海面に浮いてくることがなく、図1のような形状で安定化させることができる重さであればどの程度であってもよい。
図1及び図2等においては、養殖篭1の養殖ユニットは4つ記載されているが、第3養殖ユニット11cと第4養殖ユニット11dの間の構造は省略しているのであり、養殖ユニットは4つより多くても構わない。逆に、養殖篭1の養殖ユニットは2つ又は3つであっても構わない。
−−養殖篭の使用方法−−
ホタテ貝の場合を例にすれば、被養殖対象物の幼生は4〜5月に採苗器で採取され、5〜6月からは稚貝養殖篭等で育成される。殻長2〜3cm程度に生育した稚貝は、その年の9月頃に、より網目の大きな育成篭にて分散配置されて育成される。翌年の4月頃に、殻長7〜8cm程度に成長した半成貝を、第1実施形態に係る養殖篭の各小袋の対象収容空間に、貝殻の蝶つがい部分を下側にして1つずつ収容する。その後養殖篭を海中に沈めて生育し、翌年には殻長約12〜13cmの2年貝となる。
図6に示すように、小袋21aの対象収容空間には、生育した被養殖対象物100が貝殻の蝶つがい部分を下側にして収容されており、図7には生育した複数の被養殖対象物100〜107が複数の小袋21a〜21d、22a〜22dに収容されている様子が示されている。図7の複数の小袋21a〜21d、22a〜22dは、被養殖対象物がそれぞれ扁平方向を縦にして入るハンモック様の機能を呈する。図6及び図7においては、図の分かりやすさのため、小袋21a〜21d、22a〜22dの網状構造は図示を省略している。
小袋21a〜21d、22a〜22dの横幅は、ホタテ貝を殻長約12〜13cm程度の2年貝で出荷するのであれば15cm程度あればよい。小袋21a〜21d、22a〜22dの横幅を調節すれば、3年目以降のホタテ貝等の被養殖対象物の生育も可能であるし、殻長2〜3cm程度の稚貝の段階から収容して生育させることも可能である。小袋21a〜21d、22a〜22dの横幅は、被養殖対象物の生育目標サイズより2〜4cm程度大きく設定することができ、被養殖対象物の取り出しやすさの観点からは3〜4cm程度大きいサイズが好ましい。小袋21a〜21d、22a〜22dの前面の高さは、出荷時期の被養殖対象物の殻長前後の長さがあれば十分である。小袋21a〜21d、22a〜22dにはフタとなる構造がないので、被養殖対象物の取り出しは容易に行える。
第1実施形態に係る養殖篭によれば、養殖篭に揺れや振動が加えられても、イタヤガイ科に属する被養殖対象物が折り重なることがなく、互いに噛み合いが起こらないので、被養殖対象物の外套膜をはじめとした組織が傷むことがない。被養殖対象物の折り重なりが起こらないので、被養殖対象物の摂餌がスムーズに行え、生育が良好となる。被養殖対象物のプライベートスペースが確保されるので、被養殖対象物が密集することによるストレスもない。
第1実施形態に係る養殖篭によれば、養殖ユニットの小袋が網状であり、かつ、斜めに傾いているため、養殖篭に揺れや振動が加えられても、その衝撃を網で優しく和らげることができる。収容されている被養殖対象物にとってストレスの少ない養殖篭である。又、養殖ユニット自体が水平面から斜めに傾いた状態であれば、養殖ユニットが水平の場合よりも、養殖篭自体が海中の躍動の影響を受けにくく、養殖篭に海中の揺れや振動が伝わりにくい。
第1実施形態に係る養殖篭によれば、ホタテ貝の場合では、殻長約7〜8cmの半成貝の状態から、篭替えなしで2年貝、3年貝まで生育させることが可能である。通常は、ホタテ貝の2年貝や3年貝を出荷するためには、殻長約7〜8cmの半成貝の状態から、篭替えを伴う数回の分散作業を行わなければならない。篭替えをするのは、貝の生育にあわせるためもあるが、篭自体に貝の生育を阻害する付着物がついてしまうためでもある。分散作業の度に大きさの異なる専用の篭を用意しなければならず、手間や費用がかかる。分散作業に伴う養殖篭の揺れや温度変化が被養殖対象物にとって大きなストレスとなることも見逃してはならない。第1実施形態に係る養殖篭によれば、養殖作業の手間や費用を抑えることができ、かつ、揺れや温度変化等という被養殖対象物にとってのストレスも軽減できるのである。従来の耳吊り法と比較しても、養殖作業の手間や費用がかからない。
第1実施形態に係る養殖篭によれば、2年貝及び3年貝といった良質な産卵母貝を増やすことが容易となる。生育1年足らずの半成貝であっても産卵は可能であるが、未熟卵が比較的多いことが知られている。2年貝や3年貝まで養殖するには手間と時間がかかるため、敬遠する養殖業者も存在する。更に、夏期にはへい死のリスクが高まるが、数年養殖するにはその高リスクの夏期を数回経験しなければならず、最終的に得られる漁獲高が少なくなることも養殖業者が敬遠する要因である。第1実施形態に係る養殖篭を用いることで、被養殖対象物を篭替えなしで半成貝から3年貝まで比較的容易に生育させることが可能であるため、良質な産卵母貝である海中の2年貝及び3年貝の割合を増やすことができ、結果、良質な卵を増やすことが可能となるのである。
第1実施形態に係る養殖篭は、各養殖ユニット11a,11b,11c,11dを隣接させずに離間させて配置させているため、大変潮通しがよい。更に網部分は小袋のみで、他の部分には網がないため、より潮通しが良い。養殖篭に海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施された網を用いる場合は、養殖篭に海中生物やゴミが付着しづらくなるため、より潮通しが良くなる。溶存酸素濃度が高く、栄養分も豊富な新鮮な海水が常に被養殖対象物1枚1枚に流入するため、摂餌がスムーズであり生育が良好となる。従来の丸篭を用いた場合より、より自然な状態の好適な摂餌流速を保つことが可能となる。更に、潮通しが良いため、上段の養殖ユニットから落ちた被養殖対象物の糞が下段の養殖ユニットに堆積することがない。被養殖対象物の生育に悪影響である被養殖対象物の糞を効率的に養殖篭の系外に排出することができ、被養殖対象物の生育を良好に保つことができる。
第1実施形態に係る養殖篭によれば、養殖篭に海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施された網を用いる場合は、養殖篭に海中生物やゴミが付着しづらくなるため、収容されている被養殖対象物の貝殻にも海中生物やゴミが付着しづらくなる。よって、出荷前に通常行われる貝殻洗浄作業(付着物除去作業)が不要となり、手間と費用を省くことができる。貝殻洗浄作業では専用装置を用いて洗浄する場合が多いが、洗浄は時間がかかり、かつ、洗浄中の振動等のストレスを被養殖対象物に与えてしまい、鮮度が落ちてしまう。第1実施形態に係る養殖篭によれば、洗浄作業自体が不要となるため、被養殖対象物の鮮度を良好に保ったまま直ちに出荷することが可能となる。
−−変形例に係る養殖篭の小袋−−
本発明の第1実施形態の変形例に係る養殖篭の小袋として、図11(a)及び(b)に示すような形状及び構造の小袋25aを用いることができる。第1実施形態に係る養殖篭の複数の小袋21a等では頂部が切り取られた「切頂くさび型」の形状を想定したが、変形例に係る小袋25aには小袋21a等の底面に相当する部分がない「通常のくさび型」に近い形状である。小袋25aは第1主面(前面)46a、第2主面(背面)47a、左側面48a及び右側面49aを有し、この4面で袋の形状をなしている。底面に相当する部分がないので第1主面46aと第2主面47aがほぼV字型に交わり、V字型に交わった第1主面46aと第2主面47aの上部が袋の開口部である。図4に例示した「切頂くさび型」の構造では、左側面43a及び右側面44aが台形の形状であったが、図11(a)及び(b)に示す小袋の形状は通常のくさび型に近い形状であるので、左側面48a及び右側面49aもほぼ二等辺三角形に近い形状となっている。前面46aの4周は前枠63aで囲まれて縁取られ、背面47aの4周は背枠64aで囲まれて縁取られている。前枠63aと背枠64aとは、互いの下辺が接している。この場合、小袋25aの「底部」は前枠63aと背枠64aの下部を指し、第1主面46a及び第2主面47aの各下部も該当する。第1主面46a及び第2主面47aの2面は、扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面となる。
図11(a)及び(b)に示す変形例に係る小袋25aの前枠63a及び背枠64aの素材としては、第1実施形態に係る養殖篭の複数の小袋21a等と同様、天然繊維又は化学繊維から成るロープ(綱)を用いてもよいし、針金等であってもよい。海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されているロープ(綱)でもよいし、ポリ塩化ビニル等の被膜が施されている針金であってもよい。いずれでもよいが、イタヤガイ科に属するホタテ貝等の被養殖対象物を傷つけない観点からは、針金よりは柔軟性があるロープである方が好ましい。特に背枠64aの素材としてロープを用いる場合は、被養殖対象物の重量を支持する観点から、剛性を有するロープであることが好ましい。又、特に前枠63aの素材としてロープを用いる場合は、被養殖対象物の厚み方向の生育を妨げず、かつ、被養殖対象物の摂餌のための開口を妨げない観点から、背枠64aの素材よりは伸縮性のあるロープであることが好ましい。前枠63a及び背枠64aの形状は図11(a)においては横長の長方形であるが、被養殖対象物が収容されるのであれば正方形であっても、縦長の長方形であっても構わない。
図11(a)及び(b)に示す変形例に係る小袋25aの前面46a及び背面47aの形態は、第1実施形態に係る養殖篭の複数の小袋21a等と同様、被養殖対象物を傷つけず、かつ、被養殖対象物の摂餌を妨げない等の観点から、網状であることが好ましい。前面46a及び背面47aの素材としては、例えば1.5分程度のラッセル網を使用することができ、海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されていることが好ましい。前面46aについては、被養殖対象物の厚み方向の生育を妨げず、かつ、被養殖対象物の摂餌のための開口を妨げない観点から、伸縮性のある素材であることが好ましい。
図11(a)及び(b)に示す小袋25aの左側面48a及び右側面49aの構造及び形状は、第1実施形態に係る養殖篭の複数の小袋21a等と同様に、被養殖対象物を傷つけず、かつ、被養殖対象物の摂餌を妨げない等の観点から、網状であってもよい。一方で、被養殖対象物を傷つけず、かつ、被養殖対象物の摂餌を妨げず、製作コストを低く抑えられる等の観点からは、図11(a)及び(b)に示すように、左側面48a及び右側面49aは縫い糸であることがより好ましい。図11(b)に示すように、小袋25aの下部から上部に向かう程、末広がりとなった構造となるように、小袋25aの下部から上部に向かう程、縫い糸の長さをより長くしていき、前枠63aと背枠64aを縫い合わせてもよい。
変形例に係る養殖篭の小袋においては、小袋25aの前面46a、背面47a、左側面48a及び右側面49aの4つの面により囲まれた空間を「対象収容空間」と定義する。ホタテ貝等の被養殖対象物を収納する対象収容空間の形成のためには、向かい合せの前枠63a及び背枠64aの外側を覆うように網が一様に張られていてもよい。即ち、第1実施形態に係る養殖篭の複数の小袋21a等と同様、前面46a、背面47a、左側面48a及び右側面49aの4つの面のうちの任意の2つ以上の面が1枚の網から成るものでもよい。例えば、前面46a、背面47a、左側面48a及び右側面49aが1枚の網から成るものでもよいし、前面46a及び背面47aが1枚の網から成るものでもよい。前面46a、背面47a、左側面48a及び右側面49aの4つの面の任意の2つの面を、前枠63a及び背枠64aを介さずに直接的に結合させる場合は、縫い合わせによる結合方法でもよいし、接着剤等の薬剤による結合方法等でもいずれでもよい
又、前面46aと背面47aが直接接触する程度に、前枠63aと背枠64aの互いの右辺及び左辺が縫い合わせられて、変形例に係る小袋25aが形成されていてもよい。この場合、第1実施形態に係る養殖篭の複数の小袋21a等が有するような両側面及び底面に相当する面が存在せず、前面と背面との2枚合わせから成る小袋となる。この場合は、前枠63aの素材は、被養殖対象物の厚み方向の生育を妨げず、かつ、被養殖対象物の摂餌のための開口を妨げない観点から、伸縮性のあるロープであることが好ましい。前面46aの素材についても同様の観点で、伸縮性のある網状素材が好ましい。被養殖対象物を収容していない場合は、小袋25aの上部を広げない限り、開口部や対象収容空間は現れないことなる。
図12に示すように、小袋25aの右側に隣接する小袋は、小袋25aと同様、前面46b及び背面47bを有し、上部は開口部である。図12においては、小袋25aの右側面49aは、小袋25aの右側に隣接する小袋の左側面を兼ねている。又、小袋25aの前枠63a及び背枠64aについても、小袋25aの右側に隣接する小袋の前枠及び背枠を兼ねている。即ち、図12においては、前枠63a及び背枠64aに張られた2つの面が縫い糸等で縫い合わされて通常のくさび型に近い形状になることにより、前面46a、前面46b、背面47a及び背面47bがそれぞれ形成され、小袋25aとその右側に隣接する小袋が形成されている。図示は省略するが、小袋25aの右側に隣接する小袋の更に右側にも同様の小袋が形成されていてもよく、その形成方法も、小袋25aとその右側に隣接する小袋の場合と同様であってもよい。図12における小袋25aとその右側に隣接する小袋の形成方法は一例であって、例えば、図11に示す小袋25aと同様の構造を有する複数の小袋を、互いの側面で連結するように結合させてもよい。
変形例に係る小袋25aは、第1実施形態に係る複数の小袋21a等と置換して、養殖篭を構成する一部材とすることができる。養殖ユニット内での小袋25aの配置の仕方は、第1実施形態に係る複数の小袋21a等と同様であり、例えば、小袋25aと同様の構造を有する複数の小袋を用意して養殖ユニット内に、上面から見た平面形状がマトリクス状になるように配置することが可能である。小袋25aや小袋25aと同様の構造を有する複数の小袋以外の養殖篭の部材やそれらの結合関係等についても、第1実施形態に係る養殖篭と同様である。勿論、変形例に係る小袋25aや小袋25aと同様の構造を有する複数の小袋を有する養殖篭の使用方法についても、第1実施形態に係る養殖篭と同様である。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、第1実施形態に係る養殖篭と同様に、養殖篭に揺れや振動が加えられても、イタヤガイ科に属する被養殖対象物が折り重なることがなく、互いに噛み合いが起こらないので、被養殖対象物の外套膜をはじめとした組織が傷むことがない。被養殖対象物の折り重なりが起こらないので、被養殖対象物の摂餌がスムーズに行え、生育が良好となる。被養殖対象物のプライベートスペースが確保されるので、被養殖対象物が密集することによるストレスもない。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、第1実施形態に係る養殖篭と同様に、養殖ユニットの小袋が網状であり、かつ、斜めに傾いているため、養殖篭に揺れや振動が加えられても、その衝撃を網で優しく和らげることができる。又、養殖ユニット自体が水平面から斜めに傾いた状態であれば、養殖ユニットが水平の場合よりも、養殖篭自体が海中の躍動の影響を受けにくく、養殖篭に海中の揺れや振動が伝わりにくい。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、第1実施形態に係る養殖篭と同様に、ホタテ貝の場合では、殻長約7〜8cmの半成貝の状態から、篭替えなしで2年貝、3年貝まで生育させることが可能である。通常は、ホタテ貝の2年貝や3年貝を出荷するためには、殻長約7〜8cmの半成貝の状態から数回の分散作業を行わなければならない。分散作業の度に大きさの異なる専用の篭を用意しなければならず、手間や費用がかかる。分散作業に伴う養殖篭の揺れや温度変化が被養殖対象物にとって大きなストレスとなることも見逃してはならない。変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、養殖作業の手間や費用を抑えることができ、かつ、揺れや温度変化等という被養殖対象物にとってのストレスも軽減できるのである。従来の耳吊り法と比較しても、養殖作業の手間や費用がかからない。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、第1実施形態に係る養殖篭と同様に、2年貝及び3年貝といった良質な産卵母貝を増やすことが容易となる。変形例に係る小袋を有する養殖篭を用いることで、被養殖対象物を篭替えなしで半成貝から3年貝まで比較的容易に生育させることが可能であるため、良質な産卵母貝である海中の2年貝及び3年貝の割合を増やすことができ、結果、良質な卵を増やすことが可能となるのである。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、第1実施形態に係る養殖篭と同様に、各養殖ユニットを隣接させずに離間させて配置させているため、大変潮通しがよい。更に網部分は小袋のみで、他の部分には網がないため、より潮通しが良い。養殖篭に海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施された網を用いる場合は、養殖篭に海中生物やゴミが付着しづらくなるため、より潮通しが良くなる。溶存酸素濃度が高く、栄養分も豊富な新鮮な海水が常に被養殖対象物1枚1枚に流入するため、摂餌がスムーズであり生育が良好となる。従来の丸篭を用いた場合より、より自然な状態の好適な摂餌流速を保つことが可能となる。更に、潮通しが良いため、上段の養殖ユニットから落ちた被養殖対象物の糞が下段の養殖ユニットに堆積することがない。被養殖対象物の生育に悪影響である被養殖対象物の糞を効率的に養殖篭の系外に排出することができ、被養殖対象物の生育を良好に保つことができる。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、第1実施形態に係る養殖篭と同様に、養殖篭に海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施された網を用いる場合は、養殖篭に海中生物やゴミが付着しづらくなるため、収容されている被養殖対象物の貝殻にも海中生物やゴミが付着しづらくなる。よって、出荷前に通常行われる貝殻洗浄作業(付着物除去作業)が不要となり、手間と費用を省くことができる。貝殻洗浄作業では専用装置を用いて洗浄する場合が多いが、洗浄は時間がかかり、かつ、洗浄中の振動等のストレスを被養殖対象物に与えてしまい、鮮度が落ちてしまう。変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、洗浄作業自体が不要となるため、被養殖対象物の鮮度を良好に保ったまま直ちに出荷することが可能となる。
変形例に係る小袋を有する養殖篭によれば、前枠63a及び前面46aが伸縮性素材から成るのであれば、被養殖対象物にとってよりストレスの少ない環境を形成することができる。図13に示すように、被養殖対象物100の生育に合わせて、前枠63a及び前面46aが被養殖対象物100の厚さ方向に伸びるため、被養殖対象物100に無用な圧力がかからず、被養殖対象物100へのストレスを軽減することができる。図13においては、図の分かりやすさのため、前面46a、背面47a、左側面48a及び右側面49aの網目は図示を省略している。
−−養殖システムの構成−−
本発明の第1実施形態に係る養殖システムは、図8に示すように、海面110に浮遊する第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bと、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bからそれぞれ鉛直下方に延伸された第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bを備える。第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bの下端はそれぞれ海底120に固定されアンカーの機能をなしている。
第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bのそれぞれの中間位置には第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bが固定され、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87のそれぞれの海底120からの距離は一定に維持されている。即ち、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bは互いの水平レベルが等しくなるように固定されている。第1貫通リング87aが固定された第1牽引手段91aの中間位置より上の部分は、第1浮遊体71aが自在に海面110に浮遊可能なように伸縮可能である。同様に、第2貫通リング87が固定された第2牽引手段91bの中間位置より上の部分は、第2浮遊体71bが自在に海面110に浮遊可能なように伸縮可能である。第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bにはそれぞれ巻上機が内蔵され、第1牽引手段91aの中間位置より上の部分及び第2牽引手段91bの中間位置より上の部分が、それぞれ伸縮可能なように調整されていてもよい。
第1実施形態に係る養殖システムは、更に、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bに通され、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bの内部を自在に移動できる幹綱81と、幹綱81の両端をそれぞれ接続して巻き上げる第1巻上機73a及び第2巻上機73bを備える。第1巻上機73aは第1浮遊体71aの上に搭載され、第1浮遊体71aに固定されている。一方、第2巻上機73bは第2浮遊体71bの上に搭載され、第2浮遊体71bに固定されている。幹綱81の両端には、第1巻上機73a及び第2巻上機73bで巻上げやすいように、幹綱81の水平部分より細いワイヤー等の紐状素材がそれぞれ接続されていてもよい。
幹綱81の両端が、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bを介して上方に第1巻上機73a及び第2巻上機73bによって牽引されることにより、幹綱81の水平部分は左右方向に張力を与えられるので、幹綱81の中間部分は直線状の態様を維持する。第1実施形態に係る養殖システムは、更に幹綱81の水平部分(中間部分)に吊下げられた複数の養殖篭1a、1a、・・・1a(i=正の整数)と、幹綱81の中間部分に固定された浮力調節部(75a、75b,75c、77a、77b,77b,77c、78a、78b,78b,78c)を備える。
図8に示す養殖システムの複数の養殖篭1a、1a、・・・1aのそれぞれは、図1等に示す養殖篭1と同様の構造を備え、同様な作用、効果を呈する。よって、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aのそれぞれは、第1平面を定義する第1上面支持枠、第1平面に平行に配置された第2平面を定義する第1下面支持枠を有して最上段の第1養殖ユニットを定義している。そして、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aのそれぞれの第1養殖ユニットは、第1平面の近傍に開口部を配置し第2平面の近傍に底部を配置した複数の小袋を備えている。最上段の第1養殖ユニットの下には、第2養殖ユニット、第3養殖ユニット等の複数の養殖ユニットが、図1に示したように、複数個連なっている。
図8に示す養殖システムの使用時は、海面110に浮力調節部(75a、75b,75c、77a、77b,77b,77c、78a、78b,78b,78c)の一部と第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bを浮かばせ、吊り下げている複数の養殖篭1a、1a、・・・1aの重力方向の引力に対する補助的な上昇力(浮力)を発生させている。第1浮遊体71aの上に搭載された第1巻上機73aは、第1浮遊体71aの上昇に伴い、幹綱81の左端を上方に引き上げる。第2浮遊体71bの上に搭載された第2巻上機73bは、第2浮遊体71bの上昇に伴い、幹綱81の右端を上方に引き上げる。幹綱81に対する引力の方向を決定する第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bの絶対的位置は、第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bの下端が海底120に固定されることにより、それぞれ固定されている。
即ち、浮力調節部(75a、75b,75c、77a、77b,77b,77c、78a、78b,78b,78c)による補助的な上昇力(浮力)と、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bからの張力により、幹綱81の中間部分は海中に略水平に配置される。潮の満ち引きや波の上下により第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bの鉛直方向の位置が上下するに伴い、第1巻上機73a及び第2巻上機73bは、幹綱81の両端を引っ張る力を補正する。即ち、第1実施形態に係る養殖システムは、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bの鉛直方向の位置が上下する場合であっても、幹綱81の弛緩度合を一定に保持するように幹綱81の両端に対する引力が、第1巻上機73a及び第2巻上機73bによって調整される。
図8に示す第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bはそれぞれ第1巻上機73a及び第2巻上機73b等の各種機器を搭載できればよいので、素材やサイズは問わない。発泡スチロール製でもゴム製等でもよい。
図8に示す第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bは、下端に鉄製等のアンカーを有し、アンカーからロープが延伸して第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bに接続されている。図8に示すように、海底120に固定した下端のアンカーは更にコンクリート等で覆ってもよい。第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bに内蔵された各巻上機が波力発電機を兼ね、その波力発電機に第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bのそれぞれの上端を接続させてもよい。波力発電機では、海面110の波高の上下動に連動して動作する第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bの巻上げや巻戻しにより、回転軸を回して発電してバッテリーに蓄電し、後述する底層水噴射装置(79,83)の電源供給をしてもよい。巻上機には、第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bの巻上げや巻戻しを補助するため、バネ等の弾性力を用いる機構が備わっていてもよい。第1牽引手段91a及び第2牽引手段91bの波力発電機への接続は、幹綱81へ波高の上下動由来の振動を伝えない工夫ともなる。
図8に示す第1貫通リング87aは、幹綱81の中間部分を配置させたい水深に位置させるよう、第1牽引手段91aに固定させる。第1貫通リング87aは環状のものが良いが、幹綱81が外れないのであれば深めのフック状のものでも構わない。第2貫通リング87bについても同様であり、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bが固定されるそれぞれの水平位置は同程度の水深となる。
図8に示す幹綱81は、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aを吊り下げたい位置(養殖水深)に、その中間部分を配置させる。中間部分の長さは自由に設定できるが、例えばホタテ貝の養殖であれば、作業効率と費用との観点からは50m程度がよい。幹綱81は第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bに貫通させ、幹綱81の両端は第1巻上機73a及び第2巻上機73bにそれぞれ接続させる。
図8に示す第1巻上機73a及び第2巻上機73bはそれぞれ第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bに搭載されるが、搭載箇所に指定はなく、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bの上面又は側面、内部等いずれでもよい。第1巻上機73a及び第2巻上機73bは波力発電機となっていてもよく、波浪時の波高の上下による幹綱81の上下の揺れを緩衝することができる。以下、第1巻上機73a及び第2巻上機73bは波力発電機をも兼ねる前提として説明する。第1巻上機73a及び第2巻上機73bには、幹綱81の巻上げや巻戻しを補助するため、バネ等の弾性力を用いる機構が備わっていてもよい。
図8に示す浮力調節部(75a、75b,75c、77a、77b,77b,77c、78a、78b,78b,78c)は、幹綱81に固定されている中空の第1副フロート75a、中空の主フロート75b及び中空の第2副フロート75cを備える。第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cの素材はいずれでもよいが、中空の内部に給気をする都合上、密閉性の高いゴム製の空洞容器等が好ましい。
第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cへの給気は、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bにそれぞれ搭載した空気コンプレッサーから行うことができる。空気コンプレッサーの動力は、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bに搭載した波力発電機から供給させることができる。波力発電機の他に太陽電池発電装置を第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bに搭載して併用してもよい。又は、テスラの発明した電磁波送電の技術を用いて、陸上から送電してもよい。
第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cへの給気は、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bにそれぞれ搭載した圧縮空気のボンベや液体空気のタンクから行ってもよい。第1副フロート75aには高圧給気ホース78aを介して浮子77aが固定され、主フロート75bには高圧給気ホース78b,78bを介して浮子77b,77bが固定され、第2副フロート75cには高圧給気ホース78cを介して浮子77cが固定されている。
第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cには海面110の浮子77a、77b,77b及び77cの微細な振動を吸収する弾性体が更に取り付けられていても良い。通常、浮力調節部(75a、75b,75c、77a、77b,77b,77c、78a、78b,78b,78c)のうちで海面110に露出しているのは、浮子77a、77b,77b及び77cのみである。第1副フロート75a、主フロート75b、第2副フロート75c、高圧給気ホース78a、78b,78b及び78cは、通常の使用の状態であれば海中に配置されている。
図8に示す浮子77a、77b,77b及び77cにはそれぞれ給気コックが取り付けられ、高圧給気ホース78a、78b、78b、78cを通して第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cに給気及び脱気が可能である。給気コックを電磁バルブにして電磁バルブを無線で制御してもよい。幹綱81にかかる複数の養殖篭1a、1a、・・・1aの重量が重くなれば給気し、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aの重量が軽くなれば脱気することで、幹綱81の中間部分の下方又は上方のたわみを解消することができる。
例えば、ホタテ貝の養殖であれば、図8に示す第1副フロート75aは10m、主フロート75bは30m、第2副フロート75cは10m程度等の値を選択することができる。フロートを3つにブロック分けしているため、幹綱81のどの部分に荷重がかかってきているのかの見当がつきやすい。フロートは3つより多くのブロック分けをしていても構わない。
第1実施形態に係る養殖システムは、図8に示すように、底層水噴射装置(79,83)を更に備えてもよい。底層水とは、海洋の水底の近傍の水を指し、溶存酸素濃度が低く、相対的に低温の海水である。底層水噴射装置(79,83)は、第2浮遊体71b付近に設けられたポンプ79と、ポンプ79に上部を接続され、下部に取水口及び噴射口とを有するパイプ83と、第2浮遊体71b付近に設けられたマイナスイオン添加装置(図示省略)と、第2浮遊体71b付近に設けられた気泡発生装置(図示省略)とを備える。パイプ83の下部は、第1牽引手段91aから第2牽引手段91bにかけて、底層に近い一定の水深に横たわるように配置される。パイプ83の下部に沿わせるように、第1牽引手段91aから第2牽引手段91bにかけてチェーンが設けられ、そのチェーンにパイプ83が固定されていてもよい。パイプ83の取水口及び噴射口は、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aの下端より深くに位置し、取水口は少なくとも1カ所あればよいが、噴射口はパイプ83の下部の複数の箇所に設けられるのが好ましい。
ポンプ79の動力で取水口から汲み上げられた底層水に対して、ストレーナで不純物等の固形分が除去され、マイナスイオン添加装置及び気泡発生装置によりマイナスイオン、酸素及び窒素等が添加され、活性化底層水が調製される。マイナスイオン、酸素及び窒素等の添加順序に指定はない。活性化底層水の溶存酸素濃度は4.3mg/L以上となる。活性化底層水はパイプ83を通り、複数の噴射口から、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aより下方の海中に給水(噴射)される。取水及び給水(噴射)は、波力発電機で発電した電力で行ってもよい。
マイナスイオンとは、主に空気中の過剰電子によりイオン化した大気分子の陰イオンの俗称である。底層水噴射装置(79,83)を構成するマイナスイオン添加装置で用いられるマイナスイオンの発生方法については、大量の水を衝突させるレナード式(水破砕式)、電極間に高電圧を印加するコロナ放電式、高電圧パルスによる空気中に直接電子を放出する電子放射式、セラミックスや鉱物を利用する放射性物質利用式等、いずれでもよい。
底層水噴射装置(79,83)を構成する気泡発生装置で発生させる酸素及び窒素を含む気泡は、直径数nm〜数十μm程度の微細な気泡であれば、発生方法は問わない。
第1実施形態に係る養殖システムは、図8に示すように、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aの下方の海底120に細長いナマコ礁システム85を更に備える。図9に示すように、第1実施形態に係る養殖システム内のナマコ礁システムは、例えば、ホタテ貝等の貝殻を蛇篭に入れ、それを土台97として敷き詰めたものが設営可能である。土台97は、例えば長手方向が約50mであり、短手方向が3〜4mとすることができる。土台97の上にコンクリート製のナマコ礁95が戴置され、土台97の長手方向に沿って両側にL字ブロック93a〜a、93b〜bが設置されている。
図9に示すナマコ礁95の戴置の仕方は一例であり、ナマコ礁95は土台97の長手方向1列に戴置してもよいし、3列以上でもよい。また、ナマコ礁95は図9のように一定間隔で整列させる必要はなく、ランダムな配置であってもよい。図10に示すように、ナマコ礁95は足がつき、やや外側に開いた逆U字型のコンクリート部材であり、主に空洞部分に稚ナマコを着底させて育成できるようになっている。図10に示すナマコ礁95の構造は一例であり、ナマコ礁として機能できるものであれば他の構造のものでもよい。ナマコ礁95のコンクリートの中には、ホタテ貝等の貝殻粉末や遠赤外線を発生させる鉱物の粉末を混ぜ込んでもよい。
L字ブロック93a〜a、93b〜bは、図10に示すように、断面がL字型のコンクリートブロックである。図9に示すように、L字ブロック93a〜a、93b〜bは土台97の長手方向両側で互い違いに配置させる。L字ブロック93a〜a、93b〜bの高さは、例えば1.5m程度である。図9に示すL字ブロック93a〜a、93b〜bの数は一例であり、図9に示す以上でも以下であっても構わない。
第1実施形態に係る養殖システムには、養殖篭内の被養殖対象物の生育状況を常時観察可能な水中カメラや、養殖水深の水質を測定可能なセンサー等が更に設けられていてもよい。その場合、陸上からであっても、水中カメラやセンサー等のデータを集積でき、把握できる養殖システムとなる。
−−養殖システムの幹綱の水深管理方法(養殖方法)−−
本発明の第1実施形態に係る養殖システムによる幹綱の水深管理方法については、まず、第1巻上機73a及び第2巻上機73bの動作を解放し、第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cの浮力で幹綱81を海面110付近に浮上させる。浮力が不足していて幹綱81が浮上してこない場合は、第1副フロート75a又は主フロート75b、第2副フロート75cへの給気を行い、浮力を調節する。浮上した幹綱81へ被養殖対象物の半成貝等を収容した複数の養殖篭1a、1a、・・・1aを吊り下げ、第1巻上機73a及び第2巻上機73bを動作させ、幹綱81の両端を巻き上げる。
幹綱81の両端が、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bを介して上方に第1巻上機73a及び第2巻上機73bによって牽引されることにより、幹綱81の中間部分が沈降する。幹綱81の中間部分が水平方向の張力で直線状になり、第1貫通リング87a及び第2貫通リング87bが位置する養殖水深まで到達したら、幹綱81の巻上げを停止させ、第1巻上機73a及び第2巻上機73bを波浪時の波高による発電モードへと切り換える。適切な養殖水深は、被養殖対象物の生育特性を各海域で考慮し、各海域における被養殖対象物に固有な個別の生育特性を事前調査の上、決定するものとなる。
被養殖対象物の生育が進むと被養殖対象物の重量が大きくなり、幹綱81への荷重が大きくなる。幹綱81の中間部分の水深は、基本的に第1巻上機73a及び第2巻上機73bにより制御しているが、幹綱81への荷重が大きくなった部分は下方へたわみやすくなる。その場合には、浮子77a、77b,77b及び77cの一部又は全部が通常状態より海中に沈んでくる。その沈みを海上から観察して浮力調節部(75a、75b,75c、77a、77b,77b,77c、78a、78b,78b,78c)での制御が必要かどうかを判断する。浮子は浮子77a、77b,77b及び77c以外にも設けてもよい。浮子が多い程、幹綱81への荷重が大きくなった部分の特定が用意となり、作業効率が高まる。浮子77a、77b,77b及び77cの沈みを検知するセンサーが設けられていてもよい。
浮子77a、77b,77b及び77cのうち、沈みが認められた浮子に取り付けられている給気コックの開閉や、その開閉角を無線で電磁制御する等により、高圧給気ホース78a、78b、78b及び78cのいずれかを通して、第1浮遊体71a及び第2浮遊体71bのそれぞれに搭載された空気コンプレッサー、圧縮空気のボンベ若しくは液体空気のタンクから、第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cのいずれかに給気をする。あらかじめ自動給気システムを取り付けておき、陸上からの無線によるリモコン動作で自動給気を行ってもよい。沈みが認められた浮子が通常の状態まで浮上してきたら、給気コックからの給気を停止する。
被養殖対象物の出荷時には第1巻上機73a及び第2巻上機73bの巻上げを解放し、第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cの浮力で幹綱81を海面110付近に浮上させる。そして、複数の養殖篭1a、1a、・・・1aを引き上げて回収する。
仮に、浮子77a、77b,77b及び77cのうち、それ自体が海面110に浮いているが、接続されている高圧給気ホースまで海面110に露出している浮子がある場合、第1副フロート75a、主フロート75b及び第2副フロート75cのいずれかの浮力が大き過ぎて幹綱81の一部が上方へたわんでいる可能性がある。その場合は、異常が確認された浮子に取り付けられている給気コックからフロートの空気を脱気する。接続されている高圧給気ホースの露出がなくなったら脱気を停止する。
第1実施形態に係る養殖システムによれば、養殖篭を吊り下げる幹綱の水深管理が容易となる。幹綱の水深管理作業は被養殖対象物の養殖において極めて重要な作業である。被養殖対象物のうち、ホタテ貝は冷水性で、−2〜22℃程度で生存可能であり、適正水温は5〜18℃程度である。20℃以上で生育が停止し、22℃以上となるとへい死が起こり、死亡率が上昇する。成貝より稚貝の方が2〜4℃程度高い高温耐性があると言われ、稚貝は23℃以上で生育が停止する。
第1実施形態に係る養殖システムを用いることで、各海域ごとに、ホタテ貝が生存可能な海水温−2〜22℃となる期間が長い層の水深を見極められれば、その層に養殖篭が位置するように調節して、ホタテ貝の死亡率を下げることができる。又、第1実施形態に係る養殖システムを用いることで、各海域ごとに、ホタテ貝の適正水温である5〜18℃となる期間が長い層(適正生育環境)の水深を見極められれば、その層に養殖篭が位置するように調節して、ホタテ貝の生育を良好に保つことができる。ホタテ貝以外のイタヤガイ科の被養殖対象物に対しても、生存可能な又は適正生育可能な水深を各海域で見極めることができれば、その層に養殖篭が位置するように調節して被養殖対象物を養殖することができる。例えばホタテ貝より暖かい環境を好むイタヤ貝の養殖に対しても、第1実施形態に係る養殖システムを採用することができる。
幹綱の水深管理をするためには、図8に示す第1貫通リング87aが固定される第1牽引手段91aの中間位置と海底120の下端の間、及び第2貫通リング87bが固定される第2牽引手段91bの中間位置と海底120の下端の間にそれぞれ、水深制御装置を設けてもよい。例えば、第1牽引手段91aの中間位置と下端の間に、第1牽引手段91aの一部をなすロープを巻き取る第1ロープ長制御機構を設け、第2牽引手段91bの中間位置と下端の間に、第2牽引手段91bの一部をなすロープを巻き取る第2ロープ長制御機構を設けてもよい。
第1ロープ長制御機構と第2ロープ長制御機構を、それぞれ無線で制御して、幹綱の水深を、季節の変動や海流の変化に適合するように、最適値に制御することができる。或いは、幹綱に温度モニタを設けて、温度モニタのデータ出力に合わせて、第1牽引手段91aの中間位置と下端の間のロープの長さ、及び第2牽引手段91bの中間位置と下端の間のロープの長さを帰還制御してもよい。
又、第1実施形態に係る養殖システムによれば、海底の汚泥の舞上りや捕食による影響が少ない水深で養殖篭を管理することが容易となる。被養殖対象物は海底の汚泥やそこに潜む害虫の卵によっても生育が阻害される。害虫の卵が舞い上ると、被養殖対象物に付着して穿孔して異常貝となってしまうのである。又、養殖篭が海底に近づく程、天敵であるヒトデ等の捕食者による被養殖対象物の捕食が問題となる。第1実施形態に係る養殖システムでは、汚泥や捕食による被養殖対象物への悪影響を軽減することが可能である。
更に第1実施形態に係る養殖システムによれば、波高の上下動に合わせて幹綱の長さを微調整し、幹綱の弛緩度合を一定に保つことができるので、幹綱のたわみに起因する揺れや振動が発生しにくい。
更に第1実施形態に係る養殖システムによれば、幹綱の浮力調節作業が従来作業より大幅に軽減される。従来法では、例えばホタテ貝の養殖においては、養殖開始から一定期間経過後に、幹綱に一定間隔で浮きを一つずつ付けていかなければならない。幹綱を引き上げて手繰り寄せ、幹綱伝いに少しずつ船を移動させながら、作業者が船縁から身を乗り出して、中腰の不安定な姿勢で幹綱に浮きを固縛する。この危険な作業は通常は、海面の温度が相対的に低い夜間に行われる。
第1実施形態に係る養殖システムを用いることで、浮力調節作業が幹綱を引き上げることなく行え、従来法より手間がかからず安全である。又、従来法では、一時的にではあるが浮きを付ける時に被養殖対象物の周囲の水温上昇があるし、養殖篭に揺れや振動を生じさせてしまい、被養殖対象物のストレスの原因ともなる。第1実施形態に係る養殖システムでは、被養殖対象物の周囲の水温変化を起こさず、養殖篭へ揺れや振動を与えることはない。
更に第1実施形態に係る養殖システムによれば、底層水噴射装置により、底層の水質改善を行うことができる。一般的に水深が深くなり底層に近くなる程、溶存酸素量(DO)は低下する。底層に貧酸素水塊が滞留するためである。溶存酸素量の低下は被養殖対象物のへい死の一因となることが知られている。底層水噴射装置により、貧酸素である底層水に酸素が添加され、溶存酸素量が十分となった活性化底層水が底層に戻されるため、水質が改善し、被養殖対象物の生育が良好となる。又、同時にマイナスイオンも導入されるため、栄養状態も改善された底層水となり、更に被養殖対象物の生育が良好となる。
更に第1実施形態に係る養殖システムによれば、ナマコ礁システムにより、底層の水質改善を図ることができる。ナマコは海底の汚泥や被養殖対象物の糞を処理し、水質改善に寄与する。又、ナマコ礁システムの土台にホタテ貝等の貝殻を用いることで、汚泥の舞い上り自体を防止することができる。更に、L字ブロックにより、海底の潮流の上昇流を発生させ、低温海水を養殖篭が位置する水深に上昇させ、水温を下げることができる。更に、L字ブロックにより、潮流が速くても稚ナマコに直接当たらないようにでき、稚ナマコの着底を促進することができる。
第1実施形態に係る養殖システムによれば、2年貝及び3年貝といった良質な産卵母貝を増やすことが容易となる。第1実施形態に係る養殖システムを用いることで、被養殖対象物を篭替えなしで半成貝から3年貝まで比較的容易に生育させることが可能であるため、良質な産卵母貝である海中の2年貝及び3年貝の割合を増やすことができ、結果、良質な卵を増やすことが可能となるのである。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る養殖システムにおいては、被養殖対象物の生育段階に応じて、幹綱81の水平部分に、稚貝の採苗器や図14に示すような稚貝養殖篭2等を吊下げることができることを説明する。採苗器は、4〜5月頃に被養殖対象物の幼生を採取するため、図8に示す養殖篭1a、1a、・・・1aと同様の要領で幹綱81の水平部分に吊下げることが可能である。図14に示す稚貝養殖篭2は、5〜6月頃に、採苗器で採取された稚貝を収容し、養殖篭1a、1a、・・・1aと同様の要領で幹綱81の水平部分に吊下げる。殻長2〜3cm程度に生育した稚貝は、その年の9月頃に、図14に示すような稚貝養殖篭2と同様の構造であり、より網目の大きな稚貝養殖篭にて分散配置されて育成される。翌年の4月頃に、殻長7〜8cm程度に成長した半成貝を得ることができる。
図14に示すように、第2実施形態に係る稚貝養殖篭2は、例えば第1稚貝養殖ユニット12a、第1稚貝養殖ユニット12aの下の第2稚貝養殖ユニット12b及び第2稚貝養殖ユニット12bの下の第3稚貝養殖ユニット12cを備える。稚貝養殖篭2は更に、図14に示すように、第1稚貝養殖ユニット12a、第2稚貝養殖ユニット12b及び第3稚貝養殖ユニット12cの中心部分を縦貫する中心ロープ6と、第1稚貝養殖ユニット12a、第2稚貝養殖ユニット12b及び第3稚貝養殖ユニット12cの側面に固定された複数の吊下げロープ4a、4b、4c、4dを備える。更に、中心ロープ6及び複数の吊下げロープ4a、4b、4c、4dをまとめて固定する環状の吊下げ部10及び錘8を備える。中心ロープ6及び複数の吊下げロープ4a、4b、4c、4dには、海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されていることが好ましい。
最上段の第1稚貝養殖ユニット12aを例にとり、第2実施形態に係る稚貝養殖ユニットの構造を説明する。第2実施形態に係る稚貝養殖ユニットは、図15(a)及び(b)に示すように、円錐状の蓋網13a、蓋網13aに連続する曲面をなす側網14a、側網14aに連続し、蓋網13aに対向する円形の底網19aを備える。図15(a)に示すように、蓋網13aは第1稚貝養殖ユニット12aの蓋として機能し、一部に開口部15aと、開口部15aを塞ぐようにからめ縫いされた縫い糸16aを有する。蓋網13aの裏側には、補強のために法面に沿うように針金等が固定されていてもよい。図15(a)に示す蓋網13aの円錐状の頂点から図15(b)に示す底網19aの中心にかけて中心ロープ6が縦貫する。蓋網13a、側網14a及び底網19aはいずれも網状素材であり、海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されている。例えば、1分の網目のラッセル網を用いることができる。なお、図15(b)においては図の分かりやすさのため、側網14a及び底網19aの網目構造は図示を省略している。
更に、図15(b)に示すように、第2実施形態に係る第1稚貝養殖ユニット12aの内部において、底網19aの円周かつ側網14aの下端に沿うように環状の下側支持枠17aが固定され、側網14aの上端に沿うように環状の上側支持枠17aが固定されている。下側支持枠17aは第1稚貝養殖ユニット12aを支持するために必要であるが、上側支持枠17aは必ずしも必要ではない。
第2実施形態に係る稚貝養殖ユニットでは、底網19aと側網14aとで囲まれた円柱形空間を「養殖室」と定義する。第1稚貝養殖ユニット12aは更に、養殖室を放射状に4等分するように、十字型の仕切網(仕切)18aが底網19a及び側網14aに接続されている。第2実施形態に係る稚貝養殖ユニットの養殖室は、仕切網18aにより4つの「稚貝戴置空間」に分割される。仕切網18aの十字型の4つの端部は、稚貝戴置空間に稚貝を収容した際の強度の観点からは、側網14aを挟んで、複数の吊下げロープ4a、4b、4c、4dに固定されていることが好ましい。又、仕切網18aの下端に沿うように、針金等で十字型に下側支持枠17aが補強されていることが好ましい。養殖室は仕切網により放射状に3等分されていてもよい。
仕切網18aの十字型の交差部分には中心ロープ6が固定されている。仕切網18aについても、蓋網13a等と同様、網状素材であり、海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されている。例えば、1分の網目のラッセル網を用いることができる。なお、図15(b)においては図の分かりやすさのため、仕切網18aの網目構造は図示を省略している。
例えば、蓋網13aの高さは20cm程度、側網14aの高さは10cm程度、底網の直径は60cm程度に設定することができる。この場合、採苗直後の稚貝であれば、生育後のサイズから見積もると、各稚貝戴置空間の稚貝の収容枚数は50枚程度であり、各稚貝養殖ユニット当たり200枚程度収容することが可能である。仮に稚貝養殖ユニットを10段設けた場合、各稚貝養殖篭当たり2000枚の稚貝を収容することが可能である。
図14に示すように、第1稚貝養殖ユニット12a、第2稚貝養殖ユニット12b及び第3稚貝養殖ユニット12cの各底面はそれぞれ水平である。各稚貝養殖ユニット間は一定の間隔で離間しており、例えば第1稚貝養殖ユニット12aの底面と第2稚貝養殖ユニット12bの頂点との距離は5cm程度に設定することができる。他の稚貝養殖ユニット間であっても同様である。
採苗直後の稚貝を収容する際は、図15(a)に示す第1稚貝養殖ユニット12aにおいて、縫い糸16aを開口部15aから解き、開口部15aから内部の各稚貝戴置空間に収容する。図15(b)に示す仕切網18aは蓋網13aには接続されていないため、ひとつの開口部15aから4つの稚貝戴置空間に稚貝を収容することは容易である。稚貝は4つの稚貝戴置空間にそれぞれほぼ同数ずつ収容する。収容後は縫い糸16aにより、再び開口部15aを塞ぐ。稚貝養殖ユニットの各段で同様の収容作業を行った稚貝養殖篭2は、図8の養殖篭1a、1a、・・・1aと同様の要領で幹綱81の水平部分に吊下げられ、殻長2〜3cm程度にまで稚貝を生育させる。
殻長2〜3cm程度の稚貝から殻長7〜8cm程度の半成貝に生育させるためには、例えば、図14に示す稚貝養殖篭2と同様の構造を有し、より網目の大きな稚貝養殖篭を用いることができる。より網目の大きな稚貝養殖篭に用いる網としては、例えば3分のラッセル網を用いることができる。稚貝養殖篭2と同様の収容作業を殻長2〜3cm程度の稚貝に対して行った後、図8の養殖篭1a、1a、・・・1aと同様の要領で幹綱81の水平部分に吊下げられ、殻長7〜8cm程度にまで稚貝を生育させ、半成貝を得ることができる。殻長2〜3cm程度の稚貝は、生育後のサイズから見積もると、例えば稚貝養殖篭2と同程度のサイズの稚貝養殖篭であれば、各稚貝戴置空間に8〜12枚程度収容することが可能である。各稚貝養殖ユニット当たり32〜48枚程度収容することが可能である。仮に稚貝養殖ユニットを10段設けた場合、各稚貝養殖篭当たり320〜480枚の稚貝を収容することが可能である。
第2実施形態に係る稚貝養殖篭によれば、稚貝養殖篭に揺れや振動が加えられても、イタヤガイ科に属する被養殖対象物の稚貝が折り重なることが少なく、互いに噛み合いが起こらないので、被養殖対象物の稚貝の外套膜をはじめとした組織が傷むことがない。従来方法の稚貝養殖篭は、角型のいわゆるパールネットが用いられることが多く、中心を通るロープから振動が伝わり、中心から離れた四隅のいずれかに被養殖対象物の稚貝が偏りがちであることが知られている。一度稚貝が偏ると稚貝養殖ユニットは傾いてしまうため、自然に偏りを解消することが難しい。
第2実施形態に係る稚貝養殖篭によれば、仕切網が設けられていること、底網が円形であること及び各稚貝養殖ユニットを垂直方向に接続する複数の吊下げロープがあることにより、被養殖対象物の稚貝の折り重なりが起こりづらい。仕切網があることにより、重量の偏りが起こりにくく、底網が円形であることにより、底網の円周付近に偏ったとしてもその偏りが比較的解消しやすい。更に、複数の吊下げロープにより、各稚貝養殖ユニットは水平を保つことが容易なのである。そのため、被養殖対象物の稚貝の摂餌がスムーズに行え、生育が良好となる。被養殖対象物の稚貝のプライベートスペースが確保されるので、被養殖対象物の稚貝が密集することによるストレスも少ない。
第2実施形態に係る稚貝養殖篭によれば、各稚貝養殖ユニットを隣接させずに離間させて配置させて、かつ、稚貝養殖篭に海中生物及びゴミの付着を抑制する撥水性の防汚被膜が施されているため、大変潮通しがよい。溶存酸素濃度が高く、栄養分も豊富な新鮮な海水が常に被養殖対象物の稚貝1枚1枚に流入するため、摂餌がスムーズであり生育が良好となる。従来の連段のパールネット(角型)や丸篭を用いた場合より、より自然な状態の好適な摂餌流速を保つことが可能となる。更に、潮通しが良いため、上段の稚貝養殖ユニットから落ちた被養殖対象物の稚貝の糞が下段の稚貝養殖ユニットに堆積することがない。被養殖対象物の稚貝の生育に悪影響である被養殖対象物の稚貝の糞を効率的に稚貝養殖篭の系外に排出することができ、被養殖対象物の稚貝の生育を良好に保つことができる。
第2実施形態の変形例に係る稚貝養殖篭として、図16に示すように、パールネットタイプの稚貝養殖篭2aも用いることができる。稚貝養殖篭2と異なる点は各稚貝養殖ユニットの形状である。図14に示す稚貝養殖篭2の各稚貝養殖ユニット12a、12b、12cが円錐と円柱を上下に組み合わせた形状であるのに対し、図16に示す稚貝養殖篭2aの各稚貝養殖ユニット20a、20b、20cは角錐と直方体を上下に組み合わせた形状である。各稚貝養殖ユニット以外の部材、部材間の結合、稚貝養殖篭の使用方法等はすべて、稚貝養殖篭2と同様であるため説明を省略する。変形例に係る稚貝養殖篭2aにおいても、図示は省略するが、各稚貝養殖ユニット20a、20b、20cの内部に十字型の仕切網が設けられている。
第2実施形態の変形例に係る稚貝養殖篭によれば、稚貝養殖篭に揺れや振動が加えられても、収容された被養殖対象物の稚貝が折り重なることが少なく、互いに噛み合いが起こらないので、被養殖対象物の稚貝の外套膜をはじめとした組織が傷むことがない。仕切網が設けられていること及び各稚貝養殖ユニットを垂直方向に接続する複数の吊下げロープがあることにより、被養殖対象物の稚貝の折り重なりが起こりづらい。仕切網があることにより、重量の偏りが起こりにくく、複数の吊下げロープにより、各稚貝養殖ユニットは水平を保つことが容易なのである。そのため、被養殖対象物の稚貝の摂餌がスムーズに行え、生育が良好となる。被養殖対象物の稚貝のプライベートスペースが確保されるので、被養殖対象物の稚貝が密集することによるストレスも少ない。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、図1等に示した第1実施形態の養殖篭1の第1上面支持枠31a及び第1下面支持枠31bは長方形であるが、正方形であってもよいし、三角形等の他の多角形とすることも可能である。三角形の場合は例えば支柱は3本であり、3本のうちの1本に接続された吊下げ縄を短く設定することで、各養殖ユニット11a,11b,11c,11dの傾きを形成することができるのである。
第1実施形態の養殖篭では、各養殖ユニット11a,11b,11c,11dの小袋は16個ずつであったが、小袋の数は一例であり、各養殖ユニット11a,11b,11c,11dの小袋の数の変更は自在に可能である。例えばホタテ貝の養殖においては、半成貝の出荷用であれば、2年貝や3年貝の出荷用より小袋の大きさは小さくて済むので、各養殖ユニット11a,11b,11c,11dの小袋を20個ずつにする等の応用が可能である。
一方、例えば、第2実施形態では、図15(b)に示したような養殖室を放射状に4等分する仕切が設けられた稚貝養殖ユニットの構造を例示したが、4等分に限定されるものではない。より一般的には、nを3以上の正の整数として、養殖室を放射状にn等分する仕切が設けられた構造でもよい。稚貝養殖ユニットをn等分した場合は、仕切により区切られたn個の稚貝戴置空間のそれぞれに、稚貝が略同数ずつ収容される。
このように、本発明は上記の第1及び第2実施形態では記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
1 養殖篭
2、2a 稚貝養殖篭
3a、3b、3c、3d 吊下げ縄
4a、4b、4c、4d 吊下げロープ
5a、5b、5c、5d 錘下げ縄
6 中心ロープ
7、8 錘
9、10 吊下げ部
11a、11b、11c、11d 養殖ユニット
12a、12b、12c、20a、20b、20c 稚貝養殖ユニット
13a 蓋網
14a 側網
15a 開口部
16a 縫い糸
17a 下側支持枠
17a 上側支持枠
18a 仕切網
19a 底網
21a〜d、21a〜d、21a〜d、21a〜d、22a〜d、23a〜d、24a〜d、25a 小袋
31a〜a 上面支持枠
31b〜b 下面支持枠
33a、33b、33d 支柱
35a 補助支柱
41a、b、46a、b 前面
42a、b、47a、b 背面
43a、b、48a 左側面
44a、b、49a 右側面
45a、b 底面
51a 補助枠
61a、b、63a 前枠
62a、b、64a 背枠
71a 第1浮遊体
71b 第2浮遊体
73a 第1巻上機
73b 第2巻上機
75a 第1副フロート
75b 主フロート
75c 第2副フロート
77a、77b、77b、77c 浮子
78a、78b、78b、78c 高圧給気ホース
79 ポンプ
81 幹綱
83 パイプ
85 ナマコ礁システム
87a 第1貫通リング
87b 第2貫通リング
91a 第1牽引手段
91b 第2牽引手段
93a〜a、93b〜b L字ブロック
95 ナマコ礁
97 土台
100、101、102、103、104、105、106、107 被養殖対象物
110 海面
120 海底

Claims (17)

  1. 上面支持枠と、
    前記上面支持枠に対向し、前記上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠と、
    扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、前記上面支持枠の内部に前記2面の上部が配置され、前記下面支持枠が定義する平面の近傍に前記2面の下部が配置され、それぞれ前記被養殖対象物を、前記被養殖対象物の蝶つがい部分を前記下部側に向けて1枚ずつ収納する複数の小袋と、
    を備える構造を養殖ユニットとし、該養殖ユニットを用いてイタヤガイ科に属する前記被養殖対象物を養殖することを特徴とする養殖篭。
  2. 前記養殖ユニットが上下に複数個連ねて配置されることを特徴とする請求項1に記載の養殖篭。
  3. 前記2面のうち少なくとも一方が、前記上面支持枠が定義する平面と垂直ではないことを特徴とする請求項2に記載の養殖篭。
  4. 前記複数の小袋の開口部の奥行きが、前記複数の小袋の底部の奥行きより長いことを特徴とする請求項3に記載の養殖篭。
  5. 複数個の前記養殖ユニットの周辺をそれぞれ結合するように、前記養殖ユニットのそれぞれに固定された複数の支柱と、
    前記複数の支柱のそれぞれの上部に接続された複数の吊下げ縄と、
    前記複数の吊下げ縄をまとめて固定する環状の吊下げ部と、
    を更に備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の養殖篭。
  6. 前記複数の吊下げ縄のうち少なくとも1つの吊下げ縄が、他の吊下げ縄より短く、
    前記吊下げ部により前記養殖篭を海中に吊下げた時に、前記上面支持枠が定義する平面が水平面に対して傾いていることを特徴とする請求項5に記載の養殖篭。
  7. 海中に位置し、中間部分が海面に平行に張られた幹綱と、
    前記中間部分に吊下げられる複数の養殖篭と
    を備え、複数の養殖篭のそれぞれが、上面支持枠、前記上面支持枠に対向し前記上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠、扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、前記上面支持枠の内部に前記2面の上部が配置され、前記下面支持枠が定義する平面の近傍に前記2面の下部が配置され、それぞれ前記被養殖対象物を収納する複数の小袋を有した養殖ユニットを構成し、該養殖ユニットを用いてイタヤガイ科に属する前記被養殖対象物を養殖することを特徴とする養殖システム。
  8. 前記複数の養殖篭のそれぞれが、前記養殖ユニットを上下に複数個連ねて構成されていることを特徴とする請求項7に記載の養殖システム。
  9. 海面に浮遊する第1及び第2浮遊体と、
    前記第1及び第2浮遊体にそれぞれ搭載された第1及び第2巻上機と、
    前記第1及び第2浮遊体にそれぞれの一方の端部を接続し、前記第1及び第2浮遊体からそれぞれ鉛直下方に延伸して、それぞれの他方の端部を海底に固定した第1及び第2牽引手段と、
    前記第1及び第2牽引手段のそれぞれの中間位置に、互いの水平レベルが等しくなるように固定される第1及び第2貫通リングと、
    を更に備え、前記幹綱が前記第1及び第2貫通リングの内部を貫通し、両端が前記第1及び第2巻上機から牽引されて、前記中央部分が海面に平行に張られることを特徴とする請求項7又は8に記載の養殖システム。
  10. 前記幹綱に固定された浮力調節部を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の養殖システム。
  11. 前記海面の上下動により前記第1及び第2浮遊体の鉛直方向の位置が上下動する場合に、前記第1及び第2巻上機により前記幹綱の弛緩度合を一定に保持することを特徴とする請求項9又は10に記載の養殖システム。
  12. 前記第2浮遊体に取り付けられたポンプと、
    上部を前記ポンプに接続され、下部を前記複数の養殖篭の下方に配置されたパイプと、
    を更に備え、前記下部から汲み上げられた底層水に、酸素及びマイナスイオンを含む微細な気泡が混合されて活性化底層水が調製され、前記活性化底層水が前記下部から海中に給水されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の養殖システム。
  13. 前記中間部分の下方の海底に敷設されたナマコ礁を更に備える請求項7〜12のいずれか1項に記載の養殖システム。
  14. 扁平な被養殖対象物を両側から挟む2面を有し、上面支持枠の内部に前記2面の上部が配置され、前記上面支持枠に対向し前記上面支持枠が定義する平面に平行に配置された下面支持枠が定義する平面の近傍に前記2面の下部を配置された複数の小袋に、前記被養殖対象物の蝶つがい部分を前記下部側に向けて、前記被養殖対象物を1枚ずつ収容するステップと、
    前記上面支持枠、前記下面支持枠及び前記複数の小袋を備える養殖ユニットを海中に吊下げるステップと、
    を含み、イタヤガイ科に属する前記被養殖対象物を養殖することを特徴とする養殖方法。
  15. 前記被養殖対象物を1枚ずつ収容するステップは、前記複数の小袋をそれぞれ備える複数の養殖ユニットに対して、それぞれ実施する段階を含み、
    前記養殖ユニットを海中に吊下げるステップは、前記複数の養殖ユニットが上下に連ねて配置された養殖篭を海中に吊下げる段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の養殖方法。
  16. 前記被養殖対象物を1枚ずつ収容するステップの前に、
    nを3以上の正の整数とし、養殖室を放射状にn等分する仕切が設けられた稚貝養殖ユニットを用意し、殻長7cm未満の前記被養殖対象物の稚貝の複数個を、前記仕切により区切られたn個の稚貝戴置空間のそれぞれに収容して、前記n個の稚貝戴置空間の重量バランスを維持するステップと、
    前記稚貝養殖ユニットが上下に複数個連ねて配置された稚貝養殖篭を海中に吊下げるステップと、
    前記稚貝養殖篭により前記稚貝を殻長7〜8cm程度の半成貝まで生育させるステップと
    を更に含み、前記稚貝が前記半成貝まで生育した後、前記複数の小袋に前記半成貝を収容し、前記半成貝を殻長12cm以上に生育させることを特徴とする請求項14又は15に記載の養殖方法。
  17. 前記養殖室が円柱形であることを特徴とする請求項16に記載の養殖方法。
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