JPH0657426A - ダイヤモンド切削工具およびその製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド切削工具およびその製造方法

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JPH0657426A
JPH0657426A JP21030692A JP21030692A JPH0657426A JP H0657426 A JPH0657426 A JP H0657426A JP 21030692 A JP21030692 A JP 21030692A JP 21030692 A JP21030692 A JP 21030692A JP H0657426 A JPH0657426 A JP H0657426A
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JP
Japan
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diamond
face
cutting edge
tool
plane
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Withdrawn
Application number
JP21030692A
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English (en)
Inventor
Keiichiro Tanabe
敬一朗 田辺
Akihiko Ikegaya
明彦 池ケ谷
Toshiya Takahashi
利也 高橋
Naoharu Fujimori
直治 藤森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 より耐摩耗性の優れたダイヤモンド切削工具
を提供する。 【構成】 気相合成されたダイヤモンド素材で刃先22
を構成するダイヤモンド切削工具において、刃先22の
逃げ面27を構成する主要なダイヤモンド結晶面が(1
11)面であることを特徴とするダイヤモンド切削工
具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイヤモンド切削工具
に関し、特に気相合成により形成されるダイヤモンドを
刃先に用い、耐摩耗性、耐熱性および耐欠損性に優れた
切削工具ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは硬度および熱伝導率が高
いため、難削材の切削加工用工具材料として特に有用で
ある。
【0003】工具材料として使用されるダイヤモンド
は、単結晶のものと多結晶のものに分けられる。単結晶
ダイヤモンドは、その物理的特性において優れた材料で
あるが、非常に高価であるうえに、工具材料として所望
する形状に加工することは容易でなく、しかも劈開する
という欠点を有している。
【0004】一方、工具材料としての多結晶ダイヤモン
ドは、2種類に大別することができる。その1つは、微
細なダイヤモンド粉末をCoなどの鉄族金属とダイヤモ
ンドが安定な超高圧、高温下で焼結することにより得ら
れる焼結ダイヤモンドである。このような焼結技術は、
たとえば、特公昭52−12126号公報に記載されて
いる。
【0005】市販とされている焼結ダイヤモンドのう
ち、特に粒径が数10μm以下の粒径のものは、上記の
単結晶ダイヤモンドに見られるような劈開現象が生じる
ことなく、優れた耐摩耗性を有することが知られてい
る。
【0006】しかしながら、焼結ダイヤモンドは、数%
〜数10%の結合材を含有するため、焼結体を構成する
ダイヤモンド粒子が切削時に脱落して、ダイヤモンドの
刃先が欠けることがあった。この脱落現象は、工具刃先
のくさび角が小さくなるほど顕著になるので、焼結ダイ
ヤモンド製の鋭利な刃先を長持ちさせることは困難であ
った。さらに、焼結ダイヤモンドは結合材を含むため、
単結晶よりも耐熱性に劣り、切削時の摩耗が進行しやす
かった。
【0007】これに対し、もう1つの切削工具用多結晶
ダイヤモンドである気相合成ダイヤモンドは、緻密でし
かもダイヤモンドのみからなるため、焼結ダイヤモンド
に比べて耐熱性および耐摩耗性により優れ、しかも欠損
が生じにくいものである。このような気相合成ダイヤモ
ンドは、一般に、メタン等の炭化水素と水素を主成分と
する原料ガスを低圧下で分解・励起させる化学蒸着(C
VD)によって作成されている。
【0008】気相合成ダイヤモンドを用いた切削工具と
して、たとえば、工具基体上に直接ダイヤモンドを被覆
したダイヤモンドコーティング工具が開発されている。
しかし、ダイヤモンドコーティング工具の場合、工具基
体とダイヤモンド薄膜の密着性が重要であり、たとえ
ば、超硬合金上にダイヤモンド薄膜を形成した工具で
は、切削加工中にダイヤモンド薄膜が剥離するという傾
向があった。
【0009】また、気相合成ダイヤモンドを別途製作
し、これを刃先として用いるダイヤモンド切削工具の開
発も行なわれている。たとえば、特開平1−15322
8号公報は、基板上にダイヤモンド膜を析出させ、析出
基板を着けたままダイヤモンド膜を工具基体にろう付け
した後、析出基板を除去してダイヤモンド工具を供する
技術を開示している。また、特開平1−210201号
公報には、気相合成したダイヤモンド膜を表面に有する
モリブデン等の基板を工具基体にろう付けしたダイヤモ
ンド工具が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】切削加工において、工
具逃げ面と仕上げ面との摩擦は、製品の寸法精度や仕上
げ面粗さに影響する。
【0011】工具刃先の摩耗により、刃の先端近くの逃
げ面が仕上げ面に平行となれば、仕上げ面が擦過され、
焼付きを生じたり、仕上げ面が荒らされるようになる。
したがって、工具逃げ面の耐摩耗性は、精度の高い加工
を行なう上で重要である。
【0012】本発明の目的は、上述したダイヤモンド切
削工具において、耐摩耗性に優れ、精度の高い加工を行
なうことができる工具を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】第1の発明に従うダイヤ
モンド切削工具は、気相合成されたダイヤモンド素材で
刃先を構成する切削工具において、刃先の逃げ面を構成
する主要なダイヤモンド結晶面が(111)面であるこ
とを特徴とする。
【0014】第1の発明に従う刃先において、逃げ面か
ら少なくとも20μmの深さまでは、(111)面が主
要面として逃げ面になるべく平行に配向していることが
望ましい。
【0015】逃げ面およびその付近(たとえば、逃げ面
から20μmの深さまで)において、(111)面以外
の結晶面の混入は、できる限り抑えることが好ましく、
たとえば、X線回折による(111)面の強度を100
としたとき、(220)面、(311)面、(400)
面および(331面)の強度は各々80以下が好まし
く、10以下がより好ましい。
【0016】また、第1の発明に従う刃先において、
(111)面の配向性の指標として、逃げ面からX線を
入射して得られる(111)面のロッキングカーブのF
WHM(Full Width at Half Ma
ximum Intensity)が20°以内である
ことがより好ましい。また、(220)面のロッキング
カーブのFWHMは20°以上あることが好ましい。
【0017】さらに、第1の発明において、逃げ面の面
粗さRmax は、10μm以下であることが望ましく、す
くい面の面粗さRmax は0.5μm以下であることが望
ましい。
【0018】また、第1の発明に従うダイヤモンド切削
工具を製造するための方法を提供することができる。
【0019】第2の発明に従うダイヤモンド切削工具の
製造方法は、ダイヤモンドを堆積させるべき面を有する
基材を準備する工程と、上記面に対して斜めに(11
1)面が配向するよう気相合成により上記面上にダイヤ
モンドを堆積させる工程と、ダイヤモンドが堆積されて
いる基材を分離または除去してダイヤモンド材を得る工
程と、ダイヤモンド材で基材に接触していた面側を刃先
のすくい面側としてダイヤモンド材を工具基体にろう付
けする工程と、刃先処理を施して(111)面を刃先の
逃げ面に出す工程とを備える。
【0020】第3の発明に従うダイヤモンド切削工具の
製造方法は、ダイヤモンドを堆積させるべき面を有する
基材を準備する工程と、上記面に対して平行に(11
1)面が配向するよう気相合成により上記面上にダイヤ
モンドを堆積させる工程と、ダイヤモンドが堆積されて
いる基材を分離または除去して刃先としてのダイヤモン
ド材を得る工程と、ダイヤモンド材で基材に接触してい
た面側を刃先の逃げ面側としてダイヤモンド材を工具基
体にろう付けする工程とを備える。
【0021】第1〜第3の発明において、気相合成によ
るダイヤモンドの形成には、種々の低圧気相法が適用で
きる。たとえば、熱フィラメントやプラズマ放電を利用
して原料ガスを分解・励起させるCVD法や、燃焼炎を
用いたCVD法が有効である。
【0022】このようなCVD法に用いる原料ガスとし
ては、たとえば、メタン、エタン、プロパンなどの炭化
水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、
酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類
などの有機炭素化合物と、水素等を主成分としたガスを
用いることができる。なお、これら以外に、アルゴンな
どの不活性ガスや、酸素、一酸化炭素、水などがダイヤ
モンドの合成やその特性を阻害しない範囲で原料中に含
有されていてもよい。
【0023】第1〜第3の発明において、刃先としての
ダイヤモンド材の厚みは、たとえば20〜3000μm
が好ましい。この厚みが、20μm以下であるとダイヤ
モンドとしての剛性が不足し、3000μm以上である
とダイヤモンド材の合成にコストがかかり過ぎるように
なる。現在のところ、特にコストの点からダイヤモンド
材の厚みは3000μm以下が望ましいが、工具の機能
上必要であれば、これ以上の厚みを有するダイヤモンド
材を刃先として用いても全く支障はない。
【0024】第2および第3の発明において、(11
1)面は、上述したCVDにおいて、通常はカーボン濃
度を下げることにより形成させることができる。たとえ
ば、炭素原子を含む有機化合物と水素とを主成分とする
原料ガスを用いる場合、原料ガスにおける有機化合物の
濃度を相対的に下げることにより(111)結晶面を選
択的に形成させていくことができる。
【0025】また、(111)結晶面を選択的に形成さ
せるため、(111)結晶面が明瞭に現われたダイヤモ
ンド粒子を種結晶として用いてもよい。この場合、ダイ
ヤモンド粒子を基材上に設け、エピタキシーを利用し
て、(111)面が強く配向するダイヤモンド結晶を析
出させる。
【0026】気相合成のための基材には、たとえば、S
iおよびMo等が好ましく用いられる。このような基材
は、機械加工または化学的処理による溶解、分離等によ
ってダイヤモンドから分離または除去することができ
る。
【0027】第2および第3の発明において、ダイヤモ
ンドが形成されるべき基材の表面は、面粗さRmax が1
μm以下、好ましくは0.2μm以下となるよう鏡面仕
上げされていることが好ましい。このような鏡面仕上げ
された基材上にダイヤモンドを堆積させることで、以後
の工程により得られたダイヤモンド材において基材と接
触していた面は鏡面とすることができる。このような面
は、研磨仕上げを行なう必要がないか、必要があっても
簡単な研磨仕上げで十分であるため、すくい面または逃
げ面として有用である。
【0028】第2および第3の発明において、基材上に
堆積されたダイヤモンドは、基材の溶解除去などによっ
て基材から分離されるが、この分離に先立ってダイヤモ
ンドをレーザ等により加工してもよいし、分離後に所定
の形状にレーザ等により加工してもよい。このようにし
て得られた刃先としてのダイヤモンド材は、工具基体に
ろう付けされる。
【0029】ろう付けにあたり、ダイヤモンド材のろう
付けされるべき面には、周期律表の第IVa族、第IV
b族、第Va族、第Vb族、第VIa族、第VIb族、
第VIIa族および第VIIb族に含まれる金属ならび
にこれらの化合物のいずれかからなるメタライズ層が、
ろう付けに先立って形成されることが好ましい。ろう付
けは、このメタライズ層を介して効果的に行なうことが
できる。
【0030】一方、第2の発明において、基材面に対し
て斜めに(111)面が配向するようダイヤモンドを堆
積させるため、たとえば、ダイヤモンド合成を行なうチ
ャンバにおいて原料ガスの流れに方向性を持たせ、この
ガス流の方向に対して0°〜90°における任意の角度
で基材面を傾けて気相合成を行なえばよい。これは、ガ
ス流により結晶方位を制御することができ、ガス流の方
向に特定の方位が強く配向するようダイヤモンド結晶を
形成できるためである。
【0031】したがって、上述したようにCVDにおい
てカーボン濃度を下げた原料ガスを基材面に対して斜め
に吹き付ければ、このガス流の方向に[111]方位が
配向するようになり、ダイヤモンド結晶は立方晶型であ
るため、この方位に垂直に(111)面が配向するよう
になる。その結果、(111)面が基材面に対して斜め
に配向する。
【0032】このようにして(111)面を形成させる
場合、たとえば、基材面を水平にして原料ガスを斜めの
方向から基材面に吹き付けてもよいし、原料ガスの吹き
付け方向に対して基材面が斜めになるよう基材を傾けて
配置してもよい。
【0033】第2の発明では、0°〜90°の範囲にお
いて任意の角度で(111)面を傾けることができる
が、この傾斜角は刃先のくさび角に応じて決めることが
できる。すなわち、第2の発明においてくさび角を大き
くしたい場合、この傾斜角を大きくし、くさび角を小さ
くしてより鋭い刃先を得たい場合、この傾斜角を小さく
すればよい。
【0034】また、第2の発明では、ダイヤモンド材の
(111)面が刃先処理により露出するようになる。こ
の工程によって、刃先の逃げ面が(111)結晶面で主
として構成されるダイヤモンド切削工具を得ることがで
きる。このような刃先処理は、研削処理、レーザ処理等
により行うことができる。
【0035】一方、第3の発明において刃先としてのダ
イヤモンド材は、気相合成において基材と接触していた
ダイヤモンド面側を逃げ面側として工具基体にろう付け
される。したがって、通常、気相合成により堆積された
ダイヤモンドの断面がろう付けされるべき面となる。こ
のような断面は、基材上に堆積させたダイヤモンドをレ
ーザ等により切断することによって調製することができ
る。
【0036】
【発明の作用効果】第1の発明に従うダイヤモンド切削
工具では、刃先の逃げ面がダイヤモンドで硬度の最も高
い(111)面で占められている。したがって、刃先の
逃げ面は摩耗されにくい。このような工具は、従来より
も特に逃げ面に対して耐摩耗性に優れ、より精度の高い
加工を行なうことができるものである。
【0037】第2の発明に従う方法では、基材面上に
(111)面が傾斜して配向するようダイヤモンドが堆
積される。堆積されたダイヤモンドは、必要であれば適
当な加工が施され、基材の分離または除去により刃先と
してのダイヤモンド材となる。
【0038】このダイヤモンド材は、第2の発明に従
い、基材と接触していた面側をすくい面として工具基体
にろう付けされた後、刃先処理により(111)面が刃
先のすくい面に露出される。
【0039】このような工程によって、工具のすくい面
は、ダイヤモンド材で基材と接触していた面により構成
され、逃げ面はダイヤモンド材の(111)面により構
成される。このようにして、逃げ面が(111)面で構
成される耐摩耗性に優れたダイヤモンド切削工具を、容
易に製作することができる。
【0040】また、第2の発明において、ダイヤモンド
堆積工程における(111)面の傾斜角は、刃先のくさ
び角に相当するようになるので、この傾斜角を変えるこ
とによって、くさび角の異なる切削工具の製造に容易に
対応することができる。
【0041】第3の発明に従う方法では、基材面に対し
て平行に(111)面が配向するようダイヤモンドを堆
積させる。堆積されたダイヤモンドは、適当な加工が施
され、基材の分離または除去により刃先としてのダイヤ
モンド材となる。
【0042】このダイヤモンド材が、基材と接触してい
た面側を逃げ面として工具基体にろう付けされる結果、
工具逃げ面は、ダイヤモンドの(111)面で構成され
るようになる。このようにして、上述したように耐摩耗
性に優れた切削工具が容易に製作される。
【0043】
【実施例】
実施例1 Rmax 0.2μm以下となるよう鏡面仕上げしたSi基
材を準備した。
【0044】次に、図1に示す装置に基材を設置した。
図に示す熱フィラメントCVD装置10は、気相成長の
ための真空チャンバ11を備えており、この真空チャン
バ11の中に設けられた基材支持台12上に基材13が
載置される。なお、基材支持台12は、矢印で示された
冷却水20により冷却することができる。
【0045】また、真空チャンバ11には、チャンバ内
の排気のため、排気口14が形成され、排気された内部
の圧力は圧力計19によりモニタされる。さらに、真空
チャンバ11内には、1対の電極15、15′が設けら
れ、その間にフィラメント17が張られている。電極1
5、15′の間には、交流電圧が印加され、フィラメン
ト17は基材13上方において所定の温度に加熱され
る。
【0046】また、真空チャンバ11内にガス配管18
が引き込まれ、その端部にガスノズル18aが設けられ
ている。ガスノズル18aは、垂直方向に対してα°の
角度(ガス吹き付け角度)で傾いており、基材面13a
に対して斜めの方向から原料ガスを吹き付けるようにな
っている。
【0047】以上のように構成される装置を用い、熱電
子放射材として直径0.5mm、長さ100mmのタン
グステンフィラメントを用いた公知の熱フィラメントC
VDにより、基材支持台上に設置されたSi基材の鏡面
上に厚さ約250μmの多結晶ダイヤモンドを堆積させ
た。ダイヤモンドの堆積条件は次に示すとおりであっ
た。
【0048】原料ガス(流量):CH4 /H2 =1%、
総流量1000cc/min ガス圧力:20Torr フィラメント温度:2200℃ フィラメント−基板間距離:5mm 基板温度:920℃ 原料ガス吹き付け角度(α):60° このようにして形成されたダイヤモンドについて、Si
基材側であったダイヤモンド面から60°傾けた方向か
らX線を入射するX線回折を行なったところ、(11
1)面に対する(220)および(400)面のピーク
強度比I(220)/I(111)およびI(400)
/I(111)は各々0.1、0.02であり、(11
1)面について配向性が得られたことがわかった。
【0049】また、得られた刃先において、基材と接触
していた面から60°傾けた方向からX線を入射して、
(111)面のロッキングカーブにおけるFWHMを求
めた。その結果、FWHMは8°であった。また、(2
20)面のロッキングカーブにおけるFWHMは25°
であった。
【0050】図2を参照して、このようにSi基材26
上に多結晶ダイヤモンド28を形成させた後(図2
(a))、フッ硝酸でSi基材を溶解除去して多結晶ダ
イヤモンド28を得た(図2(b))。
【0051】次に、結晶成長の終了面に厚さ1μmでT
i、厚さ2μmでNiを順に積層してメタライズ層24
を形成した後(図2(c))、レーザ加工処理を施して
多結晶ダイヤモンドを工具に必要な大きさおよび形状に
し、刃先22を得た(図2(d))。
【0052】その後、メタライズ層が形成された面を接
合面として、超硬合金(SPG422)の台金21に銀
ろうを用いて上記刃先22をろう付けした(図2
(e))。次に、研削処理により、刃先処理を施して、
刃先のすくい面に(111)結晶面を露出させた。この
ようにして形成した刃先において、すくい面のRmax
0.2μmであり、逃げ面のRmax は5μmであった。
【0053】以上の工程によって得られた工具につい
て、その主要部を図3に示す。図3において(a)は工
具主要部の断面図、(b)はその斜視図である。超硬合
金からなる台金21の所定の領域には、ろう付け層23
およびメタライズ層24を介してダイヤモンドの刃先2
2が固定されている。このような刃先22において、逃
げ面27は(111)面で占められている。また、すく
い面25は、上述したように気相合成されたダイヤモン
ド材においてSi鏡面上に接触していた面である。
【0054】以上に述べた合成条件において、ダイヤモ
ンドの(111)面は、基材面に対してガスの吹き付け
角度(60°)に近い角度で形成される。したがって、
刃先処理により(111)面をすくい面に露出させた結
果、刃先のくさび角は60°に近い角度となっている。
このように、上述してきたような方法でダイヤモンドを
堆積させる場合、最終的に製作したい刃先のくさび角に
応じて、ガス吹き付け角度を調整すればよい。
【0055】実施例2 Si基材について面粗さRmax 0.2μm以下となるよ
う鏡面研磨加工を施した。
【0056】次に、図4に示す装置に基材を設置した。
図に示すマイクロ波プラズマCVD装置30は、気相成
長のための真空チャンバ32を備えており、この真空チ
ャンバ32の中に設けられた冷却支持台34上に基材3
5が設置される。なお、冷却支持台34は、矢印で示す
冷却水40により冷却することができる。
【0057】また、真空チャンバ32には、チャンバ内
の排気のため、排気口39が形成されている。さらに、
真空チャンバ32の上部には、1対の電極33、33′
が設けられ、これらの電極33、33′の間には電源3
6より直流電圧が印加される。このように構成される装
置において、原料ガス37は、1対の電極33、33′
の間を通り、その先端に形成されたノズル31を通じて
真空チャンバ内に噴出される。冷却支持台34は、原料
ガスの噴出方向に対してβ°の角度で傾けられており、
原料ガスは、支持台上に設置された基材面に対して約β
°の角度で吹き付けられるようになっている。
【0058】以上のように構成される装置を用い、公知
の熱プラズマCVD法により、支持台上に設置されたS
i基材の鏡面上に厚さ約250μmの多結晶ダイヤモン
ドを形成させた。ダイヤモンドの形成条件は次のとおり
である。
【0059】原料ガス(流量):CH4 /H2 =1%、
CO2 /CH4 =0.5%、総流量600cc/min ガス圧力:40Torr フィラメント温度:2150℃ フィラメント−基板間距離:7mm 基板温度:900℃ 支持台傾き角度(β):60° 引き続いて、以下の条件により、実施例1と同様の装置
を用いて熱フィラメントCVDを行ない、さらにダイヤ
モンドを堆積させた。
【0060】原料ガス(流量):C2 2 /H2 =3
%、総流量1000cc/min ガス圧力:80Torr フィラメント温度:2150℃ フィラメント−基板間距離:7mm 基板温度:960℃ 原料ガス吹き付け角度(α):60° 最初に形成されたダイヤモンドについて、Si基材側で
あったダイヤモンド面から30°傾けた方向からX線を
入射するX線回折を行なったところ、I(220)/I
(111)は0.8であり、最初のダイヤモンド形成に
おいては基材面に平行に(111)面が強く配向してい
ることがわかった。一方、後に形成させたダイヤモンド
層では、I(111)/I(220)は、0.08であ
り、基材面に平行に(220)面が強く配向しているこ
とが明らかになった。また、後で堆積させたダイヤモン
ドの厚みは約20μmであった。
【0061】Si基材上のダイヤモンドを工具に必要な
大きさおよび形状にレーザで切断した後、フッ硝酸でシ
リコン基材を溶解除去してダイヤモンドの刃先を得た。
【0062】得られたダイヤモンドの刃先において、結
晶成長の終了面に厚さ1μmでTi、厚さ2μmでNi
を順に積層した後、このメタライズ層が形成された面を
接合面とし、上記レーザ加工により形成された(11
1)面の配向性が強い面を逃げ面として、ダイヤモンド
の刃先を超硬合金(SPG422)の台金に銀ろうを用
いてろう付けした。その後、研磨仕上げおよび刃先処理
を施して、すくい面および逃げ面を調製した。
【0063】得られた工具についてその主要部を図5に
示す。超硬合金からなる台金41の所定の領域に、ろう
付け層43およびメタライズ層44を介してダイヤモン
ドの刃先42が固定されている。このような刃先42に
おいて、すくい面45は気相合成において基材に接触し
ていたダイヤモンド面から構成され、逃げ面47はその
先端から大部分がダイヤモンドの(111)結晶面で構
成されている。また、上述した合成条件では、(11
1)結晶面は基材面に対して30°に近い角度で配向す
るため、作製した工具において刃先のくさび角は30°
に近い角度となっている。
【0064】実施例3 Si基材について面粗さRmax 0.2μm以下となるよ
う鏡面研磨加工を施した。
【0065】公知のマイクロ波プラズマCVD法によ
り、以下の条件でSi鏡面上に厚さ3000μmの多結
晶ダイヤモンドを形成させた。
【0066】原料ガス(流量):C2 2 /H2 =0.
2%、総流量600cc/min ガス圧力:40Torr マイクロ波出力:450W(2.45GHz) 基板温度:900℃ 次に、Si基材上の多結晶ダイヤモンドを工具に必要な
大きさおよび形状にレーザで切断した後、フッ硝酸でS
i基材を溶解除去してダイヤモンドの刃先を得た。
【0067】得られたダイヤモンドの刃先についてX線
回折を行なった。その結果、I(220)/I(11
1)は0.6であり、I(400)/I(111)は
0.08であった。また、(111)面についてロッキ
ングカーブのFWHMは10°であり、(220)面に
ついてロッキングカーブのFWHMは21°であった。
これらの測定の結果、(111)面がSi基材に接触し
ていたダイヤモンド面に対して平行に強く配向している
ことが明らかとなった。
【0068】次に、レーザ加工により得られた刃先にお
いて、結晶成長させたダイヤモンドの断面に実施例1と
同様にしてメタライズ層を形成した後、このメタライズ
層が形成された面を接合面とし、基材に接触していた
(111)面の配向性が強いダイヤモンド面を逃げ面と
して、超硬合金(SPG422)の台金に銀ろうを用い
てろう付け接合を行なった。ろう付けの後、ダイヤモン
ドの刃先において基材に接触していた面を軽く鏡面仕上
げして逃げ面を調製し、研磨仕上げによりRmaxが0.
2μmのすくい面を調製した。
【0069】比較例 実施例1と同様の装置を用いて熱フィラメントCVD法
により、Si鏡面上に厚さ200μmの多結晶ダイヤモ
ンドを形成させた。形成条件は以下のとおりである。
【0070】原料ガス(流量):CH4 /H2 =3%、
総流量1000cc/min ガス圧力:80Torr フィラメント温度:2150℃ フィラメント−基板間距離:6mm 基板温度:920℃ 原料ガス吹き付け角度(α):60° 次に、Si基材上の多結晶ダイヤモンドを工具に必要な
大きさおよび形状にレーザで切断した後、フッ硝酸でS
i基材を溶解除去してダイヤモンドの刃先を得た。
【0071】得られたダイヤモンドの刃先について、S
i基材側であったダイヤモンド面から60°傾けた方向
からX線を入射するX線回折を行なったところ、ピーク
強度比I(111)/I(220)が0.1であり、
(220)面が強く配向していることがわかった。ま
た、(220)面のロッキングカーブによるとFWHM
は10°であった。
【0072】このようにして得られたチップを実施例1
と同様にして超硬合金の台金にろう付けした。その結
果、逃げ面が(220)面で主として構成されるダイヤ
モンド切削工具が得られた。
【0073】実施例1、実施例2、実施例3および比較
例において製作したダイヤモンド切削工具の性能を評価
するために、次に示す切削条件で切削試験(旋削)を実
施した。
【0074】被削材:A390 切削速度:800m/min 送り:0.12mm/rev 切込み:0.5mm 約30分間の連続切削試験の結果、各サンプルの最大逃
げ面摩耗幅(VB max:μm)は、実施例1サンプル:
55μm、実施例2サンプル:78μm、実施例3サン
プル:58μmであり、本発明に従う実施例では良好な
特性が示された。
【0075】一方、比較例では、1分間の連続切削試験
を行なったところで100μm以上の大きな欠損が生じ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において用いられた熱フィラメントC
VD装置の概略を示す模式図である。
【図2】実施例1において、ダイヤモンド切削工具の製
造工程を模式的に示す斜視図である。
【図3】実施例1において作製されたダイヤモンド切削
工具の概略を示す(a)断面図および(b)斜視図であ
る。
【図4】実施例2において用いられた熱プラズマCVD
装置の概略を示す模式図である。
【図5】実施例2において作製されたダイヤモンド切削
工具の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
21、41 台金 22、42 刃先 23、43 ろう付け層 24、44 メタライズ層 25、45 すくい面 27、47 逃げ面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤森 直治 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気相合成されたダイヤモンド素材で刃先
    を構成するダイヤモンド切削工具において、 前記刃先の逃げ面を構成する主要なダイヤモンド結晶面
    が(111)面であることを特徴とする、ダイヤモンド
    切削工具。
  2. 【請求項2】 気相合成されたダイヤモンド素材で刃先
    を構成するダイヤモンド切削工具の製造方法であって、 ダイヤモンドを堆積させるべき面を有する基材を準備す
    る工程と、 前記面に対して斜めに(111)面が配向するよう気相
    合成により前記面上にダイヤモンドを堆積させる工程
    と、 ダイヤモンドが堆積されている前記基材を分離または除
    去してダイヤモンド材を得る工程と、 前記ダイヤモンド材で前記基材に接触していた面側を前
    記刃先のすくい面として前記ダイヤモンド材を工具基体
    にろう付けする工程と、 刃先処理を施して前記(111)面を前記刃先の逃げ面
    に出す工程とを備える、ダイヤモンド切削工具の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 気相合成されたダイヤモンド素材で刃先
    を構成するダイヤモンド切削工具の製造方法であって、 ダイヤモンドを堆積させるべき面を有する基材を準備す
    る工程と、 前記面に対して平行に(111)面が配向するよう気相
    合成により前記面上にダイヤモンドを堆積させる工程
    と、 ダイヤモンドが堆積されている前記基材を分離または除
    去して前記刃先としてのダイヤモンド材を得る工程と、 前記ダイヤモンド材で前記基材に接触していた面側を前
    記刃先の逃げ面側として前記ダイヤモンド材を工具基体
    にろう付けする工程とを備える、ダイヤモンド切削工具
    の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014223711A (ja) * 2013-05-17 2014-12-04 勝行 戸津 ドライバービット
CN112533713A (zh) * 2018-08-06 2021-03-19 住友电工硬质合金株式会社 车削工具
KR20220166633A (ko) * 2021-06-10 2022-12-19 한국야금 주식회사 다이아몬드 코팅 절삭 공구

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