JPH065409Y2 - ガス吹込みプラグ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、多孔質耐火物を用いたガス吹込み用プラグに
関するものである。

〔従来の技術〕

従来から電気炉や転炉などの溶解・製錬炉或いは取鍋や
タンディッシュなどの受鋼容器に注入された溶銑や溶鋼
にその底部からアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス
を吹込んで溶銑や溶鋼のガス攪拌を行い、これらの製錬
反応の促進、脱ガス、温度調節及び非金属介在物の浮上
除去などを行うと共に化学冶金反応を促進させる技術は
公知である。

このガス攪拌を行う場合のガス吹込みプラグとしては、
一般に多孔質耐火物を用いるポーラスプラグが使用され
ている。以下、このガス吹込みプラグを簡単に説明する
ために、溶鋼の受鋼容器に用いられた例を取り説明して
いく。

このようにガス吹込みプラグは吹き込むガスが通過する
部分を構成する素材が多孔質耐火物であるため、１回の
受鋼処理が終了してガス吹込みを中止した時点より溶鋼
やスラグが多孔質耐火物内に浸入する。そしてこの溶鋼
やスラグが浸入した部分は、溶鋼やスラグの未浸入部分
とは熱膨張率が異なることから２回目の受鋼時に多孔質
耐火物中に大きな熱応力が発生して亀裂が発生し、剥離
と損耗とが進行するのである。しかるにこの剥離位置は
必ずしも溶鋼やスラグが浸入した深さとは一致せず、総
じて溶鋼やスラグの浸入深さよりも深い位置で剥離す
る。

また、ガスの吐出圧力によっては溶鋼やスラグが浸入し
た位置に亀裂が発生しな場合や、亀裂が発生しても剥離
しない場合があり、この状態においては次回の受鋼後に
ガスを吹き込む際に浸入した溶鋼やスラグが多孔質耐火
物の通気性を阻害することになるので、吹込みガスの吐
出不良を生じさせて操業時間の延長や操業のやり直しに
繋がることがある。

実開昭62-70158号には、ガス吹込みプラグの多孔質耐火
物の内部中央部に１回の吹込み使用により生ずる溶鋼の
浸透深さにほぼ相当する間隔で薄層状の空隙部を設け、
この空隙部を断熱層として作用させてガス吹込み時の温
度勾配をプラグ本体の中央部程大きくなるようにしてこ
の空隙部の位置で強制的に亀裂が発生するようにして上
記問題点を解決しようとする技術思想が開示されてい
る。しかしながら、このガス吹込みプラグは以下のよう
な問題点を有している。

ガス吹込みプラグの多孔質耐火物の内部中央部に所定
間隔で薄層状の空隙部を設けるためには薄層状の空隙部
を設ける位置に例えば紙や発泡スチロールなどの可燃性
物質を埋め込んでおいてこれを成形後に焼成する製造法
によるため、このような可燃性物質を所定位置に埋め込
む作業が煩雑で生産性において劣るばかりか、成形・焼
成時に薄層状の空隙部を設ける位置から亀裂が進展する
場合が多く、歩留りも非常に悪い。

多孔質耐火物内に薄層状の空隙部が形成されているた
めに、ガス吹込みプラグとして具備されるべき通気量が
一定しているという要件を満たさない。

〔考案が解決しようとする課題〕

このような特別な構造としない多孔質耐火物から成る従
来のガス吹込みプラグでは、溶鋼やスラグが浸入した深
さより深い位置から剥離損耗して損耗速度が大きく寿命
が短いという欠点や、剥離しない場合には吹込みガスの
吐出不良（難通現象）が生じるという欠点があり、また
実開昭62-70158号に開示されているガス吹込みプラグの
ように特別な構造とした多孔質耐火物から成るガス吹込
みプラグでは前述したような欠点を有しているので、本
考案はこれらの欠点を解消し、１回の溶鋼処理で多孔質
耐火物が剥離損耗する厚みとほぼ同一の間隔の位置で亀
裂を発生させて次回のガス吹込み時には必ず溶鋼やスラ
グが浸入していない面が溶鋼と接するようにすると共に
多孔質耐火物が無駄に剥離損耗することがないガス吹込
みプラグを提供することを課題とするものである。

〔課題を解決するための手段〕 本考案者らは上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、前
記実開昭62-70158号に開示されているガス吹込みプラグ
のように多孔質耐火物のみから成るガス吹込みプラグで
はガス吹込みプラグを受鋼容器の底部にセットした場合
に受鋼容器のガス吹込みプラグの取付部分とガス吹込み
プラグの周囲との間から溶鋼が漏洩し易い現象が生じな
いように、多孔質耐火物の周囲を緻密質耐火物で被覆し
た構造とし、１回の受鋼処理で多孔質耐火物が剥離損耗
する厚みとほぼ同一の間隔でノッチを多孔質耐火物の周
囲に設ければ、剥離損耗速度を制御し且つ吹込みガスの
吐出不良を防止することができることを究明して本考案
を完成した。

以下、図面により本考案に係るガス吹込みプラグについ
て詳細に説明する。

第１図は本考案に係るガス吹込みプラグの１実施例の縦
断面図、第２図は第１図に示した本考案に係るガス吹込
みプラグが受鋼容器に取り付けられている状態を示す縦
断面図、第３図は第１図に示した本考案に係るガス吹込
みプラグの受鋼毎の剥離損耗状態を説明する説明図であ
る。

図面中、１は本考案に係るガス吹込みプラグであり、例
えばAl₂O₃：90.0wt%、SiO₂：8.0wt%、その他：2.0wt%の
組成から成る多孔質耐火物２と鉄皮４との間に、例えば
Al₂O₃：85.0wt%、SiO₂：10.0wt%、その他：5.0wt%の組
成のキャスタブルから成る緻密質耐火物３が充填成形さ
れて、多孔質耐火物２の周囲が緻密質耐火物３で被覆さ
れて構造になっており、本考案においては多孔質耐火物
２の周囲に１回の受鋼処理で多孔質耐火物２が剥離損耗
する厚みｈとほぼ同一の間隔でノッチ2aが設けられてい
る。なお、このノッチ2aにも緻密質耐火物３が充填され
ている構造になっているが、完全に充填されていなくて
も差し支えない。また、５は受鋼容器底部のプラグ受煉
瓦であり、同底部の床煉瓦６に挟持され鉄皮７の開口部
７ａ上に配置される。このノッチ2aはその断面形状にお
いて多孔質耐火物２の最も内部側に位置する部分が応力
集中係数の大きな形状であることがその応力集中係数の
大きな部分から亀裂が発生し易いために、多孔質耐火物
２の周囲側が広く多孔質耐火物２の内部側が狭い鋭角の
略三角形若しくは可及的に先細りの台形の如き断面形状
を成していることが好ましい。

〔作用〕

第２図に示すように、上述した如く１回の受鋼処理で多
孔質耐火物２が剥離損耗する厚みｈとほぼ同一の間隔で
ノッチ2aが多孔質耐火物２の周囲に設けられておりこの
多孔質耐火物２の周囲が緻密質耐火物３で被覆されてい
る本考案に係るガス吹込みプラグ１を、その外周面に目
地モルタルを配置して受鋼容器底部の鉄皮７の開口部7a
から同底部のプラグ受煉瓦５の円錐台形状の開口部内に
押し込んでセットする。このような受鋼容器内に溶鋼を
受鋼して本考案に係るガス吹込みプラグ１から不活性ガ
スを噴出せしめて溶鋼のガス攪拌を行ってから受鋼容器
内の溶鋼を排出せしめると、第３図に示すようにガス吹
込みプラグ１の周囲のプラグ受煉瓦５の上部が溶鋼によ
り損傷せしめられていると共に、肝心なガス吹込みプラ
グ１の多孔質耐火物２の上部も溶鋼により損傷せしめら
れていて且つ溶鋼やスラグが浸入して溶鋼やスラグが浸
入しない部分と比べて熱膨張率が大幅に変化している。

そこで次の溶鋼を受鋼容器内に受鋼しガス攪拌を行う
と、溶鋼により損傷せしめられていて且つ溶鋼やスラグ
が浸入して溶鋼やスラグが浸入しない部分と比べて熱膨
張率が大幅に変化しているガス吹込みプラグ１の多孔質
耐火物２の上部においてノッチ2aの設けられている部分
の内側に大きな熱応力が発生してその部分から亀裂が生
じて溶鋼やスラグが浸入しない部分から剥離して溶鋼上
に浮上するか、もし浮上しない場合でも本考案に係るガ
ス吹込みプラグ１から不活性ガスを噴出せしめるとその
ガス圧によってノッチ2aの設けられている部分の内側に
発生している亀裂に起因して溶鋼やスラグが浸入しない
部分から剥離して溶鋼上に浮上するのである。

このように本考案に係るガス吹込みプラグ１は１回の受
鋼処理で多孔質耐火物２が剥離損耗する厚みｈとほぼ同
一の間隔で多孔質耐火物２の周囲にノッチ2aが設けられ
ているので、ガス吹込みプラグの剥離損耗位置をその時
のガス吹き込み時の次のノッチ2aとの間の部分のみに限
定することができるのである。従って、このようなノッ
チ２ａを多孔質耐火物２の周囲に１回の受鋼処理で多孔
質耐火物２が剥離損耗する厚みｈとほぼ同一の間隔で多
孔質耐火物２の周囲に設けておけば、１回の受鋼処理後
に次の受鋼処理のために溶鋼を受鋼すると溶鋼受鋼によ
る熱変動に起因した熱応力でノッチ2a内部の最も亀裂の
入り易い部位に亀裂が発生し剥離位置がノッチ2aの位置
に正しく規定されることになるため、剥離位置が不安定
であるがために余計に且つ無駄に剥離することがなくな
り少ない使用回数で使用不可能となることがなくなって
ガス吹込みプラグの寿命延長作用及びガスの吐出不良防
止作用が確保されるのである。

〔実施例〕

75トン精錬取鍋用のガス吹込みプラグにおいて、１回の
受鋼処理で溶鋼やスラグの多孔質耐火物内への最大浸入
厚は15mmであることから、上面の直径が65mm、下面の直
径が130mm、高さが200mmの截頭円錐形の多孔質耐火物の
円錐面の外周に上記最大浸入厚に３mmを加えた18mmピッ
チで、円錐面の外周側の幅が２mmで深さが15mmの断面形
状が概略三角形状の６個のノッチを設け、この多孔質耐
火物の円錐面の外周に平均厚さが40mmになるように緻密
質耐火物で被覆した本考案に係るガス吹込みプラグを製
作した。この本考案に係るガス吹込みプラグを上記75ト
ン精錬取鍋の底部に第２図及び第３図に示すようにセッ
トして、鋼種SUS304の溶鋼を75トン受鋼した後、本考案
に係るガス吹込みプラグからアルゴンガスを毎分50〜40
0ｌの割合で30〜90分間吹き込んでガス攪拌を行い、ガ
ス攪拌終了後にその溶鋼を精錬取鍋から排出して、次の
溶鋼を受鋼してガス攪拌を行う操作を順次繰返し行っ
た。

この繰返し操作において、第２回目からの各回の受鋼処
理時に上方から第１番目、第２番目、……、第６番目の
ノッチの位置で順次多孔質耐火物が剥離して、計７回の
受鋼処理を円滑に実施することができ、各受鋼処理中の
ガス吐出不良（難出現象）は一切生じなかった。

一方、上記本考案に係るガス吹込みプラグと多孔質耐火
物の周囲にノッチが設けられていないことを除いて全く
同一のガス吹込みプラグを用いて上記本考案に係るガス
吹込みプラグを用いた場合と同様のガス攪拌を行った
処、第２回目からの各回の受鋼処理時に剥離する多孔質
耐火物の厚さはまちまちで不安定であり、総じて溶鋼や
スラグの浸入深さより深い位置で無駄な剥離が生じるの
でガス吹込みプラグの耐用寿命が短くならざるを得なか
った。また、溶鋼やスラグの組成及び温度、ガス吐出不
良（難出現象）が生じてガス吹込みプラグの低耐用にな
るケースが発生すると共に操業時間の延長や操業のやり
直しのケースが発生した。

〔考案の効果〕

以上詳述した如き本考案に係るガス吹込みプラグは、１
回の受鋼処理で多孔質耐火物が剥離損耗する厚みとほぼ
同一の間隔でノッチを該多孔質耐火物の周囲に設け、該
多孔質耐火物の周囲を該ノッチも含めて緻密質耐火物で
被覆するだけの簡単な構造であるから、 (a)簡単な構造であり、実開昭62-70158号の開示されて
いるようなガス吹込みプラグの如く製造が面倒ではなく
量産可能であると共に、製造歩留りも悪くない。

(b)次回の受鋼作業時に限らずノッチを設けた位置の内
側から剥離損耗するので、ガス吹込みプラグの使用回数
の制御と耐用寿命延長とが可能となる。

(c)ガス吹込みプラグの吐出不良が全く生じないので耐
用寿命が延長し、何よりもガス吹込み時の操業時間の延
長や操業のやり直しのケースが殆ど皆無となる。

(d)使用回数を制御できるようになったので、ガス吹込
みプラグの安全性を向上させることができる。

(e)多孔質耐火物の周囲を緻密質耐火物で被覆してある
構造であるため、溶鋼の漏洩の心配が少ない。

などの効果を備えており、その実用的価値は非常に大き
なものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るガス吹込みプラグの１実施例の縦
断面図、第２図は第１図に示した本考案に係るガス吹込
みプラグが受鋼容器に取り付けられている状態を示す縦
断面図、第３図は第１図に示した本考案に係るガス吹込
みプラグの受鋼毎の剥離損耗状態を説明する説明図であ
る。 図面中 １……本考案に係るガス吹込みプラグ ２……多孔質耐火物 2a……ノッチ ３……緻密質耐火物 ４……鉄皮 ５……プラグ受煉瓦 ６……受鋼容器床煉瓦 ７……受鋼容器底部鉄皮 7a……開口部

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】１回の受鋼処理で多孔質耐火物(2)が剥離
   損耗する厚み(h)とほぼ同一の間隔でノッチ(2a)が該多
   孔質耐火物(2)の周囲に設けられており、該多孔質耐火
   物(2)の周囲が緻密質耐火物(3)で被覆されていることを
   特徴とするガス吹込みプラグ(1)。
2. 【請求項２】ノッチ(2a)が多孔質耐火物(2)の周囲側が
   広く多孔質耐火物(2)の内部側が狭い断面形状を成して
   いる請求項１に記載のガス吹込みプラグ(1)。