JPH0642047B2 - 写真印画紙用支持体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は防水写真印画紙用支持体に関するものである。
更に詳しく述べるならば本発明は、写真印画紙に形成さ
れたとき、印画紙端部の切断面からの現像処理液の浸入
によるエッジ汚れを防止することのできる防水性写真印
画紙用支持体に関するものである。

〔従来の技術〕

従来、写真印画紙用支持体としては原紙基体の片面に硫
酸バリウムを主体とするバライタ層を被覆したいわゆる
バライタ紙が使用されていたが、現像処理の自動化と迅
速化を図るために原紙基体の両面を疎水性のポリオレフ
ィン樹脂で被覆した防水印画紙が使用されるようにな
り、現在ではその大半を占るようになってきた。防水印
画紙を使用することにより、支持体の表裏両面からの現
像処理液の浸透は完全に防止されるが、端部の切断の面
からの浸透は防ぐことができず、しかも端部から浸透し
た現像処理液は短時間の水洗処理では十分に除去できな
いため、印画紙が熱あるいは経時により茶色に変色し、
写真の白ブチ部の汚れを形成し、写真製品としての価値
を著しく減ずることになる。

印画紙端部からの現像処理液の浸透を防止する手段とし
て、原紙にサイズ剤を含有せしめることが一般に行なわ
れる。この場合、現像処理液に含まれるアルカリおよび
アルコールのいずれに対してもサイズ効果のあることが
必要である。このため一般に中性サイズ剤が用いられて
おり、例えば特公昭47-26961号公報に記載されている脂
肪酸石けんタイプのサイズ剤や、特開昭51-132822号公
報に記載されているアルキルケテンダイマー等が用いら
れている。しかしながら、これら中性サイズ剤はそれぞ
れ欠点を有しており実用的に十分なものではない。すな
わち、脂肪酸石けんタイプのサイズ剤は現像処理液中の
アルコールの浸透に対しては比較的高いサイズ効果を示
すアルカリ液に対するサイズ効果は十分でない。一方、
アルキルケテンダイマーの場合は現像処理液中のアルカ
リ液に対してのサイズ効果は優れているが、アルコール
に対しては著しく劣る。

このような欠点を解消するために、特開昭57-185432号
公報および特開昭57-197539号公報にアルキルケテンダ
イマーとカチオン性ポリアクリルアミドを紙中に含有さ
せる方法、あるいはアルキルケテンダイマーとカチオン
性ポリアクリルアミドおよびアニオン性ポリアクリルア
ミドを併用する方法などが提案されている。しかし、こ
れらの方法も必ずしも十分満足すべきものではない。

〔発明が解決しようとする問題点〕

本発明は、前述のサイズ剤の有する欠点を解消し、写真
印画紙に形成されたとき現像処理液に含まれるアルカリ
およびアルコールのいずれに対しても良好なサイズ効果
を有し、印画紙端部への現像処理液の浸透により発生す
るエッジ汚れを防止し得る。写真印画紙用支持体を提供
することを目的とするものである。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明の写真印画紙用支持体は、原紙基体と、その両面
に形成されたポリオレフィン樹脂被覆層とを含み、前記
基体が炭酸水素アルカリ金属塩からなる塩基性化剤を、
炭酸水素ナトリウムに換算して、パルプ乾燥重量に対し
て0.5〜2.0重量％の範囲で含有し、かつアルキルケテン
ダイマーを含有するパルプスラリーから抄造されたパル
プ原紙であることを特徴とするものである。

また、前記パルプスラリー中のアルキルケテンダイマー
の量は、パルプの乾燥重量に対して、0.3〜1.5重量％の
範囲内にあることが好ましい。

本発明者らは、アルキルケテンダイマーのサイズ効果を
発現させるための塩基性物質を種々検討した結果、炭酸
水素塩から成る塩基性化剤を用いた場合、アルカリ水溶
液およびアルコールの両者に対するサイズ性が向上しか
つ操業上有利であることを見出し本発明を完成した。す
なわち、アルキルケテンダイマーのサイズ効果を発現す
るためには系のpHを中性より高くする必要があるが、ア
ルカリ性が強くなるとアルキルケテンダイマーが着色す
るため原紙白色度が低下する。したがって、塩基性化剤
として苛性ソーダあるいは炭酸ソーダなどを用いる場合
には、抄造白水系のpH管理が重要になる。これに対して
炭酸水素塩から成る塩基性化剤、例えば炭酸水素ナトリ
ウムを用いる場合には、炭酸水素ナトリウム自体が弱塩
基であるので、過剰に添加しても系のpHは弱アルカリ性
より高くなることがない。このため、抄紙系のpH管理が
容易であり、従って操業上有利である。また、アルカリ
およびアルコールの両方に対するサイズ性も向上し、写
真印画紙としたとき、その端部からの現像処理液の浸透
が大幅に抑制される。

本発明に用いられるアルキルケテンダイマーは公知のも
のを使用すれば良く、アルキル基の炭素数が８〜３０、
好ましくは12〜18のものが良い。パルプスラリーに対す
るアルキルケテンダイマーの添加量はパルプ乾燥重量に
対し、0.3〜1.5重量％であり、特に0.5〜1.0重量％の範
囲内にあることが好ましい。添加量が0.3重量％よりも
少ないと十分なサイズ効果が得られないことがあり、一
方、1.5重量％よりも添加量を多くしてもサイズ効果に
格別の向上は認められない。

本発明に使用される炭酸水素アルカリ金属塩としては炭
酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが例示され
る。パルプスラリーに対する炭酸水素アルカリ金属塩か
ら成る塩基性化剤の添加量は、パルプ乾燥重量に対し0.
5〜2.0重量％であり、特に好ましくは1.0〜1.5重量％で
ある。添加量が0.5重量％よりも少ないと十分なサイズ
効果が得られないことがあり、一方、2.0重量％よりも
添加量を多くしてもサイズ効果に格別の向上は認められ
ない。

本発明の支持体の原紙基体の形成に用いられるパルプと
しては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、広葉樹針葉樹混
合パルプの木材パルプが有利に用いられ、また、クラフ
トパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプ等通常使
用されているパルプの何れもが使用できる。また、必要
によっては合成パルプ、合成繊維を含むパルプも使用す
ることができる。

本発明の原紙には、通常の紙用各種添加剤が添加されて
いてもよい。例えば、乾燥紙力増強剤として、カチオン
化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポ
リアクリルアミド、カルボキシ変性ポリビニルアルコー
ルなどが用いられてもよい。填料として、クレー、カオ
リン、炭酸カリシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水
酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが用いられ
る。湿潤紙力増強剤として、メラミン樹脂、尿素樹脂、
エポキシ化ポリアミド樹脂などが用いられる。定着剤と
して、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの多価
金属塩、カチオン化澱粉などのカチオン性ポリマーなど
が用いられる。そのほか染料及び螢光増白剤などを適宜
組み合わせて添加してもよい。

本発明の原紙は、各種の水溶性高分子添加剤を含有する
液でタプサイズ、もしくは、サイズプレスされていても
よい。かかる水溶性高分子添加剤としては、例えば、水
溶性高分子として、カチオン化澱粉、ポリビニルアルコ
ール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、カルボキ
シメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セ
ルロースサルフエート、ゼラチン、カゼイン、ポリアク
リル酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体
ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなど
があり、サイズ剤としては、石油樹脂エマルジョン、ス
チレン−無水マレイン酸共重合体アルキルエステルのア
ンモニウム塩、アルキルケテンダイマー乳化物など、ス
チレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共
重合体、ポリエチレン、塩化ビニリデン共重合体などの
ラテックス、エマルジヨン類などがあり、無機電解質と
して、食塩、芒硝などがあり、吸湿性物質として、グリ
セリン、ポリエチレングリコールなどがあり、顔料とし
て、クレー、カオリン、タルク、硫酸バリウム、酸化チ
タンなどがあり、pH調節剤として、塩酸、苛性ソーダ、
炭酸ソーダなどがあり、その他染料、螢光増白剤などの
添加剤の少なくとも１種を使用することができる。

本発明の原紙の種類および厚さに特に制限はないが、原
紙を抄造後カレンダーにて圧力を印加して圧縮するなど
した表面の平滑性のよい原紙が好ましく、その坪量は５
０ｇ／m²〜250ｇ／m²が好ましい。

本発明の支持体のポリオレフィン樹脂被覆層を形成する
樹脂としては、エチレン、プロピレンなどのα−オレフ
ィンのホモポリマー、あるいは、これらα−オレフィン
の２種以上から成る共重合体あるいはα−オレフィンを
主成分としてそれと共重合可能な他のモノマーとの共重
合体およびそれらの混合物が用いられる。また、樹脂
に、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、
アルミナなどの白色顔料、ガラス繊維、アスベスト、ホ
イスカーなどの繊維状フイラー、カーボンブラツク、フ
タロシアニン系顔料、黄鉛、チタンイエロー、ベンガ
ラ、群青などの着色顔料、通常、樹脂に混合される安定
剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、滑剤、
螢光剤などが添加されてもよい。

本発明の支持体におけるポリオレフィン樹脂被覆層は、
押出し塗布、溶剤溶液塗布などの一般的方法で形成され
る。樹脂の種類によっては、これに電子線硬化などの処
理を施してもよい。また、樹脂を予じめフィルムに成形
し、これを原紙基体の両面にドライラミネーション法、
又はウェットラミネーション法により積層貼着してもよ
い。通常、ポリオレフィン樹脂被覆層は、走行する基紙
上に加熱溶融した樹脂を流延し、原紙の両面を被覆する
方法、いわゆる押出コーテイング法によって製造され
る。また、樹脂を被覆する前に、原紙に、コロナ放電処
理、火炎処理などの活性化処理を施してもよい。得られ
た支持体の乳剤側表面は、その用途に応じて光沢面、マ
ット面、絹目面などを有し、裏面は通常無光沢面であ
り、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電
処理、火炎処理などの活性化処理を施すことができる。
また、ポリオレフィン樹脂被覆層の厚さに、特に制限は
ないが、一般に５ミクロン〜５０ミクロン程度のものが
好ましい。

〔実施例〕

以下、実施例により本発明を更に説明する。

実施例 カナダスタンダードフリーネス300mlに叩解した晒広葉
樹クラフトパルプ(LBKP)に、カチオン化澱粉を2.0重量
％、アニオン性ポリアクリルアミドを0.1重量％、ポリ
アミドポリアミンエピクロルヒドリンを0.7重量％（い
ずれも対パルプ乾燥重量％）添加し、さらにアルキルケ
テンダイマー（荒川化学社製、商品名SPK 903）および
炭酸水素ナトリウムを各々第１表に示した添加量で添加
してパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーから
通常の抄紙法により坪量170ｇ／m²の原紙を抄造した。
次いでこの原紙の片面にポリエチレン（ｄ＝0.94、ＭＩ
＝6.8）を３０ｇ／m²の塗布量で塗布被覆し、他の面に
１０重量％のアナターゼ型二酸化チタンを含むポリエチ
レンを３０ｇ／m²の塗布量で被覆して写真印画紙用支持
体を作成した。得られた試料について現像の際のエッジ
汚れを評価し、その結果を第１表に示した。

なお、エッジ汚れを下記のように評価した。

（１）現像液の調製 現像液をエアーポンプを用いて４８時間空気曝気を行な
い酸化処理した後、これにベンジルアルコールを３％濃
度に、および、亜硫酸ナトリウムを２０％濃度になるよ
うに添加し、混合液を１０分間攪拌した。得られた混合
液を１分間静置して液面にタール状被膜を形成させた。

この混合液を汚れ試験に用いた。

（２）エッジ汚れ評価試験 10×50mmの大きさに切断した試料を、上記の現像液に１
０秒間浸漬し、次いで漂白定着液に１０秒間浸漬した
後、流水で洗浄した。この試料を濾紙で脱水し、風乾し
た後、現像液の浸透幅を測定し、この測定値をもって、
エッジ汚れを評価した。

なお、汚れ試験液は試料２０枚毎に新しいものと交換し
た。

第１表の結果から明らかなように、本発明の写真印画紙
用支持体は、その端部断面からの現像処理液の浸透が少
なく、エッジ汚れの極めて少ないものであることが確認
された。

〔発明の効果〕

本発明により以下の効果が得られる。

１．原紙のサイズ性が向上するため、端部断面からの現
像処理液の浸透が抑制され、エッジ汚れのない写真印画
紙用支持体を製造することができる。

２．抄紙系のpH管理が不要であるので抄紙操業上有利で
ある。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−147204（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−139598（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−197539（ＪＰ，Ａ) 特開 昭49−112742（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−72139（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−201339（ＪＰ，Ａ) 特公 昭49−38921（ＪＰ，Ｂ２)

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】原紙基体と、その両面に形成されたポリオ
   レフィン樹脂被覆層とを含み、前記基体が炭酸水素アル
   カリ金属塩からなる塩基性化剤を、炭酸水素ナトリウム
   に換算して、パルプ乾燥重量に対して0.5〜2.0重量％の
   範囲で含有し、かつアルキルケテンダイマーを含有する
   パルプスラリーから抄造されたパルプ原紙である写真印
   画紙用支持体。
2. 【請求項２】前記パルプスラリー中のアルキルケテンダ
   イマーの量が、パルプの乾燥重量に対して、0.3〜1.5重
   量％の範囲内にある特許請求の範囲第１項記載の写真印
   画紙用支持体。