JPH0640939Y2 - 液圧ピストンポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は可変容量型の液圧ピストンポンプに関するもの
である。

（従来の技術） 可変容量型の液圧ピストンポンプとして、実開昭60-557
83号公報には、ポンプ本体内に回転自在に設けたシリン
ダブロックと、シリンダブロックの駆動軸心に対し傾転
可能に設けた斜板と、シリンダブロックの駆動軸心を囲
むようにしてシリンダブロックに形成したピストン室に
移動自在に嵌挿されシューを介して斜板に当接係合する
ピストンと、半円弧状の吐出ポート及び吸入ポートが形
成されこれら両ポートがシリンダブロックの回転に伴い
順次ピストン室に連通するようにシリンダブロックに密
接させた弁板と、吐出ポートに連通した吐出流路及び吸
入ポートに連通した吸入流路とを備えた可変容量型斜板
式ピストンポンプが開示されている。

このピストンポンプによれば、シリンダブロックの回転
駆動に伴いピストンが往復移動し、ピストン室の容積が
増減すると共に複数のピストン室が順次吸入ポート及び
吐出ポートに連通される。そして液体がピストン室の容
積増大により吸入流路から吸入ポートを介してピストン
室に吸入され、ついで容積減少により加圧され吐出ポー
トを介して吐出流路へ吐出される。

しかして、斜板の傾転角を変えることによりピストンの
ストロークを変化させると吐出量を変えることができ
る。

ところで、シリンダブロックの回転に伴い吸入ポート及
び吐出ポートが順次ピストン室に連通されるが、その際
にピストン室の内圧が急激に変動するとポンプ騒音が増
大する。そこで、上記従来のピストンポンプではピスト
ン室の圧力変動を抑制するため第３図に示すように、弁
板30に半円弧状の吸入ポート31と吐出ポート32を形成す
ると共に、さらに吸入ポートの始端側に予膨張のための
切欠き溝31aを、また吐出ポート32の始端側に予圧縮の
ための切欠き溝32aを形成していた。これによりピスト
ン室は吐出工程の終了後、予膨張を経て吸入ポートと連
通されまた吸入工程終了後、予圧縮を経て吐出ポートに
連通される。

（考案が解決しようとする課題） しかしかながら、上記従来のピストンポンプにおいて
は、吐出流路へ吐出される液体の圧力が予め設定された
所定圧力のときポンプ騒音が最も減少するように予膨張
用の切欠き溝31aが設計されている。そのため吐出圧力
が所定圧力より高い場合には吐出工程が終了し吸入工程
に移行する際に切欠き溝31aの予膨張作用ではピストン
室の圧力を充分に降下させることができず、予膨張作用
終了後、ピストン室が吸入ポートに連通するとピストン
室の圧力が急激に降下し、ポンプ騒音の増大を防止する
ことができなかった。

また吐出圧力が所定圧力より低い場合には吐出工程から
吸入工程に移行する際に切欠き溝31aの予膨張作用によ
り予膨張作用終了前にピストン室の圧力が吸入圧力まで
降下してしまいその結果キャビテーションが発生してポ
ンプ騒音が増大するという問題点があった。

さらに、従来のピストンポンプにおいては吸入抵抗の大
きい半円弧形の吸入ポートを備えているが、弁板には吸
入ポートだけでなく吐出ポートも設けられており、ま
た、ポンプ本体の一側には吐出ポートに連通する吐出流
路と吸入ポートに連通する吸入流路が並列して設けられ
ているので、吸入ポートの寸法、形状を大きくし吸入抵
抗を小さくして吸入特性を向上させるには弁板やポンプ
本体の寸法、形状を大きくせざるを得ない。そのため、
ポンプの大型化が避けられない。

本考案はかかる問題点に鑑み、吐出圧力の変動があって
もピストン室の圧力変動を抑制してポンプ騒音を低減
し、かつ小型で吸入特性に優れた液圧ピストンポンプを
提供することを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記目的に沿う本考案の構成は、ポンプ本体内に回転自
在に設けられポンプ本体に配設した弁板に一側を摺接し
ながら駆動軸と一体に回転するシリンダブロックと、駆
動軸心を囲むようにしてシリンダブロックに形成した複
数のピストン室と、ピストン室に摺動自在に嵌合するピ
ストンと、駆動軸心に対して傾斜して配置され、駆動軸
によるシリンダブロックの回転駆動によりピストンが往
復移動して各ピストン室の容積が増減するように配設し
た斜板と、シリンダブロックの回転駆動に伴い各ピスト
ン室が順次吐出流路に連通するように弁板に形成した半
円弧状の吐出ポートを備えてなる液圧ピストンポンプに
おいて、ポンプ本体内に低圧側に接続される中空室を形
成し、シリンダブロックの回転中心部に中空室に開口す
る吸入流路を形成するとともに、吸入流路から放射状に
延びてピストン室に連通する複数の連通路を形成し、こ
の連通路に容積増大によるピストン室の圧力降下で開作
動して該連通路を導通させ、容積減少によるピストン室
の圧力上昇で閉作動して該連通路を遮断する逆止弁を設
けたことを特徴とする。

（作用） 上記構成によれば、シリンダブロックの回転駆動により
ピストン室の容積が増大しピストン室内圧が一定圧力ま
で降下すると逆止弁が開作動し、ピストン室と吸入流路
が連通路を介して連通されるので液体が低圧側に接続さ
れた中空室から吸入流路と連通路を通ってピストン室へ
吸入される。ついでピストン室の容積が減少し一定圧力
まで上昇すると逆止弁が閉作動し連通路が遮断されると
共にピストン室内の液体が加圧され順次連通する吐出ポ
ートを介して吐出流路へ吐出される。

しかして前記逆止弁は吐出圧力にかかわりなくピストン
室の圧力が一定圧力まで降下しない限り開作動しないの
で吐出工程から吸入工程に移行する際のピストン室の圧
力変動が抑制される。

（実施例） 以下に本考案の一実施例を図面に基づき説明する。

第１図において、１はポンプ本体であり、一側面が開口
した中空のケーシング1aと開口を閉塞するように該ケー
シング1aに固着した側板1bから構成されている。ポンプ
本体１内部には、側板1bに設けた軸受2,3により駆動軸
４が回転自在に支承され、駆動軸４のポンプ本体１内部
に突出する端部にはスプライン部５が形成されている。

６はシリンダブロックであり、軸受７を介してポンプ本
体１内部にに回転自在に取付けられ、駆動軸４と一体に
回転するようにスプライン部５に連結されている。この
シリンダブロック６には、駆動軸４の軸心を囲むように
して複数のピストン室８が穿設され、各ピストン室８に
はピストン９が移動自在に嵌挿されている。そして各ピ
ストン９の先端部にはシュー10が取付けられ、該シュー
10はリテナー11により斜板13に当接係着されている。

斜板13は駆動軸４の軸線に対し傾斜して設けられ、その
ためシリンダブロック６が回転駆動されると、ピストン
９がピストン室８内で往復移動し、それに伴いピストン
室８の容積が増減する。また斜板13は一定の傾斜角範囲
内で傾転可能にポンプ本体１に取り付けられ、かつ斜板
13の背面とポンプ本体１の内側面との間に介装したばね
14により傾転角が大きくなる方向に付勢されている。一
方、前記側板1bにはポンプ本体１内部に突出するガイド
筒15が設けられ、該ガイド筒15には斜板13の前面に当接
してその傾転角を変化させる操作ピストン16が摺動自在
に冠着されている。さらにガイド筒15の内部には操作ピ
ストン16の先端部内側に当接して該操作ピストン16の後
退位置を規制する調整ボルト17が挿着されており、この
調整ボルト17を進退させることにより斜板13の最大傾転
角を変更することができる。また操作ピストン16の内部
には圧力作用室18が形成され、側板1bに形成した連通路
19を介して圧力液体を導入、導出することができる。そ
して該連通路19には圧力制御弁20が設けられ、ポンプの
吐出圧力が設定圧力以下のときは圧力作用室18から圧力
液体を導出させ、設定圧力に達すると圧力液体が導入さ
れるように構成されている。そのため吐出圧力が設定圧
力以下のときは操作ピストン16が調整ボルト17で規制さ
れる位置まで後退し、斜板13が最大傾転角にもたらさ
れ、その結果ピストン９のストローク量が最大となり吐
出液体量も最大になる。一方、吐出圧力が設定圧力に達
すると圧力作用室18に導入される圧力液体によって操作
ピストン16が前進し斜板13が最小傾転角にもたらされる
ので吐出液体量が最小になる。

次に、21は前記シリンダブロック６の回転中心部に穿設
した吸入流路であり、一端がポンプ本体１内部に形成し
た中空室22に開口され、この中空室22は図示略の連通路
を介して低圧側に接続されている。さらにシリンダブロ
ック６には、前記ピストン室８とこの吸入流路21間を連
通する連通路23及びピストン室８と後述する弁板26に形
成した吐出ポート27間を接続する接続路24とが穿設され
ている。連通路23は吸入流路21から各ピストン室８へと
放射状に延び、また各連通路23には逆止弁25が配設され
ている。

逆止弁25は連通路23に設けた弁座25aと該弁座25aに接離
する弁体25b及び弁体25bを弁座25aに着座させる方向に
付勢するばね25cを備えている。そしてばね25cの付勢力
はシリンダブロック６の外側から内側に向けて弁体25b
に作用している。シリンダブロック６の回転駆動により
ピストン室８の容積が増大しピストン室８の内圧が一定
圧力まで降下するとばね25cの付勢力に抗して弁体25bが
弁座25aから離脱し連通路23を介してピストン室８と吸
入流路21間が連通される。またピストン室８の容積が減
少しピストン室８の内圧が一定圧力まで上昇するとこの
内圧とばね25cの付勢力により弁体25bが弁座25aに着座
しピストン室８と吸入流路21間が遮断される。

26は円板状の弁板で、第２図に示すように半円弧状の吐
出ポート27が貫通形成され、側板1bに配設されている。
また吐出ポート27は側板1bに形成した吐出流路28に連通
されている。そして弁板26は、シリンダブロック６の回
転駆動に伴い順次各ピストン室８が接続路24を介して吐
出ポート27に接続されるようにシリンダブロック６に密
接されている。

本実施例は以上の構成からなり、次にその作動を説明す
る。

駆動開始前、第１図に示すように操作ピストン16は調整
ボルト17によって規制される位置まで後退しており、斜
板13は最大傾転角を保持している。

駆動軸４の回転によりシリンダブロック６が回転駆動さ
れるとピストン９が往復移動し、ピストン室８の容積が
増減する。ピストン室８の容積が増大しピストン室８の
内圧が一定圧力まで降下すると逆止弁25が開作動し吸入
流路21とピストン室８が連通路23を介して連通されるの
で、中空室22から吸入流路21、連通路23を通ってピスト
ン室８に液体が吸入される。ついでピストン室８の容積
が減少しピストン室８の内圧が一定圧力以上になると逆
止弁25が閉作動し、ピストン室８の液体が加圧される。
加圧された液体は接続路24及びシリンダブロック６の回
転に伴って順次連通する吐出ポート27を介して吐出流路
28へ吐出される。吐出圧力が上昇し圧力制御弁20の設定
圧力になると圧力作用室18に圧力液体が導入され、操作
ピストン16がばね14の付勢力に抗して前進し斜板13の傾
転角が小さくなるのでピストン９のストローク量も小さ
くなり吐出量が減少する。

一方、吐出圧力が圧力制御弁20の設定圧力以下となると
圧力作用室18から圧力流体が導出され操作ピストン16が
後退するので斜板13の傾転角が大きくなり吐出量が増加
する。

しかして、本実施例によればピストン室８の内圧が一定
圧力にまで降下しない限りピストン室８と吸入流路21間
が連通されないので吐出圧力の変動があっても吐出工程
から吸入工程へ移行する際のピストン室８の圧力変動を
抑制できる。

また、シリンダブロック６の回転中心部に吸入流路21を
設けると共に、吸入流路21とピストン室８を吸入流路21
からシリンダブロックの径方向へ放射状に延びる連通路
23で連通したので吸入抵抗が極めて少なく、かつ弁板26
に吸入ポートを設けたりポンプ本体１に吐出流路28と並
列に吸入流路を設ける必要がないので、小型で吸入特性
の高いピストンポンプを得ることができる。

さらに、吐出ポート27や吐出流路28の構成は従来のピス
トンポンプと同様であり、ピストン室８の圧力変動を抑
制するにあたりこれらに格別変更を施す必要がないため
ポンプ構成が簡単になる。

（考案の効果） 本考案によれば、吸入流路とピストン室を連通する連通
路に容積増大によるピストン室の圧力降下で開作動して
該連通路を導通させ、容積減少によるピストン室の圧力
上昇で閉作動して該連通路を遮断する逆止弁を設けたの
で、ピストン室の内圧が一定圧力にまで降下しない限り
ピストン室と吸入流路間が連通されず、そのため吐出圧
力の変動があっても吐出工程から吸入工程へ移る際のピ
ストン室の圧力変動を抑制し、ポンプ騒音を大幅に低減
できる。

また、シリンダブロックの回転中心部に吸入流路を設け
ると共に、吸入流路とピストン室を吸入流路から放射状
に延びる連通路で連通し、全ての吸入液体を導き入れる
ようにしたので吸入抵抗が極めて少なく、かつ弁板に吸
入ポートを設けたりポンプ本体に吐出流路と並列に吸入
流路を設ける必要がないので、小型で吸入特性の高いピ
ストンポンプを得ることができる。

さらに、吐出ポートや吐出流路は従来のピストンポンプ
と同様の構成を採用できるので比較的簡単なポンプの構
成により騒音の低減を図ることが可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示す縦断面図、第２図は本実
施例に設けられた弁板の平面図、第３図は従来装置に設
けられた弁板の平面図である。 １……ポンプ本体、４……駆動軸、６……シリンダブロ
ック、８……ピストン室、９……ピストン、13……斜
板、21……吸入流路、22……中空室、23……連通路、25
……逆止弁、26……弁板、27……吐出ポート、28……吐
出流路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ポンプ本体内に回転自在に設けられポンプ
   本体に配設した弁板に一側を摺接しながら駆動軸と一体
   に回転するシリンダブロックと、駆動軸心を囲むように
   してシリンダブロックに形成した複数のピストン室と、
   ピストン室に摺動自在に嵌合するピストンと、駆動軸心
   に対して傾斜して配置され、駆動軸によるシリンダブロ
   ックの回転駆動によりピストンが往復移動して各ピスト
   ン室の容積が増減するように配設した斜板と、シリンダ
   ブロックの回転駆動に伴い各ピストン室が順次吐出流路
   に連通するように弁板に形成した半円弧状の吐出ポート
   を備えてなる液圧ピストンポンプにおいて、ポンプ本体
   内に低圧側に接続される中空室を形成し、シリンダブロ
   ックの回転中心部に中空室に開口する吸入流路を形成す
   るとともに、吸入流路から放射状に延びてピストン室に
   連通する複数の連通路を形成し、この連通路に容積増大
   によるピストン室の圧力降下で開作動して該連通路を導
   通させ、容積減少によるピストン室の圧力上昇で閉作動
   して該連通路を遮断する逆止弁を設けたことを特徴とす
   る液圧ポンプ。