JPH0637484B2 - 無水マレイン酸の製造法 - Google Patents

無水マレイン酸の製造法

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JPH0637484B2
JPH0637484B2 JP60263290A JP26329085A JPH0637484B2 JP H0637484 B2 JPH0637484 B2 JP H0637484B2 JP 60263290 A JP60263290 A JP 60263290A JP 26329085 A JP26329085 A JP 26329085A JP H0637484 B2 JPH0637484 B2 JP H0637484B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は無水マレイン酸の製造法に関する。詳しくは本
発明はバナジウム−リン系触媒の存在下に炭化水素を気
相で接触酸化して無水マレイン酸を製造する方法におけ
る高活性触媒の使用に関する。
〔従来の技術〕
ブタン、ブテン類、ブタジエン等の炭素数4の直鎖炭化
水素の気相酸化によつて無水マレイン酸を製造するため
の触媒として、バナジウム、リンおよび酸素からなる触
媒が有効であることが知られている(米国特許第3,293,
268号、特公昭53-39037号、特開昭53-146992号等多
数)。特にブタンはその低廉性及び資源的豊富さの点で
無水マレイン酸の製造原料として有利であるが、反応性
がオレフイン類に比して低いこともあり、触媒の改善に
ついて種々の工夫が見られる。
例えば特公昭53-39037号は有機溶媒中で製造した結晶性
リン酸バナジウムを触媒として使用する方法を提案して
いるが、その改良法の提案も数多くなされている(特開
昭57-130552号、特開昭58-84045号、米国特許第4,132,6
70号等)。
また本発明者らの一部は先に、第一原料としての、バナ
ジウム及びリンを含有し、下記表A又は表B: の特徴的なX線回折ピークを示す結晶性複合酸化物(結
晶性リン酸バナジウムの一種)、第二原料としての、バ
ナジウム及びリンを含有する水性溶液(好ましくはリン
酸バナジル水溶液)、並びに第三原料としてのシリカゾ
ルを含有する水性スラリーを調製し、これを噴霧乾燥
し、次いで焼成することによつて得られる流動床触媒を
提唱した(特開昭58-170542号、特開昭58-170543号、米
国特許第4,472,527号等)。この触媒は活性成分とし
て、バナジウム及びリンを含有し、上記表Bの特徴的な
X線回折ピークを示す結晶性複合酸化物、並びにバナジ
ウム及びリンを含有する無定形複合酸化物、の両成分を
含有しており、従来の触媒に比して活性、強度、流動性
の何れの面においても格段に改良されている。
更に他の種類の改良法として種々の金属賦活剤を使用し
て触媒活性を向上させる試みも多数提案されている(例
えば特公昭53-43928号、特公昭57-45229号、特公昭57-4
5233号、特公昭60-25189号、特開昭51-59816号、特開昭
54-30114号等)。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上述のように種々の改良法が提案されており、その中に
はかなり優れたものも見出される。しかしながら炭化水
素の触媒気相酸化による無水マレイン酸の生成反応は高
温下の反応であり、しかも爆発の危険性を内蔵してい
る。そこで触媒活性をさらに向上させ、反応温度を低下
させることによつて、経済性を高めると共に爆発の危険
性を小さくすることが求められている。前述の通り触媒
活性を向上させる方法として種々の金属賦活剤を添加す
る方法が提案されているが、通常、触媒活性の向上には
無水マレイン酸への選択率の低下が伴い、工業的に必ず
しも満足の行くものではなかつた。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは炭素数4の炭化水素を気相酸化して無水マ
レイン酸を製造するための高活性かつ高選択性の触媒を
見出すべく鋭意検討を行なつた結果、バナジウム−リン
系触媒に対して特定の金属賦活剤を微量添加することに
より優れた効果が得られることを見出して本発明に到達
した。
即ち本発明は、炭素数4の炭化水素及び分子状酸素を含
有する気体混合物を、活性成分が主としてバナジウム、
リン及び酸素からなる複合酸化物であつて、更に鉄、コ
バルト、ニツケル及び銅からなる群から選ばれた少なく
とも2種の活性促進成分を合計量で上記バナジウム原子
1モル当り0.0001〜0.05モルの範囲で含有する触媒と接
触させることを特徴とする無水マレイン酸の製造法、を
要旨とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、主としてバナジウム、リン及び酸素
からなる複合酸化物(以下「バナジウム−リン系複合酸
化物」という)を活性成分とするバナジウム−リン系触
媒を使用する。
バナジウム−リン系複合酸化物の製造方法としては種々
の方法が提案されている。例えば米国特許第3,293,268
号では、シュウ酸バナジル、メタバナジン酸アンモニウ
ム、更にはバナジウム化合物塩酸溶液とリン酸との反応
で製造している。また特開昭51-95990号では、非酸化性
水溶液に溶解した4価のバナジウムとリン酸を反応させ
て結晶性リン酸バナジウムの前駆体を製造し、これを焼
成して結晶性バナジウム−リン系複合酸化物を製造する
方法を提案している。また米国特許第4,043,943号、米
国特許第4,132,670号、特開昭57-130552号、特開昭58-8
4045号等では、イソブタノール等の有機溶媒中で同様の
結晶性リン酸バナジウムの前駆体を製造し、これを焼成
して結晶性バナジウム−リン系複合酸化物を製造する方
法等を提案している。更に本発明者らの一部は先に、リ
ン酸及び無機還元剤を含有する水性媒体中に五酸化バナ
ジウムを溶解して四価のバナジウムイオンを含有する溶
液とし、次いで水熱処理して結晶性リン酸バナジウムの
前駆体を製造し、これを焼成して結晶性バナジウム−リ
ン系複合酸化物を製造する方法を提案した(特開昭58-1
51313号)。
本発明に従う金属賦活剤の添加効果はこれ等のバナジウ
ム−リン系複合酸化物の製造法にかかわらず現われる
が、絶対活性の高さの点では前記表Bの特徴的なX線回
折ピークを示す結晶性複合酸化物に対して顕著な効果が
現われる。
本発明に従う金属賦活剤は鉄、コバルト、ニツケル及び
銅からなる群から選ばれた少なくとも2種の活性促進成
分であり、バナジウム−リン系複合酸化物に添加して使
用される。好適な添加の組合せの例としては、ゴバルト
−ニツケル、コバルト−ニツケル−銅、鉄−コバルト−
ニツケル−銅、コバルト−銅等が挙げられる。これに対
し、鉄、コバルト、ニツケル又は銅の各成分の単独添加
では、以下に示すように、本発明に従う効果が現われな
い。
また金属賦活剤の添加量について、特公昭57-45233号等
の従来技術で使用されている範囲(例えばMe/V=0.05〜
0.5(原子比)、Me:金属賦活剤)では反応温度の低
下は起こるものの、無水マレイン酸収率の顕著な低下、
燃焼活性の昂進という逆効果が現われることが判明し
た。本発明に従う金属賦活剤の添加量の最適範囲は、従
来公知の上記好適添加量よりもはるかに低いレベルであ
り、活性促進成分の合計(ΣMe)とバナジウムとの原子
比(ΣMe/V)で0.0001〜0.05、好ましくは0.001〜0.0
3、より好ましくは0.001〜0.025である。より詳細に各
成分についての好適添加量を示すと次のようである。
Fe/V=0.001〜0.006 Co/V=0.001〜0.02 Ni/V=0.001〜0.02 Cu/V=0.0001〜0.005 また前述の好適な活性促進成分の組合せの例において、
その合計の原子比の好適範囲は各々次のようである。
コバルト−ニツケル系 Co/Ni=2/1〜1/2 コバルト−ニツケル−銅系 Cu/(Co+Ni)=0.01〜0.6 鉄−コバルト−ニツケル−銅系 Fe/(Co+Ni)=0.1〜2 Cu/(Co+Ni)=0.01〜0.6 コバルト−銅系 Cu/Co=0.01〜0.6 本発明に従う微量の金属賦活剤を含有するバナジウム−
リン系触媒はバナジウム−リン系複合酸化物と前記2種
以上の活性促進成分からなる金属賦活剤との組合によつ
て調製される。
バナジウム−リン系複合酸化物には種々のものがあり、
大別すると結晶性のものと無定形のものとがある。その
選択は必要とする触媒活性のレベル、具体的には原料炭
化水素の選択に依存し、反応性の低い飽和炭化水素、即
ちブタン、を原料とする場合には触媒活性の大きい結晶
性のものを使用するのが好ましい。
結晶性バナジウム−リン系複合酸化物の製造法は前記の
ように種々知られており、そのいずれで製造されたもの
も使用することができるが、好適には前記表Bの特徴的
なX線回折ピークを示す結晶性リン酸バナジウム又はそ
れを主成分とする結晶性組成物(バナジウムの原子価の
大部分(>70%)が4価であり、リンとバナジウムと
の原子比が0.9〜1.3、より好適には1.0〜1.2であるよう
な比で製造される組成物)が使用される。なお該結晶性
リン酸バナジウムを使用する場合、触媒調製に際しては
その前駆体である結晶性酸化物を使用してもよい。これ
はJack W.Johnson等がVO(HPO4)・0.5H2Oと報告しており
(J.Am.Chem.Soc.,106,8123(1984))、またC.C.Torardi等
が(VO)2H4P2O9と報告している(Inorg,Chem,.23,1308(19
84))化合物であつて、前記表Aの特徴的なX線回折ピー
クを示す。
無定形バナジウム−リン系複合酸化物の好適な例として
は、リン酸バナジウム溶液、または可溶性バナジウム化
合物と可溶性リン化合物との混合溶液を蒸発乾固するこ
とにより得られる複合酸化物が挙げられる。
上記結晶性バナジウム−リン系複合酸化物と無定形バナ
ジウム−リン系複合酸化物とはそれぞれを単独で使用す
ることもできるが、また両者を混合して使用することも
でき、そのことによつて活性及び強度の両面でより優れ
た触媒を得ることも可能である。この結晶性酸化物及び
無定形酸化物の両者を含有する触媒を製造するための好
適な方法の1つは、結晶性バナジウム−リン系複合酸化
物と、バナジウム及びリンを含有する水性溶液、例えば
少量のシユウ酸で安定化されたリン酸バナジウム水溶液
とを混合して水性スラリーを形成させ、これを蒸発乾固
することである。この際、触媒の担体成分となる担体物
質を添加併用しても良い。担体成分としては、シリカ、
アルミナ、炭化硅素、軽石、シリカアルミナ、コランダ
ム、ゼオライト、コージエライトその他種々の公知のも
のが使用できる。担体成分原料としてシリカゾルのよう
なコロイド溶液を使用し、バナジウム−リン系複合酸化
物又はその原料と共に水性スラリーを形成させた後に噴
霧乾燥させることにより流動床触媒として好適な微小球
状粒子からなる粉体を製造することも可能である。
金属賦活剤の原料としては、鉄、コバルト、ニツケル及
び銅の鉱酸塩、例えば硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化
物、炭酸塩、塩基性炭酸塩等、が使用できるが、酢酸
塩、シユウ酸塩、クエン酸塩等の種々の有機酸塩を使用
しても良い。金属賦活剤原料は水等の溶媒の溶液として
結晶性バナジウム−リン系複合酸化物、或いはバナジウ
ム及びリンを含有する水性溶液、或いはこれ等の混合物
のいずれと混合しても良く、いずれであつても操作の手
順について特に影響は顕著でない。しかしバナジウム及
びリンを含有する水性溶液に予め混合して蒸発乾固させ
る方法が実際の操作面で有利である。従つて金属賦活剤
を添加するための特に好適な方法は、第一原料として
の、前記表Bの特徴的なX線回折ピークを示す結晶性リ
ン酸バナジウム(結晶性バナジウム−リン系複合酸化
物)、及び前記金属賦活剤を含有するリン酸バナジル溶
液、を含有するスラリーを乾固させることである。
蒸発乾固させて得られた触媒組成物は、反応に使用する
に際して通常300〜700℃、好適には350〜62
0℃の温度で焼成され活性化される。焼成の雰囲気とし
ては空気或いは窒素、炭酸ガス、ヘリウム等の不活性ガ
ス、更にこれ等で希釈された低酸素空気等が使用でき
る。0.05〜2%程度の濃度のブタンやブテン類を含有す
る空気で反応ガス焼成して活性化する方法を採用するこ
ともできる。焼成にはマッフル炉、トンネル炉、ロータ
リーキルン、流動床焼成炉等の公知の種々の装置が使用
可能であるが、昇温により発生する水を連続的に系外に
除去するように上記ガスの気流流通下に実施するのが好
ましい。
本発明方法において用いられる原料は炭素原子数4の炭
化水素であり、好ましくは炭素原子数4の直鎖状炭化水
素である。具体的には例えばn−ブタン、1−ブテン、
2−ブテン、ブタジエンあるいはそれ等の混合物が挙げ
られる。炭化原子数4で側鎖を有する脂肪族炭化水素、
例えばイソブタン、イソブチレンからもより低収率では
あるが、無水マレイン酸が生成する。最も経済的に有利
な原料はn−ブタン及びブテン類であり、通常、天然ガ
スからの分離或いはナフサクラツキング又はFCC反応
によつて得られるO留分として、また希望すればこれ
らからブタジエンやイソブチレンを抽出した残りの混合
物として使用される。これらの場合には通常、C又は
の炭化水素類も不純物として混入するが、特に問題
はない。
本発明方法においてこれらの炭化水素は、前記バナジウ
ム−リン系触媒の存在下に、気相で接触酸化されて無水
マレイン酸を生成する。酸化剤としては分子状酸素含有
ガス、通常は空気が使用される。原料炭化水素は、空気
中の濃度として通常0.1〜8%(vol)、より好適には1.0
〜4.5%程度の範囲で、触媒層に空気と同時にまたは個
別に導入されて酸化される。反応温度は通常、300〜
500℃、より好適には360〜480℃の範囲であ
り、反応圧力は通常、常圧以上、より好適には0.1〜10k
g/cm3Gの範囲である。
〔実施例〕
次に実施例により本発明の実施の態様をより具体的に説
明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施
例によつて限定されるものではない。
触媒の製造例−1 (A)結晶性酸化物の前駆体の製造: 前記表AのX線回折ピークを示す結晶性酸化物の前駆体
を次のようにして製造した。
グラスライニングを施した容積100のジヤケツト付
き耐圧容器に、脱塩水38.0kg、85%リン酸21.83kg8
0%抱水ヒドラジン溶液2.85kgを仕込み、次いで攪拌し
ながら五酸化バナジウム粉末16.40kgを発泡に注意しな
がら少量ずつ添加溶解した。この間、発熱による温度上
昇を抑えて液温を60〜80℃に保つために、熱媒をジ
ヤケツト内に循環させて除熱した。五酸化バナジウムの
添加を約4時間で終了し、青色のリン酸バナジル溶液を
得た。これに種結晶1.0kgを添加し、次いで160℃の
熱媒をジヤケツト内に循環させて加熱した。液温度14
0℃まで2時間で昇温し、そのまま10時間の水熱処理
を行なつた。この間圧力は約0.24MPa(ゲージ圧)であ
つた。90℃まで冷却した後、脱塩水10.3kgを加えてス
ラリー中の固体濃度を約35%に調節して抜出した。
このスラリー中の固体のX線回折測定を行なつたとこ
ろ、表Aに示す主要回折ピークを示すことが判明し、純
粋な結晶性酸化物であることが確認された。またコール
ター・カウンター法でスラリー中の固体の粒子径分布を
調べたところ、0.7μmの平均粒子径を示した。この酸
化物スラリーを噴霧乾燥機を用いて乾燥し、酸化物の淡
青色の酸化物粉体29.8kgを得た。酸化物スラリーの仕込
み基準のP/V原子比は1.05であるが、過、洗浄して
得られる結晶性酸化物の前駆体は実質的に(VO)2H4P2O9
の組成式で表わされることを確認した。
(B)結晶性酸化物の製造: 上記(A)で得た前駆体を焼成し、前記表Bに示すX線回
折ピークを示す結晶性酸化物を製造した。
容量500のマツフル炉内に、10個の2容量の磁
製皿に上記(A)で得た前駆体10kgを分納して並べ、炉
内を充分窒素ガスで置換した後、昇温し、550℃で2
時間加熱した。次いで炉内に徐々に空気を導入して更に
1時間加熱した後、放冷した。
X線回折測定の結果、焼成後の粉体は前記表Bに示す回
折ピーク以外のピークは一切示さず、高純度の結晶性酸
化物であることを確認した。また酸化還元滴定法により
全バナジウム原子中の5価のバナジウムの割合を測定し
たところ、23.4%であつた。即ち(VO)2P2O7中のバナジ
ウムの少なくとも一部は結晶構造を保持したまま酸素吸
収をして5価の原子価状態をとり得る。
(C)リン酸バナジル溶液の製造: 無定形バナジウム−リン系複合酸化物の原料としてリン
酸バナジル溶液を製造した。
85%リン酸2.956kgを脱塩水3.0kgに溶解し、更にシユ
ウ酸(H2C2O4・2H2O)2.55kgを添加し、加温溶解した。液
を80℃に加熱し、五酸化バナジウム1.842kgを発泡に
注意しながら少量ずつ添加、溶解した後、煮沸状態で更
に10分間加熱して還元を完了させた。液を放冷し、脱
塩水を加えて全量を10.00kgに調節した。この溶液のP/V
原子比は1,2666、酸化物(V2O4+P2O5)濃度は35.0%であ
る。
(D)触媒の製造: 前記(B)で得た焼成粉体353.2g、前記(C)で得たリン酸バ
ナジル溶液1.143kg、および市販の40%濃度のコロイ
ド状シリカ溶液625.1gを脱塩水2.84kgで希釈した溶液を
混合し、得られたスラリーを連続湿式粉砕機で処理して
充分均質化した。このスラリーを噴霧乾燥機を用いて乾
燥し、平均粒子径58μmの真球性の触媒粒子を得た。
これを350℃で1時間、空気気流下に、次いで500
℃で2時間、窒素気流下に焼成して流動床触媒(触媒−
1)を得た。
触媒の製造例−2 触媒−1に塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)、塩基性炭酸コバル
ト(2CoCO3・3Co(OH)2・H2O)、酢酸ニツケル(Ni(OCOCH3)2
4H2O)又は酢酸銅(Cu(OCOCH3)2・H2O)の酸性テトラヒドロ
フラン(THF)溶液を含浸させた後、乾固・焼成して
活性促進成分(Fe、Co、Ni、Cu)の1種又は2種以上を結合
させた触媒(触媒−2〜10)を製造した。
実施例−1〜2及び比較例−1〜8 触媒−1〜10の各20mlを用い、小型の硬質ガラス製
流動床反応器を用いて、2%ブタン/空気混合ガスを導
入してGHSV=700hr-1の条件で反応させた。生成物を分
析した結果は表−1に示すとおりである。
表−1より明らかなように、Fe、Co、Ni及びCuの特定量を
含む活性促進成分を使用した場合に反応温度の低下と無
水マレイン酸収率の向上が認められる。過剰量の活性促
進成分の使用においては燃焼活性が増大し、反応温度の
低下には有効でも、無水マレイン酸の収率が低下する逆
効果がでてくる。従来公知の促進剤であるコバルトや鉄
の単独使用では効果が小さく、本発明の効果とは明瞭に
識別できる。
触媒の製造例−3 触媒の製造例−1(D)のスラリー調合工程でスラリー中
に活性促進成分の原料化合物を添加したほかは触媒の製
造例−1と同様にして触媒(触媒−11〜16)を製造
した。これを打錠成型機により7mmφ×3mm厚に成
型し、次いで破砕・篩分して粒度14〜24メツシユの
粉末を得た後、反応に供した。
実施例−3〜7及び比較例−9 触媒−11〜16の各1mlを使用し、小型固定床反応器
により活性テストを行なつた。2%ブタン/空気混合ガ
スを導入し、GHSV2000hr-1の条件で反応を行なつた。結
果を表−2に示した。
表−2より明らかなように、微量の金属賦活剤の使用に
より無水マレイン酸収率に大きな影響を与えることな
く、反応温度を10〜20℃も低下できるようになり、
廃ガスの爆発危険性の回避による安全性向上に効果が認
められた。
実施例−8 打錠成型、破砕・篩分前の触媒−16(流動床触媒)を
使用して、実施例−1と同じ小型流動床反応器で同一条
件により活性を調べた結果は表−3の通りであつた。
表−3より本発明の触媒活性の向上による反応温度低下
効果が明瞭に示された。
比較例−10 触媒−1にコバルトモリブデン酸塩の酸性テトラヒドロ
フラン(THF)溶液を含浸させた後、乾固・焼成して
活性促進成分(Co、Mo)を結合させた触媒(Co/
Mo=10/1、〔Co+Mo〕/v=0.02いずれも原
子比)につき、実施例−1〜2及び比較例−1〜8と同
様の条件下、428℃で反応させた。その結果、ブタン
変換収率が82.4%、無水マレイン酸の収率が47.0%、選
択率が57.0%であった。
〔発明の効果〕
本発明に従い、高活性かつ高選択性の触媒を使用して炭
素数4の炭化水素の気相酸化により無水マレイン酸を製
造することができる。本発明により反応温度の低下が達
成され、経済性の向上と爆発の危険性の減少がもたらさ
れる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素数4の炭化水素及び分子状酸素を含有
    する気体混合物を、活性成分が主としてバナジウム、リ
    ン及び酸素からなる複合酸化物であつて、更に鉄、コバ
    ルト、ニツケル及び銅からなる群から選ばれた少なくと
    も2種の活性促進成分を合計量で上記バナジウム原子1
    モル当り0.0001〜0.05モルの範囲で含有する触媒と接触
    させることを特徴とする無水マレイン酸の製造法。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項に記載の無水マレイ
    ン酸の製造法において、該触媒が、第一原料としての、
    バナジウム、リン及び酸素からなり、下記表B:表B X線回折ピーク (対陰極:Cu−Kα)2θ(±0.2°) 14.2° 15.7° 18.5° 23.0° 28.4° 30.0° 33.7° 36.8° の特徴的なX線回折ピークを示す結晶性リン酸バナジウ
    ム、並びに第二原料としての、鉄、コバルト、ニツケル
    及び銅からなる群から選ばれた少なくとも2種の活性促
    進成分を含有するリン酸バナジル溶液、を含有するスラ
    リーを乾固させ、焼成して得られる触媒組成物であるこ
    とを特徴とする方法。
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