JPH0635481B2 - ジグルコシル−α−サイクロデキストリンおよびその製造方法 - Google Patents

ジグルコシル−α−サイクロデキストリンおよびその製造方法

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JPH0635481B2
JPH0635481B2 JP420686A JP420686A JPH0635481B2 JP H0635481 B2 JPH0635481 B2 JP H0635481B2 JP 420686 A JP420686 A JP 420686A JP 420686 A JP420686 A JP 420686A JP H0635481 B2 JPH0635481 B2 JP H0635481B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、新規な分岐サイクロデキストリンおよびその
製造方法に関し、更に詳細には、ジグルコシル−α−サ
イクロデキストリンおよびその製造方法に関する。
従来の技術 サイクロデキストリンはグルコース残基がα−1,4−
結合により環状に結合したオリゴ糖であって、グルコー
ス残基6個からなるα−サイクロデキストリン、7個か
らなるβ−サイクロデキストリン及び8個からなるγ−
サイクロデキストリンなどが一般に知られている。
サイクロデキストリンは、内部に空隙がある構造を有
し、この空隙内部は親油性領域となっているので各種の
油性物質を取り込むことができる。そのため、このよう
な性質を利用してサイクロデキストリンは、不安定物
質の安定化、揮発性物質の保持、異臭のマスキン
グ、難・不溶性物質の可溶化などの各種用途への応用
が考えられている。
しかしながら、α−サイクロデキストリンおよびβ−サ
イクロデキストリンは低温域(室温以下)での水に対す
る溶解度が極めて低いことから、この点における改良が
実用上待たれていた。
発明が解決しようとする問題点 α−サイクロデキストリンについては、既に、グルコー
ス残基のC6の位置にグルコース又はマルトースがα−
1,6−結合により結合した分岐サイクロデキストリン
が知られており、このものは分岐の無いものに比べて水
への溶解度が高いことが知られている。
本発明者らは、α−サイクロデキストリンの溶解性を高
めることを目的として種々研究を行った結果、α−サイ
クロデキストリンとマルトースををプルラナーゼの存在
下に反応させることにより、得られるジマルトシル−α
−サイクロデキストリンにグルコアミラーゼを作用させ
ることにより、溶解性、安定性ともに優れたジグルコシ
ル−α−サイクロデキストリンが生成することを見出
し、本発明を完成するに至った。
問題点を解決するための手段 本発明は、ジマルトシル−α−サイクロデキストリンに
グルコアミラーゼを作用させて、ジグルコシル−α−サ
イクロデキストリンを生成させることから成るジグルコ
シル−α−サイクロデキストリンの製造方法およびかく
して得られるジグルコシル−α−サイクロデキストリン
に関する。
本発明により得られるジグルコシル−α−サイクロデキ
ストリンは、一般式(C6H10O5で表わされ、下記の
理化学的性質を有する新規化合物である。
1)分子量:1297 質量分析測定法(Secondary Ion Mass Spectrometr
y;SIMS法)により測定(第1図参照) 2)融 点:275℃(非結晶;分解) 3)比旋光度〔α▲〕20 D▼+161(C=0.1;H2O) 4)ペーパークロマトグラフィー: 1−ブタノール:1−プロパノール:水=3:5:4の
展開溶媒を使用してペーパー上に展開した後、ヨウ素溶
液を用いて発色させたときに1スポットを示す。
5)薄層クロマトグラフィー: 1−ブタノール:エタノール:水=5:5:3の展
開溶媒を使用して薄層板〔DC−Fertigplatten Kieselg
el 60(メルク社製)〕上に展開した後、ヨウ素溶液を
用いる発色またはリンモリブデン酸/硫酸を用いる発色
により呈色させたときにRf=0.29に1スポットを示す。
1−ブタノール:ビリジン:水=6:4:3の展開
溶媒を使用し、と同様に処理したときにRf=0.33に1
スポットを示す。
6)高速液体クロマトグラフィー: (条件1) カラムサイズ:6φ×50mm 担体:Nucleosil−5NH2(ナーゲル社製) 溶媒:アセトニトリル:水=70:30 流速:2.0ml/min 検出器:示差屈折計 ERC7520型(エルマ光学(株)
製) (条件2) カラムサイズ:6φ×150mm 担体:Spherisorb ODS−II(フェーズセップ社製) 溶媒:メタノール:水:8:92 流速及び検出器:条件1と同じ 本品は上記各条件でそれぞれ1ピークを示す。
7)溶解性:水に易溶、メタノールに難溶 8)性 状:粉末は白色であり、水溶液は無色 9)赤外線吸収スペクトル(第2図参照): ν=3,400cm-1、2,920cm-1、1,150cm-1及び1,030cm-1
吸収を認める。
10)C核磁気共鳴スペクトル(第3図参照): δ(D2O) 69.5(1−6結合のC6) 101.5(1−6結合のC1) 11)メチル化分析 箱守法に従ってメチル化した後、メチル化物の加水分解
を行い、生成した加水分解物を還元、アセチル化してア
ルディトール−アセテートに誘導し、ガスクロマトグラ
フィーにより同定すると、2,3,4,6−テトラ−O−メチ
ルグルコース、2,3,6−トリ−O−メチルグルコース及
び2,3−ジ−O−メチルグルコースのモル比は、1.9:4.
0:1.8を示す。
なお、上記理化学的性質を有するジグルコシル−α−サ
イクロデキストリンは、α−サイクロデキストリンを構
成する環状のグルコース残基(6位)にグルコシル基が
2個、それぞれ別々の位置にα−1,6−結合した構造
から成るものであることが、メチル化分析および分子量
(質量分析)により示された。
本発明によれば、かかるジグルコシル−α−サイクロデ
キストリンは次の如くして製造することができる。
即ち、ジマルトシル−α−サイクロデキストリンを固形
分濃度(基質濃度)5〜35%の溶液に調製した後、グ
ルコアミラーゼを所定量加え、液の温度、pHなどを酵素
の好適作用範囲に維持し、例えば1〜24時間反応させ
てジグルコシル−α−サイクロデキストリンを生成さ
せ、次いで、得られた生成物を所望によりクロマトグラ
フィーなどの方法によって反応液から分離して回収する
ことにより製造することができる。
本発明方法において使用されるグルコアミラーゼとして
は、リゾープス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾ
ープス・デルマー(Rhizopus delemar)などの微生物
由来の市販品が挙げられ、これら酵素の使用量は基質の
品質あるいは反応の実施形式などにより多少の違いはあ
るが、通常の場合、ジマルトシル−α−サイクロデキス
トリン1g当り5単位もしくはそれ以上の量で用いられ
る。
また、本発明方法において原料として使用されるジマル
トシル−α−サイクロデキストリンは、例えばα−サイ
クロデキストリンとマルトースとをプルラナーゼの存在
下に反応させ、得られた生成物を反応液中から分離回収
することにより取得することができる。
本発明に係るジグルコシル−α−サイクロデキストリン
の製造反応は、基本的にはジマルトシル−α−サイクロ
デキストリンにグルコアミラーゼを作用させることによ
り実施されるが、場合により、α−サイクロデキストリ
ンとマルトースとをプルラナーゼの存在下に反応させ、
生成するジマルトシル−α−サイクロデキストリンを単
離することなく、引き続きこの反応液に直接グルコアミ
ラーゼを作用させて、ジグルコシル−α−サイクロデキ
ストリンを生成させることも可能である。
本発明の方法によれば、反応はグルコアミラーゼの作用
条件に適合させて実施され、反応温度、反応pHなどは、
使用される酵素の種類(起源)によって多少の差はある
が、一般に温度30〜60℃、pH3.5〜6.5の範囲内で
行なうのが望ましい。
生成したジグルコシル−α−サイクロデキストリンを反
応液から分離するには、例えば、トヨパールHW−40
S〔東洋曹達(株)製〕を用いたカラムクロマトグラフ
ィー又はワットマン17クロムによるペーパークロマト
グラフィーなどを用いることにより容易に行うことがで
きるが、工業的には特にコスト上の理由からイオン交換
樹脂クロマトグラフィー、大量ゲルろ過分離法などを用
いるのが有利である。
発明の効果 本発明により得られるジグルコシル−α−サイクロデキ
ストリンは、公知のα−サイクロデキストリンと同程度
の強い包接力を維持しつつ、格段に優れた溶解性を有し
ているので、医薬品、食品、化粧品その他一般の化学工
業分野でのサイクロデキストリンの用途開発に寄与する
ところが大きい。
実施例 次に参考例及び実施例を示し、本発明を更に詳細かつ具
体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの例に限定す
るものでないことはいうまでもない。
参考例:ジマルトシル−α−サイクロデキストリンの製
造 マルトース(日本澱粉工業(株)製、純度99%)1.5
0gとα−サイクロデキストリン(日本食品化工(株)
製、純度98%)0.50gに、pH5.0の50mM酢酸ナト
リウム緩衝液0.85mlを加え、沸騰浴中で加熱して溶解さ
せた。反応液を冷却後、これにバシラス・sp(Bacillus
sp)の耐熱性プルラナーゼ(ノボ・インダストリー・
ジャパン社製、200単位/g)100単位を加え、温度60
℃で48時間反応させた。
反応終了後、この反応液をトヨパールHW−40Sを充
填したカラム(4.5φ×100cm:2本)によりゲルろ過
クロマトグラフィーにかけて分離精製した。試料負荷後
14〜15時間後に溶出されてくるフラクションを集め、ロ
ータリーエバポレーターで濃縮乾燥して、ジマルトシル
−α−サイクロデキストリンの白色粉末155.8mgを得
た。
実施例1 参考例で調製したジマルトシル−α−サイクロデキスト
リン粉末10.0gを、pH5.0の50mM酢酸ナトリウム緩
衝液200mlに溶解し、これにリゾープス・ニベウス(Rhi
zopus niveus)のグルコアミラーゼ(生化学工業
(株)製33.6単位/mg)50単位を加えて温度50℃で10
時間反応させた後、沸騰浴中で加熱して酵素反応を停止
した。
得られた反応液を冷却した後、メンブランフィルター
(東洋ろ紙(株)製、セルロースニトレイトTM−2、
孔径0.45μm)を用いてろ過し、濾液の濃度を10%
に調整し、この溶液10mlをトヨパールHW−40Sを充填
したカラム(4.5φ×100cm:2本)によりゲルろ過
クロマトグラフィーにかけて分離精製を行い、目的のジ
グルコシル−α−サイクロデキストリン720mgを得
た。
得られたジグルコシル−α−サイクロデキストリンの元
素分析値及び質量分析値は、次の通りであった。
元素分析値(C48H80O40): 計算値:C=44.45% H=6.22% O=49.34% 実測値:C=44.39% H=6.21% 質量分析値(SIMS法): 質量1296.4220、分子量1297.1448 m/z 1297に(M+H)イオンを検出した。ま
た、このものは275℃で分解した。
実施例2 ジマルトシル−α−サイクロデキストリン粉末20g
を、pH5.0の50mM酢酸ナトリウム緩衝液100mlに溶解
し、これにリゾープス・ニベウス(Rhizopus niveus)
のグルコアミラーゼ(生化学工業(株)製33.6単位/m
g)200単位を加え、温度40で24時間反応させた後、沸騰
浴中で加熱して酵素反応を停止した。
得られた反応液を冷却した後、メンブランフィルター
(東洋ろ紙(株)製、セルロースニトレイトTM−2、
孔径0.45μm)を用いてろ過し、濾液の濃度を10%に調
整し、この溶液10mlをトヨパールHW−40Sを充填した
カラム(4.5φ×100cm:2本)によりゲルろ過クロマ
トグラフィーにかけて分離精製を行い、目的のジグルコ
シル−α−サイクロデキストリン700mgを得た。
実施例3 ジマルトシル−α−サイクロデキストリン粉末10g
を、pH5.0の50mM酢酸ナトリウム緩衝液90mlに溶
解し、これにリゾープス・ニベウス(Rhizopus niveu
s)のグルコアミラーゼ(生化学工業(株)製33.6単位
/mg)200単位を加え、温度50℃で5時間反応させた
後、沸騰浴中で加熱し、酵素反応を停止した。
反応液を冷却した後、メンブランフィルター(東洋ろ紙
(株)製、セルロースニトレイトTM−2、孔径0.45μ
m)を用いてろ過し、ろ液10mlをトヨパールHW−4
0Sを充填したカラム(4.5φ×100cm:2本)によ
りゲルろ過クロマトグラフィーにかけて分離精製を行
い、目的のジグルコシル−α−サイクロデキストリン7
10mgを得た。
【図面の簡単な説明】
第1図はジグルコシル−α−サイクロデキストリンの質
量スペクトルを示し、 第2図はジグルコシル−α−サイクロデキストリンの赤
外線吸収スペクトルを示しそして 第3図はジグルコシル−α−サイクロデキストリンの13
C核磁気共鳴スペクトルを示す。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(C6H10O5で表わされ、下記の
    理化学的性質を有するジグルコシル−α−サイクロデキ
    ストリン。 1)分子量:1297 質量分析測定法(Secondary Ion Mass Spectrometr
    y;SIMS法)により測定(第1図参照) 2)融 点:275℃(非結晶;分解) 3)比旋光度〔α▲〕20 D▼+161(C=0.1;H2O) 4)ペーパークロマトグラフィー: 1−ブタノール:1−プロパノール:水=3:5:4の
    展開溶媒を使用してペーパー上に展開した後、ヨウ素溶
    液を用いて発色させたときに1スポットを示す。 5)薄層クロマトグラフィー 1−ブタノール:エタノール:水=5:5:3の展
    開溶媒を使用して薄層板〔DC−Fertigplatten Kieselg
    el 60(メルク社製)〕上に展開した後、ヨウ素溶液を
    用いる発色またはリンモリブデン酸/硫酸を用いる発色
    により呈色させたときにRf=0.29に1スポットを示す。 1−ブタノール:ピリジン:水=6:4:3の展開
    溶媒を使用し、と同様に処理したときにRf=0.33に1
    スポットを示す。 6)高速液体クロマトグラフィー (条件1) カラムサイズ:6φ×50mm 担体:Nucleosil−5NH2(ナーゲル社製) 溶媒:アセトニトリル:水=70:30 流速:2.0ml/min 検出器:示差屈折計ERC7520型(エルマ光学(株)製) (条件2) カラムサイズ:6φ×150mm 担体:Spherisorb ODS−II(フェーズセップ社製) 溶媒:メタノール:水=8:92 流速及び検出器:条件1と同じ 本品は上記各条件でそれぞれ1ピークを示す。 7)溶解性:水に易溶、メタノールに難溶 8)性 状:粉末は白色であり、水溶液は無色 9)赤外線吸収スペクトル(第2図参照) ν=3,400cm-1、2,920cm-1、1,150cm-1及び1,030cm-1
    吸収を認める。 10)13C核磁気共鳴スペクトル(第3図参照): δ(D2O) 69.5(1−6結合のC6) 101.5(1−6結合のC1) 11)メチル化分析 箱守法に従ってメチル化した後、メチル化物の加水分解
    を行い、生成した加水分解物を還元、アセチル化してア
    ルディトール−アセテートに誘導し、ガスクロマトグラ
    フィーにより同定すると、2,3,4,6−テトラ−0−メチ
    ルグルコース、2,3,6−トリ−0−メチルグルコース及
    び2,3−ジ−0−メチルグルコースのモル比は1.9:4.
    0:1.8を示す。
  2. 【請求項2】ジマルトシル−α−サイクロデキストリン
    にグルコアミラーゼを作用させて、ジグルコシル−α−
    サイクロデキストリンを生成させることを特徴とする一
    般式(C6H10O5で表わされるジグルコシル−α−サ
    イクロデキストリンの製造方法。
JP420686A 1986-01-14 1986-01-14 ジグルコシル−α−サイクロデキストリンおよびその製造方法 Expired - Lifetime JPH0635481B2 (ja)

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