JPH0634752B2 - 2−アルカノールの光学活性エステルの製造方法 - Google Patents

2−アルカノールの光学活性エステルの製造方法

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JPH0634752B2
JPH0634752B2 JP63239373A JP23937388A JPH0634752B2 JP H0634752 B2 JPH0634752 B2 JP H0634752B2 JP 63239373 A JP63239373 A JP 63239373A JP 23937388 A JP23937388 A JP 23937388A JP H0634752 B2 JPH0634752 B2 JP H0634752B2
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博文 平田
勝彦 樋口
孝雄 山科
一彦 石川
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は酵素を用いる2−アルカノールの光学活性エス
テルの製造方法に関する。
(従来の技術) 従来、酵素を用いた2−アルカノールの光学分割や2−
アルカノールの光学活性エステルの合成方法としては、
下記式のように2−アルカノールの脂肪酸エステルを特
異的に加水分解する方法が用いられている。
(式中、R11は炭素数1〜12のアルキル基と、R12
炭素数1〜10のアルキル基を示す。) しかし、この種の反応を触媒する酵素は反応によって生
成する脂肪酸による阻害効果を受け易く、反応が途中で
停止したり、反応が遅くなるという欠点を持っている。
また、下記式のように加水分解の逆反応であるエステル
化を用いて光学活性エステルを合成する方法も知られて
いる。
(式中、R11及びR12は前記と同じ意味をもつ。) この場合も原料である脂肪酸による阻害効果あるいは酵
素の失活を防ぐため濃い緩衝剤を用いられている。ま
た、逆反応を用いているので、反応の平衡をずらすため
一方の基質(一般にはアルコール)を大過剰に使用して
行われており、目的物の分離面でコスト高になるという
欠点がある。
これに対して、反応自体に水が関与しないエステル交換
を用いれば多量の脂肪酸を生成させることなしに目的と
する2−アルカノールの光学活性エステルの合成や2−
アルカノールの光学分割が原理的に可能となる。この方
法はすでにKlibanovら[B.Combou,A.M.Klivanov,G.Am.C
hem.Soc.,106,2687〜2692(1984)]によって報告されて
いる。彼らの方法は多孔性担体の孔に酵素を固定化し
て、多孔体の孔の界面(酵素は孔の中の緩衝液中に溶
解)で行う、いわゆる二相系反応により光学活性エステ
ルを合成する方法である。
Klibanovらの行った固定化ではCandida cylindracea由
来のリパーゼを用いて、トリブチリンと数種の2−アル
カノールとのエステル交換を行っているが、本発明者ら
の追試の結果 1)酵素タンパクの孔への固定化の再現性が乏しく、む
し多孔性担体の表面に酵素が付着する。
2)そのため、反応中に酵素タンパクが離脱し、文献に
示されるような反応は殆ど起こらない(同一条件でのト
リブチリンと2−オクタノールとの反応では高々4〜5
%位であった)。
という問題点があることがわかった。
(発明が解決しようとする課題) したがって本発明は加水分解による方法では必然的(主
反応の生成物として)生ずる脂肪酸の阻害効果を除く
か、もしくは軽減し、かつ、固定化などのはん雑な操作
なしに容易に2−アルカノールの光学活性エステルを製
造する方法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段) 本発明の上記目的は、トリグリセリドと2−アルカノー
ルとを実質的に無水の条件下、粉末状リパーゼの存在下
でエステル交換反応させることを特徴とする2−アルカ
ノールの光学活性エステルの製造方法により達成され
た。
本発明の反応は次式によって表わすことができる。
(式中、R及びRはアルキル基を示す。) 本発明に用いられるトリグリセリド〔I〕においてR
のアルキル基の炭素数は特に制限はないが、3以上が好
ましく、3〜22がより好ましい。このアルキル基の炭
素数が大きくなるとトリグリセリドは常温で固体となる
が、有機溶媒中で反応を行わせることによりその反応に
使用することができる。
また式〔II〕で表わされる2−アルカノールにおける
で表わされるアルキル基の炭素数は通常1〜30で
あり、好ましくは3〜12である。
本発明の反応は実質的に無水の条件下で行われるが、実
質的に無水とは含有水分量が1vol%以下のことをい
い、これは無溶媒又は非溶媒中での反応させることによ
り達成できる。このように実質的に無水で反応させるこ
とにより副反応(加水分解)による脂肪酸の生成を防ぐ
ことができる。
本発明の反応に用いられる非水溶媒(有機溶媒)として
はヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、四塩
化炭素、イソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテ
ルなどが挙げられる。
本発明に用いられるリパーゼとして、ポルシン・パンク
レアス(Porcin pancreas)、シュードモナース・フロ
ーレスセンス((Pseudomonas fluorescens)、シュー
ドモナース・スペーシーズ(Pseudomonas species)が
好ましいものとして挙げられる。
このリパーゼは粉末状で反応系に添加されるが、リパー
ゼは粉末状態のまま加え、通常の化学反応で用いられる
ような攪拌下で行う。この場合、コストを下げるため、
酵素は安価で入手可能な粗精製品を用いることができ
る。
リパーゼの使用量は、反応溶液1mに対し通常10mg
以上、より好ましくは50〜300mgの範囲である。
トリグリセリド〔I〕と2−アルカノール〔II〕とのモ
ル比〔II〕/〔I〕は通常1〜20、好ましくは1〜3
である。
反応温度は10〜90℃、好ましくは常温であり、反応
時間は5時間以上、好ましくは10時間以上、より好ま
しくは30〜150時間である。
本発明において目的の光学活性エステルの反応系からの
分離は常法に従って行うことができる。具体的には減圧
蒸留、カラムクロマトグラフィーなどを採用して行うこ
とができる。
(発明の効果) 本発明によれば、反応は無溶媒又は非水溶媒中で行われ
脂肪酸等の生成を経ることなく、選択率良く、トリグリ
セリドから2−アルカノールの光学活性エステルを得る
ことができるという優れた効果を奏する。この際、酵素
(リパーゼ)の固定化などのはん雑な操作を必要とせ
ず、工業的に実施する方法として好適である。
さらに本発明方法は有機溶媒中で行う場合でも酵素の活
性が発現されるばかりでなく常温で液体のトリグリセリ
ドの代わりに常温で固体のもの(例えばトリラウリン)
を原料として利用でき、原料選択の幅が広いという優れ
た効果を奏する。
本発明方法により得られる光学活性エステルは医薬品の
中間体である光学活性2−アルカノールの製造、光学活
性液晶材料の製造などに有用である。
(実施例) 次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
実施例1 RS−2−オクタノール0.2Mを含むトリブチリン1
0mと第1表に示す酵素1.0gを丸底フラスコに採
りさらに反応液所定量の水を添加した。次に、30℃で
フットボール型攪拌子により500rpm以上で回転させ
ながら反応液を攪拌した。24時間後、反応液の一部
(0.2m)を5mのクロロホルムに希釈し、濾過
で酵素を除き、ガスクロマトグラフィーで分析を行っ
た。結果を第2表に示した。
第2表の結果より明らかなようにC.c.リパーゼでは添加
水分量が0.5%の時に最大の活性を示すが、他の三種
のリパーゼでは添加水分量が0%のときに最大活性(反
応率)を示す。また、いずれの場合も、添加水分量が1
%を越えると極端に反応性が低下する。
上記の実験とそれぞれ同様の反応条件で、添加水分量の
効果を詳しく調べた。本実験では特に反応初期について
調べた。結果を第1図に示す。
リパーゼの種類と添加水分量0%のときの反応溶液中の
水分量は次の通りである。
A:C.c.(0.34vol%) B:P.s.(0.23vol%) C:P.f.(0.17vol%) D:P.p.(0.07vol%) E:P.c.(0.14vol%) 反応時間(t)は次の通りである。
a:t=30分 b:t=65分 C:t=1時間 d:t=2時間 e:t=3時間 f:t=5時間 g:t=10時間 h:t=23時間 第1図の結果から明らかなようにC.c.リパーゼでは添加
水分量が0.5vol%のときに最大の活性を示すが、他
の5種の酵素では添加水分量が0%のときに最大の活性
を示し、添加水分量が増加すると酵素活性が低下する。
実施例2 R(−)−2−オクタノール0.2MまたはS(+)−
2−オクタノール0.2Mを含むトリブチリン溶液10
mに酵素1gを加え(C.c.の場合のみ水を0.5vol
%=50μを添加した)、30℃、500rpm以上で
攪拌しながら反応を行った。各反応の反応率を10時間
にわたって測定した結果を第2図に示した。
第2図の結果より、明らかなように、P.p.、P.s.、P.f.リ
パーゼの場合はR(−)−2−オクタノールの方がS
(+)−2−オクタノールよりもかなり速く反応する。
すなわち、RS−2−オクタノールとトリブチリンとの
エステル交換ではR(−)2−オクタノールのエステル
を優先的に生成することがわかる。
一方、P.c.、P.r.、リパーゼの場合は1)、2)とは逆に
S体の方がR体よりも反応が速く、ラセミ体を用いた合
成ではS体アルコールのエステルが多く発生することが
わかる。
実施例3 RS−2−オクタノール24gとトリブチリン70gと
の混合物に酵素(P.f.リパーゼ)10gを加え、30
℃、500rpm以上で攪拌して反応させた。50時間
後、反応液を300mのヘキサンに溶解させ、濾過に
より酵素タンパクを除去し、無水硫酸ナトリウムで脱水
し、エパポレーターで溶媒を除去した。残留物の重量は
91.6gであった。この残留物を減圧蒸留し、77〜
110℃/10mmgの留分(アルコールとエステルが主
成分)を合わせ、シリカゲル(240g)を充填したカ
ラムに負荷した。50%ベンゼン/ヘキサンで溶出する
と0.4〜1.6のフラクションから目的とする光学
活性2−オクチル酪酸(純度100%)が得られた。
P.f.以外の酵素も同様の方法で、目的とするエステルを
得た。結果を第3表に示した。
第3表の結果から明らかなようにP.s.、P.f.、P.p.リパー
ゼを用いてR(−)−2−オクチル酪酸(光学活性エス
テル)が得られ、反応は遅いがP.p.が最も優れており、
P.p.>P.s.>P.f.の順の特異性を示す。
実施例4 2−オクタノール以外の2−アルカノールを用いた以外
は実施例3と同様にしてエステル交換による対応光学活
性エステルの合成を行った。その結果を第4表に示し
た。
実施例5 RもしくはS−2−オクタノール0.2Mとトリブチリ
ン0.2Mとの混合物を下記第5表に示す溶媒に溶解し
リパーゼを100mg/mlの濃度で加え、水分量の0.2
〜0.6vol%で、30℃、500rpm以上で攪拌してそ
れぞれの反応の経時変化を調べた。以下実施例2と同様
に処理して目的とするエステルの生成率を求めた。その
結果を第5表に示した。
同表から明らかなようにR体及びS体アルコールの一定
時間後の反応率から[R(%)−S(%)]/[R
(%)+S(%)]を計算すると、ほとんど一定となっ
た。ここでR(%)及びS(%)は一定時間後(いずれ
も同一時間)の反応率を示す。また[R(%)−S
(%)]/[R(%)+S(%)]はRS−2−オクタ
ノールとトリブチリンとのエステル交換から合成した光
学活性エステル、光学純度(e.e.)に相当する。例
えばトリブチリン中、P.s.リパーゼによるエステル交換
では[R(%)−S(%)]/[R(%)+S(%)]
の値は0.80〜0.83であり、単離したエステルの
e.e.は0.81とほぼ一致する。また、P.p.ではA=
[R(%)−S(%)]/[R(%)+S(%)]は
0.87で、e.e.は0.99以上であり、単離エステル
の方がAの値から予想するよりも高いe.e.を有すること
になる。したがって、第5表からは、有機溶媒中では
[R(%)−S(%)]/[R(%)+S(%)]と同
程度か、それ以上のe.e.(光学純度)を有するエステル
が合成できることが分る。
【図面の簡単な説明】
第1図はエステル交換反応率と反応系の含有水分量との
関係を示すグラフである。第2図R(−)又はS(+)
−2−オクタノールのエステル交換反応率をそれぞれ示
すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】トリグリセリドと2−アルカノールとを実
    質的に無水の条件下、粉末状リパーゼの存在下でエステ
    ル交換反応させることを特徴とする2−アルカノールの
    光学活性エステルの製造方法。
JP63239373A 1988-09-24 1988-09-24 2−アルカノールの光学活性エステルの製造方法 Expired - Lifetime JPH0634752B2 (ja)

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