JPH06340922A - 低降伏比高張力鋼管の製造方法 - Google Patents

低降伏比高張力鋼管の製造方法

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JPH06340922A
JPH06340922A JP13068293A JP13068293A JPH06340922A JP H06340922 A JPH06340922 A JP H06340922A JP 13068293 A JP13068293 A JP 13068293A JP 13068293 A JP13068293 A JP 13068293A JP H06340922 A JPH06340922 A JP H06340922A
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Hiroshi Iki
浩 壱岐
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 0.2 %YS≧440N/mm2、TS:590 〜740N/mm2
YR≦80%、El≧20%、vE0 ≧27Jの機械的特性を有し、
建造物、橋梁、タンク等の鋼構造物の建築材料として使
用するのに好適な低降伏比高張力鋼管を製造する。 【構成】 C:0.02〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:
0.50〜2.00%、Cu:0.10〜1.5 %、Ni:0.10〜0.50%、
Nb:0.005 〜0.10%、V:0.005 〜0.10%、残部Feおよ
び不可避的不純物であって、炭素当量Ceq(W) が0.38%
以上0.45%以下である鋼片に、900 ℃以上の温度域にお
ける1パス当たりの圧下率が4%以下となるようにして
熱間圧延を行って所定の板厚の熱延鋼板とし、該熱延鋼
板に、Ac3点以上の温度域から焼入れを行い、引き続き
Ac1点以上 Ac3点以下の2相温度域に再加熱して2相温
度域から焼入れを行い、さらに焼戻しを行ってから、製
管を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建造物、橋梁、タンク
等の鋼構造物の建築材料として使用するのに好適な、降
伏比:80%以下、引張強さ:590N/mm2以上の低降伏比高
張力鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、建造物、橋梁、タンク等の鋼
構造物は徐々に大型化される傾向にあり、かかる大型化
に対応するため、鋼構造物の建築材料である鋼材には、
高強度化および厚肉化が求められている。求められる強
度のレベルは引張強さ:590N/mm2以上である。
【0003】また、鋼構造物に生じる脆性破壊を防止す
るため、上記の鋼材には降伏比 [引張強さに対する降伏
強さ (降伏点または耐力) の割合] が低いことも要求さ
れている。求められる降伏比のレベルは降伏比:80%以
下である。このような低降伏比高張力鋼材を製造する方
法が従来より種々提案されている。
【0004】特開平2−205626号公報には、C:0.02〜
0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.20〜2.00%およびA
l:0.010 〜0.100 %と、さらにCu:0.10〜2.00%、N
b:0.005 〜0.10%、V:0.005 〜0.10%、Ti:0.005
〜0.10%のうちの1種または2種以上、さらに必要に応
じて、Ni:0.10〜2.00%、Cr:0.10〜1.00%、Mo:0.05
〜0.50%およびB:0.0003〜0.0030%のうちの1種また
は2種以上を、次式
【0005】
【数2】 DI = (17−0.1Nr)×8√C×(0.7Si+1) ×(3.3Mn+1) ×(0.4Cu+1) × ( 0.4Ni +1) ×(2.2Cr+1) ×(3.0Mo+1) ×(1.8V+1) ×(200B+1) ≦ex p(0.015t+2.0) ただし、Nr:焼入れ時のASTMオーステナイト粒度番号 t:板厚(mm) を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不純物か
らなる鋼片に熱間圧延を行った後、焼入れ焼戻し処理ま
たは直接焼入れ焼戻し処理を行うことにより、タンクや
ペンストック等の溶接構造物用材料に適した低降伏比高
張力鋼板を製造する方法が提案されている。
【0006】この方法は、略述すれば、引張強さ:588N
/mm2級以上の鋼板の降伏比を低減する手段として、 (フ
ェライト+オーステナイト) 2相域からの焼入れ工程を
含む多段熱処理、具体的にはQ−Q' −T、DQ−Q'
−TおよびDQ' −T [ただし、Q:オーステナイト域
焼入れ、Q' : (フェライト+オーステナイト) 2相域
焼入れ、DQ:オーステナイト域直接焼入れ、DQ' :
(フェライト+オーステナイト) 2相域直接焼入れ、
T:焼戻し] の3法によってフェライトと硬質の第2相
との混合組織を生成させることが可能となることを利用
し、DI で表わされる焼入性を特定のレベルに抑え、そ
の一方で鋼板にCu、Nb、V、Ti等の析出強化元素を添加
してQ−TまたはDQ−Tを行うことにより、低降伏比
でかつ所定の高強度を有し、さらに溶接性も優れた低降
伏比高張力鋼板を製造する方法である。
【0007】また、特開平3−219012号公報には、C:
0.03〜0.10%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.60〜2.00%、
Mo:0.10〜0.50%、P:0.030 %以下、S:0.020 %以
下を含み、さらにNi:1.00%以下、Cr:0.70%以下、C
u:0.70%以下、V:0.06%以下、Nb:0.05%以下およ
びB:0.0050%以下のうちから選ばれた一種以上、必要
に応じてTi:0.003 〜0.05%、残部Feおよび不可避的不
純物からなり、かつPCM(%) =C+Si/30 +Mn/20 +N
i/60 +Cr/20 +Cu/20 +Mo/15 +V/10 +5Bが0.16
〜0.21%である鋼を熱間圧延後、直ちに300 〜550 ℃ま
で急冷するか、もしくは空冷後Ac3 点以上の温度に再加
熱した後300 〜550 ℃まで急冷した後、室温まで空冷
し、さらにAc1 〜Ac3 変態点間の二相域温度に加熱保持
した後、空冷以上の冷却速度で焼入れを行い、その後45
0 〜600 ℃の温度で焼戻しを行うことにより、溶接割れ
感受性が小さく予熱が不要で、降伏比が80%以下、引張
強さが588N/mm2以上の低降伏比高張力鋼板を製造する方
法が提案されている。
【0008】すなわち、この方法は、C含有量を0.10%
以下に低減し合金元素を添加した上記の組成を有する鋼
で、二相焼入れ前の組織を若干粗い組織として焼入れ焼
戻し処理を施す方法である。
【0009】さらに、特開昭61−288018号公報には、熱
間圧延後あるいは高温度に再加熱された鋼管を高温度か
ら急冷した後、高周波加熱法で鋼管の表面硬化層のみに
局部焼戻し処理あるいは局部焼戻し急冷処理を行うこと
により、高強度でかつ低降伏比鋼管 (引張強さ:634N/m
m2以上、降伏比:83.0%以下) を製造する方法が提案さ
れている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの従来
の方法によっても、降伏比が80%以下である588N/mm2
上の低降伏比高張力鋼管を製造することはできない。特
開平2−205626号公報または特開平3−219012号公報に
より提案された方法によれば、確かに熱延鋼板段階で目
標とする引張強度および降伏比を達成することはでき
る。しかし、この熱延鋼板に冷間で製管加工を行って鋼
管を製造すると、鋼管の降伏比が80%超となり、所望の
低降伏比高張力鋼管を製造することができない。すなわ
ち、製管加工を行った後も降伏比を80%以下に抑制する
必要がある。
【0011】一方、特開昭61−288018号公報により提案
された方法によれば、確かに降伏比を低減することは可
能であるが、製管加工後の鋼管に急冷、焼戻しという2
度にわたる熱処理を行う必要があり、コストおよび納期
の点で問題である。さらに、得られる鋼管の強度が590
N/mm2 以上となり過大になってしまう。すなわち、熱処
理工程を簡略化してコストダウンを図るとともに強度レ
ベルを590 N/mm2 級に調整する必要がある。
【0012】ここに、本発明の目的は、建造物、橋梁、
タンク等の鋼構造物の建築材料として使用するのに好適
な、降伏比:80%以下、引張強さ:590N/mm2以上の低降
伏比高張力鋼管の製造方法を提供することにあり、定量
的には、耐力(0.2%YS) ≧440N/mm2、引張強さTS:590
〜740N/mm2、降伏比YR≦80%、伸びEl≧20%、シャルピ
ー吸収エネルギーvE0 ≧27Jの機械的特性を備えた低降
伏比高張力鋼管を製造することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前述のように、熱間圧延
を終了した段階、すなわち熱延鋼板の段階では所望の特
性 (YR:80%以下、TS:590N/mm2以上) を有していて
も、製管加工を終了した段階、すなわち鋼管の段階では
加工硬化により耐力が上昇してしまうため、必然的に降
伏比が80%を超えてしまう。
【0014】本発明者は、このような製管加工による降
伏比の上昇を改善する手段を鋭意検討し、(i) 製管加工
後に鋼管に熱処理を行ってYR:80%以下、TS:590N/mm2
以上を満足する方法、(ii)製管加工による耐力の上昇を
予め見込んで熱間圧延後の熱延鋼板の耐力、引張強さ、
降伏比等を目標値の下限付近に抑制し、製管加工後に目
標値を満足する方法の二つに着目した。
【0015】(i) の方法の考え方には、前述の特開昭61
−288013号公報により提案された方法も包含されるが、
製管加工後に急冷、焼戻しという2度にわたる熱処理を
行う必要があり、コストおよび納期の点で問題である。
そこで、本発明者は、(ii)の方法を利用して低降伏比高
張力鋼管を製造する方法を検討した。
【0016】本発明者は、(ii)の方法により鋼管を製造
した場合の問題について検討した結果、製管加工によ
る表面歪のために鋼管の表面が著しく硬化すること、お
よび降伏比がばらついてしまうことという問題がある
ことがわかった。そこで、本発明者はさらに検討した結
果、下記(a) 項および(b) 項にそれぞれまとめた内容の
知見を得た。
【0017】(a) 焼入れまま(As Q) の表面におけるオ
ーステナイト結晶粒度と表面硬度との間には、従来から
知られているように、一定の相関関係がある。図1は、
C:0.13%、Si:0.15%、Mn:1.50%、さらに、Cu:0.
20%、Ni:0.20%、Nb:0.015%、V:0.04%、残部Fe
および不可避的不純物であって、炭素当量Ceq(W) が0.
39%である鋼片を素材とした鋼管 (厚さ:55mm、直径:
900mm)の表面のビッカース硬さ(Hv10kgf) と降伏比YR
(%) との関係を示すグラフである。すなわち、鋼板の
表裏面では加熱によりオーステナイト粒が粗大化するの
に対し、焼入れままでは表裏面の硬度が著しく高まって
しまい、後続して行われる熱処理 (二相域焼入れ、焼戻
し) によっても解消されずに残り、さらに製管加工によ
り著しく高まり、降伏比YRの上昇をもたらしてしまう。
同図に示すグラフから、鋼管の降伏比を80%以下に抑制
するには、鋼管表面のビッカース硬さ(Hv 10kgf)を200
以下に抑制する必要がある。
【0018】本発明者は、降伏比の上昇は、このよう
に、表面のオーステナイト粒の粗大化が焼入れ性を増す
ことにつながるためであると考え、これを解消して表面
のオーステナイト粒の粗大化を防ぎ降伏比を80%以下と
するには、圧延時の圧下量を抑制して軽圧下を行えばよ
いとの知見を得た。図2は、C:0.13%、Si:0.15%、
Mn:1.50%、さらに、Cu:0.20%、Ni:0.20%、Nb:0.
015 %、V:0.04%、残部Feおよび不可避的不純物であ
って、炭素当量Ceq(W) が0.39%である鋼片に、900 ℃
以上の温度域における1パス当たりの圧下率[(1パスに
おける圧下量)/(全圧下量) ×100]が2%、4%および
6%の3水準となるようにして熱間圧延を行って所定の
板厚の熱延鋼板とし、該熱延鋼板に、Ac3 点 (約 862
℃) 以上の温度域から焼入れを行い、引き続き [Ac1
(約 684℃) 以上 Ac3点 (約 862℃)以下] の2相温度
域に再加熱して前記2相温度域から焼入れを行い、さら
に焼戻しを行って得た熱延鋼板の表面におけるオーステ
ナイト粒径 (mm) または前記熱延鋼管を素材とした鋼管
(厚さ:55mm、直径:900mm)のビッカース硬さと、900
℃以上の1パス当たりの圧下率 (%) との関係を示すグ
ラフである。図2に示すグラフから、オーステナイトγ
粒の粗大化が著しい900 ℃以上の温度域における1パス
当たりの圧下率を4%以下とすれば鋼管表面のビッカー
ス硬さ(Hv 10kgf)を200 以下に抑制できることがわか
る。 (b) 製管加工後の降伏比のばらつきを抑制するために
は、組成、特に特に下記式により規定される炭素当量
Ceq(W) が大きく影響する。
【0019】
【数3】
【0020】図3は、C:0.14〜0.20%、Si:0.15%、
Mn:1.50%、さらに、Cu:0.20%、Ni:0.20%、Nb:0.
015 %、V:0.04%、残部Feおよび不可避的不純物であ
って、炭素当量Ceq(W) が0.40%、0.44%、0.45%およ
び0.46%の4水準の鋼片に、900 ℃以上の温度域におけ
る1パス当たりの圧下率が3%となるようにして熱間圧
延を行って所定の板厚の熱延鋼板とし、該熱延鋼板に、
Ac3 点以上の温度域から焼入れを行い、引き続き Ac1
以上 Ac3点以下の2相温度域に再加熱して前記2相温度
域から焼入れを行い、さらに焼戻しを行って得た熱延鋼
板、および該熱延鋼板を素材とした鋼管 (厚さ:55mm、
直径:900mm)について、炭素当量Ceq(W) (%) と降伏
比YR (%) との関係を示すグラフである。図3に示すグ
ラフから、鋼管の降伏比YRを80%以下に抑制するには、
炭素当量Ceqを0.45%以下に抑制すればよい。本発明者
は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねて、本発
明を完成するに至った。
【0021】ここに、本発明の要旨とするところは、
C:0.02〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.50〜2.00
%、さらに、Cu:0.10〜1.5 %、Ni:0.10〜0.50%、N
b:0.005 〜0.10%およびV:0.005 〜0.10%からなる
群から選ばれた1種または2種以上、残部Feおよび不可
避的不純物であって、式により規定される炭素当量C
eq(W) が0.38%以上0.45%以下である鋼片に、900 ℃以
上の温度域における1パス当たりの圧下率が4%以下と
なるようにして熱間圧延を行って所定の板厚の熱延鋼板
とし、該熱延鋼板に、Ac3 点以上の温度域から焼入れを
行い、引き続き(Ac1点以上 Ac3点以下) の2相温度域に
再加熱して2相温度域から焼入れを行い、さらに焼戻し
を行ってから、製管加工を行うことを特徴とする低降伏
比高張力鋼管の製造方法である。
【0022】
【作用】以下、本発明を作用効果とともに詳述する。ま
ず、本発明で用いる鋼片の組成、および炭素当量を上述
のように限定する理由を説明する。
【0023】C:0.02〜0.20% Cは、強度確保のために0.02%以上の添加が必要である
が、0.20%を超えて過剰に添加すると溶接性を損なう。
そこで、本発明では、C含有量は0.02%以上0.20%以下
と限定する。
【0024】Si:0.02〜0.50% Siは、主に鋼の脱酸のために添加され、通常その添加量
は0.02%以上であり、また降伏比の低減にも有効であ
る。しかし、0.50%を超えて過剰に添加すると靱性を劣
化させるので好ましくない。そこで、本発明では、Si含
有量は0.02%以上0.50%以下と限定する。
【0025】Mn:0.50〜2.00% Mnは、強度確保のために0.50%以上の添加が必要である
が、2.00%を超えて過剰に添加すると溶接性を損なう。
そこで、本発明では、Mn含有量は0.50%以上2.00%以下
と限定する。
【0026】さらに、本発明では、高強度化を図るため
に、Cu:0.10〜1.5 %、Ni:0.10〜0.50%、Nb:0.005
〜0.10%およびV:0.005 〜0.10%からなる群から選ば
れた1種または2種以上を含有する。以下、これらの元
素についても組成の限定理由を説明する。
【0027】Cu:0.10〜1.5 % Cuは、0.10%以上の添加により高強度化に有効である
が、1.5 %を超えて過剰に添加すると溶接性を損なうと
ともに熱間割れも生ずる。そこで、Cuを添加する場合に
は、その含有量は0.10%以上1.5 %以下と限定すること
が望ましい。
【0028】Ni:0.10〜0.50% Niは、0.10%以上の添加により強度上昇に有効である
が、過剰に添加すると溶接性および低温靱性がともに劣
化する。特に、Niは高価な元素であり0.50%超添加する
と経済性の点で問題がある。そこで、Niを添加する場合
には、その含有量は0.10%以上0.50%以下と限定するこ
とが望ましい。
【0029】Nb:0.005 〜0.10% Nbは、0.005 %以上の添加により特に直接焼入れ焼戻し
法において高強度化に有効であるが、0.10%を超えて過
剰に添加すると靱性および溶接性がともに劣化する。そ
こで、Nbを添加する場合には、その含有量は0.005 %以
上0.10%以下と限定することが望ましい。
【0030】V:0.005 〜0.10% Vは、0.005 %以上の添加で鋼の強度を高めるが、0.10
%を超えて過剰に添加すると効果が飽和するばかりでな
く、溶接性を劣化させる。そこで、Vを添加する場合に
は、その含有量は0.005 %以上0.10%以下と限定するこ
とが望ましい。上記以外の組成は、Feおよび不可避的不
純物である。
【0031】Ceq:0.38%以上0.45%以下 炭素当量Ceqは、前述の図3に示す関係に基づき、鋼管
での降伏比を80%以下とするため、0.45%以下とする。
しかし、炭素当量Ceqを0.38%未満と著しく低下すると
強度の低下を招く。そこで、本発明では、炭素当量Ceq
は0.38%以上0.45%以下と限定する。
【0032】900 ℃以上の加工温度における1パス当た
りの圧下率:4%以下 本発明では、かかる組成および炭素当量を有する鋼片
に、熱間圧延を行うが、熱間圧延では、900 ℃以上の加
工温度における1パス当たりの圧下率を4%以下と限定
する。
【0033】すなわち、900 ℃以上の加工温度における
1パス当たりの圧下率は、熱延鋼板の表面のオーステナ
イト粒の成長を抑制するのに重要であり、本発明の重要
なポイントである。前述の図2のグラフに示すように、
再結晶が起こるオーステナイト粒径が著しく粗大化し易
い900 ℃以上においては圧下率を4%以下と抑制して熱
延鋼板の表面のオーステナイト粒を微細化し、焼きが入
り難くして表面の硬度の上昇を抑制し、引いては製管加
工後の硬度上昇を抑制することができるため、低降伏比
の鋼管を製造することが可能となる。このため、900 ℃
以上の加工温度での圧下率を4%以下と限定した。
【0034】なお、圧下率は、 (1パスにおける圧下
量)/(全圧下量)×100 %により算出される。また、
圧下率は各パスを通じて一定である必要はない。すなわ
ち、本発明では、各パスの圧下率の最大値を4%と限定
している。
【0035】本発明では、熱間圧延の際には、上記の圧
下率以外の限定は不要である。熱間圧延の開始温度は11
00〜1000℃程度、仕上温度は 800〜700 ℃程度、熱間圧
延時の総圧下率は66〜96%程度を例示することができ
る。
【0036】Ac3 点以上からの焼入れ、Ac1 点〜Ac3
の2相域からの焼入れ、焼戻し 本発明では、熱間圧延を終了した熱延鋼板の強度を確保
するため、Ac3 点以上の温度域からの焼入れを行う。焼
入れ温度がAc3 点未満であると、所望の強度を確保する
ことができないからである。焼入れの態様は特に限定を
要さない。水焼入れ、油焼入れ等を適宜行えばよい。
【0037】次に、本発明では、Ac1 点〜Ac3 点の2相
域からの焼入れを行い、軟質フェライト相および硬質ベ
イナイト相を析出して低降伏比化を図るとともに、軟質
フェライト相および硬質ベイナイト相の析出に起因した
靱性劣化を防止するため、焼戻しを行う。焼戻しは、通
常の温度 (500 〜600 ℃程度) で行えばよい。
【0038】本発明では、このようにして熱処理を終え
た熱延鋼板を素材として製管加工を行い、鋼管を製造す
る。製管加工の方法は特定の手段には限定されない。例
えば、電縫鋼管、鍛接鋼管さらにはUOE鋼管等の溶接
鋼管の製管加工法を適用できる。
【0039】このようにして、本発明により、0.2 %YS
≧440N/mm2、TS:590 〜740N/mm2、YR≦80%、El≧20
%、vE0 ≧27Jの機械的特性を有し、建造物、橋梁、タ
ンク等の鋼構造物の建築材料として使用するのに好適な
低降伏比高張力鋼管を製造することが可能となった。さ
らに、本発明を実施例を参照しながら詳述するが、これ
は本発明の例示であり、これにより本発明が限定される
ものではない。
【0040】
【実施例】表1に示す鋼組成、Ac1 点 (℃) 、Ac3
(℃) および炭素当量Ceqを有する鋼片1ないし鋼片18
に、900 ℃以上の温度域における1パス当たりの圧下率
の最大値が同表に示す値となるようにして熱間圧延を行
って所定の板厚の熱延鋼板とし、該熱延鋼板に、表2の
「製造方法」の欄の左端の数字で示す焼入れ温度で焼入
れを行い、引き続き(Ac1点以上 Ac3点以下) の2相温度
域に再加熱して表2の「製造方法」の欄の真中の数字で
示す焼入れ温度で焼入れを行い、さらに表2の「製造方
法」の欄の右端の数字で示す焼戻し温度で焼戻しを行っ
てから、電縫鋼管の製造法に基づいて製管加工を行い、
表2に示す板厚および外径を備えた電縫鋼管を製造し
た。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】これらの電縫鋼管から、l方向についてJI
S 4号試験片を切り出して、耐力0.2 %YS、引張強さT
S、降伏比YRおよび伸びElを測定するとともに、t/4 厚
さ部からl方向についてJIS 5号試験片を切り出して、
シャルピー吸収エネルギーvE(J)を測定した。結
果を表2にまとめて示す。
【0044】表2における試料No.1ないし試料No.9
は、本発明で規定する条件を全て満足するため、0.2 %
YS≧440N/mm2、TS:590 〜740N/mm2、YR≦80%、El≧20
%、vE0≧27Jという本発明の目標値を全て満足してい
る。
【0045】これに対し、試料No.10 は、C含有量が本
発明の範囲の下限を下回っているため、TSが低下した。
試料No.11 は、Si含有量が本発明の範囲の上限を上回っ
ているとともに炭素当量Ceqが本発明の範囲の下限を下
回っているため、TSおよびvE0 ともに劣化した。
【0046】試料No.12 は、Mn含有量が本発明の範囲の
下限を下回っているとともに炭素当量Ceqが本発明の範
囲の下限を下回っているため、0.2 %YS、TSおよびvE0
がそれぞれ劣化した。試料No.13 は、Nb含有量が本発明
の範囲の上限を上回っているためvE0 が劣化した。
【0047】試料No.14 は、炭素当量Ceqが本発明の範
囲の上限を上回っているとともに900 ℃以上の温度域に
おける1パスの圧下率が本発明の範囲の上限を上回って
おり、さらにAc3 以上からの焼入れ温度が本発明の範囲
の下限を下回っているため、TS、YR、ElおよびvE0 がそ
れぞれ劣化した。
【0048】試料No.15 は、炭素当量Ceqが本発明の範
囲の上限を上回っているとともに900 ℃以上の温度域に
おける1パスの圧下率が本発明の範囲の上限を上回って
いるため、TS、YR、ElおよびvE0 がそれぞれ劣化した。
試料No.16 は、900 ℃以上の温度域における1パスの圧
下量が本発明の範囲の上限を上回っているため、YRが劣
化した。
【0049】試料No.17 は、二相域からの焼入れ温度が
本発明の範囲の上限を上回っているため、TS、YR、Elお
よびvE0 がそれぞれ劣化した。さらに、試料No.18 は、
二相域からの焼入れ温度が本発明の範囲の下限を下回っ
ているため、vE0 が劣化した。
【0050】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明により、0.
2 %YS≧440N/mm2、TS:590 〜740N/mm2、YR≦80%、El
≧20%、vE0 ≧27Jの機械的特性を有し、建造物、橋
梁、タンク等の鋼構造物の建築材料として使用するのに
好適な低降伏比高張力鋼管を製造することが可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼管のビッカース硬さと降伏比との関係を示す
グラフである。
【図2】オーステナイト粒径または鋼管のビッカース硬
さと圧下率との関係を示すグラフである。
【図3】鋼管の炭素当量と降伏比との関係を示すグラフ
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.02
    〜0.50%、Mn:0.50〜2.00%、さらに、Cu:0.10〜1.5
    %、Ni:0.10〜0.50%、Nb:0.005 〜0.10%およびV:
    0.005 〜0.10%からなる群から選ばれた1種または2種
    以上、残部Feおよび不可避的不純物であって、下式によ
    り規定される炭素当量Ceq(W) が0.38%以上0.45%以下
    である鋼片に、900 ℃以上の温度域における1パス当た
    りの圧下率が4%以下となるようにして熱間圧延を行っ
    て所定の板厚の熱延鋼板とし、該熱延鋼板に、Ac3 点以
    上の温度域から焼入れを行い、引き続き Ac1点以上 Ac3
    点以下の2相温度域に再加熱して前記2相温度域から焼
    入れを行い、さらに焼戻しを行ってから、製管加工を行
    うことを特徴とする低降伏比高張力鋼管の製造方法。 【数1】
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