JPH07268457A - 高強度高靱性ラインパイプ用厚鋼板の製造方法 - Google Patents

高強度高靱性ラインパイプ用厚鋼板の製造方法

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JPH07268457A
JPH07268457A JP5646994A JP5646994A JPH07268457A JP H07268457 A JPH07268457 A JP H07268457A JP 5646994 A JP5646994 A JP 5646994A JP 5646994 A JP5646994 A JP 5646994A JP H07268457 A JPH07268457 A JP H07268457A
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JP
Japan
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less
toughness
rolling
strength
line pipe
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Application number
JP5646994A
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Inventor
Akio Yamamoto
昭夫 山本
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.03〜0.15
%、Mn:1.00〜2.00%、sol.Al: 0.001〜0.050 %、T
i: 0.005〜 0.025%およびCa:0〜0.0050%を含有
し、更に、Nb: 0.005〜0.060 %およびV:0.02〜0.10
%の中の1種または2種と、Cu:0.15〜0.50%、Ni:0.
20〜1.00%およびMo:0.15〜0.40%の中の2種または3
種を含み、残部はFeおよび不純物からなる連続鋳造スラ
ブを素材とし、1100〜1200℃で加熱した後、 Ar3〜(Ar3
+100)℃で圧延し(圧下率:30〜80%)、次いで 650〜
850 ℃で仕上圧延した後直ちに20℃/s以上の冷却速度で
室温まで冷却し、その後 450〜650 ℃で焼戻し処理を施
す。 【効果】高い強度ならびに靱性を有し、しかも溶接部お
よび溶接熱影響部における性能が損なわれず、耐食性も
備えた、ラインパイプ用素材として好適な厚鋼板を生産
性を低下させずに低コストで製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、天然ガス等の輸送に使
用される大径の高強度高靱性ラインパイプの素材として
の厚鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】天然ガスや石油を大量に輸送するために
使用される大径のラインパイプの素材としては、高強度
ならびに高靱性(特に、低温における高靱性)を有する
とともに、溶接性に優れ、応力腐食割れなどの腐食に対
する耐食性をも備えていることが要求されるが、近年、
特に高強度が要求されるようになってきた。輸送効率の
向上を目的として、高い圧力で輸送する傾向が強まって
おり、また、材料を高強度化することによりパイプの肉
厚を減少させてパイプラインの敷設コストを削減するた
めである。
【0003】従って、天然ガス等の輸送用のラインパイ
プの材質としては、1960年代にはAPI(アメリカ石油
協会)規格のX52〜X60が主流であったが、次第に高強
度化が進み、1970年代にはX65、1980年代にはX70が主
として採用され、最近ではX80も一部では実用化されて
いる。
【0004】高い強度ならびに靱性を有し、しかも溶接
性等にも優れた鋼板の製造方法については、従来から多
くの研究開発がなされている。
【0005】例えば、本出願人は、窒素(N)含有量と
チタン(Ti)及び/又は硼素(B)含有量のバランスを
調整した鋼片を、最初 Ac3点〜1350℃で加熱した後中間
板厚まで圧延し、所定温度まで冷却した後 800〜950 ℃
の温度範囲で再加熱し、仕上圧延を行う高靱性高張力鋼
板の製造方法を提案した(特開昭56−142826号公報)。
この方法によって得られる高張力鋼板は高い靱性を有
し、特に、鋼中に形成されるTiN及び/又はBNの作用
により溶接熱影響部の靱性に優れるという特徴を有して
いるが、Nは大径鋼管(U.O.E鋼管) を製造する際に一般
に用いられるサブマージアーク溶接において溶接部の靱
性を劣化させる。また、この方法では圧延の際に加熱を
2回行うので、生産性が低下し、製造コストが高くな
る。
【0006】また、本出願人は、窒素(N)、バナジウ
ム(V)、珪素(Si)の他に、更に燐(P)、硫黄
(S)の含有量を低減し、かつ低温で焼戻した後水冷す
る調質型高張力厚鋼板の製造方法(特開昭60−121228号
公報)、および、Nの含有量を低く抑えてニオブ(Nb)
を添加し、更にV、Si、P、Sの含有量を減少させ、か
つ低温で焼戻した後水冷する調質型高張力厚鋼板の製造
方法(特開昭60−121219号公報)を提案した。これらの
方法により、高価なニッケル(Ni)を多量に使用するこ
となく、強度と靱性に優れ、しかも溶接性も良好な厚鋼
板を得ることができる。しかし、この鋼板にはモリブデ
ン(Mo)が0.40〜0.80質量%含まれているため溶接熱影
響部の硬度が高く、応力腐食割れの原因となるので、ラ
インパイプ用の鋼板としては必ずしも適しない。また、
焼入れ焼戻し処理を行うのでコスト高になる。
【0007】特公平6− 929号公報では、炭素(C)、
珪素(Si)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)およびアル
ミニウム(Al)を基本成分とし、必要に応じてバナジウ
ム(V)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)等を添加し
た鋼を所定の条件で圧延する溶接性、低温靱性の優れた
厚手高張力鋼板の製造方法が提案されているが、この方
法では圧延後の冷却速度が小さいので高強度が得られに
くく、所定の高強度を得ようとすると多くの合金元素の
添加が必要となり、溶接性が劣化するという問題があ
る。
【0008】特開昭57−169019号公報には、C、Si、Mn
およびAlを基本成分とし、必要に応じてNb、V等を添加
した鋼を所定の条件で圧延する非調質強靱高張力鋼板の
製造方法が開示されている。しかし、この方法では焼戻
し処理を行わないので、ラインパイプに必要な低温靱性
が得られにくい。
【0009】C、Si、MnおよびAlを基本成分とし、必要
に応じて銅(Cu)、Ni、Moなどを添加した鋼を所定の条
件で圧延する溶接性および低温靱性に優れた非調質強靱
高張力鋼板の製造方法(特開昭61−117214号公報)も知
られている。しかしながら、この方法においては、強度
および靱性に大きな影響を及ぼす加熱温度が規定されて
おらず、また、焼戻し温度が低すぎるので良好な低温靱
性が得られない。製品鋼はSi含有量が多いので溶接熱影
響部の靱性が劣化するという問題もある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
状況に鑑みてなされたもので、大径のラインパイプの素
材として、将来要望されるであろうX100 グレードの高
い強度ならびに靱性を有し、しかも溶接部および溶接熱
影響部における性能が損なわれず、耐食性も備えた厚鋼
板を、生産性を低下させずに低コストで製造する方法を
提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)および(2) のラインパイプ用厚鋼板の製造方法にあ
る。
【0012】(1) 質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.
03〜0.15%、Mn:1.00〜2.00%、sol.Al: 0.001〜0.05
0 %、Ti: 0.005〜 0.025%およびCa:0〜0.0050%を
含有し、更に、Nb: 0.005〜0.060 %およびV:0.02〜
0.10%の中の1種または2種と、Cu:0.15〜0.50%、N
i:0.20〜1.00%およびMo:0.15〜0.40%の中の2種ま
たは3種を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からな
り、不純物中のPが 0.025%以下、Sが 0.008%以下、
Bが0.0005%以下である連続鋳造スラブを素材とし、11
00〜1200℃で加熱した後、 Ar3点〜(Ar3点+100)℃の温
度域で圧下率30〜80%で圧延し、次いで 650〜850 ℃で
仕上圧延した後直ちに20℃/s以上の冷却速度で室温まで
冷却し、その後 450〜650 ℃で焼戻し処理を施すことを
特徴とする高強度高靱性ラインパイプ用厚鋼板の製造方
法。
【0013】(2) 質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.
03〜0.15%、Mn:1.00〜2.00%、sol.Al: 0.001〜0.05
0 %、Ti: 0.005〜 0.025%、Cr:0.40〜1.50%および
Ca:0〜0.0050%を含有し、更に、Nb: 0.005〜0.060
%およびV:0.02〜0.10%の中の1種または2種と、C
u:0.15〜0.50%以下およびNi:0.20〜1.00%以下の中
の1種または2種を含み、残部はFeおよび不可避的不純
物からなり、不純物中のPが 0.025%以下、Sが 0.008
%以下、Bが0.0005%以下である連続鋳造スラブを素材
とし、1100〜1200℃で加熱した後、 Ar3点〜(Ar3点+10
0)℃の温度域で圧下率30〜80%で圧延し、次いで 650〜
850 ℃で仕上圧延した後直ちに20℃/s以上の冷却速度で
室温まで冷却し、その後 450〜650 ℃で焼戻し処理を施
すことを特徴とする高強度高靱性ラインパイプ用厚鋼板
の製造方法。
【0014】
【作用】以下、本発明方法について詳細に説明する。
【0015】本発明方法の特徴は、高強度のラインパイ
プ用鋼として、溶接部および溶接熱影響部における機械
的性質が損なわれず、かつ、ラインパイプとして使用さ
れた時の耐食性にも優れた適正な合金組成を有する鋼を
選択し、この鋼に対して、生産性を低下させず、低コス
トでラインパイプ用の鋼板を製造することが可能な圧延
条件を定めたことにある。
【0016】本発明方法において、素材として連続鋳造
スラブを用いるのは、造塊法により得られるスラブに比
較して溶鋼の凝固速度が速く、TiN等の化合物の粗大化
を防止することができるとともに、生産効率、歩留り、
省エネルギーなどの点からも遙かに有利だからである。
【0017】まず、本発明方法において使用する連続鋳
造スラブに含有される各成分の作用効果とその含有量の
限定理由について述べる。なお、合金成分含有量につい
ての「%」はいずれも「質量%」を意味する。
【0018】C:Cは鋼の強度を高めるために必要な元
素であるが、その含有量が0.02%未満では所定の強度が
得られない。一方、0.10%を超えると炭素当量が大きく
なり、本発明方法で得られる鋼板を素材として製造した
ラインパイプを敷設現場で溶接接合(周溶接)する際
に、周溶接部の水素割れ感受性が高くなるので、予熱、
後熱等の非効率的な作業が必要になり、コスト増加要因
となる。したがって、Cの含有量は0.02〜0.10%とす
る。最も望ましい範囲は、0.04〜0.08%である。
【0019】Si:Siは強脱酸元素として有効なので、0.
03%以上含有させる。しかし、Siは溶接熱影響部の組織
中に島状マルテンサイトを析出しやすく、低温靱性を悪
化させるので、0.15%以下に限定する。なお、望ましい
範囲は、0.03〜0.10%である。
【0020】Mn:Mnは鋼の強度を高める作用を有する元
素であるが、その含有量が1.00%未満ではその効果が十
分ではなく、一方、2.00%を超えるとCを過剰に添加し
た場合と同様に周溶接部の水素割れ感受性が高くなる。
従って、Mnの含有量は1.00〜2.00%とする。最も望まし
い範囲は、1.20〜1.80%である。
【0021】sol.Al:AlはSiと同様に脱酸に必要な元素
であり、sol.Alとして 0.001%以上含有させるが、その
含有量が 0.050%を超えると溶接熱影響部および溶接部
そのものの靱性を劣化させる。最も望ましい範囲は 0.0
01〜0.020 %である。
【0022】Ti:TiはNと結合し、TiNを形成して溶接
熱影響部の靱性を改善する効果を有するので 0.005%以
上とする。しかし、Tiが過剰に含まれるとTiCの粗大析
出物が生成し、靱性が大幅に劣化する。従って、その含
有量の上限は 0.025%とする。望ましい範囲は 0.005〜
0.020 %である。
【0023】前記の(1) の方法で使用する連続鋳造スラ
ブは、上記の成分の他に、更に、NbおよびVの中の1種
または2種と、Cu、NiおよびMoの中の2種または3種を
含んでいる。また、必要に応じて、Caを添加してもよ
い。これらの成分の含有量を前記のように限定した理由
は以下のとおりである。
【0024】Nb:Nbは鋼の強度を高めるとともに、靱性
を改善する作用を有する元素として有効であるが、その
含有量が 0.005%未満ではその効果が小さく、一方、
0.060%を超えるとNb炭窒化物が過剰に析出して逆効果
となる。従って、Nbを含有させる場合、その含有量は
0.005〜0.060 %とする。最も望ましい範囲は、0.03〜
0.05%である。
【0025】V:VもNbと同様の効果を有する元素であ
る。しかし、その含有量が0.02%未満では効果は小さ
く、一方、0.10%を超えて含有させるとV炭窒化物の析
出が過剰となり、鋼の強度および靱性は逆に低下する。
従って、Vを含有させる場合、その含有量は0.02〜0.10
%とする。最も望ましい範囲は、0.03〜0.08%である。
【0026】なお、NbとVは、いずれか一方だけを添加
してもよく、両方を同時に添加してもよい。
【0027】Cu:Cuは、鋼の強度および靱性を高める作
用を有するとともに、低濃度の硫化水素が存在する環境
下における腐食の防止に有効な元素である。これらの効
果を得るには0.15%以上が必要である。しかし、その含
有量が0.50%を超えると、圧延時の再加熱温度が高い場
合、鋼板表面疵が発生しやすくなる。従って、Cuを含有
させる場合、その含有量は0.15〜0.50%とする。最も望
ましい範囲は、0.20〜0.40%である。
【0028】Ni:NiはCuと同様に、鋼の強度および靱性
を高める上で極めて有効な元素であるが、過剰に添加す
ると、硫化水素が存在する腐食環境下でピッティングを
生じ、孔食の原因となる。従って、Niを含有させる場
合、その含有量は0.20〜1.00%とする。最も望ましい範
囲は0.20〜0.60%である。
【0029】Mo:Moは焼入れ性を増大させ、鋼の強度を
高める作用を有する元素であるが、過剰に添加すると、
特に溶接熱影響部の硬度を上昇させ、応力腐食割れの原
因となる。従って、Moを含有させる場合、その含有量は
0.15〜0.40%とする。最も望ましい範囲は、0.15〜0.30
%である。
【0030】なお、Cu、NiおよびMoは、その2種を含有
させると複合効果が得られる。
【0031】Ca:Caは介在物、特に、MnSを球状化して
延性を改善する作用を有しているほか、ラインパイプの
耐硫化水素割れ性を高める元素としても広く使用されて
いる。従って、Caは必要に応じて添加するのがよい。た
だし、添加する場合は、その含有量が0.0005%未満では
効果が十分発揮されないので、0.0005%以上含有させる
のが望ましい。一方、0.0050%を超えて含有させるとCa
系介在物が増加し、耐硫化水素割れ性が低下する。最も
望ましい範囲は、0.0005〜0.0040%である。
【0032】前記(1) の鋼板の製造方法で用いるスラブ
は、上記の成分以外、残部が鉄(Fe)と不可避の不純物
からなる連続鋳造スラブである。不純物としては、Pお
よびSの上限を抑えることが必要である。
【0033】Pは凝固時に偏析しやすく、鋼の靱性を劣
化させ、特に、ラインパイプとしたときの円周溶接時の
溶接部高温割れの原因となる。従って、その含有量はで
きるだけ低い方が望ましいが、含有量の低減はコスト増
加要因となるので、その上限は 0.025%とする。
【0034】Sはラインパイプ材に要求される低温靱性
を劣化させ、硫化水素に起因する応力腐食割れ感受性を
高める元素で、Pと同様に、その含有量はできるだけ低
い方が望ましい。しかし、 0.008%以下であれば前記の
応力腐食割れを防止することができ、更に含有量を低め
ようとするとコストが増加するので、Sの上限は 0.008
%とする。
【0035】Bは焼入れ性を向上させ、鋼の強度を高め
るとともに、靱性を向上させる作用を有しているが、過
剰に含有させると溶接熱影響部の硬度が上昇し、応力腐
食割れの原因となる。従って、ラインパイプ用の鋼板に
あっては、その含有量は低い方が好ましく、0.0005%以
下、望ましくは、0.0003%以下とする。
【0036】前記(2) の鋼板の製造方法で用いるスラブ
は、(1) の方法で用いるスラブに含まれるMoの代わり
に、Cr:0.40〜1.50%を含有させ、同時に、Cu:0.20〜
0.50%およびNi:0.20〜1.00%の中の1種または2種を
含有させた連続鋳造スラブである。Crの含有量を上記の
ように限定した理由は以下のとおりである。
【0037】Cr:Crは敷設されたラインパイプにおいて
炭酸ガスが含まれる環境下で生じる腐食を防止する上で
有効な元素である。しかし、その含有量が0.40%未満で
は腐食防止効果は小さく、一方、1.50%を超えるとその
効果が飽和するとともに、炭素当量が増加して溶接性に
悪影響を及ぼす。従って、Crの含有量は0.40〜1.50%と
する。最も望ましい範囲は、0.50〜0.80%である。
【0038】次に、上記の成分を有する連続鋳造スラブ
に対して行う圧延の条件を前記のように定めた理由を説
明する。
【0039】〔加熱温度〕素材である連続鋳造スラブの
加熱温度を1100〜1200℃とするのは、NbやV等の固溶強
化元素を有効に活用するために最低1100℃の加熱温度が
必要であり、一方、1200℃を超えるとオーステナイト結
晶粒が粗大化し、低温靱性が劣化するからである。加熱
には、例えば、再加熱炉を利用すればよい。
【0040】〔 Ar3点〜(Ar3点+100)℃の温度域での圧
下率〕一般に未再結晶温度域と言われる Ar3点〜(Ar3
+100)℃の温度域での圧下は、Nb、V、Ti等の析出物を
歪誘起析出させ、γ(オーステナイト)相中にα(フェ
ライト)相の生成核を多数生成させて、細粒フェライト
を得る制御圧延の手段であるが、その効果を発揮させる
ためには圧下率を30%以上にすることが必要である。一
方、80%を超える圧下率で圧延しようとすると、その間
の圧延パス回数が増加し、スラブ表面温度が低下して温
度制御が困難になる。従って、加熱後のスラブの上記温
度域での圧下率は、30〜80%とする。
【0041】〔仕上温度〕鋼の低温における靱性を高
め、かつ、高強度化するためには、γ相とα相が共存す
る二相域で仕上げ圧延を行うのが有効である。しかし、
その時の温度が 650℃未満では鋼板の異方性、即ち、圧
延方向(長手方向)と幅方向における強度差が大きくな
りすぎ、一方、 850℃を超える温度では前記の Ar3点〜
(Ar3点+100)℃の温度域での所定の圧下率が確保できな
い。従って、仕上圧延は 650〜850 ℃の温度域で行う。
【0042】〔仕上圧延後の冷却〕仕上圧延した後直ち
に20℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却(加速冷却)す
るのは高強度を得るためである。冷却速度は20℃/s以上
でないと強度向上効果は小さい。また、十分な焼入れ性
を確保するためには、圧延を終了した直後に室温まで冷
却するのが最も効果的である。
【0043】〔焼戻し温度〕450℃より低い温度域で焼
戻しを行っても降伏応力および低温靱性が十分回復せ
ず、 650℃を超える温度域では降伏応力、引張応力とも
低下するので、焼戻しは 450〜650 ℃で行う。
【0044】上記のように、本発明方法では高価な合金
成分を多量に使用することがなく、加熱を2回行う等の
処理を必要としないので生産性の低下もなく、低コスト
でラインパイプ用の高強度厚鋼板を提供することができ
る。
【0045】
【実施例】表1に示す化学組成を有する連続鋳造スラブ
(スラブサイズ:厚さ 235mm×幅1800mm)を表2および
表3に示す条件で、厚さ 19.05mm、幅2390mmの鋼板(厚
板)に圧延し、得られた厚鋼板について機械的性質(降
伏点=YS、引張強さ=TS、および−80℃におけるシ
ャルピー吸収エネルギー= V-80 )、ならびに溶接性
能(溶接熱影響部(HAZ)の−20℃におけるシャルピ
ー吸収エネルギー=V-20 、およびY開先拘束割れ
性)を調査した。なお、評価基準(狙い値)は、降伏点
(YS)については 689MPa 以上、引張強さ(TS)に
ついては 758MPa 以上、吸収エネルギー( V-80 )に
ついては 150J以上、HAZの吸収エネルギー( V
-20 )については50J以上、Y開先拘束割れ性について
は割れ発生のないこと、とした。
【0046】調査結果を表4および表5に示す。同表中
の圧下率は Ar3点〜(Ar3点+100)℃の温度域での圧下率
である。この結果から明らかなように、本発明方法で定
める条件が満たされる場合は、機械的性質および溶接性
能のいずれについても良好な結果が得られた。
【0047】図1は、表1に示した鋼種Aについて、加
熱温度を1160℃、 Ar3点〜(Ar3点+100)℃の温度域での
圧下率を60%、圧延仕上温度を 700℃、仕上圧延後の冷
却速度を21℃/sとし、焼戻し温度を変化させた場合の降
伏点、引張強さおよび破面遷移温度( Vrs)を測定し
た結果を示す図である。この結果から、焼戻しを 450〜
650 ℃の温度域で行えば、高い降伏点および引張強さを
有し、かつ、低温靱性にも優れた鋼板を得ることが可能
であることがわかる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【発明の効果】本発明方法によれば、高い強度ならびに
靱性を有し、しかも溶接部および溶接熱影響部における
性能が損なわれず、耐食性も備えた厚鋼板を、生産性を
低下させずに低コストで製造することができる。この鋼
板は大径のラインパイプの素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼戻し温度と降伏点、引張強さおよび破面遷移
温度の関係を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.03〜
    0.15%、Mn:1.00〜2.00%、sol.Al: 0.001〜0.050
    %、Ti: 0.005〜 0.025%およびCa:0〜0.0050%を含
    有し、更に、Nb: 0.005〜0.060 %およびV:0.02〜0.
    10%の中の1種または2種と、Cu:0.15〜0.50%、Ni:
    0.20〜1.00%およびMo:0.15〜0.40%の中の2種または
    3種を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    不純物中のPが 0.025%以下、Sが 0.008%以下、Bが
    0.0005%以下である連続鋳造スラブを素材とし、1100〜
    1200℃で加熱した後、 Ar3点〜(Ar3点+100)℃の温度域
    で圧下率30〜80%で圧延し、次いで 650〜850 ℃で仕上
    圧延した後直ちに20℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却
    し、その後 450〜650 ℃で焼戻し処理を施すことを特徴
    とする高強度高靱性ラインパイプ用厚鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.03〜
    0.15%、Mn:1.00〜2.00%、sol.Al: 0.001〜0.050
    %、Ti: 0.005〜 0.025%、Cr:0.40〜1.50%およびC
    a:0〜0.0050%を含有し、更に、Nb: 0.005〜0.060
    %およびV:0.02〜0.10%の中の1種または2種と、C
    u:0.15〜0.50%以下およびNi:0.20〜1.00%以下の中
    の1種または2種を含み、残部はFeおよび不可避的不純
    物からなり、不純物中のPが0.025%以下、Sが 0.008
    %以下、Bが0.0005%以下である連続鋳造スラブを素材
    とし、1100〜1200℃で加熱した後、 Ar3点〜(Ar3点+10
    0)℃の温度域で圧下率30〜80%で圧延し、次いで 650〜
    850 ℃で仕上圧延した後直ちに20℃/s以上の冷却速度で
    室温まで冷却し、その後 450〜650 ℃で焼戻し処理を施
    すことを特徴とする高強度高靱性ラインパイプ用厚鋼板
    の製造方法。
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