JPH06340407A - 電気粘性流体用炭素質粉末の製造方法 - Google Patents

電気粘性流体用炭素質粉末の製造方法

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JPH06340407A
JPH06340407A JP5128989A JP12898993A JPH06340407A JP H06340407 A JPH06340407 A JP H06340407A JP 5128989 A JP5128989 A JP 5128989A JP 12898993 A JP12898993 A JP 12898993A JP H06340407 A JPH06340407 A JP H06340407A
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heat treatment
carbonaceous powder
electrorheological fluid
primary heat
pitch
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JP5128989A
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English (en)
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Takuji Haraoka
岡 卓 司 原
香 ▲高▼木
Ko Takagi
Kimiyoshi Hatano
仁 美 羽多野
Noriyoshi Fukuda
田 典 良 福
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高性能な電気粘性流体を実現できると期待され
る炭素質粉末の中でも、より高性能を示す電気粘性流体
を実現可能で、優れた特性を長期に渡って安定して発揮
できる炭素質粉末の製造方法を提供する。 【構成】石炭系ピッチ、石油系ピッチ、縮合多環芳香族
化合物の重合によって生成するピッチ、熱可塑性樹脂類
に分類される有機原料の少なくとも一種を500℃以下
で一次熱処理した後、この一次熱処理によって得られた
物を粉砕および/または分級することによって平均粒径
0.5〜10μmの炭素質粉末とし、この炭素質粉末を
前記一次熱処理よりも高温で二次熱処理することを特徴
とすることにより、前記目的を達成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】電気粘性流体とは流体に電圧を印
加することにより流体の見掛け粘度が迅速かつ可逆的に
変化する現象を呈する流体であり、一般的には電気絶縁
性の優れた油状媒体に誘電体である微粒子を分散させる
ことにより構成されている。
【0002】この電気粘性流体の特徴は古くから知ら
れ、クラッチ、バルブ、エンジンマウント、アクチュエ
ーター、ロボットアーム等の装置や部品を電気的に制御
するための構成要素としての応用が検討されてきた。本
発明は、このような電気粘性流体の誘電体微粒子として
使用される炭素質粉末の製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】従来、電気粘性流体の分散相構成成分と
して用いられる固体微粒子としては、微細化して表面に
水を吸着させたセルロース、デンプン、シリカゲル、イ
オン交換樹脂等が知られている。また他の成分である液
相構成成分としては、PCB、セバシン酸ブチル、スピ
ンドル油、トランス油、塩化パラフィン、シリコン油等
の電気絶縁性の高い油状媒体が知られている。こうした
電気粘性流体は、例えば米国特許第2886151号、
第3047507号の各明細書や、特開昭53−175
85号、特開昭53−93186号、特開昭57−47
234号、特開昭61−44998号、特開昭61−2
59752号、特開昭62−95397号、特開平1−
207395号等の各公報に開示されている。しかし、
これまで主として開発されてきた電気粘性流体用の固体
微粒子は、原料微粒子に水分を吸着させたものであるた
め、電気粘性流体の使用温度範囲が−20℃〜+70℃
と狭く、また長期的には水分の揮発によりその性能が低
下しやすいとの欠点を持っており、実用性に乏しい。そ
のため、実用価値のある極めて高性能かつ安定性の高い
電気粘性流体は開発されていない。
【0004】このため、こうした従来の電気粘性流体が
持つ欠点を解消すべく、種々の改善が各方面で行われて
いる。その主流は高誘電性粒子として水を使用しない、
非水系固体微粒子の開発である。その代表例として、例
えば特開平1−284594号、特開平1−16482
3号、特開平2−235994号等の各公報に開示され
る固体微粒子を挙げることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電気粘性流体における
電気粘性効果の発現機構は未だ充分には解明されていな
い。しかし、一般には、外部電圧により固体微粒子に分
極が生じ、この分極した粒子が静電引力により相互に結
合し、電圧の印加方向に配列する結果、粘度が増大する
と言われている。
【0006】この想定されるメカニズムから考えて、適
度に炭化度(C/H、すなわち炭素原子と水素原子の
比)を制御した炭素質粉末を固体微粒子として分散させ
た電気粘性流体が優れた性能を発揮し、従来の吸水性の
固体微粒子を使用することから来る電気粘性流体の問題
点であった使用温度範囲が狭いこと、および長期的使用
による性能の不安定性等の問題点を解決し、その実用性
に大いに寄与すると考えられる。
【0007】こうした観点から、本発明者等を中心とし
て、炭化度(C/H)等の各種品質を厳密に制御した炭
素質粉末が、電気粘性流体に利用される非水系の固体微
粒子として極めて高性能を有することが開示されている
(特開平3−279206号公報等)。同公報に開示さ
れる発明によれば、石炭、石炭系タール・ピッチ、石炭
液化物、コークス類、石油系タール・ピッチおよび樹脂
類よりなる群より選ばれる有機化合物を原料として、か
かる有機化合物原料を300〜800℃での熱処理を実
施したのち、粒度調整することにより得られる炭素質粉
末が電気粘性流体用の固体微粒子として優れた性能を発
揮することが示されている。
【0008】しかしながら、電気粘性流体に要求される
性能は日増しに厳しくなっており、より高性能な電気粘
性流体を実現できる固体微粒子の出現が望まれている。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決すること
にあり、高性能な電気粘性流体を実現できると期待され
る炭素質粉末の中でも、より高性能を示す電気粘性流体
を実現可能で、優れた特性を長期に渡って安定して発揮
できる炭素質粉末の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】電気粘性流体に要求され
る特性としては、外部電圧下に低電流でより大きな粘性
変化(見掛け粘度の増加)をもたらすことに加え、固体
微粒子が油状媒体中で沈降しないこと、更に長期的な使
用や温度変化に対して安定であること、電圧の印加に対
する応答性に優れていること、および電圧を印加しない
ときの流体の粘度(以下、初期粘度とする)ができるだ
け低いこと等が挙げられる。
【0010】すなわち、低電流で外部電界下で大きな粘
性変化を実現できれば、電気粘性流体を用いる各種装置
のエネルギー効率を向上することが可能となる。また、
初期粘度が低い流体を達成する固体微粒子は、所定の初
期粘度が要求される流体において、初期粘度が高い流体
の固体微粒子に比べて流体中の固体微粒子の配合量を高
めることができ、その結果高い電気粘性変化が実現でき
る。
【0011】本発明は、このような高性能な電気粘性流
体を実現できる電気粘性流体用炭素質粉末(以下、炭素
質粉末とする)を製造することを目的として成されたも
のであり、電気絶縁性に優れた油状媒体に誘電体微粒子
を分散させてなる電気粘性流体の誘電体微粒子として使
用される炭素質粉末の製造方法であって、石炭、石炭系
タール、石炭系ピッチ、石炭液化物、コークス類、石
油、石油系タール、石油系ピッチ、縮合多環芳香族化合
物の重合によって生成するピッチ、および熱可塑性樹脂
類からなる群より選択される少なくとも一種の有機原料
を500℃以下の温度で一次熱処理した後、この一次熱
処理によって得られた物を粉砕および/または分級する
ことによって平均粒径0.5〜10μmの炭素質粉末と
し、この炭素質粉末を前記一次熱処理温度以上の温度で
二次熱処理することを特徴とする電気粘性流体用炭素質
粉末の製造方法を提供する。
【0012】また、前記一次熱処理によって得られた物
が、前記一次熱処理において300〜500℃で軟化溶
融状態を経て得られた物であるのが好ましい。
【0013】また、前記二次熱処理において、前記炭素
質粉末が溶融軟化しないのが好ましい。
【0014】また、前記有機原料が縮合多環芳香族化合
物を重合させて得られたピッチであるのが好ましい。
【0015】前記有機原料がナフタレンを重合させて得
られたナフタレンピッチであるのが好ましい。
【0016】また、前記一次熱処理後に得られた炭素質
粉末の炭素原子と水素原子の数の比(C/H)が2.0
〜2.25で、前記二次熱処理後の炭素質粉末の炭素原
子と水素原子の数の比(C/H)が2.25〜3.0で
あるのが好ましい。
【0017】以下、本発明の炭素質粉末の製造方法につ
いてより詳細に説明する。図1に、本発明の炭素質粉末
の製造方法の一例のフローチャートを示す。
【0018】本発明の炭素質粉末の製造方法において
は、原料として、石炭、石炭系タール、石炭系ピッチ、
石炭液化物、コークス類、石油、石油系タール、石油系
ピッチ、縮合多環芳香族化合物の重合によって生成する
ピッチ、および熱可塑性樹脂類からなる群より選択され
る有機原料の少なくとも一種を利用する。
【0019】このような有機原料としては、公知の各種
のものが利用可能であるが、特に、後述する一次熱処理
において、300〜500℃の温度領域で軟化溶融状態
を示す有機原料が好適に利用される。このような有機原
料を使用することによって、炭素質粉末の誘電率を向上
して、より低い電流値でも粘度変化の大きな電気粘性流
体を実現できる等の点で好ましい結果を得る。なお、本
発明において、軟化溶融とは、炭化反応生成物の粉末、
粒子もしくは塊が熱処理時等において反応槽内で溶融し
て均一な液相を形成している状態をいう。
【0020】本発明者らは、電気粘性流体における炭素
質粉末の電気粘性効果について検討を重ねた結果、この
電気粘性効果は、炭素質粉末の出発原料である有機化合
物を熱処理する時に起こる重縮合反応および官能基の脱
離反応により形成される、縮合多環芳香族化合物と残存
する側鎖化合物とに起因する、電子分極と配向分極によ
りもたらされると考えた。通常、熱処理温度の上昇に伴
って多環芳香族化合物が成長し、誘電率が増加するが、
このとき同時に電導度も上昇し、流体としたときの電圧
印加時の粘度増加量および電流値は共に上昇していく。
ここで、有機原料の熱処理、炭化時において、熱処理温
度300〜500℃において内容物が軟化溶融状態を示
した場合には、得られた炭素質粉末を分散させた電気粘
性流体の性能が、軟化溶融状態を示さずに炭化した場合
と比較してより優れた性能が得られることを見いだし
た。なお、ここでいう優れた性能とは、一定の電圧を印
加した時に、流体の粘度変化が大きくかつ流体中を流れ
る電流が小さいこと、調製された電気粘性流体の初期粘
度が小さいこと等を示す。
【0021】これらの特性と関係する因子は必ずしも明
確になっていないが、大きな粘度変化を実現する点に関
しては、有機原料の熱処理時に、π電子に富んだ平面性
に優れる縮合多環芳香族化合物が多く生成することが重
要であると考えられる。これには、小さな縮合多環芳香
族化合物の分子間での重合反応が起こる段階で、これら
の化合物が平行に再配列することが必要である。再配列
せずに重合反応した場合には、互いの縮合多環芳香環が
同一平面上にないため、より大きな縮合多環芳香族化合
物を形成できない。そのためには、このような再配列の
反応が通常起きるとされる300〜500℃において軟
化溶融状態を示すことが重要である。
【0022】300〜500℃の温度領域で軟化溶融状
態を示す有機原料としては、石炭系タール、石炭系ピッ
チ、石炭液化物、石油系タール、石油系ピッチ等や、ポ
リ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂
類のような有機化合物が使用できる。また別の原料とし
てアセナフチレン、ナフタレン、メチルナフタレン、ア
ントラセン、フェナントレン等の縮合多環芳香族化合物
の重合物またはナフタセン等のモノマーまたは重合物を
あげることができる。なお、これらの重合物としては、
例えばHF−BF3 等の酸触媒を用いて製造された重合
物が挙げられる。また、アセナフチレン、水素化ピレン
等の熱処理によって重合反応する化合物も、熱処理時に
300〜500℃の温度範囲で軟化溶融状態を示すもの
であれば利用可能である。
【0023】また、本発明においては、アセナフチレ
ン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フ
ェナントレン等の縮合多環芳香族化合物の重合物が有機
原料として好ましく用いられ、さらに、前記縮合多環芳
香族化合物を酸触媒、特に酸触媒としてHF−BF3
用いて重合して得られた重合物は有機原料として好まし
く用いられる。中でも特に、ナフタレンを重合させて得
られたナフタレンピッチ、さらに好ましくは酸触媒、特
にHF−BF3 を用いて重合したナフタレンピッチは好
適に利用される。なお、このようなナフタレンピッチと
しては、三菱瓦斯化学(株)製AR(商品名)等が好ま
しく例示される。
【0024】また、本発明の製造方法において、有機原
料は窒素、酸素、硫黄成分を実質的に含有しないもので
あるのが好ましい。なお、実質的に含有しないとは、窒
素、酸素、硫黄成分がそれぞれ単独でも混合物としても
総量で1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であ
る場合をいう。窒素、酸素、硫黄原子を分子内に含む有
機原料を用いた場合には、炭素質粉末内の縮合多環芳香
族分子の環内あるいは官能基として残存するこれらの原
子が分子の分極の極性を高め、電導性増加の要因になる
ものと推測される。窒素、酸素、硫黄成分を実質的に含
有しない有機原料としては、アセナフチレン、ナフタレ
ン、アントラセン、ナフタセン等の縮合多環芳香族化合
物の重合物が好適に例示される。
【0025】また、本発明の製造方法においては、これ
らの有機原料中にフリーカーボン、灰分が含有される場
合には必要に応じてこれを除去することが好ましい。除
去方法は、遠心分離や各種の溶剤を添加することによる
静置分離等一般に工業的に実施されている除去方法が適
用可能である。
【0026】なお、本発明の製造方法において、これら
の有機原料は、炭素質粉末の出発原料として単独で用い
てもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0027】本発明の炭素質粉末の製造方法において
は、このような有機原料を500℃以下の温度、好まし
くは300〜500℃程度の温度で一次熱処理を行う。
一次熱処理の温度が500℃を超えると、一次熱処理に
よって得られたもの(以下、一次熱処理物とする)の炭
化度(炭素質粉末の炭素原子と水素原子の数の比=C/
H)が高くなってしまうため、一次熱処理物が硬くな
り、後の粉砕工程に悪影響を及ぼし、また粉砕後の炭素
質粉末の形状が悪くなってしまう等の点で不都合を生じ
る。また、一次熱処理物の炭化度、後段の二次熱処理で
の溶融防止等の点で、一次熱処理温度の下限は通常30
0℃程度である。
【0028】なお、本発明の炭素質粉末の製造方法にお
いては、有機原料(被熱処理物)は、一次熱処理の30
0〜500℃の間で軟化溶融状態を示すのが好ましいの
は前述のとおりである。
【0029】一次熱処理の方法としては、回転仮焼炉、
オートクレーブ、キルン等を用いて、窒素導入下等の不
活性雰囲気下で行われる。
【0030】具体的には、例えば有機原料がナフタレン
ピッチである場合には、一次熱処理温度は430〜49
0℃程度で、1〜5時間程度行えばよい。
【0031】なお、本発明の製造方法においては、炭素
質粉末のC/Hや熱天秤での減量等の調整や、一次熱処
理の作業性や効率、原料の取り扱い性を良好にするため
に、原料等によっては必要に応じて一次熱処理の前に前
処理として、オートクレーブ等を用いた熱処理や、溶媒
抽出等を行ってもよい。
【0032】本発明の炭素質粉末の製造方法において、
一次熱処理によって調製される一次熱処理物には、以下
の要件を満足することが望まれる。 (1) 以降の二次熱処理時に溶融しないこと (2) 以降の粉砕・分級時において目標粒度を達成できる
と同時に粉砕後の粒子形状がより丸みを帯びていること これらの要件に対する指標としては、炭素原子と水素原
子の数の比である炭化度(C/H)が利用可能である。
【0033】一例として、縮合多環芳香族化合物を重合
して得られたピッチ、特にナフタレンピッチを原料とし
た場合には、一次熱処理によって得られるC/Hは2.
0〜2.25の範囲であるのが好ましく、前述のように
これを達成するように一次熱処理の温度や時間を調整す
る。C/Hを2.0以上とすることにより、二次熱処理
時における炭素質粉末の溶融を好適に防止でき、かつC
/Hを2.25以下とすることにより、一次熱処理物の
硬さを好適なものとすることができ、後の粉砕分級工程
において、容易に平均粒径を目標とする0.5〜10μ
mに調整することができ、かつ粉砕後の粒子を良好に丸
みを帯びたものとできる。なお、炭素質粉末の形状を球
状に近付けることにより、調製して得られた電気粘性流
体の初期粘度をより小さくできる。
【0034】本発明の炭素質粉末の製造方法において
は、このようにして得られた一次熱処理物を粉砕および
分級して、平均粒径0.5〜10μm、さらに好ましく
は2〜7μmの炭素質粉末とする。ここで得られる炭素
質粉末の平均粒径が0.5μm未満では、電気粘性流体
を調製した際の初期粘度(電圧無印加時の粘度)が高く
なってしまい、また、平均粒径が10μmを超えると、
電気粘性流体を調製した際に炭素質粉末が沈降してしま
い、良好な電気粘性特性を得ることができない。
【0035】また、良好な特性を有する電気粘性流体を
得るためには、炭素質粉末中の粗粉(粒径10μm以
上)が5重量%以下、微粉(粒径1.6μm以下)が5
重量%以下であるのが好ましい。
【0036】一次熱処理物の粉砕・分級方法には特に限
定はなく、ジェットミル、ボールミルおよび風力分級、
篩分け、遠心分離、沈降分離等、一般に工業的に行われ
ている方法がいずれも利用可能である。
【0037】本発明の炭素質粉末の製造方法において
は、このようにして粉砕および分級して得られた炭素質
粉末に、前述の一次熱処理時の温度以上の高温で二次熱
処理を施す。本発明は上記二次熱処理工程を有すること
により、粉砕・分級によって得られた炭素質粉末の個々
の粒子間のC/HおよびTAGでの重量減少量のバラツ
キを低減せしめ、また個々の粒子内での軽質分の偏在を
除去する。このような個々の粒子間でのC/H等のバラ
ツキや、個々の粒子内での軽質分の偏在を除去すること
により、この炭素質粉末を用いて調製した電気粘性流体
の電圧印加時の粘度および電流値の時間的変動の防止が
可能となり、電気粘性流体の応答性が良好になる。ま
た、本発明は上記二次熱処理を有することにより、炭素
質粉末に含まれる揮発性成分を低減させて、これらの揮
発性成分に起因すると考えられる特性の不安定性を改善
できると同時に、C/Hを良好に調整して一次熱処理で
は到達し得ない粘性変化量を実現することができる。
【0038】前述のように、二次熱処理は一次熱処理以
上の高温で実施する。二次熱処理と一次熱処理との温度
差には特に限定はないが、上記利点を良好に発現して、
高性能な炭素質粉末を得られる等の点で、通常一次熱処
理よりも0〜50℃程度高い最高温度で二次熱処理を施
すのが好ましい。
【0039】具体的には、例えば有機原料がナフタレン
ピッチである場合には、二次熱処理は450〜500℃
程度で、5〜15時間程度行うのが好ましい。
【0040】二次熱処理の方法は、一次熱処理に利用可
能な各種の熱処理方法がいずれも利用可能である。ま
た、一次熱処理と二次熱処理は同じ方法で行ってもよ
く、また異なる方法で行ってもよい。
【0041】本発明における、二次熱処理時には炭素質
粉末が軟化溶融しないことが望ましい。軟化溶融が起き
た場合には再度粉砕、分級によって粒度を調整しなけれ
ばならない。二次熱処理によって調整される炭素質粉末
のC/Hは1.5〜3.0であるのが好ましい。C/H
を1.5以上とすることにより、調製して得られた電気
粘性流体の電圧印加時の粘度変化を十分に大きなものと
することができ、かつC/Hを3.0以下とすることに
より、電圧印加時の電流値の小さい効率のよい電気粘性
流体を実現することができる。一例として、縮合多環芳
香族化合物を重合して得られたピッチ、特にナフタレン
ピッチを原料とした場合には、二次熱処理によって調整
される二次熱処理後の炭素質粉末のC/Hは2.25〜
3.0であるのが好ましい。
【0042】このような二次熱処理を終了した炭素質粉
末は、凝集することもあるので、必要に応じてハンマー
ミル等の公知の手段で解砕され、減圧乾燥等を施され
て、絶縁性油状媒体に分散されて電気粘性流体として調
製され、あるいは粉末のまま包装されて保存される。
【0043】なお、炭素質粉末を用いて電気粘性流体を
調製する際には、炭素質粉末を、スピンドル油、トラン
ス油、塩化パラフィン、シリコーン油等の電気絶縁性油
状媒体に1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%
均一に分散させ電気粘性流体を得る。炭素質粉末の量が
1重量%未満では電気粘性効果は小さく、60重量%を
超えると初期粘度が著しく大きくなって電気粘性効果が
小さくなる。
【0044】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお、本実施例において、炭化度(C/H)は各
熱処理後の粉末の元素分析から求めた炭素原子と水素原
子の数の比を示す。また、粒径の測定は、コールターカ
ウンターを使用し、50μmのアパチャーチューブを用
いて行った。
【0045】[実施例]有機原料として、ナフタレンを
HF−BF3 触媒を使用して重合反応することにより得
られた、実質的に窒素、酸素、硫黄成分を含有しないナ
フタレンピッチ(三菱瓦斯化学(株)製 AR(商品
名) 軟化点245℃)を用いた。この有機原料を、3
5リットル回転仮焼炉を用い、窒素流量3リットル/分
の不活性雰囲気下で、下記表1に示す温度および時間で
一次熱処理した。この時ナフタレンピッチは300〜4
50℃の温度範囲で液相状態を示した。得られた一次熱
処理物のC/Hを下記表1に示す。
【0046】得られた一次熱処理物をジェットミルおよ
び回転分級機によって粉砕および分級して、炭素質粉末
とした。粉砕・分級後の炭素質粉末の粒度を表1に示
す。得られた炭素質粉末を、一次熱処理と同じ35リッ
トル回転仮焼炉を用い、窒素流量3リットル/分の不活
性雰囲気下で、下記表1に示す温度および時間で二次熱
処理した。さらに二次熱処理後に得られた目的とする炭
素質粉末のC/Hを表1に示す。なお、この二次熱処理
の前後において、下記表1に示す実施例1,2および3
においては、実質的に炭素質粉末の粒度に変化はなかっ
た。
【0047】得られた各炭素質粉末を、電気絶縁性油状
媒体である室温(25℃)での粘度が0.1ポイズのシ
リコーンオイル油に36重量%均一に分散させ、電気粘
性流体を得た。初期粘度および電圧印加時の粘度、電流
値は、得られた電気粘性流体を二重円筒型回転粘度計
(内円筒半径25mm、外円筒半径26mm、内円筒高
さ20mm)を使用し、剪断速度366/秒において電
圧無印加時の見掛け粘度、内外円筒間に直流電圧2kv/m
m を印加した際の見掛け粘度、電流値を測定した。電圧
の印加における粘度の変化量を粘度変化値とした。得ら
れた結果を比較例とともに表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】なお、上記表1に示される結果において、
実施例1,2および3においては電気粘性流体への電圧
印加時の粘度および電流値の時間的変動はほとんど見ら
れなかったが、比較例1においては、電圧印加時の粘度
および電流値は変動が激しかった。また、比較例2は、
一次熱処理物が固く粉砕ができなかった。
【0050】上記表に示されるように、本発明の炭素質
粉末を用いた電気粘性流体は、電圧を印加した際に、小
さな電流値で大きな粘度変化を実現しており、また、初
期粘度も小であり、さらに電圧印加時の電流および粘度
の時間的変動が小であるため、応答性に優れ、本発明の
製造方法によれば高性能な電気粘性流体を調製可能な炭
素質粉末を安定して得られることが解る。以上の結果よ
り、本発明の効果は明らかである。
【0051】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の炭
素質粉末の製造方法によれば、電圧を印加した際に、小
さな電流値で大きな粘度変化を得られる、初期粘度も小
さくさらに応答性に優れる等、高性能な電気粘性流体を
調製可能な炭素質粉末を容易に製造でき、電気粘性流体
を広い用途に渡って利用可能にすることができる。また
本発明の方法によって得られた炭素質粉末は特性が安定
しており、長期に渡って優れた特性を発揮する電気粘性
流体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気粘性流体用炭素質粉末の製造方法
の一例を示すフローチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 羽多野 仁 美 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内 (72)発明者 福 田 典 良 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気絶縁性に優れた油状媒体に誘電体微粒
    子を分散させてなる電気粘性流体の誘電体微粒子として
    使用される炭素質粉末の製造方法であって、 石炭、石炭系タール、石炭系ピッチ、石炭液化物、コー
    クス類、石油、石油系タール、石油系ピッチ、縮合多環
    芳香族化合物の重合によって生成するピッチ、および熱
    可塑性樹脂類からなる群より選択される少なくとも一種
    の有機原料を500℃以下の温度で一次熱処理した後、
    この一次熱処理によって得られた物を粉砕および/また
    は分級することによって平均粒径0.5〜10μmの炭
    素質粉末とし、この炭素質粉末を前記一次熱処理温度以
    上の温度で二次熱処理することを特徴とする電気粘性流
    体用炭素質粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】前記一次熱処理によって得られた物が、前
    記一次熱処理において300〜500℃で軟化溶融状態
    を経て得られた物である請求項1に記載の電気粘性流体
    用炭素質粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】前記二次熱処理において、前記炭素質粉末
    が溶融軟化しない請求項1または2に記載の電気粘性流
    体用炭素質粉末の製造方法。
  4. 【請求項4】前記有機原料が縮合多環芳香族化合物を重
    合させて得られたピッチである請求項1〜3のいずれか
    に記載の電気粘性流体用炭素質粉末の製造方法。
  5. 【請求項5】前記有機原料がナフタレンを重合させて得
    られたナフタレンピッチである請求項1〜4のいずれか
    に記載の電気粘性流体用炭素質粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】前記一次熱処理後に得られた炭素質粉末の
    炭素原子と水素原子の数の比(C/H)が2.0〜2.
    25で、前記二次熱処理後の炭素質粉末の炭素原子と水
    素原子の数の比(C/H)が2.25〜3.0である請
    求項4または5に記載の電気粘性流体用炭素質粉末の製
    造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021070825A1 (ja) * 2019-10-10 2021-04-15 株式会社クラレ 電気化学デバイス用炭素質材料およびその製造方法、電気化学デバイス用負極、電気化学デバイス

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